【文献】
酒井正俊 ほか,“超音波溶融によるフレキシブル有機薄膜トランジスタの作製”,第75回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集,公益社団法人応用物理学会,2014年 9月 1日,17a-A4-3
【文献】
佐々木達彦 ほか,“無溶媒・低温プロセス化を目指した超音波溶融によるフレキシブルOFETの作製”,第75回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集,公益社団法人応用物理学会,2014年 9月 1日,19p-PA7-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機薄膜トランジスタが、互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配設された有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含む半導体層と、前記半導体層に対向するように配設されたゲート電極と、前記半導体層と上記ゲート電極との間に配設された絶縁層とを基材上に備える有機電界効果トランジスタであり、
有機半導体薄膜の形成の前に、前記基材上に有機半導体材料を配置する配置工程を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
前記配置工程では、前記ソース電極及びドレイン電極がその上に配設された前記基材に対し、有機半導体材料を固体状態又は溶融状態で前記基材上における、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域またはその近傍に配置することを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
前記配置工程では、前記ソース電極及びドレイン電極がその上に配設された前記基材に対し、有機半導体材料を含有する溶液を前記基材上に塗布した後、乾燥させることにより前記基材上における、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域またはその近傍に有機半導体材料を配置することを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料の薄膜を電極間に形成させ、有機半導体デバイスを得る方法は、低温プロセスで製造でき、よりフレキシブルで、且つ軽量で、壊れにくいデバイスが作成可能であることから、近年盛んに研究されるようになった。
【0003】
しかしながら、従来、有機半導体デバイスに用いられた有機半導体材料は、その多くが有機溶剤に難溶であるため、塗布又は印刷などの安価な手法を用いてその薄膜を形成することができず、比較的コストの高い真空蒸着法等で基板上にその薄膜を形成させることが一般的であった。最近になり、インクジェット、フレキソ印刷、コーティング等の塗布又は印刷を用いた方法により、有機半導体薄膜を形成し、有機半導体デバイスを得る研究が盛んに行われており、比較的高いキャリア移動度(以下、適宜、単に「移動度」と呼ぶ)を有する有機半導体デバイスが得られるようになってきた。上記の塗布又は印刷を用いた方法は、電界効果トランジスタの作成工程において、スループットが高く、大面積の電界効果トランジスタを低コストで製造することが期待される。
【0004】
しかし、現状では、塗布プロセス又は印刷プロセスを用いた、移動度が高く且つ耐久性に優れた有機半導体を用いた電界効果トランジスタはまだ実用化されていない。一般に、有機半導体薄膜は、真空蒸着法をはじめとした真空プロセス、又は溶媒を用いたスピンコート法やブレードコート法等の塗布プロセスで形成されている。しかしながら、真空プロセスによる有機半導体薄膜の形成方法は、真空プロセスを行うための設備が必要となるほか、有機半導体材料のロスが多くなるという欠点がある。塗布プロセスによる有機半導体薄膜の形成方法も、基板全体に有機半導体溶液を塗布するため、真空プロセスと同様に有機半導体材料のロスが多くなる。
【0005】
他の有機半導体薄膜の形成方法として、インクジェット法などの印刷法が知られている。印刷法は、目的位置に必要量の有機半導体材料を塗布することが可能であるが、他の塗布又は印刷法と同様に、溶液から生成させた結晶の配向方向を制御するためには、温度、雰囲気、塗布面の処理等の精緻なプロセス制御を行いながらゆっくりと有機半導体薄膜の成膜を行ったり、結晶生成後に結晶成長のために数分間〜数十分間かけて焼成を行ったりする必要がある。そのため、これらの塗布又は印刷法による有機半導体薄膜の形成方法では、有機半導体薄膜の成膜や結晶成長のための焼成に時間がかかり、スループットが高くないという欠点がある。また、現状では、塗布又は印刷法などの従来の有機半導体薄膜形成方法による有機半導体デバイスの製造方法は、移動度などの有機半導体デバイス性能に関しても実用化に向けては不十分である。
【0006】
塗布又は印刷法などの従来の有機半導体薄膜形成方法による有機半導体デバイスの製造方法が実用化に不十分な原因の一つとして、有機半導体材料の多結晶間の結晶粒界や分子配向制御などの有機半導体薄膜の状態によって有機薄膜トランジスタなどの有機半導体デバイスの特性が大きく変わることが挙げられる。
【0007】
結晶粒界の存在しない単結晶の有機半導体薄膜の形成方法として、非特許文献1に記載されている気相法(物理気相成長)により単結晶の有機半導体薄膜を形成する方法、特許文献1に記載されている、基板を傾斜させ基板上に有機半導体溶液の液滴を形成することにより、溶媒の蒸発とともに有機半導体溶液から一定方向(傾斜の方向)へ結晶を成長させる方法、特許文献2に記載されているダブルインクジェット法による単結晶性の有機半導体薄膜の製造方法などが示されている。
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載されているような気相法による有機半導体薄膜の形成方法は、実際の有機半導体デバイスの製造への応用に困難を伴う。また、特許文献1に記載されているような溶液法において基板を傾斜させる方法は、基板自体を傾斜させることが非常に困難である。また、特許文献2に記載されているようなダブルインクジェット法による有機半導体薄膜の製造方法は、溶媒の選択が困難であり、また、乾燥性の制御が必要である。その結果として、環境に対して負の影響のある溶媒を使用する必要が生じたり、スループットの高い有機半導体薄膜の形成方法を実現できなかったりという問題がある。
【0009】
また、有機半導体の単結晶以外の結晶の配向方法としては、液晶性の有機半導体材料を配向膜上に塗布し、液晶転移を用いて結晶を配向させる方法が例えば特許文献3に開示されている。しかしながら、上記方法では、冷却過程での相変化により結晶間に亀裂が入る可能性があり、冷却過程の温度を緻密に制御する必要がある。
【0010】
非特許文献2には多結晶の有機半導体薄膜を形成した後、溶媒蒸気にさらすことにより結晶の再配向を促す方法が記載されている。しかしながら、上記方法で結晶を再配向させるには結晶の有機半導体薄膜を長時間溶媒にさらす必要があり、スループットの高い有機半導体の製造方法への応用には不向きである。
【0011】
一方、熱可塑性の樹脂などの加工技術として超音波溶着が知られている。超音波溶着は、超音波振動と圧力とにより生じる摩擦熱を利用した接合・加工技術であり、加工時間が短い加工技術として知られている。超音波溶着は、主に、スポット溶着、フィルムのシール、不繊布のシール、金属のインサートなど、多くの分野で使用されている。しかしながら、超音波振動と圧力とにより、有機半導体材料を薄膜化する技術はこれまで知られていない。
【0012】
有機半導体薄膜の形成に超音波を用いた例として、有機半導体材料などを主成分として含有する塗布膜に対して超音波を照射する方法が特許文献4に記載されている。しかしながら、特許文献4に記載の方法は、塗布膜に超音波を照射することによって、塗布膜を改質し低抵抗化させる技術である。したがって、特許文献4における超音波の照射は、有機半導体薄膜の形成後に通常のオーブン等などによって行われる熱焼成プロセスや乾燥プロセスの代替にすぎず、超音波の照射と圧力とにより、短時間で有機半導体薄膜の形成を行うものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の目的は、有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を短時間で形成できる有機半導体薄膜の形成方法を提供することにある。
【0023】
本発明の有機半導体薄膜の形成方法は、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより、有機半導体材料を薄膜化して有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を形成することを特徴とするものである。上記方法によれば、短時間の処理で有機半導体薄膜を形成できる。また、上記方法においては、超音波振動付与終了後の冷却過程に有機半導体材料に対して圧力を加えた場合、冷却過程での相変化などにより有機半導体薄膜に亀裂が入ることが起こり難い。
【0024】
有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与する処理では、有機半導体材料を単独で被処理物として使用してもよいが、有機半導体材料を基材上に配置してなるものを被処理物として使用し、基材上の有機半導体材料に対して上記処理を施すことがより好ましい。本発明の方法では、基材上の有機半導体材料に対して上記処理を施すことによって結晶の再配向が起こり結晶の方位が均一化すると考えられるので、有機半導体材料を基材上に配置する際に結晶の再配向のための処理(例えば溶液プロセスによる有機半導体材料の配置後における焼成処理)が不要である。また、有機半導体材料を基材上に配置する際に、有機半導体材料の配置位置が有機半導体薄膜を形成しようとする所望の位置(例えば、有機薄膜トランジスタを製造する場合には、基材上におけるソース電極とドレイン電極との間の位置)から幾らかずれたとしても、上記処理により有機半導体材料が基材表面方向に押し広げられるので、所望の位置に有機半導体薄膜を形成することができる。したがって、有機半導体材料の配置には、高い精度が要求されない。
【0025】
有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与する処理では、1対の基材の間に有機半導体材料を挟んだものを被処理物として使用し、1対の基材の間に挟まれた有機半導体材料に対して上記処理を施すことがさらに好ましい。これにより、上記処理時に、有機半導体材料が超音波溶着装置のホーンやステージなどに付着することを回避できると共に、冷却過程での相変化などにより有機半導体薄膜に亀裂が入ることを回避できる。上記基材としては、後段で有機薄膜トランジスタ10A及び10Bを構成する基材1及び1’の例として挙げるガラス等の無機基板や各種の樹脂フィルム、これらの上に電極及び/又は絶縁層を形成したものなどが挙げられる。上記1対の基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0026】
有機半導体材料を基材上に配置する場合、有機半導体材料を固体状態又は溶融状態で基材上に配置することができる。また、有機半導体材料を固体状態又は溶融状態で基材上に配置する方法は、環境負荷の高い有機溶媒を使用せずに有機半導体材料を基材上に配置できる等のメリットがある。有機半導体材料を固体状態又は溶融状態で基材上に配置する方法としては、バルク粉末、微細粉末などの固体の状態の有機半導体材料を基材上に直接配置する方法、バルク粉末、微細粉末などの固体の状態の有機半導体材料を十分に温められた金属棒などの部材上に配置して溶融し、溶融状態の有機半導体材料を上記部材上から基材上に垂らす方法などを用いることができる。
【0027】
有機半導体材料を基材上に配置する方法としては、その他、ドロップキャスト法などの溶液プロセス(例えば、有機半導体材料を有機溶剤に溶解させてなる溶液を塗布又は印刷する工程及び乾燥工程などから構成される)を用いることもできる。本発明の有機半導体薄膜の形成方法では、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することで、摩擦熱が生じて有機半導体材料が昇温された後、超音波振動の付与が終了すると有機半導体材料が冷却される。この冷却過程で有機半導体材料の結晶が再配向して結晶の方位が均一化されると考えられる。そのため、溶液プロセスを用いて有機半導体材料を基材上に配置する場合、有機半導体材料を含有する有機溶剤溶液から有機半導体材料を結晶化する段階においては、結晶の方位がランダムであってもよい。そのため、本発明の有機半導体薄膜の形成方法において有機半導体材料を基材上に配置するための溶液プロセスでは、有機半導体材料を有機溶剤に溶解させてなる溶液を塗布又は印刷した後には、溶液中に含まれる有機溶剤を蒸発させるだけでよい。そのため、有機半導体材料を有機溶剤に溶解させてなる溶液を塗布又は印刷した後に、結晶の方位を均一化するために長時間のベークによる結晶配向制御や後処理による結晶の再配向といったプロセスを実施する必要がない。このようにして基材上に配置された有機半導体材料は、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより薄膜化して有機半導体薄膜となる。
【0028】
有機半導体材料に対して圧力を加える方法としては、特に限定されないが、有機半導体材料に対して直接又は保護フィルム若しくは保護層を介して加圧部材を押し当てる方法が好適である。有機半導体材料に対して保護フィルム又は保護層を介して加圧部材を押し当てる場合、有機半導体材料を基材と保護フィルム又は保護層との間に挟持したものを被処理物として使用し、基材上の有機半導体材料に対して保護フィルム又は保護層を介して加圧部材を押し当てることがより好ましい。また、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与する方法としては、特に限定されないが、有機半導体材料を基材上に配置し、有機半導体材料に対して直接又は保護フィルム若しくは保護層を介して加圧部材を押し当てながら加圧部材を超音波振動させる方法が好適である。上記加圧部材としては、有機半導体材料全体に圧力を加えることができるものであれば特に限定されないが、基材が平板である場合、加圧部材における有機半導体材料に当接する面が平面であることが好ましい。これにより、均一な厚みの有機半導体薄膜を形成することができる。上記保護フィルム又は保護層については、後述する。
【0029】
本発明の有機半導体薄膜の形成方法としては、包装フィルムの圧着等に使用される一般的な超音波溶着機(超音波ウェルダー)を用いる方法が挙げられる。一般的な超音波溶着機を使用する場合、有機半導体材料を含む被処理物(有機半導体材料単独、有機半導体材料と基材との組み合わせ、有機半導体材料と保護フィルム又は保護層との組み合わせ、又は有機半導体材料と基材と保護フィルム又は保護層との組み合わせ)の上方から超音波溶着機により有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与し、超音波振動により生じた摩擦熱と圧力とを利用して有機半導体材料を薄膜化することにより本発明の有機半導体薄膜が形成される。一般的な超音波溶着機は、被処理物に押し当てられて被処理物に圧力を加えると共に超音波振動を付与するためのホーンを加圧部材として備えている。
【0030】
本発明の有機半導体薄膜の形成方法に好適に使用される超音波溶着機の一実施形態を
図1に基づいて以下に説明する。なお、各図における同じ機能を有する部材については同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0031】
超音波溶着機20は、
図1に示すように、超音波発振器(ジェネレーター)21、超音波振動子(コンバーター)22、ブースター23、ホーン24、加圧機構(プレスユニット)25、及び加熱ステージ26を備えている。ホーン24は、その被処理物に当接する面が平面となっている。
【0032】
加熱ステージ26は、その上に、被処理物が配置されるものである。また、加熱ステージ26は、加熱ステージ26の上面を所定温度に加熱するためのヒーター26aを備えている。なお、加熱ステージ26の上面は、加熱しなくてもよい。したがって、加熱ステージ26に代えて、ヒーター26aを備えていない単なるステージを用いてもよい。
【0033】
加圧機構25は、超音波振動子22、ブースター23、及びホーン24が取り付けられたアーム部25aと、アーム部25aを鉛直方向上下に滑動可能に支持する支柱25bと、アーム部25aを鉛直方向上下に移動させると共に、加熱ステージ26上に配置された被処理物に対してホーン24を鉛直方向下向きに押し当てて圧力を加えるための図示しない駆動機構(例えばエアーシリンダー)とを備えている。
【0034】
超音波溶着機20では、図示しない商用電源から入力された電気信号を超音波発振器21で高周波の電気信号に増幅し、増幅された電気信号を超音波振動子22にて機械的な振動エネルギーに変換し、機械振動(超音波振動)が超音波振動子22から発せられる。超音波振動子22から発せられた機械振動(超音波振動)は、ブースター23にてその振幅が増減させられた上で、ホーン24に伝達される。ホーン24に伝達された超音波振動は、加圧機構25により有機半導体材料に対してホーン24を鉛直方向下向きに押し当てて圧力を加えたときに、有機半導体材料を含む被処理物へ伝達される。
【0035】
有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与する際に制御するパラメーターとしては、主として、超音波振動の発振時間、超音波振動の振幅、加圧力、超音波溶着機のホーンの形状(ホーンを備える超音波溶着機を使用する場合)等が挙げられる。超音波振動の発振時間は、超音波振動を有機半導体材料に与える時間であり、長時間になるほど有機半導体材料にかかる熱量は大きくなるが、有機半導体材料の物性に合わせて適宜調整する必要がある。また、有機半導体薄膜形成処理のタクトタイムを考慮すると、短時間で適切な処理を行うことが好ましく、通常1分以内、好ましくは10秒以内、特に好ましくは1秒以内での処理が可能なように設定する。
【0036】
超音波振動の振幅は、有機半導体材料に付与される超音波振動の大きさ(ホーンを備える超音波溶着機を使用する場合、ホーンの先端から有機半導体材料に伝わる超音波振動の大きさ)を表す。超音波溶着機を使用する場合に、同じ出力の超音波溶着機を用いても、超音波振動の振幅を変えることにより有機半導体材料にかかる熱量を変えることが可能である。超音波振動の振幅が高いほど大きな熱量を有機半導体材料に与えることが可能であるが、有機半導体材料を基材等の他の材料と組み合わせて使用する場合には、同時に基材等の他の材料へのダメージを考慮して超音波振動の振幅が高くなり過ぎないように設定する必要がある。超音波振動の振幅は、超音波溶着機の出力(超音波溶着機を使用する場合)、超音波振動の振動数(周波数)などにより適切な振幅は変化する。このため、使用する有機半導体材料の種類、必要に応じて有機半導体材料と組み合わせて使用されて超音波振動付与時に摩擦熱が加わる部材の種類に合わせて適切な振幅に制御する必要がある。上記の超音波振動付与時に摩擦熱が加わる部材としては、例えば、基材、電極(ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極など)、絶縁層(例えばゲート絶縁層)、薄膜トランジスタ保護層、有機半導体材料に対して他の部材を介してホーン等の加圧部材を押し当てて超音波振動を付与するときにホーン等の加圧部材に接する部材(保護フィルム又は保護層など)などが挙げられる。すなわち、本発明の有機半導体薄膜の形成方法では、有機半導体材料の温度が適切な温度に制御されるように、超音波振動の振幅を適切な振幅に制御することが好ましい。
【0037】
加圧力は、有機半導体材料を含む被処理物に付与される機械的エネルギー(ホーンを備える超音波溶着機を使用する場合、ホーンから有機半導体材料に伝わる機械的エネルギー)であり、その大きさが超音波振動により有機半導体材料に発生する熱量と処理時間(有機半導体材料が薄膜化されるのにかかる時間)とに関連する。有機半導体材料を含む被処理物に強すぎる圧力を加えると、超音波振動の振幅が大きすぎる場合と同様、有機半導体材料にダメージを与える可能性があり、また、有機半導体材料を基材等の他の材料と組み合わせて使用する場合には、基材等の他の材料にダメージを与える可能性がある。そのため、加圧力は、これらのダメージを考慮して強くなり過ぎないように設定する必要がある。これらのパラメーター(超音波振動の発振時間、超音波振動の振幅、及び加圧力)は、相互に影響を与えるものであり、使用する有機半導体材料の種類、必要に応じて有機半導体材料と組み合わせて使用されて超音波振動付与時に摩擦熱が加わる部材の種類に合わせて適切な組み合わせにする必要がある。
【0038】
超音波溶着機のホーンの形状は、伝達された超音波振動を有機半導体材料に伝えるために適切な構造が必要であり、その形状により超音波振動の振幅が変化することがある。また、ホーン表面の大きさ(処理面積)によっても有機半導体材料にかかる熱量が変化するため、ホーンの形状及びホーン表面の大きさを個別に制御する必要がある。
【0039】
有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与する時(以下、適宜、「加圧及び超音波振動付与時」と呼ぶ)における有機半導体材料の温度は、有機半導体材料の種類に応じて設定される。有機半導体材料が相転移点(相転移温度)を有する場合、有機半導体材料の相転移点に対して0〜+80℃の範囲内に加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の温度を調整することが好ましい。また、有機半導体材料を基材と組み合わせて使用する場合、加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の温度を、使用する基材のガラス転移点(ガラス転移温度)よりも低い温度に設定することが好ましく、有機半導体材料の相転移点と基材のガラス転移点との組み合わせにより加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の温度の最適な温度範囲が設定される。なお、ここで言う「加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の温度」は、実施例の測定方法のように有機半導体材料に代えて熱伝導シートを配置して加圧及び超音波振動付与を行った時の熱伝導シートの温度を意味するものとする。
【0040】
また、必要に応じて、有機半導体材料に対する超音波振動の付与と同時に有機半導体材料を伝導加熱してもよい。有機半導体材料を基材と組み合わせて使用する場合、必要に応じて、超音波振動の付与と同時に基材を補助的に伝導加熱してもよい。その場合、基材の加熱温度は、加圧及び超音波振動付与時における有機半導体材料の加熱温度に応じて変化させればよいが、基材の変形や他の構成部材のダメージ(有機半導体材料及び基材を他の構成部材と組み合わせて使用する場合)を避けるためには、できるだけ低温側に設定する。
【0041】
有機半導体材料を薄膜化するためには、加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の温度は、有機半導体材料の相転移点(すなわち液晶転移点、ガラス転移点、融点など)を超える温度にすることが好ましい。この場合、その条件下では、有機半導体材料が加圧及び超音波振動付与時に固相から液晶相、ガラス相、液相などへ相転移(相変化)して、流動性をもつようになり、与えられた圧力により薄膜化される。この場合、超音波振動の付与を終了した後の冷却過程において有機半導体材料が再結晶化し、有機半導体薄膜が得られる。すなわち、本発明の有機半導体薄膜の形成方法では、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより固相の有機半導体材料を相転移させた後に有機半導体材料を再結晶化することで、有機半導体材料を薄膜化することが好ましい。これにより、固相の有機半導体材料を相転移させることで、有機半導体材料の流動性が高くなるので、有機半導体材料が薄膜化しやすくなる。なお、加圧及び超音波振動付与時に有機半導体材料の相転移が起こらない場合であっても、有機半導体材料が超音波振動により加熱された状態で十分な圧力を受けることで、薄膜化が起こりうる。
【0042】
有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動の付与を開始した後、超音波振動の付与を終了すると、有機半導体材料の温度は急激に低下し、有機半導体材料の再配向及び再結晶化が起こる。超音波振動の付与を終了した後、厚み方向に均一な有機半導体薄膜を得るために有機半導体材料に対する加圧を続けてもよく、超音波振動付与の終了後に加圧を続ける時間は、加圧及び超音波振動付与時の有機半導体材料の最高到達温度、超音波振動付与の終了時(冷却後)における有機半導体材料の温度と室温との温度差、及び基材の表面エネルギー(有機半導体材料を基材と組み合わせて使用する場合)により調節されることが好ましい。このようにして得られた有機半導体薄膜は、一般的な溶液プロセスで得られる有機半導体薄膜に比べ結晶粒間にクラックが生じにくい。
【0043】
ホーンを備える超音波溶着機を用いた加圧及び超音波振動付与の時には、ホーンを直接半導体材料に接触させないために、有機半導体材料上に保護フィルム又は保護層を設け、有機半導体材料に対して保護フィルム又は保護層を介してホーンを押し当ててもよい。基材上に形成された有機半導体材料上に保護フィルム又は保護層を設ける場合、ここで用いられる保護フィルム又は保護層は、基材と同一でも異なっていてもよい。また、有機半導体薄膜を形成後に保護層から剥離するために、離型材の上に保護層を積層したフィルムを離型材が有機半導体材料に接するように有機半導体材料上に設けることもできる。
【0044】
有機半導体材料の液晶転移点、ガラス転移点、及び融点は、示差走査熱量計(DSC)、偏光顕微鏡(POM)観察、自動融点測定装置等を用いて相転移挙動を把握することによって測定できる。また、有機半導体材料の高次構造については、X線回折(XRD)を用いて有機半導体材料の分子構造、液晶性、及び結晶性の関係について把握することが可能である。
【0045】
有機半導体材料としては、半導体特性を示す低分子有機化合物(低分子有機半導体化合物)、半導体特性を示す高分子化合物(高分子有機半導体化合物)(特に数平均分子量が1000以上の高分子化合物)、及び半導体特性を示す繰り返し単位が2〜20のオリゴマー(オリゴマー有機半導体化合物)のいずれも用いることが可能である。有機半導体材料の中でも、加圧及び超音波振動付与時の最高到達温度以下に液晶転移点、ガラス転移点、融点などの相転移点を持つ有機半導体材料が好ましい。また、有機半導体材料をガラス転移点を有する基材(特に、樹脂フィルムなどの樹脂基材)と組み合わせて使用する場合には、有機半導体材料が、基材のガラス転移点よりも低い相転移点を持つことが好ましく、加圧及び超音波振動付与時の最高到達温度以下であり、かつ基材のガラス転移点よりも低い相転移点を持つことがより好ましい。有機半導体材料を樹脂基材と組み合わせて使用する場合には、有機半導体材料の相転移点が70℃〜280℃の範囲内であることが好ましく、有機半導体材料の相転移点が100℃〜280℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明の有機半導体薄膜の形成方法においては、有機半導体材料の結晶が再配向して結晶の方位が均一化されると考えられることが1つの特徴である。このため、これらの有機半導体材料の中でも、特に結晶性を有する有機半導体材料を用いたときは、例えば移動度等の半導体特性に優れた有機半導体デバイスを短時間で容易に得ることができる。
【0047】
上記低分子有機半導体化合物としては、ポリアセン類、ポリアセン類の炭素原子の一部を窒素原子、硫黄原子、酸素原子などの原子、又はカルボニル基などの多価官能基に置換するか、あるいはポリアセン類の水素原子の一部をアリール基、アシル基、アルキル基、アルコキシル基などの1価官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン誘導体、トリフェノジチアジン誘導体、後述する一般式(1)で表されるチエノチオフェン誘導体など)を挙げることができる。また、上記低分子有機半導体化合物として、その他に、スチリルベンゼン誘導体、金属フタロシアニン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン色素類やヘミシアニン色素類などの色素、テトラキス(オクタデシルチオ)テトラチアフルバレンに代表される電荷移動錯体などが挙げられる。上記縮合環テトラカルボン酸ジイミド類としては、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジオクチルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド、などのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類;アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などが挙げられる。
【0048】
上記高分子有機半導体化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類;ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類;ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類;ポリチエニレンビニレンなどのポリチエニレンビニレン類;ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類;ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)などのポリアニリン類;ポリアセチレンなどのポリアセチレン類;ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類;ポリアズレンなどのポリアズレン類;ポリピレンなどのポリピレン類;ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類;ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類;ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類;ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン)類;ポリインドールなどのポリインドール類;ポリピリダジンなどのポリピリダジン類;ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリスルフィド類などが挙げられる。
【0049】
上記オリゴマー有機半導体化合物としては、上記のポリマーと同じ繰返し単位を有するオリゴマー、例えば、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、などのオリゴマーが挙げられる。
【0050】
本発明を実施するにあたって特に好ましい有機半導体材料の一例として、下記一般式(1)
【化1】
(上記式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシル基、アルコキシアルキル基を表し、R
1及びR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、m及びnはそれぞれ独立に0または1を表す)
で表されるチエノチオフェン誘導体があげられる。
【0051】
上記アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素基である。上記アルキル基の炭素数は、通常1〜36であり、好ましくは2〜24であり、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜12である。
【0052】
上記アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ピレン基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、α−メチルベンジル基、トリフェニルメチル基、スチリル基、シンナミル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基等の芳香族炭化水素基である。上記複素環基は、2−チエニル基、ベンゾチエニル基、チエノチエニル基などである。これらアリール基及び複素環基はそれぞれ、上記のアルキル基などの置換基を有していてもよく、複数の置換基を有する場合にはそれら複数の置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0053】
上記一般式(1)で表されるチエノチオフェン誘導体が相転移点を上述の範囲(70℃〜280℃の範囲)内に有するためには、R
1及びR
2の少なくとも一方がアルキル基であることが好ましく、そのアルキル鎖の長さは炭素数4以上であることが好ましい。
【0054】
上記一般式(1)で表されるチエノチオフェン誘導体は、Journal of the American Chemical Society,2007,Vol.129,No.51,p.15732−15733及びAdvance Materials,2011,23,p.1222−1225に記載の公知の方法により合成することができる。一般式(1)で表されるチエノチオフェン誘導体の精製方法としては、特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また、必要に応じてこれらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の第二の目的は上記の有機半導体薄膜を用いた有機半導体デバイスを提供することであり、第三の目的はこれらを用いた有機半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【0056】
本発明の有機半導体デバイスの製造方法は、有機半導体薄膜を含む有機半導体デバイスの製造方法であって、本発明の有機半導体薄膜の形成方法で有機半導体薄膜を形成させる方法である。また、本発明の有機半導体デバイスは、上記本発明の製造方法で製造されたものである。本発明の製造方法で製造される有機半導体デバイスは、有機半導体薄膜を含む半導体層を電極で挟み込んだ構成であればとくに限定されないが、有機薄膜トランジスタであることが好ましい。本発明の製造方法で製造される有機半導体デバイスは、ソース電極及びドレイン電極の2つの電極が有機半導体薄膜を含む半導体層に接しており、それらソース電極及びドレイン電極の間に流れる電流を、ゲート絶縁層を介してゲート電極と呼ばれるもう一つの電極に印加する電圧で制御する構成の有機薄膜トランジスタであることがより好ましい。すなわち、本発明の製造方法で製造される有機半導体デバイスとしては、互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、上記ソース電極と上記ドレイン電極との間に配設された有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含む半導体層と、上記半導体層に対向するように配設されたゲート電極と、上記半導体層と上記ゲート電極との間に配設された絶縁層(ゲート絶縁層)とを備える有機電界効果トランジスタである有機薄膜トランジスタがより好ましい。上記有機電界効果トランジスタは、上記ソース電極、ドレイン電極、半導体層、ゲート電極、及び絶縁層とを基材上に備えることがさらに好ましい。
【0057】
本発明の有機薄膜トランジスタの態様例を
図7(a)及び
図7(b)に示す。
図7(a)に示す有機薄膜トランジスタ10Aは、ボトムゲート型有機電界効果トランジスタと呼ばれるものである。有機薄膜トランジスタ10Aは、基材1と、基材1上に積層されたゲート電極2と、ゲート電極2の上面(基材1に対向する面の裏面)上に積層されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3の上面の一部の上に互いに離間するように配設されたソース電極5及びドレイン電極6と、ゲート絶縁層3の上面(ただしソース電極5及びドレイン電極6が配設されている部分を除く)の上に配設された有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含む半導体層4とを備えている。
【0058】
図7(b)に示す有機薄膜トランジスタ10Bは、有機電界効果トランジスタであり、基材1’と、基材1’上に積層されたゲート絶縁層3’と、ゲート絶縁層3’の上面(基材1’に対向する面の裏面)の一部の上に互いに離間するように配設されたソース電極5及びドレイン電極6と、ゲート絶縁層3’の上面(ただしソース電極5及びドレイン電極6が配設されている部分を除く)の上に配設された有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含む半導体層4と、半導体層4の上面上に配設されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3の上面上に積層されたゲート電極2と、ゲート電極2の上面上に積層された基材1とを備えている。なお、有機薄膜トランジスタ10Bでは、基材1’及びゲート絶縁層3’の一方を省略してもよい。また、本発明の有機薄膜トランジスタは、有機薄膜トランジスタ10Bから基材1’及びゲート絶縁層3’の両方を取り除いた構造(トップゲート型有機電界効果トランジスタと呼ばれる)の有機薄膜トランジスタであってもよい。
【0059】
次に、
図7(a)及び
図7(b)に示される本発明の有機薄膜トランジスタの態様例における各構成要素につき説明する。
【0060】
基材1及び1’としては、ガラス等の無機基板のほか、樹脂フィルムを使用できる。基材1及び1’は、有機薄膜トランジスタ10A及び10Bのフレキシブル性を考慮すると、樹脂フィルムであることが好ましい。上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。基材1及び1’の種類は、加圧及び超音波振動付与時におけるプロセス温度に応じて選択される。また、これらの基材1及び1’表面の平滑性を高めるために基材1及び1’の上に平坦化層を有してもよい。上記樹脂フィルムを構成する樹脂中には、金属密着性や耐久性を向上させるために、ナノオーダー(例えば5nm)の平均粒子径を有する無機酸化物粒子(例えばシリカ粒子)を分散させてもよい。これらの基材1及び1’としては、ガラス転移点が100℃以上であるものが好ましく、ガラス転移点が150℃以上であるものがさらに好ましい。基材1及び1’の厚さは、通常は1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜3mmである。
【0061】
基材1として樹脂フィルムを使用した場合、有機薄膜トランジスタの曲げ耐性を考慮して、有機薄膜トランジスタ10Bのように基材1及び1’で半導体層4を挟み込む構成にしてもよい。この構成の場合、2種類の基材1及び1’の材質を同一にすることが好ましい。このような樹脂フィルムからなる基材1及び1’を用いることにより有機薄膜トランジスタに可撓性を持たせることができ、高い曲げ耐性を持つフレキシブルで軽量な有機薄膜トランジスタを実現でき、有機薄膜トランジスタの実用性が向上する。
【0062】
ソース電極5、ドレイン電極6、及びゲート電極2には、導電性材料(導電性を有する材料)が用いられる。上記導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、コバルト、銅、鉄、鉛、錫、チタン、インジウム、パラジウム、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リチウム、カリウム、ナトリウム等の金属及びそれらを含む合金;InO
2、ZnO
2、SnO
2、ITO(酸化インジウムスズ)等の導電性無機酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン(PEDOT・PSSなど)、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子化合物;カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、等が使用できる。ソース電極5、ドレイン電極6、及びゲート電極2の接触抵抗を低下させるために、上で挙げた各種の材料に酸化モリブデンをドーピングしたり、上記金属にチオールなどによる処理をしたりしても良い。また、上記導電性材料として、上で挙げた各種の材料にカーボンブラックを分散した導電性の複合材料や、金、白金、銀、銅などの金属などの粒子を上で挙げた各種の材料(ただし、粒子と異なる材料)に分散した導電性の複合材料も用いることができる。有機薄膜トランジスタ10A及び10Bを動作させる際にはゲート電極2、ソース電極5、及びドレイン電極6には配線が連結される。配線も、ゲート電極2、ソース電極5、及びドレイン電極6の材料とほぼ同じ材料で作製される。ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極2の厚みは、その材料によって異なるが、通常1nm〜10μmであり、好ましくは10nm〜5μmであり、より好ましくは30nm〜1μmである。
【0063】
ゲート絶縁層3及び3’は、絶縁性材料(絶縁性を有する材料)の層である。上記絶縁性材料としては、例えば、ポリパラキシリレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート(アクリル樹脂)、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル等の無機酸化物;SrTiO
3、BaTiO
3等の強誘電性無機酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム等の無機窒化物;無機硫化物;無機フッ化物などの誘電体の粒子をポリマー中に分散させた材料等が使用できる。ゲート絶縁層3に使用する絶縁性材料は、加圧及び超音波振動付与によるダメージの有無をあらかじめ確認することが好ましく、基材1と同様、熱的な安定性が求められるほか、加圧及び超音波振動付与の処理後の絶縁破壊等も考慮する必要がある。ゲート絶縁層3及び3’の厚みは、それに使用する絶縁性材料によって異なるが、通常10nm〜10μmであり、好ましくは50nm〜5μmであり、より好ましくは100nm〜1μmである。
図7(b)で示すような半導体層4を2枚の基材1及び1’に挟み込む構成を持つ有機薄膜トランジスタ10Bの場合、ゲート絶縁層3及び3’は、有機薄膜トランジスタ10Bの曲げ耐性を考慮して、同一の材質とすることが好ましい。
【0064】
半導体層4は、前述した有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含んでいる。半導体層4を構成する半導体材料として、上記有機半導体材料を単独で用いてもよく、上記有機半導体材料と少なくとも1種の他の半導体材料とを組み合わせて用いてもよい。有機薄膜トランジスタ10A及び10Bの特性を改善するために、必要に応じて各種添加剤を、半導体層4を構成する半導体材料に混合してもよい。半導体層4の厚みは、必要な機能を失わない範囲で、薄いほど好ましい。有機薄膜トランジスタ10A及び10Bにおいては、半導体層4が所定以上の厚みを有していれば有機薄膜トランジスタ10A及び10Bの特性は半導体層4の厚みに依存しないが、半導体層4の厚みが厚くなると漏れ電流が増加してくることが多い。逆に半導体層4の厚みが薄すぎると、半導体層4中に電荷の通り道(チャネル)を形成できなくなるため、半導体層4が適度な厚みを有していることが必要である。有機薄膜トランジスタ10A及び10Bが必要な機能を示すための半導体層4の厚みは、通常1nm〜5μmであり、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは10nm〜500nmである。
【0065】
本発明の有機薄膜トランジスタでは、上述した各構成要素の間や、上述した各構成要素の露出した表面に必要に応じて他の層を設けてもよい。例えば、有機トランジスタ10Aにおける半導体層4上に直接又は他の層を介して、有機薄膜トランジスタ10Aを保護するための薄膜トランジスタ保護層を形成してもよい。これにより、有機トランジスタの電気的特性に対する湿度等の外気の影響を小さくして、有機トランジスタの電気的特性を安定化させることができる。また、有機トランジスタのオン/オフ比等の電気的特性を向上させることができる。
【0066】
上記薄膜トランジスタ保護層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂;酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等の無機酸化物;及び窒化物等の誘電体等が好ましく、酸素の透過率、水分の透過率、及び吸水率の小さな樹脂(ポリマー)がより好ましい。上記薄膜トランジスタ保護層を構成する材料として、有機ELディスプレイ用に開発されているガスバリア性保護材料も使用できる。薄膜トランジスタ保護層の厚みは、その目的に応じて任意の厚みを採用できるが、通常100nm〜1mmである。
【0067】
次に、本発明の有機半導体デバイスの製造方法について詳細に説明する。
【0068】
本発明の有機半導体デバイスの製造方法では、例えば、絶縁層および電極がその上に形成された基材上に有機半導体材料を配置し、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより有機半導体デバイスを製造する。
【0069】
本発明の有機半導体デバイスの製造方法は、上記有機半導体デバイスが、互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配設された有機半導体材料からなる有機半導体薄膜を含む半導体層と、前記半導体層に対向するように配設されたゲート電極と、前記半導体層と上記ゲート電極との間に配設された絶縁層とを基材上に備える有機電界効果トランジスタである有機薄膜トランジスタである場合、本発明の有機半導体薄膜の形成方法で有機半導体薄膜を形成させる前に、前記基材上に有機半導体材料を配置する配置工程を含むことが好ましい。この製造方法では、
図7(a)に示す有機薄膜トランジスタ10Aや、
図7(b)に示す有機薄膜トランジスタ10Bを製造することができる。
【0070】
前記配置工程では、前記ソース電極及びドレイン電極がその上に配設された前記基材に対し、有機半導体材料を固体状態又は溶融状態で前記基材上における、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域またはその近傍に配置してもよく、前記ソース電極及びドレイン電極がその上に配設された前記基材に対し、有機半導体材料を含有する溶液を前記基材上に塗布した後、乾燥させることにより前記基材上における、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域またはその近傍に有機半導体材料を配置してもよい。
【0071】
ここでは、2種類の基板を用いた
図7(b)の態様例の有機薄膜トランジスタ10Bに基づき、本発明の有機半導体デバイスの製造方法を詳細に説明する。1つ目の基板(「ゲート基板9」と呼ぶ)は、基材1上にゲート電極2及びゲート絶縁層3を積層したものである。他方の基板(ソース・ドレイン基板8と呼ぶ)は、基材1’上にゲート絶縁層3’及びソース電極5と、ドレイン電極6とを積層したものである。また、以下の説明では、半導体層4が有機半導体薄膜のみからなる場合について説明する。
【0072】
(ゲート基板9の作成)
[基材1及び1’の処理]
ゲート基板9は、上記でも説明した基材1上にゲート電極2及びゲート絶縁層3を設けることで作製される。基材1の表面には、基材1上に積層する各層の濡れ性(積層のしやすさ)を向上させるために表面処理(洗浄処理)を行ってもよい。表面処理の例としては、塩酸、硫酸、酢酸等による酸処理;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理;オゾン処理;フッ素化処理;酸素やアルゴン等のプラズマによるプラズマ処理;ラングミュア・ブロジェット膜の形成処理;コロナ放電などの電気的処理等が挙げられる。
【0073】
[ゲート電極2の形成]
上記の導電性材料(電極材料)を用いて基材1上にゲート電極2を形成する。ゲート電極2を形成する方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げられる。導電性材料の成膜時又は成膜後、導電性材料が所望の形状になるよう必要に応じてパターニングを行うのが好ましい。パターニングの方法として、各種の方法を使用できるが、例えばフォトレジストのパターニングとエッチングとを組み合わせたフォトリソグラフィー法等が挙げられる。また、パターニングの方法として、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィー法、及びこれら手法を複数組み合わせた手法を利用することも可能である。印刷法により形成された電極は、所望の導電率に達するまで熱、光等のエネルギーを与えることにより、焼成される。
【0074】
[ゲート絶縁層3の形成]
次に、上記の絶縁性材料を用いて、基材1上に形成されたゲート電極2上にゲート絶縁層3を形成する(
図7(b)参照)。ゲート絶縁層3の形成方法としては、例えば、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、キャスト法、バーコート法、ブレードコーティング法などの塗布法;スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等の印刷法;真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD(化学気相成長)法などのドライプロセス法、等が挙げられる。ゲート絶縁層3には表面処理を行ってもよい。ゲート絶縁層3に表面処理を行うことで、その後に成膜される半導体層4とゲート絶縁層3との界面部分における分子配向や結晶性が制御され易くなると共に、基材1やゲート絶縁層3上のトラップ部位が低減されることにより、有機薄膜トランジスタ10Bのキャリア移動度等の特性が改良されるものと考えられる。トラップ部位とは、未処理の基材1やゲート絶縁層3中に存在する例えば水酸基のような官能基をさし、このような官能基が基材1やゲート絶縁層3中に存在すると、電子が該官能基に引き寄せられ、この結果として有機薄膜トランジスタ10Bのキャリア移動度が低下する。従って、基材1やゲート絶縁層3中のトラップ部位を低減することも、有機薄膜トランジスタ10Bのキャリア移動度等の特性の改良には有効な場合がある。
【0075】
(ソース・ドレイン基板8の作成)
[基材1’の処理]
ゲート基板9は、上記でも説明した基材1’上にゲート絶縁層3’、ソース電極5、及びドレイン電極6を設けることで作製される。基材1’の表面には、基材1の表面と同様、上述した表面処理を行ってもよい。
【0076】
[ゲート絶縁層3’の形成]
次に、上記の絶縁性材料を用いて、基材1’上にゲート絶縁層3’を形成する(
図7(b)参照)。ゲート絶縁層3’の形成方法としては、ゲート絶縁層3の形成方法と同様の方法を用いることができる。ゲート絶縁層3’にも、ゲート絶縁層3と同様、表面処理を行ってもよい。
【0077】
[ソース電極5及びドレイン電極6の形成]
次に、上記の導電性材料を用いてゲート絶縁層3’上にソース電極5及びドレイン電極6を形成する。ソース電極5及びドレイン電極6の材料は、同じでも、異なっても良い。ソース電極5及びドレイン電極6を形成する方法としては、ゲート電極2の形成方法と同様の方法を用いることができる。ソース電極5及びドレイン電極6を構成する導電性材料には、ソース電極5及びドレイン電極6の接触抵抗を低下させるために、酸化モリブデンなどをドーピングしてもよい。ソース電極5及びドレイン電極6が金属で構成される場合には、その金属にチオールなどによる処理をしても良い。酸化モリブデンやチオールなどは、導電性材料の成膜方法と同様の方法によってソース電極5及び/またはドレイン電極6上に積層することができる。
【0078】
[ソース・ドレイン基板8上への有機半導体材料の配置]
次に、上述の方法で作成したソース・ドレイン基板8上に有機半導体材料を配置する。有機半導体材料をバルク粉などの固体状態又は溶融状態で無溶媒で直接、ソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域またはその近傍に配置してもよく、有機半導体材料を含有する溶液をソース・ドレイン基板8上に塗布又は印刷した後、乾燥させるプロセス(溶液プロセス)によりソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域またはその近傍に有機半導体材料を配置してもよい。溶液プロセスとしては、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの印刷法、又はドロップキャスト法などの塗布法を用いることができる。他の溶液プロセスでも有機半導体材料をソース・ドレイン基板8上に配置することは可能であるが、有機半導体材料の利用効率を高めるためには必要な量の有機半導体材料を必要な場所に配置できる方法が好ましい。以下、有機半導体材料の配置方法について詳細に説明する。
【0079】
まず、固体状態又は溶融状態の有機半導体材料を直接、ソース・ドレイン基板8上に配置する場合は、バルク状の固体粉末の有機半導体材料あるいは微細粉末化した有機半導体材料を直接、ソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域またはその近傍に配置又は散布するか、あるいは融点以上の温度まで加熱して溶融状態とした有機半導体材料をスタンプやディスペンサーなどの種々の手段によってソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域またはその近傍に塗布することができる。簡易的に、十分に熱した金属棒の先端に有機半導体材料をとって溶融状態とし、金属棒の先端の溶融状態の半導体材料をそのままソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域またはその近傍に塗布してもよい。
【0080】
次に、有機半導体材料を溶液プロセスによってソース・ドレイン基板8上に配置する方法について説明する。溶液プロセスとは、溶剤可溶性を有する有機半導体材料、例えば前記一般式(1)で表される化合物などを予め有機溶剤に溶解し、得られた有機半導体材料の溶液を塗布又は印刷した後に乾燥して有機半導体材料を所望の場所へ配置する方法を言う。溶液の塗布又は印刷と乾燥とにより有機半導体材料を配置する方法、すなわち溶液プロセスは、有機薄膜トランジスタ10B製造時の環境を真空や高温状態にする必要が無く、大面積の有機薄膜トランジスタ10Bを低コストで製造できるため、工業的にも有利である。また、本発明の有機半導体デバイスの製造方法でソース・ドレイン基板8上への有機半導体材料の配置に溶液プロセスを用いる場合、超音波振動付与の終了後の有機半導体材料が冷却される過程で有機半導体材料の結晶が再配向して結晶の方位が均一化されると考えられるので、有機半導体材料が溶液から結晶化する段階で結晶配向がランダムであってもよく、溶液の塗布又は印刷の後には、溶液中に含まれる有機溶剤を蒸発させるだけでよい。そのため、溶液の塗布又は印刷の後に、結晶の方位を均一化するために長時間のベークによる結晶配向制御や後処理による結晶の再配向といったプロセスを実施する必要がない。
【0081】
有機半導体材料は、ソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域(チャネル)上またはその領域(チャネル)外におけるその領域(チャネル)近傍に配置することができる。ドロップキャスト法やインクジェット法などのような、溶液を塗布又は印刷する方法のみで有機半導体層を形成する場合では、ソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域(チャネル)を有機半導体層で覆うために有機半導体材料のインクジェット着弾精度などの位置精度を考慮する必要がある。これに対し、本方法によれば、有機半導体材料を配置する工程においてソース・ドレイン基板8上におけるソース電極5とドレイン電極6との間の領域(チャネル)を有機半導体材料で完全に覆う必要がなく、塗布又は印刷に使用する装置に高い位置精度を求める必要がない。有機半導体材料を配置する位置は、有機半導体材料の量にもよるが、良好な有機半導体薄膜を得るためには、チャネル外のチャネル近傍に有機半導体材料を配置する方が好ましく、通常、チャネル外におけるソース電極5から5mm以下の範囲内に有機半導体材料を配置することが好ましい。
【0082】
[半導体層4の形成及び有機薄膜トランジスタ10Bの作成]
次に、ゲート基板9を、有機半導体材料がその上に配置されたソース・ドレイン基板8に重ね合わせる。このようにして得られたソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に有機半導体材料を挟持したものを使用し、有機半導体材料に対してゲート基板9を介して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより、エネルギーを有機半導体材料に与える。これにより、有機半導体材料が薄膜化されて有機半導体薄膜からなる半導体層4がチャネルとして形成されると同時に、ソース・ドレイン基板8とゲート基板9とが圧着され、有機薄膜トランジスタ10Bが完成される。加圧及び超音波振動付与の条件として、前述の有機半導体薄膜の形成方法と同様の条件を用いて有機薄膜トランジスタ10Bが製造される。有機半導体材料の性質に応じて、発振時間(溶着時間)、振幅、加圧力等の加圧及び超音波振動付与の条件が最適化される。必要に応じて基材1を載せるステージ(加熱ステージ26)を伝導加熱手段(ヒーター26aなど)で加熱することにより基材1を(有機半導体材料を)伝導加熱(ステージ加熱)してもよい。本発明の有機半導体薄膜の形成方法を用いた場合、従来のような長時間のベーク工程を必要とせず、加圧及び超音波振動付与の条件を最適化すれば、1秒以下ときわめて短い時間で有機半導体薄膜を形成できる。
【0083】
次に、有機半導体薄膜からなる半導体層4を形成する方法の一実施形態として、
図1に示す超音波溶着機20を用いて半導体層4を形成する方法を
図2〜
図6に基づいて説明する。
まず、
図2に示すように、ソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に有機半導体材料7を挟持したものを超音波溶着機20の加熱ステージ26上に設置する。次に、
図3に示すように、ホーン24を降下させて圧力を被処理物に対して(すなわち有機半導体材料7に対して)加える。次に、
図4に示すように、圧力を被処理物に対して(すなわち有機半導体材料7に対して)加えた状態のままで、ホーン24からゲート基板9を介して有機半導体材料7に超音波振動を付与することにより有機半導体材料7を加熱する(有機半導体材料7にエネルギーを与える)。これにより、有機半導体材料7の厚みが薄くなる。次に、
図5に示すように、圧力を被処理物に対して(すなわち有機半導体材料7に対して)加えた状態のままで、有機半導体材料7に対する超音波振動の付与を終了して有機半導体材料7を冷却する。これにより、元の有機半導体材料7の厚みより薄い有機半導体材料の薄膜(有機半導体薄膜)が半導体層4として形成される。最後に、
図6に示すように、ホーン24を上昇させて圧力の印加を終了することにより、有機薄膜トランジスタ10Bを完成させる。
【0084】
一般に、有機薄膜トランジスタの動作特性は、半導体層のキャリア移動度及び電導度、絶縁層の静電容量、素子構成(ソース電極とドレイン電極との間の距離、ソース電極及びドレイン電極の幅、絶縁層の厚み等)などにより決まる。高いキャリア移動度を有する、有機半導体材料からなる半導体層4を得るためには、有機半導体材料が一定方向に配向秩序を持つ(結晶の方位が均一化して、より多くの結晶が一定方向に配向する)ことが求められる。本発明の有機半導体デバイスの製造方法では、超音波振動付与の終了後の有機半導体材料が冷却される過程で有機半導体材料の結晶が再配向して、一定方向に配向秩序を持つ有機半導体材料からなる半導体層4を得ることができる。また、2つの基材1及び1’と2つのゲート絶縁層3及び3’とを有する有機薄膜トランジスタ10Bにおいて、基材1及び1’に同一の材料を用い、かつゲート絶縁層3及び3’に同一の材料を用いると、有機薄膜トランジスタ10Bの構造を半導体層4を中心として対称のサンドイッチ構造とすることができる。その結果、異なる材質による歪みなどの影響を受けにくく、高い曲げ耐性を有する有機薄膜トランジスタ10Bを得ることが可能である。
【0085】
さらには、本発明の有機半導体デバイスの製造方法は、短時間の処理で有機半導体薄膜を形成できるので、真空蒸着プロセスにより有機半導体薄膜を形成する従来の製造方法や、他の塗布法又は印刷法(溶液プロセス)により有機半導体薄膜を形成する従来の製造方法と比べて、スループットが高く、非常に低コストで大面積ディスプレイ用途の有機半導体デバイスの製造にも適用できる。また、本発明の有機半導体デバイスの製造方法は、短時間の処理で有機半導体薄膜を形成できることから、シート・トゥ・シート方式やロール・トゥ・ロール方式の製造方法を実現することも可能である。
【0086】
本発明の有機半導体デバイスは、ディスプレイのアクティブマトリクスのスイッチング素子等として利用することができる。ディスプレイとしては、例えば液晶ディスプレイ、高分子分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、エレクトロクロミック型ディスプレイ、粒子回転型ディスプレイ等が挙げられる。また、本発明の有機半導体デバイスは、メモリー回路の素子、信号ドライバー回路の素子、信号処理回路の素子などの、デジタル素子やアナログ素子としても利用でき、これら素子を組み合わせることによりIC(集積回路)カードやICタグの作製が可能である。更に、本発明の有機半導体デバイスは、化学物質等の外部刺激によりその特性に変化を起こすことができるので、FET(電界効果トランジスタ)センサとしての利用も期待できる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
有機半導体材料として下記式(2)
【化2】
で表される化合物(以下、「化合物(2)」と呼ぶ)(2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)の固体(融点:127℃)を、熱した金属棒の先端に載置して溶融状態とし、金属棒の先端の溶融状態の半導体材料を厚さ12μmのポリイミドフィルム(製品名「ポミラン(登録商標)N」、荒川化学工業株式会社製、ポリイミドマトリックス中に平均粒子径5nmのナノシリカ粒子が分散した構造を持つシリカハイブリッドポリイミドフィルム)上に配置した。このときの半導体材料の厚みは数μmであった。その後、このポリイミドフィルム上に化合物(2)を介してもう1枚の同じポリイミドフィルムを重ねた。
【0089】
このようにして得られた2枚のポリイミドフィルムの間に化合物(2)を挟持したものを、
図2に示すソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に有機半導体材料7を挟持したものに代えて被処理物として使用する以外は、
図2〜6に示す製造方法と同様にして有機半導体薄膜を形成した。
【0090】
すなわち、まず、
図2と同様にして、加熱ステージ26を有した
図1の超音波溶着機20の一例である市販の超音波溶着機(製品名「ΣP−30B」のプレス本体と製品名「ΣG−620B」の発振器とで構成されるもの、精電舎電子工業株式会社製、最大振幅(100%振幅)25μm、振動数(周波数)28.5kHz、ホーン形状:四角柱状(面取り)、ホーン表面の大きさ(処理面積):64mm
2)における加熱ステージ26上に被処理物(2枚のポリイミドフィルムの間に化合物(2)を挟持したもの)を設置した。
【0091】
次に、加熱ステージ26の温度(表面温度)が100℃となるように加熱ステージ26をヒーター26aで加熱(化合物(2)を伝導加熱するための加熱)し、
図3と同様にしてホーン24を降下させて0.15MPaの圧力を被処理物に対して(すなわち化合物(2)に対して)加えた。その後、
図4と同様にして、0.15MPaの圧力を被処理物に対して(すなわち化合物(2)に対して)加えた状態のままで、超音波振動の振幅25%、30%、又は35%、超音波振動の発振時間1秒の条件で超音波溶着機を超音波発振させることにより化合物(2)に超音波振動を付与して化合物(2)を加熱した。
【0092】
次に、
図5と同様にして、圧力を被処理物に対して(すなわち有機半導体材料に対して)加えた状態のままで、超音波溶着機の超音波発振を終了して有機半導体材料を冷却することにより、元の化合物(2)の厚みより薄い化合物(2)の薄膜(有機半導体薄膜)を半導体層4として形成した。最後に、
図6と同様にして、ホーン24を上昇させて圧力の印加を終了し、有機半導体薄膜を得た。
【0093】
この時の有機半導体材料(化合物(2))の温度の変化は
図8に示した通りであった。この結果から、超音波振動の振幅の変化により有機半導体材料の温度の制御が可能であるとともに、超音波発振の終了とともに速やかに有機半導体材料の温度が低下することを確認した。
【0094】
これらから、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより有機半導体材料の薄膜化、すなわち有機半導体薄膜の形成が可能であることを確認した。表1に、各振幅条件での有機半導体材料の最高到達温度と、有機半導体材料の薄膜化の有無とを記載した。表1の結果から分かるように、何れの条件においても、有機半導体材料が薄膜化され、数十nmの有機半導体薄膜を形成することができた。
【0095】
【表1】
【0096】
なお、有機半導体材料の温度は、以下の方法で測定した。すなわち、ポリイミドフィルム上に有機半導体材料(化合物(2))に代えてシート形温度センサを配置したこと以外は、上述した有機半導体薄膜の形成と同様の処理を行い、シート形温度センサによりシート形温度センサの温度(2枚のポリイミドフィルム間の部分の温度)の変化を測定した。
【0097】
[実施例2]
本実施例では、
図7(b)に示す有機薄膜トランジスタ10Bの一例を作製した。まず、基材1’としての厚さ12μmのポリイミドフィルム(製品名「ポミラン(登録商標)N」)上にゲート絶縁層3’としての「パリレン(登録商標)C」(日本パリレン合同会社製)を900nmの厚みで成膜し、そのパリレン膜の上部にチャネル長20μm、チャネル幅5mmのソース電極5及びドレイン電極6として金電極を形成して、ソース・ドレイン基板8を得た。一方、基材1としての厚さ12μmのポリイミドフィルム(製品名「ポミラン(登録商標)N」)上にゲート電極2として金電極を形成し、その金電極の上部にゲート絶縁層3としてのパリレンを900nmの厚みで成膜して、ゲート基板9を得た。
【0098】
次に、
図9に示すように、ソース・ドレイン基板8上における、ソース電極5及びドレイン電極6(並びにそれらの間の領域)からソース・ドレイン基板8の端側(
図9における右端側)へ約200μm離れた位置に、有機半導体材料としての化合物(2)の固体(融点:127℃)を配置した。次に、化合物(2)の固体がその上に配置されたソース・ドレイン基板8上にゲート基板9を重ねた。
【0099】
次に、このようにして得られたソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に化合物(2)を挟持したものを、実施例1における2枚のポリイミドフィルムの間に化合物(2)を挟持したものに代えて被処理物として使用し、加熱ステージの温度を95℃に変更し、超音波振動の振幅を45%に変更する以外は、実施例1における有機半導体薄膜の形成方法と同様にして、化合物(2)からなる有機半導体薄膜を形成した。この際、有機半導体材料の最高到達温度は230℃であった。
【0100】
図9〜
図11は、実施例2における有機半導体材料の変化を偏光顕微鏡で観察した結果を示すものである。
図9は、ソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に有機半導体材料(化合物(2))を挟持したものを加熱ステージ26上に配置した時点における有機半導体材料の様子を示すものである。
図10は、有機半導体材料を100℃の加熱ステージ26で加熱した後における有機半導体材料の様子を示すものである。
図11は、超音波振動の付与及び圧力の付与を終了した後に超音波溶着機から取り出した試料(ソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に有機半導体薄膜が形成されたもの)における有機半導体材料の様子を偏光顕微鏡で確認した結果を示すものである。
図11に示すように、有機半導体薄膜からなる半導体層4がソース電極5及びドレイン電極6(中央の2本の縦線)の間に形成されており、有機薄膜トランジスタ10Bを作製できたことが分かった。
【0101】
次に、実施例2にて得られた有機薄膜トランジスタ10Bの半導体特性を測定した。有機薄膜トランジスタ10Bのゲート電圧の印加およびゲート電流の測定を、KEITHLEY 2635A SYSTEM Source Meterを使用して行い、有機薄膜トランジスタ10Bのソース・ドレイン電圧の印加およびドレイン電流の測定を、KEITHLEY 6430 SUBFEMTO AMP REMOTE Source Meterを使用して行った。有機薄膜トランジスタ10Bのドレイン電圧を−30Vとし、有機薄膜トランジスタ10Bのゲート電圧Vgを30〜−30Vに変化させた条件で、有機薄膜トランジスタ10Bの電流−電圧特性を測定した。得られた有機薄膜トランジスタ10Bの電流−電圧特性から有機薄膜トランジスタ10Bの移動度及び閾値電圧を算出した。算出された移動度は0.038cm
2/Vs、算出された閾値電圧は1.2Vであり、半導体層4がp型半導体の特性を持つ有機薄膜トランジスタ10Bが得られた。
【0102】
なお、ゲート絶縁層3及び3’に使用した厚み900nmのパリレン膜の、加圧及び超音波振動付与に対する耐性を確認するために、本実施例における有機半導体薄膜の形成時と同じ条件で超音波溶着機による加圧及び超音波振動付与の処理をパリレン膜に対して行った。その結果、処理前後で漏れ電流密度に実質的な変化は見られず、超音波溶着機による加圧及び超音波振動付与によってパリレン膜の絶縁特性が劣化しないことが確認された。
【0103】
[実施例3]
実施例2のソース電極5及びドレイン電極6に対して、加圧及び超音波振動付与の前にペンタフルオロチオフェノールを用いて電極処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして、有機薄膜トランジスタ10Bを得た。本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの移動度及び閾値電圧を実施例2における測定方法と同様にして測定し、本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの移動度及び閾値電圧を算出した。移動度及び閾値電圧の算出結果を表2に示す。また、本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの半導体層4はp型半導体の特性を示した。
【0104】
[実施例4]
実施例3のソース電極5及びドレイン電極6のチャネル長を100μmに変更したこと以外は実施例3と同様にして、有機薄膜トランジスタ10Bを得た。本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの半導体特性を実施例2における測定方法と同様にして測定し、本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの移動度及び閾値電圧を算出した。移動度及び閾値電圧の算出結果を表2に示す。また、本実施例で得られた有機薄膜トランジスタ10Bの半導体層4はp型半導体の特性を示した。
【0105】
【表2】
【0106】
[実施例5]
インクジェット装置(富士フイルム株式会社製、型番「DMP−2831」)を用いて厚さ12μmのポリイミドフィルム(製品名「ポミラン(登録商標)N」)上に化合物(2)の2重量%テトラヒドロナフタレン溶液からなる有機半導体材料を印刷し、溶液を自然乾燥させて溶剤(テトラヒドロナフタレン)を除去することで、有機半導体材料をポリイミドフィルム上に配置した。
図12に示すように印刷直後の有機半導体層(有機半導体材料の層)の形状は凹凸が激しく、有機半導体層の膜厚は最大で450nmであった。その後、このポリイミドフィルム上に有機半導体材料(化合物(2))を介してもう1枚の同じポリイミドフィルムを重ねた。
【0107】
次に、加熱ステージ26の温度(表面温度)100℃、被処理物(有機半導体材料)に対する圧力0.15MPa、超音波振動の振幅50%、超音波振動の発振時間1秒の条件で実施例1と同様にして超音波溶着機を超音波発振させた。有機半導体材料(化合物(2))の最高到達温度は180℃であり、超音波溶着処理後は
図13に示すような有機半導体薄膜を形成できていることが確認できた。
【0108】
[実施例6]
実施例2で使用したソース・ドレイン基板8のソース電極5とドレイン電極6との間に実施例5で使用したインクジェット装置を用いて化合物(2)の2重量%テトラヒドロナフタレン溶液からなる有機半導体材料を印刷し、溶液を自然乾燥させて溶剤(テトラヒドロナフタレン)を除去した。有機半導体材料の印刷によりソース電極5に沿って直線状のパターンを描画したが、溶液の乾燥に伴い、チャネル内で有機半導体層(有機半導体材料の層)が分断し、不連続の有機半導体層となった(
図14)。その後、このソース・ドレイン基板8上に有機半導体材料(化合物(2))を介して実施例2で使用したゲート基板9を重ねて有機半導体材料をソース・ドレイン基板8とゲート基板9との間に挟持し、実施例5と同様の条件で超音波溶着機を超音波発振させ、有機半導体薄膜を得た。これにより、有機薄膜トランジスタ10Bが得られた。得られた有機半導体薄膜の偏光顕微鏡像を
図15に示した。この像から、超音波溶着処理により均一なチャネルを有する有機半導体薄膜が得られたことを確認した。
【0109】
[比較例1]
まず、実施例2と同様にしてソース・ドレイン基板8及びゲート基板9の間に化合物(2)を挟持したものを被処理物として得た。次に、非特許文献(Physica Status Solidi A, Volume 210, Issue 7, p.1353−1357(2013))に倣って、被処理物に対し、最高到達温度125℃、圧力1.6MPaの条件で熱プレス法(上記非特許文献のFig.1(b))により化合物(2)を薄膜化した。薄膜化にかかる時間は2分間であった。薄膜化の後、冷却速度1.5℃/minで被処理物を冷却することで、実施例2と同様の(ただし半導体特性は実施例2と異なる)比較用の有機薄膜トランジスタを得ることができた。
【0110】
得られた比較用の有機薄膜トランジスタの半導体特性を実施例2と同様に測定した結果、比較用の有機薄膜トランジスタの移動度は0.052cm
2/Vs、閾値電圧は−15.8Vであり、実施例2の有機薄膜トランジスタ10Bの半導体特性とほぼ同等であった。しかしながら、本比較例では、薄膜化にかかる時間(タクトタイム)は、前述の通りに2分間であり、実施例2における薄膜化にかかる時間(1秒間)に比べて大きく劣っており、薄膜化に必要な圧力も、前述の通りに1.6MPaであり、実施例2における薄膜化に必要な圧力(0.15MPa)に比べて大きく劣っていた。
【0111】
各実施例に記載した結果より、有機半導体材料に対して圧力を加えながら超音波振動を付与することにより有機半導体材料を薄膜化する方法で有機半導体薄膜を形成できることだけでなく、この方法を用いて作製した有機半導体デバイスは高い半導体特性を有することが示された。また、有機半導体薄膜を形成する際には、真空蒸着法や、結晶成長のための煩雑で精緻なプロセス制御を行う必要がなく、極めて短時間で有機半導体薄膜を形成可能であることが確認された。したがって、各実施例の有機半導体デバイスの製造方法は、高スループットの製造方法であることが確認された。