【実施例】
【0076】
実施例1:患者および方法
(a)被験者
この試験では、被験者は、標準的治療に対して難治性である、またはそれに対する標準的治療が存在しない、進行した悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、または結腸直腸がん(CRC)がある、18才以上であることが要求された。試験の用量拡大期における被験者は、標準的治療に対して難治性である、またはそれに対して標準的治療が存在しない、進行した悪性黒色腫、NSCLC、またはCRCがある成人である。用量拡大期の追加的な被験者は、NSCLC(扁平上皮がん)、肝細胞がん(HCC)、三種陰性乳がん(TNBC)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、または頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)を有した。がんは、組織学的または細胞学的に、確認されなくてはならない。被験者は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)指標が0または1であり、ならびに適切な臓器および骨髄機能を有することが要求される。適切な臓器および骨髄機能は、次のように定義された:ヘモグロビン≧9g/dL;絶対好中球数≧1,500/mm
3;リンパ球数≧800/mm
3;血小板数≧100,000/mm
3;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×施設正常上限(ULN);ジルベール病が実証されているまたは疑われる被験者(この場合は、ビリルビン≦5×ULNでなくてはならない)を除き、ビリルビン≦1.5×ULN;コッククロフト・ゴールト式による、またはクレアチニンクリアランス測定のための24時間蓄尿による判定で、クレアチニンクリアランス≧50mL/分。
【0077】
被験者は、活動性の自己免疫疾患、以前の抗PD−1または抗PD−L1療法、または以前の重篤なまたは持続性の免疫関連有害事象(irAE)があれば、参加できない。被験者は、がん療法のための任意の併行する化学療法、免疫治療法、生物学的またはホルモン療法を許容されないが、併行する非がん関連病状(例えば、糖尿病のためのインスリン、およびホルモン代替療法)のためのホルモンの使用は、許容される。
【0078】
(b)試験デザイン
試験は、複数用量のMEDI4736が静脈内(IV)点滴を通じてがん患者に投与される、多施設、非盲検、第一相、ファースト・イン・ヒューマン、用量漸増および用量拡大試験である。MEDI4736は、0.1、0.3、1、3、10、および15mg/kg用量で投与された。試験の流れ図は、
図1に示される。投薬初日が1日目と見なされ、疾患評価は、6、12、および16週間後、次に8週間毎に行われる。
【0079】
A用量漸増は、0.1、0.3、1、3、および10mg/kg用量での、異なるコホートへの2週間毎の(Q2W)(+/−2日間)投与によって実施した。
【0080】
15mg/kgで3週間毎の(Q3W)投与によって、別の用量漸増を実施した。次に、用量漸増で同定された最大耐容量(MTD)または最適生物学的用量(OBD)を使用して、拡大期を実施する。
【0081】
15mg/kg Q2Wの用量もまた、実施してもよい。
【0082】
用量漸増
用量漸増期では、MEDI4736の第1の用量が、4時間かけて投与される0.1mg/kgの点滴として、第1のコホートの全被験者に投与された。第1のコホートのための後続の点滴(第2および第3の用量など)は、60分間かけてQ2Wで投与された。後続のコホートのための用量は、60分間のIV点滴としてQ2Wで投与される、0.3、1.0、3.0、または10mg/kgであった。初期用量漸増のための用量コホート概要を下の表1に提供する。15mg/kgの追加用量もまた、Q3Wで投与された。
【0083】
【表1】
【0084】
Q2W用量漸増レジメンでの全てのコホートの完了時に、Q3Wレジメンを使用して別の用量漸増を開始して、利用できる安全性、PK/薬物動力学、および臨床データに基づいて、最大15mg/kgでQ3Wの用量に進める。Q3W漸増における開始用量は、最適生物学的用量(OBD)(またはOBDが同定されない場合は、試験された最大用量)と、同等の投与速度(平均mg/kg/週)である。
【0085】
用量漸増期における被験者は、確認されたPD、代案のがん治療開始、許容できない毒性、またはその他の治療を中断する理由が発生するまで、治療を継続する。疾患制御(DC)の達成が確認された被験者では、DCが確認された日から6ヶ月間過ぎるまで、治療を継続してもよい。DCは、3ヶ月以上持続する安定性疾患(SD)、部分寛解(PR)、および完全寛解(CR)を含む。
【0086】
用量拡大
Q2WおよびQ3Wでの用量漸増の完了に続いて、拡大期のための投与計画が選択される。用量拡大コホートに登録された被験者は、最大耐容量(MTD)、最適生物学的用量(OBD)、またはMTDまたはOBDが判定されない場合は用量漸増中に評価された最大用量で、選択された用量および頻度でIV点滴として投与されるMEDI4736を投与される。疾患制御(DC)を達成した被験者は、治療を継続して、次に維持期間に移行する。維持期間中の任意の時点で、進行性疾患(PD)の形跡があれば、MEDI4736は、PD確認、またはMEDI4736を中断するその他の理由があるまで、IV点滴として再投与される。
【0087】
維持期間
漸増または拡大相において疾患制御(DC)を達成した被験者は、DCが確認された日から6ヶ月間過ぎるまで、治療が継続され得る維持期間に移行する。
【0088】
維持期間では、MEDI4736は、6ヶ月間にわたり、2ヶ月毎のIV点滴として投与される。被験者の理学的検査は、2、4、および6ヶ月目に実施される。6ヶ月にわたる2ヶ月毎の投薬後、MEDI4736は停止される。進行性疾患(PD)の形跡があれば、MEDI4736は、最大2年間にわたり、PD確認、代案のがん治療開始、許容不能な毒性、同意の撤回、またはその他の治療中断理由があるまで、Q2WまたはQ3WスケジュールでIV点滴として再投与される。
【0089】
(c)薬動力学的、抗腫瘍、および安全性アセスメント
血清中のMEDI4736濃度の測定は、検証済みの免疫測定法を使用して、Q2W用量漸増相において実施された。薬物動態評価のための、ならびに可溶性B7−H1(sB7−H1)濃度のための血液サンプルは、以下のスケジュールに従って、Q2W用量漸増相において収集された:
●初回投与:1日目投与前、点滴終了時(EOI)、およびEOIの3時間後、および2、3、5、および10日目(+/−1日)。点滴開始の2時間後における追加的なサンプルは、最初の試験において、被験者の最初の4時間の点滴中に採取された。
●2回目投与:投与前、EOI、EOIの3時間後、および8日目。
●引き続く偶数回投与のみ:投与前およびEOI。
●中断または最終投与に際して、薬物動態(PK)サンプルは、最終投与の14日、30日、2および3ヶ月後に採取すべきである。
【0090】
Q3W投薬では、血液サンプルが、初回投与の15日後にもまた収集されたことを除いて、薬物動態アセスメントは、Q2W投薬と同一スケジュールで実施される。用量拡大相では、薬物動態アセスメントは、2ヶ月毎に(1日目投与前およびEOI)に実施される。さらに、投与停止または最終投与に際して、薬物動態(PK)サンプルは、最終投与の14日、30日、2ヶ月、および3ヶ月後に採取される。維持相においては、sB7−H1の薬物動態アセスメントおよび評価は、14および30日目(+/−3日)に、そして2、4、および6ヶ月目(+/−1週間)に実施される。
【0091】
抗薬剤抗体(ADA)の存在は、1日目(点滴前)、およびQ2W用量漸増相における2回目投与に続く全ての投与時に、評価される(そして評価され続ける)。ADAは、Q3W用量漸増および用量拡大相において、同一スケジュールに従って評価される。維持相においては、ADAが6ヶ月目(+/−1週間)に評価される。
【0092】
腫瘍アセスメントは、スクリーニング中(−28日から−1日まで)、およびQ2W用量漸増相の7週目に実施された(そして実施され続けた)。腫瘍アセスメントは、Q3W用量漸増相および用量拡大相において、同じタイミングで実施される。腫瘍アセスメントは、以下の評価を含み得る:理学的検査(当てはまる場合は皮膚病変の写真および測定を伴う)、胸部、腹部、および骨盤のCTまたはMRIスキャン、および脳のCTまたはMRIスキャン。脳のコンピュータ断層撮影またはMRIスキャンは、スクリーニング時のみ、または被験者が神経学的に症候性である場合に、実施される。維持相においては、腫瘍アセスメントが、2、4、および6ヶ月目(+/−1週間)に実施される。
【0093】
拡大期においては、腫瘍生検もまた、スクリーニング中(−28日から−1日まで)および7週目に実施される。
【0094】
抗腫瘍活性のアセスメントは、免疫関連客観的奏効率(ORR)、免疫関連疾患制御率(DCR)、免疫関連奏効持続期間(DR)、免疫関連無進行生存(PFS)、および全生存(OS)に基づく。腫瘍応答の判定には、免疫関連応答基準(Wolchok et al.,Clin Cancer Res.15:7412−20(2009))が使用された。
【0095】
ORRは、確認された完全寛解(CR)または確認された部分寛解(PR)がある被験者の比率と定義される。確認された応答は、応答の最初の文書化の≧4週間後における反復画像診断時に持続する応答である。DCRは、CR、PRまたは安定性疾患(SD)がある被験者の比率と定義される(SDを達成した被験者は、SDを≧3ヶ月にわたって維持すればDCRに包含される)。ORRおよびDCRの95%信頼区間(CI)は、直接確率法を使用して推定される。奏効持続期間(DR)は、客観的奏効の最初の文書化から、最初の文書化された疾患進行までの長さである。無進行生存(PFS)は、MEDI4736による治療開始から、確認された免疫関連疾患進行まで、または任意の原因に起因する死亡まで、の最初に発生した方の文書化まで測定される。全生存(OS)は、MEDI4736による治療開始から死亡までの期間である。
【0096】
有害事象は、MEDI4736の投与に続いてモニターされる。その他のアセスメントとしては、理学的検査、生命徴候モニタリング、および実験室測定が挙げられる。
【0097】
実施例2:結果
(a)登録者およびベースライン特性
Q2W用量漸増相において、0.1、0.3、または1mg/kgのMEDI4736を投与された被験者のベースライン特性は、下の表2に提供される。さらに、245人の患者は10mg/kg Q2Wで治療され、6人の患者は15mg/kg Q3Wで治療された。
【0098】
【表2】
【0099】
Q2WおよびQ3W用量漸増相において0.1、0.3、1、3、10、または15mg/kgのMEDI4736を投与された被験者のベースライン特性は、
図3に提供される。
【0100】
(b)薬物動態
Q2W用量漸増相において0.1および0.3mg/kgのMEDI4736の投与から得られた薬物動態データは、
図4に要約される。MEDI4736は、より低い用量では非線形PKを示したが、≧1.0mg/kg Q2Wの用量では線形PKを示した。
図5を参照されたい。MEDI4736はまた、MEDI4736とB7−H1の結合に一致する、標的結合の用量依存的増大を示した(
図6)。pKデータを使用した計算および可溶性B7−H1の測定に基づいて、≧0.3mg/kg Q2Wの用量で顕著な標的占有が達成され、≧3mg/kg Q2Wの用量ではほぼ完全な飽和が予測された。
図6を参照されたい。
【0101】
(c)有効性
腫瘍の縮小は、多大な前治療を受けた患者および大きな腫瘍量がある患者を含めて、全ての用量レベルで観察された。活性は、迅速に(6週間)識別でき、持続した。部分寛解(PR)および安定性疾患(SD)は、0.1mg/kg Q2W程度の小量を投与された患者で観察された。下の
図7および表3を参照されたい。
【0102】
【表3】
【0103】
さらに、最大10mg/kg Q2Wを投与された患者では、腫瘍量は83%程度に低下した。
図7〜9を参照されたい。例えば、0.3mg/kgを投与された1人のNSCLC腺がん患者(1351901004)は、6週間後に腫瘍量の31%の低下、23週間後に71%の低下を示した。予防的なステロイドが1人の被験者で使用され、臨床活性には影響を及ぼさないようであった。
【0104】
用量拡大相では、臨床活性は、非小細胞肺がん、メラノーマ、および膵臓がんがある被験者で最初に観察された。安定性疾患(12週間目)は、非小細胞肺がん(非扁平上皮)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、および頭頸部扁平上皮がんがある被験者で観察された。
【0105】
NSCLC(非扁平上皮および扁平上皮)の全ての用量レベルについて、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図10に示される。
【0106】
進行した皮膚性メラノーマの全ての用量レベルについて、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図11に示される。
【0107】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたSCCHN患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図12に示される。
【0108】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された膵臓腺がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図13に示される。8人の被験者では、SD[41〜108日間]があり、またはさらに良好である。これらの内6人の患者は、試験登録前に、第二次療法以上を受けた。SDがあり、またはさらに良好な8人の患者の内7人は、PD−L1(−)である(別の患者のPD−L1状態は不明である)。
【0109】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された胃食道がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図14に示される。9人の被験者では、SD[35〜174日間]があり、またはさらに良好である。これらの内6人は、試験登録前に、第二次療法以上を受けた。SDがあり、またはさらに良好な3人の患者はPD−L1(−)であり、2人はPD−L1(+)で、残りは不明である。
【0110】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された肝細胞がん(HCC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図15に示される。登録した17人の患者のは全て、以前、ソラフェニブを投与されていた。3人はHBV(+)で、2人はHCV(+)であり、残りはHBV(−)&HCV(−)である。5人の被験者では、SD[33〜76日間]があり、またはさらに良好である。これらの内、これらの内の4人は、試験登録前に、第二次療法以上を受けており;1人はHBV(+);4人はHBV(−)&HCV(−)であった。SDがあり、またはさらに良好な3人の患者はPD−L1(−)であり、これらの患者の残りではPD−L1状態は不明である。
【0111】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図16に示される。
【0112】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたぶどう膜黒色腫患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、
図17に示される。
【0113】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療され、2スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較は、
図18Aに示される。PD−L1陽性腫瘍、PD−L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD−L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての患者についてORR(確認されたCR+PR)は3.7%であった。PD−L1+患者のORR率は、10%であった。
【0114】
全ての用量レベルのMEDI4736 2QWで治療され、1スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較は、
図18Bに示される。PD−L1陽性腫瘍、PD−L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD−L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての確認された患者のORR(確認されたCR+PR)は、4.3%であった(全ての未確認の患者のORRは、8.5%であった)。PD−L1+患者のORR率は、8.3%であった。
【0115】
漸増期における6つの腫瘍型の腫瘍サイズの変化は、
図19に示される。
【0116】
Q2Wで10mg/kgのMEDI4736で治療された1人の患者の拡大期における応答は、
図20に示される。上部左側パネルでは、患者の腫瘍が顕著である。6週間後、上部右側パネルに示されるように、腫瘍は縮小した。
【0117】
MEDI4736(10mg/kg Q2W)のわずか2回の点滴後における、SCCHN(PD−L1
+)がある患者の腫瘍退縮の劇的効果は、
図21に示される。
PD−L1染色
【0118】
IHCによって、腫瘍パネルからの腫瘍組織中のPD−L1染色を実施して、様々な腫瘍中のPD−L1レベルを評価した。結果は、表4に示される。
【0119】
【表4】
【0120】
10mg/kg Q2Wの用量(N=245)は、良好に耐えられた。最も頻度の高いSAEは、下の表5に示される:
【0121】
【表5】
【0122】
(d)安全性および抗薬剤抗体
MEDI4736は、通常、良好に耐えられた。間質性肺炎、大腸炎(あらゆる等級の)、または高血糖症は、観察されなかった。さらに0.1〜3mg/kgのコホートにおいて、グレード3以上の治療関連事象は、観察されなかった。用量制限毒性は、観察されなかった。6つのコホートの有害事象の要約は、下の表6に示される:
【0123】
【表6】
【0124】
0.1〜3mg/kgの用量範囲にわたり、極めて低いADA発生率が観察された。具体的には、0.1〜1mg/kgの用量範囲の投与を受けた15人の患者の内、1人だけが、PK/PDの意味合いがあるADA陽性と判定された。0.1〜1.0mg/kgの用量範囲にわたり、薬物曝露または標的抑制に対する影響の形跡はなかった。
【0125】
(e)考察
この試験は、MEDI4736が好ましいpK特性を有して、通常、良好に耐えられることを実証する。さらに、MEDI4736は、(メラノーマ、非小細胞肺がん、膵臓腺がん、ぶどう膜黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、胃食道がん、および肝細胞がんをはじめとするが、これに限定されるものではない)固形腫瘍の治療に効果的である一方で、ADAの発生率が低い。臨床上の便益は、試験された全ての用量レベルで観察され、活性は、早くも6週間で報告された。
【0126】
実施例3:可溶性B7−H1の定量化
電気化学発光(ECL)ベースのアッセイを使用して、(MED4736と結合していない)可溶性B7−H1を測定した。ヒト血清中の可溶性B7−H1のアッセイで使用された特定手順は、下に示される。
【0127】
(a)プレート調製
I−ブロック緩衝液(IBB)(MedImmune)は室温(RT)に平衡化して、試薬リザバー(Fisher Scientific#07−200−127)に移し入れた。ストレプトアビジン被覆プレート(Meso Scale Discovery(「MSD」)カタログ番号L11SA/L15SA)の各プレートウェルに、150μlのIBBをピペットで移し入れた。プレートをカバーして、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、最低限1時間(4時間以下)室温でインキュベートした。
【0128】
捕捉抗体使用液(WS)は、IBBを使用して使用直前に室温で調製した。捕捉抗体は、米国特許出願第2013/0034559号明細書に記載されるようなビオチン化抗ヒトB7−H1 IgG1 TM抗体、クローン2.7A4である。最初に、下の表7に示されるように、少なくとも100μLの捕捉抗体原液をIBB中で1000μg/mlの濃度に予備希釈した。次に、下の表8に示される容積を使用して、ポリプロピレン管内のIBB中で、250μg/mLの捕捉抗体WSを調製した。次に、捕捉抗体WSを試薬リザバーに移し入れた。
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
プレート洗浄機を使用して、300μLの1×ELISA洗浄液緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)でプレートを3回洗浄して、プレートブロッキングを終了させた。プレートをブロットして乾燥させ、即座にウェルあたり35μLの捕捉抗体WSで被覆した。プレートを密封し、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0132】
(b)試験サンプル、参照サンプル、および品質管理試料調製
試験されるヒト血清サンプルは室温で解凍し、均一になるまで穏やかに混合した。これらのサンプルを希釈せずに使用した。
【0133】
組換えB7−H1の標準試料原液(RS原液)は、下の表9に示されるように、アッセイ基材(AM):Neal仔ウシ血清(Lonza、カタログ番号14−401F)中で、47μg/mLの濃度に予備希釈した。RS予備希釈液は、下の表10に示されるように、2000(S1)、1000(S2)、500(S3)、250(S4)、125(S5)、62.5(S6)、31.3(S7)、15.6(S8)、7.8(S9)、および3.9(S10)pg/mLの最終標準試料濃度に、AM中で連続希釈した。AM単独サンプルもまた含めた。希釈液は、ポリプロピレンタイターチューブまたは同等物内で調製された。
【0134】
【表9】
【0135】
【表10】
【0136】
下の表11に示されるように、AM中の品質管理(QC)サンプル予備希釈液、ならびに高、培地、および低QCサンプルをポリプロピレン管または同等物内で調製した。使用されたQC原液は、90%仔ウシ血清(Lonza、カタログ番号14−401F)中の組換えB7−H1タンパク質であった。
【0137】
【表11】
【0138】
(c)可溶性B7−H1検出
調製されたプレートは、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。試験サンプル、標準試料、品質対照、およびアッセイ基材単独を、プレート上の二連のウェル(それぞれ35μl)に移し入れた。プレートを密封し、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で30時間インキュベートした。
【0139】
表12に示されるようにして、一次検出抗体使用液(WS)をポリプロピレン管内のIBB(1μg/mL)中で調製した。一次検出抗体は、マウス抗ヒトB7−H1 IgG1抗体クローン130021(R&D systems、カタログ番号MAB1561)(0.5mg/ml)であった。
【0140】
【表12】
【0141】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。一次検出抗体WSを試薬リザバーに移し入れ、次に各プレートウェルに35μlをピペットで移した。プレートを再度密封して、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0142】
表13に示されるようにして、二次検出抗体使用液(WS)をポリプロピレン管内のIBB(1μg/mL)中で調製した。二次検出抗体は、ルテニウム標識ヤギ抗マウスB7−H1ポリクローナル抗体(MSD、カタログ番号R32AC−1)(0.5mg/ml)であった。二次検出抗体WSは、遮光された。
【0143】
【表13】
【0144】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。二次検出抗体WSを試薬リザバーに移し入れ、次に各プレートウェルに35μlをピペットで移した。プレートを再度密封して、遮光しながら、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0145】
下の表14に示されるように、ポリプロピレン管内で、読み取り緩衝液T(4×)(MSDカタログ番号R92TC−1)試薬を細胞培養等級水で希釈して、読み取り緩衝液T(1×)を調製した。
【0146】
【表14】
【0147】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートをカバーして、1×読み取り緩衝液Tの添加直前にブロット乾燥した。読み取り緩衝液T(1×)を試薬リザバーに移し入れた。アッセイプレートは、読み取りのためにカバーを外して、ブロット乾燥した。読み取り緩衝液T(1×)をアッセイプレート(150μl)の全てのウェルにピペットで移し、プレートを5分以内に読み取った。
【0148】
(d)データ解析
解析のために、データをSoftMax(登録商標)Pro GxP v.5.2ソフトウェア(Molecular Devices)に転送し、1/y
2重み付け4パラメータ)ロジスティック曲線適合モデルを使用して、ECLシグナル値に対して標準試料濃度をプロットした。
【0149】
全ての標準試料およびQCサンプル希釈液のsB7−H1のpg/mlを計算(逆算)した。各標準試料およびQCサンプル希釈液の二連のウェルの変動係数(%CV)もまた計算した。これらのデータを使用して、プレートが許容基準を満たしたかどうかを判定した。プレートは、以下の許容基準が満たされれば有効と見なされる。
1−標準試料レベルS2〜S7の平均%回復率が、名目上の濃度の±25%以内であり、レベルS8では±30%以内であった;
2−標準試料レベルS2〜S7の各逆算濃度の%CVが≦25%であり、レベルS8では≦30%であった;
3−各QCレベルの平均%回復率が、名目上の濃度の±25%以内であった;そして
4−3QCレベルの内少なくとも2つの逆算濃度の%CVが、≦25%であった。
【0150】
有効プレートでは、各サンプル中のsB7−H1のpg/mlは、標準試料を使用して計算された。試験サンプルは無希釈で試験されたので、各試験サンプルの希釈係数は1.0であり、希釈係数の修正は必要なかった。得られたデータは、100%血清中のsB7−H1濃度に相当する。
【0151】
試験サンプルのデータはまた、それが許容基準を満たしたかどうかを判定するために再吟味した。試験サンプル読み取りは、以下の許容基準が満たされれば、有効と考えられた。
1−双方の反復試験の逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入った;
2−試験サンプルの平均逆算濃度の%CVが≦25%であった。
【0152】
試験サンプルの1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入り、もう一方がアッセイ定量下限(LLOQ)未満であり、または定量アッセイ上限ULOQを上回る場合、以下の基準が適用された:
−平均逆算濃度%CVが>25%であれば、試験サンプルは無効と見なされた。
−平均逆算濃度%CVが≦25%であり、平均逆算濃度がアッセイ動作範囲内であれば、試験サンプルは有効と見なされ、試験サンプルの平均逆算濃度が報告された。
−平均逆算濃度%CVが≦25%であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満、または定量限界を超えると報告された。
【0153】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度がアッセイLLOQ未満であった場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
【0154】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲未満であり、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、以下の基準が適用された:
−範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
−範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均ULOQ ECLを上回れば、試験サンプルは無効と見なされた。
【0155】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度がアッセイULOQを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
【0156】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲を超え、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、以下の基準を適用した:
−範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均ULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
−範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは無効と見なされた。
【0157】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入り、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、試験サンプルは無効と見なされた。
【0158】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度が、範囲外であったの場合、以下の基準が適用された。
−双方のECL値がアッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
−双方のECL値がアッセイの平均ULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
−1反復試験のECL値がアッセイの平均LLOQECL未満であり、もう一方の反復試験のECL値がULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは無効と見なされた。
【0159】
これらの手順を使用して、上の実施例1および2で上で提供されたヒト血清サンプル中の可溶性B7−H1判定した。
【0160】
実施例4:PD−L1発現は患者奏効率を駆動する
ホルマリン固定およびパラフィン包埋組織サンプル中の免疫組織化学的検査によって、NSCLC患者の対象組織をPDL1発現について特性解析した。サンプルが、PDL1膜染色された25%以上の腫瘍細胞を含有すれば、サンプルは「PD−L1陽性」と判定された。PDL1アッセイを用いた、NSCLC母集団内のこのようなサンプルの有病率は、20〜40%であった。
【0161】
カットオフおよびスコア付けアルゴリズムは、第I相試験(CP1108)で、約60人の患者からのサンプルを評価することによって判定された。第3相試験について確立されたカットオフでは、およそ40%のNSCLC患者がPD−L1陽性であった(下の表15)。
【0162】
【表15】
【0163】
PDL1−発現腫瘍を有すると同定された患者は、任意抽出患者よりも、MEDI4736治療に応答する可能性が高い(下の表16)。16〜24週間を超えて、10mg/kgのMEDI4736で治療されたPDL1−陽性NSCLC患者では、50パーセントの客観的奏効率があった(表16)。この劇的な奏効率は、PDL1陰性または任意抽出患者では観察されなかった(表16)。これらの結果は、PDL1発現が、NSCLCにおける奏効の重要な駆動機構であることを示唆する。
【0164】
【表16】
【0165】
MEDI4736に対する完全または部分寛解(CR/PR)は、16〜24週間を超えて、10mg/kgのMEDI4736で治療されたPDL1陽性NSCLC患者の50パーセントで観察された(下の表17)。MEDI4736治療に対する初期応答は、わずか6〜12週間で観察され得る(表17)。
【0166】
【表17】
【0167】
任意抽出患者は、MEDI4736に対する同一の高奏効率を示さなかった(下の表18)。
【0168】
【表18】
【0169】
疾病応答の概要は表19.1(10mg/kg Q2W)に提供される。腫瘍サンプルが、PDL1陽性である基準を満たす場合、すなわち、PDL1膜染色された25%以上の腫瘍細胞を含有する(MSCORE>25%)場合、少なくとも16〜24週間以上にわたり治療された患者では、40%の奏効率が観察された。少なくとも16〜24週間以上にわたり、10mg/kg Q2Wで治療された頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)がある被験者では、33パーセントの完全または部分寛解率が観察された。
【0170】
全ての用量レベルにおける疾患応答の概要は、表19.2に示される。完全または部分寛解率は、PDL1−陽性NSCLCの基準を満たした患者で最大であった(表19.2)。より大きな便益は、より長い治療期間において、NSCLCおよびSCCHNで見られた(表19.2)。表19.3は、用量漸増(Q2WおよびQ3W)がある被験者における、疾患応答の概要を示す。
【0171】
【表19-1】
【0172】
【表19-2】
【0173】
【表19-3】
【0174】
さらなる患者奏効率は、
図25A〜Cに示される。MEDI4736治療に対する、非扁平上皮NSCLC患者および扁平上皮NSCLC患者の応答は、
図25Aに示される。腫瘍PD−L1状態(陽性、陰性、またはNA)に対する奏効率は、
図25B〜Cに示される。データは、PD−L1陽性腫瘍がある患者における奏効率増大を示す。
【0175】
当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載される本開示の特定の側面の多くの同等物を認識し、または見極めることができるであろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0176】
本明細書では様々な文献が引用され、その開示は、その内容全体を参照によって援用する。
【0177】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示および実施例の手段によってある程度詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲内で、特定の変更および修正が可能なことは明らかであろう。
【0178】
配列番号1
>PCT/US2010/058007_77 PCT/US2010/058007からの配列77 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0179】
配列番号2
>PCT/US2010/058007_72 PCT/US2010/058007からの配列72 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0180】
配列番号3−VHCDR1
>PCT/US2010/058007_73 PCT/US2010/058007からの配列73 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0181】
配列番号4−VHCDR2
>PCT/US2010/058007_74 PCT/US2010/058007からの配列74 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0182】
配列番号5−VHCDR3
>PCT/US2010/058007_75 PCT/US2010/058007からの配列75 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0183】
配列番号6−VLCDR1
>PCT/US2010/058007_78 PCT/US2010/058007からの配列78 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0184】
配列番号7−VLCDR2
>PCT/US2010/058007_79 PCT/US2010/058007からの配列79 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0185】
配列番号8−VLCDR3
>PCT/US2010/058007_80 PCT/US2010/058007からの配列80 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)