(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550060
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】デジタル電力ネットワークの方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
H02J1/00 301B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-546448(P2016-546448)
(86)(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公表番号】特表2017-508430(P2017-508430A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】US2015011770
(87)【国際公開番号】WO2015109193
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/929,074
(32)【優先日】2014年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515149292
【氏名又は名称】ボルトサーバー インコーポレーティッド
【氏名又は名称原語表記】VOLTSERVER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100181021
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 剛輝
(72)【発明者】
【氏名】ハリー ダニエル ロウ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン イーヴス
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0013146(US,A1)
【文献】
特開2011−142771(JP,A)
【文献】
特開2011−113405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00−1/16
G06F 1/00−11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル電力ネットワークであって、
電力制御要素間の電力のルーティングを容易にするように構成された少なくとも1つのデジタル電力ルーティングデバイスであって、
a)少なくとも1つのDC電力バスと、
b)少なくとも2組の電力端子をそれぞれ備える少なくとも2つの電力制御要素であって、前記電力端子の組の少なくとも1つがパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を受け入れ、且つ、各電力制御要素がその電力端子の1組を前記DC電力バスに接続することを可能にするように構成された電気接続を有する電力制御要素と、
c)前記電力制御要素内の制御機能を実行してデジタル電力ネットワーク内の少なくとも1つの電力制御要素から少なくとも1つの他の電力制御要素に電力を送り込むように動作できる少なくとも1つのネットワークコントローラと、
d)前記DC電力バスとは別の少なくとも1つのデジタル電力バスであって、前記デジタル電力バスは、1つの電力制御要素から少なくとも1つの別の電力制御要素へのパケットエネルギー伝達フォーマットの電力の直接送電を容易にする、デジタル電力バスと、
を含むデジタル電力ルーティングデバイスと、
少なくとも1つの前記電力制御要素に結合される少なくとも1つの電源と、
少なくとも1つの前記電力制御要素に結合される少なくとも1つの負荷と
を含むデジタル電力ネットワーク。
【請求項2】
前記ネットワークコントローラ機能が前記電力制御要素の1つに配置される、請求項1に記載のデジタル電力ネットワーク。
【請求項3】
前記デジタル電力ルーティングデバイスが、第1デジタル電力ルーティングデバイスおよび第2デジタル電力ルーティングデバイスを有し、前記第1デジタル電力ルーティングデバイスの前記デジタル電力バスに接続されている第1電力制御要素が、同一デジタル電力ルーティングデバイス中の同一デジタル電力バスに接続されている第2電力制御要素にパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を与え、且つ、前記第2電力制御要素が第2デジタル電力ルーティングデバイスに接続されている第3電力制御要素に前記電力を送る、請求項1に記載のデジタル電力ネットワーク。
【請求項4】
1つの電力制御要素から別の電力制御要素に電力を送るための各選択肢に重み付け値を割り当てるアルゴリズムを実行して、安全性、弾力性及び効率性の属性に基づいてルーティング決定を最適化することを可能にする、請求項1に記載のデジタル電力ネットワーク。
【請求項5】
第1デジタル電力ルーティングデバイスに含まれている前記ネットワークコントローラが、第2デジタル電力ルーティングデバイスに配置されている第2ネットワークコントローラとルーティング情報を交換し、それにより前記第1デジタル電力ルーティングデバイスに接続されている電力制御要素間のルーティング決定が、前記第2デジタル電力ルーティングデバイスに配置されている前記第2ネットワークコントローラにより行われることを可能にする、請求項1に記載のデジタル電力ネットワーク。
【請求項6】
電力制御要素間のデジタル電力のルーティング方法であって、
前記方法は、少なくとも2組の電力端子を有する複数の電力制御要素間で少なくとも1つのデジタル電力ルーティングデバイスを使用してデジタル電力をルーティングするものであり、前記デジタル電力ルーティングデバイスが、
a)少なくとも1つのDC電力バスと、
b)少なくとも2つの電力制御要素であって、各電力制御要素の少なくとも1つの電力端子が前記DC電力バスに接続される電力制御要素と、
c)少なくとも1つのネットワークコントローラと、
d)前記DC電力バスとは別の少なくとも1つのデジタル電力バス、
を含み、
少なくとも1組の電力端子を用いて、パケットエネルギー伝達フォーマットの電力を送電するステップと、
前記ネットワークコントローラを用いて、前記電力制御要素内の制御機能を実行するステップと、
前記制御機能の実行を介して、デジタル電力ネットワーク内の少なくとも1つの電力制御要素から少なくとも1つの他の電力制御要素へ電力を送るステップと、
前記デジタル電力バスを用いて、パケットエネルギー伝達フォーマットの電力を1つの電力制御要素から少なくとも1つの別の電力要素に直接送るステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記ネットワークコントローラ機能が前記電力制御要素の1つに配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記デジタル電力ルーティングデバイスが、第1デジタル電力ルーティングデバイスおよび第2デジタル電力ルーティングデバイスを有し、前記第1デジタル電力ルーティングデバイスの前記デジタル電力バスに接続されている第1電力制御要素が同一デジタル電力ルーティングデバイス中の同一デジタル電力バスに接続されている第2電力制御要素にパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を与え、且つ、前記第2電力制御要素が第2デジタル電力ルーティングデバイスに接続されている第3電力制御要素に電力を送る、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
安全性、弾力性及び効率性の属性に基づいてルーティング決定を最適化しながら、前記ネットワークコントローラの中で、1つの電力制御要素から別の電力制御要素に電力を送るための各選択肢に重み付け値を割り当てるアルゴリズムを実行するステップ、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル電力ルーティングデバイスが、第1デジタル電力ルーティングデバイスおよび第2デジタル電力ルーティングデバイスを有し、
前記第1デジタル電力ルーティングデバイスに接続されている電力制御要素間のルーティング決定が前記第2デジタル電力ルーティングデバイスに配置されている前記第2ネットワークコントローラにより行われることを可能にするように、第2デジタル電力ルーティングデバイスに配置されている第2ネットワークコントローラとルーティング情報を交換するために、第1デジタル電力ルーティングデバイスに配置されている前記ネットワークコントローラを用いるステップ、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
PETプロトコルを使用する典型的デジタル送電システムが米国特許第8,781,637号明細書(Eaves 2012)に記載されている。
【0002】
在来のアナログ電力システムとの比較におけるデジタル送電システムの主要な識別要素は、電気エネルギーが別々の装置に分散されること及びそれらの個別エネルギー装置に安全性、効率性、弾力性、制御又はルーティングを最適化するために使用できるアナログ及び/又はデジタル情報を関連付け得ることである。
【0003】
Eaves 2012により記述されているように、電源コントローラ及び負荷コントローラは、送電導体により接続されている。Eaves 2012の電源コントローラは、送電導体を電源から周期的に切り離し(切断し)、且つ、導体の切り離しの直前及び直後において、少なくとも、電源コントローラ端子に存在する電圧特性を分析する。導体上の電圧の立ち上がり及び立ち下がりの速度は、送電システム導体上に故障状態が存在するか否かを示す。測定可能な故障は、短絡、高い線路抵抗又は誤って導体に接触している人間の存在を含むが、それらに限定されない。Eaves 2012は、安全をさらに高めるか又は全エネルギー又は負荷コントローラ端子における電圧などのエネルギー伝達の一般的特性を与えるために、電源コントローラと負荷コントローラの間において送電導体経由で送受されるデジタル情報についても記述している。PETシステムにおけるエネルギーは離散量すなわち定量として伝達されるので、それは、「デジタル電力」と称することができる。
【0004】
Eaves 2012が単一電源から負荷デバイスへの電力伝達に重点的に取り組んでいる部分に続く検討において、複数の負荷、電源、エネルギー貯蔵デバイス及びその他の従来型電力グリッドを含むデジタル電力ネットワーク要素を最適に調整してデジタル電力ネットワークを形成するための方法が記述された。開示されたデジタル電力ネットワークアーキテクチャは、電力の安全な弾力的且つ効率的伝達のための基盤を与え、且つ、これらの属性を最適化する優先順位構造をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、デジタル電力ネットワーク及び電力制御要素間におけるデジタル電力のルーティング方法について記述する。この記述において、装置及び方法の様々な実施形態は、以下において記述する要素、特徴及びステップの一部又はすべてを含み得る。
【0006】
デジタル電力ネットワークは、電力制御要素間における電力のルーティングを容易にするためのデジタル電力ルーティングデバイスを少なくとも1つ含む。デジタル電力ルーティングデバイスは、以下を含む:(a)少なくとも1つのDC電力バス、(b)それぞれ少なくとも2組の電力端子を備える少なくとも2つの電力制御要素であって、電力端子のこれらの組のうち少なくとも1つはパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を受け入れ、且つ、各電力制御要素がその電力端子の1つの組をDC電力バスに接続することができるように構成された電気接続(たとえば、これらの端子をDC電力バスに選択的に接続するワイヤ及び/又は電子スイッチ)を有する電力制御要素、及び(c)デジタル電力ネットワーク内の少なくとも1つの電力制御要素から少なくとも1つの他の電力制御要素に電力を送るためにネットワーク電力制御要素内の制御機能を実行できる少なくとも1つのネットワークコントローラ。デジタル電力ネットワークは、電力制御要素の少なくとも1つに結合された少なくとも1つの電源及び電源制御要素の少なくとも1つに結合された少なくとも1つの負荷をさらに含む。
【0007】
特定の実施形態では、ネットワークコントローラ機能は、ネットワーク電力制御要素の1つに置かれる。別の実施形態においては、デジタル電力ルーターはDCバスとは別のデジタル電力バスを少なくとも1つ含んでおり、このデジタル電力バスは、1つの電力制御要素から少なくとも1つの他の電力制御要素へのパケットエネルギー伝達フォーマットの電力の直接送電を容易にしている。
【0008】
特定の実施形態では、コントローラは、1つの電力制御要素から他の電力制御要素へ送電するための各選択肢に重み付け値を割り当てるアルゴリズムを実行し、それにより安全性、弾力性及び効率性の属性に基づいてルーティング決定の最適化を可能にする。別の実施形態においては、第1デジタル電力ルーティングデバイスに置かれているネットワークコントローラは、第2デジタル電力ルーティングデバイスに置かれているネットワークコントローラとルーティング情報を交換し、それにより第2デジタル電力ルーティングデバイスに置かれているネットワークコントローラが第1デジタル電力ルーティングデバイスに接続されているネットワーク電力制御要素間のルーティングを決定することを可能にする。
【0009】
特定の実施形態では、第1電力制御要素は、第1デジタル電力ルーターのデジタル電力バスに接続されており、同一デジタル電力ルーター中の同一デジタル電力バスに接続されている第2電力制御要素にパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を供給する。次にこの第2電力制御要素は、第2デジタル電力ルーターに接続されている第3電力制御要素にデジタル電力を送る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書において記述されるデジタル電力ネットワークの概要を示す。
【0011】
添付図において、同様な参照文字は、種々の図を通じて同一又は同様な部分を指している。また、アポストロフィは、同じ参照番号を共有する同一又は同様な項目の多重出現を区別するために使用されている。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、むしろ下記において説明する例示における特定の原理を説明するために強調表示される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の様々な態様の前記及びその他の特徴及び長所は、本発明の広い範囲内における様々なコンセプト及び特定の実施形態について以下に示すより詳細な説明から明らかになるであろう。上記において紹介され、以下においてより詳しく説明される主題事項の様々な態様は、その主題事項がいずれの特定の実現方法にも限定されていないので多数の方法のいずれかによっても実現可能である。幾つかの特定の実現例及び応用例は、主として説明を目的として示される。
【0013】
本明細書において特に別段の定義、使用又は特徴付けがされていない限り、本明細書において使用される用語(技術用語及び科学用語を含む)は、関連技術の文脈において受け入れられているそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、且つ、本明細書において理想化又は過度に形式化された意味を有するものとして明確に定義されていない限り、そのように解釈されるべきでない。たとえば、特定の組成に言及する場合、実際の不完全な現実に適用されるのであるから、その組成は、完全には純粋でなくとも、実質的には純粋とされ得る。たとえば、少なくとも微量不純物(たとえば1又は2%未満)の潜在的存在は、この記述の範囲内にあるものと解され得る。同様に、特定の形状に言及する場合、その形状は、たとえば、製造許容誤差のために理想的形状から変化した不完全な形状を含むことを意図する。本明細書において表現されるパーセンテージ又は濃度は、重量によって又は容積によって表すことができる。後述するプロセス、製法及び現象は、別段の指定のない限り、環境気圧(たとえば、約50〜120kPa−たとえば、約90〜110kPa)及び環境温度(たとえば、20〜50℃−たとえば、約10〜35℃)において発生し得る。
【0014】
用語、第1の、第2の、第3の等は、本明細書においては様々な要素を記述するために使用され得るが、これらの要素は、これらの用語により限定されないものとする。これらの用語は、単に1つの要素を他の要素から区別するために使用される。したがって、後述される第1要素は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく第2要素と名付けられ得る。
【0015】
「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の空間的関係を表す用語は、本明細書においては、図面において示されているように、1つの要素の他の要素に対する関係を示す記述を容易にするために使用される。空間的関係を表す用語及び図示配置は、使用されるか又は作動する装置について、本明細書において記述され、且つ、図面に描かれる方向のほかに他の種々の方向を包含することが理解される。たとえば、図面中の装置が反転された場合、他の要素又は物に対して「下に」又は「真下に」に位置するとして記述された要素は、それらの他の要素又は物に対して「上に」位置することになる。したがって、例示した用語、「上に」は、上及び下の両方の方向を含み得る。装置は、別の方向に向けることができるので(たとえば、90度又は他の方向に回転させる)、本明細書において使用されている空間的関係記述子は、それに従って解釈される。
【0016】
さらに又、本開示においては、1つの要素が他の要素「の上に」、「に接続されて」、「に結合されて」、「と接触して」等のように記述された場合、その要素は、別段の指定のない限り、他の要素に対して直接に又は別の要素を挟んでその上に置かれているか、接続されているか、結合されているか、又は接触して、存在し得る。
【0017】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記述するために使用されているのであって、例示的な実施形態を限定することを意図しているものではない。本明細書において使用されている「1つの(a)」及び「1つの(an)」のような単数形は、文脈により単数のみが指定される場合を除き、複数形も含むことを意図する。また、用語、「含む(include)」、「含む(including)」「含む(comprise)」及び「含む(compring)」は、記載された要素又はステップの存在を指定するものであるが、しかし1つ又は複数の他の要素又はステップの存在又は追加を排除しない。
【0018】
図示されている、開示されたデジタル電力ネットワークの主たる構成要素は、デジタル電力ルーター(ルーティングデバイスとも呼ばれる)1である。ルーター1は、幾つかの電力制御要素3a〜3fを制御する。図に示されている例示電源/負荷電力制御要素3d’’’’は、エネルギー貯蔵デバイス、この場合には電池2を制御する。他の電源制御要素3a’’’/3b’’は、電源である太陽電池パネル8又は負荷であるLED電灯9を制御できる。デジタル電力ネットワーク内において電源制御要素に種々のレベルの重要度を与えることができる。たとえば、医療用呼吸デバイス又は救急電話(911)用セルラー無線機などの限界負荷10に給電する電力制御要素3b’には、他の要素より高い優先度が割り当てられる。本システムは、記述されている例示の電源、負荷及びエネルギー貯蔵デバイスに限定されない。これらは、デジタル電力ネットワークと相互作用できる無数の装置のほんの一部にすぎないからである。
【0019】
電力制御要素3a〜3fは、以下の機能の1つ又は複数を果たす:
・ パケットエネルギー伝達(PET)プロトコルによるエネルギーの安全な伝達を確認する
・ PETプロトコルによりアナログ電力をデジタル電力に、又はその逆に変換する
・ 電圧及び/又は電流を変換及び/又は制御する、及び
・ ネットワーク内の1つのチャネルから他のチャネルに電力を切り換える。
【0020】
電力制御要素は、それぞれ、電力端子を含んでいる。電力端子の少なくとも1組は、電力をパケットエネルギー伝達フォーマットから通常のDC電力に逆変換する電力制御要素内部の電子回路経由でパケットエネルギー伝達フォーマットの電力を受け入れることができる。例外は、既にパケットエネルギー伝達フォーマット化されている電力を通常のDC電力に逆変換せずに他の電力制御要素に送るデジタル電力スイッチとして設計された電力制御要素である。
【0021】
機能がデジタル電力伝達を含んでいる場合には常に、安全を確保するためにPETプロトコルが連続的に実行され、且つ、確認される。図において、図面凡例中及び図示した要素機能ブロック内に示されているように、電力制御要素3a〜3fは、それらの機能に従って、電源3aについてはSとして、負荷3bについてはLとして、スイッチ3cについてはXとして標識されている。複合機能を有する電力制御要素は、複合電源/負荷要素3d、複合負荷/スイッチ要素3e、及び複合電源/負荷/スイッチ要素3fを含む。
【0022】
Cと標識されているネットワークコントローラ要素6は、コマンドの発行、監視アルゴリズムの実行及び電力制御要素3a〜f内又は他の外部ルーター内のネットワークコントローラ要素内に配置され得る他の処理デバイスからのデータの受信を行う。1つの実施形態では、ネットワークコントローラは、デジタル電力ルーター内に配置されている通信バス7経由でデジタル電力ルーター内の電力制御要素と通信するマイクロプロセッサを含む。
【0023】
図を参照すると、電源要素3aは、電源(S)関連機能を果たしている。この例についてさらに具体的に述べると、電源要素3a’’’は、太陽電池パネル8からのアナログDC電力をより高いDCアナログ電圧に変換し、次にそのアナログ電圧をPETフォーマットのデジタル電力に変換している。太陽電池パネル8の低電圧を高電圧に変換するために当業者に周知の様々な電力変換アーキテクチャのいずれも使用し得る。太陽電池パネルの動作電圧の典型的電圧はDC36〜48ボルト、及びPETデジタル電力の振幅はDC300〜400ボルトとすることができるが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。電力制御要素がPETフォーマットに変換するために使用する方法は、Eaves 2012に記述されている。
【0024】
電力制御要素3bは負荷要素Lとして動作し、Eaves 2012の方法を使用してPETデジタル電力をデジタル電力ルーター1内で使用されるアナログDC電圧レベルに逆変換している。デジタル電力ルーター内部の典型的DC電圧は、DC300〜400ボルトのレベルであるが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
電源制御要素3eは、スイッチング(X)機能のほかに負荷(L)機能を含んでいるが、これは、エネルギー源(この例では、太陽電池パネル8)を制御する場合に有益である。スイッチング機能を使用することにより、電力制御要素3eは、デジタル電力からアナログ電力への変換を回避し、デジタル電力をルーター1内部のアナログDCバス11上のアナログDCに変換するのではなく、スイッチング機能も有する他の要素にデジタル電力を直接送ることができる。たとえば、電力制御要素3eは、電力を送電バス4に切り換えて電源/負荷/スイッチ機能を有する電力制御要素3fにさらに送ることができる。次に電力制御要素3fは、デジタル電力を電源/負荷要素3d’’’’に送る。続いて電源/負荷電力制御要素3d’’’’は、デジタル電力を電池2に充電するために要求される適切なアナログ電力レベルに変換する。電力制御要素3e及び3fに変換ではなくスイッチング機能を実行させることにより、損失が低減し、したがって転送効率が向上する。
【0026】
スイッチング及びルーティングに関する決定は、ネットワークコントローラ6により行われる。しかし、ここで注目するべきは、ルーター1の外部に存在するネットワークコントローラ6の別の例でもその決定を下すことがあるという事実である。その理由は、具体的には、電力の送電は、デジタル電力を第2電力ルーターに送り込むことができるスイッチング要素3c’への接続により示されているように、全く別のデジタル電力ルーティング装置へのデジタル電力の送電を含み得るからである。図に示されている別の内部送電バス5は、複数の送電経路及び接続の同時設定を可能にする。応用の必要に応じて、3つ以上の内部送電バスを設けることができる。
【0027】
方針決定
本システムは、送電の安全性、弾力性及び効率性の最適化に基づいて電力の変換及びルーティングに関する決定を下すことを可能にする。電力制御要素(たとえば、電源及び負荷)に割り当てられる優先度に基づいて追加するべき考慮事項がある。たとえば一般照明9に対比して医療救命デバイス10により高い優先度を与えることである。
【0028】
本システム中の利用可能な電力制御要素、それらの状態及びルーティング指令に関する情報は、ルーティングテーブルにより管理される。このテーブルは、今日のデータルーター産業の当業者によく知られているツール(家庭又はデータセンターで使用されているイーサネット(登録商標)ルーターなど)である。
【0029】
ルーティングテーブルは、様々なルーティング決定に「コスト」を割り当てる機能を含んでいる。前出の例においては、太陽電池パネル8からのデジタルPETフォーマットの電力は、先ずデジタル電力ルーター1内でアナログ電力に逆変換される代わりに、電池2に直接送り込まれ、それにより変換損失の低減及び効率の改善を実現した。この決定は、変換方策決定をそれに代わるスイッチング及びルーティングの方策決定より不利にするコスト変数をスイッチング動作に割り当てることにより行われる。しかし電池2が完全充電されており、もはやエネルギーを受け入れることができない場合、コスト変数が更新され、太陽電池パネル8からの電力を他の場所に送るか又はこの電力をデジタル電力ルーター1により使用される内部アナログDC電力に変換するように決定が変更される。ルーティングテーブルは、コントローラ6に接続されている図示される外部通信リンク11経由で自己のコスト変数を第1ルーター1にすでに伝えてある第2デジタル電力ルーターに電力を送り込む際のルーティングコストも含み得る。同様に、第1デジタル電力ルーター1は、そのコスト変数を他の接続デジタル電力ルーターに伝え、その結果としてこれらのルーターとの間で電力を送受することができる。
【0030】
上述のルーティングコスト例において述べたように、電池を制御する要素のような外部電力制御要素は、その状態をデジタル電力ルーター1に伝える必要がある場合もある。電池2の例では、電池2の充電状態を示す状態変数を有する必要があった。デジタル電力ルーター1内部の電力制御要素とデジタル電力ルーター1の外部の電力制御要素間の通信は、Eaves 2012において記述されているインライン変調技術を使用する送電用導体と同一の導体により、又は電力制御要素とデジタル電力ルーターコントローラ6間の外部有線又は無線通信経由で行うことができる。通信は、電力制御要素が識別コード、状態、特性及び能力を含み得るデータを伝達できるデジタル電力ネットワークの「プラグアンドプレイ」設定を可能にするためにも有益である。しかし、自動設定なしの場合でも、デジタル電力ルーティングテーブルは、オペレーター又は工場設定のインターフェースを使用して行う電力制御要素の手動設定を可能にする。
【0031】
デジタル電力ルーターコントローラ6と電力制御要素間の通信機能はネットワーク要素のタイプ又は状態の変化の動的更新も可能とし、且つ、電源機能の遂行と負荷又はスイッチ機能の遂行間の切り換えのようなネットワーク要素機能の変更を可能にする。
【0032】
本発明の実施形態の記述において、明確性を期して特定の専門用語を使用した。その記述では、特定の述語は、少なくとも、同様な方法で機能して同様な結果を達成する技術的且つ機能的な等価物を含むことを意図している。また、本発明の特定の実施形態が複数のシステム要素又は方法ステップを含む幾つかの例においては、これらの要素又はステップは、単一の要素又はステップにより置換され得る。同様に単一の要素又はステップは、同一の目的を果たす複数の要素又はステップにより置換され得る。さらに、様々な特性のパラメータ又はその他の値が本発明の実施形態のために本明細書において指定される場合、これらのパラメータ又は値は、別段の指定のない限り、1/100、1/50、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2、2/3、3/4、4/5、9/10、19/20、49/50、99/100等に(又は1、2、3、4、5、6、8、10、20、50、100倍等に)増減調整すること、又はその四捨五入近似値により置き換えることができる。さらに、この発明は、その特定の実施形態に関連して教示及び記述されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対する形態及び詳細における様々な置換及び変更を行い得ることを理解するであろう。さらに、他の特徴、機能及び長所も本発明の範囲内に存在するが、本発明のすべての実施形態は、必ずしも上述された長所のすべてを達成すること、又は上述された特徴のすべてを有することを要しない。また、1つの実施形態に関連して本明細書において考察されたステップ、要素及び特徴は、同様に他の実施形態に関連して使用され得る。本出願全体を通じて引用された参照原本、学術論文、特許、特許出願等を含む参照文献の内容は、参照により本明細書に全面的に包含される。そしてこれらの参照文献からの適切な構成要素、ステップ、及び特徴付けは、この発明の実施形態に含まれることも、含まれないこともあり得る。さらにまた、背景技術の項において示されている構成要素及びステップは、この開示の一環であり、且つ、本発明の範囲内における開示中のいずれかの場所において記述された構成要素及びステップとともに使用されること又はそれに代わることができる。方法クレームにおいて段階が特定の順序で記述される場合−参照を容易にするために追加される順序づけ前置記号を伴って又は伴わずに−これらの段階は、用語又は表現により別段の指定又示唆がなされていない限り、これらの記述された順序に時間的に限定されると解するべきではない。