(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550064
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】小型または中型モジュラー原子炉の一次回路用のモータ駆動遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
G21C 15/243 20060101AFI20190711BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20190711BHJP
H02K 7/02 20060101ALI20190711BHJP
H02K 5/128 20060101ALI20190711BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20190711BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20190711BHJP
F04D 7/08 20060101ALI20190711BHJP
F04D 13/06 20060101ALI20190711BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
G21C15/243 510A
H02K7/14 B
H02K7/02
H02K5/128
H02K5/20
H02K9/19 A
F04D7/08 C
F04D13/06 K
F04D29/58 C
F04D29/58 D
F04D13/06 C
G21C15/243 510Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-548426(P2016-548426)
(86)(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公表番号】特表2017-500583(P2017-500583A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014072349
(87)【国際公開番号】WO2015055831
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】1360132
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516114097
【氏名又は名称】クライド・ユニオン・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーベ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】スディ,ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ブラス,セシール
(72)【発明者】
【氏名】スチール,シルバン
(72)【発明者】
【氏名】カレニャト,オリビエール
【審査官】
道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0294405(US,A1)
【文献】
特開平02−040094(JP,A)
【文献】
特開昭57−129291(JP,A)
【文献】
特開2003−130983(JP,A)
【文献】
特開2012−147620(JP,A)
【文献】
特開平03−157512(JP,A)
【文献】
特開2012−052425(JP,A)
【文献】
特開昭57−020595(JP,A)
【文献】
特開平02−011890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/243
H02K 7/118
F04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の一次回路内で冷却材を循環するためのモータ駆動遠心ポンプであって、
密封型モータユニット(12)と、液圧部分(13)と、前記冷却材中に浸漬されたシャフト(17)であって、前記密封型モータユニット(12)によって回転され、前記シャフト(17)に固定された前記液圧部分(13)の羽根車(22)によって前記冷却材をポンプ送給するシャフト(17)とを含み、前記モータユニット(12)が、乾燥した固定子(18)と、前記シャフト(17)に確実に取り付けられた、浸漬された回転子(19)とを含む、モータ駆動遠心ポンプにおいて、
前記モータ駆動ポンプがさらに、前記モータユニット(12)を熱的に隔絶することができるように、前記モータユニット(12)と前記液圧部分(13)との間に断熱部分(14)を含み、前記シャフト(17)が前記断熱部分(14)を通過し、前記断熱部分(14)が、前記モータ駆動ポンプを、前記モータユニット(12)を含む冷えた部分と、前記液圧部分(13)を含む熱い部分とに分離すること、
前記モータ駆動ポンプがまた、前記モータユニット(12)の前記回転子(19)と前記液圧部分(13)の前記羽根車(22)との間で前記シャフト(17)に確実に取り付けられた、前記冷却材中に浸漬されたフライホイール(23)であって、前記モータユニット(12)が前記シャフト(17)を回転することを止めたとき、最短化された減速時間を保証することを可能にする、浸漬されたフライホイール(23)を含むこと、および、
前記フライホイール(23)が、前記ポンプの前記冷えた部分から前記熱い部分に向かって前記フライホイール(23)の周囲で前記冷却材の循環を引き起こす、前記回転子(19)の方に面する前記フライホイール(23)の表面上に形成された羽根付きホイール(40)を含むこと、
を特徴とするモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項2】
前記モータユニット(12)に接続された外部冷却回路(42)を含み、前記羽根付きホイール(40)によって押された前記冷却材が前記外部冷却回路(42)を通って循環し、前記冷却された冷却材が、前記モータユニット(12)に再導入される、請求項1に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項3】
前記外部冷却回路(42)が、前記モータ駆動ポンプの本体(26)に巻かれた少なくとも1つの巻き(50)を含み、前記少なくとも1つの巻き(50)を通って循環する前記冷却材が、シェル(51)の中で前記本体(26)の周りを循環する二次冷却材によって冷却される、請求項2に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項4】
前記シャフト(17)の回転を案内する少なくとも3つのラジアル軸受を含み、前記回転子(19)が第1ラジアル軸受(30)と第2ラジアル軸受(31)との間に配置され、前記フライホイール(23)が前記第2ラジアル軸受(31)と第3ラジアル軸受(32)との間に配置され、前記断熱部分(14)が、前記羽根付きホイール(40)によって引き起こされた冷却材の循環によって、前記第3ラジアル軸受(32)が前記冷却材で潤滑されることを可能にするように構成されたフィードダクト(44)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項5】
前記羽根付きホイール(40)が、前記回転子(19)の方に面する前記フライホイール(23)の表面上に形成されたチャネルまたは溝(41)から構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項6】
前記シャフト(17)の回転を案内する少なくとも3つのラジアル軸受を含み、前記回転子(19)が第1ラジアル軸受(30)と第2ラジアル軸受(31)との間に配置され、前記フライホイール(23)が前記第2ラジアル軸受(31)と第3ラジアル軸受(32)との間に配置され、前記羽根付きホイール(40)によって引き起こされる前記冷却材の循環によりまた前記第3ラジアル軸受(32)が潤滑されることが可能になる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項7】
前記第1ラジアル軸受(30)および前記第2ラジアル軸受(31)が、滑り軸受および/またはパッド軸受の動圧流体軸受であり、前記第3ラジアル軸受(32)が静圧流体軸受である、請求項5に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項8】
前記第1ラジアル軸受(31)の近くに配置され且つ前記シャフト(17)のアキシャル方向移動を阻止できるアキシャル軸受(34)を含む、請求項5または6に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項9】
前記アキシャル軸受(34)がティルティングパッド軸受である、請求項7に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項10】
前記フライホイール(23)がインコネル625から作製される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【請求項11】
所定の方向の前記シャフト(17)の回転を機械的に防止できる逆回転防止装置(60)を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のモータ駆動遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の冷却を提供し且つ冷却材を一次回路を通して循環する一次モータ駆動ポンプの分野に関し、および詳細には、小型および中型モジュラー炉に適したモータ駆動一次ポンプの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
1000MWを超える電力を分配可能なより強力な原子炉と違い、一般にSMR(Small Modular Reactorsを表す)と呼ばれる小型および中型モジュラー炉の分野は、かなり拡がり続けている。SMRの多くの設計は進行中であり、一般に50〜700MWの範囲内(小型炉では300MW未満、中型炉では700MW未満)である。伝統的な設備よりも費用が掛からずまた柔軟性があるので、SMRは、特に発展途上国において、増大する電気エネルギー需要に対する回答を提供する。
【0003】
SMRのモジュラー構成は、ニーズに合ったモジュラー数を使用することによって、生産能力を徐々に増大することを可能にする。それらはよりコンパクトなので、輸送前に部分的に予備製作し、最終的なエンドユーザの現場で組み立てることができる。プラグアンドプレイソリューションとして設計されているので、SMR設備はより迅速に構築可能であり、費用調達の観点で、現場で実行される設置作業の観点で、サイズおよび最終用途の観点で、より優れた柔軟性を提供する。
【0004】
SMRとして想定される多数の原子炉の種類があり、具体的には加圧水型原子炉(PWR:Pressurized water reactor)、高温原子炉(HTR:high temperature reactor)または溶融塩原子炉(MSR:molten salt reactor)さえある。PWRでは、冷却材を構成する普通の水が、およそ150バールの高圧の下で、液状に維持される。一次回路内で水は核燃料によって生成された熱を収集し、蒸気発生器を使用する二次回路の流体に伝える。SMRに想定される一体型PWRにおいて、1つまたは複数の蒸気発生器が、原子炉と同じ格納容器内に設置される。原子炉からの熱は二次回路によって蒸気タービンに伝えられ、蒸気タービンが、電気を発生する役割を課された交流発電機を駆動する。
【0005】
1つまたは複数の一次ポンプが、一次回路を通して水を炉心と蒸気発生器との間で循環する。一次冷却材ポンプはPWR施設の運転および安全に欠かせない構成要素である。SMRの設計は一次ポンプの構造の見直しを伴う。その理由は、原子炉、一次回路および蒸気発生器を1つのモジュール内に有する一体型PWRの構造は、幾何学的および機能的な、ならびに耐久性、または安全要求の観点で、新たな要件を課すためである。
【0006】
簡素、コンパクト、安価であり且つほとんどの厳しい安全要求を満たす原子炉の壮大な仕様書が、その構成部品に論理的に伝えられる。既存の一次ポンプがこの新規要件に対して説明される。本発明の非限定的な例として、SMRに適したモータ駆動一次ポンプは、機能的要件として、60年の耐用年数、300〜350℃の間のモータ駆動ポンプ入口流体温度、140〜160バールの運転圧力、600〜700kg/m
3の冷却材密度、および多くの幾何学的要件(例えば全寸法の外囲容器を垂直または水平に取り付ける能力)、設置要件(例えばそれを溶接によって設置してはならないという事実、格納容器の内側に構成要素を残さないで原子炉の外側からそれを完全に切り離すことができなければならないという事実)、および外部要件(例えば耐震要件)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従ってこれらの新規且つ壮大な要件を満たすモータ駆動一次ポンプを有することが望ましい。適切なモータ駆動一次ポンプは、簡単な設計で、頑丈で、経済的で、大量生産に適したものであり、およびほとんどの厳しい機能的および規制要求を満たす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明の主題は、原子炉の一次回路内で冷却材を循環するためのモータ駆動遠心ポンプである。モータ駆動ポンプは、密封型モータユニットと、液圧部分と、冷却材中に浸漬されたシャフトであって、密封型モータユニットによって回転され、シャフトに固定された液圧部分の羽根車によって冷却材をポンプ送給するシャフトとを含む。モータユニットは、乾燥した固定子と、シャフトに確実に取り付けられた、浸漬された回転子とを含む。モータ駆動ポンプはまた、冷却材中に浸漬され、モータユニットの回転子と液圧部分の羽根車との間でシャフトに確実に取り付けられたフライホイールであって、モータユニットがシャフトを回転することを止めたとき、最短化された減速時間を保証することを可能にするフライホイールを含む。フライホイールは、冷却材の循環を引き起こす羽根付きホイールであってモータユニットを冷却することを可能にする羽根付きホイールを含む。
【0009】
有利に、モータ駆動ポンプは、モータユニットに接続された外部冷却回路を含み、羽根付きホイールによって押された冷却材は外部冷却回路を通って循環する。冷却材は、前記回路による冷却の後、モータユニットに再導入される。
【0010】
有利に、外部冷却回路は、モータ駆動ポンプの本体に巻かれた少なくとも1つの巻きを含み、少なくとも1つの巻きを通って循環する冷却材は、シェルの中で本体の周りを循環する二次冷却材によって冷却される。
【0011】
有利に、羽根付きホイールは、回転子の方に面するフライホイールの表面上に形成されたチャネルまたは溝から構成される。
【0012】
有利に、モータ駆動ポンプは、シャフトの回転を案内する少なくとも3つのラジアル軸受を含む。回転子は第1ラジアル軸受と第2ラジアル軸受との間に配置される。フライホイールは第2ラジアル軸受と第3ラジアル軸受との間に配置される。羽根付きホイールによって引き起こされる冷却材の循環により第3ラジアル軸受が潤滑されることも可能になる。
【0013】
有利に、第1ラジアル軸受および第2ラジアル軸受は、滑り軸受、パッド軸受および/または三円弧(three−lobe)軸受タイプの動圧流体軸受であり、第3ラジアル軸受は静圧流体軸受である。
【0014】
有利に、モータ駆動ポンプはまた、第1ラジアル軸受の近くに配置され且つシャフトのアキシャル方向移動を阻止できるアキシャル軸受を含む。
【0015】
有利に、アキシャル軸受はティルティングパッド軸受である。
【0016】
有利に、モータ駆動ポンプは、モータユニットを一次回路から熱的に隔絶するために、モータユニットと液圧部分との間に断熱部分を含む。シャフトはフライホイールと羽根車との間で断熱部分を通過する。
【0017】
有利に、フライホイールは、インコネル(Inconel)625から作製される。
【0018】
有利に、モータ駆動ポンプは、所定の方向のシャフトの回転を機械的に防止できる逆回転防止装置を含む。
【0019】
以下の図に例として与えられたいくつかの実施形態の詳細な記載を読むことにより、本発明はより深く理解され、さらなる有利性が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1b】本発明によるモータ駆動ポンプがSMRに垂直な構成でどのように一体化されるかを示す。
【
図2a】本発明の好ましい実施形態によるモータ駆動一次ポンプを示す。
【
図2b】本発明の好ましい実施形態によるモータ駆動一次ポンプを示す。
【
図2c】本発明の好ましい実施形態によるモータ駆動一次ポンプを示す。
【
図3】本発明の好ましい実施形態で使用される軸受の組を記載する。
【
図4a】本発明の好ましい実施形態で使用される羽根付きホイールを装備したフライホイールを記載する。
【
図4b】本発明の好ましい実施形態で使用される羽根付きホイールを装備したフライホイールを記載する。
【
図5a】本発明の好ましい実施形態で使用される外部冷却回路を記載する。
【
図5b】本発明の好ましい実施形態で使用される外部冷却回路を記載する。
【
図6a】本発明の好ましい実施形態で使用される逆回転防止装置を記載する。
【
図6b】本発明の好ましい実施形態で使用される逆回転防止装置を記載する。
【
図6c】本発明の好ましい実施形態で使用される逆回転防止装置を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
明確にするために、様々な図面中、同一の要素には同一の参照番号が付けられる。
【0022】
図1aおよび1bは、本発明によるモータ駆動一次ポンプ、および垂直な構成におけるSMRとのその一体化を示す。
図1aは原子炉11の上側部分と、本発明によるモータ駆動一次ポンプ10とを示す。原子炉11の上側部分は加圧器を含む。加圧器内には、原子炉11の下側部分内の制御された核反応の影響により高圧且つ高温で冷却材が保持されている。原子炉一次回路は、加圧器と1つまたは複数の蒸気発生器との間で流体を循環する1基または複数のモータ駆動ポンプを含む。
図1aおよび1bに示される原子炉11の上側部分は、ドーム型部分と略円筒状基部とを含む。
図1aは、図をより分かりやすくするためにモータ駆動一次ポンプ10を1つだけ装備された原子炉11を示す。しかしながら、いくつかのモータ駆動一次ポンプが原子炉11の上側部分の略円筒状基部に、およびこの上側部分の周囲に固定されることも考えられる。
図1aにおいて8基のモータ駆動一次ポンプを基部の周囲に配置可能であり、図中、8基のポンプの接続インターフェースを見ることができる。この例では原子炉の設計は、モータ駆動一次ポンプが垂直に頭部を下にして取り付けられるべきであることを命じている。モータ駆動一次ポンプ10はモータユニット12と液圧部分13とを含み、それらは断熱部分14によって分離されている。基部は一次回路の一部を含む。
図1bに示されるように一次ポンプは、炉心に接続された共通マニホルド15に接続される。冷却材は、蒸気発生器に接続された共通放出エンクロージャ16にポンプで送給される。モータ駆動ポンプが高度に密閉された環境に、とりわけ原子炉の壁に非常に近接して一体化されるという事実が、モータ駆動ポンプの設計に、とりわけ羽根車の上流の、羽根車を通過する、およびその下流の流体の流れに関して、多くの制約を課すことにも注目すべきである。
【0023】
図1aおよび1bに示されているモータ駆動一次ポンプおよびその原子炉への一体化は、例として与えられ、本発明を限定しない。この例において、モータ駆動ポンプは垂直の構成であり、冷却材は普通の水である。より大まかに言えば、本発明は、原子炉の一次回路内で冷却材を循環するためのモータ駆動遠心ポンプに関する。
【0024】
図2a、2bおよび2cは、本発明の好ましい実施形態によるモータ駆動一次ポンプを示す。モータ駆動一次ポンプはモータ駆動遠心ポンプであり、これは密封型モータユニット12と、断熱部分14によって分離された液圧部分13とを含む。これら3つの要素は、それらの間を通過する、長手軸の周りを回転するシャフト17を有する。回転可動アセンブリは一次回路の冷却材中に浸漬される。
【0025】
モータユニット12は乾燥した固定子18と、シャフト17に確実に取り付けられた浸漬された回転子19とを含み、浸漬回転子はシャフト17を回転させ、従って液圧部分13の可動要素を回転させる。
【0026】
液圧部分13は、共通マニホルド15に接続された取込みダクト20と、共通放出エンクロージャ16に接続された放出ダクト21とを含み、これらのダクトはシャフトに固定された羽根車22によって分離されている。羽根車22の回転は、シャフト17によって駆動され、冷却材がポンプ送給されることを許容する。
【0027】
断熱部分14は、モータ駆動ポンプを原子炉に固定する手段を含む。これらの固定手段は、モータ駆動ポンプの簡単な分解が可能になるように好ましくはスタブ−ナット型のものである。断熱部分14は、モータ駆動ポンプを、モータユニット12を含む冷えた部分と、一次回路に接続された液圧部分13を含む熱い部分との間で分離する。典型的に、70℃〜160℃の間の温度が冷えた部分に求められ、一方で熱い部分は冷却材の温度、すなわち300℃〜350℃の間の温度に近い。それを達成するために、本発明によるモータ駆動一次ポンプは、以下で詳細に記載される冷却回路を含む。
【0028】
原子炉の冷却は原子炉の安全性において決定的な要素である。モータ駆動ポンプまたはそれに動力を供給する電力網の故障時、冷却材の流れを維持するために、従って最低限の量の原子炉冷却を維持するために、かなりの流体流量を維持することが必要である。例として、この要求は、電力供給の中断の結果としてモータが停止した3秒後、公称流量の50%超またはそれに等しい流量を維持する要求について量的に表現することができる。シャフトおよび回転子の慣性がこの種の要求を満たすのに十分でないことが起こる。そのため、モータ駆動ポンプはまた、モータ駆動ポンプの熱い部分と冷えた部分との間で、または言い換えるとモータユニット12の回転子19と液圧部分13の羽根車22との間でシャフト17に確実に取り付けられた浸漬フライホイール23を含む。フライホイールは電力供給の停止または故障後の数秒間、十分な冷却材流量を維持することを可能にする。有利にはフライホイールはまた、モータ駆動ポンプが開始または停止されるとき、シャフト17の回転速度を滑らかにすること、および急な動きを制限することを可能にする。フライホイールはまた、放射線遮断を構成し、これにより、モータ駆動ポンプ接続インターフェースを介して原子炉から逸出し得る放射性放射を制限することが可能になる。フライホイールの仕様は、シャフトの慣性、モータの摩擦損失従って出力、および冷却回路の能力に直接的な影響を有する。シャフトに確実に取り付けられ、およびステンレス鋼の密度を超える、好ましくは8kg/lを超える高密度の材料から作製された、厚いディスクの形態のフライホイールを有することが有利である。有利にはフライホイールはニッケルおよびクロムをベースとする合金から、好ましくはインコネル(Inconel)625というその登録商品名によって知られるNiCr
22Mo
9Nb合金から作製される。
【0029】
図3は、信頼性のある回転子動力学を保証するために本発明の好ましい実施形態で使用される軸受の組を記載する。シャフト17およびそれに接続された構成要素、特に回転子19、フライホイール23および羽根車22は、モータユニットの固定要素から、液圧部分から、および断熱部分14から構成されたモータ駆動ポンプ本体26に対して回転可動性を有するアセンブリ25を形成する。可動アセンブリ25は、モータ駆動ポンプを介して循環する冷却材の中に浸漬される。モータ駆動ポンプは、冷却材がポンプ送給されることによって潤滑される軸受の組を含み、可動アセンブリ25がモータ駆動ポンプ本体26に対して回転できることを保証する。
図3に示される好ましい実施形態において、軸受の組は、
− 回転子19とシャフトの上端部との間に配置された第1のラジアル軸受30、
− 回転子とフライホイールとの間に配置された第2のラジアル軸受31、
− フライホイールの近くおよびフライホイールの第2軸受と反対の側に配置された第3のラジアル軸受32、
− 羽根車22の近くに配置された第4のラジアル軸受33
を含む。
【0030】
第1および第2のラジアル軸受30および31は、モータユニット12の固定部分内のシャフト17の回転を案内する。それらは乾燥固定子18に対する浸漬回転子19の回転を案内する。これらの軸受30および31はモータ駆動ポンプの冷えた部分に配置される。
【0031】
有利に軸受30および31は滑り軸受またはパッド軸受であり、好ましくは、登録商品名Ekasicを有する炭化ケイ素から作製された5つのパッドと、炭化タングステン表面処理を有するステンレス鋼ブッシングとを含むパッド軸受である。
【0032】
第3および第4のラジアル軸受32および33は、断熱部分14の固定部分内のシャフト17の回転を案内する。これらの軸受32および33はモータ駆動ポンプの熱い部分内に配置される。有利に軸受32および33は静圧流体軸受および/または三円弧(three−lobed)軸受タイプのものである。それらはステライトまたはColmonoy(登録商標)タイプの合金から作製され得る、または表面処理によってまたはコーティングによって得られた表面硬化を有し得る。
【0033】
モータ駆動ポンプの軸受の組はまた、シャフトのアキシャル方向移動を阻止するために第1ラジアル軸受30の近くに配置されたアキシャル軸受34を含む。自由にアクセス可能なその上側部分を介したモータ駆動ポンプの簡単な分解を可能にするために、アキシャル軸受34を回転子とシャフトの上端部との間に配置することが有利である。有利にアキシャル軸受34は、登録商品名Ekasic Gを有する炭化ケイ素から作製された15個のパッドと、登録商品名Ekasic Cを有する炭化ケイ素から作製されたディスクとを好ましくは含むティルティングパッド軸受から構成される。
【0034】
図4aおよび4bは本発明の好ましい実施形態で使用される羽根付きホイールを取り付けられたフライホイールを記載する。回転可動アセンブリは冷却材の中に浸漬される。それは従って高温まで自然に上昇される。シャフトの比較的高い回転速度(典型的に1分あたり2000〜4000回転の間)によって、軸受内に、より大まかに言えばフライホイール23および浸漬回転子19などの回転部品において、熱が生成される。そのためモータ駆動ポンプ、特にモータユニット12を冷却することが必要である。本発明の1つの特に有利な特徴によれば、フライホイール23は羽根付きホイール40を含み、羽根付きホイール40によって、モータユニットを冷却することを可能にする冷却材の循環が引き起こされる。
【0035】
この意図は、冷却されるべき移動部品近くの流体に動きを引き起こすために、シャフトの回転を使用することである。この羽根付きホイールに関して想定される多数の実施形態が存在する。それはフライホイールの表面に形成されたチャネルまたは溝から構成可能である。本発明の好ましい実施形態において、
図4aおよび4bに示されるように、羽根付きホイール40は、フライホイール23の上側表面に形成された複数の真直ぐなフィン41を含む。ここでフライホイールの上側表面は回転子の方を向く表面である。それは
図4bの矢印によって表された流体の循環を引き起こす。この循環は一方で流体がこの後で記載される外部冷却回路42にフィードされることを可能にし、他方で流体のストリームがフライホイール23の周囲でモータ駆動ポンプの冷えた部分から熱い部分に向かって生成されることを可能にする。この流体ストリームは特にフライホイールの下に配置された第3ラジアル軸受32に潤滑を提供する。図に示される好ましい実施形態において、第3軸受は、静圧および/または3つのローブを有する軸受である。この場合、羽根付きホイール40によって引き起こされた冷却材流体の循環の結果として冷却材が第3ラジアル軸受32を潤滑できるように、フィードダクト44が断熱部分14内に有利に形成される。
【0036】
フライホイールに形成された羽根付きホイールによって引き起こされるこの冷却材の循環の使用は、それが特定構成要素の直接の冷却と、軸受の潤滑と、外部冷却回路への冷却材の供給とを同時に可能にする一方で同時に摩擦損失を制限するので、特に有利である。これは、冷えた部分すなわちフライホイールの上側表面のおよそ80℃の温度と、熱い部分すなわちフライホイールの下側表面のおよそ150℃の温度との間でフライホイールを分離することを効果的に可能にする。
【0037】
代替的な構成において、羽根付きホイールをフライホイールの下側表面に形成することが想定される。
【0038】
図5aおよび5bは、本発明の好ましい実施形態で使用される外部冷却回路を記載する。外部冷却回路42であって、これを通してフライホイール23の羽根付きホイール40によって押される冷却材が循環する外部冷却回路42である。冷却回路42はモータ駆動ポンプ本体26の周囲に巻かれた1つまたは複数の巻き50を含む。少なくとも1つの巻き50を通って循環する冷却材は、円筒型シェル51内で本体26の周囲を循環する第2冷却材によって冷却される。第2冷却剤が加圧且つ冷却されることを可能にする第2回路と呼ばれる第2冷却剤の液圧回路は描かれていない。いかなる従来型の回路も本発明に適している。
【0039】
外部冷却回路42は、少なくとも1つの巻き50の壁を通過する熱の交換による冷却材の冷却と、モータ駆動ポンプ本体26の壁によるモータ駆動ポンプの直接的な冷却とを同時に可能にする。
【0040】
羽根付きホイール40によって移送される冷却材の加速により、モータ駆動ポンプ本体26内に形成されたフィードダクト43を経由して少なくとも1つの巻き50にフィードすることが可能になる。冷却材は巻きを通過するにつれ冷却され、その後回転子の上端部近くでモータユニットに再び導入される。有利に流体は、第1ラジアル軸受30および/またはアキシャル軸受34に面する、モータ駆動ポンプ本体26内に形成されたフィードダクト52を経由して再び導入される。外部冷却回路42と協同する羽根付きホイール40は従って、その作動および耐久性と両立する温度帯(temperature window)内に密封型ユニットを維持することを可能にする流体回路を作り出す。この装置は簡素且つ非常に効率的であり、60〜100℃の間の温度帯に維持された冷えた部分が達成される。
【0041】
図6aおよび6bは本発明の好ましい実施形態で使用される浸漬された逆回転防止装置を記載する。ポンプの信頼性は設置の安全性のカギである。ポンプの意図的または偶発的な停止の際にポンプ送給の方向が逆転されないことを保証することが必要である。これは、モータ駆動ポンプが停止される一方で他の構成要素が依然回転しているときポンプの送出側の圧力が取込み側の圧力を超えるためである。逆の流れがモータ駆動ポンプを通過し、それを反対方向に回転させる。その速度は高く、動的、液圧的および機械的な観点において許容できる限界を超える可能性がある。
【0042】
そのため、本発明によるモータ駆動ポンプは逆回転防止装置を含み、これはシャフトが所定の方向に回転することを機械的に阻止することができる。冷却材に浸漬された逆回転防止装置60は固定部分61と、シャフトに固定された可動部分81とを含む。可動部分は
図6a、6bおよび6cに示されていない。本発明の好ましい実施形態において、それは先に記載したフライホイール23である。この場合、固定部分はフライホイール23に面する断熱部分14の表面に形成可能である。この実施形態は
図5aに示されている。
【0043】
逆回転防止装置60の可動部分81は、固定部分61に面する少なくとも1つのキャビティ80と、少なくとも1つの可動ピン62とを含む。逆回転防止装置60は、シャフト17が十分に高い速度で回転されるとすぐに少なくとも1つの可動ピン62が遠心力によって前記キャビティ80の内側に保持されるように、構成される。可動部分81の回転速度が所定の閾値未満に低下すると、可動ピン62は重力により落下し、キャビティ80を部分的に離れる。
【0044】
固定部分61は、2つの傾斜面64および65から構成された少なくとも1つの傾斜路63を含み、第1面64は緩やかな勾配であり、第2面65は急な勾配である。
図6a、6bおよび6cに示される実施形態において、第2面65は垂直である。それはまた窪み66を含み、回転速度が十分に低い場合にピン62が重力により落下すると、窪み66の中にピン62が挿入され得る。
【0045】
従って逆回転防止装置の背後の原理は以下のとおりである。すなわち、モータ駆動ポンプが始動されると、キャビティ80に部分的に挿入されたピン62は許容された方向に回転駆動され、従って後退して急勾配の面65に形成された窪み66に入り込む前に緩やかな勾配の面64を上る。回転速度が所定の閾値を超えると、遠心力がピン62をキャビティ80内の適所に保持する。速度がこの閾値未満に低下するとすぐに逆のことが起こる、すなわち、ピン62が重力により落下する。必要に応じて、シャフト17の回転方向の逆転が、ピン62を面65の窪み66の方に駆動する。面65の急勾配(面は図に示される実施形態において垂直である)により、ピン62がこの面65を上ることは阻止され、従って許容されない方向におけるシャフト17の回転は阻止される。
【0046】
換言すると、逆回転防止装置60は、速度閾値を下回ると、
− 可動部分81が許容された回転方向に回転しているとき、緩やかな勾配の傾斜面64との接触によってピン62がキャビティ80の中に押し戻され、
− 可動部分81が反対方向に回転しているとき、キャビティ80の外側のピン62の部分が急勾配の傾斜面65との接触によって回転を阻止する、
ように考えられる。
【0047】
この逆回転防止装置に関して想定される多数の実施形態が存在する。
図6a、6bおよび6cに示される本発明の好ましい実施形態において、可動部分81はフライホイール23の中に形成される。1つ、または好ましくはいくつかのキャビティ80が、フライホイールの下側表面に形成される。キャビティは、シャフト17の長手軸と平行な軸に沿った実質的に円筒状の内部形状を有する。従って逆回転防止装置はキャビティ80と同じ数のピン62を含む。ピン62は外面的には主軸に沿った実質的に円筒状のものであり、重力により長手軸に沿ってキャビティ80内を摺動するように設計される。同様に、円弧状の窪み66が垂直面65に形成され、その形状は円筒ピン62に合っている。
【0048】
図6bおよび6cに示されるように、ピン62は、ピンの中心に形成されピン62の主軸と実質的に平行な開放型ダクト70を含み得る。開放型ダクト70は、ピン62が移動するとき冷却材がキャビティ80の内側に流れることをより容易にする。
【0049】
少なくとも1つのピン62はまた、その2つの長手方向端部において面取りされた外形または丸められた外形71を含み得る。
図6bに側面で示される面取りされた外形または丸められた外形71は、円筒の基部と円筒の母線との間の直角をそこで壊す。この構成はピンが緩やかな勾配の面64を上ることを有利により容易にし、および所定の速度閾値未満で可動部分と固定部分61との間の衝突を制限することを可能にする。
【0050】
前に記載したように、複数のキャビティ80および複数のピン62を含む逆回転防止装置が想定される。従ってキャビティ80はシャフト17の回転軸から等距離の所に形成され、また可動部分81の外周に沿って等しい角度で分散される。例えば、装置は、フライホイール23の4つの主要点に配置された4つのピン62を含む4つのキャビティ80を含む。
【0051】
同じ数のキャビティ80および傾斜路63を含む逆回転防止装置も想定される。傾斜路63は可動部分81のキャビティ80に面した状態で固定部分61上に形成され得、および固定部分61の円周に沿って等しい角度で分散され得る。
図6aに示される例では、4つの傾斜路64がフライホイール23に面する断熱部分14の表面上の4つの主要点に形成される。このように構成されるとき、回転の阻止は、ピン62のそれぞれの、固定部分の傾斜路65との接触の結果である。シャフトによって生成されるトルクは、ピンのそれぞれを横切って有利に分割される。
【0052】
代替的な構成において、逆回転防止装置は、異なる数のキャビティ80および傾斜路63を含む。例えば、装置は既に記載した4つのキャビティ80を含み、および断熱部分14上に形成された5つの傾斜路を含む。この場合、回転の阻止は、たった1つのピン62の、たった1つの傾斜路65との接触の結果である。この構成はいくつかの利点を提供する。傾斜路63の数を増やすことにより、シャフトの回転が阻止される前のシャフトの角度的移動を低減することが可能になる。さらに、傾斜路63と異なる数のピン62を使用することによって、回転の阻止は1つのピン62によって実行される。モータ駆動ポンプの連続的な停止の間、回転を阻止するために異なるピンを供することができ、従ってピンの機械的応力を制限することが可能になる。
【0053】
本発明による逆回転防止装置は浸漬され、その構成要素は高い機械的応力に曝される。従って装置は、禁止された回転方向に、典型的におよそ1000Nmのかなりの反対トルクを提供できなければならない。典型的におよそ1分あたり180回転の所定の速度閾値未満の加速および減速段階において、構成要素は傾斜路に対するピンの反復する衝突に耐えることができなければならない。これらの要件を満たすために、ピンはステンレスから、または、代替的には、インコネルタイプの合金から有利に作製される。傾斜路の、ピンの、またはキャビティの少なくとも表面部分を、表面硬化プロセスを用いて機械的に強化することも想定される。表面硬化が意味するものは、表面処理またはコーティングの使用である。PVD(Phase Vapor Deposition(気相成長)を表す)プロセスを用いた表面処理が想定される。
【0054】
最後に記載すべきは、図に示される実施形態において、モータ駆動遠心ポンプは原子炉に垂直に取り付けられることである。この構成において、逆回転防止装置60は、ピン62の垂直移動を許容するように構成されたキャビティを含む。所定の閾値未満の回転速度の低下は逆回転防止装置の全てのピンを落下させる。この実施形態は本発明において非限定的である。それはまた例えば水平に取り付けられたモータ駆動遠心ポンプも想定し、すなわちシャフトの回転軸は水平である。この場合、逆回転防止装置は、それらのピンの半径方向移動を許容するように構成されたキャビティを含む。ピンは遠心力によってキャビティの底部に確実に押し込められる。所定の閾値未満の回転速度の低下は逆回転防止装置のピンのいくつかを落下させ、このときシャフトの軸より下に位置するピンはキャビティ内に完全に残っている。回転軸より上に位置するピンだけが、回転の機械的な阻止に寄与する。この構成に関して、多数のキャビティ、ピンおよび傾斜路が好まれる。