(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550070
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】動的及び静的な圧力並びに/或いは温度を測定するための圧電測定素子
(51)【国際特許分類】
G01L 23/10 20060101AFI20190711BHJP
H01L 41/047 20060101ALI20190711BHJP
H01L 41/338 20130101ALI20190711BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20190711BHJP
H01L 41/22 20130101ALI20190711BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20190711BHJP
G01L 1/16 20060101ALI20190711BHJP
G01K 7/32 20060101ALI20190711BHJP
G01L 1/10 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
G01L23/10
H01L41/047
H01L41/338
H01L41/187
H01L41/22
H01L41/113
G01L1/16 Z
G01K7/32 Z
G01L1/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-558054(P2016-558054)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公表番号】特表2017-514113(P2017-514113A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】CH2015000044
(87)【国際公開番号】WO2015139149
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年3月19日
(31)【優先権主張番号】434/14
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソマー、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】カヴァローニ、クラウディオ
【審査官】
大森 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−198811(JP,A)
【文献】
実開昭63−073648(JP,U)
【文献】
特開2006−250711(JP,A)
【文献】
特開2014−011327(JP,A)
【文献】
特開2009−103483(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0277618(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/164016(WO,A1)
【文献】
特開2008−133187(JP,A)
【文献】
特表平03−502609(JP,A)
【文献】
特開昭60−105917(JP,A)
【文献】
米国特許第05578759(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/10,1/16,7/00−23/32,
G01L 27/00−27/02,
G01K 7/32,
H01L 41/047,41/113,41/187,41/22,
H01L 41/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的な圧力を測定するため、また追加的に温度及び/又は静的な圧力を測定するための測定素子(2)であって、前記測定素子が圧電材料で作った本体(20、20’)を含み、前記本体(20、20’)が横方向(Ta)に互いに対向して配置される側面(21、22)を有し、その個々の上に側面電極(210、220)が配置され、前記測定素子(2)が圧電効果を利用する目的で与圧方式で縦方向(L)に測定素子台(1)内に配置することができると共に力(F)を受けることができる、測定素子(2)において、
前記本体(20、20’)の圧電材料は、圧電eテンソル(eijk)がゼロ以外のスラスト係数(eiij)を有するように選ばれ(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、したがって、逆圧電効果は、厚みすべり振動子の形式で動作中に利用することができ、圧電dテンソル(dijk)は、ゼロ以外の横係数(dijj)を追加的に有し(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、及び/又は、圧電dテンソル(dijk)は、ゼロ以外の縦係数(diii)を有し(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、したがって、横方向(Ta)の横圧電効果、及び/又は、縦方向(L)の縦圧電効果は、前記本体(20、20’)の逆圧電効果と同時に利用することができる、ことを特徴とする測定素子(2)。
【請求項2】
前記本体(20、20’)の前記圧電材料は、十分な振動品質を達成する目的で、電気機械結合係数(kiij2)が0.001よりも大きいか又は等しいように選択される、請求項1に記載の測定素子。
【請求項3】
前記本体(20、20’)は、圧電結晶から切り出され、前記本体(20、20’)が切り出されたときに露出する平面(40)は、前記圧電結晶の主軸(z)に対して、切断角度(α)に沿って配向され、本体(20、20’)は、ゼロ以外の、スラスト係数(eiij)、横係数(dijj)及び/又は縦係数(diii)を有する、請求項1又は2に記載の測定素子。
【請求項4】
前記圧電材料は、単結晶圧電材料である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
【請求項5】
前記圧電材料は、結晶学的な空間群P321に所属する単結晶圧電材料である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
【請求項6】
前記圧電材料は、ランガサイト(La3Ga5SiO14)と同じ結晶質構造を有する結晶である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
【請求項7】
前記本体(20、20’)の前記圧電材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、Pb[ZrxTi1−x]O3、0≦x≦1)、チタン酸ビスマス、又は、メタニオブ酸鉛、の形式の圧電セラミックである、請求項1又は2に記載の測定素子。
【請求項8】
前記本体(20、20’)は、縦方向(L)に互いに対向して配置される端面(23、24)上の端面電極(230、240)を特徴的に有し、前記端面電極は、供給ラインを介して電子的な評価及び励起システム(3)に接続することができ、したがって、前記縦圧電効果は、前記端面電極(230、240)で測定することができ、前記逆圧電効果は、同時に励振されて前記側面電極(210、220)で測定することができる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の測定素子。
【請求項9】
前記側面電極の一方(210)は、第1の端面電極(230)に導電接続され、前記側面電極の他方(220)は、第2の端面電極(240)に導電接続され、前記測定素子は、前記測定素子を動作させる目的のためには、2つの供給ラインを用いて電子的な励起システム(3)に接続することだけ必要である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の測定素子。
【請求項10】
測定素子受容体(1)を含み、請求項1から9までのいずれか一項に記載の測定素子(2、2’)が機能的な接続方式でクランプされ、前記測定素子(2、2’)は、電子的な評価及び励起システム(3)に接続することができ、前記逆圧電効果は、圧電効果に加えて同時に利用することができる、センサ構造(0)。
【請求項11】
前記励起システム(3)は、2つの供給ラインを用いて、即ち、第1の端面電極(230)に導電接続される第1の側面電極(210)と、第2の端面電極(240)に導電接続される第2の側面電極(220)とで、前記測定素子(2、2’)に接続することができる、請求項10に記載のセンサ構造(0)。
【請求項12】
測定素子受容体(1)内で縦方向(L)にクランプされる圧電体(20)を含む測定素子を用いて静的及び動的な圧力並びに/或いは温度を測定するための方法であって、前記圧電体(20)が、横方向(Ta)に互いに隔置されてその上に側面電極(210、220)が配置される側面(21、22)を特徴的に有する、方法において、
前記測定素子は、請求項1から9までのいずれか一項に記載の測定素子(2、2’)であり、前記測定素子(2、2’)は、供給ラインを介して電子的な評価及び励起システム(3)に機能的に接続され、前記測定素子(2、2’)は、前記電子的な評価及び励起システム(3)を用いて電子的に励振されて厚みすべり振動周波数(f)で振動する厚みすべり振動子として動作し、外力(F)又は前記温度に起因する周波数偏差は、前記静的な圧力又は前記温度を決定するために使用され、前記測定素子(2、2’)は、前記動的な圧力を決定する目的で、前記電子的な評価及び励起システム(3)の助けを借りて、前記縦方向(L)に互いに隔置される端面(23、24)上に端面電極(230、240)を配置することにより、横圧電効果の測定、及び/又は、縦圧電効果の測定を同時に可能とする、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的な圧力を測定するため、また追加的に温度及び/又は静的な圧力を測定するための測定素子であって、前記測定素子が圧電材料で作った本体を含み、本体が横方向に互いに対向して配置される側面を有し、その個々の上に割り当ての側面電極が配置され、測定素子が圧電効果を利用する目的で与圧方式で縦方向に測定素子台内に配置することができると共に力を受けることができる、測定素子、測定素子を備えるセンサ構造、並びに、測定素子受容体内で縦方向にクランプされる圧電体を含む測定素子を用いて静的及び動的な圧力並びに/或いは温度を測定するための方法であって、圧電体が、横方向に互いに隔置されてその上に側面電極が配置される側面を有する、方法、を記載している。
【背景技術】
【0002】
その特別な特性のおかげで、圧電物質又は圧電体を含む測定素子は、測定素子を備えるセンサ構造の幾つかに使用されている。
【0003】
国際公開第2012/164016号には、圧電材料の複合本体を含んでいる複数の測定素子で構成されるセンサ構造が開示されている。測定素子は、圧力及び/又は力を測定するために使用することができる。センサ構造は、小型の設計を有し、圧電材料の測定素子は、動的な力又は圧力の測定のために圧電効果を利用する目的で、与圧方式でハウジングの中に直立に配置されて互いに隔置される。力は、ダイアフラムを介して測定素子の端面に伝達される。それぞれの力又は圧力を決定するための測定信号は、測定素子のひずみに基づいて記録される。静的な力又は圧力の値を記録するために、少なくとも1つの追加の測定素子が設けられ、この追加の測定素子は、逆圧電効果を利用し、厚みすべり振動子(thickness shear oscillator)の形式で動作する。この厚みすべり振動子は、圧電共振子の形式で動作し、測定素子の側面に適用される電極を用いて電子的な励起信号に従って振動するために励振される。厚みすべり振動子の共振周波数は、それに作用する力又は圧力に基づいて変化し、それは、静的な力又は圧力をそれぞれ決定するために使用することができる。
【0004】
そういったセンサ構造を組み立てるためには、多数の部品が必要となり、それらはハウジングの中に正確に配向されて実装されねばならず、勿論、他の測定素子の励振された高周波振動と使用する電子システムの励起電圧とによって様々の測定素子が妨害されないように、相当注意して電気的に結線されねばならない。積極的な設計の結果として、測定素子は、局所的に隔置され、したがって、ハウジング内での測定素子の設置と接触は、実際に単純化されるが、力及び/又は圧力の測定は、それ故に局所的に異なった点で行われ、したがって、不正確な測定を招くことになる。
【0005】
AT503558には、再生方式が可能な位置の出来る限り近くで、そして測定精度を改善するための、力又は圧力の測定を実施する、異なったアプローチが開示されている。圧電材料で作った本体を含む測定素子は、いわゆるSAW(Surface Acoustic Wave 表面弾性波)構造を備えた圧電測定薄層で構成される追加の第2の測定素子を具備する。測定素子は通常、圧電効果を利用することによって支配的な動的な圧力を送達する。SAW構造は、測定素子に直接接触するように、圧電材料で作った本体上に配置されるので、さらに小型化したセンサ構造が達成される。測定素子は、同様に測定素子上に実装されて表面電極の前にSAW構造に同調されねばならない表面電極を特徴的に有し、SAW構造は、電子的な評価及び励起システムに接続することができる。
【0006】
測定モードでは、電子的な評価及び励起システムは、SAW構造に沿った音波(acoustic wave)の形式の表面波を生成し、それらの音波のトランジットタイムは、測定素子とSAW構造に作用している力に基づいて変化する。絶対圧力は、SAW構造を用いてトランジットタイムの変化から決定することができる。
【0007】
SAW構造を測定素子上に固定することは、ほぼ同じ位置で圧力又は力の測定をそれぞれ可能にするマルチパート・センサ構造をもたらすが、測定素子とSAW構造とにおいて、結果として不均一な力の分配が起きる。測定素子上へのSAW構造の実装において、並びに、測定素子上への表面電極の配置において、2つの独立した圧電素子も、それら2つの圧電素子から発せられる測定信号も、互いに妨害することがない、ということが確実にされねばならない。AT503558に係るセンサ構造を実現するためには、測定素子は、SAW構造を備えた圧電測定薄層に対して、綿密に、したがって、費用を投じた製造ステップを用いて正確に接続されねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/164016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ほんの少しの部品だけを使用するより単純で費用効果的なやり方で構築される測定素子とセンサ構造をそれぞれ発展させるという目的に基づき、従来技術に係る測定素子より、ずっと正確な動的及び静的な力及び/又は圧力の測定並びに/或いは温度の測定を実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、センサ構造が、適切な圧電材料の本体を備えて2つの測定モードで同時に動作し得るただ1つの測定素子を特徴的に有することで達せられる。測定素子が一部品で製造され、圧電体を1つだけ備えるので、設置と電気的接触は、大幅に単純化され、力若しくは圧力の測定又は温度の測定は、両測定モードで1つの位置で行われる。
【0011】
本発明の目的は、添付した図面に関して例示的な方式で以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】測定している数値の取得のためにそれについての圧電効果と逆圧電効果が同時に利用可能である、圧電体を含む測定素子を備えたセンサ構造の断面図である。
【
図1b】
図1aに係る適切な測定素子の斜視図である。
【
図2】厚みすべり振動子の形式でその動作中の圧電体の概略断面図であり、この図には本体中のすべり(shearing)も示されている。
【
図3a】測定素子が圧電体を備え、その圧電効果と逆圧電効果が、厚みすべり振動子の形式でその動作中に測定値を取得するために同時利用することができる、センサ構造の断面を示す図である。
【
図3b】
図3aに係るセンサ構造で動作するのに適した測定素子の可能的な設計の斜視図である。
図3cにも電子的な評価及び励起システムが示されている。
【
図3c】
図3aに係るセンサ構造で動作するのに適した測定素子の可能的な設計の斜視図である。
図3cにも電子的な評価及び励起システムが示されている。
【
図4a】主軸に対して角度付けされる平面で圧電体が切断される、主軸を備えた単結晶の概略斜視図である。
【
図4b】石英結晶の実例を使用する主軸に対する切断角度に基づくスラスト係数と横係数の角度依存を示す図である。
【
図4c】
石英結晶の実例を使用する共振周波数の相対偏差の温度依存を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
記載した測定素子2は、センサ構造0に実装して、例えば、機関の燃焼室内の構成の中の、動的及び/又は静的な圧力並びに/或いは温度を測定するために使用することができる。センサ構造0は、測定素子2と測定素子受容体1から構成される。
【0014】
測定素子2は、圧電材料から形成されて測定素子受容体1の中に位置安定方式で実装される一部品の本体20を特徴的に有し、したがって、測定素子2即ち本体20は、測定モードで力をそれぞれ吸収することができる。この目的のために、測定素子2は、形状適合及び/又は摩擦結合の方式で縦方向Lに沿って、測定素子受容体1の中に可分又は不可分にクランプされる。
【0015】
このケースでは、測定素子受容体1は、ダイアフラム10と当接部11を特徴的に有し、その間には、本体20がクランプされる。縦方向Lに本体20上に作用している力Fは、測定素子2の動作中に決定することができ、支配的な圧力Pは、その後にそれらの力から決定することができる。本体20は、第1の側面21を特徴的に有し、その上には、第1の側面電極210が配置される。第2の側面電極220は、横方向Taにおいて第1の側面21の反対側に存在する第2の側面22上に配置される。電圧信号又は電荷信号は、力又は圧力が縦方向Lに本体20上に作用するときに、電子的な評価及び励起システム3によって測定することができる。電子的な評価及び励起システム3は、供給ラインを介して側面電極210、220の双方に接続される。
【0016】
提案した測定素子2は、2つの測定モードで同時に動作するために設計されており、動的な圧力は、横効果の形式の圧電(又は直接圧電)効果を利用することによって測定することができ、静的な圧力は、同じ測定素子2を用いて逆圧電効果を利用することによって、即ち、厚みすべり振動子の形式の測定素子2を動作させることによって同時に測定することができる。厚みすべり振動周波数fを用いた本体20の電子的な励起は、側面電極210、220に接続された電子的な評価及び励起システム3を用いて同様に実現される。厚みすべり振動は、縦方向に平行に又はそれを横切って起き、矢印で示すが、
図2を参照してより詳細に後述する。このケースでは、厚みすべり振動が励振されて、横効果のせいで電荷の測定が側面電極210、220で起きるので、電子的な評価及び励起システム3につながっている2つの供給ラインだけが必要となる。
【0017】
図1bによれば、本体20は、第1の端面23と第2の端面24の間に延びる長さlと、横方向Taに延在する厚みaと、勿論、幅bも有する。このケースでは、長さlは、本体20が棒状の設計を有するように、幅bと厚みaよりもはるかに長い。斜視図であるせいで、第1の側面電極210を備えた第1の側面21だけがこの図で見えている。第2の側面22と第2の側面電極220は、曖昧になっている。側面電極210、220は、側面21、22上に平らに配置され、測定結果を改善する目的のためには、全面構造が有利であることもある。しかしながら、側面電極210、220は、側面21、22を部分的にカバーだけすることもあり、部分的に丸いか又は楕円形状の表面領域を用いて実現されることもある。
【0018】
測定素子2の本体20は、圧電材料で作られ、両方の圧電効果を同時に利用することを可能にする。
【0019】
圧電材料、このケースでは本体20、の中の圧電気が、圧電係数を備えた圧電テンソルの形式で記載されることは、よく知られている。
【0020】
3階のテンソルである圧電dテンソルdijkは、適用される電場Eの結果として発生する本体20のひずみS、又は、応力Tの機械的状態の関数として発生する本体20の電気変位場Dを表す。
【0021】
dテンソルdijkは、次の形式で定義され、
【数1】
ここで、Dは、電気変位場のベクトルであり、Tは、応力テンソルであり、Sは、ひずみテンソルであり、Eは、電場のベクトルである。
【0022】
このケースでは、圧電効果は、横方向Taで利用される第1の測定モードであり、力Fは、縦軸Lに平行に延びる方向に本体20上に作用する。圧電材料の各単位セル内の正及び負の電荷の電荷濃度が互いに対して移動するので、圧電材料内のイオンの移動の結果として分極が起きる。電圧又は電荷は、その後に横方向Taにおいて測定することができる。
【0023】
横効果は、圧電dテンソルdijkがゼロ以外の横係数dijjを有するように圧電体20の材料が選択される場合に、利用することができ、縦軸Lの方向に作用する外力Fの影響を受けて、縦軸Lに直交して延びる横方向Taの電荷の移動が結果的に起きる。縦軸Lの方向に端面23、24に作用する力Fが電圧の発生につながるように横効果の形式の圧電効果を利用する目的のためには、本体20は、縦軸Lに垂直に延びる方向のゼロ以外の横感度を持たねばならない。
【0024】
このため、本体20又は圧電材料は、圧電dテンソルdijkが、i=1...3とj=1...3のためにゼロ以外の横係数dijjを持つようにそれぞれ選択されねばならない。横係数dijjは、C/N(クーロン/ニュートン)で表され、選んだ材料の表からそれぞれ測定又は習得することができる。
【0025】
横圧電効果は、本体20の材料をその横係数dijjがゼロに等しいように選ぶ場合には、利用することができない。
【0026】
同じ測定素子2を用いて静的な圧力を同時に測定する目的のためには、圧電体20は、厚みすべり振動子の形式で同時に動作される。このケースでは、電子的な評価及び励起システム3は、圧電体20を励振して、厚みすべり振動周波数fで振動させる。
【0027】
図2は、第1及び第2の側面電極210、220によって厚みすべり振動が励振される間の本体20内のすべり作用を概略示している。このケースでは、実際には、側面電極210、220の領域内だけにすべり作用が生じ、端部には、すべり作用が生じないか又はすべり作用が殆ど生じない。厚みすべり振動周波数fは、縦方向Lに平行に作用する力Fの影響を受けて変化し、圧力Pの大きさは、この周波数変化から演繹することができる。本体20には、交番電圧が作用し、これにより、メガヘルツ程度、好ましくは0.5から100MHzの周波数の厚みすべり振動を行うように励振され、したがって、厚みすべり振動子の形式で動作する。
【0028】
逆圧電効果は、この第2の測定モードで利用され、直接の圧電効果の利用と同時にそれが起きる。
【0029】
本体20又は厚みすべり振動子の形式の圧電材料を動作させ、それにより逆圧電効果を利用する目的のためには、圧電eテンソルeijkは、i=1..3とj=1..3のためにゼロ以外のスラスト係数eijjを持たねばならない。
【0030】
【数2】
厚みすべり振動子の形式でその動作中の本体20の最高の振動品質を可能的に達成する目的のために、圧電eテンソルeijkのスラスト係数eiijの値は、出来る限り高くすべきである。スラスト係数eiijの値がゼロである場合、厚みすべり振動は達成することができず、したがって本体20は、厚みすべり振動子の形式で動作することができない。
【0031】
図1bによれば、側面電極210、220だけを備える本体20は、適切な圧電材料が選ばれる場合に使用することができ、圧電横効果は、利用することができ、厚みすべり振動は、電子的な評価及び励起システム3と側面電極210、220の間の接続を用いて、本体20の電子的な励起のせいで同時に発生することができ、したがって、逆圧電効果は、力若しくは圧力及び/又は温度をそれぞれ測定又は決定するために同様に利用することができる。
【0032】
圧電体20に関する要件は、側面電極210、220の構成、並びに、圧電材料の選択であり、圧電eテンソルeijkは、ゼロ以外のスラスト係数eiijを有し、圧電dテンソルdijkは、ゼロ以外の横係数dijjをさらに有する。
【0033】
図3aは、測定素子2’を示しており、測定素子2’は、測定素子受容体1の内部に配置され、縦方向Lに直接圧電効果を有する本体20’を特徴的に有する。この縦効果では、力の作用の方向と電荷の移動の方向は、同一である。したがって、端面電極230、240は、このケースでは、縦方向Lに隔置した端面23、24上に配置される。端面電極230、240は、この実施例の端面23、24を完全にカバーする。
【0034】
端面電極230、240、並びに、側面電極210、220は、例えば、物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)などの従来の方法を用いて、それぞれの表面上に蒸着される。この点に関して、最小の厚みを有する閉じた電極層を作るのに十分である。
【0035】
この実施例では、電子的な評価及び励起システム3は、供給ラインを介して端面電極230、240と側面電極210、220に接続される。縦効果のおかげで、端面電極230、240間の電荷は、縦方向Lに作用する力の影響下で供給ラインを介して電子的な評価及び励起システム3によって測定することができる。本体20’が同時に励起されて厚みすべり振動子の形式で動作する場合、横方向Taの逆圧電効果は、上述した形式で同時測定することもできる。
【0036】
このケースでは、圧電体20’に関する要件は、側面電極210、220及び端面電極230、240の構成、並びに、圧電材料の選択であり、圧電eテンソルeijkは、ゼロ以外のスラスト係数eiijを有し、圧電dテンソルdijkは、ゼロ以外の縦係数diiiをさらに有する。
【0037】
厚みすべり振動子の最高の振動品質を可能的に達成する目的のために、圧電材料又は本体20、20’は、0.001よりも大きいか又はそれと等しく、好ましくは、0.01よりも大きいか又はそれと等しい電気機械結合係数kiij
2をそれぞれ有するべきである。圧電材料では、結合係数kiij
2は、消費電気エネルギに対する貯蔵機械エネルギの比を表す。
【0038】
現在まで、測定素子に使用される材料は、直接又は逆圧電効果のいずれかのために最適化され、したがって、複数の本体を備えた測定素子が使用されるべきであった。
【0039】
図3bは、縦圧電効果を有する圧電体20’を備えた測定素子2’の実例を示しており、第1の端面23と第2の端面24は、互いに隔置され、縦方向Lに互いに対向して配置される。第1の端面23は、第1の端面電極230を具備し、第2の端面24は、第2の端面電極240を具備する。端面電極230、240は、図示しない電子的な評価及び励起システムに接続される。電圧は、タップ給電することができ、或いは、電荷は、縦方向に本体20’に作用する力の影響を受けて端面電極230、240間で測定することができる。側面電極210、220が、このケースでは、横方向Taに互いに対向して位置する側面21、22上にも配置することができ、本体20’が同様に厚みすべり振動子の形式で動作することができるので、逆圧電効果は、このケースでは、縦効果と同時に圧力測定及び/又は温度測定のために利用することができる。
【0040】
測定素子2、2’の僅かに修正した実施例では、本体20、20’は、特別な電極の設計を特徴的に有する。このケースでは、第1の側面電極210は、第1の端面電極230に導電接続され、この接続は、最初の側面21と最初の端面23の間に存在する本体20、20’の角部で作られる。したがって、第2の側面電極220は、第2の端面電極240に導電接続される。この接続は、第2の側面22と第2の端面24の間に存在する本体20、20’の角部で作られる。本体20、20’は、逆圧電効果若しくは選択的な横効果、及び/又は、縦効果を有するように選ばれることがある。
【0041】
隣接する側面電極210、220と端面電極230、240の間の導電接続は、本体20、20’が縦効果又は横効果を有し、厚みすべり振動子の形式で動作すべき場合に特に有利である。このケースでは、電子的な評価及び励起システム3は、2つの供給ラインを用いて本体20、20’に単に接続されねばならない。
【0042】
圧電セラミックは、本体20、20’用の圧電材料として使用することができ、意図した使用に基づいて上述した要件を充足するように選ぶことができる。適切な圧電セラミックは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、Pb[Zr
xTi
1−
x]O3、0≦x≦1)、チタン酸ビスマス、例えば、PbNb
2O
6などのメタニオブ酸鉛、の形式で利用可能である。
【0043】
しかしながら、例えば、トルマリン、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、レア・アース(Y、Gd、La)の形式のReを有するReCa4O(BO3)3の形式のオキシボレート、又は結晶学的な空間群P321に所属する結晶、例えば、α石英(α−SiO2)又はオルトリン酸ガリウム、などの単結晶材料の形式の圧電材料は、本体20、20’用に使用してもよい。この空間群の他の結晶は、例えば、ランガテート(La3Ga5.5Ta0.5O14)やランガナイト(La3Ga5.5Nb0.5O14)、Ca3Ga2Ge4O14、LaGa5GeO14、Ca3TaGa3SiO14、Ca3NbGa3SiO14、Sr3TaGa3SiO14、又はSr3NbGa3SiO14、などのランガサイト(La3Ga5SiO14)に類似した結晶質構造を有する。
【0044】
高純度単結晶は、成長している場合があり、又は、既に商業的に入手可能であり、天然には存在しない結晶、例えば、ランガサイトも意図的に成長する場合がある。そういった単結晶で構成される圧電体20、20’に関する上記規定の要件を充足する目的で、意図的な調製が行われねばならない。
【0045】
図4aは、主軸zを備えた石英結晶4を概略示しており、石英結晶4は、石英結晶4の主軸zに対して切断角度αで延びる平面40で切断される。切り出した圧電体20、20’は、角度αの選び方にもよるが、異なった横係数dijj、縦係数diii、及びスラスト係数eiijを有する。
【0046】
図4bは、石英結晶の例示的な線図を示しており、対応する角度依存性の横係数dijjとスラスト係数eiijは、主軸zに対して異なった切断角度αにそれぞれ割り当てられる。
【0047】
0°で(又は60°で)、係数e221は、最大であり、最高の振動品質が達成されるので、厚みすべり振動を発生させるには理想的である。残念ながら、係数d211は、ゼロであり、横効果が存在しない。30°(又は90°でも)回転後には、d211が最大であるので、最高の横感度に到達するが、係数e221は、ゼロであり、厚みすべり振動が発生しない。
【0048】
両係数dijj、eiijがゼロ以外であるという要件は、5°から25°の間、35°から55°の間、及び、65°から85°の間の切断角度αで充足する。単結晶に関して、圧電体20、20’は、それに応じて作り出すことができ、したがって、条件が充足され、十分な振動品質を備えた厚みすべり振動が発生でき、圧電効果が同時利用できる。
【0049】
単結晶に関して、適切な角度αを見つけることができ、その角度で、切り出した圧電体20、20’は、ゼロ以外の縦係数diiiとゼロ以外のスラスト係数eiijとを同時に有する。このため、圧電体20、20’は、所望の圧電特性を達成するように、単結晶から切り出すことができる。
【0050】
厚みすべり振動子の共振周波数f
Rは、以下の式に従って、主として弾性係数c
66、結晶密度ρ、及び、振動子の厚みdによって決まる。
【0052】
弾性係数、結晶密度、及び、厚みは、温度Tによって決まり、したがって、振動子の温度が変化するとき、共振周波数はシフトする。こうして、温度は、厚みすべり振動子の共振周波数の決定に基づいて算出することができる。温度に依存する共振周波数TC(f
R)の相対偏差は、石英の実例を用いている
図4cに示す。
【0053】
弾性係数c
66が機械的応力にも依存する場合、共振周波数f
Rの式は、次のように展開することができる。
【0054】
【数4】
ここで、Fは、厚みすべり振動子に作用する力である。このため、力は、共振周波数の決定に基づいて算出することもできる。この原理は、例えば、力センサを製造する目的で水晶振動子のATカットと共に使用される。力若しくは圧力又は温度を決定する目的で厚みすべり振動のハーモニクスを評価することも勿論可能である。
【0055】
[項目1]
動的な圧力を測定するため、また追加的に温度及び/又は静的な圧力を測定するための測定素子(2)であって、前記測定素子が圧電材料で作った本体(20、20’)を含み、前記本体(20、20’)が横方向(Ta)に互いに対向して配置される側面(21、22)を有し、その個々の上に側面電極(210、220)が配置され、前記測定素子(2)が圧電効果を利用する目的で与圧方式で縦方向(L)に測定素子台(1)内に配置することができると共に力(F)を受けることができる、測定素子(2)において、
前記本体(20、20’)の圧電材料は、圧電eテンソル(eijk)がゼロ以外のスラスト係数(eiij)を有するように選ばれ(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、したがって、逆圧電効果は、厚みすべり振動子の形式で動作中に利用することができ、圧電dテンソル(dijk)は、ゼロ以外の横係数(dijj)を追加的に有し(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、及び/又は、圧電dテンソル(dijk)は、ゼロ以外の縦係数(diii)を有し(ここで、i(i=1..3)とj(j=1..3))、したがって、横方向(Ta)の横圧電効果、及び/又は、縦方向(L)の縦圧電効果は、同じ本体(20、20’)の逆圧電効果と同時に利用することができる、ことを特徴とする測定素子(2)。
[項目2]
前記本体(20、20’)の前記圧電材料は、十分な振動品質を達成する目的で、前記電気機械結合係数(kiij2)が0.001よりも大きいか又は等しく、好ましくは、0.01よりも大きいか又は等しいように選択される、項目1に記載の測定素子。
[項目3]
前記圧電体(20、20’)は、圧電結晶から切り出され、前記切断平面(40)は、前記圧電結晶の主軸(z)に対して、切断角度(α)に沿って配向され、本体(20、20’)は、ゼロ以外の、スラスト係数(eiij)、横係数(dijj)及び/又は縦係数(diii)を有する、項目1又は2に記載の測定素子。
[項目4]
前記圧電材料は、例えば、トルマリン、LiNbO3、LiTaO3、又は、Reがレア・アース(Y、Gd、La)である、ReCa4O(BO3)3の形式のオキシボレートなどの単結晶圧電材料である、項目1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
[項目5]
前記圧電材料は、例えば、石英又はGaPO4などの結晶学的な空間群P321に所属する単結晶圧電材料である、項目1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
[項目6]
前記圧電材料は、例えば、La3Ga5.5Ta0.5O14、La3Ga5.5Nb0.5O14、Ca3Ga2Ge4O14、La3Ga5Ge0.5O14、Ca3TaGa3SiO14、Ca3NbGa3SiO14、Sr3TaGa3SiO14、Sr3NbGa3SiO14、Ca3Ga2Ge4O14、又はSr3Ga2Ge4O14、などのランガサイト(La3Ga5SiO14)に類似した結晶質構造を有する結晶である、項目1から3までのいずれか一項に記載の測定素子。
[項目7]
前記本体(20、20’)の前記圧電材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、Pb[ZrxTi1−x]O3、0≦x≦1)、チタン酸ビスマス、又は、例えば、PbNb2O6などのメタニオブ酸鉛、の形式の圧電セラミックである、項目1又は2に記載の測定素子。
[項目8]
前記本体(20、20’)は、縦方向(L)に互いに対向して配置される端面(23、24)上の端面電極(230、240)を特徴的に有し、前記端面電極は、供給ラインを介して電子的な評価及び励起システム(3)に接続することができ、したがって、前記縦効果は、前記端面電極(230、240)で測定することができ、前記逆圧電効果は、同時に励振されて前記側面電極(210、220)で測定することができる、項目1から7までのいずれか一項に記載の測定素子。
[項目9]
前記第1の側面電極(210)は、第1の端面電極(230)に導電接続され、前記第2の側面電極(220)は、第2の端面電極(240)に導電接続され、前記測定素子は、前記測定素子を動作させる目的のためには、2つの供給ラインを用いて電子的な励起システム(3)に接続することだけ必要である、項目1から8までのいずれか一項に記載の測定素子。
[項目10]
測定素子受容体(1)を含み、項目1から9までのいずれか一項に記載の測定素子(2、2’)が機能的な接続方式でクランプされ、前記測定素子(2、2’)は、電子的な評価及び励起システム(3)に接続することができ、前記逆圧電効果は、圧電効果に加えて同時に利用することができる、センサ構造(0)。
[項目11]
前記励起システム(3)は、2つの供給ラインを用いて、即ち、第1の端面電極(230)に導電接続される第1の側面電極(210)と、第2の端面電極(240)に導電接続される第2の側面電極(220)とで、前記測定素子(2、2’)に接続することができる、項目10に記載のセンサ構造(0)。
[項目12]
測定素子受容体(1)内で縦方向(L)にクランプされる圧電体(20)を含む測定素子を用いて静的及び動的な圧力並びに/或いは温度を測定するための方法であって、前記圧電体(20)が、横方向(Ta)に互いに隔置されてその上に側面電極(210、220)が配置される側面(21、22)を特徴的に有する、方法において、
前記測定素子は、項目1から9までのいずれか一項に記載の測定素子(2、2’)であり、前記測定素子(2、2’)は、供給ラインを介して電子的な評価及び励起システム(3)に機能的に接続され、前記測定素子(2、2’)は、前記電子的な評価及び励起システム(3)を用いて電子的に励振されて厚みすべり振動周波数(f)で振動する厚みすべり振動子として動作し、外力(F)又は前記温度に起因する周波数偏差は、前記静的な圧力又は前記温度を決定するために使用され、前記測定素子(2、2’)は、前記動的な圧力を決定する目的で、前記電子的な評価及び励起システム(3)の助けを借りて、前記縦方向(L)に互いに隔置される端面(23、24)上に端面電極(230、240)を配置することにより、横方向(Ta)の前記直接圧電効果の測定、及び/又は、縦方向(L)の前記直接圧電効果の測定を同時に可能とする、ことを特徴とする方法。
【符号の説明】
【0056】
0 センサ構造
1 測定素子受容体
2 測定素子
3 電子的な評価及び励起システム
4 クオーツクリスタル
10 ダイアフラム
11 当接部
20 本体(圧電性結晶又は圧電セラミック)
21 第1の側面
22 第2の側面
23 第1の端面
24 第2の端面
40 切断平面
210 第1の側面電極
220 第2の側面電極
230 第1の端面電極
240 第2の端面電極
a 厚み
b 幅
d 圧電dテンソル(3階のテンソル)
dijj 横係数
diii 縦係数
e 圧電eテンソル
eiij スラスト係数
f 厚みすべり振動周波数
kiij 電気機械結合係数
l 長さ
z 主軸
D 電気変位場のベクトル
E 電場のベクトル
F 力
L 縦方向
P 圧力
S ひずみテンソル
T 応力テンソル
Ta 横方向
α 主軸に対する切断角度