【文献】
Gottlieb T, et al.,Preparedness Ahead of Pandemic Outbreaks,BioProcess International,2013年10月,Vol.11,p.20-25,(p.21とp.23は広告ページ)
【文献】
Atsmon J, et al.,Safety and immunogenicity of multimeric-001―a novel universal influenza vaccine,Journal of Clinical Immunology,2012年,Vol.32, No.3,p.595-603
【文献】
白木 賢太郎,タンパク質の失活や凝集を抑制する小分子添加剤,生物物理,2004年,第44巻,第2号,p.87−90
【文献】
Tsumoto K, et al.,Role of arginine in protein refolding, solubilization, and purification,Biotechnology Progress,2004年,Vol.20, No.5,p.1301-1308
【文献】
Rathore AS, et al.,Refolding of biotech therapeutic proteins expressed in bacteria: review,Journal of Chemical Technology and Biotechnology,2013年 7月22日,Vol.88, No.10,p.1794-1806
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記懸濁液中の凝集体の95%が、0.5〜5μm、0.6〜6μm、0.7〜7μm、0.8〜8μm、0.9〜9μm、1〜10μm、2〜20μm、3〜30μm、4〜40μm及び5〜50μmからなる群から選択されるサイズ範囲分布を有する、請求項1記載の医薬組成物。
1〜10mg/mlの多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドと0.1〜0.5MのL−アルギニンと10〜50mMのクエン酸緩衝液とを含み、4〜7の範囲のpHを有する、請求項1記載の医薬組成物。
前記カオトロピック剤が、5〜8Mの尿素及び1〜4Mのチオ尿素であり、前記界面活性剤が、0.5〜4%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)であり、前記緩衝剤が5〜100mMのグリシンである、請求項7記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、急速に変異しているインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染性の高い疾患である。インフルエンザは、世界中で季節的に流行し、簡単にうつって広がり、年間総人口の5〜20%が感染する。世界保健機関(WHO)によると、季節的大流行時にインフルエンザ関連の原因で毎年250,000〜500,000人が死亡している。米国だけで、20万人を超える人々が例年の季節性インフルエンザで入院している。インフルエンザ感染は、軽度、中程度又は重度であり、無症候から軽度の上気道感染及び気管気管支炎を経て重度の、時として致死的なウイルス肺炎に及び得る。感染は、高い罹患率及び死亡率につながる肺と心血管の合併症と関連し、主に幼児、高齢者及び慢性の病状を有する個人などのリスク集団に影響を与える。
【0003】
3種類のインフルエンザウイルスのうち、インフルエンザA及びインフルエンザBは、それぞれヒトにおけるインフルエンザ疾患の約80%及び20%に関与し、インフルエンザCウイルスはヒトに感染しない。インフルエンザAウイルスは、多数の亜系及び種特異性によって特徴付けられ、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)表面タンパク質の抗原の頻繁なドリフト及びシフトにより、広範な季節的流行及びパンデミックの主要原因と考えられている。抗原が変化した後、免疫系によって認識されないウイルス株を介した感染は、感染した個人による免疫応答の低下をもたらし得、さらに著しく変化すると、体の免疫防御刺激が有効でなくなる。最近の鳥及び豚のインフルエンザパンデミック株で経験したように、抗原のドリフト又はシフトは、それぞれのインフルエンザの流行又はパンデミックを引き起こし得る。
【0004】
現在までに、市販のインフルエンザワクチンは、インフルエンザ季節のピーク中に最も蔓延している株の予測に応じて毎年選択されるインフルエンザA抗原及びB抗原を含む。しかし、ワクチンに含まれる株と実際に広まっている株間のミスマッチにより、これらの株特異的ワクチンは、臨床効力が比較的低い場合が多い。また、このような免疫方法は、毎年、新しいワクチン製剤の調製を必要とする。したがって、複数のウイルス株を認識するワクチンは、より対費用効果が高く、さらに患者のコンプライアンスを高め、健康のグローバルな見通しを高めるであろう。
【0005】
現在使用されている市販のインフルエンザワクチン組成物は、典型的には、トリトン、Tween、コハク酸水素α−トコフェリル(α−tocopheryl hydrogen succinate)及び/又は他の添加剤もしくは賦形剤を添加した、リン酸、ナトリウム、カリウム及び/又はカルシウムの緩衝液を含む水溶液である。季節性インフルエンザの表面抗原を提示するインフルエンザ用の弱毒化生ワクチンであるFLUMIST(商標)(MedImmune)は、約0.05Mのアルギニン、0.188mgのグルタミン酸一ナトリウム、2mgの加水分解ブタゼラチン、13.68mgのスクロース、2.26mgのリン酸二カリウム、及び0.96mgのリン酸二水素カリウムを含む溶液として供給される。
【0006】
本発明の発明者の一部によるPCT国際公開WO2009/016639は、各エピトープが単一のポリペプチド中に少なくとも2倍存在する、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含むインフルエンザマルチエピトープポリペプチド及びワクチンを開示している。
【0007】
多量体−001(M−001)ワクチンは、それぞれ3回の反復として配置され、大腸菌(Escherichia coli)(大腸菌(E.coli))内で発現される単一の組換えポリペプチドとして調製される、9種類の保存された直鎖状エピトープからなる。これらのエピトープは、それらの抗原ドリフト及びシフトに関係なく、大半のインフルエンザウイルス株に共通している。したがって、M−001は、同様に、将来のウイルス株に対する免疫系の防御を提供することが期待される。多量体−001のワクチン接種は、各株の外側のタンパク質の多様性にもかかわらず、効率的な交差株の認識及び防御をもたらす。
【0008】
様々な動物モデル及び反復毒性試験で観察された安全性パラメータを用いて得られた重要な結果は、ヒトでの臨床試験への道を開き、臨床試験の基盤を提供した。成人及び高齢者ボランティアでのM−001の安全性並びに免疫原性を評価する第I/II相及び第II相臨床試験が完了した(Atsmon et al.,2014,Vaccine 32,5816−5823)。PBS中のアジュバント化又は非アジュバント化ワクチンの125〜500μg用量は、安全かつ良好な耐容性を証明した。潜在的な多量体−001ワクチン関連の毒性が、GLP毒性試験で評価された。最大ヒト用量でIM投与を繰り返した両方のM−001ワクチン製剤(アジュバント化及び非アジュバント化)は、安全であることが証明された。
【0009】
本発明の発明者らの一部によるWO2012/114323は、インフルエンザワクチンの前に、又はそれとともに、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを複数コピー含む多量体インフルエンザポリペプチドを対象に投与することにより、季節性又はパンデミックインフルエンザのワクチン防御効果を改善する方法を提供する。
【0010】
異種タンパク質を大腸菌で発現させたときに、封入体(IB)の形成が頻繁に生じ、活性のある組換えタンパク質の収集は、その活性のある構造へのリフォールディングを必要とする場合が多い。Wingfield,P.T.(Current Protocols in Protein Science.2003,30:6.1.1−6.1.37)は、大腸菌内で産生した組換えタンパク質の精製を概説した。
【0011】
アルギニンは、IBから得られるタンパク質のリフォールディング及び精製に使用され、化学的及び物理的性質が異なる種々のタンパク質に有効であると考えられている。タンパク質のリフォールディング、可溶化及び精製におけるアルギニンの役割は、Tsumotoら(Biotechnol Prog.2004 Sep−Oct;20(5):1301−8;Schneiderら(J Phys Chem B.2011 Jun 9;115(22):7447−58))によって概説された。
【0012】
アルギニンの抗凝集効果及び安定化効果は、以前に説明された。例えば、Lyutovaら(Biotechnol Prog.2007 Nov−Dec;23(6):1411−6)は、タンパク質凝集が加熱又はジチオスレイトール(DTT)の添加による折り畳まれた状態からの移行によって誘導される場合の、タンパク質凝集に対する低濃度のアルギニン(1〜10mM)の効果を研究した。
【0013】
L−アルギニンなどの低分子量の添加剤は、沈殿をもたらす分子間疎水性相互作用を阻害することによって再生収率を向上させることが示唆されている。Hoら(Protein Sci.2003,12,708−716)は、L−アルギニンがタンパク質の溶解度を増加させることにより、凝集を抑制することを実証した。
【0014】
医薬品懸濁液の形態でのタンパク質の生成は、一般的に次の理由:ポリペプチドの溶解性;ポリペプチドの安定性;ポリペプチドの放出プロファイルの制御又は変更のうちの1つ以上の結果として支持される。
【0015】
タンパク質のマイクロ粒子又はナノ粒子の懸濁液は、いくつかの方法によって生成することができる。このような粒子は、最初により大きな粒子として生成され、その後、物理的又は化学的手段によるサイズ縮小手順を経ることができる。いくつかの他のアプローチには、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥及び超臨界流体粒子形成又は脱溶媒和が含まれる。
【0016】
WO2009/015736は、L−アルギニンを含む変性可溶化緩衝液での封入体の処理を含む、精製した組換えGDF−5関連タンパク質の生成プロセスを開示している。
【0017】
WO2012/054679は、組換えタンパク質及び封入体を含む混合物から組換えタンパク質を精製するための方法であって、a)関連封入体と共に組換えタンパク質を含む混合物を、エタノールアミン、アルギニン、EDTA、尿素及びDTEを含む可溶化緩衝液で可溶化することを含む方法を開示している。
【0018】
US2003/0199441は、再生プロコラーゲンプロペプチドの生成方法であって、大腸菌で生成した封入体を0.5〜8Mの変性緩衝液に溶解し、次いで、ほぼ中性のpHに緩衝化し、最終濃度が200〜1,000nMのL−アルギニン及びジスルフィド架橋還元共役酸化還元系を含む限界希釈緩衝液に滴下し、次いで、緩衝液混合物を、最終濃度が50〜200nMのL−アルギニン及びジスルフィド架橋還元共役酸化還元系を含む生理的緩衝液に対して透析し、その後、ジスルフィド架橋還元共役酸化還元系を含む生理的緩衝液に対して、最終的には、生理的緩衝液に対して透析する、方法に関する。
【0019】
US2004/0137588は、生体試料からポリペプチドを精製し、アルギニンの存在下でのリフォールディング条件にそのポリペプチドを供する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
改善された多量体マルチエピトープインフルエンザワクチンにおいて使用するための、均一なサイズ分布を有する微粒子ポリペプチドの安定な懸濁液を有することは都合がよい。このような組成物の効率的な生成プロセスも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、本明細書で多量体マルチエピトープポリペプチドと表される、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを複数コピー含む少なくとも1種類の多量体インフルエンザポリペプチド、及びグアニジニウム含有アミノ酸又はその誘導体を含む、改良されたインフルエンザワクチン懸濁液を提供する。そのような懸濁液組成物の生成方法も提供される。
【0022】
本発明は、多量体マルチエピトープポリペプチド溶液からのカオトロピック剤及び還元剤の除去中に、アルギニンアミノ酸の添加とともに、タンパク質凝集体の生成を調節することにより、所望のタンパク質濃度及び生理学的pHに近いpHで多量体マルチエピトープポリペプチドの安定で均一な微粒子懸濁液が得られ、巨大アモルファス凝集体を注射用製剤に変換するための高圧均質化の必要性が克服されるという発見に一部基づいている。
【発明の効果】
【0023】
一態様によれば、本発明は、水性懸濁液の形態の医薬組成物であって、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープポリペプチド、グアニジニウム含有アミノ酸又はその誘導体、及び薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、インフルエンザに対する対象の免疫化用のワクチンの形態にある。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、グアニジニウム含有アミノ酸は、アルギニン(Arg)である。
【0026】
他の実施形態によれば、グアニジニウム含有アミノ酸はアルギニン誘導体である。
【0027】
L−アルギニンもしくはD−アルギニン、もしくはその誘導体の任意の塩もしくは遊離酸、又はそれらの混合物は、本発明に従って使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、アルギニンは、L−アルギニン(L−Arg)である。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、Arg化合物は、Arg塩酸塩、Arg硫酸塩、Argリン酸塩、Argクエン酸塩、Arg酢酸塩及びArg遊離酸からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、該組成物は、L−Arg塩酸塩(L−Arg HCl)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、グアニジニウム含有アミノ酸又はそれらの誘導体を0.1〜2.0Mの濃度で含む。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、L−アルギニンを0.15〜0.45Mの濃度で含む。他の実施形態によれば、該医薬組成物中のアルギニン濃度は0.15〜0.30Mである。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、1〜50mMの濃度を有する追加の緩衝剤を含む。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、該緩衝剤は、クエン酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)緩衝液、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホネート)緩衝液、リジン緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホネート)緩衝液、イミダゾール緩衝液及びMES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホネート)緩衝液からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0035】
具体的な実施形態によれば、該組成物は、クエン酸緩衝液、リジン緩衝液及びグリシン緩衝液からなる群から選択される緩衝液を含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0036】
特定の実施形態によれば、該組成物は、クエン酸緩衝液を含む。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物のpHは、pH5.0〜7.6の範囲内にある。特定の実施形態によれば、該医薬組成物のpHは、pH5.5〜7.0の範囲内にある。他の特定の実施形態によれば、該緩衝剤は、5.7〜6.5の範囲内でpHを維持する。
【0038】
特定の具体的な実施形態によれば、1〜5mg/mlの多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチド、0.1〜0.5MのL−アルギニン、及び5.0〜7.0の範囲のpHを有する10〜50mMのクエン酸緩衝液を含む医薬組成物が提供される。
【0039】
特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、1〜4mg/mlの多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチド、0.1〜0.3MのL−アルギニン、及び5.5〜6.5の範囲のpHを有する10〜30mMのクエン酸緩衝液を含む。
【0040】
特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、約2.5mg/mlの多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチド、約0.2Mのアルギニン、約20mMのクエン酸緩衝液、及び約6のpHを含む。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、0.5〜50μmの範囲内のサイズ分布を有する不溶性凝集体を含み、その凝集体の95%のサイズが一桁の範囲内に入る懸濁液である。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、該懸濁液中の凝集体の95%は、0.5〜5μm、1〜10μm、3〜30μm及び5〜50μmからなる群から選択されるサイズ分布を有する。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、該多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドは組換え生成される。
【0044】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドは、配列番号86に記載のアミノ酸配列を有するM−001という名称である。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、精製した組換え多量体マルチエピトープポリペプチドの懸濁液を生成するプロセスであって、以下の工程を含むプロセスを提供する:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープポリペプチドを含有する封入体を、カオトロピック剤、緩衝剤、及び還元剤を含み、7〜11の範囲のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導し、その結果、不溶性凝集体懸濁液を形成する工程;
iii.アルギニンを添加して、凝集体の95%のサイズが一桁のサイズの範囲内に入る、均一な凝集体サイズ分布を有する安定で均一な懸濁液を得る工程。
【0046】
具体的な実施形態によれば、該カオトロピック剤は、5〜8Mの尿素及び1〜4Mのチオ尿素を含む。
【0047】
特定の実施形態によれば、工程(ii)のカオトロピック剤及び還元剤の段階的除去は、限外濾過により行われる。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、工程(i)のCHAPSは、0.5〜2%の濃度で存在する。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを発現する大腸菌細胞を提供する工程;
ii.溶解及び細菌細胞破壊を行い、多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を提供する工程;
iii.7〜11の範囲のpHで、5〜8Mの尿素、1〜4Mのチオ尿素、0.5〜4%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、緩衝剤、及び還元剤を含む溶液で該封入体を可溶化する工程;
iv.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導し、その結果、不溶性凝集体懸濁液を形成する工程;
v.アルギニンを添加して、凝集体の95%が一桁のサイズの範囲内に入る、均一な凝集体サイズ分布を有する安定で均一な懸濁液を得る工程。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去は、当技術分野で公知の手順を用いて、限外濾過により行われる。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのクロマトグラフィー分離工程は、工程(iii)及び(iv)の間で行われる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのクロマトグラフィー分離工程は、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群から選択される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、工程(v)は、工程(iv)の凝集体形成前又はその間に行われる。
【0053】
さらに他の実施形態によれば、工程(v)は、工程(iv)の凝集体形成後に行われる。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下を含む:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを発現する大腸菌細胞を提供すること;
ii.大腸菌細胞の溶解、細菌細胞破壊及び遠心分離を行い、多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を提供すること;
iii.該封入体の少なくとも1回の洗浄を行うこと;
iv.5〜8Mの尿素、1〜4Mのチオ尿素、0.5〜4%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、還元剤及び7〜10の範囲のpHを提供する緩衝剤を含む溶液に該封入体を可溶化すること;
v.少なくとも1つのクロマトグラフィー工程に該溶液を供すること;
vi.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導し、その結果、不溶性凝集体を形成すること;
vii.グアニジニウム含有化合物を添加すること;及び
viii.(vii)の組成物を製剤化して、4〜8の範囲のpHの、約0.1〜0.4Mのグアニジニウム含有アミノ酸及び10〜40mMのクエン酸緩衝液の最終懸濁液を得ること。
【0055】
他の実施形態によれば、ステップ(vii)のグアニジニウム含有化合物の添加は、調節された凝集の誘導中に徐々に行われる。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、溶解は、7〜9の範囲のpHで、トリス緩衝液、EDTA、及び細胞ペースト1gあたり0.1〜0.5mgのリゾチームを含む緩衝液で行われる。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、工程(vi)の調節された凝集の誘導は、限外濾過により行われる。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、限外濾過は、以下の工程を含む:
i.pH4〜6.5の10〜80mMのMES緩衝液での緩衝液交換I;
ii.pH4〜6の20〜80mMのクエン酸緩衝液、0.1〜1Mのアルギニンでの緩衝液交換II;
iii.pH4.0〜7.5の10〜50mMのクエン酸緩衝液、0.1〜0.5Mのアルギニンでの緩衝液交換III。
【0059】
他の実施形態によれば、限外濾過は以下の工程を含む:
i.pH4.0〜6.5の10〜80mMのMES緩衝液での緩衝液交換I;
ii.pH4〜6の20〜80mMのクエン酸緩衝液での緩衝液交換II;
iii.アルギニン含有溶液での0.1〜1Mのアルギニン濃度までの希釈。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、最終組成物中のポリペプチド濃度は、1〜10mg/mlである。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチド配列は、配列番号86に記載されている。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドは、配列番号85に記載のポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0063】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのグリシンを含み、約9.5のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤(尿素、チオ尿素及びβ−メルカプトエタノール)の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.0.5Mのアルギニン緩衝液を徐々に添加することを含む限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する最終組成物を得る工程。
【0064】
さらに別の態様によれば、本発明は、組換え多量体マルチエピトープポリペプチドの実質的に安定な水性懸濁液を生成するプロセスであって、以下の工程を含むプロセスを提供する:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、5〜50mMのグリシンを含み、7〜10の範囲のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.アルギニン緩衝液又はクエン酸緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する安定で均一な最終懸濁液を得る工程。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む;
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのグリシンを含み、約9.5のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.0.1〜1Mのアルギニン緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する最終懸濁液を得る工程。
【0066】
他の実施形態によれば、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する最終懸濁液が、工程(iv)において得られる。
【0067】
他の実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのHEPES、5mMのグリシンを含み、約8.0のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.20〜80mMのクエン酸緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液をアルギニン含有溶液での希釈に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する均一な最終微粒子懸濁液を得る工程。
【0068】
他の実施形態によれば、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する安定で均一な最終微粒子懸濁液が、工程(iv)において得られる。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、該最終微粒子懸濁液は、0.5〜50μmの範囲内の凝集体サイズ分布を含み、該凝集体の95%のサイズは一桁の範囲内に入る。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液中の凝集体の95%は、0.5〜5μm、1〜10μm、3〜30μm及び5〜50μmからなる群から選択されるサイズ分布を有する。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0071】
本発明はさらに、本明細書に詳述したプロセスのいずれかに従って生成した医薬組成物を提供する。
【0072】
本発明による多量体ポリペプチドは、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、各エピトープは単一ポリペプチド中に少なくとも2倍存在する。本発明の文脈において、「多量体」ポリペプチドは、必ずしも隣接してはいない、ポリペプチドのアミノ酸ストレッチのリピートを複数(少なくとも2個、典型的には、少なくとも3個又はそれ以上)含有するポリペプチドである。したがって、「多量体マルチエピトープ」という用語は、複数のエピトープの複数リピートを含有するポリペプチドに関する。該多量体マルチエピトープポリペプチドは、単離されたポリペプチドとして、又は融合タンパク質として、組換えにより生成することができる。該ポリペプチド凝集体は、それだけで使用するか、又は追加のアジュバントと混合するか、又は追加のアジュバントで製剤化することができる。
【0073】
本発明の医薬組成物及びワクチン組成物中に含まれる多量体マルチエピトープポリペプチドは、インフルエンザウイルスB細胞エピトープ、Tヘルパーエピトープ、及び細胞毒性リンパ球(CTL)エピトープの組み合わせを含む。該エピトープは、好ましくは、血球凝集素タンパク質(HA)ペプチド、マトリックスタンパク質(M1及び/又はM2)ペプチド、及び核タンパク質(NP)ペプチドの保存された(非超可変)領域から選択される。該エピトープは、好ましくは、いくつかのヒトインフルエンザサブタイプに対して実証可能な交差反応活性を有し、細胞性及び体液性免疫応答を誘導するそれらの改善された能力について選択される。
【0074】
他の実施形態によれば、本発明による組成物中に含まれる多量体ポリペプチド内のインフルエンザペプチドエピトープは、配列番号1〜配列番号82からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0075】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該インフルエンザペプチドエピトープは、エピトープE1〜E9(配列番号82、48、25、52、51、59、89、69及び70)から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0076】
いくつかの具体的な実施形態によれば、多量体マルチエピトープポリペプチドは、ブロック共重合体構造又は交互連続重合体構造で配置された4〜9個のエピトープの3〜5個のリピートを含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0077】
さらに他の実施形態によれば、本発明による医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチド配列は、配列番号84、配列番号86、及び配列番号88からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0078】
本発明による医薬組成物は、筋肉内、鼻腔内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内、及び経皮送達からなる群から選択される経路を介して投与することができる。
【0079】
特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、鼻腔内、筋肉内又は皮内に投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチドは、担体又は融合タンパク質と結合しておらず、かつそれらを欠く。他の実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれるポリペプチドは、さらに担体配列を含むことができ、すなわち、該ペプチドエピトープは担体ポリペプチドの配列内に挿入されるか、又は担体配列と結合している。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、本発明による医薬組成物は、アジュバントを含まない。他の実施形態によれば、該ワクチンは、さらに薬学的に許容されるアジュバントを含む。
【0081】
薬学的に許容されるアジュバントとしては、油中水型エマルジョン、脂質エマルジョン、又はサブミクロンの水中油型エマルジョン及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施形態によれば、アジュバントは、Montanide(商標)、ミョウバン、ムラミルジペプチド、Gelvac(登録商標)、キチン微粒子、キトサン、コレラ毒素サブユニットB、イントラリピド(登録商標)、リポフンディン(登録商標)もしくは細菌脂質、リポタンパク質、及び/又は膜タンパク質からなる群から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、該ワクチンは、筋肉内、鼻腔内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内及び経皮送達用に製剤化される。いくつかの実施形態において、該ワクチンは、鼻腔内に投与される。他の実施形態において、該ワクチンは筋肉内に投与される。さらに他の実施形態において、該ワクチンは、皮内に投与される。
【0083】
本発明は、さらなる態様によると、対象において免疫応答を誘導し、インフルエンザに対する防御を付与する方法であって、上記の医薬組成物をワクチン形態で該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0084】
インフルエンザに対する免疫のための、本発明によるワクチン組成物の使用も、本発明の範囲内である。本発明によるワクチン組成物は、独立型ワクチンとして、又は季節性もしくはパンデミックインフルエンザワクチンとの同時投与を含むワクチン接種レジメンの一部として投与することができる。本発明による同時投与は、多量体ポリペプチドと季節性もしくはパンデミックワクチンの両方が1種類の組み合わせ組成物中に含まれるか、又はそれらが2つの別々の予防接種で、少なくとも24時間の間隔をあけて患者に投与されるかのいずれかを包含する。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含むワクチン組成物は、季節性又はパンデミックインフルエンザワクチンと同時投与される。
【0086】
本発明の組成物中に含まれる複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む多量体マルチエピトープポリペプチドは、組換えタンパク質として、融合タンパク質として、及び化学合成により生成することができる。
【0087】
本発明は、さらに、少なくとも1種類の多量体インフルエンザポリペプチド及び少なくとも1種類の従来の季節性又はパンデミックインフルエンザ組成物の組み合わせを含む医薬組成物を提供する。従来の季節性ワクチン(TIV)は、典型的には、これからの季節に感染することが期待される株に対する防御を提供するために、WHOが毎年選択する3種類の不活性化又は生きている弱毒化インフルエンザウイルス株を含有している。パンデミックワクチンは、典型的には、パンデミックを引き起こす関連株に特異的な1種類のインフルエンザウイルス株を含む。
【0088】
本発明のさらなる実施形態及び適用性の完全な範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の趣旨及び範囲内の種々の変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明らかとなるので、本発明の特定の実施形態を示す発明を実施するための形態及び具体的な実施例は、単なる例示として与えられることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0089】
多量体マルチエピトープポリペプチドインフルエンザワクチンの改良された医薬組成物及びそれらの生成方法を本明細書に提供する。これらの医薬組成物は、安定性が改善されている。多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む以前の組成物は、リン酸緩衝生理食塩水をベースにしていたが、生成が困難であり、再凝集する傾向があったが、本発明は、アルギニンアミノ酸又はその誘導体、及びクエン酸緩衝液を含む安定な懸濁液組成物及びそれらの生成のための改善されたプロセスを提供する。
【0090】
以前から知られている調製方法では、ポリペプチドの凝集は、塩基性から中性のpHへのpHシフトによって誘導され、巨大アモルファス凝集物の生成をもたらし、これは注射可能な形態に変換するのに高圧均質化を必要としていた。本発明は、アルギニンアミノ酸を添加するとともに、ポリペプチド溶液からカオトロピック剤及び還元剤を除去する間に、タンパク質凝集体の生成を調節することによってこれらの制限を克服し、多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドの安定で均一な微粒子懸濁液を得るというものである。
【0091】
多量体マルチエピトープポリペプチド
本発明によるワクチン及び方法で使用される多量体ポリペプチドは、各エピトープの少なくとも2個のリピートを含む。本発明による多量体ポリペプチドは、いくつかの特定の実施形態によれば、各エピトープの少なくとも3個のリピートを含む。季節性又はパンデミックワクチンと、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む少なくとも1種類の多量体マルチエピトープポリペプチドを含むワクチン組成物も提供される。
【0092】
表1から選択されるインフルエンザエピトープを含む多量体ワクチンであって、各エピトープのリピートの数が同一か又は異なっており、該ポリペプチドを交互連続重合体構造又はブロック共重合体構造で配置することができる多量体ワクチンについての種々の例示的な実施形態が提供される。「交互連続重合体」構造という用語は、ポリペプチドに含まれる全てのエピトープの単一コピーが連続配置されており、この配置がリピート数に等しい回数分連続して繰り返されることを意味する。例えば、該多量体マルチエピトープポリペプチドは、交互連続構造中に3つのエピトープX
1、X
2及びX
3の4個のリピートを含む場合、該ポリペプチドは、以下の重合体構造:[X
1X
2X
3]
4とも書かれるX
1X
2X
3−X
1X
2X
3−X
1X
2X
3−X
1X
2X
3を有する。「ブロック共重合体」構造という用語は、ポリペプチド中に含まれる単一エピトープの全コピーが隣接して配置されることを意味する。例えば、ブロック共重合体構造中の3つのエピトープX
1、X
2及びX
3の4個のリピートを含む類似の多量体マルチエピトープポリペプチドは、以下の重合体構造:[A]
4−[B]
4−[C]
4とも書かれるX
1X
1X
1X
1−X
2X
2X
2X
2−X
3X
3X
3X
3を有する。
【0093】
本発明による医薬組成物に使用される合成又は組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
i.B(X
1ZX
2Z…X
m)
nB;及び
ii.B(X
1)
nZ(X
2)
nZ…(X
m)
nB;
式中、Bは0〜4個のアミノ酸残基の配列を表し;nは、各出現時に、独立に2〜50の整数であり;mは3〜50の整数であり;X
1、X
2…X
mの各々は、4〜24個のアミノ酸残基からなるインフルエンザペプチドエピトープであり;Zは、各出現時に、結合又は1〜4アミノ酸残基のスペーサーであり;該ポリペプチド中のアミノ酸残基の最大数は約1000である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、nは、各出現時に、独立に2〜50の整数であり;mは3〜15の整数であり;X
1〜X
mの各々は、4〜24個のアミノ酸残基からなる、B細胞型エピトープ、Tヘルパー(Th)型エピトープ、及び細胞傷害性リンパ球(CTL)型エピトープからなる群から選択されるインフルエンザペプチドエピトープである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0095】
さらに他の実施形態によれば、nは、各出現時に、独立に2〜15の整数であり、mは3〜12の整数である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0096】
いくつかの具体的な実施形態によれば、mは4〜9の整数であり、nは3〜5の整数である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0097】
いくつかの具体的な実施形態によれば、mは9であり、nは3である。
【0098】
他の実施形態によれば、本発明の医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチドのインフルエンザペプチドエピトープは、ヘマグルチニン(HA)ペプチド、M1ペプチド、M2ペプチド、及び核タンパク質(NP)ペプチドからなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0099】
他の実施形態によれば、本発明による組成物中に含まれる多量体ポリペプチド内のインフルエンザペプチドエピトープは、配列番号1〜配列番号82(表1に示されている)からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0101】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該インフルエンザペプチドエピトープは、表2に詳述するエピトープE1〜E9(配列番号82、48、25、52、51、59、89、69及び70から選択される。
【0103】
本明細書に記載のペプチドエピトープは、単なる例示目的のために提供されることに留意されたい。インフルエンザウイルスタンパク質は、単離体間で変化し、それによって各インフルエンザタンパク質に多数の変異型配列を提供する。したがって、本発明は、1つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失を有するペプチドエピトープを包含する。
【0104】
より具体的な実施形態によれば、本発明によるワクチン医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチド中に含まれるインフルエンザペプチドエピトープは、HA 354〜372(E1、配列番号82)、HA 91〜108(E2、配列番号48)、M1 2〜12(E3、配列番号25)、HA 150〜159(E4、配列番号52)、HA 143〜149(E5、配列番号51)、NP 206〜229(E6、配列番号64)、HA 307〜319(E7、配列番号59又は89)、NP 335〜350(E8、配列番号69)、及びNP 380〜393(E9、配列番号70)からなる。
【0105】
さらに他の実施形態によれば、本発明による医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチド配列は、配列番号84、配列番号86、及び配列番号88からなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0106】
さらに他の実施形態によれば、本発明による医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチド配列は、配列番号83、配列番号85、及び配列番号87からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0107】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、ブロック共重合体構造又は交互連続重合体構造に配置された5〜9個のエピトープの3〜5個のリピートを含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0108】
本発明の医薬組成物は、以下のブロック共重合体構造[E1E1E1−E2E2E2−E3E3E3−E4E4E4−E5E5E5−E6E6E6−E7E7E7−E8E8E8−E9E9E9]に配置された9種類の異なるインフルエンザウイルスペプチドエピトープの3個のリピートを含み、その中で、E1はHA 354〜372(配列番号82)であり、E2はHA 91〜108(配列番号48)であり、E3はM1 2〜12(配列番号25)であり、E4はHA 150〜159(配列番号52)であり、E5はHA 143〜149(配列番号51)であり、E6はNP 206〜229(配列番号64)であり、E7はHA 307〜319(配列番号59又は89)であり、E8はNP 335〜350(配列番号69)であり、かつE9はNP 380〜393(配列番号70)である。
【0109】
他の実施形態によれば、該多量体ポリペプチドは、以下の交互連続重合体構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]
nに配置された9種類の異なるインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、nは3〜5であり、E1はHA 354〜372(配列番号82)であり、E2はHA 91〜108(配列番号48)であり、E3はM1 2〜12(配列番号25)であり、E4はHA 150〜159(配列番号52)であり、E5はHA 143〜149(配列番号51)であり、E6はNP 206〜229(配列番号64)であり、E7はHA 307〜319(配列番号59又は89)であり、E8はNP 335〜350(配列番号69)であり、かつE9はNP 380〜393(配列番号70)である。
【0110】
さらに他の実施形態によれば、該多量体ポリペプチドは、以下の交互連続重合体構造[E1E2E3E4E5]
6で配置された5種類の異なるB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6個のリピートを含み、E1はHA 354〜372(配列番号82)であり、E2はHA 91〜108(配列番号48)であり、E3はM1 2〜12(配列番号25)であり、E4はHA 150〜159(配列番号52)であり、E5はHA 143〜149(配列番号51)である。
【0111】
他の実施形態によれば、該多量体ポリペプチドは、以下の交互連続重合体構造[E7E8E9E6]
6で配置された4種類の異なるT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6個のリピートを含み、E6はNP 206〜229(配列番号64)であり、E7はHA 307〜319(配列番号59又は89)であり、E8はNP 335〜350(配列番号69)であり、かつE9はNP 380〜393(配列番号70)である。
【0112】
追加の実施形態によれば、該多量体ポリペプチドは、以下のブロック共重合体構造[E2E2E2E2E2E2−E1E1E1E1E1E1−E3E3E3E3E3E3−E4E4E4E4E4E4−E5E5E5E5E5E5−E6E6EE6E6E6−E7E7E7E7E7E7−E8E8E8E8E8E8−E9E9E9E9E9E9]に配置された9種類の異なるインフルエンザウイルスペプチドエピトープの6個のリピートを含み、E1はHA 354〜372(配列番号82)であり、E2はHA 91〜108(配列番号48)であり、E3はM1 2〜12(配列番号25)であり、E4はHA 150〜159(配列番号52)であり、E5はHA 143〜149(配列番号51)であり、E6はNP 206〜229(配列番号64)であり、E7はHA 307〜319(配列番号59又は89)であり、E8はNP 335〜350(配列番号69)であり、かつE9はNP 380〜393(配列番号70)である。
【0113】
様々な実施形態において、該多量体ポリペプチドは、各エピトープの少なくとも2個のリピート、典型的には、各エピトープの少なくとも3個のリピート、あるいは各エピトープの少なくとも4個のリピート、あるいは少なくとも5個のリピート、あるいは少なくとも6個のリピート、各エピトープの最大少なくとも50個のリピートを含む。免疫系へのエピトープの暴露を改善するために、該エピトープは、特定の実施形態によれば、単一のアミノ酸からなり、他の実施形態によれば、2〜6個のアミノ酸を含むスペーサーによって分離することができる。いくつかの具体的な実施形態によれば、該スペーサーは、1〜4個の中性アミノ酸残基からなる。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物中に含まれる多量体ポリペプチド内のペプチドエピトープは、結合、アミノ酸、及び2〜6個のアミノ酸を含むペプチドからなる群から選択されるスペーサーによって連結されている。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、該スペーサーの少なくとも1個のアミノ酸は、該ポリペプチドのセグメント(例えば、プロリン残基)上での特定のコンホメーションを誘導する。
【0116】
さらに他の実施形態によれば、該スペーサーは、切断可能な配列を含む。一実施形態によれば、該切断可能なスペーサーは、細胞内酵素によって切断される。より具体的な実施形態によれば、該切断可能なスペーサーは、プロテアーゼ特異的切断可能配列を含む。
【0117】
懸濁液を生成するプロセス
「不溶性」封入体の可溶化
2種類の異なる大腸菌株内で形成された組換え多量体マルチエピトープポリペプチドの封入体は、おそらく疎水性相互作用のために、限られた溶解性を示した。8Mの尿素緩衝液に50mMのβMEを補う標準的な手順は、中性pHで封入体を可溶化しなかった。非イオン性又は両性イオン性界面活性剤の添加は、緩衝液の性能を改善しなかった。アニオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS)の添加は、封入体の完全な可溶化を可能にしたが、この方法は、以下の精製工程でSDS干渉により不向きである。最初に、8Mの尿素緩衝液で封入体を可溶化するために、塩基性(12)のpHを使用した。その後、驚くべきことに、膜タンパク質の可溶化のために通常使用される緩衝液を変更し、より低いpH(8〜9.5)で封入体を可溶化するために使用できることが判明した。6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、50mMのβME、50mMのグリシン、及び約9.5のpHを含む溶液を用いて、封入体の完全な可溶化を達成した。
【0118】
限外濾過及び凝集体形成
本発明によれば、該多量体マルチエピトープポリペプチドの生成プロセスにおいて、緩衝液交換後に最終組成物中で使用するのに適する1〜50mg/mlのタンパク質濃度でタンパク質凝集体の生成を調節するための、カオトロピック剤(例えば、尿素及びチオ尿素)及び還元剤(例えば、βME)の段階的除去、並びにアルギニンの段階的添加のために限外濾過が使用される。
【0119】
アルギニン安定化効果
アルギニンは、本発明によれば、当技術分野で説明されているように、凝集体形成を防止することには使用されないが、タンパク質微粒子のサイズの低下及び均一性の増加のために使用される。限外濾過緩衝液交換プロセスを介して封入体を可溶化するために、高濃度(約0.2〜1M)のアルギニン緩衝液が徐々に添加される。0.1〜0.5Mの最終アルギニン濃度は、さらなる緩衝液交換によって達成される。
【0120】
懸濁液組成物
Akersら(J.Parenteral Sci.Technol.,41,88〜96,1987)によって開示されているように、医薬品懸濁液を調製する基本的な理由は次のとおりである:
1.ペプチド又はタンパク質の溶解度は、溶液製剤を妨げる。
2.ペプチド又はタンパク質の安定性は、懸濁液製剤中で改善される。
3.ペプチドもしくはタンパク質の放出プロファイルを調節するか、又は遅延することが望ましい。
【0121】
ペプチド又はタンパク質懸濁液製剤の開発のために考慮することができる、粒子生成のための少なくとも4つのアプローチがある:
1.懸濁液は、排他的にビヒクル中の結晶性材料で構成される。
2.懸濁液は、排他的にビヒクル中のアモルファス材料で構成される。
3.懸濁液は、ビヒクル中の結晶性材料とアモルファス材料の混合物を含有する。
4.懸濁液は、懸濁液相と溶液相の両方に有効成分を含有する。
【0122】
無菌の粉末を生成する少なくとも4つの方法として、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、及び超臨界流体粒子形成が挙げられる。高負荷条件下で変性するペプチド及びタンパク質の傾向を考慮すると、結晶化及び凍結乾燥は、より一般的に、このクラスの化合物に適用可能である。これら2つの方法はまた、乾燥した材料の無菌性を維持する能力が証明されている。噴霧乾燥法は、液体−空気界面で、又は溶媒蒸発させるのに必要な高い温度から変性をもたらし得るが、この技術は、高次構造を欠く小ペプチドに適し得る。
【0123】
任意の必要な賦形剤を含有する水性又は非水性ビヒクルは、粒子形成から別々に調製される。非水性ビヒクルの例としては、ゴマ油、ピーナッツ、又は他の植物油などの、任意の高度に精製された天然又は合成の油が挙げられる。成分の溶解性及びビヒクルの全体的な粘度に応じて、滅菌は、濾過又はオートクレーブのいずれかによって達成することができる。無菌の組み合わせアプローチは、粒子成長が独立して達成されるので、ビヒクル(水性又は非水性)の選択においてより高い順応性を提供する。各部の処理が完了すると、乾燥粒子及びビヒクルは無菌的に組み合わされる。ある形態の攪拌が、粒子の均一な分散を達成するのに必要とされる。ペプチド又はタンパク質の場合には、分散プロセスが変性又は他の物理的変化をもたらさないことを保証するために、適切な調節が実施されるべきである。
【0124】
本発明は、精製された組換え多量体マルチエピトープポリペプチド懸濁液の生成プロセスであって、以下の工程を含むプロセスを提供する:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープポリペプチドを含有する封入体を、カオトロピック剤、緩衝剤、及び還元剤を含み、7〜11の範囲のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導し、その結果、不溶性凝集体懸濁液を形成する工程;
iii.アルギニンを添加して、凝集体の95%のサイズが一桁のサイズの範囲内に入る、均一な凝集体サイズ分布を有する安定で均一な懸濁液を得る工程。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、工程(i)のpHは7〜10の範囲内にある。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、該カオトロピック剤は、尿素、チオ尿素、又はそれらの組み合わせである。
【0127】
具体的な実施形態によれば、該カオトロピック剤は、5〜8Mの尿素及び1〜4Mのチオ尿素を含む。
【0128】
特定の実施形態によれば、工程(ii)のカオトロピック剤及び還元剤の段階的除去は、限外濾過により行われる。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、工程(i)のCHAPSは、0.5〜2%の濃度で存在する。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを発現する大腸菌細胞を提供する工程;
ii.溶解及び細菌細胞破壊を行い、多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を提供する工程;
iii.7〜11の範囲のpHで、5〜8Mの尿素、1〜4Mのチオ尿素、0.5〜4%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、緩衝剤、及び還元剤を含む溶液で該封入体を可溶化する工程;
iv.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導し、その結果、不溶性凝集体懸濁液を形成する工程;
v.アルギニンを添加して、凝集体の95%が一桁のサイズの範囲内に入る、均一な凝集体サイズ分布を有する安定で均一な懸濁液を得る工程。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去は、当技術分野で公知の手順を用いて限外濾過により行われる。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのクロマトグラフィー分離工程は、工程(iii)及び(iv)の間で行われる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのクロマトグラフィー分離工程は、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからなる群から選択される。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、工程(v)は、工程(iv)の凝集体形成前に行われる。
【0134】
他の実施形態によれば、工程(v)は、工程(iv)の凝集体形成中に行われる。
【0135】
さらに他の実施形態によれば、工程(v)は、工程(iv)の凝集体形成後に行われる。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下を含む:
i.少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを発現する大腸菌細胞を提供する工程;
ii.大腸菌細胞の溶解、細菌細胞破壊及び遠心分離を行い、多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を提供する工程;
iii.該封入体の少なくとも1回の洗浄を行う工程;
iv.5〜8Mの尿素、1〜4Mのチオ尿素、0.5〜4%のCHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、還元剤及び7〜10の範囲のpHを提供する緩衝剤を含む溶液で該封入体を可溶化する工程;
v.少なくとも1つのクロマトグラフィー工程に該溶液を供する工程;
vi.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって調節される凝集を誘導することによって、不溶性凝集体を形成する工程;
vii.グアニジニウム含有化合物を添加する工程;並びに
viii.(vii)の組成物を製剤化して、4〜8の範囲のpHの、約0.1〜0.4Mのグアニジニウム含有アミノ酸及び10〜40mMのクエン酸緩衝液の最終懸濁液を得る工程。
【0137】
他の実施形態によれば、ステップ(vii)のグアニジニウム含有化合物の添加は、調節された凝集の誘導中に徐々に行われる。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、工程(ii)の細菌細胞破壊は、高圧均質化により行われる。
【0139】
他の実施形態によれば、細菌細胞破壊は、超音波処理することにより行われる。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、溶解は、7〜9の範囲のpHで、トリス緩衝液、EDTA、及び細胞ペースト1gあたり0.1〜0.5mgのリゾチームを含む緩衝液で行われる。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、ステップ(iv)の尿素は6〜7Mの濃度である。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、ステップ(iv)の緩衝剤は、20〜100mMの濃度のHEPESである。
【0143】
他の実施形態によれば、ステップ(iv)の緩衝剤は、5〜100mMの濃度のグリシンである。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、ステップ(iv)の還元剤は、20〜80mMの濃度のβ−メルカプトエタノールである。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、工程(vi)の調節された凝集の誘導は、限外濾過により行われる。
【0146】
本発明によれば、中空糸タンジェンシャルフロー濾過(TFF)カセット、及び攪拌セルを含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の任意の限外濾過法が、使用に適している。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、限外濾過は、以下の工程を含む:
i.pH4〜6.5の10〜80mMのMES緩衝液での緩衝液交換I;
ii.pH4〜6の20〜80mMのクエン酸緩衝液、0.1〜1Mのアルギニンでの緩衝液交換II;
iii.pH4〜7.5の10〜50mMのクエン酸緩衝液、0.1〜0.5Mのアルギニンでの緩衝液交換III。
【0148】
他の実施形態によれば、限外濾過は以下の工程を含む:
i.pH4〜6.5の10〜80mMのMES緩衝液での緩衝液交換I;
ii.pH4〜6の20〜80mMのクエン酸緩衝液での緩衝液交換II;
iii.アルギニン含有溶液での0.1〜1Mのアルギニン濃度までの希釈。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、最終組成物中のポリペプチド濃度は、1〜10mg/mlである。
【0150】
さらに他の実施形態によれば、最終組成物中のポリペプチド濃度は1〜4mg/mlである。
【0151】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチド配列は、配列番号86に記載されている。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1種類の多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドは、配列番号85に記載のポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0153】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβメルカプトエタノール、50mMのグリシンを含み、約9.5のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤(尿素、チオ尿素及びβ−メルカプトエタノール)の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.0.5Mのアルギニン緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する最終組成物を得る工程。
【0154】
さらに別の態様によれば、本発明は、組換え多量体マルチエピトープポリペプチドの実質的に安定な水性懸濁液を生成するプロセスであって、以下の工程を含むプロセスを提供する:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、5〜50mMのグリシンを含み、7〜10の範囲のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.アルギニン緩衝液又はクエン酸緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する安定で均一な最終懸濁液を得る工程。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、工程(i)においてpHは8〜10の範囲にある。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む;
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのグリシンを含み、約9.5のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.0.1〜1Mのアルギニン緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液を緩衝液交換に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する最終懸濁液を得る工程。
【0157】
いくつかの具体的な実施形態によれば、工程(iii)において、0.5Mのアルギニン緩衝液が添加される。
【0158】
他の実施形態によれば、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する最終懸濁液は、工程(iv)において得られる。
【0159】
他の実施形態によれば、該プロセスは、以下の工程を含む:
i.組換え生成した多量体マルチエピトープインフルエンザポリペプチドを含む封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのHEPES、5mMのグリシンを含み、約8.0のpHを有する溶液で可溶化する工程;
ii.カオトロピック剤及び還元剤の段階的除去によって凝集を誘導することにより、不溶性凝集体の懸濁液を形成する工程;
iii.20〜80mMのクエン酸緩衝液を徐々に添加することを含む、限外濾過による濃縮工程及び緩衝液交換工程に該懸濁液を供する工程;並びに
iv.該懸濁液をアルギニン含有溶液での希釈に供し、約1〜5mg/mlの該ポリペプチド、約0.1〜0.5Mのアルギニン及び約10〜50mMのクエン酸緩衝液を含み、4〜7の範囲のpHを有する均一な最終微粒子懸濁液を得る工程。
【0160】
いくつかの具体的な実施形態によれば、工程(iii)において、50mMのクエン酸緩衝液が添加される。
【0161】
他の実施形態によれば、約2.5mg/mlの該ポリペプチド、約0.2Mのアルギニン及び約20mMのクエン酸緩衝液を含み、約6のpHを有する安定で均一な最終微粒子懸濁液は、工程(iv)において得られる。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液は、0.5〜50μmの範囲内に凝集体サイズ分布を含み、該凝集体の95%のサイズは一桁の範囲内に入る。
【0163】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液中の凝集体の95%は、0.5〜5μmのサイズ分布を有する。
【0164】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液中の凝集体の95%は、1〜10μmのサイズ分布を有する。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液中の凝集体の95%は、3〜30μmのサイズ分布を有する。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、最終微粒子懸濁液中の凝集体の95%は、5〜50μmのサイズ分布を有する。
【0167】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び特許請求の範囲において使用するいくつかの用語を、ここに記載する。
【0168】
本発明による多量体マルチエピトープポリペプチドは、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの複数コピーを含むポリペプチドを意味する。
【0169】
「免疫原性(immunogenicity)」又は「免疫原性(immunogenic)」という用語は、免疫応答を刺激するか、又は誘発する物質の能力に関する。免疫原性は、例えば、物質に特異的な抗体の存在を決定することによって測定される。抗体の存在は、例えば、ELISA又はHAIアッセイを使用して、当技術分野で公知の方法によって検出される。
【0170】
インフルエンザエピトープは、それらが誘発する免疫応答のタイプに応じて、B細胞型、T細胞型又はB細胞型とT細胞型の両方に分類することができる。B細胞又はT細胞のペプチドエピトープの定義は明確ではなく、例えば、ペプチドエピトープは、抗体産生を誘発することができるが、同時にそのエピトープは、ヒトHLA分子に結合可能な配列を有し、その分子をCTL又はTh細胞にアクセスさせることで、その特定のエピトープについてのデュアルB細胞及びT細胞分類を可能にする。「CTL」、「キラーT細胞」又は「細胞傷害性T細胞」は、ウイルス感染及び癌細胞に対する防御において機能する特定の外来抗原を有する標的細胞を認識し、溶解する分化したT細胞のグループである。「Tヘルパー細胞」すなわち「Th」は、特異的抗原によって刺激された場合に、B細胞及びキラーT細胞の活性化並びに機能を促進するサイトカインを放出する任意のT細胞である。
【0171】
本明細書で使用される「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、及びその断片、並びに天然に存在するか、又は合成の分子を指す。
【0172】
本明細書及び特許請求の範囲において、「スペーサー」という用語は、末端の一方又は2つのエピトープ間において、ポリペプチド配列中に存在し得る任意の化学化合物を意味する。いくつかの実施形態によれば、該スペーサーは1〜4個のアミノ酸残基からなる。該スペーサーは、酵素的手段によって切断され得る配列を含むことができるか、又は自然に分解することができる。該スペーサーは、ポリペプチドを有益なコンホメーションにするか、又はそのコンホメーションを誘導することができる。該スペーサーは、必要に応じて、プロテアーゼ特異的に切断可能な配列を含むことができる。
【0173】
「不溶性」という用語は、本明細書では、水性懸濁液中に存在する場合に肉眼で見えるという特性として定義される。「不溶性」粒子は、沈殿させるか、又は水性懸濁液の遠心分離の際に回収することができる。
【0174】
「懸濁液」という用語は、本明細書では、上記で定義されるような「不溶性」粒子成分を含む水性媒体として定義される。
【0175】
「微粒子」という用語は、本明細書では、0.1〜100μmサイズの「不溶性」タンパク質凝集体として定義される。いくつかの実施形態によれば、本発明の微粒子は、0.5〜50μmのサイズの範囲内にある。
【0176】
「溶液」という用語は、本明細書では、上記で定義されるような「不溶性」粒子を実質的に含まない水性媒体として定義される。
【0177】
「均一性」は、本明細書では、例えば、LUMiSizer懸濁液アナライザー(LUM GmbH)によって試験されるパラメータによって測定されるように、凝集体のサイズ分布によって定義される。均一な懸濁液は、本明細書では、凝集体の95%のサイズが一桁の範囲内に入る凝集体サイズ分布を有するものとして定義される。
【0178】
均一な微粒子懸濁液は、凝集体の95%のサイズが一桁の範囲内(例えば、0.1〜1μm、1〜10μm、3〜30μm、9〜90μmなど)に入る均一な凝集体サイズ分布を有する、「不溶性」タンパク質凝集体(微小粒子として上記で定義される)を含む水性媒体である。
【0179】
本発明による、均一な微粒子懸濁液中に含まれる粒径分布は狭い。本明細書で使用する「狭い粒径分布」という用語は、粒子の90%超が平均(mean)(すなわち平均(average))粒径の0.2〜2倍の範囲に粒径を有する分布を指す。好ましくは、粒子の95%超がこの範囲内に粒径を有する。さらにより好ましくは、粒子の99%超がこの範囲内に粒径を有する。したがって、5μmの粒径では、狭いサイズ分布は、粒子の90%、95%又は99%超が1〜10μmの範囲に粒径を有する分布を指す。
【0180】
微粒子は、形状が実質的に球状又は楕円体であるが、不規則な形状を含む粒子の非球形状もあり得る。球状粒子では、サイズは直径を表し、非球状粒子では、サイズは平均粒子の最長寸法を表す。
【0181】
本発明の原理によれば、本明細書中で使用される平均粒径は、沈降流分画、光子相関分光法、光散乱、電子散乱、及びディスク遠心分離などを含むが、これらに限定されない当業者に公知の技術を用いて決定することができる平均粒子径を指す。いくつかの実施形態によれば、凝集体サイズ分布はLUMiSizer懸濁液アナライザー(LUM GmbH)又は任意の対応する装置を用いて決定される。
【0182】
「安定性」は、本明細書では、凝集体サイズが均一に分布したままの状態として定義される。
【0183】
カオトロピック剤は、変性剤、すなわち、疎水性効果を弱めることにより、水分子間の水素結合ネットワークを破壊し、高分子(例えば、本発明中のタンパク質)の天然状態の安定性を低下させることができる化合物である。
【0184】
本発明によるグアニジニウム含有アミノ酸は、アルギニン(Arg)アミノ酸又はその誘導体を含むが、これらに限定されない。L−Arg、D−Arg又はそれらの混合物は、本発明に従って使用することができる。
【0185】
L−ArgもしくはD−Arg、もしくはその誘導体の任意の塩もしくは遊離酸、又はそれらの混合物は、本発明に従って使用することができる。これは、Arg塩酸塩、Arg硫酸塩、Argリン酸塩、Argクエン酸塩、Arg酢酸塩及びArg遊離酸からなる群から選択される化合物を含むが、これに限定されない。
【0186】
本発明によるArg誘導体としては、メチル化アルギニン、置換されたL−アルギニン、ニトロ−アルギニン、N−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、N−アミノ−L−アルギニン、N−メチル−L−アルギニン、モノメチル−L−アルギニン(L−NMA)、ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)、アミノグアニジン、7−ニトロインダゾール、S−エチルイソチオ尿素、S−メチルイソチオ尿素、S−メチルチオシトルリン、S−エチルチオシトルリン、N−エチルイミノ−L−オルニチン、オルニチン及びオルニチン誘導体;L−カナバニン;シトルリン;L−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸、4−グアニジノブチル酸;α−N−置換L−アルギニン;2−L−アルギニル−1,3−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;Nω−(ADP−D−リボシル)−L−アルギニン;Nω−ホスホ−L−アルギニン;N2−(2−カルボキシエチル)−L−アルギニン;N2−スクシニル−L−アルギニン;D−ノパリン;D−オクトピン;L−アルギニンアミド;L−アルギニンヒドロキサム酸塩;アルグピリミジン;ヒドロキシ−L−アルギニン;メチル−L−アルギニン;N−アシル−L−アルギニン;N−ベンゾイル−D−アルギニン;Nγ−ニトロ−L−アルギニン;ペプチジル−L−アルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
いくつかの実施形態によれば、低コストのアルギニン又はアルギニン誘導体は、比較的低価格の最終生成物を得るために、本発明の組成物のために使用される。
【0188】
インフルエンザに対する全てのワクチンは、本発明による方法及び組成物において多量体ポリペプチドと組み合わせて使用することができる。「インフルエンザに対するワクチン」という用語には、部分的にもしくは高度に精製されるかもしくは組換え型のインフルエンザタンパク質、不活性化ウイルスもしくは「スプリット生成物」不活性化インフルエンザワクチン生成物、生きている弱毒化ウイルス、又はウイルス様粒子(VLP)及びリポソームを含むが、これらに限定されないインフルエンザエピトープを提示する粒子もしくは担体が含まれるが、これらに限定されない。多量体ポリペプチドと組み合わせて使用されるインフルエンザワクチンは、季節性、パンデミック又はユニバーサルワクチンであり得る。
【0189】
従来の季節性ワクチンは、典型的には、3種類の不活性化又は生きている弱毒化インフルエンザウイルス株を含み、したがって、TIV(三価インフルエンザワクチン)とも呼ばれる。3種類の株は、これからの季節に感染すると予想される株に対する防御を提供するために、WHOが毎年選択する。
【0190】
本発明に従って使用することができる特定の季節性ワクチンの非限定的なリストとしては、VAXIGRIP(商標)、AGGRIPAL(商標)、FLUVIRIN(商標)、FLUAD(商標)、MUTAGRIP(商標)、FLUZONE(商標)、FLUZONE HD(商標)、INFLUVAC(商標)、FLUARIX(商標)、FLULAVAL(商標)、FLUMIST(商標)、AFLURIA(商標)、AGRIFLU(商標)が挙げられる。
【0191】
パンデミックワクチンは、典型的には、パンデミックを引き起こす関連株に特異的な1種類のインフルエンザウイルス株を含んでいる。例えば、2009/2010シーズン中に、豚インフルエンザのパンデミックに使用されたA/H1N1株は、その後、2010/2011シーズンなどの後の季節性TIV製剤に含められた。
【0192】
他の実施形態によれば、パンデミックワクチンは、ヒト、ブタ又は鳥インフルエンザ株に対するものである。本発明に従って使用することができる特定のパンデミックワクチンの非限定的なリストとしては、PANENZA(商標)、PANDEMRIX(商標)、HUMENZA(商標)、FOCETRIA(商標)、CELVAPAN、CELTURA(商標)、及びFLUMIST(商標)が挙げられる。
【0193】
組換えポリペプチド
本発明の多量体マルチエピトープポリペプチドは、発現ベクターでの発現によってそれ自体又はキメラタンパク質として調製することができる。1種類以上のインフルエンザペプチドエピトープを含む組換え又はキメラタンパク質(すなわちポリペプチド、本明細書において互換的に使用される)を生成する方法は、当業者に公知であり、例えば、WO2009/016639に詳述されている。1種類以上のインフルエンザペプチドエピトープをコードする核酸配列は、宿主細胞における増殖及び発現用ポリヌクレオチド構築物の調製のための発現ベクターに挿入することができる。多量体マルチエピトープポリペプチドなどのいくつかのエピトープの複数リピートを含むポリペプチドをコードする核酸構築物は、それらの3’及び5’末端に適切な制限部位を保有するより小さいポリヌクレオチド構築物のライゲーションによって調製することができる。
【0194】
多量体ポリペプチドの生成
宿主細胞に発現させると、該多量体ポリペプチドは、いくつかのタンパク質精製法によって望ましくない成分から分離することができる。そのような方法の1つは、組換えポリペプチドを原核生物中で発現させた場合に形成し得る、タンパク質の不活性凝集体である封入体の生成を介するものである。cDNAは翻訳可能なmRNAを適切にコードしているが、結果として正しく折り畳まれ得ないタンパク質、又は添加されるペプチドエピトープの疎水性が、組換えポリペプチドを不溶性にさせる可能性がある。封入体は、当技術分野で周知の方法によって容易に精製される。封入体の精製のための種々の手順が当技術分野で公知である。いくつかの実施形態において、該封入体は、遠心分離により細菌溶解物から回収され、凝集した組換えタンパク質からできるだけ多くの細菌タンパク質を除去するために、界面活性剤及びキレート剤で洗浄される。可溶性タンパク質を得るために、洗浄した封入体は、典型的には、変性剤に溶解され、次いで、放出タンパク質は、希釈又は透析によって変性試薬の段階的除去によってリフォールディングされる(例えば、分子クローニング:実験室マニュアル、第3版、Sambrook,J.及びRussell,D.W.,2001;CSHL Press)。
【0195】
別の任意の方法は、組換えタンパク質上のポリヒスチジンタグを使用する。ポリヒスチジンタグは、多くの場合、N末端又はC末端において組換えタンパク質に付け加えられる少なくとも6個のヒスチジン(His)残基からなる。ポリヒスチジンタグは、多くの場合、大腸菌又は他の原核生物の発現系で発現するポリヒスチジンタグ組換えタンパク質のアフィニティー精製のために使用される。細菌細胞を遠心分離によって収集し、得られた細胞ペレットは、物理的手段によって、又はリゾチームなどの界面活性剤もしくは酵素を用いて溶解することができる。粗製溶解物は、この段階で、細菌に由来するいくつかの他のタンパク質と共に組換えタンパク質を含み、NTA−アガロース、HisPur樹脂又はタロン樹脂などのアフィニティー担体とインキュベートされる。これらのアフィニティー担体は、ポリヒスチジンタグがマイクロモルの親和性で結合するニッケル又はコバルトのいずれかの結合金属イオンを含む。次いで、この樹脂は、コバルト又はニッケルイオンと特異的に相互作用しないタンパク質を除去するためにリン酸緩衝液で洗浄される。洗浄効率は、20mMのイミダゾールを添加することによって向上させることができ、次いで、タンパク質は、通常150〜300mMのイミダゾールで溶出される。その後、ポリヒスチジンタグは、制限酵素、エンドプロテアーゼ又はエキソプロテアーゼを用いて除去することができる。ヒスチジンタグ付きタンパク質の精製用キットは、例えば、キアゲン社から購入することができる。
【0196】
ワクチン製剤及び投与
本発明のワクチンは、マルチエピトープポリペプチド、及び必要に応じて、アジュバントを含む。ワクチンは、多くの異なるモードの1つで、投与用に製剤化することができる。一実施形態において、該ワクチンは非経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、該ワクチンは、例えば、ジェット注射器又は単回使用カートリッジを用いて使用するための大量接種用に製剤化される。本発明の一実施形態によれば、ワクチン投与は筋肉内投与である。別の実施形態によれば、投与は皮内投与である。ワクチンを皮内に堆積させるために特別に設計された針は、例えば、とりわけ米国特許第6,843,781号及び同第7,250,036号に開示されているように、当技術分野で公知である。他の実施形態によれば、投与は無針注射器を用いて行われる。
【0197】
さらに別の実施形態によれば、該ワクチンは、粘膜送達、特に、経鼻送達用に製剤化される(Arnon et al.,Biologicals.2001;29(3−4):237−42;Ben−Yedidia et al.,Int Immunol.1999;11(7):1043−51)。該ワクチン製剤は、任意の便利な方法で鼻のリンパ組織に適用することができる。しかし、鼻通路の壁には、液体の流れ又は液滴としてそれを適用することが好ましいである。鼻腔内用組成物は、例えば、点鼻薬、スプレーとして液体形態で製剤化されるか、又は吸入に適するエアロゾルとして、粉末として、クリームとして、又はエマルジョンとして製剤化されるか、必要に応じて、ポリペプチドの分散に適する容器で提供することができる。該組成物は、アジュバント、賦形剤、安定化剤、緩衝剤、又は保存剤などの様々な添加剤を含むことができる。
【0198】
本発明の製剤は、必要に応じて、例えば、US2004/0077540に記載されているように、上皮接合構造及び/又は生理機能を調節することにより、可逆的に粘膜上皮傍細胞輸送を高める透過性ペプチドなどの粘膜送達増強剤を含んでもよい。
【0199】
本発明の別の実施形態において、投与は経口投与であり、該ワクチンは、例えば、錠剤の形態で提示されるか、又はゼラチンカプセルもしくはマイクロカプセル中に入れられてもよい。これらの様式の製剤は、当業者に一般的に知られている。
【0200】
リポソームは、抗原送達及び提示のための別の送達システムを提供する。リポソームは、抗原又は他の生成物をカプセル化することができる、典型的には水性中心を囲むリン脂質及び他のステロールで構成される二層小胞である。リポソーム構造は汎用性が高く、多くの種類がナノメートルからマイクロメータのサイズ、約25nm〜約500μmの範囲である。リポソームは、皮膚及び粘膜表面に治療薬を送達するのに有効であることが明らかになっている。無傷のリポソーム構造の平均生存期間又は半減期は、インビボでの持続放出を可能にする特定の重合体、例えば、ポリエチレングリコールを含めると延長できる。リポソームは、単層又は多層であり得る。
【0201】
重合体微粒子及びナノ粒子は、ワクチン送達のためのデポとして機能する小さな生分解性の球を利用する。デポ効果のある他のアジュバントを上回る、重合体微小球が有する主な利点は、それらが極めて安全であり、生分解性の薬物送達システムとして使用することが承認されていることである。共重合体の加水分解の速度は非常によく特徴付けられており、ひいては、長期間にわたって抗原の持続放出を有する微粒子の製造を可能にする(O’Hagen,et al.,Vaccine.1993,11,965)。微粒子の非経口投与は、特に、微粒子が持続放出特性を取り込む場合は、長期的な免疫を誘発する。放出速度は、時間が変化するにつれて加水分解する重合体の混合物及びそれらの相対分子量によって調節することができる。理論に束縛されることを望まないが、巨大粒子は、マクロファージの取り込みに利用可能になる前に、より小さな粒子に分解されなければならないので、異なるサイズの粒子(1μm〜200μm)の製剤は、長期持続性免疫応答にも寄与し得る。このように、単一の注射ワクチンは、様々な粒径を統合することにより、それによって抗原提示を延長することにより開発され、家畜生産者に大幅に利益を与えることができた。いくつかの用途において、アジュバント又は賦形剤は、ワクチン製剤に含まれてもよい。アジュバントの選択は、ワクチンの投与様式によって部分的に決定される。例えば、非注射ワクチン接種は、全体的により良好なコンプライアンス及び全体的により低いコストにつながる。投与経路の一態様は、筋肉内投与である。鼻腔内用アジュバントの非限定的な例としては、キトサン粉末、PLA及びPLGミクロスフェア、QS−21、リン酸カルシウムナノ粒子(CAP)並びにmCTA/LTB(熱不安定性エンテロトキシンの五量体Bサブユニットを有する突然変異体コレラ毒素E112K)が挙げられる。
【0202】
使用されるアジュバントはまた、理論的には、ペプチド又はタンパク質ベースのワクチン用の公知のアジュバントのいずれかであり得る。例えば:ゲル形態の無機アジュバント(水酸化アルミニウム/リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、モノホスホリルリピドA及びムラミルペプチドなどの細菌アジュバント、いわゆるISCOMS(「免疫賦活複合体」、リポソーム及び生分解性ミクロスフェア)などの粒子状アジュバント、IFA(「不完全フロイントアジュバント」)、SAF、サポニン(QS−21など)、スクアレン/スクアランなどの、油エマルジョン及び乳化剤に基づくアジュバント、非イオン性ブロック共重合体、ムラミルペプチド類似体、合成リピドA、合成ポリヌクレオチドなどの合成アジュバント並びにポリカチオン性アジュバント。
【0203】
本発明の免疫原と共に使用するための別のアジュバントは、エマルジョンである。企図されるエマルジョンは、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンであり得る。該免疫原性ポリペプチドに加えて、そのようなエマルジョンは、周知のスクアレン、スクアラン、又はピーナッツ油などの油相、及び分散剤を含む。非イオン性分散剤が好ましく、そのような材料には、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート及びマンニドモノオレエートなどのソルビタン及びマンニドのモノ−並びにジ−C
12〜C
24脂肪酸エステルが含まれる。
【0204】
そのようなエマルジョンは、例えば、スクアレン、グリセロール及びマンニドモノオレエート(Arlacel(商標)A)などの界面活性剤を含み、必要に応じて、スクアランを有し、水相中のキメラタンパク質粒子で乳化された油中水型エマルジョンである。油相の他の成分には、α−トコフェロール、混合鎖のジグリセリド及びトリグリセリド、並びにソルビタンエステル類が含まれる。そのようなエマルジョンの周知の例としては、Montanide(商標)ISA−720、及びMontanide(商標)ISA 703(Seppic社、カストル、フランス)が挙げられる。水中油型エマルジョンアジュバントには、例えば、WO95/17210及びEP 0 399 843に開示されているものが含まれる。
【0205】
小分子アジュバントの使用も本明細書で企図される。本明細書で有用な小分子アジュバントの1種は、米国特許第4,539,205号、同第4,643,992号、同第5,011,828号及び同第5,093,318号に記載の7−置換−8−オキソ−グアノシン誘導体又は8−スルホ−グアノシン誘導体である。7−アリル−8−オキソグアノシン(ロキソリビン)は、抗原(免疫原)特異的応答を誘導するのに特に有効であることが示されている。
【0206】
有用なアジュバントとしては、Corixa社が製造するモノホスホリルリピドA(MPL(登録商標))、3−デアシルモノホスホリルリピドA(3D−MPL(登録商標))が挙げられる。アジュバントは、2%スクアレン/Tween(商標)80エマルジョン中に、細菌から抽出された3つの成分:モノホスホリルリピド(MPL)A、トレハロースジミコレート(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)(MPL+TDM+CWS)を含有する。このアジュバントは、GB2122204Bに教示されている方法により調製することができる。
【0207】
他の化合物は、RC−529(商標)アジュバント{2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−エチル−2−デオキシ−4−O−ホスホン−o−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラ−デカノイル]−2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラ−デカノイル−アミノ]−p−D−グルコピラノシドトリエチルアンモニウム塩}の名称で、Corixa社から入手可能なものなどの、アミノアルキルグルコサミドホスフェート(AGP)と呼ばれるMPL(登録商標)アジュバントに構造的に関連している。RC−529アジュバントは、RC−529SEとして販売されているスクアレンのエマルジョン及びCorixa社から入手可能なRC−529AFとして水性製剤で利用できる(例えば、米国特許第6,355,257号;同第6,303,347号;及び同第6,113,918号に開示されている)。
【0208】
ムラミルジペプチドアジュバントも企図され、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thur−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン[CGP 11637、ノル−MDPと呼ばれる]、及びN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミチオール(dipalmityol)−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン[(CGP)1983A、MTP−PEと呼ばれる]を含む。いわゆるムラミルジペプチド類似体は、米国特許第4,767,842号に記載されている。
【0209】
MPL(登録商標)アジュバントなどのtoll様受容体−4(TLR−4)又はRC−529(登録商標)アジュバントもしくはリピドA模倣物などの構造的に関連する化合物に対する1種類以上のアゴニストを単独で、あるいはCpGモチーフを含有する非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドなどのTLR−9に対するアゴニストと共に含有するアジュバントの使用も任意選択である。
【0210】
さらに企図されるアジュバントには、Coley製薬グループから入手可能なCpGヌクレオチドモチーフを一回以上(プラス隣接配列)含有する合成オリゴヌクレオチドのアジュバントが含まれる。Aquila Biopharmaceuticals社から入手可能なQS21と命名されたアジュバントは、南米の木のキラヤ・サポナリア・モリナ(例えば、Quil(商標)A)の樹皮に由来するアジュバント活性を有する免疫学的に活性のあるサポニン画分であり、その生成方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。Quil(商標)Aの誘導体、例えば、QS21(QA21としても知られるQuil(商標)AのHPLC精製画分誘導体)、及びQA17などの他の画分も開示されている。米国特許第5,977,081号及び同第6,080,725号に記載されているものなどの、キラヤ・サポナリア・モリナのサポニンの半合成及び合成誘導体も有用である。Chiron社から入手可能なMF59と命名されたアジュバントは、米国特許第5,709,879号及び同第6,086,901号に記載されている。
【0211】
別の種類のアジュバント混合物は、さらに、米国特許第6,113,918号に記載されるようなアミノアルキルグルコサミンホスフェートを含有する安定な油中水型エマルジョンを含む。別の油中水型エマルジョンは、WO99/56776に記載されている。
【0212】
アジュバントは、アジュバント、宿主動物及び免疫原によって変化し得るアジュバント量で利用される。典型的な量は、1回の免疫当たり約1μg〜約1mgで変化し得る。当業者なら、適切な濃度又は量を容易に決定することができることを知っている。
【0213】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アジュバントは、ワクチンを等張性もしくは低張性にさせることができる1種類以上の水溶性もしくは水乳化可能物質を含有する溶液又はエマルジョンとして存在する。水溶性又は水乳化可能物質は、例えば、マルトース;フルクトース;ガラクトース;サッカロース;糖アルコール;脂質;及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0214】
ペプチドエピトープ及び類似体
本発明の多量体ポリペプチドは、ペプチド、ペプチド多量体及びポリペプチドの合成について当技術分野で公知の方法を用いて化学的に合成することができる。これらの方法は、一般に、ペプチド合成の公知の原理に依存する。最も好都合なことには、これらの手順は、固相ペプチド合成の公知の原理に従って行うことができる。
【0215】
本明細書で使用する「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸配列を示す。本発明の具体的な実施形態によるペプチドエピトープは、4〜24個のアミノ酸残基の配列を含む。多量体ポリペプチドは、ペプチドエピトープの少なくとも2個のリピート及び最大50個のリピートを含む。
【0216】
ペプチド類似体及びペプチド模倣体も、化学合成を利用した場合、本発明の範囲内に含まれる。本発明によるペプチド類似体は、必要に応じて、C末端又はN末端のいずれかにおいて少なくとも1つの非天然アミノ酸及び/又は少なくとも1つの保護基を含んでよい。
【0217】
「アミノ酸」という用語は、好ましくは、炭素主鎖上の1,2−、1,3−、又は1,4−置換パターンで、アミノ基及びカルボン酸基を有する化合物を指す。α−アミノ酸は、最も好ましく、タンパク質に見出される(グリシン以外はL−アミノ酸である)20個の天然アミノ酸を含む。合成が化学手段によるものである場合には、アミノ酸という用語は、20個の天然のアミノ酸の対応するD−アミノ酸、対応するN−メチルアミノ酸、側鎖が修飾されたアミノ酸、タンパク質中に見られない生合成で入手可能なアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシ−プロリン、5−ヒドロキシ−リジン、シトルリン、オルニチン、カナバニン、ジエンコル酸、β−シアノールアニン(cyanolanine))、並びにアミノ−イソ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、ホモシステイン及びホモセリンなどの合成により誘導されたα−アミノ酸も含む。β−アラニン及びγ−アミノ酪酸は、それぞれ、1,3及び1,4−アミノ酸の例であり、他の多くが当技術分野で周知である。スタチンのようなアイソスター(CONH結合がCHOHで置換されている2つのアミノ酸を含むジペプチド)、ヒドロキシエチレンアイソスター(CONH結合がCHOHCH
2で置換されている2つのアミノ酸を含むジペプチド)、還元アミドアイソスター(CONH結合がCH
2NH結合で置換されている2つのアミノ酸を含むジペプチド)及びチオアミドアイソスター(CONH結合がCSNH結合で置換されている2つのアミノ酸を含むジペプチド)も本発明に有用な残基である。
【0218】
化学合成のために、本発明で使用されるアミノ酸は、市販されているか、又はルーチンな合成法によって入手可能なものである。特定の残基は、ペプチドへの組み込みのための特別な方法を必要とし得、ペプチド配列に対する連続的で、多様な又は収束性の合成アプローチが本発明において有用である。天然コードのアミノ酸及びそれらの誘導体は、IUPACの規則に従って、3文字コードで表される。指示されない場合、L異性体を用いた。
【0219】
当業者に公知のアミノ酸の保存的置換は、本発明のペプチドエピトープの範囲内である。保存的アミノ酸置換には、同じ種類の官能基又は側鎖、例えば、脂肪族、芳香族、正に帯電したもの、負に帯電したものを有する別のアミノ酸との1個のアミノ酸置換が含まれる。これらの置換は、経口バイオアベイラビリティ、中枢神経系への浸透、及び特定の細胞集団に対する標的化などを高めることができる。当業者なら、コード配列中の単一アミノ酸もしくはわずかな比率のアミノ酸を変化させるか、付加するか、又は除去する、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列への個々の置換、欠失あるいは付加は、その改変が化学的に似たアミノ酸とのアミノ酸置換をもたらす「保存的修飾変異体」であることを認識するであろう。機能的に似たアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。
【0220】
以下の6つの群は、それぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0221】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に例示するために提示されている。しかし、それらは、決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形及び修正を容易に考案することができる。
【0222】
実施例
材料及び方法
多量体マルチエピトープポリペプチド:
表2に示すインフルエンザウイルスペプチドエピトープのE1〜E9のいくつかのリピートを含む多量体マルチエピトープポリペプチドを生成し、試験した。ペプチドエピトープに加えて、該ポリペプチドは、スペーサーとしてアミノ酸及び短いペプチドを含む。該ポリペプチドは、交互連続重合体構造又はブロック共重合体構造で配置されている。該ポリペプチドを、該ポリペプチドのさらなる操作のために、種々の制限部位を含むポリヌクレオチド構築物からの発現ベクターでの発現によって調製する。該ポリヌクレオチド構築物は、商業的供給源から供給される。
【0223】
多量体マルチエピトープポリペプチドから調製されたワクチンは、種々のマウスモデルの免疫研究のため、及びヒト対象における臨床試験において使用されている。
【0224】
ブロック共重合体構造に配置された9種類の異なるエピトープの各々3個のリピートを有する多量体ポリペプチド[E1]
3−[E2]
3−[E3]
3−[E4]
3−[E5]
3−[E6]
3−[E7]
3−[E8]
3−[E9]
3を生成し、M−001と命名した。M−001の推定分子量は48kDである。M−001多量体ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号86に記載されている。
【0225】
M−001多量体ペプチドを調製するために使用されるポリヌクレオチド構築物のDNA配列は、配列番号85に記載されている。
【0226】
追加の多量体マルチエピトープポリペプチド配列は、配列番号83及び配列番号87からなる群から選択される配列を含むポリヌクレオチド配列によってそれぞれコードされる配列番号84及び配列番号88からなる群から選択される。
【0227】
本発明によるワクチン組成物は、アジュバントを必要とせずに投与することができる。あるいは、該組成物はアジュバントを含んでもよい。このような場合、臨床試験で使用される任意のアジュバントは、動物実験ではIFA及びヒトでの試験ではMontanide(商標)ISA 51 VG(Seppic社、フランス)である。Montanide(商標)は、ワクチンの有効性を試験する多くの臨床試験で用いられており、細胞性及び体液性免疫応答の両方を誘導することが可能な一般的に使用されている免疫調節物質である(Peek et al.,Adv Drug Deliv Rev.2008;60,915−928)。
【0228】
実施例1:M−001の生成プロセス−オプションA
培養プロセス:培養プロセスは、M−001ポリペプチドを組換え発現する熱ショック誘導性大腸菌を用いて行った。一晩の接種菌液を10Lの細菌増殖培地に添加した。流加プロセスを36℃で実施した。42℃まで温度を上げることによって誘導を開始した。誘導後2時間の時点で、バッチを15Lの最終体積で終了した。次いで、これらの細胞を遠心分離し、回収した細胞ペレットを−70℃で保存した。
【0229】
細胞の溶解、封入体の回収及び洗浄:凍結細胞ペレットを解凍し、溶解緩衝液(50mMのトリス、10mMのEDTA、リゾチーム)に分散させた。混合及びウルトラタラックス(Ultra Turrax)処理の後に、細胞を、ゴーリンホモジナイザー(700〜800バール×3サイクル)に通した。溶解物を、50mMのトリス、0.1MのNaCl、2%トリトンX−100で希釈し、次いで、0.5Mのトリス、1MのNaClで希釈した。最終的に、粗製封入体(IB)を、遠心分離により回収し、次いで、−70℃で保存した。
【0230】
次いで、IBペレットを、1%のトリトン、50mMのHEPES、1MのNaCl、pH8;5Mの尿素、5mMのグリシン、1%のTween80、pH8で連続洗浄し、最後に50mMのHEPES、pH8で洗浄し、次いで、−70℃で保存した。
【0231】
封入体の可溶化:洗浄した封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、50mMのグリシン、1%のCHAPS、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH9.5を含有する緩衝液で可溶化した。
【0232】
タンパク質の精製:精製を、AKTApilotクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare社)を用いて実施した。可溶化したタンパク質を、膜濾過によって清澄化し、最初に陽イオン交換SPセファロースFFカラム(GE Healthcare社)にロードした。このカラムを、洗浄緩衝液I(8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH8)、次いで、洗浄緩衝液II(8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、200mMのNaCl、pH8)で連続洗浄し、次いで、8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、250mMのNaCl、pH8で溶出した。280nmの吸収で検出された溶出ピークを収集した。
【0233】
次いで、溶出液を、1Mの硫酸アンモニウム〜0.5Mの硫酸アンモニウムで希釈し、次いで、第2のクロマトグラフィーカラムの疎水性相互作用フェニルセファロースFF(HS)樹脂(GE Healthcare社)上にロードした。このカラムを、8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、0.5Mの硫酸アンモニウム、pH8で洗浄し、次いで、8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH8で溶出した。次いで、溶出液を、DNA及びエンドトキシンの低減のためにSartobind STIC(Sartorius)フィルターに通した。Tween−80を、1:5(w/w)のTween80:組換えタンパク質の割合で添加した。タンパク質溶液を無菌的に濾過した(0.2μm)。後続の全てのステップを無菌的に処理した。
【0234】
限外濾過及び製剤:溶出液を、10kDaカットオフの中空糸モジュール(GE Healthcare社)を用いて濃縮した。サイズ分布を調節したタンパク質微粒子を形成するために、緩衝液を、連続して、50mMのMES緩衝液、pH5.5に交換し、次いで、50mMのクエン酸緩衝液、0.5Mのアルギニン、pH5.5に交換し、最終的に、20mMのクエン酸緩衝液、0.2Mのアルギニン、pH6に交換し、これが薬物物質となる。該医薬組成物−薬物生成物を、20mMのクエン酸緩衝液、0.2Mのアルギニン、pH6中2.5mg/mLのタンパク質濃度まで該薬物物質を希釈することによって得る。充填したバイアルを+4℃で保存する。
【0235】
実施例2:M−001の生成プロセス−オプションB
培養プロセス:実施例1と同じ。
【0236】
細胞の溶解、封入体の回収及び洗浄:実施例1と同じ。
【0237】
封入体の可溶化:洗浄した封入体を、6Mの尿素、2Mのチオ尿素、5mMのグリシン、1%のCHAPS、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH8.0を含有する緩衝液で可溶化した。
【0238】
タンパク質の精製:精製を、AKTApilotクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare社)を用いて実施した。可溶化したタンパク質を、膜濾過によって清澄化し、陽イオン交換SPセファロースFFカラム(GE Healthcare社)にロードした。このカラムを、洗浄緩衝液I(8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH8)、次いで、洗浄緩衝液II(8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、200mMのNaCl、pH8)で連続洗浄し、次いで、8Mの尿素、5mMのグリシン、50mMのHEPES、50mMのβ−メルカプトエタノール、250mMのNaCl、pH8で溶出した。280nmの吸収で検出された溶出ピークを収集した。
【0239】
Tween−80を、1:5(w/w)のTween80:組換えタンパク質の割合で添加した。タンパク質溶液を無菌的に濾過した(0.2μm)。後続の全てのステップを無菌的に処理した。
【0240】
限外濾過及び製剤:溶出液を、10kDaカットオフの中空糸モジュール(GE Healthcare社)を用いて濃縮した。調節された微粒子(すなわち、調節されたタンパク質凝集体)を形成するために、緩衝液を、連続して、50mMのMES緩衝液、pH5.5に交換し、次いで、50mMのクエン酸緩衝液、pH5.5に交換し、これが薬物物質となる。アルギニン溶液を、0.5Mの最終アルギニン濃度まで添加した。該医薬組成物−薬物生成物を、50mMのクエン酸緩衝液、0.5Mのアルギニン、pH5.5中2.5mg/mLのタンパク質濃度まで該薬物物質を希釈することによって得た。充填したバイアルを+4℃で保存した。
【0241】
実施例3:薬物物質緩衝液としてのM−001試験PBSの生成プロセス
培養プロセス:実施例1と同じ。
【0242】
細胞の溶解、封入体の回収及び洗浄:実施例1と同じ。
【0245】
限外濾過及び製剤:溶出液を50mMのMES緩衝液、pH5.5で1:40希釈した。得られた溶液を、10kDaカットオフの中空糸モジュール(GE Healthcare社)を用いて濃縮した。タンパク質微粒子を作製するために、緩衝液をPBS緩衝液、pH7.0に交換した。凝塊及び沈殿の増加によって視覚的に評価されるように、タンパク質懸濁液の外観は、実施例1及び2で得られた懸濁液に比べて劣っていた。アルギニンHClを0.1〜1.5Mの最終アルギニン濃度まで添加した。アルギニン添加により、用量依存的に粒子がすぐに脱凝集し、アルギニン濃度が高いほど、効果がより高まった。