(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550093
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ハーモニック駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-100813(P2017-100813)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-109439(P2018-109439A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】105143953
(32)【優先日】2016年12月29日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】謝昆儒
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼瑞堂
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼慶輝
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−84440(JP,A)
【文献】
特開平2−283941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波発生器と、
内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、
外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインと、
を備え、
前記複数の貫通孔は、前記カップ状領域に設置されると共に前記フレキシブルスプラインを複数回巻回させて交錯するように設置されることを特徴とする、
ハーモニック駆動装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、円形孔であることを特徴とする、
請求項1に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項3】
波発生器と、
内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、
外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインと、
を備え、
前記複数の貫通孔は、前記本体と前記底部との連接箇所に設置されると共に範囲として前記本体及び前記底部を含むことを特徴とする、
ハーモニック駆動装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、矩形であることを特徴とする、
請求項3に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項5】
前記本体及び前記底部は可撓性材質であり、
前記本体は対応し合う第一端部及び第二端部を有し、
前記第一端部は前記底部に連接され、
前記本体の前記第二端部の外囲には前記外歯車が設置されることを特徴とする、
請求項1に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項6】
前記第一端部は、同じ本体厚さを有することを特徴とする、
請求項5に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項7】
前記本体厚さは、前記第一端部から前記第二端部まで均等に延伸されることを特徴とする、
請求項6に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項8】
波発生器と、
内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、
外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインと、
前記波発生器に連結される第一駆動軸と、
前記フレキシブルスプラインの前記底部に連結される第二駆動軸と、
を備え、
前記サーキュラ・スプラインは1つの位置に固設され、
前記第一駆動軸及び前記第二駆動軸の内の1つは入力軸であり、もう1つは出力軸であり、
前記複数の貫通孔は、前記カップ状領域に設置されると共に前記フレキシブルスプラインを複数回巻回させて交錯するように設置されることを特徴とする、
ハーモニック駆動装置。
【請求項9】
前記貫通孔は、円形孔であることを特徴とする、
請求項8に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項10】
波発生器と、
内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、
外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインと、
前記波発生器に連結される第一駆動軸と、
前記フレキシブルスプラインの前記底部に連結される第二駆動軸と、
を備え、
前記サーキュラ・スプラインは1つの位置に固設され、
前記第一駆動軸及び前記第二駆動軸の内の1つは入力軸であり、もう1つは出力軸であり、
前記複数の貫通孔は、前記本体と前記底部との連接箇所に設置されると共に範囲として前記本体及び前記底部を含むことを特徴とする、
ハーモニック駆動装置。
【請求項11】
前記貫通孔は、矩形であることを特徴とする、
請求項10に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項12】
前記本体及び前記底部は可撓性材質であり、
前記本体は対応し合う第一端部及び第二端部を有し、
前記第一端部は前記底部に連接され、
前記本体の前記第二端部の外囲には前記外歯車が設置され、
前記本体は本体厚さを有し、
前記本体厚さは前記第一端部から前記第二端部まで均等に延伸されることを特徴とする、
請求項8に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項13】
前記第一端部は、同じ前記本体厚さを有することを特徴とする、
請求項12に記載のハーモニック駆動装置。
【請求項14】
前記本体厚さは、前記第一端部から前記第二端部まで均等に延伸されることを特徴とする、
請求項13に記載のハーモニック駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーモニック駆動技術に関し、より詳しくは、フレキシブルスプライン(Flexspline)のカップ状領域に貫通孔が設けられるハーモニック駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーモニック駆動装置は機械駆動変速機構であり、一般的な歯車による駆動と比べ、軽量で体積が小さいという特徴を有する。ハーモニック駆動装置の駆動比の範囲は大きく(一段駆動比は60〜320であり、多段駆動比は1600〜100000に達する)、駆動効率が高く、駆動精度も高く、負荷能力も高い等の特徴があり、各工業分野で広く使用されている。一般的には、ハーモニック駆動装置は高い減速比が必要な応用分野に多く応用される。
【0003】
また、ハーモニック駆動装置の構造は、主に波発生器と、フレキシブルスプラインと、サーキュラ・スプラインとを備える。波発生器は楕円形を呈し、長軸及び短軸を有し、波発生器は通常入力軸に連結される。フレキシブルスプラインは薄い筒状として形成されると共に可撓性の本体を有し、本体の外囲には外歯車が設置され、本体及び底部が一体成形され、フレキシブルスプラインがカップ状構造の外形を呈し、前記底部は通常出力軸に連結される。サーキュラ・スプラインは内歯車を有し、波発生器はフレキシブルスプライン内に貫設され、フレキシブルスプラインはサーキュラ・スプライン内に貫設され、フレキシブルスプラインの外歯車がサーキュラ・スプラインの内歯車に部分的に噛合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のフレキシブルスプラインの本体の断面は不均等な厚さに設計され(
図11参照)、フレキシブルスプライン90の本体91は外歯車93から底部92まで延伸される厚さが第一厚さT1から第二厚さT2に縮減される。例えば、第一厚さT1が0.4ミリメートルである場合、第二厚さT2は0.3ミリメートルとなる。ハーモニック駆動装置は極めて精密な機械駆動変速機構であり、従来は厚さが不均一な設計となっているため、加工製造が難しく、安定的に製造できず、出力軸の動力の伝達に影響が及んだ。また、従来のフレキシブルスプライン90の本体91は閉じたカップ状に設計されているため、放熱効果が低く、且つ温度が上昇すると幾何学的大きさに変異が生じた。
【0005】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に到った。
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、ハーモニック駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るハーモニック駆動装置の特徴は、
波発生器と、内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインとを備える。
【0008】
また、他の実施形態において、本発明に係るハーモニック駆動装置の特徴は、
波発生器と、内歯車を有するサーキュラ・スプラインと、外歯車を有し、本体及び底部でカップ状領域が構成され、前記カップ状領域には複数の貫通孔が設けられるフレキシブルスプラインと、前記波発生器に連結される第一駆動軸と、
前記フレキシブルスプラインの前記底部に連結される第二駆動軸であって、前記サーキュラ・スプラインは1つの位置に固設され、前記第一駆動軸及び前記第二駆動軸の内の1つは入力軸であり、もう1つは出力軸である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハーモニック駆動装置によれば、弾性により剛性が調整され、振動や騒音が打ち消され、フレキシブルスプラインの応力の分布が不均等であるという問題を解決させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好ましい実施形態によるハーモニック駆動装置を示す分解の概略図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態によるハーモニック駆動装置を示す断面構成の概略図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態のフレキシブルスプラインを示す一部の断面構成の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態のフレキシブルスプラインの貫通孔を示す概略図である。
【
図5】本発明の他の実施形態のフレキシブルスプラインの貫通孔を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態の異なる円弧状歯車を示す概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態の異なる円弧状歯車を示す概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態のフレキシブルスプラインと従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。
【
図9】本発明の一実施形態のフレキシブルスプラインと従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。
【
図10】本発明の一実施形態のフレキシブルスプラインと従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。
【
図11】従来のフレキシブルスプラインを示す一部の断面構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係るハーモニック駆動装置の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
〈実施形態〉
【0012】
まず、
図1〜10を参照しながら、本発明の実施形態をさらに詳しく説明する。
図1及び
図2は本発明の好ましい実施形態によるハーモニック駆動装置を示す概略図である。波発生器(Wave Generator)10と、サーキュラ・スプライン(Circular Spline)20と、フレキシブルスプライン(Flexspline)30とを備える。
【0013】
波発生器10はカム11及び軸受モジュール12で構成される(
図1及び
図2参照)。好ましい実施形態において、カム11は楕円形カムである。軸受モジュール12は軸受外輪13と、軸受内輪14と、軸受ボール15とを備える。軸受内輪14はカム11の外囲に装設され、軸受ボール15は軸受内輪14の外囲に装設され、軸受外輪13は軸受ボール15の外囲に装設される。本実施形態において、軸受外輪13及び軸受内輪14は装設前は円形を呈し、装設されてカム11に結合された後にはカムにより楕円形を呈し、軸受外輪13及び軸受内輪14が受力して変形することによりカム11の輪郭に適合する楕円形が形成され、波発生器10が楕円形を呈する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、サーキュラ・スプライン20は円形環状を呈し、内歯車21を有し、インボリュートの歯形または円弧状の歯であり、本実施形態において、内歯車21の歯形は円弧状の歯である。サーキュラ・スプライン20は1つの位置に固設され、例えば、機械装置や動力装置のフレーム上に設置される。波発生器10には第一駆動軸40が連結され、フレキシブルスプライン30は第二駆動軸50に連結される。ある実施形態において、第一駆動軸40が入力軸である場合、第二駆動軸50は出力軸であり、他の実施形態において、第一駆動軸40が出力軸である場合、第二駆動軸50は入力軸である。
【0015】
なお、
図1、
図2及び
図3に示すように、フレキシブルスプライン30は薄い円筒形として形成されると共に可撓性の本体31及び底部32で構成されるカップ状領域を有する。本体31の軸方向上には対応し合う第一端部311及び第二端部312を有し、本体31の第一端部311は同じ本体厚さT3を有し、前記本体厚さT3は第一端部311から第二端部312まで均等に延伸され、前記第二端部312の厚さは第一端部厚さT3より厚い。本体31の第一端部311は底部32の辺縁に連接され、本体31の第二端部312の外囲には外歯車33が設置され、外歯車313はインボリュートの歯形または円弧状の歯であり、本実施形態において、外歯車33の歯形は円弧状の歯である。外歯車33の歯数は内歯車21の歯数とは相違し、内歯車21の歯数は外歯車33の歯数より多い偶数の歯数であり、例えば2つである。
【0016】
また、フレキシブルスプライン30には複数の貫通孔34が設けられ、貫通孔34の大きさ、形状、設置態様に制限はない。本実施形態において、前記複数の貫通孔34はカップ状領域の本体31に設置されると共にフレキシブルスプライン30の周囲を1周巻回させる。本実施形態において、貫通孔34は複数の円形孔であるが、矩形や他の形状でもよく、設置される位置として本体31及び底部32を含む。
【0017】
図4に示すように、フレキシブルスプライン30Aは本体31A及び底部32Aでカップ状領域が構成され、本体31Aの外囲には外歯車33Aが設置される。本実施形態の貫通孔34Aはカップ状領域の本体31Aに設置されると共にフレキシブルスプライン30Aの周囲を巻回させる。本実施形態による貫通孔34Aは2周巻回させると共に交錯するように設置される複数の円形孔である。
【0018】
さらに、フレキシブルスプライン30Bは本体31B及び底部32Bでカップ状領域が構成され(
図5参照)、本体31Bの外囲には外歯車33Bが設置される。本実施形態の貫通孔34Bは本体31Bと底部32Bとの連接箇所に設置されると共に範囲として本体31B及び底部32Bを含む矩形である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、フレキシブルスプライン30はサーキュラ・スプライン20内に貫設され、波発生器10はフレキシブルスプライン30の第二端部312内に設置され、波発生器10が円形を呈するため、フレキシブルスプライン30の第二端部312が変形し、フレキシブルスプライン30の第二端部312が楕円形を呈し、楕円形の長軸部位に位置される外歯車33が対応する位置の内歯車21に噛合され、楕円形の短軸部位に位置される外歯車33が対応する位置の内歯車21から分離される。すなわち、外歯車33が部分の内歯車21に噛合される。内歯車21及び外歯車33の歯形及び大きさに制限はない。
【0020】
図6及び
図7を参照し、
図6によれば、内歯車21及び外歯車33は円弧状の歯形を有し、
図7によれば、内歯車21C及び外歯車33Cも同様に円弧状の歯形を有する。本実施形態において、円弧状の歯の上面には平面を有する。円弧状の歯の形状及び大きさは需要に応じて決定され、且つ
図6及び
図7に示す態様のものに限定されない。
【0021】
図1乃至
図3に示すように、第一駆動軸40により波発生器10が駆動されて回転すると、波発生器10がフレキシブルスプライン30を駆動させて回転させ、本体31が可撓性を有するため、本体31の外形が持続的に変形し、異なる位置の外歯車33が持続的に内歯車21に噛合される。この動作原理は、内歯車21の歯数が外歯車33の歯数より多いため、波発生器10が360度回転すると、フレキシブルスプライン30が逆方向に歯数の差の分移動する。例えば、内歯車21が外歯車33より2つ多く、波発生器10が時計回りに180度回転する場合、フレキシブルスプライン30が反時計回りに歯1つ分移動する。波発生器10が時計回りに360度回転する場合、フレキシブルスプライン30が反時計回りに歯2つ分移動する。このため、フレキシブルスプライン30に連結される第二駆動軸50の回転速度が第一駆動軸40の回転速度より遅くなる。本体31及び底部32は互いに独立した部材であるため、波発生器10が回転してカム11によりフレキシブルスプライン30が駆動されて回転すると、波発生器10により本体31の外歯車33が真っ直ぐに内歯車21に向けて押され、外歯車33及び内歯車21がスムーズに噛合され、外歯車33が歪まなくなる。また、本実施形態において、内歯車21及び外歯車33は共に円弧状の歯であるため、内歯車21の一部に応力が集中せず、外歯車33及び内歯車21が平均的に受力させる。これにより、外歯車33の損耗が回避され、ハーモニック駆動装置の耐用年数が延びる。ちなみに、いわゆる円弧状の歯とは、歯形の輪郭(tooth profile)が円形で構成されるものをいう。
【0022】
カップ状領域の本体31には貫通孔34が設けられると共に均等な厚さを有することにより、加工の難度が下がり、安定的に製造可能になる。本体31が従来のフレキシブルスプラインと同程度のねじり剛性を達成させ、且つ構造が受力した際の応力が均等に分布され、耐用年数が延びる。また、貫通孔34を有する設計により作動中の放熱効果が高まり、温度の上昇による幾何学的大きさの変異の影響が減少する。
図8A乃至
図10Bには、それぞれ均等に分布される円形孔、交錯する円形孔、底端の切り欠き溝の3種類の設計を図示して実施形態を説明する。先行技術によるフレキシブルスプラインの設計と比べ、定格トルク(67Nm)の条件下でのねじり剛性を比較すると、弾性により剛性が調整される効果が証明された。
【0023】
図8B、9B及び
図10Bに示すように、曲線L01、L02、L03は全て従来のフレキシブルスプライン90を示し、
図11を例にすると、本体91の直径は60mm(ミリメートル)であり、本体91の内部には30mm(ミリメートル)の深さを有し、第一厚さT1は0.4mm(ミリメートル)であり、第二厚さT2は0.3mm(ミリメートル)である。ねじり剛性は4.27(x10
4 Nm/rad)である。
【0024】
ねじり剛性の測定は、波発生器及びサーキュラ・スプラインを固定させ、フレキシブルスプラインにトルクをかけ、入力トルク及びねじれ角度を測定し、ねじり剛性を計算する。その計算式は以下の通りである。
ねじり剛性=フレキシブルスプラインのトルク/フレキシブルスプラインのねじれ角度
【0025】
図8A及び
図8Bに示すように、
図8Aに示す実施形態は
図1の実施形態を基礎とし、フレキシブルスプライン30は可撓性を有する本体31及び底部32でカップ状領域が構成され、本体31の外囲には外歯車33が設置され、カップ状領域の本体31にはフレキシブルスプライン30の周囲を1周巻回させる貫通孔34が設けられ、本実施形態の貫通孔34は複数の円形孔態様である。本体31の直径は60mm(ミリメートル)であり、本体31は均等な厚さ0.7mm(ミリメートル)を有し、本体31の内部には30mm(ミリメートル)の深さを有し、貫通孔34の直径は10mm(ミリメートル)である。
図8Bは本実施形態と従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。L11は
図8Aの構造に8個の貫通孔34が設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は4.34(x10
4 Nm/rad)である。L12は
図8Aの構造に16個の貫通孔34が設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は3.23(x10
4 Nm/rad)である。
図8Bは8個の貫通孔34が設けられるフレキシブルスプライン30(曲線L11)のねじり剛性4.34(x104 Nm/rad)及び従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性4.27(x104 Nm/rad)が近似することを示す。
【0026】
図9A及び
図9Bに示すように、
図9Aに示す実施形態は
図4の実施形態を基礎とし、フレキシブルスプライン30Aは可撓性を有する本体31A及び底部32Aでカップ状領域が構成され、本体31Aの外囲には外歯車33Aが設置され、カップ状領域の本体31Aにはフレキシブルスプライン30Aの周囲を巻回させ、本実施形態では交錯するように設置される2周巻回させる複数の円形孔態様の貫通孔34Aが設けられる。本体31Aの直径は60mm(ミリメートル)であり、本体31は0.7mm(ミリメートル)の均等な厚さを有し、本体31Aの内部には30mm(ミリメートル)の深さを有し、貫通孔34Aの直径は6mm(ミリメートル)である。
図9Bは本実施形態と従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。L21は
図9Aの構造に16個の貫通孔34Aが設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は4.57(x10
4 Nm/rad)である。L22は
図9Aの構造に32個の貫通孔34Aが設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は4.36(x10
4 Nm/rad)である。
図9Bは16個または32個の貫通孔34Aが設けられるフレキシブルスプライン30Aのねじり剛性4.57、4.36(x10
4 Nm/rad)及び従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性4.27(x10
4 Nm/rad)が近似することを示し、特に16個の貫通孔34Aが設けられる場合の効果が高い。
【0027】
なお、
図10A及び
図10Bに示すように、
図10Aに示す実施形態は
図5の実施形態を基礎とし、フレキシブルスプライン30Bは可撓性を有する本体31B及び底部32Bでカップ状領域が構成され、本体31Bの外囲には外歯車33Bが設置され、本体31Bと底部32Bとの連接箇所には矩形の複数の貫通孔34Bが設けられると共に範囲として本体31B及び底部32Bを含む。本体31Bの直径は60mm(ミリメートル)であり、本体31Bは0.7mm(ミリメートル)の均等の厚さを有し、本体31Bの内部には30mm(ミリメートル)の深さを有し、貫通孔34Bは本体31B及び底部32Bの深さW1、W2を含み、深さW1、W2はそれぞれ5mm(ミリメートル)であり、貫通孔34Bは5mm(ミリメートル)の広さW3を有する。
図10Bは本実施形態と従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性曲線を示す比較図である。L31は
図10Aの構造に8個の貫通孔34Bが設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は4.4(x10
4 Nm/rad)である。L32は
図10Aの構造に16個の貫通孔34Bが設けられる実施形態を図示し、ねじり剛性は3.62(x10
4 Nm/rad)である。
図10Bは8個の貫通孔34Bが設けられるフレキシブルスプライン30B(曲線L31)のねじり剛性4.4( x10
4 Nm/rad )及び従来のフレキシブルスプラインのねじり剛性4.27( x10
4 Nm/rad )が近似することを示す。
【0028】
上述したように、本発明のハーモニック駆動装置は、フレキシブルスプラインのカップ状領域に複数の貫通孔が設けられると共に本体は均等の厚さを有し、これにより弾性による剛性の調整を達成させ、振動及び騒音が打ち消され、フレキシブルスプラインの応力の分布が不均一になるという問題を解決させる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10 波発生器
11 カム
12 軸受モジュール
13 軸受外輪
14 軸受内輪
15 軸受ボール
20 サーキュラ・スプライン
21 内歯車
21C 内歯車
30 フレキシブルスプライン
30A フレキシブルスプライン
30B フレキシブルスプライン
31 本体
31A 本体
31B 本体
311 第一端部
312 第二端部
32 底部
32A 底部
32B 底部
33 外歯車
33A 外歯車
33B 外歯車
33C 外歯車
34 貫通孔
34A 貫通孔
34B 貫通孔
40 第一駆動軸
50 第二駆動軸
L01 ねじり剛性曲線
L02 ねじり剛性曲線
L03 ねじり剛性曲線
L11 ねじり剛性曲線
L12 ねじり剛性曲線
L21 ねじり剛性曲線
L22 ねじり剛性曲線
L31 ねじり剛性曲線
L32 ねじり剛性曲線
T3 本体厚さ
W1 深さ
W2 深さ
W3 広さ