(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続鉢苗が載置される鉢苗載置部と、移植機本体の移動に伴い前記鉢苗載置部から引き出された1条の連続鉢苗を整列させる鉢苗案内部と、前記鉢苗案内部によって整列させた連続鉢苗を植付溝へ繰り出す鉢苗繰出部と、を備える連続鉢苗移植機であって、
前記鉢苗載置部は、育苗箱を移植機進行方向に対して横方向へ傾けた状態で支持し、
前記鉢苗載置部から引き出された連続鉢苗を起立させて前記鉢苗案内部へ案内する鉢苗起立手段を備え、
前記鉢苗起立手段は、前記鉢苗載置部から引き出された連続鉢苗を挟むように配置される一対の案内板からなり、
前記一対の案内板は、鉢苗移動経路上流側の入口から鉢苗移動経路下流側の出口に向かって間隔が狭まるように配置されることを特徴とする連続鉢苗移植機。
前記移植機本体の移動に伴い圃場に植付溝を形成する作溝部と、前記作溝部によって形成された植付溝の底部に、前記鉢苗繰出部から繰り出された連続鉢苗を受け入れる底溝を形成する溝切部と、を備えることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の連続鉢苗移植機。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1は、複数台(
図1では「6台」)の連続鉢苗移植機1の移植機本体2をトラクタ51(農業機械)に連結させた状態を示す平面図である。ここで、複数台の連続鉢苗移植機1は同一構造をなし、後述する連結機構61によって並列に連結される。説明の便宜上、
図1における右方向(右側)および左方向(左側)を、前方向(前側)および後方向(後側)と称する。また、
図1における上方向(上側)および下方向(下側)を、左方向(左側)および右方向(右側)と称する。さらに、
図2における上方向(上側)および下方向(下側)を、上方向(上側)および下方向(下側)と称する。
【0009】
図3、
図4を参照すると、連続鉢苗移植機1は、前後方向に沿って延びる枠構造の移植機本体2を有する。移植機本体2には、移植機本体2の進行方向(
図3、
図4における右方向)への移動に伴い、圃場に植付溝20(
図1参照)を形成する作溝部21が設けられる。作溝部21は、圃場に植付溝20を形成しながら、形成された植付溝20の側壁をV溝形に整形する。作溝部21は、左右対称に形成され、移植機本体2の前後方向中間位置から移植機本体2の後端2Aを超えて後方向へ延びる。作溝部21は、前後方向に延びる一対の整形壁22L,22Rと、一対の整形壁22L,22Rの前端に連続して設けられ、船首状に形成された一対の作溝壁23L,23R(
図4に右側の「作溝壁23R」のみ表示)とを有する。
【0010】
一対の整形壁22L,22Rは、移植機本体2の後部を構成する後部枠体3の左右両側に設けられる。換言すると、後部枠体3は、整形壁22L,22R間に配置される。一対の整形壁22L,22Rは、圃場に形成されるV溝形の植付溝20に対応した挟み角θ(
図1参照)を有する。作溝部21の後部には、一対の整形壁22L,22R間を前後方向へ延びる切欠部24(
図3参照)が設けられる。切欠部24は、一対の整形壁22L,22Rの下端を一定幅で切り欠くことで形成される。なお、後部枠体3を構成する枠部材(角形鋼管)の一部である枠部材3Aは、前後方向へ延び、鉢苗移動経路下流側(
図3における左側)が低くなるように傾斜されている。すなわち、枠部材3Aは、後方向へ下り勾配が付けられている。
【0011】
図2、
図4を参照すると、作溝部21には、作溝部21によって形成された植付溝20の底部の土を左右両側へ掻き分けて底溝(図示省略)を形成する溝切部25が設けられる。溝切部25は、作溝部21の後端下部に、切欠部24を囲うように設けられる。溝切部25の前端は、移植機本体2の後端2Aよりも前方に位置する。圃場には、移植機本体2の移動、すなわち、連続鉢苗移植機1の前進に伴い、作溝部21によって植付溝20が形成され、併行して、形成された植付溝20の底部に、溝切部25によって一定の幅および深さの底溝(定植溝)が形成される。なお、後部枠体3の枠部材3Aの後端は、溝切部25の底板まで延びる。
【0012】
連続鉢苗移植機1は、前述した連結機構61を備える。
図1、
図2、および
図4を参照すると、連結機構61は、複数台の移植機本体2を並列に連結させ、かつ連結された複数台の移植機本体2をトラクタ51(農業機械)に連結させる。本実施形態において、連結機構61は、複数台の移植機本体2を、トラクタ51(農業機械)に装着させたロータリ装置52のロータリアタッチ53に連結させる。連結機構61は、左右方向に延びるレール63を有する。レール63には、ブラケット62を介して移植機本体2が連結される。連結機構61は、1台の連続鉢苗移植機1に対して1個のブラケット62を有する。ブラケット62は、レール63に対する取付位置を左右方向へ調節可能である。換言すると、連結機構61は、レール63に対する複数台の移植機本体2の取付位置を左右方向へ調節可能である。なお、レール63には、角形鋼管が用いられる。また、レール63には、左右方向へ一定間隔をあけて設けられた一対のアーム64L,64R(
図6参照)の下端が固定される。
【0013】
図4を参照すると、連結機構61は、ロータリアタッチ53に左右方向へ一定間隔をあけて固定される一対のブラケット65L,65R(
図6参照)を有する。右側のアーム64Rは、右側のブラケット65Rによって軸66を中心に回動可能に支持される。ブラケット65Rには、軸67を中心に回動可能に支持されるナット(図示省略)が取り付けられる。一方、アーム64Rの上端部には、当該アーム64Rに対する前後方向への移動が阻止されたねじ軸68が取り付けられる。ねじ軸68は、前側部分がナット(図示省略)に螺合され、後端にはL形のハンドル69が取り付けられる。
【0014】
よって、ハンドル69を前方視線(
図4における右方向視線)の時計回り方向へ回転させると、アーム64Lの上端部が、ナット側(
図4における右側)へ引き寄せられる。その結果、アーム64Lは、軸66を中心に
図4における時計回り方向へ回動する。本実施形態において、左右のブラケット65L,65Rは同一構造をなす。これにより、一対のブラケット65L,65Rの各ハンドル69を操作し、一対のアーム64L,64Rを軸66を中心に回動させる、延いてはレール63を軸66を中心に回動させることにより、レール63に連結された複数台の移植機本体2の、圃場に対する傾斜角度を調整することができる。このように、連結機構61は、各ブラケット65L,65Rに構成されたナット(図示省略)、軸67、ねじ軸68、およびハンドル69を含む取付角度調整機構を備える。
【0015】
一方、連結機構61は、ロータリアタッチ53に対する複数台の移植機本体2の取付高さを個別に調整するための取付高さ調整機構を備える。取付高さ調整機構は、ブラケット62に一列で設けられる複数個のボルト挿通孔57と、移植機本体2に一列で設けられる複数個のボルト挿通孔58とを有する。本実施形態において、ブラケット62側の複数個のボルト挿通孔57は、3個であり、上下方向に一定間隔(ピッチ)をあけて配置される。他方、移植機本体2側の複数個のボルト挿通孔58は、6個であり、上下方向にブラケット62側のボルト挿通孔57と同一間隔(ピッチ)をあけて配置される。
【0016】
そして、移植機本体2を対応するブラケット62に対して上下方向へ移動させ、ブラケット62側の各ボルト挿通孔57を、移植機本体2側の選択された3個のボルト挿通孔58に一致させる。この状態で、一致させた各ボルト挿通孔57,58にボルト(図示省略)を挿通させ、各ボルトに螺合させたナットを締め付けて移植機本体2とブラケット62とを固定させる。当該作業を各移植機本体2について行うことにより、各移植機本体2の、ロータリアタッチ53に対する取付高さ、延いては圃場に対する取付高さを個別に調整することができる。
【0017】
なお、本実施形態において、トラクタ51(農業機械)に装着させたロータリ装置52のロータリアタッチ53には、左右方向に一対で予備苗台54L,54R(
図1参照)が取り付けられる。また、レール63は、左端側を延長させることで延長部63Aが形成され、当該延長部63Aには、トラクタ51の走行ラインを決める拠り所となるマーカー55(
図1、
図2、
図6参照)が取り付けられる。
【0018】
図3、
図4を参照すると、各連続鉢苗移植機1の移植機本体2上には、前から順に、鉢苗載置部31、鉢苗案内部5、および鉢苗繰出部6が設けられる。鉢苗案内部5は、移植機本体2の移動(前進)に伴い鉢苗載置部31上の集合鉢体から引き出された1条の連続鉢苗7(
図6参照)を整列させる機能を有する。鉢苗案内部5は、移植機本体2の後部枠体3(
図4参照)に固定され、上面が連続鉢苗7の滑動面となる底板9を有する。底板9の上面には、前後方向へ延びる左右一対の案内板10L,10Rが設けられる。案内板10L,10Rの前端部、換言すると、鉢苗案内部5の入口には、案内板10L,10R間を移動する連続鉢苗7を起立させる姿勢矯正部11L,11Rが形成される。
【0019】
姿勢矯正部11L,11Rは、鉢苗載置部31から鉢苗案内部5を経由して鉢苗繰出部6まで直線状に延びる鉢苗移動経路(
図3におけるC)を対称軸に左右対称に形成される。姿勢矯正部11L,11Rは、各々が平面視(
図3参照)で円弧形に形成され、相互間の間隔が鉢苗移動経路下流側(
図3における右側)端から上流側(
図3における左側)端に向かって広がるように、換言すると、入口から出口に向かって狭まるように設けられる。姿勢矯正部11L,11Rは、上端側が外側に倒れるように傾斜される。これにより、姿勢矯正部11L,11R間を移動する連続鉢苗7の姿勢を漸次矯正する(起こす)ことができる。
【0020】
案内板10L,10Rには、姿勢矯正部11L,11Rの後端から鉢苗案内部5の出口まで直線状に延びる案内部12L,12Rが形成される。案内部12L,12Rは、姿勢矯正部11L,11Rと同じように、上端側が外側に倒れるように傾斜される。案内部12L,12Rは、姿勢矯正部11L,11Rによって姿勢を矯正された連続鉢苗7を鉢苗移動経路(
図3におけるC)に沿って整列させる。鉢苗案内部5によって整列させた連続鉢苗7は、鉢苗繰出部6から圃場の植付溝20へ繰り出される。鉢苗繰出部6は、鉢苗移動経路を対称軸に左右対称に形成される一対の誘導板13L,13Rを備える。誘導板13L,13Rの前端部には、鉢苗案内部5を通過した連続鉢苗7を受け入れ可能な傾斜面を有する傾斜片14L,14Rが形成される。誘導板13L,13Rには、傾斜片14L,14Rの後端に連続して後方向へ延びる垂直片15L,15Rが形成される。
【0021】
次に、本実施形態に係る鉢苗載置部31を説明する。
図2、
図6を参照すると、鉢苗載置部31は、載置面32が、移植機進行方向(前後方向)に対して横方向(本実施形態では「右下がり」)へ傾けられる。なお、載置面32には、連続鉢苗7を収容した育苗箱8が載置されるが、育苗箱8から取り出された連続鉢苗7を、載置面32に敷いたシート(図示省略)上に載置させてもよい。鉢苗載置部31は、載置面32が形成される矩形の底板33を有する。底板33の下面34(載置面32の反対側の面、
図5参照)には、鉢苗載置部31を移植機本体2の前部枠体4に固定するための左右一対の取付片35L,35Rが設けられる。
【0022】
取付片35L,35Rは、前後方向へ延びる板部材からなり、相互に平行に、かつ水平面に対して垂直に設けられる。すなわち、載置面32が水平面に対して
図2における時計回り方向(移植機進行方向に対して横方向)へ傾斜角度A°で傾けられているとき、取付片35L,35Rは、載置面32(底板33)に対して(90−A)°をなす。
図5を参照すると、左側の取付片35Lには、長手方向(
図5における左右方向)に間隔をあけて配置される取付孔36L,37Lが形成される。右側の取付片35Rには、長手方向(
図5における左右方向)に間隔をあけて配置される取付孔36R,37Rが形成される。
【0023】
他方、移植機本体2の前部枠体4には、枠部材4Aを左右方向へ貫通する取付孔38,39(
図4参照)が形成される。鉢苗載置部31を前部枠体4に取り付けるには、鉢苗載置部31の取付片35L,35R間に前部枠体4の枠部材4Aを挿入させ、取付片35Lの取付孔36L、取付片35Rの取付孔36R、および枠部材4Aの取付孔38を同軸上に位置合わせしてボルト(図示省略)を挿通させるとともに、取付片35Lの取付孔37L、取付片35Rの取付孔37R、および枠部材4Aの取付孔39を同軸上に位置合わせしてボルト(図示省略)を挿通させる。そして、各ボルトに螺合させたナット(図示省略)を締め付けることにより、鉢苗載置部31が前部枠体4に固定される。
【0024】
このようにして、鉢苗載置部31は、移植機進行方向に対して横方向へ傾斜した状態で移植機本体2に取り付けられる。鉢苗載置部31を傾斜させずに水平に取り付けた場合、並列に連結された複数台の移植機本体2間の取付間隔(
図2におけるP)、延いては植付溝20の溝間隔を、鉢苗載置部31の横幅以下に設定することができなかったが、本実施形態によれば、鉢苗載置部31を移植機進行方向に対して横方向へ傾斜させたことにより、移植機本体2の取付間隔、延いては植付溝20の溝間隔を、鉢苗載置部31(育苗箱8)の横幅以下に設定することが可能である。
【0025】
なお、鉢苗載置部31は、鉢苗移動経路下流側(
図4における左側)が低くなるように傾斜されている。すなわち、鉢苗載置部31は、後方向へ下り勾配が付けられている。そして、鉢苗載置部31(載置面)の水平面に対する傾斜角度は、鉢苗案内部5の底板9の水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定される。また、鉢苗載置部31の底板33には、軽量化等を目的とする複数個(本実施形態では「6個」)の開口部40(
図3参照)が形成される。
【0026】
図5を参照すると、鉢苗載置部31は、端板41、延長板42、および側板43を有する。端板41は、底板33の後端に立設される。延長板42は、端板41の上端から鉢苗案内部5側(
図5における左方向)へ延びる。すなわち、底板33は、延長板42によって後方向(移植機進行方向下流側)へ延長される。端板41は、底板33および延長板42に対して垂直をなす。すなわち、底板33と延長板42とは平行をなす。側板43は、鉢苗載置部31の右側端に設けられ、底板33の前端から延長板42の後端まで、換言すると、鉢苗載置部31の全長にわたって延びる。なお、底板33、端板41、延長板42、および側板43は、一平面上に展開することができる。
【0027】
図3を参照すると、連続鉢苗7の滑動面となる延長板42の上面には、鉢苗載置部31の底板33上の集合鉢体から引き出された1条の連続鉢苗7を起立させて鉢苗案内部5へ案内する左右一対の案内板71L,71R(鉢苗起立手段)を備える。すなわち、一対の案内板71L,71Rは、鉢苗載置部31の、鉢苗案内部5側の端部に設けられる。一方の案内板71Lは、鉢苗移動経路(
図3におけるC)の左側に配置され、内側(鉢苗移動経路側)に凸となる湾曲された案内面72Lを有する。案内面72Lは、延長板42に対して垂直ではなく、延長板42に垂直に交わる直線(以下「延長板42の垂線」と称する)に対して外側へ傾斜される。案内面72Lは、延長板42の垂線に対する傾斜角度(傾斜の度合)が、一対の案内板71L,71Rの出口74から入口73に向かって大きくなるように形成される。
【0028】
他方の案内板71Rは、鉢苗移動経路(
図3におけるC)の右側に配置され、内側(鉢苗移動経路側)に凸となる湾曲された案内面72Rを有する。案内面72Rは、延長板42に対して垂直ではなく、延長板42の垂線に対して外側へ傾斜される。案内面72Rは、延長板42の垂線に対する傾斜角度(傾斜の度合)が、一対の案内板71L,71Rの入口73から出口74に向かって大きくなるように形成される。なお、案内板71Rの前端は、右方向へ延長されて側板43の内側に接合される。
【0029】
図3を参照すると、一対の案内板71L,71Rは、鉢苗移動経路上流側の入口73から鉢苗移動経路下流側の出口74に向かって間隔(左右方向距離)が狭まるように設けられる。一対の案内板71L,71Rの出口74は、鉢苗移動経路(
図3におけるC)上に位置される。換言すると、一対の案内板71L,71Rの出口74、鉢苗案内部5上の鉢苗移動経路、および鉢苗繰出部6上の鉢苗移動経路は、同一直線上に位置される。
【0030】
(作用)
次に、本実施形態に係る連続鉢苗移植機1の作用を説明する。
ここでは、連結機構61によって、並列に連結された複数台(本実施形態では「6台」)の移植機本体2がトラクタ51(農業機械)に装着させたロータリ装置52の後部に設けられたロータリアタッチ53に連結される態様を例示する。なお、移植対象は、各個別鉢体に埋め込まれたラッキョウの球根である。予め、各連続鉢苗移植機1の鉢苗載置部31に、連続鉢苗7を収容した育苗箱8をセットしておく。なお、育苗箱8と集合鉢体(連続鉢苗7)との間には、育苗箱8の底部と鉢苗案内部5の底板9との段差を解消するためのスロープ(図示省略)が差し込まれる。また、連続鉢苗7は、接着に使用された水溶性の糊が溶ける程度に湿らされている。
【0031】
まず、トラクタ51に装着させたロータリ装置52のロータリアタッチ53を下降させた後、トラクタ51を一定距離だけ前進させる。これにより、ロータリ装置52(耕耘装置)によって圃場が耕され、圃場の耕された部分に、各連続鉢苗移植機1の作溝部21によって植付溝20が形成され、形成された植付溝20の底部に、溝切部25によって底溝(定植溝)が形成される。次に、各連続鉢苗移植機1の鉢苗載置部31上の集合鉢体から1条の連続鉢苗7を引き出し、引き出された各連続鉢苗7を、鉢苗載置部31の案内板71L,71R、鉢苗案内部5の案内板10L,10R間、および鉢苗繰出部6の誘導板13L,13R間を通過させ、その先端を圃場に形成された対応する各植付溝20の底溝に定植する。
【0032】
次に、ロータリ装置52を作動させながらトラクタ51を前進させると、トラクタ51の前進に伴い、引き続き、各連続鉢苗移植機1の作溝部21によって圃場に6条の植付溝20が形成され、同時に、各連続鉢苗移植機1の溝切部25によって各植付溝20の底部に底溝(定植溝)が形成される。一方、各連続鉢苗移植機1の移植機本体2上では、集合鉢体から引き出された連続鉢苗7が、鉢苗載置部31の延長板42上の案内板71L,71Rによって起立され、さらに鉢苗案内部5の案内板10L,10Rによって整列された後、鉢苗繰出部6、換言すると、移植機本体2の切欠部24から繰り出され、圃場に形成された対応する各植付溝20の底溝に順次定植される。
【0033】
ここで、鉢苗載置部31を移植機進行方向に対して横方向へ傾斜させた場合、集合鉢体の解離部から鉢苗案内部5へ移動する連続鉢苗7が傾倒する、すなわち、連続鉢苗7が頭を下に向けて側面を鉢苗載置部31の載置面32に沿わせた状態(以下「傾倒姿勢」と称する)になることがある。この場合、直立姿勢の連続鉢苗7の鉛直線に対する傾倒角度を0°とすると、一対の案内板71L,71Rを持たない連続鉢苗移植機(以下「従来の連続鉢苗移植機」と称する)では、傾倒角度が100°を超えて傾倒した連続鉢苗7を、鉢苗案内部5と鉢苗繰出部6とによって直立姿勢(傾倒角度0°)まで起こす必要があるが、鉢苗案内部5および鉢苗繰出部6のみでは、対応が不十分である。
【0034】
また、従来の連続鉢苗移植機では、集合鉢体の解離部から鉢苗案内部5へ移動する連続鉢苗7に撓みが生じた場合、当該連続鉢苗7の移植機進行方向に対する横方向への振れ幅が大きくなり、連続鉢苗7の姿勢が不安定になることがある。さらに、株間距離が通常よりも長く設定されたロングピッチの連続鉢苗7の場合、個別鉢体間を連結させる連結片にねじれが生じやすい。また、ロングピッチの連続鉢苗7では、通常の株間距離の連続鉢苗7と比較して前後の個別鉢体の姿勢の影響を受け難いため、鉢苗案内部5にて個々の個別鉢体の姿勢を傾倒姿勢から直立姿勢へ順次矯正する必要がある。
【0035】
そこで、本実施形態に係る連続鉢苗移植機1では、鉢苗載置部31の底板33の鉢苗移動経路下流端に、鉢苗案内部5側へ向かって延びる延長部42を形成し、該延長部42に、底板33上の集合鉢体から引き出された連続鉢苗7を起立させて鉢苗案内部5へ案内する一対の案内板71L,71R(鉢苗起立手段)を設けた。これにより、一対の案内板71L,71Rによって、鉢苗載置部31上の集合鉢体から解離して鉢苗案内部5へ移動する連続鉢苗7を、傾倒姿勢から順次起立させることが可能であり、傾倒姿勢、あるいは連結片がねじれて逆さまになった連続鉢苗7が鉢苗案内部5へ進入する事態を未然に防ぐことができる。
【0036】
一方、連続鉢苗移植機を用いて圃場に連続鉢苗を移植する場合、土壌の砕土・整地、植付溝(深溝)の形成、および底溝(定植溝)の形成、の各プロセスを経る必要がある。そして、従来、土壌の砕土・整地は耕耘機によって行われ、植付溝(深溝)の形成は管理機によって行われ、さらに底溝(定植溝)の形成は連続鉢苗移植機の溝切部によって行われていた。このように、土壌の砕土・整地および植付溝(深溝)の形成の各プロセスを、連続鉢苗移植機による定植作業とは別に行っていたので、作業の能率が悪かった。
【0037】
そこで、本実施形態に係る連続鉢苗移植機1では、植付溝20を形成する作溝部21と底溝を形成する溝切部25とを移植機本体2に設け、該移植機本体2を、トラクタ51(農業機械)に装着させたロータリ装置52(耕耘装置)のロータリアタッチ53に連結機構61によって連結させた。これにより、トラクタ51を前進させることで、ロータリ装置52による土壌の砕土・整地、作溝部21による植付溝の形成、および溝切部25による底溝の形成を同時進行させる(併行させる)ことが可能であり、土壌の砕土・整地および植付溝(深溝)の形成を含む一連の移植作業を大幅に能率化させることができる。
【0038】
以下に、本実施形態の作用効果を示す。
本実施形態の連続鉢苗移植機(1)は、連続鉢苗(7)が載置される鉢苗載置部(31)と、移植機本体(2)の移動に伴い鉢苗載置部(31)から引き出された1条の連続鉢苗(7)を整列させる鉢苗案内部(5)と、鉢苗案内部(5)によって整列させた連続鉢苗(7)を植付溝(20)へ繰り出す鉢苗繰出部(6)と、を備える連続鉢苗移植機(1)であって、鉢苗載置部(31)は、育苗箱(8)を移植機進行方向に対して横方向へ傾けた状態で支持し、鉢苗載置部(31)から引き出された連続鉢苗(7)を起立させて鉢苗案内部(5)へ案内する鉢苗起立手段を備えるので、鉢苗載置部(31)上の集合鉢体から解離して鉢苗案内部(5)へ移動する連続鉢苗(7)の姿勢を、安定させることができる。これにより、傾倒姿勢、あるいは連結片がねじれて逆さまの状態の連続鉢苗(7)が、鉢苗案内部(5)へ進入する事態を未然に防ぐことができる。よって、傾倒姿勢になりやすいラッキョウの球根が埋め込まれた連続鉢苗(7)、あるいは連結片にねじれが生じやすいロングピッチの連続鉢苗(7)に対応させることができる。
【0039】
鉢苗起立手段は、鉢苗載置部(31)から引き出された連続鉢苗(7)を挟むように配置される一対の案内板(71L,71R)からなり、一対の案内板(71L,71R)は、鉢苗移動経路上流側の入口(73)から鉢苗移動経路下流側の出口(74)に向かって間隔が狭まるように配置されるので、一対の案内板(71L,71R)の入口(73)で受け入れた傾倒姿勢の連続鉢苗(7)を、出口(74)に至る過程で漸次起立させることができる。
【0040】
一対の案内板(71L,71R)は、内側に凸となる湾曲された案内面(72L,72R)を有するので、傾倒姿勢の連続鉢苗(7)を比較的短い移動距離で起立させることが可能であり、一対の案内板(71L,71R)の前後方向長さ、延いては移植機本体2の全長が、延長されるのを防ぐことができる。
【0041】
鉢苗起立手段は、鉢苗載置部(31)における鉢苗案内部(5)側の端部に設けられるので、鉢苗起立手段によって起立させた連続鉢苗(7)を、再び傾倒されることなく、鉢苗案内部(5)へ受け渡すことができる。
【0042】
一対の案内板(71L,71R)の出口(74)、鉢苗案内部(5)、および鉢苗繰出部(6)は、直線に沿って延びる鉢苗移動経路上に位置するので、一対の案内板(71L,71R)によって起立させた直立姿勢の連続鉢苗(7)を、鉢苗案内部(5)、および鉢苗繰出部(6)へ円滑に移動させることができる。
【0043】
鉢苗載置部(31)と鉢苗案内部(5)とは、鉢苗移動経路下流側が低くなるように傾けられており、鉢苗載置部(31)の水平面に対する傾斜角度は、鉢苗案内部(5)の水平面に対する傾斜角度より小さいので、鉢苗載置部(31)と鉢苗案内部(5)との勾配差によって、鉢苗載置部(31)と鉢苗案内部(5)との間に、連続鉢苗(7)が通過する凸状の乗継部が形成される。これにより、当該乗継部を通過する連続鉢苗(7)に引き出し抵抗を付与することが可能であり、株間距離が通常よりも長いロングピッチの連続鉢苗(7)であっても、鉢苗載置部(31)上の集合鉢体から1条の連続鉢苗(7)を円滑に引き出すことができる。
【0044】
移植機本体(2)の移動に伴い圃場に植付溝(20)を形成する作溝部(21)と、作溝部(21)によって形成された植付溝(20)の底部に、鉢苗繰出部(6)から繰り出された連続鉢苗(7)を受け入れる底溝を形成する溝切部(25)と、を備えるので、作溝と定植とを同時に行うことができる。これにより、管理機等による作溝作業を省くことが可能であり、連続鉢苗(7)の移植に係る一連の作業を能率化することができる。
【0045】
移植機本体(2)を農業機械に連結させる連結機構(61)を備えるので、例えば、移植機本体(2)を、トラクタ(農業機械)に装着させたロータリ装置(耕耘装置)のロータリアタッチに連結機構(61)によって連結させることにより、ロータリ装置による砕土・整地を含む一連の移植作業を同時進行させる(併行する)ことが可能である。これにより、移植を開始する前に、耕耘機等を使用して圃場を砕土・整地する場合と比較して、連続鉢苗(7)の移植に係る一連の作業を大幅に能率化することが可能であり、作業者の負担を軽減することができる。
【0046】
連結機構(61)は、複数台の移植機本体(2)を並列に連結可能であるので、多条同時移植に対応でき、移植作業を大幅に能率化することができる。
【0047】
請求項1−9に記載の連続鉢苗移植機(1)を用いて圃場に連続鉢苗(7)を移植することで、作物の生産を能率化することができる。
【0048】
なお、本願発明に係る連続鉢苗移植機は、以下のように構成することができる。
前述した実施形態では、移植機本体2を、トラクタ51(農業機械)に装着させたロータリ装置52(耕耘装置)のロータリアタッチ53に連結機構61によって連結させたが、トラクタ51にロータリ装置52を装着させない場合、すなわち、砕土・整地を連続鉢苗移植機1による定植作業と同時に行わない場合、移植機本体2を、トラクタ51(農業機械)に連結機構61によって直接連結させるように構成することができる。
この場合、ロータリアタッチ53に取り付けられていた一対の予備苗台54L,54Rをトラクタ51の後部に取り付けることにより、前述した実施形態同様に、移植作業を能率化することができる。