特許第6550115号(P6550115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550115
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20190711BHJP
   H01F 38/30 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   G01R15/18 B
   H01F38/30
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-224345(P2017-224345)
(22)【出願日】2017年11月22日
(65)【公開番号】特開2019-95275(P2019-95275A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138428
【氏名又は名称】株式会社ユー・アール・ディー
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】尾和瀬 究多
(72)【発明者】
【氏名】金子 覚
(72)【発明者】
【氏名】畠山 自
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−539538(JP,A)
【文献】 特開2016−201512(JP,A)
【文献】 特開2016−125839(JP,A)
【文献】 特開2016−103643(JP,A)
【文献】 特開平07−335100(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0187387(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0314083(US,A1)
【文献】 特開2018−163052(JP,A)
【文献】 特開2005−108976(JP,A)
【文献】 特開2013−140140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
H01F 38/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のトロイダルコイルがアウタケース内に固定される電流センサであって、
環状のトロイダルコアを収容する環状かつ絶縁性のインナケースと、前記インナケースに巻回され、前記トロイダルコイルを形成する導電性の巻線と、前記インナケースにおいて前記巻線の巻き始めと巻き終わりとの間のスペースに形成された嵌合部と、前記トロイダルコイルを収容する前記アウタケースとを備え、
前記トロイダルコイルの軸方向に直交する前記アウタケースの前後壁には、それぞれ第一及び第二の係合部が形成され、前記アウタケースにおいて前記トロイダルコイルの円孔部に挿入可能に形成された円筒部には第三の係合部が形成され、前記アウタケース内において該アウタケースに収容される前記トロイダルコイルの外周接線に沿って設けられた板部材には第四の係合部が形成され、
前記嵌合部は、前記第一及び第二の係合部にそれぞれ嵌合する前面部及び後面部と、前記第三及び第四の係合部にそれぞれ嵌合する内周面部及び外周面部とを有することを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記アウタケースは、前記トロイダルコイルの軸方向に分割可能に形成され、前記第一及び第二の係合部とそれらに嵌合する前記嵌合部の内周面部及び外周面部とは、軸方向に延びる溝部とそれに嵌合するリブのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載された電流センサ。
【請求項3】
前記アウタケース内において、前記板部材と該アウタケース内壁との間に間隙が設けられ、
前記間隙に、前記トロイダルコイルから引き出された巻線と電気的に接続され、外部端子を搭載した回路基板が嵌合していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された電流センサ。
【請求項4】
前記回路基板には、くびれ部が設けられ、前記トロイダルコイルから引き出された巻線は、前記くびれ部に巻回されて前記回路基板に接合されていることを特徴とする請求項3に記載された電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関し、特に、巻線をした環状の磁性体コア(トロイダルコイル)を収容し、従来よりも製造が容易で、コストを低減することのできる電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電流に流れる電流量を測定する手段として、貫通型の電流センサが知られている。これは、被測定電線を磁性体コアで囲み、この磁性体コアに巻回された二次巻線(コイル)に生成される出力電流を負荷抵抗に流し、これにより得られる電圧値に基づいて、前記電線に流れる電流量を測定するものである。
【0003】
ところで、環状の磁性体コア(トロイダルコアと呼ぶ)とそれに巻き付ける巻線とを電気的に絶縁するために、従来から例えばトロイダルコアに絶縁テープを巻き付ける方法、或いは、特許文献1に開示されるようにトロイダルコアをプラスチック樹脂からなるインナケースに収容し密閉するなどの方法がとられている。
また、このように表面が絶縁され巻線が巻かれたトロイダルコア(トロイダルコイルと呼ぶ)は、さらにアウタケースに収容され、アウタケース内の空いたスペースに樹脂材がモールドされることにより封止され、アウタケース内に固定される。
【0004】
しかしながら、従来のようにアウタケース内にトロイダルコイルを固定するためにモールド樹脂を用いると、磁性体コアが積層した金属磁性薄板コアの場合には、樹脂の収縮による機械的歪みを受け、磁気特性が劣化し、感度が劣化するという課題があった。
また、樹脂を注入し固化させる作業に時間をかかる上、モールド樹脂の材料にかかるコストが嵩張るという課題があった。
【0005】
このような課題を解決するものとして、特許文献2には、トロイダルコアの外周部に予め嵌合用の窪みを設け、トロイダルコアを収容する樹脂製ケースの内壁には前記窪みに嵌合する突起を設けた構成が開示されている。
このような構成によれば、前記ケースに前記トロイダルコアを収容した際に前記くぼみと前記突起とを嵌合させることで、前記ケース内に前記トロイダルコアを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−41122号公報
【特許文献2】実開平2−150573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示される構造にあっては、トロイダルコアに対し周方向に沿って複数の窪みを加工形成する必要があり、作業に手間と時間を要する上、トロイダルコアの特性に影響を及ぼす虞があった。
また、特許文献2に記載の発明にあっては、本発明のように、トロイダルコアに多数回の巻線をしたトロイダルコイルをケース内に固定することを目的としていない。即ち、トロイダルコイルをケース内に固定する手段は開示されていない。
【0008】
また、棒状のコアにボビン巻により巻線されたコイルをアウタケースに固定するのは、巻線のない前後端部を利用して固定すればよいため、容易である。
しかしながら、環状コアの略全周にわたって線材が巻回されたトロイダルコイルを固定する場合には、巻線の巻き始めと巻き終わりの間の僅かなスペースしか固定に利用できないため、容易ではないという課題があった。
例えば、コイルをケースに固定する方法として、モールド樹脂以外に接着剤により固定する方法も考えられるが、トロイダルコイルでは、前記のように巻線のないスペースが僅かであるため、接着剤による固定では接着強度が不十分であった。
【0009】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、環状のトロイダルコアの表面を絶縁して多数の巻線がされたトロイダルコイルを、モールド樹脂を用いることなくハウジング内に容易に固定し、コストを低減することのできる電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係る電流センサは、環状のトロイダルコイルがアウタケース内に固定される電流センサであって、環状のトロイダルコアを収容する環状かつ絶縁性のインナケースと、前記インナケースに巻回され、前記トロイダルコイルを形成する導電性の巻線と、前記インナケースにおいて前記巻線の巻き始めと巻き終わりとの間のスペースに形成された嵌合部と、前記トロイダルコイルを収容する前記アウタケースとを備え、前記トロイダルコイルの軸方向に直交する前記アウタケースの前後壁には、それぞれ第一及び第二の係合部が形成され、前記アウタケースにおいて前記トロイダルコイルの円孔部に挿入可能に形成された円筒部には第三の係合部が形成され、前記アウタケース内において該アウタケースに収容される前記トロイダルコイルの外周接線に沿って設けられた板部材には第四の係合部が形成され、前記嵌合部は、前記第一及び第二の係合部にそれぞれ嵌合する前面部及び後面部と、前記第三及び第四の係合部にそれぞれ嵌合する内周面部及び外周面部とを有することに特徴を有する。
尚、前記アウタケースは、前記トロイダルコイルの軸方向に分割可能に形成され、前記第一及び第二の係合部とそれらに嵌合する前記嵌合部の内周面部及び外周面部とは、軸方向に延びる溝部とそれに嵌合するリブのいずれかであることが望ましい。
また、前記アウタケース内において、前記板部材と該アウタケース内壁との間に間隙が設けられ、前記間隙に、前記トロイダルコイルから引き出された巻線と電気的に接続され、外部端子を搭載した回路基板が嵌合していることが望ましい。
また、前記回路基板には、くびれ部が設けられ、前記トロイダルコイルから引き出された巻線は、前記くびれ部に巻回されて前記回路基板に接合されていることが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、多数巻線がされたトロイダルコイルであっても、巻線の巻始めと巻き終わりとの間の僅かなスペースに嵌合部を設け、この嵌合部によりトロイダルコイルの径方向と軸方向(厚さ方向)とがアウタケースに対し確実に固定される。
これにより従来のようなモールド樹脂によるトロイダルコイルの固定が不要となり、コストだけでなく生産性を向上し、また、軽量化することができる。
また、固定のためにコア自体を加工する必要がないため、手間を要することがなく、またコアの変形による性能低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
環状のトロイダルコアの表面を絶縁して多数の巻線がされたトロイダルコイルを、モールド樹脂を用いることなくハウジング内に容易に固定し、コストを低減することのできる電流センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る電流センサの斜視図である。
図2図2は、図1の電流センサの平面図(上面図)である。
図3図3は、図1の電流センサの背面図である。
図4図4は、図1の電流センサを分解した各パーツを示す斜視図である。
図5図5は、図1の電流センサが有する蓋部の裏面側を示す斜視図である。
図6図6は、図1の電流センサの蓋部を外した状態の正面図である。
図7図7(a)は、トロイダルコイルのうち、巻線がされていない状態のインナケースの斜視図であり、図7(b)は異なる方向から見たインナケースの斜視図であり、図7(c)は、インナケースの裏面側を示す平面図である。
図8図8(a)は、アウタケース本体の斜視図であり、図8(b)は正面図であり、図8(c)は、図8(b)のA−A矢視断面図、図8(d)は、図8(b)のB−B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電流センサの実施の形態を図面に基づき説明する。
尚、本発明にあっては、環状の磁性体コア(トロイダルコア)に対し絶縁体(樹脂製のインナケース)を介して導電線材を巻線したものをトロイダルコイルと呼ぶ。
また、本発明に係る電流センサは、前記トロイダルコイルをアウタケース内に固定する構成に適用される。
【0015】
図1は、本発明に係る電流センサの斜視図、図2は平面図(上面図)、図3は背面図である。また、図4は、図1の電流センサを分解した各パーツを示す斜視図であり、図5は、図1の電流センサが有する上蓋の裏面側を示す斜視図、図6は、図1の電流センサの上蓋を外した状態の正面図である。
【0016】
図1乃至図3に示す電流センサ1は、アウタケース20を備え、アウタケース20は、アウタケース本体2とその前面側に装着された蓋部3(前壁)とを有する。また、図1においてアウタケース20の上部には端子部4が装着されている。また、図1においてアウタケース本体2の下側左右両端には、フランジに取り付け孔が形成された取り付け部2aが設けられている。
【0017】
前記蓋部3は、図5に示すように四隅に4本の係合脚部3aを有する。アウタケース本体2に蓋部3が閉じられると、4本の係合脚部3aはアウタケース本体2の内側面に形成された4つの係止孔(図示せず)にそれぞれ係合するようになっている。
前記蓋部3を取り外すと、図5に示すようにアウタケース本体2には、前記端子部4と、端子部4が搭載された回路基板5と、回路基板5に接続されたリング状のトロイダルコイル10とが装着された状態となる。
【0018】
図7(a)は、トロイダルコイル10のうち、巻線がされていない状態のインナケース11の斜視図であり、図7(b)は図7(a)とは異なる方向から見たインナケース11の斜視図であり、図7(c)は、インナケース11の裏面側を示す平面図である。
【0019】
インナケース11は、図4に示すようにリング状のトロイダルコア(磁性体コア)9を収容する樹脂製(絶縁性)のケースである。インナケース11は上下(上ケース11a、下ケース11b)に分割可能とされ、分割した状態で前記トロイダルコア9を収容し、図7に示すように上下を合体させた状態で使用される。前記トロイダルコア9とインナケース11との間の隙間は略無く、トロイダルコア9の収容時には、トロイダルコア9がインナケース11内に嵌入され固定された状態で収容される。
【0020】
また、図7に示すようにインナケース11には、厚さ方向及び径方向に一部隆起した嵌合部12が形成されている。この嵌合部12は小さな円弧状に形成され、前面部12aと後面部12b、そしてリング内周側の内周面部12cとリング外周側の外周面部12dとを有する。尚、この嵌合部12の左右いずれか一方から巻線が巻き始められ、他方が巻き終わりとなる。
【0021】
図7(a)に示すように嵌合部12の前面部12aには、円形の窪み12a1が形成され、外周面部12dには、厚さ方向(軸方向)に沿って直線状の溝部12d1が形成されている。
また、図7(b)に示すように嵌合部12の内周面部12cには、厚さ方向(軸方向)に沿って直線状の溝部12c1が形成されている。
更に図7(c)に示すように、嵌合部12の後面部12bには、2つの円形の窪み12b1が形成されている。
前記溝部12c1、12d1、窪み12a1、12b1は、後述するアウタケース本体2及び蓋部3に対しインナケース11を嵌合させるために設けられている。
【0022】
図8(a)は、前記アウタケース本体2の斜視図、図8(b)は正面図であり、図8(c)は、図8(b)のA−A矢視断面図、図8(d)は、図8(b)のB−B矢視断面図である。
図8に示すように、アウタケース本体2には、トロイダルコイル10の収容空間において、トロイダルコイル10(インナケース11)の中央の円孔部13に挿入可能な円筒部2bが立設され、この円筒部2bの外周面には、軸方向に沿って直線状の嵌合リブ2b1(第三の係合部)が形成されている。この嵌合リブ2b1は、嵌合部12の内周面部12cに形成された溝部12c1に嵌合可能となされている。
【0023】
また、図6図8(a),図8(b)に示すように、アウタケース本体2内の上部においてトロイダルコイル10の外周接線に沿った所定位置に、ケース幅方向に長く延びる嵌合板部材2cが、ケース厚さ方向に立設されている。また、アウタケース本体2の上部には、端子部4の側方を保護するための3面側壁部2dが高さ方向に立設されている。
前記3面側壁部2dは、端子部4の左右側面及び背面を保護するものであり、前面側、及び上方側、下方側は開口した状態である。また、図8(b)に示すように、前記3面壁側部2dは、アウタケース本体2の天壁2eの中央に設けられる。前記天壁2eと前記嵌合板部材2cとの間には空隙2gが形成されている。
【0024】
また、前記天壁2eには下方(空隙2g側)に突起する2つの突起部2e1が形成され、前記嵌合板部材2cには上方(空隙2g側)に突起し、前記2つの突起部2e1に対応する2つの突起部2c1が形成されている。前記空隙2gには、回路基板5が挿入されることにより収容可能とされ、上下面が前記突起部2e1、2c1によって押さえ付けられた状態で固定される。前記回路基板5は、端子部4が搭載された状態で挿入され、図6に示すように端子部4は3面壁側部2dに側方3面を囲われた状態となる。
尚、回路基板5は、矩形状に形成され、左右の角部にくびれ部5aが形成されている。これは、図6のようにコイル巻線を回路基板5に接続する際に、前記くびれ部5aにコイル巻線端部を一旦巻き付けることで、断線の発生を抑えるために設けられている。
【0025】
また、前記嵌合板部材2cの中央下面には、ケース厚さ方向に延びる3つの直線状のリブが形成されている。具体的には、中央の嵌合リブ2c2(第四の係合部)と、その左右2つの支持リブ2c3である。中央の嵌合リブ2c2は、前記したトロイダルコイル10のインナケース11における嵌合部12の溝部12d1に嵌合可能に形成されている。また、その左右の支持リブ2c3は、前記嵌合部12の溝部12d1の左右にそれぞれ当接可能とされ、インナケース11を支持するために設けられている。
【0026】
また、アウタケース本体2の後壁2fには、前記嵌合リブ2c2とそれに対向する2b1との間を繋ぐように幅広の隆起部2f1が設けられ、この隆起部2f1上に2つの突起部2f2(第二の係合部)が設けられている。これら2つの突起部2f2は、インナケース11の嵌合部12の後面部12bに形成された2つの円形の窪み12b1に嵌合可能となされている。
【0027】
また、図5に示すように前壁を形成する蓋部3の裏側は、インナケース11における嵌合部12の前面部12aに形成された窪み12a1に嵌合可能な突起部3b(第一の係合部)が形成されている。
即ち、蓋部3を閉めることにより、トロイダルコイル10は、軸方向(厚さ方向)がケースに対し固定されるようになっている。
【0028】
また、蓋中央には、アウタケース本体2の円筒部2bに挿嵌可能な軸筒部3cが形成されている。また、蓋部3を閉めた際に回路基板5を押さえ付ける突起部3dが形成されている。さらに、端子部4の側面を完全に囲うための前面壁部3eが形成されている。
【0029】
このように構成された電流センサ1を組み立てる場合、先ず環状のトロイダルコア9をインナケース11に収容し、これに一般的なトロイダル巻線機(図示せず)を用いて導電線材を周方向に多数巻回する。この際、前記嵌合部12のみが露出するように巻線を設ける。これによりトロイダルコイル10が形成される。尚、インナケース11の外周部は突起のない円形状であるため、一般的なトロイダル巻線機での線材の巻回が可能である。
【0030】
次いで、このトロイダルコイル10を、図6に示すようにアウタケース本体2に収容する。具体的には、嵌合部12の溝部12d1を嵌合板部材2cの嵌合リブ2c2に嵌合させ、嵌合部12の溝部12c1を円筒部2bの嵌合リブ2b1に嵌合させる。これによりトロイダルコイル10の径方向がアウタケース本体2に対し固定される。
また、トロイダルコイル10の収容時に、奥まで押し込むことにより、嵌合部12の後面部12bに形成された2つの円形の窪み12b1をアウタケース本体2の後壁2fに形成された2つの突起部2f2に嵌合させる。
【0031】
また、回路基板5に端子部4を搭載した後、アウタケース本体2の空隙2gに回路基板5を挿入する。回路基板5は、その上下面が突起部2e1、2c1によって押さえ付けられた状態で固定される。尚、前記空隙2gは、嵌合板部材2cを設けたことにより形成されているため、嵌合板部材2cは、トロイダルコイル10と回路基板5のケース内への固定部材として共用されている。
【0032】
また、トロイダルコイル10の巻線の両端部を回路基板5に半田により接合する。また、このとき、矩形状の回路基板5の左右角部に設けられたくびれ部5aにコイル巻線端部を一旦巻き付けた上、基板に接合することで、断線の発生を抑えることができる。
【0033】
そして、アウタケース本体2に対し蓋部3を閉める。その際、蓋部3の裏側に形成された突起部3bを、嵌合部12の前面部12aに形成された窪み12a1に嵌合させる。
これによりトロイダルコイル10は、軸方向(厚さ方向)がケースに対し固定され、電流センサ1が完成する。
【0034】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、多数巻線がされたトロイダルコイル10であっても、巻線の巻始めと巻き終わりとの間の僅かなスペースに嵌合部12を設け、この嵌合部12によりトロイダルコイル10の径方向と軸方向(厚さ方向)とがアウタケースに対し確実に固定される構成とした。
これにより従来のようなモールド樹脂によるトロイダルコイルの固定が不要となり、コストだけでなく生産性を向上し、また、軽量化することができる。
また、固定のためにコア自体を加工する必要がないため、手間を要することがなく、またコアの変形による性能低下を防止することができる。
【0035】
尚、前記実施の形態にあっては、トロイダルコイル10の嵌合部12と、アウタケース20との嵌合において、一方が溝形状で他方がリブ形状、或いは一方が窪み形状で他方が突起形状としたが、本発明にあっては、その組み合わせや形状が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 電流センサ
2 アウタケース本体
2b1 嵌合リブ(第三の係合部)
2c2 嵌合リブ(第四の係合部)
2f2 突起部(第二の係合部)
3 蓋部
3b 突起部(第一の係合部)
4 端子部
5 回路基板
5a くびれ部
9 トロイダルコア
10 トロイダルコイル
11 インナケース
12 嵌合部
12a 前面部
12b 後面部
12c 内周面部
12d 外周面部
13 円孔部
20 アウタケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8