特許第6550136号(P6550136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6550136三官能性ベンゾオキサジン並びに硬化性樹脂組成物及び複合材料におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550136
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】三官能性ベンゾオキサジン並びに硬化性樹脂組成物及び複合材料におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/16 20060101AFI20190711BHJP
   C08G 14/073 20060101ALI20190711BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C07D265/16CSP
   C08G14/073
   C08J5/24CEZ
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-534646(P2017-534646)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公表番号】特表2018-503623(P2018-503623A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】US2015067627
(87)【国際公開番号】WO2016109406
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】62/097,276
(32)【優先日】2014年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516100285
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, ラム ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クロス, ポール マーク
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2018−500442(JP,A)
【文献】 特表2017−537182(JP,A)
【文献】 特表2017−502135(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103387791(CN,A)
【文献】 特表2015−512459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G 14/073
C08J 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造(A):
によって表され、液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)によって測定して約699の分子量(MW)を有する、メタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマー。
【請求項2】
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをm−トルイジン及びメチルホルムセルと反応させることにより得られる反応生成組成物であって、主成分として構造(A)で表されるメタ置換三官能性ベンゾオキサジンを、副成分として構造(B)及び(C)で表されるベンゾオキサジンを含み、
構造(A)、(B)、及び(C)の分子量が、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)で決定して、それぞれ699、687、及び568である、反応生成組成物。
【請求項3】
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをm−トルイジン及びメチルホルムセルと反応させるための化学量論が、
m−トルイジンの各モルに対して、0.25−0.5モルの1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、1.5−20モルのメチルホルムセルである、請求項2に記載の反応生成組成物。
【請求項4】
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、m−トルイジンと、パラホルムアルデヒドとを含む反応混合物を調製し、前記反応混合物を化学反応が起こる温度にまで加熱することによって得られる反応生成組成物であって、前記組成物が以下の構造(A):
で表されるメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマーを主成分として含み、
前記三官能性ベンゾオキサジンモノマーが、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)により決定して、699の分子量(MW)を有する、反応生成組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマー及び他のベンゾオキサジンモノマーを含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項2から4の何れか一項に記載の反応生成物及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマーと、単官能性ベンゾオキサジン;前記置換三官能性ベンゾオキサジンモノマー以外の多官能性ベンゾオキサジン;エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド−フェノール、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1の熱硬化性樹脂成分とを含む硬化性組成物。
【請求項8】
請求項2から4の何れか一項に記載の反応生成組成物と、単官能性ベンゾオキサジン;前記置換三官能性ベンゾオキサジンモノマー以外の多官能性ベンゾオキサジン;エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド−フェノール、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1の熱硬化性樹脂成分とを含む硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマー又は請求項2から4の何れか一項に記載の反応生成組成物と、
トリフルオロジエーテル酸ホウ素(BFO(Et))、五塩化リン(PCl)、三塩化リン(PCl)、オキシ塩化リン(POCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、五塩化アンチモン(SbCl);チオジフェノール;2,4−ジ−tert−ブチルフェノール;メチルトシレート;メチルトリフレート(MeOTf);シアネートエステル;2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI);アルキレン酸;アジピン酸;p−トルエンスルホン酸;及びこれらの組み合わせからなる群より選択される触媒と
を含む樹脂組成物。
【請求項10】
トリフルオロジエーテル酸ホウ素(BFO(Et))、五塩化リン(PCl)、三塩化リン(PCl)、オキシ塩化リン(POCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、五塩化アンチモン(SbCl);チオジフェノール;2,4−ジ−tert−ブチルフェノール;メチルトシレート;メチルトリフレート(MeOTf);シアネートエステル;2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI);アルキレン酸;アジピン酸;p−トルエンスルホン酸;及びこれらの組み合わせからなる群より選択される触媒をさらに含む、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
補強繊維と硬化性マトリックス樹脂とを含む複合材料であって、
硬化性マトリックス樹脂が請求項1に記載のメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマーを含む、複合材料。
【請求項12】
補強繊維と硬化性マトリックス樹脂とを含む複合材料であって、
硬化性マトリックス樹脂が請求項2から4の何れか一項に記載の反応生成組成物を含む、複合材料。
【請求項13】
請求項1に記載のメタ置換三官能性ベンゾオキサジンモノマーを含む硬化性マトリックス樹脂を含浸させたか、又はそれに埋め込んだ補強繊維の層を含むプリプレグ。
【請求項14】
補強繊維が連続的で一方向に整列されている繊維又は織布の形態である、請求項13に記載のプリプレグ。
【請求項15】
補強繊維が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項11又は12に記載の複合材料。
【請求項16】
補強繊維を請求項5、6、9、及び10の何れか一項に記載の樹脂組成物と組み合わせることにより製造される複合構造体。
【請求項17】
請求項7又は8に記載の硬化性組成物の補強繊維への含浸又は注入により;続いて硬化により製造される複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、2014年12月29日に出願された米国仮特許出願第62/097276号(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
ベンゾオキサジン(BOX)の使用は、エポキシなど他の熱硬化性樹脂と比較して、多くの利点を提供する。そのような利点としては、比較的長い保存寿命、分子設計の柔軟性、低コスト、高いガラス転移温度(Tg)、高いモジュラス、比較的低い粘度、良好な難燃性、低い吸湿性、硬化中に副生成物が放出されないこと、及び非常に低い硬化時の収縮性が挙げられる。さらに、ベンゾオキサジンは、加熱により自己硬化することができる。すなわち、追加の硬化剤を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】第一の方法に従って合成されたベンゾオキサジン反応生成物のLC/UVクロマトグラムである。
図2A】本開示の方法に従って合成されたm−トルイジン置換基を有するメタ−三官能性ベンゾオキサジン(meta-trifunctional benzoxazine)のDSCサーモグラムである。
図2B】比較のためのパラ−三官能性ベンゾオキサジン(para-trifunctional benzoxazine)のDSCサーモグラムである。
図3】メタ−三官能性ベンゾオキサジン及びパラ−三官能性ベンゾオキサジンの硬化サンプルに関する動的機械熱分析(DMTA)の結果を示す。
図4図4A及び4Bはそれぞれ、メタ−三官能性ベンゾオキサジンの硬化樹脂サンプル、230℃で2.5時間硬化後の同じ硬化樹脂サンプルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示は、メタ置換された三官能性ベンゾオキサジンモノマー、メタ置換された三官能性ベンゾオキサジンモノマーを主成分として含有する反応生成組成物、並びに硬化樹脂組成物及び複合材料におけるそれらの使用に関する。
【0005】
本開示の置換された三官能性ベンゾオキサジンモノマーは、各々がメタ−トルイジン(又はm−トルイジン)置換基を含む3つのベンゾオキサジン環を含み、以下の構造Iによって表される:

メチル基(CH)は、Nに対してメタ位でトルイジン環に結合していることに留意されたい。このベンゾオキサジンモノマーは、エレクトロスプレーイオン化技術を用いる液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)によって決定される分子量(MW)が699である。上記三官能性ベンゾオキサジンモノマーの化学名は、6,6’,6”−エタン−1,1,1−トリイルトリス(3−(3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−1,3−ベンゾオキサジン(本明細書では「m−トリスベンゾオキサジン」ともいう)である。
【0006】
m−トリスベンゾオキサジンモノマーの合成は、以下の反応スキームのうちの1つに従って行うことができる。
【0007】
スキーム1
スキーム1(以下に示す)によれば、m−トリスベンゾオキサジンモノマーは、三価(又はトリス)フェノール(すなわち3つの反応性ヒドロキシル基を有するフェノール)、好ましくは1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、m−トルイジンと、メチルホルムセル(methyl formcel)との反応から得られる。
【0008】
上記反応において、m−トリス−ベンゾオキサジン、構造(A)は、反応生成組成物の主成分であるが、以下の構造(B)及び(C)によって表される副成分もある。
【0009】
構造(B)及び(C)の分子量は、エレクトロスプレーイオン化技術を用いるLCMSによって決定して、それぞれ687及び568である。スキーム1の反応において、反応物の化学量論は、m−トルイジンの各モルにつき、0.25−0.5のトリス−フェノール及び1.5−20モルのメチルホルムセルであり得る。
【0010】
一実施態様によれば、ベンゾオキサジンモノマーは、最初にm−トルイジンをメチルホルムセルと反応させてN−メトキシメチル中間体を生成することによって形成される。次に、中間化合物をトリス−フェノールと反応させ、ベンゾオキサジンモノマーを生成させる。代替実施態様では、ベンゾオキサジンモノマーは、m−トルイジンをトリス−フェノール及びメチルホルムセルと混合し、得られた混合物を加熱して同時に反応させることにより形成される。
【0011】
スキーム2
代替反応スキーム2(以下に示す)によれば、m−トリス−ベンゾオキサジンモノマーは、三価(又はトリス)フェノール、好ましくは1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、m−トルイジンと、パラホルムアルデヒド(又はp−ホルムアルデヒド)との反応から得られる。
【0012】
スキーム2の反応において、反応物の化学量論は、トリス−フェノールの各モルにつき、約2.5から約3.5モルの芳香族アミン、及び約5から約8モルのパラホルムアルデヒドであり得る。反応物が化学的に反応する温度まで反応混合物を加熱し、ベンゾオキサジン反応生成物が形成されるまで反応混合物をその温度に維持する。
【0013】
構造(I)のm−トリス−ベンゾオキサジンモノマーは、室温(20℃−30℃)で固体である。このm−トリスベンゾオキサジンモノマーは、同様の既知の化合物であるパラ三官能性ベンゾオキサジン又は「p−トリスベンゾオキサジン」(以下の構造II)と比較して、より反応性である(すなわち、より低い温度で反応する)ことが見出されている。
【0014】
構造I及びIIの2つの三官能性ベンゾオキサジンは構造が類似しているが、それらの特性は異なる。上記のm−トリスベンゾオキサジンモノマーの特性は、より低い温度での硬化及び/又はより短い硬化サイクルをもたらすことが可能である。このような特性は、複合部品の低温硬化能力が様々な利点をもたらすことから、航空宇宙複合部品の製造において有利であり得る。一態様では、金型などの複合材料を成形するために使用されるツーリングは、より高い硬化温度に耐えることができるより高価な材料ではなく、より低コストの低温材料から作ることができる。
【0015】
硬化樹脂組成物
硬化すると、m−トリス−ベンゾオキサジンモノマーは、開環重合により容易に重合する。そのような重合は通常、(カチオン開始剤を用いて)カチオン的に又は熱的に開始される。
【0016】
本開示のm−トリス−ベンゾオキサジンモノマーは、他のベンゾオキサジンモノマー若しくはオリゴマー(モノオキサジン又はマルチオキサジン環(multi-oxazine ring)ベンゾオキサジン)又は他の熱硬化性樹脂とのブレンドで使用して、所望の特性を有するポリマーブレンドを形成することができる。m−トリス−ベンゾオキサジンモノマーとのブレンドに使用できる他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)、ホルムアルデヒド−フェノール樹脂,などのホルムアルデヒド縮合樹脂、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。適切なエポキシ樹脂としては、芳香族ジアミン、芳香族モノ第1級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸等からなる化合物群のうちの1つ以上のモノ若しくはポリグリシジル誘導体又はそれらの混合物から誘導されるものが挙げられる。他の熱硬化性j樹脂(又は熱硬化性ポリマー前駆体)は、周囲温度(20℃−30℃)で固体であるm−トリス−ベンゾオキサジンモノマーのための加工助剤として有用であり得る。m−トリス−ベンゾオキサジンモノマーと他の熱硬化性樹脂とのブレンドは、硬化性樹脂組成物がプリプレグ及び樹脂注入などの標準的な複合体製造技術を用いて加工するのに適した特性を有するように配合することができる。ベンゾオキサジンモノマーとのブレンドに特に適した熱硬化性樹脂としては、周囲温度で低融点の固体又は液体であるエポキシ、シアネートエステル、及びフェノール樹脂前駆体が挙げられる。
【0017】
あるいは、硬化性組成物は、異なるベンゾオキサジンモノマー又はオリゴマーのブレンドを含有するが、エポキシ、シアネートエステル、BMI、及びフェノール類といった他の熱硬化性樹脂を主成分として含まない、純粋なベンゾオキサジン系であってもよい。例えば、本明細書に開示されるm−トリス−ベンゾオキサジンモノマーは、低融点の固体又は液体の単官能性ベンゾキサジンモノマー又はビスフェノールA−ベンゾオキサジンなどの二官能性ベンゾオキサジンモノマーとブレンドすることができる。
【0018】
上記のベンゾキサジンブレンドは、樹脂フィルム(例えば接着フィルム、表面フィルム)又は繊維補強複合材料(例えばプリプレグ)の製造に適した硬化性組成物を形成するための触媒及び補強剤などの追加の成分と組み合わせることができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「硬化性組成物」は、硬化マトリックス樹脂を形成するための、完全硬化前の組成物を指す。
【0020】
硬化性樹脂組成物への触媒添加は任意選択であるが、触媒の使用は硬化速度を上げ、及び/又は硬化温度を低下させる可能性がある。ベンゾオキサジン系組成物用の適切な触媒としては、限定されないが、トリフルオロジエーテル酸ホウ素(BFO(Et))、五塩化リン(PCl)、三塩化リン(PCl)、オキシ塩化リン(POCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化アルミニウム(AlCl)、五塩化アンチモン(SbCl);チオジフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールなどのフェノール類;メチルトシレート、メチルトリフレート(MeOTf)、シアネートエステル、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI);アルキレン酸、アジピン酸、p−トルエンスルホン酸等の強酸が挙げられる。
【0021】
航空宇宙用途に使用されるような高強度複合体に適した強化マトリックス樹脂を製造するために、補強剤(又は強靭化剤)を添加することができる。適切な補強剤としては、限定されないが、ポリエーテルスルホン(PES)、PESとポリエーテルエーテルスルホン(PEES)とのコポリマー、反応性基を有し、液状ゴムを含むエラストマー、粒状補強剤(例えば、限定されないが、熱可塑性粒子、ガラスビーズ、ゴム粒子、及びコアシェルゴム粒子)といった熱可塑性補強剤が挙げられる。
【0022】
機能性添加剤はまた、硬化又は未硬化樹脂組成物の機械的、流体力学的、電気的、光学的、化学的、難燃性、及び/又は熱的特性の1つ以上に影響を与えるために硬化性組成物に含まれてもよい。このような機能性添加剤の例には、限定されないが、フィラー、着色顔料、レオロジーコントロール剤、粘着付与剤、導電性添加剤、難燃剤、紫外線(UV)保護剤等が含まれる。これらの添加剤は、粒子、フレーク、ロッド等を含むがこれらに限定されない様々な形状の形態を取ることができる。
【0023】
複合材料
上述の硬化性組成物は、補強繊維と組み合わされて複合材料又は構造を形成してもよい。補強繊維は、ウィスカー、短繊維、連続繊維、フィラメント、トウ、束、シート、プライ、及びこれらの組み合わせの形態を採り得る。連続繊維は、一方向の、多方向の、不織布の、織られた、編まれた、縫われた、巻かれた、及び編組の形態、並びにスワールマット、フェルトマット、及びチョップドファイバーマット構造のいずれかをさらに採り得る。該繊維の組成は、最終的な複合構造物に要求される特性を達成するために変更することができる。例示的な繊維材料としては、限定されないが、ガラス、炭素、グラファイト、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
複合材料を形成するには、樹脂フィルム含浸によるプリプレグ及び樹脂移送成形(RTM)又は真空アシストRTM(VaRTM)による樹脂注入などの(但しこれらに限定されない)従来の加工技術を用いて、硬化性組成物を補強繊維に含浸させるか、又は浸み込ませる。
【0025】
補強繊維は、短繊維、連続繊維、フィラメント、トウ、束、シート、プライ、及びこれらの組み合わせの形態を採り得る。連続繊維は、一方向の、多方向の、不織布の、織られた、編まれた、縫われた、巻かれた、及び編組の形態、並びにスワールマット、フェルトマット、及びチョップドファイバーマット構造のいずれか一つをさらに採り得る。該繊維の組成は、最終的な複合構造物に要求される特性を達成するために変更することができる。例示的な繊維材料としては、限定されないが、ガラス、炭素、グラファイト、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
プリプレグから複合部品を製造するには、成形工具上に含浸補強繊維のプライを置き、樹脂組成物の硬化温度を超える温度の、例えばオートクレーブ若しくは真空成形による、又は加熱ローラーによる熱及び圧力により、そのプライを合わせて薄板状にする。複合材料中のマトリックス樹脂を硬化させると、複合構造部品を作ることができる。
【0027】
複合部品を樹脂注入、例えばRTM又はVaRTM法により製造するとして、第一の工程は、所望の構造部品の形状で乾燥繊維プリフォームを形成することである。プリフォームは一般に、得られる複合部品に所望の補強特性を付与する乾燥補強繊維から作られた複数繊維層又はプライを含む。繊維プリフォームの形成後、プリフォームを金型に入れる。繊維プリフォームに硬化性樹脂組成物を直接射出/注入し、樹脂注入プリフォームを硬化させる。
【実施例】
【0028】
後述の実施例では、
HPLCは高速液体クロマトグラフィーであり、
LCMSは液体クロマトグラフィー質量分析法であり、
GCMSはガスクロマトグラフィー質量分析法であり、
HPSECは高速サイズ排除クロマトグラフィーであり、
NMRは核磁気共鳴分光法であり、
DSCは示差走査熱量測定であり、
TLCは薄層クロマトグラフィーである。
【0029】
実施例1 − メチルホルムセルによる合成
還流冷却器、熱電対、オーバーヘッドスターラー及び窒素導入口を備えた4つ口丸底フラスコに、81mLのメチルホルムセル(1.48モル)を加えた。次いで、m−トルイジン54g(0.5モル)をフラスコに滴下した。次に、その溶液を室温で2時間撹拌した。m−トルイジンの消失をTLCによって観察した。
【0030】
この段階で、固体1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを複数回に分けて添加した。次いで、反応混合物を加熱還流させた。反応をHPLCでモニターしたところ、1つの主要な生成物ピークが示された。その反応混合物を冷却し、塩化メチレンで希釈した。次いで、塩化メチレン溶液をメタノール/水混合物で洗浄した。塩化メチレン層をNaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残留物をメタノールで処理して白色固体を得、これを濾過し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥させた。
【0031】
ベンゾオキサジン反応生成物の乾燥固体をLCMS及びNMR分光法により分析した。この分析により、m−トリス−ベンゾオキサジンの主要成分としての存在が確認された。
【0032】
図1は、トリス(フェノール)エタン+3トルイジン+6CHO、マイナス6HOを有する置換三官能性ベンゾオキサジン化合物である主成分(MW=699、C47453、面積率62.4%)を示す、ベンゾオキサジン反応生成物の乾燥固体のクロマトグラムである。LCシステムにおける主成分の分解が原因で、かなりの不純物(MW=687、C4645O、面積率10.5%)が部分的に見出された。いくつかのさらなる不純物も存在した。表1は、図1のクロマトグラムに基づく結果である。
表1
TPE=トリス(フェノール)エタン
このピークの一部は、LCシステムにおける主成分の分解によるものである。
**MW=818及び830化合物が同時に溶出する。
【0033】
実施例1で製造されたm−トリス−ベンゾオキサジン化合物のNMRスペクトルは、予測した化学構造と一致した。
【0034】
実施例2 − パラホルムアルデヒドによる合成
m−トルイジン16.510g(0.154mol)を500mlジャーに加え、室温で撹拌した。1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(0.05mol)15.04g及びp−ホルムアルデヒド37.2g(0.31mol)を合わせ、約20分間かけてジャーに加えた。次いで、ジャーを油浴に入れ、15分間激しく撹拌しながら70℃に加熱した。この温度付近で発熱反応が起こった。油浴温度を85℃に上げ、15分間撹拌した。次いで、温度を110℃に上げ、30分間保持した。次いで、温度を130℃に設定し、樹脂の内部温度が110℃に達したら、30分タイマーをスタートさせた。30分後、得られた溶融混合物を剥離紙に注ぎ、冷ました。次いで、固体反応生成物を粉砕して微粉末にした。この粉末を70℃のNaOH溶液(700cm、1mol?dm−3)中で30分洗浄を2回行った。70℃の蒸留水700cmで、水がpH7になるまで固体を洗浄した。次いで、固体を濾過し、真空中40℃で乾燥させた。
【0035】
図2Aは、本実施例で製造された未硬化m−トリスベンゾオキサジンのDSCトレースである。比較のために、未硬化p−トリスベンゾオキサジン(上記の構造II)のDSCトレースを図2Bに示す。これらのDSCトレースから分かるように、m−トリスベンゾオキサジンは、p−トリスベンゾオキサジンよりも低い温度で反応した。
【0036】
実施例3
純粋な硬化m−トリスベンゾオキサジンの樹脂サンプルを以下のように調製した。
1. m−トリスベンゾオキサジン10g−12gをアルミニウム皿に入れ、110℃の真空オーブン内で180分間脱気した。
2. 次いで、脱気したベンズオキサジンを次の標準的な硬化サイクル:1℃/分で25℃から180℃、2時間保持、1℃/分で180℃から200℃、2時間保持、2℃/分で200℃から25℃を用い、ファンオーブン内で硬化させた。
【0037】
比較のため、p−トリスベンゾオキサジン樹脂の同様のサンプルを同じ硬化サイクルで硬化させた。
【0038】
m−トリスベンゾオキサジンの第二のサンプルを180℃で2時間、次に200℃で2時間硬化させ、230℃で2時間の後硬化がこれに続いた。p−トリスベンゾオキサジンの第二のサンプルを180℃で2時間、次いで220℃で2時間硬化させた。
【0039】
図3は、硬化したベンゾオキサジンサンプルの動的機械熱分析(DMTA)結果を示す。
【0040】
m−トリスベンゾオキサジンを標準条件下(上記)で硬化させた場合、〜250℃でのタンデルタのピークが観察された。同じサンプルを後硬化(230℃で2時間)した場合、ピークは300℃に上昇した。
【0041】
硬化サイクルの最終工程でp−トリスベンゾオキサジンサンプルの加熱温度を220℃に上げても、DMTAで決定されるサンプルのガラス転移温度(Tg)は上昇しなかった。硬化したm−トリスベンゾオキサジンサンプルでは、より高い温度の後硬化がTを上昇させた。これは、硬化サイクルの最終工程でのより高い硬化温度がm−トリスベンゾオキサジンのTを上昇させる可能性があることを示唆している。
【0042】
図4Aは、上記で開示した標準硬化サイクル後の硬化m−トリスベンゾオキサジンサンプルの画像を示し、また図4Bは、230℃で2.5時間の後硬化後の同じ硬化サンプルを示す。この結果は、m−トリスベンゾオキサジンが高温後硬化に熱安定性を呈することを示す。
【0043】
実施例4
表2に開示する配合組成に基づいて、m−トリスベンゾオキサジン(「m−トリス−BOX」)含・不含の2種の樹脂組成物を調製した。別段の記載がない限り、すべての値は重量パーセントである。
表2
Bis−ABOXは、ビスフェノールAベンゾオキサジンを意味する。アラルダイト(登録商標)CY−179は、Huntsman Advanced Materialsによって供給される脂環式エポキシである。TDPは、チオジフェノールを意味する(触媒)。
【0044】
各樹脂配合組成に基づいて、複合積層体を作製した。最初に、表2に開示の樹脂配合組成から、樹脂フィルムを形成した。各樹脂フィルムのフィルム重量は、〜39gsm(g/m) であった。各複合積層体は、[+45/90/−45/0]3sの配向で、24枚のプリプレグプライをレイアップすることによって形成した。プリプレグは、2枚の樹脂フィルムの間に一方向性のIM7炭素繊維の層を置き、ホットメルト積層法を用いて繊維を含浸させることによって作製した。炭素繊維の目標布面積重量(FAW)は145gsmであり、プリプレグ当たりの樹脂含量は35%であった。続いて、複合積層体を真空バッグに封入し、オートクレーブ内で8.16bar、180℃で2時間、次いで200℃でもう2時間硬化させた。
【0045】
ASTM試験法D6484及びD766をそれぞれ用いて硬化した複合積層体を試験し、有孔圧縮(open hole tension)(OHC)及び有孔引張(open hole tension)(OHT)性能を決定した。OHCのデータを得るために、12インチ×1.5インチの硬化複合積層体の試験片を作製した。各試験片の中央に、0.25インチの孔を開けた。71℃に設定した水浴に試験片を2週間浸漬することにより、試験片を調整した。OHC及びOHTの結果を表3及び4で報告する。
表3
表4
【0046】
硬化複合積層体の湿潤及び乾燥Tも、動的機械熱分析(DMTA)によって決定し、その結果を表5に示す。
表5
【0047】
m−トリスベンゾオキサジンを含有する複合積層体は、それを含有しない複合積層体と比較して、より高い温度、121℃及び149℃でより良好な湿潤OHC性能をもたらした。121℃及び149℃での湿潤OHCにおけるこれらのより高い値は、より高いOHT値も伴う。m−トリスベンゾオキサジンを含有する複合積層体についても、それを含有しない複合積層体と比較して、乾燥及び湿潤Tgの上昇が観察された。
図1
図2A
図2B
図3
図4