【実施例】
【0028】
後述の実施例では、
HPLCは高速液体クロマトグラフィーであり、
LCMSは液体クロマトグラフィー質量分析法であり、
GCMSはガスクロマトグラフィー質量分析法であり、
HPSECは高速サイズ排除クロマトグラフィーであり、
NMRは核磁気共鳴分光法であり、
DSCは示差走査熱量測定であり、
TLCは薄層クロマトグラフィーである。
【0029】
実施例1 − メチルホルムセルによる合成
還流冷却器、熱電対、オーバーヘッドスターラー及び窒素導入口を備えた4つ口丸底フラスコに、81mLのメチルホルムセル(1.48モル)を加えた。次いで、m−トルイジン54g(0.5モル)をフラスコに滴下した。次に、その溶液を室温で2時間撹拌した。m−トルイジンの消失をTLCによって観察した。
【0030】
この段階で、固体1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを複数回に分けて添加した。次いで、反応混合物を加熱還流させた。反応をHPLCでモニターしたところ、1つの主要な生成物ピークが示された。その反応混合物を冷却し、塩化メチレンで希釈した。次いで、塩化メチレン溶液をメタノール/水混合物で洗浄した。塩化メチレン層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残留物をメタノールで処理して白色固体を得、これを濾過し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥させた。
【0031】
ベンゾオキサジン反応生成物の乾燥固体をLCMS及びNMR分光法により分析した。この分析により、m−トリス−ベンゾオキサジンの主要成分としての存在が確認された。
【0032】
図1は、トリス(フェノール)エタン+3トルイジン+6CH
2O、マイナス6H
2Oを有する置換三官能性ベンゾオキサジン化合物である主成分(MW=699、C
47H
45N
3O
3、面積率62.4%)を示す、ベンゾオキサジン反応生成物の乾燥固体のクロマトグラムである。LCシステムにおける主成分の分解が原因で、かなりの不純物(MW=687、C
46H
45N
3O、面積率10.5%)が部分的に見出された。いくつかのさらなる不純物も存在した。表1は、
図1のクロマトグラムに基づく結果である。
表1
TPE=トリス(フェノール)エタン
*このピークの一部は、LCシステムにおける主成分の分解によるものである。
**MW=818及び830化合物が同時に溶出する。
【0033】
実施例1で製造されたm−トリス−ベンゾオキサジン化合物のNMRスペクトルは、予測した化学構造と一致した。
【0034】
実施例2 − パラホルムアルデヒドによる合成
m−トルイジン16.510g(0.154mol)を500mlジャーに加え、室温で撹拌した。1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(0.05mol)15.04g及びp−ホルムアルデヒド37.2g(0.31mol)を合わせ、約20分間かけてジャーに加えた。次いで、ジャーを油浴に入れ、15分間激しく撹拌しながら70℃に加熱した。この温度付近で発熱反応が起こった。油浴温度を85℃に上げ、15分間撹拌した。次いで、温度を110℃に上げ、30分間保持した。次いで、温度を130℃に設定し、樹脂の内部温度が110℃に達したら、30分タイマーをスタートさせた。30分後、得られた溶融混合物を剥離紙に注ぎ、冷ました。次いで、固体反応生成物を粉砕して微粉末にした。この粉末を70℃のNaOH溶液(700cm
3、1mol?dm
−3)中で30分洗浄を2回行った。70℃の蒸留水700cm
3で、水がpH7になるまで固体を洗浄した。次いで、固体を濾過し、真空中40℃で乾燥させた。
【0035】
図2Aは、本実施例で製造された未硬化m−トリスベンゾオキサジンのDSCトレースである。比較のために、未硬化p−トリスベンゾオキサジン(上記の構造II)のDSCトレースを
図2Bに示す。これらのDSCトレースから分かるように、m−トリスベンゾオキサジンは、p−トリスベンゾオキサジンよりも低い温度で反応した。
【0036】
実施例3
純粋な硬化m−トリスベンゾオキサジンの樹脂サンプルを以下のように調製した。
1. m−トリスベンゾオキサジン10g−12gをアルミニウム皿に入れ、110℃の真空オーブン内で180分間脱気した。
2. 次いで、脱気したベンズオキサジンを次の標準的な硬化サイクル:1℃/分で25℃から180℃、2時間保持、1℃/分で180℃から200℃、2時間保持、2℃/分で200℃から25℃を用い、ファンオーブン内で硬化させた。
【0037】
比較のため、p−トリスベンゾオキサジン樹脂の同様のサンプルを同じ硬化サイクルで硬化させた。
【0038】
m−トリスベンゾオキサジンの第二のサンプルを180℃で2時間、次に200℃で2時間硬化させ、230℃で2時間の後硬化がこれに続いた。p−トリスベンゾオキサジンの第二のサンプルを180℃で2時間、次いで220℃で2時間硬化させた。
【0039】
図3は、硬化したベンゾオキサジンサンプルの動的機械熱分析(DMTA)結果を示す。
【0040】
m−トリスベンゾオキサジンを標準条件下(上記)で硬化させた場合、〜250℃でのタンデルタのピークが観察された。同じサンプルを後硬化(230℃で2時間)した場合、ピークは300℃に上昇した。
【0041】
硬化サイクルの最終工程でp−トリスベンゾオキサジンサンプルの加熱温度を220℃に上げても、DMTAで決定されるサンプルのガラス転移温度(Tg)は上昇しなかった。硬化したm−トリスベンゾオキサジンサンプルでは、より高い温度の後硬化がT
gを上昇させた。これは、硬化サイクルの最終工程でのより高い硬化温度がm−トリスベンゾオキサジンのT
gを上昇させる可能性があることを示唆している。
【0042】
図4Aは、上記で開示した標準硬化サイクル後の硬化m−トリスベンゾオキサジンサンプルの画像を示し、また
図4Bは、230℃で2.5時間の後硬化後の同じ硬化サンプルを示す。この結果は、m−トリスベンゾオキサジンが高温後硬化に熱安定性を呈することを示す。
【0043】
実施例4
表2に開示する配合組成に基づいて、m−トリスベンゾオキサジン(「m−トリス−BOX」)含・不含の2種の樹脂組成物を調製した。別段の記載がない限り、すべての値は重量パーセントである。
表2
Bis−ABOXは、ビスフェノールAベンゾオキサジンを意味する。アラルダイト(登録商標)CY−179は、Huntsman Advanced Materialsによって供給される脂環式エポキシである。TDPは、チオジフェノールを意味する(触媒)。
【0044】
各樹脂配合組成に基づいて、複合積層体を作製した。最初に、表2に開示の樹脂配合組成から、樹脂フィルムを形成した。各樹脂フィルムのフィルム重量は、〜39gsm(g
2/m) であった。各複合積層体は、[+45/90/−45/0]3sの配向で、24枚のプリプレグプライをレイアップすることによって形成した。プリプレグは、2枚の樹脂フィルムの間に一方向性のIM7炭素繊維の層を置き、ホットメルト積層法を用いて繊維を含浸させることによって作製した。炭素繊維の目標布面積重量(FAW)は145gsmであり、プリプレグ当たりの樹脂含量は35%であった。続いて、複合積層体を真空バッグに封入し、オートクレーブ内で8.16bar、180℃で2時間、次いで200℃でもう2時間硬化させた。
【0045】
ASTM試験法D6484及びD766をそれぞれ用いて硬化した複合積層体を試験し、有孔圧縮(open hole tension)(OHC)及び有孔引張(open hole tension)(OHT)性能を決定した。OHCのデータを得るために、12インチ×1.5インチの硬化複合積層体の試験片を作製した。各試験片の中央に、0.25インチの孔を開けた。71℃に設定した水浴に試験片を2週間浸漬することにより、試験片を調整した。OHC及びOHTの結果を表3及び4で報告する。
表3
表4
【0046】
硬化複合積層体の湿潤及び乾燥T
gも、動的機械熱分析(DMTA)によって決定し、その結果を表5に示す。
表5
【0047】
m−トリスベンゾオキサジンを含有する複合積層体は、それを含有しない複合積層体と比較して、より高い温度、121℃及び149℃でより良好な湿潤OHC性能をもたらした。121℃及び149℃での湿潤OHCにおけるこれらのより高い値は、より高いOHT値も伴う。m−トリスベンゾオキサジンを含有する複合積層体についても、それを含有しない複合積層体と比較して、乾燥及び湿潤Tgの上昇が観察された。