【文献】
WANG, X.J. et al.,"Improvement of milbemycin-producing Streptomyces bingchenggensis by rational screening of ultraviolet- and chemically induced mutants.",World Journal of Microbiology and Biotechnology,2009年,Vol.25,pp.1051-1056,doi:10.1007/s11274-009-9986-5
【文献】
OKADA, S. et al.,"Scale‐up Production of Milbemycin by Streptomyces hygroscopicus subsp. aureolacrimosus with Control of Internal Pressure, Temperature, Aeration and Agitation.",Journal of Chemical Technology & Biotechnology,1997年,Vol.70,pp.179-187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CGMCC No.9672の受入番号で寄託され、ミルベマイシン(milbemycin)を産生する能力を有することを特徴とする、ストレプトマイセス ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)HS7523。
上記同化炭素源が、澱粉、デキストリン、グルコース、工業糖蜜、グリセロール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、キシラン、マンニトールおよびソルビトールのうちの1つ、またはこれらの物質の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
上記同化窒素源が、酵母エキス、パン種、牛肉エキス、トリプトン、ペプトン、脱脂粉乳、全脂粉乳、大豆ケーキ粉末、綿実ケーキ粉末、ピーナッツケーキ粉末、グルテン粉末、コーンパルプ乾燥粉末、糠、尿素およびアンモニウム塩のうちの1つ、またはこれらの物質の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
上記栄養培地が、2〜10g/Lの酵母エキス、酵母エキスペーストまたはペプトン、20〜200g/Lのスクロースまたは糖蜜、2〜11g/Lの脱脂粉乳またはコーンパルプ、2〜11g/Lの大豆ケーキ粉末、5〜15g/Lの綿実ケーキ粉末またはグルテン粉末、0.5〜1g/LのK2HPO4、0.05〜0.1g/LのFeSO4・7H2O、0.005〜0.02g/LのZnSO4、1〜5g/LのCaCO3、0.01〜0.05g/LのCuSO4および0.1〜0.5g/LのNa2MoO4を含むことを特徴とする、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0023】
以下の実施例で用いられる実験方法は、特に記載のない限り、すべて、従来の方法である。
【0024】
以下の実施例で用いられる材料、試薬等は、特に記載のない限り、すべて、商業的に入手可能である。
【0025】
以下の具体的な実施形態を参照して本発明を説明する。以下の実施例は、本発明を説明することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0026】
ミルベマイシンA3およびミルベマイシンA4の標準品の製造は、米国特許US3,950,360の実施例1に記載されている。
スクロースは、Guangxi Dongmen Nanhua Sugar Industry Co., Ltd.の製品である。
酵母エキスは、Zhejiang Dongcheng Pharmaceutical Co., Ltd.の製品である。
酵母エキスペーストは、Hefei Laisi Biological Engineering Co., Ltd.の製品である。
ペプトンは、Huzhou Confluence Biological science and technology Co., Ltd.の製品である。
糖蜜は、Guangdong Jiangmen Biological science and technology Co., Ltd.の製品である。
脱脂粉乳は、Hulunbeier Sanyuan Milk Co.,Ltd.の製品である。
コーンパルプは、Shandong Shouguang Juneng Golden Corn Co., Ltd.の製品である。
大豆ケーキ粉末は、Ningbo Beilun Jiangnan Oil Co., Ltd.の製品である。
綿実ケーキ粉末は、Beijing Kang Mingwei Medium Technology Co., Ltd.の製品である。
グルテン粉末は、Beijing Kang Mingwei Medium Technology Co., Ltd.の製品である。
【0027】
〔実施例1: 菌株の源〕
本発明のストレプトマイセスHS7523は、ミルベマイシン産生菌であるStreptomyces milbemycinicus CGMCC No.7677(中国特許CN103789339A参照)に基づいて、(NTG、EMS、UV等の突然変異誘発手段を含む)多数回の突然変異誘発および選択育成によって得られた、高比率のミルベマイシンA3を有する菌種である。原始菌種と比べて、菌種の外観が大きく変化し、形態学的突然変異体に属する。
【0028】
28℃で10〜12日間、Streptomyces milbemycinicus CGMCC No.7677をISP3斜面培地上で培養した。次に、接種シャベルでの無菌条件で、菌糸を研磨口管中で研磨し、その後、無菌水に懸濁させ、菌懸濁液を得た。NTG(ニトロソグアニジン)、EMS(エチルメタンスルフォン酸エステル)、UV(紫外線)を用いて、菌懸濁液を突然変異誘発に付した。具体的な方法は以下の通りである。
【0029】
NTG結晶を10mg取り、無菌Tris緩衝液(pH8.0)10mlに溶解させ、その後、トランスファーピペットを用いて菌懸濁液1mlを加えた。その後、得られた混合物を、28℃の培地に置き、回転または往復式の振盪機にて30分間振盪した。適度に希釈した後、処理した混合物をISP3プレートに塗布した。突然変異誘発処理に付さなかった菌懸濁液も適度に希釈し、対照としてISP3プレートに塗布した。28℃で10日間培養した後、コロニーの数をチェックし、致死率を計算した。
【0030】
10
−1または10
−2の単独細胞菌懸濁液5ml〜10mlを、留め具の付いたプレート(直径9cm)に徐々に加えた。その後、プレートをUV誘導箱内に置き、磁力攪拌機の上に置いた。その後、蓋を開け、撹拌しながら、30cmの距離で数分間(通常2〜5分間)、プレートにUV15Wを照射した。照射後、プレートを黒い布で包み、その後、生理食塩水(0.9塩化ナトリウム溶液)で10
−2〜10
−7倍に希釈し、希釈液をISP3プレートにそれぞれ塗布し、突然変異誘発グループを得た。
【0031】
EMSを1ml取り、無水エタノール2mlに溶解させ、0.1モル/Lのリン酸緩衝液(pH7.2)22mlをさらに加えた。10
−1または10
−2の単独細胞菌懸濁液5mlを、留め具の付いたプレートに徐々に加えた。その後、4.0%EMS溶液の5mlをプレート中に加え、EMSの最終濃度は2.0%であった。その後、プレートを磁力攪拌機の上に置いて20〜60分間撹拌した。反応を止めるために、突然変異誘発プレート中に5%チオ硫酸ナトリウムを10ml加えた。その後、得られた混合物を今度は生理食塩水で10
−2〜10
−7倍に希釈し、希釈液をISP3プレートにそれぞれ塗布し、突然変異誘発グループを得た。
【0032】
多数回の上記の単独または組み合わせた突然変異誘発の後、10,000株以上の単独コロニーが選択されて振盪フラスコ発酵に付された。ミルベマイシンの生産量はHPLCで測定される。
図1に示すように、多数回の突然変異誘発によって、突然変異体のStreptomyces hygroscopicusHS7523を選出した。
【0033】
〔実施例2: ストレプトマイセスHS523の培養特性〕
以下の実験は、「Streptomyces鑑定マニュアル」、「actinomyceteの分類と鑑定」および「一般細菌系統鑑定マニュアル」を参照して行った。
【0034】
28℃で、7〜10日間、10種類の培地、すなわち、ISP1、ISP2、ISP3、ISP4、ISP5、Gause氏No.1、リンゴ酸カルシウム、栄養寒天、YMSおよびCzapek氏にて培養した後、菌糸の色と色素を観察した(培養特性を表1に示した)。
【0035】
【表1】
【0036】
注:表1中、「/」は色素が産生されなかったことを表す。
【0037】
〔実施例3: ストレプトマイセスHS7523の生理学および生化学試験〕
以下の実験は、「Streptomyces鑑定マニュアル」、「actinomyceteの分類と鑑定」および「一般細菌系統鑑定マニュアル」を参照して行った。温度試験以外は、培養はすべて、28℃で、7〜10日間行った。
【0038】
(1)炭素源の利用:基礎培地としてISP9を採用し、種々の炭素源の最終濃度はすべて1.0%であった。結果を表2に示した。
【0039】
(2)無機窒素源の利用:基礎培地としてISP9を採用し、KNO
3および(NH
4)
2SO
4の濃度はどちらも0.1%であった。結果を表2に示した。
【0040】
(3)分解試験およびNaCl耐性試験(結果を表7に示した)は、基礎培地としてGYEA(pH6.8)を採用した。種々の分解生成物の濃度を表3に示した。結果を表3に示した。
【0041】
(4)酸化酵素およびカタラーゼ試験(結果を表4に示した)、pH試験(結果を表5に示した)および温度試験(結果を表6に示した)は、すべて、YMS培地を採用した。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
注:表2〜表7において、0:増殖なし、1:増殖が弱い、2:増殖可能で少量の胞子あり、3:良好な増殖で、多数の胞子あり、4:最高の増殖で、豊富に胞子あり、+:陽性、−:陰性である。
【0049】
〔実施例4: 16S rDNAのシーケンス分析および公知のミルベマイシン産生菌との比較〕
ISP2上で良好に増殖した本発明の菌糸を収集し、ガラスビーズを含んだTSB液体培地に接種し、28℃でインキュベーターに置き、250r/分で2〜4日間振盪培養した。その後、遠心分離で菌糸を収集し、無菌水で2回洗浄し、4℃で保存して使用に備えた。
【0050】
(1)菌糸を1000rpmで1分間遠心分離した。
【0051】
(2)最終濃度が3〜4mg/mlになるまで、リゾチーム溶液(菌糸体積:リゾチーム溶液=1:5〜10)を加え、その後、37℃で1〜3時間水浴に置いた。
【0052】
(3)50〜100ug/mlのプロテイナーゼKおよび1%SDSを加え、その後、37℃で0.5〜3時間水浴に置いた。
【0053】
(4)等体積の中性フェノール/クロロホルムを加え、30秒間振盪し、その後、12000rpmで5分間遠心分離した。
【0054】
(5)上澄み液に1/10体積の3MのNaAc溶液と、等体積のイソプロパノールとを加え、均質に混合し、5分間室温に置き、その後、12000rpmで5分間遠心分離した。
【0055】
(6)沈殿物を70%エタノール2回洗浄し、乾燥後、TE/RNaseに溶解させた。
【0056】
(7)抽出したゲノムをテンプレートとして用い、その後、ユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅を行った。
【0057】
フォワードプライマー27Fは、5’−GAGAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’(SEQ ID No.1)であり、
リバースプライマー1495Rは、5’−CTACGGCTACCTTGTTACGA−3’(SEQ ID No.2)である。
【0058】
反応は、PCR増幅器上で行った。工程は以下の通りである:95℃で5分間、前変性させ、94℃で45秒間の変性と55℃で45秒間のアニーリングと72℃で90秒間の延伸とのサイクルを30回行い、その後、72℃で10分間延伸した。反応系は以下の通りである:
脱イオン水 14.25μL
10×PCRバッファー 2.0μL
dNTP混合物 0.5μL
Taqポリメラーゼ 0.25μL
プライマー1(27F) 1.0μL
プライマー2(1495R) 1.0μL
DNAテンプレート 1.0μL(濃度に基づいて定量した)。
【0059】
PCR生成物を0.8%寒天ゲル電気泳動で測定した。明瞭なバンドの生成物を選択して精製した。増幅された生成物をゲル電気泳動で回収し、Tベクターに連結してシークエンシングした。菌種の16S rDNAの一次構造が得られた。結果は、Genebankのデータベース(blast)の類似性検索を行うことによって、ストレプトマイセスHS7523が、Streptomyces sp. NRRL 5739 16s rRNAと99%の相同性を有すること、および、Streptomyces bingchenggensisBCW−1と99.5%の相同性を有することを示した。
【0060】
【表8】
【0061】
〔ストレプトマイセスHS7523と、公知のミルベマイシン産生菌との比較〕
US3950360によって報告されているように、ミルベマイシン産生菌であるStreptomyces NRRL NO.5739については、ISP2培地上のその空中の菌糸は灰色で、背面は黄褐色であり、コロニー表面には多くの黄色い涙があり、黄色の色素が産生され、ISP4培地上のその空中の菌糸は灰色で、背面は黄土(カーキ)色であり、コロニー表面にはやはり多くの黄色い涙があり、明るいオリーブ緑色の色素が産生され、アラビノースとキシロースとが利用可能であった。一方、本発明のストレプトマイセスHS7523については、ISP2培地上のその空中の菌糸は白色で、背面はベージュ色であり、コロニー表面に涙は無く、色素は産生されず、ISP4培地上のその空中の菌糸は白色で、背面は象牙色であり、コロニー表面に涙は無く、色素は産生されず、アラビノースとキシロースとは利用不可能であった。
【0062】
CN101100651Aによって報告されているように、ミルベマイシン産生菌である、Gause氏No.1 培地上のStreptomyces bingchengsis sp.nov CGMCC No.1734のコロニーの表面は灰色(黒色の吸水斑があった)で、コロニーの背面は黄灰色で、黄褐色の色素が産生された。一方、Gause氏No.1 培地上の本発明のストレプトマイセスHS7523のコロニーの表面は、中央部は白色で、周囲部はテレグレイ4であり、コロニーの背面はテレグレイ4で、色素は産生されなかった。
【0063】
要約すれば、本発明のストレプトマイセスHS7523は、Streptomyces属に属するが、公知のミルベマイシン産生菌であるStreptomyces NRRL NO.5739およびStreptomyces bingchengsis sp.nov CGMCC No.1734とは異なっている。ストレプトマイセスHS7523は新しい菌種である。
【0064】
本発明のストレプトマイセスHS7523菌株のコロニーの形態と、Streptomyces milbemycinicus CGMCC No. 7677との比較図を
図2に示す。
【0065】
〔実施例5: ミルベマイシンA3の製造〕
〔(1) 斜面上の菌糸の製造および培養〕
斜面胞子培地の処方(g/L):酵母エキス2、麦芽エキス2、スクロース8、脱脂粉乳1、寒天20であり、消毒前のpH7.0〜7.2、試験管30×200mm、充填体積20mLであり、121℃で20分間滅菌した後、培地を50〜60℃に冷却し、斜面を形成した。その後、斜面に菌糸リングを接種した。28±1℃の温度で10日間培養した後、菌糸が成熟した。
【0066】
〔(2) 種培地の製造および培養〕
種培地の処方(g/L):酵母エキス5、ペプトン5、スクロース20、脱脂粉乳2、K
2HPO
4 0.5であり、消毒前のpHは7.0〜7.2であった。振盪フラスコの充填体積は250mLであり、三角フラスコは30mLであった。種培地を121℃で20分間滅菌した。菌の接種量は10
5〜10
6c.f.u./mLであり、培養温度は28±1℃であり、振盪機内にて48時間、250rpmで振盪培養した。
【0067】
〔(3) ミルベマイシンA3発酵培地の製造および培養〕
発酵培地の処方(g/L):酵母エキス5、スクロース120、脱脂粉乳10、大豆ケーキ粉末10、綿実ケーキ粉末14、K
2HPO
4 1、FeSO
4・7H
2O 0.1、ZnSO
4 0.02、CaCO
3 5、CuSO
4 0.05、Na
2MoO
4 0.5であった。振盪フラスコの充填体積は250mLであり、三角フラスコは30mLであった。発酵培地を121℃で20分間滅菌した。その後、10%(体積百分率)の接種量で種培地を接種し、振盪機内にて温度28±1℃、250rpmで14日間振盪培養し、発酵後、発酵液をHPLCで測定した。
【0068】
ミルベマイシンのHPLC測定方法は以下の通りである:
0.5mlの発酵培地に4.5mlの75%エタノールを加える。得られた混合物を均質に混合し、15分間3000rpmで遠心分離する。上澄み液を取って試料を注入する。
HPLCカラム:Zorbex RX−C8、150mm×4.6mm、5μm
UV吸収波長:240nm
温度制御:22℃
HPLC流動相条件は以下の通りであった。
【0069】
【表9】
【0070】
注入量:10μl。
【0071】
同様の条件下での、ミルベマイシンA3の標準品およびミルベマイシンA4の標準品のHPLCクロマトグラムを
図3に示した(以下の実施例の発酵液のHPLC測定は、すべて、ミルベマイシンA3の標準品およびミルベマイシンA4の標準品のHPLC測定ステップを含んでいた)。
【0072】
発酵液中でのHPLCクロマトグラムを
図4に示した。
【0073】
同様の条件下での、目的産物のHPLCクロマトグラムの保持時間をミルベマイシンA3の標準品およびミルベマイシンA4の標準品のHPLCクロマトグラムの保持時間と比較することにより、発酵液の目的産物が、ミルベマイシンA3およびミルベマイシンA4であることが確定された(以下の実施例の発酵液のHPLCクロマトグラムの比較によって、目的産物がミルベマイシンA3およびミルベマイシンA4であることが確定された)。
【0074】
発酵液中のミルベマイシンA4の含量は1206mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量は3100mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の72%を占めた。
【0075】
〔実施例6: ミルベマイシンA3の製造〕
〔(1) 種タンクでの種培地の製造〕
種培地10L(種培地の処方については実施例5を参照。同時に、泡を消す薬剤として0.25%の消泡剤を添加した)を、15Lの種タンクに投入した。121℃で30分間、蒸気滅菌を行った。冷却後、200mlの振盪フラスコ種培地をその中に接種し、その後、温度28±1℃、撹拌速度150rpmで、通気量1vvmにて、48時間培養した。
【0076】
〔(2) 発酵槽培地の製造および培養〕
発酵培地の処方は実施例5と同様であり、ただし、泡を消す薬剤として0.25%の消泡剤の添加を要した。発酵槽の体積は50Lであり、供給材料の体積は35Lであった。消毒前の発酵培地のpHは7.2〜7.6であった。121℃で25分間、蒸気滅菌を行った。冷却後、その中に約3.5Lの種タンク培地を接種し、温度28±1℃で発酵させ、最低150rpmの撹拌速度で撹拌し、溶存酸素は35%以上であった。通気量は0.6vvmであり、14日間発酵培養し、その後、発酵槽を解放した。発酵後、実施例5に示すように発酵液をHPLCで測定した。発酵液においては、ミルベマイシンA4の含量は1246mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量は3050mg/Lであると測定され、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の71%を占めた。
【0077】
発酵槽中でのミルベマイシンA3およびミルベマイシンA4の発酵曲線を
図5に示した。
【0078】
発酵液中でのミルベマイシンA3(F075−A3)のHPLCクロマトグラムを
図6に示した。
【0079】
〔実施例7: ミルベマイシンA3の製造〕
〔(1) 種タンクでの種培地の製造〕
種培地8T(種培地の処方については実施例5を参照。同時に、泡を消す薬剤として0.25%の消泡剤を添加した)を、15Tの種タンクに投入した。121℃で35分間、蒸気滅菌を行った。消毒後、培地の体積は10Tであった。冷却後、2Lの振盪フラスコ種培地をその中に接種し、その後、温度28±1℃、撹拌速度100rpmで、通気量0.8vvmにて、48時間培養した。
【0080】
〔(2) 発酵槽培地の製造および培養〕
発酵培地の処方は実施例5と同様であり、ただし、泡を消す薬剤として0.25%の消泡剤の添加を要した。発酵槽は70Tであり、供給材料の体積は55Tであった。消毒前のpHは7.2〜7.6であった。121℃で35分間、蒸気滅菌を行った。冷却後、約6Tの種タンク培地をその中に接種し、温度28±1℃で発酵させ、最低50rpmの撹拌速度で撹拌し、溶存酸素は35%以上であった。通気量は0.5vvmであり、14日間発酵培養し、その後、発酵槽を解放した。発酵後、実施例5に示すように発酵液をHPLCで測定した。ミルベマイシンA4の含量は1413mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量は3300mg/Lであると測定され、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の70%を占めた。
【0081】
〔実施例8: ミルベマイシンA3の製造〕
種培地の処方(g/L):酵母エキス5、ペプトン5、スクロース40、脱脂粉乳2、K
2HPO
4 0.5であり、消毒前のpHは7.0〜7.4であった。振盪フラスコの充填体積は250mLであり、三角フラスコは25mLであった。種培地を121℃で20分間滅菌した。実施例5の斜面から1×2cmの面積を有する菌塊片を掘り出して種瓶に接種し、28±1℃で45時間培養した。上記種培地の2.5mLを発酵培地に接種した(g/L):酵母エキスペースト10、糖蜜200、脱脂粉乳11、豆ケーキ粉末11、綿実ケーキ粉末11、K
2HPO
4 1、FeSO
4・7H
2O 0.1、ZnSO
4 0.02、CaCO
3 5、CuSO
4 0.05、Na
2MoO
4 0.5であった。振盪フラスコの充填体積は250mLであり、三角フラスコは30mLであった。121℃で20分間滅菌した。得られた混合物を、振盪機内にて温度28±1℃、250rpmで14日間振盪培養した。発酵後、実施例5に示すように発酵液をHPLCで測定した。発酵液中のミルベマイシンA4の含量は1054mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量は3000mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の74%を占めた。
【0082】
〔実施例9: ミルベマイシンA3の製造〕
実施例8に沿って種培地を製造および培養し、その後、種培地の2.5mLを発酵培地に接種した(g/L):ペプトン10、スクロース140、コーンパルプ10、大豆ケーキ粉末10、グルテン粉末15、K
2HPO
4 1、FeSO
4・7H
2O 0.1、ZnSO
4 0.02、CaCO
3 5、CuSO
4 0.05、Na
2MoO
4 0.5であった。振盪フラスコの充填体積は250mLであり、三角フラスコは30mLであった。121℃で20分間滅菌した。得られた混合物を、振盪機内にて温度28±1℃、250rpmで14日間振盪培養した。発酵後、実施例5に示すように発酵液をHPLCで測定した。発酵液中のミルベマイシンA4の含量は1146mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量は3100mg/Lであり、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の73%を占めた。
【0083】
〔比較例1: ミルベマイシン産生についての、本発明のストレプトマイセスHS7523と原始菌CGMCC No.7677との比較実験〕
(1)斜面、種、発酵培地、および培養条件は実施例5のものと同じであった。原始菌CGMCC No.7677を用いて、5組の平行発酵を行った。発酵後、実施例5に示すように発酵液をHPLCで測定した。ミルベマイシンA4の平均含量は748mg/Lであり、ミルベマイシンA3の平均含量は251mg/Lであると測定され、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の25%を占めた。
【0084】
(2)斜面、種、発酵培地、および培養条件は実施例5のものと同じであった。本発明のストレプトマイセスHS7523を用いて、5組の平行発酵を行った。発酵後、発酵液をHPLCで測定した。ミルベマイシンA4の平均含量は1114mg/Lであり、ミルベマイシンA3の平均含量は3012mg/Lであると測定され、ミルベマイシンA3の含量が、A3およびA4の総含量の73%を占めた。