(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6550165
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】振動出力システム
(51)【国際特許分類】
H04R 1/44 20060101AFI20190711BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20190711BHJP
A47K 3/10 20060101ALI20190711BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20190711BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
H04R1/44 310
H04R1/00 311
H04R1/00 310F
A47K3/10
A47K3/00 Z
A61H23/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-81502(P2018-81502)
(22)【出願日】2018年4月20日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−195720(JP,A)
【文献】
特開2005−211181(JP,A)
【文献】
特開2008−160378(JP,A)
【文献】
特開2015−157004(JP,A)
【文献】
特開2006−128970(JP,A)
【文献】
特開2001−070388(JP,A)
【文献】
実開平05−091090(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/44
A47K 3/00
A47K 3/10
A61H 23/02
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を振動に変換する振動体を用いて振動を出力する振動出力装置と、防水構造を有し、前記振動出力装置を収容する防水容器と、
を具備し、
前記振動出力装置が収容された前記防水容器は、全体として比重が1を超え、
前記防水容器と前記振動出力装置の少なくとも一方が、前記振動体を前記防水容器の底面に密着させて固定するための固定手段を有することを特徴とする振動出力システム。
【請求項2】
前記固定手段は、少なくとも前記防水容器と前記振動体との間に設けられる粘着剤を有することを特徴とする請求項1記載の振動出力システム。
【請求項3】
前記固定手段は、少なくとも前記振動出力装置の上部と前記防水容器との間に設けられ、前記振動出力装置を押さえる押さえ部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動出力システム。
【請求項4】
前記押さえ部材は、弾性体であることを特徴とする請求項3に記載の振動出力システム。
【請求項5】
前記振動出力装置は、前記振動出力装置を操作するための操作部を備え、
前記防水容器は、前記操作部に対応する部位が、弾性部材で形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動出力システム。
【請求項6】
前記振動出力装置は、前記振動出力装置を操作するための操作部を備え、
前記防水容器は、前記操作部に対応する部位が、弾性部材で形成され、
前記弾性部材と前記弾性体とが一体で構成されることを特徴とする請求項4に記載の振動出力システム。
【請求項7】
前記防水容器の下面であって、前記振動体と異なる位置に、脚部が形成され、前記脚部によって、前記防水容器の設置面と前記防水容器の下面との間に隙間を形成可能であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動出力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴槽などの水中で使用することが可能な振動出力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、浴槽に浸かりながら音楽等を楽しみたいという要望があり、防水が施されたスピーカが提案されている。しかし、単に浴室に防水スピーカを配置したのみでは、浴室内で音楽等を聴くことは可能であるが、使用者のより高い満足感を得ることができなかった。
【0003】
これに対し、浴槽にも水中スピーカを取り付けた入浴時用音楽体感システムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−80269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の入浴時用音楽体感システムは、いわゆる水中スピーカを用いたものであり、通常のスピーカを防水性の部材の内部に封入したものである。しかし、従来の水中スピーカは、確かに水中へ音を伝えることは可能であるが、スピーカから発した音が、防水部材の内部の空気層を介して水中に振動を伝えるものであるため、水中に振動が伝わるまでに振動が大きく減衰し、実際には、水中で十分にクリアな音を発することができるものではない。
【0006】
また、技術常識として、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信は、水中には届かないため、例えば水中のわずか数十センチ程度の深さに対しても適用することができない。このため、特許文献1のように、配線が必要であり、特に、浴室や浴槽の大掛かりな工事が必要であるため気軽に実施することはできない。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、水中で気軽に利用することが可能な振動出力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明は、電気信号を振動に変換する振動体を用いて振動を出力する振動出力装置と、防水構造を有し、前記振動出力装置を収容する防水容器と、を具備し、前記振動出力装置が収容された前記防水容器は、全体として比重が1を超え、前記防水容器と前記振動出力装置の少なくとも一方が、前記振動体を前記防水容器の底面に密着させて固定するための固定手段を有することを特徴とする振動出力システムである。
【0009】
前記固定手段は、少なくとも前記防水容器と前記振動体との間に設けられる粘着剤を有してもよい。
【0010】
前記固定手段は、少なくとも前記振動出力装置の上部と前記防水容器との間に設けられ、前記振動出力装置を押さえる押さえ部材を有してもよい。
【0011】
前記押さえ部材は、弾性体であることが望ましい。
【0012】
前記振動出力装置は、振動出力装置を操作するための操作部を備え、前記防水容器は、前記操作部に対応する部位が、弾性部材で形成されてもよい。
【0013】
前記振動出力装置は、振動出力装置を操作するための操作部を備え、前記防水容器は、前記操作部に対応する部位が、弾性部材で形成され、前記弾性部材と前記弾性体とが一体で構成されてもよい。
【0014】
前記防水容器の下面であって、前記振動体と異なる位置に、脚部が形成され、前記脚部によって、前記防水容器の設置面と前記防水容器の下面との間に隙間を形成可能であってもよい。
【0015】
本発明によれば、電気信号を振動に変換する振動体を用いて振動を出力する振動出力装置を用いるため、振動体によって対象物を直接振動させることで対象物へ音を伝えることができる。すなわち、いわゆる振動スピーカが用いられるため、効率よく対象物全体から音を発生させ、対象物に接する水へも音を伝えることができる。
【0016】
このように、浴槽全体をスピーカとして機能させることで、浴槽と接触する水へも、クリアな音を伝えることができる。このため、浴槽に入っている使用者は、体全体で音楽を楽しむことができ、高い満足感とリラックス効果を期待することができる。また、使用者は、浴槽内の水や浴槽と接触するため、例えば難聴者なども、音楽を楽しむことができる。例えば、使用者が頭を浴槽に接触させれば、頭蓋骨への骨伝導によって音を聞くことができる。
【0017】
特に、振動出力システムは、全体として比重が1を超えるため、自重で浴槽の底面に沈降し、浴槽の底面へ振動を伝えることができる。このため、浴槽や浴室への工事は不要である。
【0018】
なお、前述したように、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信は、水中には届かないため、例えば水中のわずか数十センチ程度の深さに対しても適用することができない。しかし、振動出力システムは浴槽の底面上に配置されるため、浴槽外部からの電気信号は、浴槽の底面を介して振動出力システムへ伝わる。このため、振動出力システムには、浴槽外部の端末から音楽データを無線で送信することもできる。このため、配線等も不要である。
【0019】
なお、効率よく振動を対象物に伝えるためには、防水容器の底面に振動出力装置を確実に密着させて固定する必要がある。この固定手段として、防水容器と振動体との間に粘着剤を設けることで、容易に振動出力装置を防水容器の底面に密着させた状態で固定することができる。
【0020】
また、固定手段として、振動出力装置の上部と防水容器との間に押さえ部材を配置することで、防水容器の底面に密着させた状態で固定することができる。この際、押さえ部材が弾性体であれば、振動出力装置の振動を止めることなく、振動出力装置を防水容器内に固定することができる。
【0021】
また、振動出力装置の一部に、振動出力装置を操作するための操作部が配置される場合において、防水容器の操作部に対応する部位が、弾性部材で形成されれば、防水容器の外部から、容易に操作部を操作することができる。この際、操作部に対応する部位の弾性部材と、押さえ部材としての弾性体とを一体で形成することもできる。
【0022】
また、防水容器の下面であって、振動体と異なる位置に脚部が形成されれば、脚部によって、防水容器の設置面と防水容器の下面との間に隙間を形成することができる。すなわち、設置面と防水容器とが直接接触しないようにすることができる。このため、防水容器と設置面との間のビビリ音等の発生を抑制することができる。なお、この場合でも、防水容器の設置面と防水容器の下面との間には空気層が存在せず、水で充填されているため、振動の減衰が小さく、設置面を含む対象物に効率よく振動を伝えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水中で気軽に利用することが可能な振動出力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】振動出力システム1の使用状態を示す概略図。
【
図3】(a)は振動出力システム1aの断面概略図、(b)は振動出力システム1aの平面概略図。
【
図5】(a)は振動出力システム1cの気中での使用状態を示す断面概略図、(b)は振動出力システム1cの水中での使用状態を示す断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、振動出力システム1の断面概略図である。振動出力システム1は、主に、振動出力装置3と、防水容器11等から構成される。
【0026】
防水容器11は、上蓋15と下蓋17とからなり、開閉可能である。上蓋15と下蓋17との間には、シール部材13が配置され、図示を省略したバックル等で固定することで、上蓋15と下蓋17との隙間からの水の浸入を防止することができる。すなわち、防水容器11は、防水構造を有する。防水容器11の材質は特に限定されないが、例えば、ある程度の剛性を有する硬質樹脂を適用することができる。
【0027】
振動出力装置3の下方には、振動体5が露出する。振動出力装置3は、音響電気信号などの電気信号を振動に変換して振動体5を振動させる。すなわち、振動出力装置3は、振動体5を用いて振動を出力することが可能な、いわゆる振動スピーカである。
【0028】
振動出力装置3は、防水容器11の内部に収容される。この際、振動体5は、防水容器11の底面に、シリコンゲルなどの粘着剤7によって密着する。すなわち、粘着剤7は、振動体5を防水容器11の底面に密着させて、振動出力装置3を防水容器11に固定する固定手段として機能する。
【0029】
また、振動出力装置3の上部と、防水容器11の上蓋15の下面との間には、押さえ部材9が設けられる。押さえ部材9は、振動出力装置3を上方から押さえる。すなわち、押さえ部材9は、振動体5を防水容器11の底面に密着させて、振動出力装置3を防水容器11に固定する固定手段として機能する。
【0030】
なお、押さえ部材9としては、ゴムやスポンジなどの弾性体であることが望ましい。押さえ部材9を弾性体で構成することで、振動出力装置3を上方から押さえつけた際に、振動体5の振動が許容され、振動体5の振動の妨げとなることがない。
【0031】
本実施形態では、振動体5を防水容器11の底面に密着させて、振動出力装置3を防水容器11に固定するための固定手段として、粘着剤7と押さえ部材9を併用する例を示すが、固定手段としては、いずれか一方であってもよい。また、他の固定手段によって、振動体5を防水容器11の底面に密着させて、振動出力装置3を防水容器11に固定してもよい。また、固定手段としては、振動出力装置3に設けてもよく、防水容器11に設けてもよい。
【0032】
なお、振動出力装置3は、防水容器11に対して着脱可能とすることができる。このようにすることで、気中では、振動出力装置3を防水容器11から取り出して使用することができる。
【0033】
次に、振動出力システム1の使用方法について説明する。
図2は、振動出力システム1の使用状態を示す概略図である。振動出力システム1は、例えば、浴槽21で用いられる。なお、振動出力システム1は、浴槽21以外でも、水槽やプールなどの水中において使用可能である。
【0034】
振動出力システム1は、浴槽21の底に沈められて使用される。すなわち、振動出力システム1(振動出力装置3が収容された防水容器11)は、全体として比重が1を超える。また、振動出力システム1は、振動体5が下方になるように、浴槽21の底に沈められる。すなわち、防水容器11の下面が浴槽21に接触する。
【0035】
本実施形態では、浴槽21の外部に、端末19が配置される。端末19は、例えば音楽再生端末や、携帯電話等であって、内部に、音楽データを記憶する記憶部と、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うための通信部を内蔵し、必要に応じて防水構造を有するものである。したがって、使用者は、端末19を操作することで、音楽の選択等を行うことができる。
【0036】
前述したように、振動出力システム1が浴槽21の底に沈められた状態であれば、浴槽21の底面を介して、振動出力システム1と端末19との無線通信を行うことが可能である。すなわち、振動出力システム1の内部には、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うための通信部が内蔵される。なお、振動出力システム1自体に音楽データが記憶されている場合には、通信部は必ずしも必要ではない。
【0037】
前述したように、振動体5の振動は、防水容器11を介して、浴槽21に伝達される。したがって、浴槽21は。全体が振動してスピーカとなる。浴槽21に伝わった振動の一部は、浴槽21内の水(湯を含む)に伝わる。したがって、振動(音)が水中を伝播する。
【0038】
なお、防水容器11の下面であって、振動体5に対応する部位は平坦であることが望ましい。このようにすることで、振動体5の振動を効率よく浴槽21に伝達することができる。また、防水容器11の下面に、滑り止めを設けてもよい。このようにすることで、振動出力システム1が浴槽21内で動くことが抑制される。
【0039】
このように、浴槽21内の水中に浸かっている使用者は、浴槽21および周囲の水からの振動(音)を感じることができる。すなわち、耳からのみではなく体全体で音楽を楽しむことができる。
【0040】
以上、第1の実施形態によれば、振動出力装置3を防水容器11に収容した際に、振動出力装置3が防水容器11内に固定されているため、防水容器11内で振動出力装置3が動くことがない。また、振動体5を防水容器11の底面に密着させることで、浴槽21および浴槽21内の水を効率よく振動させることができる。
【0041】
また、振動出力システム1は比重が1を超えるため、浴槽21内に沈めて、容易に浴槽21の底面に設置することができる。このため、振動出力システム1を浴槽21に固定する必要がなく、また、無線通信を利用することもできる。
【0042】
また、従来のような空気振動を発するスピーカと異なり、振動体5によって浴槽21の全体を振動させることができるため、使用者は、体全体で音楽を楽しむことができる。また、難聴者であっても、例えば浴槽21に頭をつければ、浴槽21が骨伝導スピーカとして機能し、音楽を聴くことも可能である。
【0043】
次に、第2の実施形態について説明する。
図3(a)は、振動出力システム1aの断面概略図であり、
図3(b)は、振動出力システム1aの平面概略図である。なお、以下の説明において、振動出力システム1と同一の機能を奏する構成については、
図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
振動出力システム1aは、振動出力システム1とほぼ同様の構成であるが、振動出力装置3の上部に、振動出力装置3を操作するための操作部25が配置される点で異なる。操作部25は、例えば、振動出力装置3のボリュームやオン/オフの切り替えなどを行うボタンである。
【0045】
前述したように、防水容器11は、例えば硬質樹脂で形成されるが、操作部25に対応する部位は弾性部材23で構成される。弾性部材23は、周囲の樹脂よりも軟質な、例えば熱可塑性エラストマーやゴム等の軟質樹脂である。操作部25に対応する部位の弾性部材23を押圧することで、防水容器11の外側から操作部25を操作することができる。なお、弾性部材23が透明であれば、操作部25を容易に視認することができる。また、弾性部材23は透明でなくてもよく、この場合には、弾性部材23の外面に操作部25の位置を示すマークを形成してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、弾性部材23が、振動出力装置3を上方から押さえる押さえ部材としても機能を有している。すなわち、弾性部材23と、前述した押さえ部材9(
図1参照)を構成する弾性体とが一体で構成される。このように、振動出力装置3の上部に操作部25が配置される場合には、弾性部材23を押さえ部材9として機能させることもできる。
【0047】
なお、操作部25に対応する部位を弾性部材23で構成し、操作部25以外の部位に、押さえ部材9を別体で配置してもよい。また、操作部25は、振動出力装置3の上部に配置されなくてもよい。例えば、操作部25が振動出力装置3の側面に配置される場合には、弾性部材23は、操作部25に対応した防水容器11の側面に配置すればよい。
【0048】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、振動出力装置3に操作部25が設けられ、防水容器11の操作部25に対応する部位を弾性部材23で構成することで、防水容器11の外部から振動出力装置3を操作することができる。
【0049】
次に、第3の実施形態について説明する。
図4は、振動出力システム1bの使用状態における断面概略図である。振動出力システム1bは、振動出力システム1とほぼ同様の構成であるが、防水容器11の下面に突起状の脚部27が形成される点で異なる。
【0050】
脚部27は、防水容器11の下面に突出し、振動体5と異なる位置の3カ所以上に形成される。したがって、振動出力システム1bを浴槽21に沈めると、脚部27によって、防水容器11の設置面である浴槽21の表面と、防水容器11の下面との間に隙間が形成される。すなわち、前述した振動出力システム1では、振動体5に対応する防水容器11の下面と浴槽21とが略面接触させたが、本実施形態の振動出力システム1bでは、振動体5に対応する防水容器11の下面は、浴槽21とは接触しない。
【0051】
前述したように、振動出力システム1は、全体として比重が1を超えるため、水中に沈む。しかし、振動出力システム1には浮力が働くため、自重による振動出力システム1と浴槽21との接触部における押圧力は気中と比べて小さくなる。このため、防水容器11の底面の振動を浴槽21の接地面が吸収することができずに、振動体5の振動によって、浴槽21と防水容器11との間が細かく接触と非接触とを繰り返す、いわゆるビビリ音が発生するおそれがある。
【0052】
これに対し、振動出力システム1bは、浴槽21と防水容器11との間に隙間が形成されているため、両者が接触することがなく、いわゆるビビリ音の発生を抑制することができる。
【0053】
なお、通常、振動体によって対象物を振動させるような、いわゆる振動スピーカは、対象物と接触して密着していることで、効率よく振動を伝えることができる。このため、振動体と対象物との間に隙間をあけることは望ましくない。一方、振動出力システム1bにおいては、振動体5は防水容器11と密着しており、防水容器11と浴槽21の表面との間には、隙間は生じているものの、空気層は存在せず、水が充填され、水の膜が形成される。このため、空気層と比較して振動の減衰が小さく、多少の隙間であれば、振動体5の振動を浴槽21へ効率よく伝達することができる。
【0054】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態等と同様の効果を得ることができる。また、防水容器11の下面であって、振動体5と異なる位置に脚部27を設けることで、対象物と防水容器11との間の、いわゆるビビリ音の発生を抑制することができる。
【0055】
なお、振動出力システム1bのように、脚部27は、防水容器11(下蓋17)と一体または別体で、硬質樹脂等の硬い材質で構成してもよいが、柔軟な材質や、弾性部材を用いてもよい。
図5(a)は振動出力システム1cの気中での使用状態を示す断面概略図であり、
図5(b)は振動出力システム1cの水中での使用状態を示す断面概略図である。
【0056】
振動出力システム1cは、防水容器11の下面であって、振動体5とは異なる位置に、脚部27aが設けられる。脚部27aは弾性体であって、例えば、図示したようなばねであってもよく、ゴムやスポンジなどであってもよい。
【0057】
図5(a)に示すように、気中において振動出力システム1cを設置面21aに載置すると、弾性部材である脚部27aは、自重によって潰れて、防水容器11の下面が設置面21aと接触する。このため、振動体5の振動を、空気層を介さずに設置面21aに伝達させることができる。すなわち、この場合には、設置面21aの全体をスピーカとして機能させることができる。
【0058】
一方、
図5(b)に示すように、水中において振動出力システム1cを浴槽21に載置すると、弾性部材である脚部27aは、自重によって潰れるものの、浮力によって、その潰れ量は、気中の場合よりも小さくなる。このため、防水容器11の下面と浴槽21との間に隙間を形成することができる。
【0059】
このように、脚部27aを構成する弾性部材の圧縮弾性率を、気中においては、振動出力システム1cの質量を支持することができずに、防水容器11の下面が設置面21aに接触するまで潰れ、水中では、振動出力システム1cを支持することが可能であるように設定することで、気中でも水中でも適切な条件で使用することができる。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、各実施形態における各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b、1c………振動出力システム
3………振動出力装置
5………振動体
7………粘着剤
9………押さえ部材
11………防水容器
13………シール部材
15………上蓋
17………下蓋
19………端末
21………浴槽
21a………設置面
23………弾性部材
25………操作部
27、27a………脚部
【要約】
【課題】 水中で気軽に利用することが可能な振動出力システムを提供する。
【解決手段】 防水容器11は、防水構造を有する。振動出力装置3の下方には、振動体5が露出する。振動出力装置3は、音響電気信号などの電気信号を振動に変換して振動体5を振動させる。すなわち、振動出力装置3は、振動体5を用いて振動を出力することが可能な、いわゆる振動スピーカである。振動出力装置3は、防水容器11の内部に収容される。この際、振動体5は、防水容器11の底面に、シリコンゲルなどの粘着剤7によって密着する。すなわち、粘着剤7は、振動体5を防水容器11の底面に密着させて、振動出力装置3を防水容器11に固定する固定手段として機能する。
【選択図】
図1