(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所望の周波数の発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路に前記発振信号を与えた時の出力信号を、直接または間接的に取り出し、当該出力信号の振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路とをCPUによって制御して対象物検出センサを実現するためのセンサプログラムであって、CPUを、
測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段として機能させるセンサプログラムであって、
前記周波数設定手段は、スイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで発振信号の周波数を離散的に変化させ、スイープを複数回実行し、所定回数連続して検出信号の振幅が最大または最小となる周波数が同一であった場合に、当該周波数を選択して設定周波数とすることを特徴とするセンサプログラムであって、
前記周波数設定手段は、発振信号の周波数のスイープ中において、今回取得した検出信号の振幅がスイープ開始からの最大値または最小値であれば、遅い速度で発振信号の周波数を変化させ、最大値または最小値でなければ速い速度で発振信号の周波数を変化させることを特徴とするセンサプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような従来の静電容量式レベルセンサにおいては、設置時の調整が容易ではなかった。すなわち、テスタとドライバが必要であり、また、その調整には熟練が必要であった。特に、大型のタンクなどに取り付けられる場合や、狭い場所に取り付けられるような場合には、高所や閉所による作業となって、なおさらであった。
【0010】
また、周囲環境の温度変化によって特性が変化し、共振状態がずれてしまうことがあった。従来は、逆の温度特性を持つコンデンサなどを温度補償用に用いて、温度変化に対応するようにしていた。しかし、理想的な逆特性を持つ素子を探し出すことは困難であった。
【0011】
このような各問題は、静電容量式センサにとどまらず、誘導式などの他の方式のセンサにおいても同様に生じていた。また、レベルセンサに留まらず、近接センサなどにおいても同様であった。
【0012】
この発明は上記のような問題点の少なくともいずれかを解決して、調整が容易な対象物検出センサまたは検出精度のよい対象物検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の独立して適用可能な特徴を以下に列挙する。
【0014】
(1)(2)この発明に係る対象物検出センサは、高周波発振回路からの高周波クロックを計数し、所定数のクロックを計数するごとに出力を変化させて分周し、所望の周波数の矩形発振信号を出力するカウンタと、前記矩形発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、前記矩形発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路と、測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、前記カウンタの分周のための所定数を変化させて、矩形発振信号の周波数をスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように矩形発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを備えている。
【0015】
カウンタによる矩形発振信号を用いているので、分周数を変更することでその周波数を容易に制御でき、共振周波数と合致させることが容易である。
【0016】
(3)この発明に係る対象物検出センサは、カウンタは、第1の所定数での分周による周波数と、第1の所定数に隣接する第2の所定数での分周による周波数との間の周波数を実現するために、第1の所定数での分周による信号と、第2の所定数での分周による信号とを所定の比率で時間的に混在させて、矩形発振信号を出力し、周波数設定手段は、前記分周のための所定数と、前記混在の比率とに基づいて、周波数を変化させることを特徴としている。
【0017】
したがって、より細かく周波数を変更することができる。
【0018】
(15)(16)この発明に係る対象物検出センサは、所望の周波数の発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、前記発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路と、測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを備え、
前記周波数設定手段は、前記初期設定の際に、i)検出信号がしきい値を超えなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を越えると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させて、検出信号の振幅が最大となるように発振信号の周波数を選択し、またはii)検出信号がしきい値を下まわらなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を下まわると前記第1の速度よりも遅い第2の速度で発振信号の周波数を変化させて、検出信号の振幅が最小となるように発振信号の周波数を選択することを特徴としている。
【0019】
したがって、検出回路による検出に時間を要する場合であっても、検出精度と設定速度を両立させることができる。
【0020】
(17)この発明に係る対象物検出センサは、周波数設定手段は、発振信号の周波数のスイープ中において、今回取得した検出信号の振幅がスイープ開始からの最大値または最小値であれば、第2の速度よりもさらに遅い第3の速度で発振信号の周波数を変化させることを特徴としている。
【0021】
したがって、さらに、検出精度と設定速度の両立を図ることができる。
【0022】
(27)(28)この発明に係る対象物検出センサは、所望の周波数の発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、前記発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路と、測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを備え、前記周波数設定手段は、前記初期設定の際に、高い周波数から低い周波数へとスイープさせることを特徴としている。
【0023】
したがって、基本波による検出信号よりも高調波による検出信号が先に現れることがなく、精度の良い検出を行うことができる。
【0024】
(29)この発明に係る対象物検出センサは、発振信号は正弦波でない周期波形であることを特徴としている。
【0025】
このような高調波が生じやすい周期波形に対しても正確な検出を行うことができる。
【0026】
(37)(38)この発明に係る対象物検出センサは、所望の周波数の発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、前記発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路と、測定対象物が無い状態または有る状態において初期設定を行う際に、発振信号の周波数を変化させてスイープし、検出回路によって検出される検出信号の振幅が最大または最小となるように発振信号の周波数を選択して設定する周波数設定手段とを備え、前記周波数設定手段は、スイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで発振信号の周波数を離散的に変化させ、スイープを複数回実行し、所定回数連続して検出信号の振幅が最大または最小となる周波数が同一であった場合に、当該周波数を選択して設定周波数とすることを特徴としている。
【0027】
したがって、ノイズや揺らぎが生じた場合であっても、正確に周波数を設定することができる。
【0028】
(39)この発明に係る対象物検出センサは、周波数設定手段は、周波数ごとに検出信号を複数回取得し、その振幅の平均値を検出信号の振幅とすることを特徴としている。
【0029】
したがって、突発的なノイズが重畳した場合であっても、正確に周波数を設定することができる。
【0030】
(45)(46)この発明に係る対象物検出センサは、所望の周波数の発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号に結合され、測定対象物の有無によって共振周波数が変化する共振回路と、前記発振信号を与えた時の共振回路の出力信号を、直接または間接的に取り出し、その振幅に基づいて測定対象物の有無を検出する検出回路とを備えた静電容量センサであって、動作モードを表示するための発光部を複数連続して配置し、当該連続して配置した発光部によって検出信号のレベルを表示するようにしたことを特徴としている。
【0031】
したがって、動作モード表示のための発光部を検出信号のレベル表示とすることができ、簡素な構成の発光部によって、直感的に分かりやすいレベル表示を行うことができる。
【0032】
(47)この発明に係る対象物検出センサは、連続して配置された発光部において、前記検出信号のレベルと異なる表示形態にて、検出回路の出力をオンとするしきい値を併せて表示するようにしたことを特徴としている。
【0033】
したがって、しきい値も併せて表示して、検出マージンを容易に知ることができる。
【0034】
(48)この発明に係る対象物検出センサは、検出信号のレベルは連続点灯によって表示し、しきい値は点滅によって表示することを特徴としている。
【0035】
したがって、両者を容易に区別することができる。
【0036】
「周波数設定手段」とは、少なくとも発振信号の周波数を変動させて検出信号の振幅を取得し周波数を設定する機能を有するものをいい、実施形態においては、ステップS1〜S11がこれに対応する。
【0037】
「温度補償手段」とは、少なくとも温度変化による共振周波数の変動に追従して共振状態を保つための機能を有するものをいい、実施形態においてはステップS41、S42がこれに対応する。
【0038】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1.第1の実施形態
1.1機能構成
図1に、この発明の一実施形態による対象物検出センサの機能構成図を示す。カウンタ20は、高周波クロックを計数して分周し、矩形発振信号を出力する。共振回路26は、対象物28が有る状態と無い状態において、静電容量やインダクタンスなどが変化し、その共振周波数を変化させる。また、共振回路26は、矩形発振信号に結合されている。
【0041】
検出回路24は、前記矩形発振信号が与えられた共振回路26の出力信号を取得し、その振幅に基づいて対象物の有無を判断する。したがって、対象物が有るか無いかを検出することができる。
【0042】
この対象物検出センサを設置する際には、対象物28が無い(あるいは有る)状態において、矩形発振信号の周波数と共振回路の共振周波数を合致させておく必要がある。この実施形態では、次のようにしてこの処理を行うようにしている。周波数設定手段22によって、カウンタの分周数を徐々に変化させて、矩形発振信号の周波数をスイープさせる。周波数設定手段22は、このように矩形発振信号の周波数を変化させた時の検出信号の振幅を取得する。その振幅が最大(もしくは最小)となった時の周波数に、矩形発振信号を設定する。
【0043】
このようにして、矩形発振信号の周波数と共振回路の共振周波数を自動的に合致するようにしている。
【0044】
1.2外観およびハードウエア構成
図2に、この発明の一実施形態による対象物検出センサの断面図を示す。この実施形態では、静電容量式レベルセンサとして構成した例を示している。
【0045】
筐体30の内部には、制御回路32が収納されている。筐体30から突出するように、測定電極36とアース電極34が設けられている。測定電極36は先端部において円柱状に形成され、根元部は細く形成されて、制御回路32に接続されている。アース電極34は、測定電極36の根元部分において円筒状に設けられており、絶縁体44,46によって測定電極36と絶縁されている。アース電極34は、制御回路32のアースに接続されている。
【0046】
筐体30の後端部には、LED(図示せず)を配置した表示部38が設けられている。モードの切替や調整の際に、表示部38に状態を表示することで、作業者を支援するものである。表示部38は、通常は蓋40によって覆われており外部からは見えないようになっている。必要時には、蓋40を開くことで表示部38を見ることができる。
【0047】
図3に、静電容量式レベルセンサ1の取付例を示す。収納タンク80には、液体82が収納されている。弁(図示せず)を開くと液体82を収納タンク80から取り出すことができる。また、収納タンク80に液体82を供給するための供給路(図示せず)が設けられており、液体82を収納タンク80に供給することができる。この際、液体82が静電容量式レベルセンサ1の位置に達すると、静電容量式レベルセンサ1がこれを検知して、液体82の供給を停止する。
【0048】
このように、所定レベルまで液体82が達したかどうかを、静電容量式レベルセンサ1によって検出することができる。
【0049】
図4に、制御回路32およびその周辺のハードウエア構成を示す。アース電極34、測定電極36は、制御回路32の共振トランスLの1次側のインダクタンスL1に接続されている。アース電極34、測定電極36は上記のように、近接して配置されているので、容量成分C0を有している。この実施形態では、容量C0とインダクタンスL1によって、共振回路が構成される。
【0050】
共振トランスLの2次側のインダクタンスL2には、カウンタ部56からの矩形発振信号が、ドライバ52、結合コンデンサ50を介して与えられる。カウンタ部56は、CPU60によって制御され、矩形発振信号の周波数を変化させることができる。
【0051】
共振トランスLの2次側には、共振回路の信号を取り出すためのインダクタンスL3も設けられている。取り出された信号は、検波回路54によって振幅が直流化され、検波信号とされる。検波信号は、A/Dコンバータ55によってディジタル信号にされ、I/Oポート64を介して、CPU60が取得できるようになっている。この実施形態では、共振トランスLを介して共振回路の信号を間接的に取り出しているが、共振回路から直接取り出すようにしてもよい。
【0052】
CPU60には、メモリ62、I/Oポート64、フラッシュメモリ66が接続されている。フラッシュメモリ66には、制御プログラム68が記録されている。
【0053】
初期設定の際、CPU60は、この制御プログラム68にしたがって、液体82が静電容量式レベルセンサ1に達していない状態において、矩形発振信号の周波数を自動的に決定する。すなわち、CPU60は、カウンタ部56を制御して矩形発振信号の周波数を変化させて検波信号を取得し、共振回路の共振周波数に合致するように矩形発振信号の周波数を選択する。
【0054】
使用時には、CPU60は、制御プログラム68にしたがって、検波信号を取得し、その振幅に基づいて、液体82が静電容量式レベルセンサ1のレベルに達したかどうかを判断する。すなわち、液体82が測定電極36とアース電極34まで達していないと、初期設定の際の共振状態が保たれており、検波信号の振幅は大きいものとなる。しかし、液体82が測定電極36とアース電極34まで達すると、液体82によって容量成分C0が変化して共振状態が崩れ、検波信号の振幅が小さくなる。
【0055】
CPU60は、この変化を検出することで、液体82が所定のレベルに達したことを検出し、出力リレー61の状態を変化させる。
【0056】
また、CPU60は、I/Oポート64を介して、LED58の点灯を制御する。LED58により、静電容量式レベルセンサ1の現在のモードや、検波信号の振幅などを表示するようにしている。
【0057】
1.3初期設定時の処理
図5に、制御プログラム68の初期設定処理のフローチャートを示す。上述のように、静電容量式レベルセンサ1を使用する際には、液体82が無い状態(静電容量式レベルセンサ1に達していない状態)にて、共振回路の共振周波数と矩形発振信号の発振周波数とを合致させる必要がある。これを初期設定と呼んでいる。
【0058】
使用者が入力器(入力ボタンなど)59を操作して、初期設定モードにすると、CPU60は初期設定処理を開始する。
【0059】
まず、CPU60は、カウンタ部56に与える分周比Nを初期値に設定する(ステップS3)。ここで、カウンタ部56の詳細を、
図6に示す。カウンタ部56は、クロック発振回路55からのクロックを受ける。この実施形態では、CPU60の動作クロック(32MHz)を用いている。安定性の点からは、水晶振動子によって生成されたクロックを用いることが好ましい。なお、クロックの周波数が高いほど、より精度高く発振周波数を調整することができる。
【0060】
カウンタ562は、与えられたクロックを計数する。計数値は周期イベント設定レジスタ564に与えられる。周期イベント設定レジスタ564は、カウンタ562の計数値が、CPU60によって設定された分周比Nの半分(N/2)に等しくなると、周期イベント信号を出力する。この周期イベント信号は、カウンタ562のリセット入力に与えられている。したがって、周期イベント設定レジスタ564からは、CPU60によって設定された分周数N/2のクロックごとに、周期イベント信号が出力されることになる。
【0061】
周期イベント回路566は、周期イベント信号を受け取って、その出力状態を変更する(HからL、LからH)。したがって、周期イベント回路566からは、クロックがCPU60によって設定された分周数Nによって分周された矩形発振信号が出力されることになる。
【0062】
次に、CPU60は、検波回路54からの検波信号を取り込み、その振幅値を取得する(ステップS4)。この実施形態では、連続して所定回数(この実施形態では5回)振幅値を取り込み、これを平均して検波信号の振幅値としている。これにより、瞬発的なノイズが重畳した場合であっても、その影響を平均化して小さくすることができる。
【0063】
CPU60は、分周比Nを変更して矩形発振信号の周波数をスイープし(この実施形態では、低い周波数から高い周波数にスイープさせている)、各周波数における検波信号の振幅値を取り込む。
【0064】
CPU60は、取得した検波信号がこれまでの最大振幅値を超えていれば(ステップS5)、当該最大振幅値と分周比(周波数)をメモリ62に記録して更新する(ステップS6)。したがって、全ての周波数(この実施形態では、500KHz〜1.7MHz)をスイープすると、メモリ62には、最大振幅値とこの時の分周比Nmaxが記録されることになる。
【0065】
図7に、共振回路の周波数特性を示す。矩形発振信号の周波数をスイープすることで、検波信号の最大振幅を見いだし、この時の周波数を共振周波数として検出することができる。CPU60は、分周比Nmax(見いだした共振周波数)を設定候補として、メモリ62に記録する(ステップS8)。
【0066】
この実施形態では、CPU60は、上記のスイープ処理を再度実施し、同様にして設定候補としての分周比Nmaxを再度決定する。そして、前回の設定候補である分周比Nmaxと今回の設定候補である分周比Nmaxが等しければ、これを設定分周比として決定する(ステップS11)。したがって、カウンタ部56は、共振回路の共振周波数にて矩形発振信号を出力するように設定される。
【0067】
なお、前回の分周比Nmaxと今回の分周比Nmaxが等しくなければ、2回連続して分周比Nmaxが等しくなるまで、スイープ処理を繰り返す(ステップS9)。
【0068】
この実施形態では、矩形発振信号の周波数を離散的に変更しているので、前回の発振周波数(分周比)と今回の発振周波数(分周比)が同じであるかを明確に判断することができる。
【0069】
以上のようにして、CPU60による初期設定処理が行われる。使用者は、入力器59を押して初期設定モードにするだけでよく、煩雑な操作や微妙な調整を行う必要がない。
【0070】
1.4動作時の処理
図8に、制御プログラム68の実動作処理(動作モード)のフローチャートを示す。
【0071】
使用者が、入力器59を操作することにより、動作モードに切り替えることができる。
【0072】
動作モードにおいて、CPU60は、検波信号の振幅を取得する(ステップS51)。
図3に示すように、液体82が静電容量式レベルセンサ1の電極に達していない状態にて、前記の初期設定が行われている。したがって、液体82が静電容量式レベルセンサ1まで達していなければ、共振回路の共振周波数と矩形発振信号の発振周波数が合致しており、検波信号の振幅は最大の状態となっている。
【0073】
次に、CPU62は、取得した検波信号の振幅が、予め設定された検出しきい値を下回ったかどうかを判断する(ステップS52)。検出しきい値は、たとえば、最大振幅の50%に設定することができる。前述のように、液体82が静電容量式レベルセンサ1まで達していなければ、検波信号の振幅は検出しきい値を超えているので、CPU60は、再び、ステップ51に戻って、検波信号の取得、しきい値との比較を繰り返す。
【0074】
液体82が静電容量式レベルセンサ1に達すると、共振回路の容量が変化し共振周波数が変化する。したがって、検波信号の振幅が低下する。CPU60は、検波信号の振幅が検出しきい値を下回ったと判断すると、出力リレー61の状態を変化させる(ステップS53)。したがって、これにより、液体82の液面が静電容量式レベルセンサ1に達したことを検知して、所定の処理(液体82の排出など)を行うことが可能となる。
【0075】
なお、検出しきい値は予め設定しておくことができ、高く設定(マージンを小さく設定)すると検出感度が良くなる一方、誤検出の可能性も増加する。低く設定(マージンを大きく設定)すると検出感度は落ちるものの、誤検出の可能性を小さくすることができる。
【0076】
また、出力リレー61の状態をどのように変化させるかについても、予め設定しておくことができる。初期状態においてオフとし、検出時にオンとするように設定したり、初期状態にオンとし、検出時にオフと設定することなどが可能である。
【0077】
これら設定内容は、初期設定時に、使用者が入力器59を操作することによって設定し、CPU60がフラッシュメモリ66に設定内容を記録する。
【0078】
1.5その他
(1)上記実施形態では、検出対象物として液体82を例として説明したが、検出可能な比誘電率や導電率を持つ物質であれば、液体の他、粉体、流体、これらの混合物等についても適用することができる。
【0079】
(2)上記実施形態では、検出対象物が静電容量式レベルセンサ1の電極を覆っていない状態にて初期設定を行い、検出対象物が静電容量式レベルセンサ1の電極を覆ったことを検出するようにしている。しかし、検出対象物が静電容量式レベルセンサ1の電極を覆っている状態にて初期設定を行い、検出対象物が静電容量式レベルセンサ1の電極を覆っていないことを検出するようにしてもよい。
【0080】
(3)上記実施形態では、静電容量式レベルセンサを例として説明したが、静電容量式の近接センサなど、他の静電容量センサにも適用することができる。
【0081】
(4)上記実施形態では、静電容量式のセンサについて説明したが、対象物によってインダクタンスが変化するセンサ、抵抗が変化するセンサ、これらが複合的に変化するセンサなど、共振周波数が変化することによって検出を行うセンサに適用することができる。
【0082】
(5)上記実施形態では、分周比を変えることによって矩形発振信号の周波数を変えるようにしている。矩形発振信号の周波数を、共振回路の共振周波数に精度良く合致させるためには、矩形発振信号の周波数を細かいステップで変更する必要がある。
【0083】
しかし、分周比のみで矩形発振信号の周波数を変えると、微細な周波数の変更が困難である。より細かいステップでの周波数変更を行うとすると、原クロック(
図6のクロック発振回路の出力)の周波数を高くする必要があり、しかも高速で処理可能なカウンタ部56が必要となる。センサの種類や使用状況によっては、このような高い周波数のクロックや高速処理可能なカウンタの使用が問題となる場合がある。
【0084】
このような場合、分周比を変えるだけでなく、分周比によって得られる隣接する周波数f1、f2の信号を時間的に混在させることによって、その中間的な周波数を実現するようにしてもよい。
【0085】
図9に、その例を示す。
図9Aでは、全ての周期において周波数f1としているので、矩形発振信号の周波数はf1となる。
図9Bでは、16回に1回だけ分周比を変えて、周波数f2としている。したがって、矩形発振信号の周波数は、(15・f1+f2)/16となる。同様に、
図9Cでは、16回に2回だけ分周比を変えて、周波数f2としている。したがって、矩形発振信号の周波数は、(14・f1+2・f2)/16となる。同様に、
図9Dでは、矩形発振信号の周波数は、(13・f1+3・f2)/16となる。
【0086】
このようにして、隣接する分周比における周波数f1とf2との間の中間的な周波数を実現することができる。上記では、できるだけ周波数f2が連続しないように混在させているが、どのように混在させるかは自由である。
【0087】
図10に、このような矩形発振信号の中間的な周波数を実現するためのカウンタ部56の例を示す。周期イベント設定レジスタ564は、カウンタ562の計数値が、CPU60によって設定された分周比Nの半分(N/2)に等しくなると、周期イベント信号を出力する。調整レジスタ568は、周期イベント設定レジスタ564の出力を計数し、所定数を計数すると桁上げ出力を周期イベント設定レジスタ564に与える。周期イベント設定レジスタ564は、桁上げ出力を受けた場合だけ、設定された分周比Nの半分(N/2)に1を加えた値に等しくなると、周期イベント信号を出力する。したがって、桁上げ出力を出す所定数をCPU60から制御することで、所望の中間的な周波数を実現することができる。
【0088】
(6)上記実施形態では、ステップS4において、検波信号を5回取得し平均値を算出するようにしている。しかし、取得した5回のうちの最大値、最小値を棄却して平均値を算出してもよい。あるいは、取得した5回のうちから、統計的な異常値を棄却して平均値を算出してもよい。
【0089】
なお、所定回数取得して平均値を算出するようにしてもよい。また、1回だけ取得してこれを検波信号の振幅値としてもよい。
【0090】
(7)上記実施形態では、分周比Nmaxが連続して一致した場合にこれを設定分周比として採用するようにしている。しかし、所定回数連続して一致した場合にこれを設定分周比として採用するようにしてもよい。
【0091】
また、複数回スイープを行い、最も多かった分周比を設定分周比として採用するようにしてもよい。
【0092】
さらに、スイープを1回だけ行って、この時の分周比Nmaxを設定分周比として採用するようにしてもよい。
【0093】
(7)上記実施形態では、初期設定の際に、低い周波数から高い周波数へとスイープしている。しかし、高い周波数から低い周波数へとスイープするようにしてもよい。
【0094】
(8)上記実施形態では、矩形発振信号を用いているが、周期性があるなら三角波、正弦波などを用いてもよい。
【0095】
(9)上記実施形態では、共振回路の共振時に検波信号が最大となるような構成としている。しかし、共振回路の共振時に検波信号が最小となるような構成の場合であっても、同様に適用することができる。
【0096】
(10)上記実施形態では、500Hz〜1.7MHzにわたってスイープを行っている。この範囲は、本件制御回路が実装される静電容量式レベルセンサ1の共振回路の共振周波数のバリエーション(電極の長さによって変動する)に応じて決定すればよい。
【0097】
(11)上記実施形態では、カウンタを用いて発振信号を生成している。しかし、周波数を変えることのできる発振器であればこれを用いることができる。
【0098】
(12)上記実施形態および変形例は、その本質に反しない限り、他の実施形態と組み合わせて実施可能である。
【0099】
2.第2の実施形態
2.1機能構成
図11に、第2の実施形態による対象物検出センサの機能構成図を示す。基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。ただし、この実施形態では、周波数設定手段22が周波数を変化させる速度を、状況によって変更するようにしている。
【0100】
これは以下のような理由によるものである。検出回路24によって共振回路の出力信号を検出するのに時間を要する場合がある。たとえば、検出回路24が検波のためのダイオードとコンデンサにて構成されている場合である。コンデンサに充放電を行うための時間が必要であり、このため、検出のための時間を要することになる。検出回路24の検出時間にあわせて周波数をスイープすると、初期設定に時間を要することとなる。
【0101】
そこで、この実施形態では、検出回路の検出値が小さいうちは、スイープの速度を速くし、検出回路の検出値が大きくなると(共振点に近づくと)スイープの速度を遅くするようにしている。すなわち、周波数設定手段22は、検出信号がしきい値を超えなければ第1の速度で発振信号の周波数を変化させ、検出信号がしきい値を超えると第1の速度よりも遅い第2の速度で周波数を変化させるようにしている。
【0102】
以上のようにすることによって、精度良く設定周波数を決定しつつ処理速度の低下を防いでいる。
【0103】
2.2外観およびハードウエア構成
対象物検出センサを、静電容量式レベルセンサとして構成した場合の外観およびハードウエア構成は、
図2、
図3と同様である。カウンタ部56の詳細は、
図6に示すものと同様である。
【0104】
2.3初期設定時の処理
図12に、制御プログラム68の初期設定処理のフローチャートを示す。第1の実施形態における
図5と同じ処理には、同一のステップ番号を付している。
【0105】
使用者が入力器59を操作して、初期設定モードにすると、CPU60は初期設定処理を開始する。
【0106】
CPU60は、矩形発振信号の周波数を変化させる際の遅延時間を最小(この例では0)に設定する(ステップS10)。つまり、初期状態では高速にて矩形発振信号をスイープさせるようにしている。
【0107】
CPU60は、カウンタ部56に与える分周比Nを初期値に設定する(ステップS3)。したがって、カウンタ部56からは、クロックがCPU60によって設定された分周数Nによって分周された矩形発振信号が出力されることになる。なお、この実施形態では、高い周波数から低い周波数に向かうようにスイープを行うようにしている。
【0108】
次に、CPU60は、設定された遅延時間が経過したかどうかを判断する(ステップS11)。ここでは、遅延時間は0に設定されているので、遅延時間を設けずに次のステップS4の処理を行うことになる。
【0109】
ステップS4において、CPU60は、検波回路54からの検波信号を取り込み、その振幅値を取得する。この実施形態では、連続して所定回数(この実施形態では5回)振幅値を取り込み、これを平均して検波信号の振幅値としている。これにより、瞬発的なノイズが重畳した場合であっても、その影響を平均化して小さくすることができる。
【0110】
続いて、CPU60は、検波信号の振幅がしきい値を超えているかどうかを判断する(ステップS12)。
図13に、しきい値と検波信号との関係を示す。しきい値は、予想される検波信号のピーク値よりも十分低い値(1/5〜1/10程度)に設定することが好ましい。
【0111】
スイープ開始周波数は、更新周波数よりも高く設定されているので、スイープ開始時には検波信号はしきい値を下回っている。したがって、CPU60は、次の分周比をカウンタ部56に設定する(ステップS3)。そして、検波信号の振幅を取得し(ステップS4)、しきい値を超えているかどうかを判断する(ステップS12)。
【0112】
以上の処理を繰り返し、検波信号がしきい値を超えると(
図13の時点A)、CPU60は、遅延時間を中(この例では1ms)に設定する(ステップS13)。さらに、CPU60は、検波信号の振幅がこれまでの最大値を更新していれば(ステップS5)、遅延時間を最大(この例では100ms)に設定する(ステップS14)。ここでは、検波信号の振幅が最大値を更新しているので、遅延時間は最大に設定されることになる。
【0113】
続いて、CPU60は、現在の振幅を最大値として記録して更新し、現在の分周比を記録する(ステップS6)。
【0114】
以上のように、検波信号の振幅が最大値を更新している間(
図13の時点Aから時点Bまでの間)は、正確に振幅を取得するため遅延時間を最大(低速)にしてスイープを行う。
【0115】
矩形発振信号の周波数が共振周波数を下回ると、CPU60は、ステップS5からステップS7に進むので、遅延時間は中に設定されることになる。すなわち、
図13の時点Bから時点Cの間は、中速でスイープを行うことになる。この間は、最大値を更新していないので、共振周波数を通過したと判断できるからである。ただし、しきい値を超えているので、安全のため高速ではなく中速でスイープするようにしている。なお、この区間も中速ではなく、高速でスイープするようにしてもよい。
【0116】
CPU60は、さらにスイープを行い、検波信号の振幅がしきい値を下回ると、遅延時間を小に設定する(ステップS15)。したがって、高速にてスイープが行われることになる。
【0117】
CPU60が更にスイープを続けると、矩形発振信号の高調波成分によって検波信号の振幅が現れる部分がある(
図13の時点Dから時点E)。この実施形態では、制御の容易な矩形波を用いているので、発振周波数に対して高調波成分が生じる。高調波成分によって現れる検波信号の振幅は、本来の発振周波数による検波信号の振幅よりも小さい。したがって、振幅の最大値は更新されず、中速でスイープが行われることになる。
【0118】
CPU60が更にスイープを続けると、検波信号の振幅がしきい値を下回るので、CPU60は、高速でスイープを行う。そして、スイープ終了周波数に到達すると、スイープを終了する。
【0119】
このようにして1回目のスイープを終えた後の処理は、
図5のステップS8以下と同様である。すなわち、設定候補として得た分周比が2回連続して同じであれば、これを設定分周比として決定する。
【0120】
なお、上記では高い周波数から低い周波数へとスイープ処理を行っている。これは、
図15Aに示すように、低い周波数から高い周波数へとスイープ処理を行うと、高調波成分が先に現れて、この部分を低速でスイープすることになるからである。すなわち、
図14に示すような速度にてスイープが行われることになる。
【0121】
高調波成分について正確に判定しても無駄である。したがって、
図15Bに示すように高い周波数から低い周波数へとスイープ処理を行うことが好ましい。
【0122】
2.4動作時の処理
動作時の処理は、第1の実施形態と同様である。
【0123】
2.5その他
(1)上記実施形態では、分周比のみを変化させてスイープを行うようにしている。しかし、
図10に示すように、分周比によって得られる隣接する周波数f1、f2の信号を時間的に混在させることによって、その中間的な周波数を実現するようにしてもよい。
【0124】
(2)上記実施形態では、検波信号の振幅が最大値を更新している間は低速でスイープを行うようにしている。しかし、しきい値を超えれば低速、下回れば高速というようにしてスイープを行ってもよい。
【0125】
(3)上記実施形態および変形例は、その本質に反しない限り、他の実施形態と組み合わせて実施可能である。
【0126】
3.第3の実施形態
3.1機能構成
図16に、第3の実施形態による対象物検出センサの機能構成図を示す。初期設定時の処理は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様である。ただし、この実施形態では、動作時の周囲環境の温度変化による共振周波数の変動を補償する構成を採用している。
【0127】
測定電極36とアース電極34は、空気コンデンサとしてその静電容量C0が生じている(
図4参照)。空気は温度によって誘電率がほとんど変動しないので、この静電容量C0は温度変化があっても、ほぼ一定している。しかし、共振回路26に用いているインダクタンス(コイル)L1は、正の温度特性(温度上昇とともにインダクタンスが増加)を有している。このため、初期設定において矩形発振信号の周波数を共振回路の共振周波数に合致させたとしても、使用時の温度変化によってずれてしまう可能性がある。
【0128】
そこで、
図17に示すように、従来より、負の温度特性(温度上昇とともに静電容量が減少)を持つ補償コンデンサCcを電極の静電容量C0に対して並列に接続し、温度変化による共振周波数のずれを相殺するようにしている。
【0129】
しかしながら、測定電極36、アース電極34は、使用部位や用途によってその長さが異なっている。このため、電極の長さによって電極間の静電容量C0も異なったものとなる。電極が長い時には静電容量C0も大きくなり、短い時には静電容量C0も小さくなる。
【0130】
静電容量C0の大きさに併せて補償コンデンサCcを用意することが好ましいが、それでは補償コンデンサCcの静電容量の異なる多種類の制御回路32を準備しなければならず、煩雑である。そこで、この実施形態では、電極の長さに拘わらず、同じ静電容量の補償コンデンサCcを用いて、温度補償を行うことのできる対象物検出センサを実現している。
【0131】
図16において、共振回路26は補償コンデンサCcを設けたものである。しかし、電極が長くなり静電容量C0が大きくなると、補償コンデンサCcによる温度補償が上手く動作しなくなる。これは、以下のような理由によるものである。
【0132】
電極の長さに拘わらず、インダクタンスL1は同じであるから、温度変化によるインダクタンスの変動ΔLは同じである。補償コンデンサの静電容量の変動をΔCとすれば、共振周波数は、(L1+ΔL)と(C0−ΔC)の積によって決定される。したがって、温度変化によるΔLのL1に対する割合ΔL/L1に対してΔC/C0が同じ程度の割合になるように、補償コンデンサの静電容量が変化(ΔC)しなければ、補償を行うことができない。
【0133】
しかし、電極が長くなって静電容量C0が大きくなると、ΔCが同じ容量であったとしても、その割合が小さくなってしまう。このため、静電容量C0が小さい場合は適切に補償ができたとしても、静電容量C0が大きくなると補償しきれなくなるという問題が生じる。
【0134】
そこでこの実施形態では、補償コンデンサによって補償できない場合に、矩形発振信号の発振周波数を変動させることで温度補償を行うようにしている。
【0135】
図16において、発振回路20は、共振回路26の共振周波数に合致した周波数の発振信号を生成し、共振回路26に与える。検出回路24は、対象物28による共振回路26の出力の変化を検出して、検出出力を出す。
【0136】
共振回路26は補償コンデンサを含んでいる。温度補償手段27は、温度検出器29による検出温度を受けて、補償コンデンサによる温度補償で足りない分を矩形発振信号の周波数で補うように、発振回路20を制御する。すなわち、温度変化によって補償コンデンサによる補償が及ばずに変動した共振回路26の共振周波数に合致するように、発振回路20の発振信号の周波数を変化させる。
【0137】
以上のようにして、温度変化に対する共振回路の共振周波数の変動に対応して、より正確な検出を行うことができるようにしている。
【0138】
3.2外観およびハードウエア構成
対象物検出センサを、静電容量式レベルセンサとして構成した場合の外観は、
図2と同様である。
図17に、そのハードウエア構成を示す。電極間の静電容量C0に並列に、補償コンデンサCcを設けている。また、小信号用ダイオードDをコイルL1の近傍に設け、その順方向電圧にて周囲温度を計測するようにしている。順方向電圧は、A/D変換器63によってディジタル信号にされ、CPU60のI/Oポート64に入力される。CPU60は、この順方向電圧の大きさにより、温度を計測する。なお、小信号用ダイオードDに代えて温度センサを設けるようにしてもよい。また、CPU60に内蔵された温度センサを用いるようにしてもい。
【0139】
なお、カウンタ部56の詳細は、
図6または
図10に示すものと同様である。
【0140】
3.3初期設定時の処理
図18に制御プログラム68の初期設定処理のフローチャートを示す。
図18においては、初期設定のうちの温度補償に関するパラメータの設定に関する部分のみを示している。矩形発振信号の周波数設定などは、第1の実施形態、第2の実施形態と同様である。
【0141】
CPU60は、決定された矩形発振信号の周波数に応じて、補償カーブを決定する(ステップS31)。前述のように、電極による静電容量C0の大きさによって、補償コンデンサCcにて補償できる程度が変わってくる。電極が短く静電容量C0が小さい場合には、補償コンデンサCcによる補償が上手く行われる。電極が長く静電容量C0が大きい場合には、補償コンデンサCcによる補償は相対的に小さくなる。
【0142】
したがって、静電容量C0が小さく共振周波数が高い場合には、
図19Aに示すように、補償コンデンサCcによる補償が十分であるから、矩形発振信号の周波数変化による補償を行う必要はない。静電容量C0が大きく共振周波数が低くなるにつれて、
図19Bに示すように、補償コンデンサCcによって補償できる程度が小さくなり、矩形発振信号の周波数変化による補償の必要性も大きくなる。したがって、補償カーブは、共振周波数が大きくなるほど、その方向きが大きくなることになる。
【0143】
この実施形態では、初期設定処理によって設定した矩形発振信号の周波数(共振回路の共振周波数に対応する)に応じて、予め、補償カーブの傾きを記録している。CPU60は、これを読み出して設定値として記録する(ステップS32)。
【0144】
なお、この実施形態では、矩形発振信号の周波数は離散的に変更されるものである。したがって、補償カーブの傾きは、次の周波数に変更するまでの温度幅として記録している。
【0145】
以上のようにして、温度補償処理のためのカーブが設定される。
【0146】
3.4動作時の処理
図20に、制御プログラム68の温度補償処理のフローチャートを示す。この温度補償処理は、実動作時の処理と並行して行われる。CPU60は、ダイオードDの電圧を取得し、予め記録された関係に基づいて周囲温度を決定する(ステップS41)。
【0147】
次に、設定された温度補償カーブに基づいて、カウンタ部56に与える分周数(さらには隣接する周波数の混合比率)を変更して、矩形発振信号の周波数を変更する(ステップS42)。
【0148】
図21に、補償カーブの例を示す。周囲温度に応じて、階段状に矩形発振信号の周波数を変えるようにしている。この際、境界付近にて、周囲温度の小さな変化によって周波数が煩雑に変動するのを防ぐため、ヒステリシスを設けている。たとえば、
図21において、周波数f1に設定されていた時に、周囲温度がT1に下がると、周波数f2に変更される。その後、再び周囲温度がT1を上回っても、周囲温度T2に達するまでは周波数f1に戻らないようになっている。このようにして、しきい値温度の境界付近にて生じるチャタリングを防止している。
【0149】
この実施形態によれば、周囲温度の変動によって、補償コンデンサによる補償が不十分になった場合、矩形発振信号の周波数を変動させることで、共振周波数との合致性を保つようにしている。したがって、周囲温度の変動があっても、正確な検出を行うことができる。
【0150】
3.5その他
(1)上記実施形態では、分周率を変えること(さらに2つの周波数の時間的な混合比率を変えること)によって矩形発振信号の周波数を変えるようにしている。しかし、発振回路のLやCを変化させて矩形発振信号の周波数を変えるようにしてもよい。
【0151】
(2)上記実施形態では、補償コンデンサを用い、これによる補償の不足分を発振信号の周波数を変化させることで補うようにしている。しかし、補償コンデンサを用いずに、発振信号の周波数を変化させることだけで温度変化による変動を補償するようにしてもよい。
【0152】
(3)上記実施形態では、コイルL1が直線的な温度特性を持っている場合について説明した。しかし、
図22の曲線kやjに示すように、ある点から周波数特性を平坦で近似できるような特性を有するコイルも多い。このようなコイルを用いる場合には、
図23A、
図23Bに示すような補償カーブを用いることが好ましい。
【0153】
図23Aは電極が短い(共振周波数が高い)場合であり、カーブの傾きGも小さく、発振周波数の変化による補償を行わなければならない範囲も狭い。これに対し、
図23Bは電極が長い(共振周波数が低い)場合であり、カーブの傾きGも大きく、発振周波数の変化による補償を行わなければならない範囲も広い。このように、共振周波数が低くなるにつれて、カーブの傾きGを大きく、発振周波数の変化による補償を行わなければならない範囲を広くするようにする。
【0154】
予めこのような補償カーブを複数記録しておき、共振周波数に応じて選択して用いるようにする。
【0155】
(4)上記実施形態および変形例は、その本質に反しない限り、他の実施形態と組み合わせて実施可能である。
【0156】
4.第4の実施形態
4.1機能構成
図24に、第3の実施形態による対象物検出センサの機能構成図を示す。発振回路20は、共振回路26に対して発振信号を与える。対象物28が存在すると、共振回路26の共振周波数が変化するので、検出回路24はこの共振回路26の出力変化によって対象物28の有無を判断し、検出出力を出す。
【0157】
設定手段21は、操作者による設定入力器25からの入力を受けて、動作モードや検出レベルなどを設定するためのものである。表示制御手段23は、初期設定の際に、発光部P1、P2・・・Pnにてモード選択のための表示を行うものである。
【0158】
たとえば、検出回路24は、対象物28を検出したときに、「オン」の検出出力を出すモードと、「オフ」の検出出力を出すモードがある。現在の設定がどちらのモードになっているのかを示すために、発光部P1、P2・・・Pnに表示を行う。
【0159】
さらに、表示制御手段23は、検出レベルの設定の際に、列状に並んだ発光部P1、P2・・・Pnを用いて、しきい値および検出信号のレベルを表示する。これにより、検出のためのしきい値と検出マージンを容易に知ることができる。
【0160】
4.2外観およびハードウエア構成
対象物検出センサを、静電容量式レベルセンサとして構成した場合の外観およびハードウエア構成は、
図2、
図3と同様である。カウンタ部56の詳細は、
図6または
図10に示すものと同様である。
【0161】
4.3発光部の構成および表示処理
初期設定時には、使用者は
図2に示す蓋40を開けて、表示部38に設けられた入力ボタンや入力つまみを操作する。
図25に、表示部38の詳細を示す。発光部P1、P2・・・P10であるLED58a、58b・・・58jが設けられている。LED58a、58b・・・58jの左横には、レベルを表示するための「1」〜「10」までの数字が表示されている。右横には、モードを表示するための表示が示されている。
【0162】
中央部には入力つまみ591が設けられている。この入力つまみ591は回転をさせることで入力値を変えることができるものである。また、この入力つまみ591自体を押下することで信号を発生する押下スイッチも備えられている。
【0163】
入力つまみ591の下には、出力リレー61の状態を示すLED581が設けられている。このLED581は、出力リレー61がオンになると点灯し、オフになると消灯するように構成されている。
【0164】
右側には、モード選択ボタン592とモード表示LED582a、582b・・・582eが設けられている。モード表示LED582a、582b・・・582eの右横には、モードの内容を示す「Operation」「Sensitivity」「Delay Timer」「Setup」「Test」が表示されている。「Operation」は実動作モード、「Sensitivity」は感度調整、「Delay Timer」は検出から出力リレーの出力変更までの遅延時間の設定、「Setup」はその他の初期設定、「Test」は動作テストを示している。
【0165】
これら入力つまみ591、モード選択ボタン592による操作内容は、I/Oポート64を介して、CPU60に取り込まれる。また、LED58a、58b・・・58j、LED581、LED582a、582b・・・582eは、I/Oポート64を介して、CPU60によってその点灯が制御される。
【0166】
初期状態では、
図25に示すように、LED582aが点灯し、実動作モードにあることが示されている。使用者が、モード選択ボタン592を押下するごとに、モードが切り替わり、対応する582b・・・582eが点灯する。
【0167】
ここで、「Setup」を選択したとすると、さらに詳細内容を選択するために、入力つまみ591を回転することで、LED58i、58jが点灯した状態(「Tuning」発振周波数の自動設定モード)と、LED58d、58eが点灯した状態(「Output」)出力の設定モード)とを切り替えることができるようになっている。
【0168】
使用者が、入力つまみ591を押下すると、その時のモードが選択される。
図26aに示すようにLED58i、58jが点灯した状態で入力つまみ591が押下されると、発振周波数の自動設定モードとなる。この状態で、使用者が、さらに入力つまみ591を回転させ、
図26bのように、LED58hを点滅させ、入力つまみ591を押下すると、たとえば第1の実施形態に示すような発振周波数の自動調整が実行される。
【0169】
LED58d、58eが点灯した状態で、入力つまみ591が押下されると、出力リレー61の出力の仕方を設定するモードとなる。このモードでは、入力つまみ591が回転されると、LED58a、58b、58cのいずれかが点滅するように切り替えがなされる。
【0170】
LED58cを選択すると(点灯させた状態で入力つまみ591を押下すると)、出力リレー61が対象物28を検出してから検出出力をオンにするまでの間に遅延時間を設けることができる。同様に、LED58bを選択すると、出力リレー61が対象物28を検出しなくなってから検出出力をオフにするまでの間に遅延時間を設けることができる。さらに、LED58aを選択すると、対象物28を検出すれば出力リレー61がオフになる(通常はオンになる)ように設定することができる。
【0171】
図27に示すように、モード選択ボタン592を押下して、LED582cを点灯させると、上記の遅延時間を設定するモードとなる。このモードにおいては、入力つまみ591を右回転させると、LED58a〜58jの順にいずれかが点滅していく。左回転させると、LED58j〜58aの順にいずれかが点滅していく。
【0172】
図27では、58dが点滅している状態を示している。この状態で、入力つまみ591を押下すると、遅延時間が58dに対応する値(4秒の遅延)に設定される。この値は、各LED58a〜58jの左横に表示されているので、使用者は容易に遅延時間を把握することができる。
【0173】
この実施形態では、設定した4秒の遅延時間がどの程度のものであるかを使用者が感覚的に把握することができるようにしている。この状態で、検出電極36に手を触れると、CPU60によってこれが検知される。CPU60は、検知してから、4秒後に出力リレー61の状態を示すLED581を点灯させる。この際、CPU60は、検知から1秒後にLED58aを点灯させ、2秒後にLED58bを点灯させ、3秒後にLED58cを点灯させというように、バーグラフが伸びていくように遅延の状態を示すようにしている。
【0174】
図28に示すように、モード選択ボタン592を押下して、LED582bを点灯させると、感度調整モードとなる。このモードにおいては、入力つまみ591を右回転させると、LED58a〜58jの順にいずれかが点滅していく。左回転させると、LED58j〜58aの順にいずれかが点滅していく。
【0175】
図28では、LED58eが点滅している状態を示している。この状態で、入力つまみ591を押下すると、出力リレー61から検出出力を出すしきい値が、レベル「5」に設定される。このレベルは、各LED58a〜58jの左横に表示されているので、使用者は容易にしきい値のレベルを把握することができる。なお、レベルの数字が大きいほどしきい値が高く、小さいほどしきい値が低い。
【0176】
この実施形態では、設定したしきい値が検出信号の振幅との関係において適切であるかどうか(十分なマージンがあるかどうか)を把握できるようにしている。この状態で、検出電極36に手を近づけると、CPU60はその検出信号の振幅レベルに応じて、LED58a〜58jを順次バーグラフ状に表示する。
図29は、手を近づけて検出信号がレベル「3」になった場合を表している。このとき、しきい値は点滅状態にて、検出信号の振幅は点灯状態にて表示するので、容易に区別することができる。
【0177】
さらに、手を検出電極36に当接させると、
図30に示すように検出信号がしきい値「5」を超えて(この例ではレベル「8」)、LED581が点灯する。したがって、今回設定したしきい値によって適切に動作することがわかる。また、検出時における検出信号の振幅の余裕(マージン)が、レベル3つ分であることがわかる。
【0178】
以上のようにして、感度の設定を容易に行うことができる。
【0179】
4.5その他
(1)上記実施形態では、遅延時間の設定値と時間経過とを区別するために発光形態(一方は点滅、他方は点灯)を変えるようにしている。しかし、発光色を変えるようにしてもよい。しきい値と検出信号のレベルについても同様である。
【0180】
(2)上記実施形態および変形例は、その本質に反しない限り、他の実施形態と組み合わせて実施可能である。