(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インナチューブは、前記第1外径部の内側に備えられる所定の内径の第1内径部と、前記第2外径部の内側に備えられる、前記第1内径部よりも内径が小さい第2内径部と、を有する請求項3に記載のフロントフォーク。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、自動二輪車1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、前側の車輪である前輪2と、後側の車輪である後輪3と、車体10とを備えている。ここで、車体10は、自動二輪車1の骨格を形成するフレーム11、ハンドル12およびエンジン(不図示)などを有する。
また、自動二輪車1は、前輪2と車体10とを接続する左右一対のフロントフォーク21と、後輪3と車体10とを接続するサスペンション22とを備えている。さらに、自動二輪車1は、一対のフロントフォーク21を保持する2つのブラケット14と、2つのブラケット14の間に配置されたステムシャフト13と、を備えている。ステムシャフト13は、フレーム11のヘッドパイプ15に回転可能に支持されている。
【0010】
図2は、フロントフォーク21の全体図である。
図2に示すように、フロントフォーク21は、ハンドル12(
図1参照)が設けられる側である一方側に取り付けられる第1ユニット21Aと、前輪2(
図1参照)が設けられる側である他方側に取り付けられる第2ユニット21Bと、を備える。さらに、フロントフォーク21は、第1ユニット21Aと第2ユニット21Bとの間に配置されて、路面の凸凹に伴い前輪2が受ける衝撃を吸収する第1スプリング21Sを備える。
そして、フロントフォーク21は、第1ユニット21Aと第2ユニット21Bとが軸方向に相対的に移動することにより、前輪2を支持しながら路面の凸凹に伴い前輪2が受ける衝撃を吸収して振動を抑制する。
【0011】
なお、以下の説明において、第1ユニット21Aに設けられるアウタチューブ31および第2ユニット21Bに設けられるインナチューブ40(後述)の円筒中心線の方向は、「軸方向」と称する。また、軸方向において、ハンドル12側は「一方側」と称し、前輪2側は「他方側」と称する。
【0012】
[第1ユニット21A]
第1ユニット21Aは、軸方向における一方側および他方側が開口した管状のアウタチューブ31と、アウタチューブ31の一方側の開口を覆うキャップ32と、軸方向に延びて設けられる第1ロッド33と、を備える。また、第1ユニット21Aは、第1ロッド33の他方側の端部に固定されるピストン34と、第1ロッド33の他方側に設けられる第2ロッド35と、ピストン34と後述する端部部材511との間に設けられる第2スプリング36とを有する。
【0013】
アウタチューブ31(第1管状部材の一例)は、略円管状の部材である。アウタチューブ31の内径は、インナチューブ40の外径よりも大きく形成されている。そして、アウタチューブ31は、半径方向内側に、インナチューブ40および第1スプリング21Sを収容する。
また、アウタチューブ31の他方側の端部には、ブッシュ311およびシール部材312が設けられている。そして、アウタチューブ31は、ブッシュ311およびシール部材312を介して、インナチューブ40と相対的に移動可能に接続されている。
【0014】
キャップ32は、アウタチューブ31の一方側の端部を覆い、内部のオイルの流出を抑制する。また、キャップ32は、第1ロッド33の一方側の端部を保持する。
第1ロッド33の他方側は、第2シリンダ52(後述)の内側に挿入される。そして、第1ロッド33は、第1ユニット21Aおよび第2ユニット21Bの相対的な移動に伴い、第2シリンダ52に対して相対的に移動する。
ピストン34は、第2シリンダ52(後述)内を第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。また、ピストン34は、第1ロッド33の移動に伴って、第2シリンダ52に対して軸方向において摺動する。
【0015】
第2ロッド35の他方側は、第3シリンダ53内に挿入される。そして、第2ロッド35は、第1ユニット21Aおよび第2ユニット21Bの相対的な移動に伴い、第3シリンダ53に対して相対的に移動する。
第2スプリング36は、端部部材511(後述)とピストン34との間に配置される。そして、第2スプリング36は、第1ユニット21Aと第2ユニット21Bとが最も伸びる方向(遠ざかる方向)に移動した際の衝撃を吸収する。
【0016】
[第2ユニット21B]
図3は、第2ユニット21Bを説明する図である。
図4は、インナチューブ40の断面図である。
図5は、インナチューブ40とアクスルホルダ60とを説明する図である。
【0017】
第2ユニット21Bは、軸方向における一方側および他方側が開口した管状のインナチューブ40と、インナチューブ40の半径方向内側に設けられる第1シリンダ51と、第1シリンダ51の半径方向内側に設けられる第2シリンダ52と、第2シリンダ52の半径方向内側に設けられる第3シリンダ53とを有する。また、第2ユニット21Bは、インナチューブ40の他方側に接続部材54を有している。さらに、第2ユニット21Bは、インナチューブ40と前輪2(
図1参照)とを連結するアクスルホルダ60と、減衰力を発生させる減衰力発生部71と、フロントフォーク21内のオイルを加圧する加圧部72と、を備える。
【0018】
(インナチューブ40)
インナチューブ40(第2管状部材の一例)は、略円管状の部材であり、その材料として、アルミニウム合金を用いている。
なお、本発明において、インナチューブ40の材料は、アルミニウム合金に限定されない。ただし、インナチューブ40は、後述する段差部41を設けやすくするために、その厚さが所定の厚さ以上であることが好ましい。重量の増加を抑制しつつ、その厚さを所定の厚さ以上にしやすい形態にする等の観点から、インナチューブ40の材料として、アルミニウム合金を用いることが好ましい。
【0019】
図2に示すように、インナチューブ40の一方側は、開口しており、内側に第1ロッド33や第1スプリング21Sが収容される。また、
図3に示すように、インナチューブ40の他方側は、接続部材54によって閉じられている。そして、インナチューブ40は、内部にオイルが注入されている。
さらに、インナチューブ40は、他方側の端部にてアクスルホルダ60に連結している。このインナチューブ40およびアクスルホルダ60の連結については、後に詳述する。
【0020】
図4に示すように、インナチューブ40は、軸方向における一方側から他方側に向けて、第1領域A11と、第2領域A12と、第3領域A13とを有している。
第1領域A11は、外径がインナチューブ40において最も大きい第1外径D11であって、内径がインナチューブ40において最も大きい第1内径R11となる領域である。
第2領域A12は、外径が第1外径D11であって、内径が第1内径R11よりも小さい第2内径R12となる領域である。
第3領域A13は、外径が第1外径D11よりも小さい第2外径D12であって、内径が第2内径R12よりも小さい第3内径R13となる領域である。
【0021】
第1領域A11は、アウタチューブ31に収容され、その外周をアウタチューブ31が相対的に移動する領域である。また、第2領域A12は、外周に、アウタチューブ31のブッシュ311やシール部材312が摺動する領域である。従って、第1領域A11および第2領域A12は、外径(第1外径D1)を軸方向に沿って均一にしている。
【0022】
第3領域A13は、インナチューブ40の外周に設けられた、アクスルホルダ60との接続箇所を構成する領域である。
図5に示すように、第3領域A13(
図4参照)の外周には、雄ネジ42が設けられる。雄ネジ42は、アクスルホルダ60の後述する雌ネジ684との接続箇所を構成する。また、雄ネジ42は、後述する段差部41から他方側に向けて所定の間隔を有して形成されるとともに、インナチューブ40の他方側の端部45からも一方側に向けて所定の間隔を有して形成される。
【0023】
そして、
図4に示すように、インナチューブ40は、軸方向において第2領域A12と第3領域A13との境界部分に段差部41(第1接触部の一例)を有する。上述のとおり、第2領域A12の外径は、第1外径D11であり、第3領域A13の外径は、第1外径D1よりも小さい第2外径D12である(D12<D11)。段差部41は、インナチューブ40の外周面40aと、外周面40aよりもインナチューブ40の半径方向内側へと窪んだ窪み面40kと、を接続する段差である。
【0024】
段差部41は、軸方向における他方側を向く面である段差面41Pを有している。第1実施形態のインナチューブ40が円筒状であるため、段差面41Pは、円環状の面である。また、第1実施形態の段差面41Pは、窪み面40kに対して略直交している。すなわち、段差面41Pが窪み面40kに対して成す角θ1は、略90°になっている(θ1≒90°)。
ただし、第1実施形態において、段差面41Pは、軸方向における他方側を向く面であれば良く、窪み面40kに対して成す角θ1は、0°より大きく、180°より小さければ良い(0°<θ1<180°)。
【0025】
もしもインナチューブ40が、第1領域A11および第2領域A12よりも外径が大きい箇所を有すると、第1領域A11や第2領域A12の外側にアウタチューブ31の移動部やブッシュ311の摺動面を形成するための加工を行う際に、外径が大きい箇所が邪魔となり作業性の低下を招く可能性がある。そこで、インナチューブ40では、第1領域A11および第2領域A12の外径を最も大きくするとともに、第3領域A13の外径を、第1外径D11よりも外径が小さい第2外径D12にすることで、段差部41を形成している。
【0026】
また、第1領域A11は、半径方向内側に、第1スプリング21S(
図2参照)が伸縮する領域を有している。インナチューブ40では、第1領域A11における第1内径R11を第2領域A12における第2内径R12よりも大きくすることで、例えば第1スプリング21Sの全体径や線径など第1スプリング21Sの設計の自由度を高めている。
【0027】
第2領域A12は、第2内径R12を第1内径R11よりも小さくすることで、厚さB12を、例えば第1領域A11における厚さB11よりも大きくしている。第2領域A12は、外周部に、アウタチューブ31のブッシュ311が摺動する摺動面を有する。第2領域A12は、インナチューブ40においてアウタチューブ31との接続箇所を形成する領域であり、所定の剛性を有することが望まれる。そこで、第2領域A12は、厚さB11よりも厚い厚さB12にしている。
【0028】
第3領域A13は、上述のとおり、段差部41を形成するために、第2外径D12を、第1外径D11よりも小さくしている。さらに、第3領域A13は、第3内径R13を第2内径R12よりも小さくすることで、厚さB13を厚さB12と同程度にしている。これにより、インナチューブ40では、第3領域A13における剛性を、例えば第2領域A12と同程度にしている。
【0029】
また、第3領域A13は、その内周に、後述する接続部材54との接続箇所を有する。第3領域A13の内周には、雌ネジ44が設けられる。雌ネジ44は、後述する接続部材54の雄ネジ544との接続箇所を構成する。また、雌ネジ44は、軸方向において上述した雄ネジ42よりも他方側に形成される。つまり、雌ネジ44は、雄ネジ42に対して軸方向においてずれた位置に形成される。
【0030】
図4に示すように、インナチューブ40は、その内周の、第2領域A12と第3領域A13との間にテーパ部43を有している。テーパ部43は、外周に形成されている段差部41の裏面側に隣接して備えられている。テーパ部43は、インナチューブ40の内周面40bとの成す角θ2が90°より大きく180°より小さくなっている(90°<θ2<180°)。また、テーパ部43は、第2領域A12の内周と第3領域A13の内周とをなだらかに接続する。
【0031】
上記のとおり、インナチューブ40は、外周に段差部41を有しており、インナチューブ40に曲げ荷重が付与されると、段差部41に応力が集中する。インナチューブ40がテーパ部43を有することにより、曲げ荷重が付与されたインナチューブ40を、折れにくくすることができる。
【0032】
なお、例えば、第2領域A12の第2内径R12を、第3領域A13の第3内径R13と同じにすることも可能である。ただし、フロントフォーク21の重量増加を抑制しやすい形態にする等の観点から、第2内径R12は、第3内径R13よりも大きいことが好ましい。
【0033】
図4に示すように、インナチューブ40は、他方側における端部45に、端面45Pを有している。インナチューブ40が円筒状であるため、端面45Pは、円環状の面である。また、端面45Pは、軸方向において他方側を向く面であり、第3領域A13の窪み面40kに対して略直交している。なお、端面45Pは、インナチューブ40において他方側を向く面のうち、軸方向において最も他方側に存在している。
【0034】
(第1シリンダ51)
図2に示すように、第1シリンダ51は、インナチューブ40の軸方向における他方側から略中央部まで設けられる。そして、第1シリンダ51の一方側の開口は、端部部材511によって閉じられる。また、
図3に示すように、第1シリンダ51の他方側の外周部には、雄ネジ512が形成される。第1シリンダ51の他方側の開口は、接続部材54によって閉じられる。さらに、第1シリンダ51は、第2シリンダ52との間にオイルが流れる流路513を形成する。流路513は、他方側においてアクスルホルダ60の後述する第1連通孔65と連絡する。
【0035】
(第2シリンダ52)
図2に示すように、第2シリンダ52は、インナチューブ40内において第1シリンダ51と略同様な位置に配置される。
そして、第2シリンダ52の一方側の開口は、端部部材511によって閉じられる。また、第2シリンダ52は、一方側であって流路513との対向部に半径方向に開口する貫通孔52Hを有している。貫通孔52Hは、第1油室Y1と流路513との間のオイルの流通を可能にする。
図3に示すように、第2シリンダ52の他方側は、アクスルホルダ60によって保持される。そして、第2シリンダ52の他方側の開口部521は、アクスルホルダ60の後述する第2連通孔66と連絡する。
【0036】
また、第2シリンダ52の内部には、減衰力発生部71との間で流通するオイルが充填される。そして、第2シリンダ52の内部では、第1ロッド33に固定されたピストン34が摺動する。第2シリンダ52では、ピストン34の軸方向における往復移動に伴って、ピストン34の移動方向に応じたオイルの流れが発生する。
【0037】
(第3シリンダ53)
図3に示すように、第3シリンダ53は、インナチューブ40の他方側に配置される。第3シリンダ53の一方側には、第2ロッド35を貫通させるとともに、一方側の端部を閉じる蓋部材531が設けられる。また、第3シリンダ53の他方側には、他方側の端部を閉じる蓋部材532が設けられる。そして、第3シリンダ53の内部には、例えば空気などの気体が気密される。
【0038】
そして、第3シリンダ53は、フロントフォーク21が最も縮んだ際に、第2ロッド35の進入量が最も多くなる。第3シリンダ53では、第2ロッド35の進入量が多くなることに伴って内部の気体の圧力が高まる。そして、第2ロッド35は、他方側の端部の気体の圧力が、一方側の端部の圧力と比較して相対的に高くなる。その結果、第2ロッド35は、一方側に向けて移動する力がかかった状態になる。これによって、第1実施形態のフロントフォーク21では、第3シリンダ53にて、フロントフォーク21が最も縮んだ際に気体による反力を発生させている。
【0039】
(接続部材54)
図3に示すように、接続部材54は、円筒状に形成された円筒部541と、円筒部541の他方側に設けられたフランジ部542とを有している。
円筒部541は、内周部において雌ネジ543を有している。雌ネジ543は、上述した第1シリンダ51の雄ネジ512との接続箇所を構成する。また、円筒部541は、外周部において雄ネジ544を有している。雄ネジ544は、軸方向において雌ネジ543に対してずれた位置に形成される。そして、雄ネジ544は、インナチューブ40の雌ネジ44との接続箇所を構成する。
【0040】
フランジ部542は、円筒部541から半径方向外側に向けて突出して形成される円盤状の部分である。フランジ部542は、一方側にて、インナチューブ40の端部45の端面45Pに接触する(
図5参照)。
【0041】
さらに、接続部材54は、インナチューブ40との間でのオイルの流出を抑制するシール部材545と、第1シリンダ51との間でのオイルの流出を抑制するシール部材546とを有している。
そして、フロントフォーク21において、インナチューブ40は、上述した接続部材54を介して、第1シリンダ51を保持する。
【0042】
(アクスルホルダ60)
図3に示すように、アクスルホルダ60(連結部材の一例)は、前輪2の車軸に接続する車軸孔61と、ブレーキキャリパ(不図示)が取り付けられる取付部62と、減衰力発生部71を保持する第1保持部63と、加圧部72を保持する第2保持部64とを有する。また、アクスルホルダ60は、流路513および減衰力発生部71を連絡する第1連通孔65と、第2シリンダ52の第2油室Y2および減衰力発生部71を連絡する第2連通孔66と、減衰力発生部71および加圧部72を連絡する第3連通孔67とを有する。
さらに、アクスルホルダ60は、第2ユニット21Bを構成する各種部品との接続箇所を構成する接続部68とを有している。
【0043】
図5に示すように、接続部68は、円筒状の円筒部681と、半径方向内側に向けて突出する突出部682(空間形成部の一例)とを有している。
円筒部681は、インナチューブ40の他方側の端部を囲むように配置される。円筒部681の内径は、軸方向に沿って略均一である。円筒部681の内径N1は、インナチューブ40の第2外径D12よりも大きく、第1外径D11よりも小さい。
【0044】
また、円筒部681の一方側の端部683における外径G1は、インナチューブ40の第1外径D11よりも大きい。
そして、円筒部681は、一方側における端部683(第2接触部の一例)に、端面683Pを有している。端面683Pは、円環状の面である。端面683Pは、軸方向において一方側を向く面であり、円筒部681の内周面681bに対して略直交している。すなわち、端面683Pが内周面681bに対して成す角θ3は、略90°になっている(θ3≒90°)。
ただし、第1実施形態において、端面683Pは、軸方向における一方側を向く面であれば良く、内周面681bに対して成す角θ3は、0°より大きく、180°より小さければ良い(0°<θ3<180°)。
そして、端面683Pは、インナチューブ40の段差面41Pに沿う角度に設定されており、第1実施形態においては、インナチューブ40の段差面41Pと略平行となっている。
【0045】
さらに、円筒部681は、内周部において雌ネジ684を有している。雌ネジ684は、インナチューブ40の雄ネジ42との接続箇所を構成する。そして、雌ネジ684は、端部683から他方側に向けて所定の間隔を有するとともに、突出部682からも一方側に向けて所定の間隔を有して形成される。
【0046】
また、円筒部681には、インナチューブ40との間でのオイルの流出を抑制するシール部材685が設けられる。シール部材685は、雌ネジ684の他方側であって突出部682の一方側に設けられる。なお、シール部材685は、インナチューブ40の他方側の端部45の外周部(第3領域A13(
図4参照))に設けられる。
【0047】
突出部682は、半径方向内側に向けて、円環状に突出する。突出部682の突出量は、インナチューブ40の他方側における厚さB13(
図4参照)と同程度である。
そして、突出部682は、インナチューブ40の端部45との間に、軸方向における空間を形成する。つまり、突出部682および端面45Pは、接触していない。インナチューブ40は、他方側に、接続部材54のフランジ部542が配置されている。このように、軸方向においてインナチューブ40と突出部682との間に他の部材が介在する場合であっても、突出部682は、他の部材(第1実施形態の例ではフランジ部542)と接触しない。具体的には、フランジ部542を間に挟んで、突出部682と端部45との間に隙間C1を有している。
【0048】
(減衰力発生部71)
図3に示すように、減衰力発生部71は、フロントフォーク21の伸縮動作に応じて生じるオイルの流れに対して流体抵抗を与えることで減衰力を発生する。減衰力発生部71は、オイルがバルブを開きながら流れる流路を形成することで、減衰力を発生させている。なお、減衰力発生部71は、フロントフォーク21の伸張時および圧縮時の両方のオイルの流れに対して減衰力を発生させる。また、減衰力発生部71は、減衰力の大きさを調整する調整機構を備えている。
【0049】
(加圧部72)
図3に示すように、加圧部72は、フリーピストン721の一方側にガスが充填される加圧室と、フリーピストン721の他方側に減衰力発生部71との間でオイルが流通する油溜室とを形成する。そして、加圧部72は、加圧室の圧力に応じて、フロントフォーク21を流れるオイルの加圧を行えるようになっている。
【0050】
[インナチューブ40とアクスルホルダ60との接続]
図5に示すように、フロントフォーク21は、インナチューブ40の雄ネジ42とアクスルホルダ60の雌ネジ684とがネジ締結によって接続する。フロントフォーク21の組み立ての際には、まず、インナチューブ40をアクスルホルダ60の接続部68に挿入し、ネジを締め込む。そうすると、インナチューブ40とアクスルホルダ60とは、軸方向の相対的な距離が近づく。最終的に、インナチューブ40の段差面41Pと、アクスルホルダ60の端面683Pとは、互いに接触する。そして、少なくともフロントフォーク21に荷重がかかっていない状態において、インナチューブ40の段差面41Pとアクスルホルダ60の端面683Pとは、常に接触した状態になる。
【0051】
また、フロントフォーク21では、インナチューブ40の段差面41Pと、アクスルホルダ60の端面683Pとが接触した状態で、インナチューブ40の端部45とアクスルホルダ60の突出部682との間には、軸方向における空間が形成される。これによって、例えば段差面41Pと端面683Pとの間に隙間が生じるなど、段差面41Pと端面683Pとの接触が不十分になることが防止される。
【0052】
続いて、第1実施形態におけるフロントフォーク21に荷重がかかった場合の剛性の変化について説明する。
図12は、比較例のフロントフォーク100を説明する図である。なお、
図12の紙面上下方向を「軸方向」、紙面左右方向を「半径方向」と称することがある。
図6は、比較例のフロントフォーク100と、フロントフォーク21との荷重に応じた変位量を示す図である。
【0053】
図12を参照しながら、比較例のフロントフォーク100の説明を行う。比較例のフロントフォーク100は、第1実施形態のフロントフォーク21とは異なり、インナチューブ40が段差部41を有していない。つまり、比較例のフロントフォーク100は、インナチューブ101の外径が軸方向に沿って同じである。そして、比較例のフロントフォーク100は、インナチューブ101にアクスルホルダ102がネジ締結されている。また、比較例のフロントフォーク100は、半径方向において、インナチューブ101に対して、アクスルホルダ102の端部103との間に組付けのための隙間100Cを有している。
【0054】
図6に示すように、比較例のフロントフォーク100は、走行中にブレーキがかけられるなどフロントフォーク100に曲げ荷重が付与されると、曲げ荷重の大きさに応じて変形(変位)する。ただし、比較例のフロントフォーク100では、曲げ荷重に応じた変位量の変化率は、インナチューブ101とアクスルホルダ102の端部103との間の隙間100Cの有無に応じて変わる。
つまり、比較例のフロントフォーク100において、曲げ荷重が所定値未満である間は、インナチューブ101とアクスルホルダ102の端部103との間に、隙間100Cが維持される。しかしながら、曲げ荷重が所定値以上になると、端部103とインナチューブ101とが接触する。そのため、
図6に示すように、比較例のフロントフォーク100は、曲げ荷重の大きさに応じてフロントフォーク自体の剛性が変化する。
【0055】
これに対し、端部683と段差部41とには、ネジ締結によって軸力がかかっているため、フロントフォーク21は、アクスルホルダ60の端部683が、インナチューブ40の段差部41に常に接触している。その結果、
図6に示すように、フロントフォーク21は、曲げ荷重に応じた変位量の変化率が一定となり、曲げ荷重がかかることに伴う剛性の変化が抑制される。
【0056】
図7は、フロントフォーク21の圧縮工程時におけるオイルの流れの説明図である。
図8は、フロントフォーク21の伸張工程時におけるオイルの流れの説明図である。
【0057】
(圧縮行程時)
図7に示すように、フロントフォーク21の圧縮行程においては、第1ユニット21Aと第2ユニット21Bとが軸方向において相対的に近づく方向に移動し、ピストン34は、他方側に向けて移動する。ピストン34の他方側への移動に伴って、第2シリンダ52における第2油室Y2のオイルの圧力が高まる。このようにして圧力が高まった第2油室Y2のオイルは、第2連通孔66を流れて、減衰力発生部71に流れ込み、減衰力発生部71にてオイルの流れが絞られることで減衰力が発生する。その後、減衰力発生部71を出たオイルは、第1連通孔65および流路513を流れる。流路513を流れたオイルは、貫通孔52Hを通って、第2シリンダ52の第1油室Y1に流れ込む。
【0058】
(伸張行程時)
図8に示すように、フロントフォーク21の伸張行程においては、第1ユニット21Aと第2ユニット21Bとが軸方向において相対的に遠ざかる方向に移動し、ピストン34は、一方側に向けて移動する。ピストン34の一方側への移動に伴って、第2シリンダ52における第1油室Y1のオイルの圧力が高まる。このようにして圧力が高まった第1油室Y1のオイルは、貫通孔52Hを通って流路513に流れ出る。流路513を流れるオイルは、第1連通孔65を流れて、減衰力発生部71に流れ込む。そして、減衰力発生部71にてオイルの流れが絞られることで減衰力が発生する。その後、減衰力発生部71を出たオイルは、第2連通孔66を通って、第2シリンダ52の第2油室Y2に流れ込む。
【0059】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のフロントフォーク221について説明する。なお、第2実施形態の説明において、上述した第1実施形態と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
図9は、第2ユニット221Bを説明する図である。
図10は、インナチューブ80の断面図である。
図11は、インナチューブ80とアクスルホルダ90とを説明する図である。
【0061】
図9に示すように、第2実施形態のフロントフォーク221は、インナチューブ80およびアクスルホルダ90が、第1実施形態のインナチューブ40およびアクスルホルダ60とそれぞれ異なっている。特に、第2実施形態のフロントフォーク221では、インナチューブ80の半径方向内側にて、アクスルホルダ90とインナチューブ80とが接続している。
【0062】
(インナチューブ80)
インナチューブ80の基本構成は、第1実施形態のインナチューブ40と同様である。以下では、第1実施形態のインナチューブ40と異なる点を中心に説明する。
【0063】
図10に示すように、インナチューブ80は、軸方向における一方側から他方側に向けて、第1領域A21と、第2領域A22と、第3領域A23と、第4領域A24とを有している。
第1領域A21は、外径がインナチューブ80において最も大きい外径D21であって、内径がインナチューブ80において最も大きい第1内径R21となる領域である。
第2領域A22は、外径が外径D21であって、内径が第1内径R21よりも小さい第2内径R22となる領域である。
第3領域A23は、外径が外径D21であって、内径が第2内径R22よりも小さく、また、インナチューブ80において最も小さい第3内径R23となる領域である。
第4領域A24は、外径が外径D21であって、内径が第1内径R21より小さく第2内径R22より大きい第4内径R24となる領域である。
【0064】
インナチューブ80の外径(外径D21)は、軸方向に沿って均一になっている。インナチューブ80においても、インナチューブ80の外径を軸方向に均一にすることで、例えば、アウタチューブ31(
図9参照)の移動部やブッシュ311の摺動面を形成するための表面処理や研磨加工を容易にしている。
【0065】
第1領域A21は、半径方向内側に、第1スプリング21S(
図2参照)が伸縮する領域を形成する。
第2領域A22は、第1内径R21よりも小さくすることで、厚さB22を、例えば第1領域A21における厚さB21よりも大きくしている。これによって、第2領域A22を所定の剛性にしている。
【0066】
第3領域A23は、第3内径R23が、第4領域A24の第4内径R24よりも小さい(R23<R24)。インナチューブ80は、その内周に段差部81(第1接触部の一例)を有している。段差部81は、インナチューブ80の内周面80bと、内周面80bよりもインナチューブ80の半径方向内側へと突出する突出面80tとを接続する段差である。
【0067】
段差部81は、軸方向における他方側を向く面である段差面81Pを有している。インナチューブ80が円筒状であるため、段差面81Pは、円環状の面である。また、段差面81Pは、第4領域A24における内周面80bに対して略直交している。すなわち、段差面81Pが内周面80bに対して成す角θ4は、略90°になっている(θ4≒90°)。
ただし、第2実施形態において、段差面81Pは、軸方向における他方側を向く面であれば良く、内周面80bに対して成す角θ4は、0°よりも大きく、180°よりも小さければ良い(0°<θ4<180°)。
【0068】
さらに、インナチューブ80は、その内周の、第2領域A22と第3領域A23との間にテーパ部84を有している。テーパ部84は、第2領域A22における内周面80bとの成す角θ5が90°より大きく、180°より小さくなっている(90°<θ5<180°)。そして、テーパ部84は、第3領域A23の内周と第2領域A22の内周とをなだらかに接続する。
【0069】
インナチューブ80の第4領域A24は、内周に、アクスルホルダ90(
図9参照)との連結箇所を形成する領域である。第4領域A24の内周には、雌ネジ82が形成される。雌ネジ82は、アクスルホルダ90の後述する雄ネジ914との接続箇所を構成する。そして、雌ネジ82は、段差部81から他方側に向けて所定の間隔を有するとともに、インナチューブ80の他方側の端部83からも一方側に向けて所定の間隔を有して形成される。
【0070】
図10に示すように、インナチューブ80は、他方側における端部83に、端面83Pを有している。インナチューブ80が円筒状であるため、端面83Pは、円環状の面である。また、端面83Pは、軸方向において他方側を向く面である。つまり、端面83Pは、第4領域A24の内周面80bに対して略直交している。
この端面83Pは、インナチューブ80において他方側を向く面のうち、軸方向において最も他方側に存在している。
【0071】
(アクスルホルダ90)
図11に示すように、アクスルホルダ90の基本構成は、第1実施形態のアクスルホルダ60と同様である。以下では、第1実施形態のアクスルホルダ60と異なる点を中心に説明する。
アクスルホルダ90(連結部材の一例)は、第2ユニット21Bを構成する各種部品との接続箇所を構成する接続部91を有している。接続部91は、円筒状の円筒部911と、半径方向外側に向けて突出するフランジ部912(空間形成部の一例)とを有している。
【0072】
円筒部911の外径G2は、軸方向に沿って略均一である。外径G2は、インナチューブ80の第4領域A24の第4内径R24よりも小さく、第3領域A23の第3内径R23よりも大きい。
円筒部911は、外周部において雄ネジ914を有している。雄ネジ914は、インナチューブ80の雌ネジ82との接続箇所を構成する。そして、雄ネジ914は、端部913から他方側に向けて所定の間隔を有するとともに、フランジ部912からも一方側に向けて所定の間隔を有して形成される。
【0073】
また、円筒部911の内径N2は、軸方向に沿って略均一である。円筒部911は、内周部おいて雌ネジ915を有している。雌ネジ915は、第1シリンダ51の雄ネジ512との接続箇所を構成する(
図9参照)。
【0074】
さらに、円筒部911は、一方側における端部913(第2接触部の一例)に、端面913Pを有している。第2実施形態では、端面913Pは、円環状の面である。また、端面913Pは、軸方向において一方側を向く面であり、円筒部911の外周面911aに対して略直交している。すなわち、端面913Pが外周面911aに対して成す角θ6は、略90°になっている(θ6≒90°)。
ただし、第2実施形態において、端面913Pは、軸方向における一方側を向く面であれば良く、外周面911aに対して成す角θ6は、0°より大きく、180°より小さければ良い(0°<θ6<180°)。
そして、端面913Pは、インナチューブ80の段差面81Pに沿う角度に設定されており、第2実施形態においては、インナチューブ80の段差面81Pと略平行となっている。
【0075】
フランジ部912の幅は、インナチューブ80の他方側における厚さB23(
図10参照)と同程度である。そして、フランジ部912は、インナチューブ80の端部83との間に、軸方向における空間を形成する。具体的には、フランジ部912は、端部83との間に隙間C2を形成する。すなわち、フランジ部912および端面83Pは、接触していない。
【0076】
[インナチューブ80とアクスルホルダ90との接続]
図11に示すように、フロントフォーク221においては、インナチューブ80の雌ネジ82とアクスルホルダ90の雄ネジ914とがネジ締結によって接続する。フロントフォーク221の組み立ての際には、まず、インナチューブ80にアクスルホルダ90の接続部91を挿入し、ネジを締め込む。そうすると、インナチューブ80とアクスルホルダ90とは、軸方向の距離が近づく。最終的に、インナチューブ80の段差面81Pと、アクスルホルダ90の端面913Pとは、互いに接触する。そして、少なくともフロントフォーク221に荷重がかかっていない状態において、インナチューブ80の段差面81Pとアクスルホルダ90の端面913Pとは、常に接触した状態になる。
【0077】
端部913と段差部81とには、ネジ締結によって軸力がかかっているため、フロントフォーク221は、アクスルホルダ90の端部913とインナチューブ80の段差部81とが常に接触している。その結果、フロントフォーク221は、曲げ荷重に応じた変位量の変化率が一定となり、曲げ荷重がかかることに伴う剛性の変化が抑制される。
【0078】
なお、第1実施形態および第2実施形態では、所謂倒立型のフロントフォークを例に説明したが、本発明のフロントフォークは、倒立型のフロントフォークに限定されない。例えば、正立型のフロントフォークでは、インナチューブ(第1管状部材の一例)がハンドル12側に配置され、アウタチューブ(第2管状部材の一例)が前輪2側に配置される。そして、正立型のフロントフォークにおいて、前輪2とアウタチューブとを連結する連結部材が、アウタチューブとは別に設けられる場合がある。この場合には、アウタチューブに、第1実施形態の段差部41や第2実施形態の段差部81を形成すれば良い。さらに、連結部材には、インナチューブの端部との間に空間を形成する空間形成部を設ければ良い。
【0079】
また、例えば第1実施形態において、端部683の端面683Pと端部45の端面45Pとは、それぞれ周方向において連続する面として形成されているが、この例に限定されない。端部683の端面683Pと端部45の端面45Pは、いずれか一方や両方が、例えば周方向において断続的に形成される複数の面によって構成されていても良い。この内容は、第2実施形態のフロントフォーク221においても同様である。
フロントフォークは、軸方向において操舵部が配置される側である一方側に設けられる管状のアウタチューブと、軸方向において車輪が配置される側である他方側であってアウタチューブの内側に設けられ、アウタチューブに対して相対的に移動可能に接続する管状のインナチューブと、車輪とインナチューブとを連結する連結部材と、を備え、インナチューブは、インナチューブの他方側の端面よりも一方側にて他方側を向く面を有して連結部材と接触する第1接触部を有し、連結部材は、一方側を向く面を有して第1接触部に接触する第2接触部と、第1接触部と第2接触部とが接触した状態で軸方向においてインナチューブの端面との間に空間を形成する空間形成部とを有する。