特許第6550211号(P6550211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550211
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】建物の換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/10 20060101AFI20190711BHJP
   F24F 7/04 20060101ALI20190711BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20190711BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20190711BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   F24F7/10 Z
   F24F7/04 B
   F24F13/02 C
   F24F13/02 D
   F24F13/10 Z
   F24F3/044
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-71961(P2014-71961)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194290(P2015-194290A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年12月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩明
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 敦
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−180501(JP,A)
【文献】 特開平07−301432(JP,A)
【文献】 特開平08−014644(JP,A)
【文献】 特開平10−220839(JP,A)
【文献】 特開2004−163056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
F24F 3/044
F24F 7/04
F24F 13/02
F24F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を、前記外気取入れチャンバーに連通する床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに供給する建物の換気システムにおいて、
前記外気取入れチャンバーに、室内のペリメータゾーンに開口する通気口と、
自然通風時の風量を補う正逆転切替可能なアシストファンと、
前記外気取入れ口と前記通気口及び前記アシストファンとの間での風路を切り替える風路切替手段とを設け、
前記風路切替手段は、前記アシストファンと前記通気口との間の第1風路を開閉する第1ダンパーと、前記第1風路に連通する外気取入れ口側の第2風路を開閉する第2ダンパーとから構成され、
前記アシストファンと前記第1ダンパーと前記第2ダンパーとにより、
自然通風状態において、前記外気取入れ口からの導入外気を前記アシストファンで前記床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに送風する状態と、
前記ペリメータゾーンの冷気を前記通気口から前記アシストファンで吸引し、前記床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに供給する状態と、
前記アシストファンにより室内のインテリアゾーンの空気を前記床下チャンバーを経由して吸引し、前記通気口からペリメータゾーンに送風する状態とに切替可能に構成し、
通風量を計測する風量センサと、当該風量センサの検出信号に基づいて前記アシストファンを駆動制御する制御部と、を設け、
前記制御部は、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値内であるとき、前記アシストファンを駆動停止状態に維持し、且つ、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値よりも減少したとき、外部風速による自然通風量と前記アシストファンによる機械式通風量との合計風量を設定風量の許容値に近づけるように、前記アシストファンを駆動制御し、
さらに、前記制御部は、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値よりも上であるとき、前記アシストファンが駆動停止状態にある状態で第2ダンパーの開度を減少側に変更制御する建物の換気システム。
【請求項2】
前記風量センサは、前記床下チャンバーにおいて、外気の自然通風量と前記アシストファンによる機械式通風量との合計風量を計測する第1風量センサと、前記外気取入れチャンバーの前記第2風路において、前記外気取入れ口から取り込まれた外気の自然通風量を計測する第2風量センサと、を備える請求項1記載の建物の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビル、複合商業施設等の建物での自然通風を利用した換気システムで、特に、外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を室内のインテリアゾーンに供給する建物の換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の換気システムとして、外気取入れチャンバーを床下チャンバーに連通して、外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を床下チャンバーを介して室内のインテリアゾーンに供給する構成にしたものが提案されている。
【0003】
この換気システムでは、例えば、建物の外壁等に形成されている外気取入れ口から導入した外気を、室内空気を攪拌しないように床から低速で吹き出して、室内空気を徐々に押し上げ、天井側排気口から排気することにより、室内空気を置換換気することができる。
【0004】
そして、中間期において自然通風による換気冷却を行う場合、快適性を確保しながら自然通風による室内冷却効果を高めることが要望されているものの、まだ、以下の問題があった。
すなわち、風力換気の場合には外部風速、重力換気の場合には中性帯の影響により、自然通風量が少なくなる事態が発生することがある。このような自然通風量の不足現象が発生すると、室内の外気取入れ口側(ペリメータゾーン側)付近が局部的に冷却され、室内奥側では有効に冷却できないため、快適性を確保することができなかった。
【0005】
また、空調システムではあるが、床下チャンバーと外気取入れ口とに連通する外気取入れチャンバーに、ペリメータゾーンに開口する通気口を形成し、外気取入れチャンバー内には、通気口から窓際に沿って空気を吹き出す機能と床下チャンバーに向けて空気を吹き出す機能とを備え、且つ、空調空気(冷風、温風)を生成するための熱交換コイルを備えたペリメータ空調機を設置する。さらに、外気取入れ口に通じる通風路を開閉可能で、且つ、外気取入れ口から取り入れられた外気の導入先をペリメータ空調機と通気口との間で切り替え可能なダンパーを設けた空調システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この空調システムでは、中間期の昼間において、室内のインテリアゾーンの空調を受け持つ床吹出空調機の冷房運転を適宜停止させるとともに、ダンパーを「開」状態に操作して外気の導入先をペリメータ空調機に切り換え、自然換気を併用した冷房モードに切り替え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−266363号公報
【特許文献2】特開平9−126492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の空調システムでは、自然換気を併用した冷房モードにおいて、外気取入れ口から導入した外気をペリメータ空調機に導き、ペリメータ空調機の内部に設けた送風機を一定回転で駆動した場合には、自然通風量に相当する無駄な電力消費が発生する。
【0009】
また、ペリメータ空調機の送風機を停止させた場合には、風力換気での外部風速や重力換気での中性帯の影響、さらには、ペリメータ空調機の機内圧力損失により、自然通風量が少なくなる事態が発生し、上述のように局部的な冷却や冷却不足によって快適性を確保することができない。
【0010】
しかも、床下チャンバーと外気取入れ口とに連通する外気取入れチャンバー内に、通気口から窓際に沿って空気を吹き出す機能と床下チャンバーに向けて空気を吹き出す機能とを備え、且つ、空調空気(冷風、温風)を生成するための熱交換コイルを備えたペリメータ空調機を設置するため、外気取入れチャンバーの内部構造が複雑化、大型化し、且つ、機内圧力損失が大きくなる不都合がある。
【0011】
特に、上述の特許文献1では、ペリメータ空調機の送風機関係の構造については記載も図示も無いが、通気口から窓際に沿って空気を吹き出す機能と床下チャンバーに向けて空気を吹き出す機能とを達成するにあたって、例えば、送風機からの送風経路を切り換える構造、あるいは、特許文献2に示すように、各機能を各別に発揮する専用の二台の送風機を設ける構造のいずれを採用しても、外気取入れチャンバーの内部構造の複雑化、大型化が助長される問題があった。
【0012】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、外部風速が無い状態、あるいは、重力換気の中性帯以上の高さにおいても、省エネ化を図りながら自然通風の効果を高めることができ、しかも、ペリメータゾーンでの夏期の温熱排出及び冬期の冷熱排出を簡単な構造で達成することのできる建物の換気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を室内のインテリアゾーンに供給する建物の換気システムにおいて、
前記外気取入れチャンバーに、室内のペリメータゾーンに開口する通気口と、
自然通風時の風量を補う正逆転切替可能なアシストファンと、
前記外気取入れ口と前記通気口及び前記アシストファンとの間での風路を切り替える風路切替手段とを設けて、
自然通風状態において、前記外気取入れ口からの導入外気を前記アシストファンで室内のインテリアゾーンに送風する状態と、
前記ペリメータゾーンの冷気を前記通気口から前記アシストファンで吸引する状態と、
前記外気取入れチャンバー内の空気を前記アシストファンで前記通気口からペリメータゾーンに送風する状態とに切替可能に構成してある。
【0014】
上記構成によれば、中間期には、風路切替手段により、外気取入れ口と外気取入れチャンバー内のアシストファンとが連通する状態に風路を切り替え、室内温度(もしくは室内エンタルピー)よりも低温(もしくは低いエンタルピー)の外気を自然通風状態で外気取入れ口から外気取入れチャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに供給することにより、室内空気を換気しながら冷却することができる。
【0015】
この中間期の自然通風による冷却時において、風力換気の場合には外部風速、重力換気の場合には中性帯の影響により、自然通風量が少なくなる事態が発生した場合でも、外気取入れチャンバーには自然通風時の風量を補うアシストファンが設けられているので、このアシストファンの正転駆動によって不足風量を補うことができ、安定性のある自然通風によって室内の局部冷却や冷却不足を抑制することができる。
【0016】
また、夏期には、風路切替手段により、通気口と外気取入れチャンバー内のアシストファンとが連通する状態に風路を切り替えるとともに、アシストファンを逆転駆動すると、外気取入れチャンバー内の空気が通気口からペリメータゾーンに送風され、この送風に伴ってペリメータゾーン側の温熱が下方から押し上げられて天井側から排出される。そのため、自然通風を補うアシストファンを利用して窓面からの温熱負荷を処理することができる。
【0017】
さらに、冬期には、風路切替手段により、通気口と外気取入れチャンバー内のアシストファンとが連通する状態に風路を切り替えるとともに、アシストファンを正転駆動すると、ペリメータゾーン側の冷気が通気口から外気取入れチャンバー内に吸引される。この外気取入れチャンバー内に吸引された冷気は室内のインテリアゾーンに供給されるので、室内に供給された冷気による温度低下は微小となり、室内の快適性を維持しながら自然通風を補うアシストファンを利用して窓面からの冷熱負荷を処理することができる。
【0018】
したがって、風力換気の場合の外部風速が無い状態、或いは、重力換気の場合の中性帯以上の高さにおいても、自然通風時の風量を補うアシストファンにより自然通風の効果を高めることができ、快適性を確保しながら冷却効果を高めることができる。
【0019】
しかも、アシストファンを正逆転切替可能にしてペリメータゾーンに対するエアフローファンを兼用させることにより、この一つのアシストファンの正逆転切替及び風路切替手段の風路切替によって、ペリメータゾーンでの夏期の温熱排出及び冬期の冷熱排出を簡単な構造で達成することができる。且つ、熱交換コイルを備えたペリメータ空調機を設置する場合に比較して機内圧力損失を小さくすることができので、換気システムの省スペース化と省エネ化を図りながら快適性を高めることができる。
【0020】
前記外気取入れチャンバーが床下チャンバーに連通され、前記外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を前記床下チャンバーを介して室内のインテリアゾーンに供給する構成にしてある。
【0021】
上記構成によれば、中間期には、風路切替手段により、外気取入れ口と外気取入れチャンバー内のアシストファンとが連通する状態に風路を切り替え、室内温度(もしくは室内エンタルピー)よりも低温(もしくは低いエンタルピー)の外気を自然通風状態で外気取入れ口から外気取入れチャンバーを経由して床下チャンバー内に導入する。この床下チャンバー内に流入した外気を室内に分配供給し、室内空気を置換換気しながら冷却することができる。
【0022】
それ故に、風力換気の場合の外部風速が無い状態、或いは、重力換気の場合の中性帯以上の高さにおいても、自然通風時の風量を補うアシストファンにより自然通風の効果を高めることができ、且つ、外気が床下チャンバーを介して室内に分配供給されるため、外気による室内冷却が局部的にならず、快適性を確保しながら冷却効果を高めることができる。
【0023】
さらに、冬期において、通気口から外気取入れチャンバー内に吸引されたペリメータゾーン側の冷気は、床下チャンバーを介して室内に分配供給されるので、室内に供給された冷気による温度低下は微小となり、室内の快適性を維持しながら自然通風を補うアシストファンを利用して窓面からの冷熱負荷を処理することができる。
【0024】
前記外気取入れチャンバーと室内とを区画形成する窓下カウンターの上面に前記通気口が形成され、前記通気口よりも室内のインテリアゾーン側の位置において上方に引き出し操作可能で、且つ、その引き出し操作された高さ領域において窓面との間でペリメータゾーンを区画する遮蔽手段が設けられている。
【0025】
上記構成によれば、下方から上方に引き出し操作されるクライマー式の遮蔽手段によって直射日光を遮蔽しながら窓上部から良好に採光することができる。
しかも、この遮蔽手段は、窓下カウンターの上面に形成された通気口よりも室内のインテリアゾーン側の位置において上方に引き出し操作可能であり、且つ、その引き出し操作された高さ領域において窓面との間でペリメータゾーンを区画するから、ペリメータゾーンでの夏期の温熱及び冬期の冷熱を室内のインテリアゾーン側への拡散流出を抑制しながらアシストファンにて効率良く排出することができる。
【0026】
前記風路切替手段が、前記アシストファンと通気口との間の第1風路を開閉する第1ダンパーと、前記第1風路に連通する外気取入れ口側の第2風路を開閉する第2ダンパーとから構成され、少なくとも第1ダンパーの一部が、風路開放時に第1風路の一部を区画形成する区画壁に兼用構成されている。
【0027】
上記構成によれば、中間期には、風路切替手段の第1ダンパーを閉操作するとともに、第2ダンパーを開操作することにより、外気取入れ口とアシストファンとを連通する第2風路が開放され、室内温度(もしくは室内エンタルピー)より低温(もしくは低いエンタルピー)の外気を自然通風状態で外気取入れ口から外気取入れチャンバーを経由して床下チャンバー内に導入することができる。
【0028】
また、夏期又は冬期においては、風路切替手段の第1ダンパーを開操作するとともに、第2ダンパーを閉操作することにより、通気口とアシストファンとを連通する第1風路が開放され、アシストファンの逆転又は正転駆動により、床下チャンバー内の空気が通気口からペリメータゾーンに送風される、又は、ペリメータゾーン側の冷気が通気口から外気取入れチャンバー内に吸引される。
【0029】
そして、少なくとも第1ダンパーの一部が、風路開放時に第1風路の一部を区画形成する区画壁に兼用構成されているので、外気取入れチャンバーの内部構造の簡素化を図ることができる。
そして、本発明の第1特徴構成は、外気取入れ口から外気取入れチャンバー内に導入した外気を、前記外気取入れチャンバーに連通する床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに供給する建物の換気システムにおいて、
前記外気取入れチャンバーに、室内のペリメータゾーンに開口する通気口と、
自然通風時の風量を補う正逆転切替可能なアシストファンと、
前記外気取入れ口と前記通気口及び前記アシストファンとの間での風路を切り替える風路切替手段とを設け、
前記風路切替手段は、前記アシストファンと前記通気口との間の第1風路を開閉する第1ダンパーと、前記第1風路に連通する外気取入れ口側の第2風路を開閉する第2ダンパーとから構成され、
前記アシストファンと前記第1ダンパーと前記第2ダンパーとにより、
自然通風状態において、前記外気取入れ口からの導入外気を前記アシストファンで前記床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに送風する状態と、
前記ペリメータゾーンの冷気を前記通気口から前記アシストファンで吸引し、前記床下チャンバーを経由して室内のインテリアゾーンに供給する状態と、
前記アシストファンにより室内のインテリアゾーンの空気を前記床下チャンバーを経由して吸引し、前記通気口からペリメータゾーンに送風する状態とに切替可能に構成し、
通風量を計測する風量センサと、当該風量センサの検出信号に基づいて前記アシストファンを駆動制御する制御部と、を設け、
前記制御部は、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値内であるとき、前記アシストファンを駆動停止状態に維持し、且つ、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値よりも減少したとき、外部風速による自然通風量と前記アシストファンによる機械式通風量との合計風量を設定風量の許容値に近づけるように、前記アシストファンを駆動制御し、
さらに、前記制御部は、前記風量センサの計測風量が設定風量の許容値よりも上であるとき、前記アシストファンが駆動停止状態にある状態で第2ダンパーの開度を減少側に変更制御する点にある。
本発明の第2特徴構成は、前記風量センサは、前記床下チャンバーにおいて、外気の自然通風量と前記アシストファンによる機械式通風量との合計風量を計測する第1風量センサと、前記外気取入れチャンバーの前記第2風路において、前記外気取入れ口から取り込まれた外気の自然通風量を計測する第2風量センサと、を備える点にある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態を示すオフィスビルの断面斜視図
図2】中間期の運転状態を示すオフィスビルの断面図
図3】夏期の運転状態を示すオフィスビルの断面図
図4】冬期の運転状態を示すオフィスビルの断面図
図5】本発明の第3実施形態を示すオフィスビルの断面斜視図
図6】本発明の第4実施形態を示すオフィスビルの要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
図1図4は、建物の一例であるオフィスビルの換気システムを示し、床スラブ1の上方にフリーアクセスフロア2が配置され、このフリーアクセスフロア2と床スラブ1との間に床下チャンバー3が形成されているとともに、フリーアクセスフロア2の複数個所には、室内RのインテリアゾーンRIに吹き出し可能な床吹き出し口4が形成されている。
【0032】
床下チャンバー3の窓下側部位には、外壁部5に開口形成された外気取入れ口6と床下チャンバー3とを連通する外気取入れチャンバー7が形成され、この外気取入れチャンバー7と室内Rとを区画形成する窓下カウンター8の上面8aには、窓部W側のペリメータゾーンRPと外気取入れチャンバー7とを上下方向から連通する通気口10が形成されている。
【0033】
外気取入れチャンバー7内には、自然通風時の風量を補う正逆転切替可能なアシストファン12が配置され、このアシストファン12と外気取入れ口6及び通気口10との間での風路を切り替える風路切替手段11と、が設けられている。
【0034】
アシストファン12は、正逆転切替によって吸気部と排気部とが逆転する軸流ファン等から構成され、このアシストファン12に連動されたファンモータ13を制御部14からの制御信号に基づいて正逆転を切り替えることにより、正転時には、外気取入れ口6から吸引した外気又は通気口10から吸引したペリメータゾーンRP側の空気を床下チャンバー3側に向かって送風し、逆転時には、床下チャンバー3内の空気を吸引して通気口10からペリメータゾーンRP側に向かって上方に送風する。
【0035】
また、アシストファン12は、前記制御部14からの制御信号に基づくファンモータ13の回転数制御により、自然通風時の設定風量に相当する送風量が得られる設定最大回転数から送風量がゼロとなる回転停止の状態までの間において、複数の送風量を現出する回転数に段階的又は連続的に変更可能に構成されている。
【0036】
風路切替手段11は、アシストファン12と通気口10との間の第1風路16を開閉する電動式の第1ダンパー11Aと、第1風路16に連通する外気取入れ口6側の第2風路17を開閉する電動式の第2ダンパー11Bとから構成され、前記制御部14からの制御信号により第1ダンパー11A及び第2ダンパー11Bが開閉作動される。
【0037】
そして、図2に示すように、風路切替手段11の第1ダンパー11Aを閉作動させるとともに、第2ダンパー11Bを開作動させることにより、外気取入れ口6とアシストファン12とを連通する第2風路17が開放され、自然通風時に、外気取入れ口6から取り入れられた外気が外気取入れチャンバー7内の第2風路17及びアシストファン12を経由して床下チャンバー3に流入案内される。
【0038】
また、図3図4に示すように、風路切替手段11の第1ダンパー11Aを開作動させるとともに、第2ダンパー11Bを閉作動させることにより、通気口10とアシストファン12とを連通する第1風路16が開放される。
【0039】
第1風路16が開放されているときには、通気口10から流入したペリメータゾーンRPの空気を外気取入れチャンバー7内の第1風路16及びアシストファン12を経由して床下チャンバー3に流入案内する状態と、床下チャンバー3内の空気を外気取入れチャンバー7内のアシストファン12及び第1風路16を経由して通気口10からペリメータゾーンRP側に送風案内する状態とを選択的に現出することができる。
【0040】
第1ダンパー11Aのダンパー羽根11aは、第1風路16の横断方向一端部を支点として揺動することにより、第1風路16を全開する縦向きの開き姿勢と第1風路16を全閉する横向きの閉じ姿勢とに切り換えられる。
【0041】
この第1ダンパー11Aのダンパー羽根11aは、第1風路開放時の縦向きの開き姿勢において第1風路16の一部を区画形成する区画壁に兼用構成され、さらに、第1風路閉止時の横向きの閉じ姿勢においては、第2風路17の一部を区画形成する区画壁に兼用構成されている。
【0042】
床下チャンバー3のアシストファン12側には、外気の自然通風量とアシストファン12による機械式通風量との合計風量を単位時間(秒単位又は分単位)毎に計測する第1風量センサ18が設けられ、この第1風量センサ18の検出信号は前記制御部14に出力されている。
【0043】
この制御部14では、中間期の自然通風時に、第1風量センサ18の計測風量が自然通風時の設定風量となるように、アシストファン12のファンモータ13の回転数(回転停止状態から設定最大回転数までの範囲)を制御し、設定風量に不足する風量をアシストファン12で補う。
【0044】
また、窓下カウンター8の通気口10よりも室内RのインテリアゾーンRI側に少し偏った位置において上方に引き出し操作可能で、且つ、その引き出し操作(繰り出し操作)された高さ領域において窓面(窓ガラス面)Waとの間でペリメータゾーンRPを区画する遮蔽手段Aの一例である電動クライマー式のロールスクリーン20が設けられている。
【0045】
電動クライマー式のロールスクリーン20としては種々の構造のものが存在するが、その一例を簡単に説明すると、窓下カウンター8内には、非通気性のスクリーン20aを繰り出し可能に巻き取ってある巻き取りロール機構20bを配置するとともに、天井面21側には、スクリーン20aの上端部に取付けられた昇降ワイヤー20cを巻き上げる昇降モータ20dを配置してある。
【0046】
この電動クライマー式のロールスクリーン20により、窓面Waからの直射日光を遮蔽しながら窓面Waの上側部から採光することができ、しかも、ペリメータゾーンRPでの夏期の温熱及び冬期の冷熱を室内RのインテリアゾーンRI側への拡散流出を抑制しながらアシストファン12にて効率良く排出することができる。
【0047】
天井面21における窓面Wa側には、室内RのペリメータゾーンRPと天井裏空間22とを連通する排気口23が形成されている。この排気口23は、夏期において、通気口10からペリメータゾーンRPへの上向きの送風に伴って、窓面Waを通して伝達されたペリメータゾーンRP側の温熱を天井裏空間22内に排出する。
【0048】
また、天井面21には、空調空気(温風、冷風)を生成して室内Rに供給する空調室内機24の吹き出し部24Aと、室内RのインテリアゾーンRIと天井裏空間22とを連通する連通口25とが形成されている。
【0049】
天井面21の排気口23及び連通口25から天井裏空間22内に流入した空気は空調室内機24に還流空気として供給されたり、屋外に換気排出される。
【0050】
尚、中間期の自然通風時(自然換気モード)においては、室内RのインテリアゾーンRI内に流入した空気は、建物内に区画形成した竪穴部(ボイド)によるドラフト効果(所謂、煙突効果)を利用して屋外に排出したり、或いは、外壁部に形成された排気口等を通して屋外に排出される。
【0051】
次に、上述の如く構成されたオフィスビルの換気システムの動作について説明する。
〔1〕先ず、中間期においては、図2に示すように、制御部14からの制御信号により風路切替手段11の第1ダンパー11Aを閉作動させ、且つ、第2ダンパー11Bを開作動させ、外気取入れ口6とアシストファン12とを連通する第2風路17を開放する。
【0052】
外部風速による自然通風時には、外気取入れ口6から取り込まれた室内温度(もしくは室内エンタルピー)よりも低温(もしくは低いエンタルピー)の外気が外気取入れチャンバー7内の第2風路17及びアシストファン12を経由して床下チャンバー3に流入案内される。
【0053】
床下チャンバー3内に流入した外気は、フリーアクセスフロア2の複数個所に形成されている床吹き出し口4を通して室内RのインテリアゾーンRIに低速で吹き出し供給され、室内空気を徐々に押し上げ、天井面21の連通口25から天井裏空間22内に排出することにより、室内空気を置換換気しながら室内Rを冷却することができる。
【0054】
このとき、床下チャンバー3のアシストファン12側に設けられた第1風量センサ18で計測された風量が、自然換気時の設定風量の許容値内であれば、アシストファン12を駆動停止状態に維持したまま、外部風速による自然通風を続ける。
【0055】
第1風量センサ18で計測された風量が設定風量の許容値よりも減少したと制御部14で判断した場合には、その不足風量に相当する機械的通風量を得ることのできる回転数でファンモータ13を駆動制御し、外部風速による自然通風量とアシストファン12による機械式通風量との合計風量を設定風量の許容値内に近づける。
【0056】
そのため、中間期の自然通風による冷却時において、自然通風量が少なくなる事態が発生した場合でも、アシストファン12の正転駆動によって不足風量を補うことができるから、安定性のある自然通風によって室内Rの局部冷却や冷却不足を抑制し、快適性を確保することができる。
【0057】
〔2〕夏期には、人為操作等による制御部14からの制御信号により、図3に示すように、風路切替手段11の第1ダンパー11Aを開作動させるとともに、第2ダンパー11Bを閉作動させ、通気口10とアシストファン12とを連通する第1風路16を開放する。
【0058】
この第1風路16が開放された状態において、制御部14からの制御信号に基づいてアシストファン12を逆転駆動すると、ペリメータゾーンRP側の室内温度(もしくは室内エンタルピー)よりも低温(もしくは低いエンタルピー)状態にある床下チャンバー3内の空気がアシストファン12で吸引され、且つ、第1風路16を経由して通気口10からペリメータゾーンRP側に送風される。
【0059】
この通気口10から送風された空気が窓面Waに沿って上昇流動し、ペリメータゾーンRP側の温熱を下方から押し上げて天井面21の排気口23から天井裏空間22内に排出することができ、窓面Waからの温熱負荷を処理することができる。
【0060】
〔3〕冬期には、人為操作等による制御部14からの制御信号により、図4に示すように、風路切替手段11の第1ダンパー11Aを開作動させるとともに、第2ダンパー11Bを閉作動させ、通気口10とアシストファン12とを連通する第1風路16を開放する。
【0061】
この第1風路16が開放された状態において、制御部14からの制御信号に基づいてアシストファン12を正転駆動すると、ペリメータゾーンRP側の冷気を通気口10から外気取入れチャンバー7の第1風路16内に吸引することができる。
【0062】
この第1風路16内に吸引された冷気はアシストファン12で床下チャンバー3に送風され、フリーアクセスフロア2の複数個所に形成されている床吹き出し口4から室内RのインテリアゾーンRIに分配供給される。
【0063】
この室内Rへの分配供給によって冷気による温度低下は微小となり、室内Rの快適性を維持しながら窓面Waからの冷熱負荷を処理することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態の図4の仮想線で示すように、外気取入れチャンバー7の第2風路17に、外気取入れ口6から取り込まれた外気の自然通風量を単位時間(秒単位又は分単位)毎に計測する第2風量センサ28を設け、この第2風量センサ28の検出信号を前記制御部14に出力する。
【0065】
また、風路切替手段11の第2ダンパー11Bのダンパー羽根の開度を全閉から全開までの間において段階的又は無段階的に変更可能に構成し、第2風量センサ28で計測された風量が、自然換気時の設定風量の許容値以上であると制御部14において判断したとき、第2風量センサ28の計測風量が設定風量の許容値内となるように第2ダンパー11Bのダンパー羽根の開度を減少側に変更制御する。
【0066】
〔第3実施形態〕
図5は、遮蔽手段Aの別実施形態を示し、上述の第1実施形態で説明した電動クライマー式のロールスクリーン20のスクリーン20aを、多数のスラット30Aを昇降操作及び角度調節操作可能な横型のブラインド部30と、このブラインド部30のボトムレール30Bに取付けられるロールスクリーン部31とから構成したものである。
【0067】
ロールスクリーン部31は、少なくともコールドドラフトの拡散防止に有効な高さ範囲(例えば、300mm程度)に展開可能な長さに構成されている。
【0068】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0069】
〔第4実施形態〕
図6は風路切替手段11の別実施形態を示し、外気取入れチャンバー7の底部側の水平軸芯周りでの揺動により、アシストファン12と通気口10との間の第1風路16を遮断する第1閉じ状態と、アシストファン12と外気取入れ口6との間の第2風路17を遮断する第2閉じ状態とに切替可能な一つの電動式のダンパー35から構成してある。
【0070】
そして、図6(a)に示すように、ダンパー35を第1閉じ状態に作動させることにより、外気取入れ口6とアシストファン12とを連通する第2風路17が開放され、自然通風時に、外気取入れ口6から取り入れられた外気が外気取入れチャンバー7内の第2風路17及びアシストファン12を経由して床下チャンバー3に流入案内される。
【0071】
また、図6(b)に示すように、ダンパー35を第2閉じ状態に作動させることにより、通気口10とアシストファン12とを連通する第1風路16が開放される。
【0072】
第1風路16が開放されているときには、通気口10から流入したペリメータゾーンRPの空気を外気取入れチャンバー7内の第1風路16及びアシストファン12を経由して床下チャンバー3に流入案内する状態と、床下チャンバー3内の空気を外気取入れチャンバー7内のアシストファン12及び第1風路16を経由して通気口10からペリメータゾーンRP側に送風案内する状態とを選択的に現出することができる。
【0073】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0074】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、風路切替手段11を一つ又は複数のダンパーから構成したが、一つ又は複数のシャッター等から構成してもよい。
また、風路切替手段11としては、電動部が1箇所で2箇所のダンパーを開閉できるものを含む。
さらに、風路切替手段11に用いられるダンパーとしては、強風時に自動的に閉止状態に切替作動するものを含む。
要するに、風路切替手段11としては、アシストファン12と外気取入れ口6及び通気口10との間での風路を切り替えることのできるものであれば、いかなる構造のものを用いてもよい。
【0075】
(2)上述の第1実施形態では、窓面(窓ガラス面)Waとの間でペリメータゾーンRPを区画する遮蔽手段Aの一例である電動クライマー式のロールスクリーン20を用いたが、手動クライマー式のロールスクリーン20を用いてもよい。
【0076】
(3)遮蔽手段Aとして、上方から下方に向かって繰り出されるロールスクリーン又はブラインドから構成してもよい。
【0077】
(4)上述の第1実施形態では、冬期において、ペリメータゾーンRP側の冷気を通気口10からアシストファン12で吸引し、この吸引された冷気を床下チャンバー3に送風するように構成したが、アシストファン12で吸引した冷気を外気取入れ口6又は他の部位から屋外に排出してもよい。
【0078】
(5)上述の第1実施形態では、アシストファン12として、回転停止状態と複数の回転数とに切替可能に構成したものを用いたが、回転停止状態と特定の回転数とに切替可能に構成してあるものを用いてもよい。
この場合は、自然通風時の設定風量に維持できない可能性はあるが、アシストファン12の駆動によって不足する風量を補うことができる。
【0079】
(6)上述の第1実施形態では、外気取入れチャンバー7を床下チャンバー3に連通して、外気取入れチャンバー7内に導入した外気を床下チャンバー3を介して室内RのインテリアゾーンRIに供給するように構成したが、床下チャンバー3が形成されていない場合には、導入した外気を外気取入れチャンバー7から室内RのインテリアゾーンRIに供給するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明の換気システムは、オフィスビル、商業ビル、複合商業施設、マンション、戸建住宅等の建物において、風力換気又は重力換気を用いた換気システムとして有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
A 遮蔽手段
R 室内
RP ペリメータゾーン
RI インテリアゾーン
3 床下チャンバー
6 外気取入れ口
7 外気取入れチャンバー
8 窓下カウンター
10 通気口
11 風路切替手段
11A 第1ダンパー
11B 第2ダンパー
12 アシストファン
16 第1風路
17 第2風路


図1
図2
図3
図4
図5
図6