(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属メッキ層は、ニッケル、亜鉛、錫、クロム及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料で構成されるメッキ層である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の外装材が、熱融着性樹脂層を内側にしてチューブ状に巻かれるとともに、前記外装材の巻き方向の両端部のうちの一端部の内面と他端部の内面とが重ね合わされて前記一端部の内面と他端部の内面とが熱融着されてなることを特徴とする蓄電デバイス用チューブ型外装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ケーブルバッテリーとしては、フレキシブルで軽量であることが求められており、このために外装材としてもより薄いものが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたケーブルバッテリー用外装材は、バリア層の両側にシーラント樹脂層が設けられており、軽量化のためにシーラント樹脂層を薄くすれば、シール接合強度が低下するし、外装材としての強度も低下する。一方で、シール接合強度の低下をなくすべくシーラント樹脂層を厚くすると、外装材の軽量化を達成することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、外装材の厚さを低減して軽量化を図っても、高いバリア性を確保できる蓄電デバイス用外装材および蓄電デバイス用チューブ型外装体と、さらに該外装体を用いて構成された蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]チューブ状に巻いてフレキシブル性を有するチューブ型外装体を形成する蓄電デバイス用外装材であって、
前記外装材は、外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含み、
前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層の間に、又は/及び前記熱融着性樹脂層と前記金属箔層の間に、金属メッキ層が配置されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0010】
[2]前記金属メッキ層は、ニッケル、亜鉛、錫、クロム及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料で構成されるメッキ層である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[3]前記金属箔層の厚さが5μm以上25μm以下である前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[4]前項1〜3のいずれか1項に記載の外装材が、熱融着性樹脂層を内側にしてチューブ状に巻かれるとともに、前記外装材の巻き方向の両端部のうちの一端部の内面と他端部の内面とが重ね合わされて前記一端部の内面と他端部の内面とが熱融着されてなることを特徴とする蓄電デバイス用チューブ型外装体。
【0013】
[5]前項4に記載のチューブ型外装体と、該チューブ型外装体内に収容されたフレキシブル性を有する蓄電デバイス本体部と、を備えることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0014】
[1]の発明では、耐熱性樹脂層と金属箔層の間に、又は/及び熱融着性樹脂層と金属箔層の間に、金属メッキ層が配置された構成であるから、金属箔の薄膜化により金属箔層にピンホールが存在していても、金属メッキ層によって、外部からの水分の侵入を抑えることができると共に、電解液の外部への拡散、漏洩も抑えることができる。このように金属メッキ層の存在によって上記諸効果の向上を達成できるので、その分、金属箔層の厚さを薄く(例えば5μm以上25μm以下)設計して軽量化しても、外装材として外部からの水分の侵入を抑えることができると共に電解液の拡散も防止することができる。従って、本発明によれば、十分な薄膜化、軽量化を図りつつ、優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保することができる。このように薄膜化、軽量化された本発明の外装材を用いて外装された蓄電デバイスは、蓄電デバイスの重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させることができる。更に、金属メッキ層が積層されているので、外装材の耐突き刺し性をさらに向上させることができる。
【0015】
[2]の発明では、金属メッキ層は、上記特定の金属で構成されるので、より優れた水分バリア性およびより優れた電解液拡散防止性を確保できると共に、外装材としての突刺強度をさらに向上させることができる。
【0016】
[3]の発明では、金属箔層の厚さが5μm以上25μm以下であるから、優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保しつつ、外装材としてさらに薄膜化、軽量化を図ることができる。
【0017】
[4]の発明では、十分な薄膜化、軽量化を図りつつ、優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保した、蓄電デバイス用チューブ型外装体が提供される。
【0018】
[5]の発明では、上記チューブ型外装体内にフレキシブル性を有する蓄電デバイス本体部が収容された構成であるので、チューブ型外装体により、優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保できると共に、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させた蓄電デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の一実施形態を
図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層14の一方の面に第1接着剤層15を介して耐熱性樹脂層(外側層)12が積層一体化されると共に、前記金属箔層14の他方の面に第2接着剤層16を介して熱融着性樹脂層(内側層)13が積層一体化された構成からなる。本発明の蓄電デバイス用外装材1は、チューブ状に巻かれることによってフレキシブル性を有するチューブ型外装体32に形成されて使用される(
図3参照)。
【0021】
本発明では、前記耐熱性樹脂層12と前記金属箔層14の間に、金属メッキ層17が配置された構成(
図1参照)、前記熱融着性樹脂層13と前記金属箔層14の間に、金属メッキ層17が配置された構成(
図2参照)、或いは前記耐熱性樹脂層12と前記金属箔層14の間に金属メッキ層17が配置されると共に前記熱融着性樹脂層13と前記金属箔層14の間にも金属メッキ層17が配置された構成のいずれかを採用する。
【0022】
図1に示す実施形態では、蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層14の一方の面に金属メッキ層17が形成され、該金属メッキ層17の表面に第1接着剤層15を介して耐熱性樹脂層(外側層)12が積層一体化されると共に、前記金属箔層14の他方の面に第2接着剤層16を介して熱可塑性樹脂層(内側層)13が積層一体化された構成からなる。
【0023】
また、
図2に示す実施形態では、蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層14の一方の面に金属メッキ層17が形成され、該金属メッキ層17の表面に第2接着剤層16を介して熱可塑性樹脂層(内側層)13が積層一体化されると共に、前記金属箔層14の他方の面に第1接着剤層15を介して耐熱性樹脂層(外側層)12が積層一体化された構成からなる。
【0024】
図1、2に示す実施形態では、金属メッキ層17は、金属箔層14の片面のみに設けられていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、金属箔層14の両面に金属メッキ層17、17が設けられた構成を採用してもよい。
【0025】
上記蓄電デバイス用外装材1では、「耐熱性樹脂層12と金属箔層14の間に」又は/及び「熱融着性樹脂層13と金属箔層14の間に」金属メッキ層17が配置された構成であるから、金属箔の薄膜化により金属箔層14にピンホールが存在していても、金属メッキ層17によって、外部からの水分の侵入を抑えることができると共に、電解液の外部への拡散、漏洩も抑えることができる。このように金属メッキ層17の存在によって上記諸効果の向上を達成できるので、その分、金属箔層の厚さを薄く(例えば5μm以上25μm以下)設計して軽量化しても、外装材として外部からの水分の侵入を抑えることができると共に電解液の拡散も防止することができる。従って、本発明によれば、十分な薄膜化、軽量化を図りつつ、優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保することができる。このように薄膜化、軽量化された本発明の外装材1を用いて外装された蓄電デバイス30は、蓄電デバイスの重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0026】
なお、本発明において、十分な軽量化を図るべく前記金属箔層14の厚さを30μm未満に設定した場合には、金属箔にピンホールが発生している可能性があり、一方、金属メッキ層17は、応力変化等によりごく一部に剥がれが生じる可能性は否定できないものの、
図1、2の構成(金属箔層14および1つの金属メッキ層17の2重のバリアが設けられた構成)では、前記金属箔層14のピンホールの位置(特定点)と前記金属メッキ層17の剥がれ点の位置(特定点)とが重なり合う可能性は実質的にないと言えるので、優れた水分バリア性及び優れた電解液拡散防止性を確保することができる。
【0027】
また、上記実施形態では、前記金属箔層14の少なくともいずれか一方の表面に金属メッキ層17が形成されており、金属箔の薄膜化により金属箔層14にピンホールが存在していても、ピンホールの深さ方向(金属箔の厚さ方向)の端部開口が、金属メッキ層17でほぼ閉塞されたものとなっていると考えられる。また、金属箔層14におけるピンホールの内部(ピンホールにおける端部開口から更にホール内部に入り込んだ領域)にまで金属メッキ層17のメッキ部が侵入して略閉塞又は閉塞している場合もあるものと考えられる。
【0028】
本発明において、前記耐熱性樹脂層(外側層)12は、保護層としての役割を主に担う部材である、前記耐熱性樹脂層(耐熱性樹脂フィルム層等)12を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層13を構成する熱融着性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0029】
前記耐熱性樹脂層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、延伸ポリアミドフィルム(延伸ナイロンフィルム等)、延伸ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層12としては、二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム等)、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムにより構成されるのが特に好ましい。前記ナイロンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、MXDナイロン等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層12は、単層(単一の延伸フィルム)で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0030】
中でも、前記耐熱性樹脂層12は、外方側に配置された二軸延伸ポリエステルフィルムと、第1接着剤層15側に配置された二軸延伸ポリアミドフィルムとを含む複層構成であるのが好ましい。さらに、前記耐熱性樹脂層12は、外方側に配置された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、第1接着剤層15側に配置された二軸延伸ナイロンフィルムとを含む複層構成であるのがより好ましい。
【0031】
なお、前記耐熱性樹脂層12は、ポリカーボネート未延伸フィルム、ポリイミド未延伸フィルム等の耐熱性樹脂未延伸フィルムで構成されていてもよい。
【0032】
前記耐熱性樹脂層12の厚さは、10μm〜25μmに設定されるのが好ましい。前記耐熱性樹脂層12として二軸延伸ポリアミドフィルムを用いる場合には15μm〜25μmに設定されるのがより好ましい。
【0033】
前記金属メッキ層17を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル、亜鉛、錫、クロム、コバルト、金、銀、プラチナ等が挙げられる。中でも、前記金属メッキ層17は、ニッケル、亜鉛、錫、クロム及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料で構成されるメッキ層であるのが好ましく、これら特定の金属材料の少なくとも1種で構成される場合には、より一層優れた水分バリア性及びより一層優れた電解液拡散防止性を確保できると共に、外装材1としての突き刺し強度をさらに向上させることができる。
【0034】
前記金属メッキ層17の厚さ(両面にメッキ層が形成されている場合には片面に形成されたメッキ層の厚さ)は、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さが30μm未満では金属箔にピンホールが発生している可能性があるが、この金属箔の厚さに合わせて金属メッキ層17の厚さを増減調整することで、外装材1全体として優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保することができる。中でも、前記金属メッキ層17の厚さ(両面にメッキ層が形成されている場合には片面に形成されたメッキ層の厚さ)は、薄膜化を図りつつ金属箔層14のピンホールを十分に塞ぐ観点から、0.5μm〜2μmに設定されるのがより好ましく、0.5μm〜1μmに設定されるのが特に好ましい。なお、金属メッキ層17を構成する金属としてニッケルを使用した場合には、他の金属を使用した場合と比較して、突き刺し強度をより向上させることができる利点がある。
【0035】
前記金属メッキの手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無電解メッキ法、電気メッキ法、真空メッキ法等が挙げられる。中でも、前記金属メッキ層17は、無電解メッキ法により形成されたものであるのが好ましい。無電解メッキ法により形成した金属メッキ層は、電気メッキ法で形成したものと比較して、ムラが無くより均一なメッキ層になっていて優れた水分バリア性及び優れた電解液拡散防止性を確実に確保できるし、特に金属箔層14がアルミニウム箔層である場合には該アルミニウム箔層14に対して金属メッキ層(無電解メッキ法により形成した金属メッキ層)17が高い密着性を備えているという有利な効果を奏する。
【0036】
前記金属メッキ層17は、前記耐熱性樹脂層12と前記金属箔層14の間に配置されているのが好ましい。この場合、前記金属メッキ層17は、金属箔層14の外側の面(耐熱性樹脂層12側の面)に金属材料がメッキされたものであるのがより好ましい。勿論、前記金属メッキ層17は、前記耐熱性樹脂層(外側層)12の内面に金属材料がメッキされたものであってもよい。
【0037】
また、前記金属メッキ層17は、前記熱融着性樹脂層13と前記金属箔層14の間に配置されていてもよい。この場合、前記金属メッキ層17は、金属箔層14の内側の面(熱融着性樹脂層13側の面)に金属材料がメッキされたものであるのが好ましい。勿論、前記金属メッキ層17は、前記熱融着性樹脂層(内側層)13の内面に金属材料がメッキされたものであってもよい。
【0038】
前記熱融着性樹脂層(内側層)13は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0039】
前記熱融着性樹脂層13を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンアクリル酸エチル(EEA)、エチレンアクリル酸メチル(EAA)、エチレンメタクリル酸メチル樹脂(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0040】
前記熱融着性樹脂層13の厚さは、15μm〜30μmに設定されるのが好ましい。15μm以上とすることで十分なヒートシール強度を確保できるとともに、30μm以下に設定することで薄膜化、軽量化に資する。前記熱融着性樹脂層13は、熱融着性樹脂未延伸フィルム層で形成されているのが好ましく、前記熱融着性樹脂未延伸フィルム層13は、単層であっても良いし、複層であっても良い。
【0041】
前記金属箔層14は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層14の厚さは、5μm以上30μm未満であるのが好ましい。この厚さ範囲とすることで薄膜化、軽量化を図ることができると共に、前記金属メッキ層17の厚さを増減調整することで、外装材1全体として優れた水分バリア性および優れた電解液拡散防止性を確保することができる。中でも、前記金属箔層14の厚さは、5μm以上20μm未満であるのがより好ましく、5μm〜18μmがさらに好ましく、5μm〜15μmが特に好ましい。前記金属箔としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔、チタン箔等が挙げられる。中でも、軽量化の観点から、アルミニウム箔を用いるのが好ましい。
【0042】
外装材1の外側層(耐熱性樹脂層)12および内側層(熱融着性樹脂層)13は樹脂からなる層であり、これらの樹脂層には極微量ではあるが、ケースの外部からは光、酸素、液体が入り込むおそれがあり、内部からは内容物(電池の電解液)がしみ込むおそれがある。これらの侵入物が金属箔層14に到達すると金属箔層の腐食原因となる。本発明では、前記金属箔における少なくとも前記熱融着性樹脂層13側の面に化成皮膜が形成されているのが好ましく、この場合には金属箔層14の耐食性を向上させることができる。中でも、前記金属箔の両面に化成皮膜を形成した構成を採用するのが特に好ましく、この場合には、金属箔層14の耐食性を十分に向上させることができる。
【0043】
前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、例えば、金属箔にクロメート処理、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理を施すことによって形成することができる。例えば、クロメート処理の場合は、脱脂処理を行った金属箔の表面に下記1)〜3)のいずれかの混合物の水溶液を塗工した後、乾燥する。
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0044】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0045】
前記第1接着剤層15としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層15の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第1接着剤層15の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0046】
前記第2接着剤層16としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記第1接着剤層5として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。前記第2接着剤層16の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第2接着剤層16の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0047】
前記金属箔層14と前記耐熱性樹脂層12との貼り合わせ方法は、特に限定されないが、ドライラミネートと呼ばれる方法を推奨できる。具体的には、金属箔層14の上面または耐熱性樹脂フィルム層12の下面、あるいはこれらの両方の面に、調製した第1接着剤15を塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥皮膜とした後に、金属箔層14と耐熱性樹脂フィルム層12とを貼り合わせる。その後、第1接着剤の硬化条件に従って硬化させる。これにより、金属箔層14と耐熱性樹脂層12とが第1接着剤層15を介して接合される。なお、第1接着剤の塗布手法としては、グラビアコート法、リバースロールコート法、リップロールコート法等を例示できる。
【0048】
前記金属箔層14と前記熱融着性樹脂フィルム層13との貼り合わせ方法は、特に限定されないが、上述した金属箔層14と耐熱性樹脂フィルム層12との貼り合わせと同様に、第2接着剤16を塗布して乾燥させた後に、金属箔層14と熱融着性樹脂フィルム層13とを貼り合わせるドライラミネート法等を例示できる。
【0049】
前記熱融着性樹脂層13および前記耐熱性樹脂層12には、添加剤が添加含有されていてもよい。このような添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブロッキング防止剤(シリカ、タルク、カオリン、アクリル樹脂ビーズ等)、滑剤(脂肪酸アマイド、ワックス等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール等)などが挙げられる。
【0050】
本発明の外装材1の厚さは、30μm〜80μmに設定されるのが好ましい。80μm以下であることで、この外装材1を用いて外装された蓄電デバイス30の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させることができる。中でも、前記外装材1の厚さは、30μm〜65μmに設定されるのがより好ましい。
【0051】
本発明の外装材1は、
図1、2に示した積層構造に特に限定されるものではなく、さらに層を追加して外装材として機能を向上させることもできる。例えば、外装材の外面の物理的耐久性(傷防止等)を向上させるために、
図1に示す構成において耐熱性樹脂層12の表面(外面)に表面処理を行ってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第1接着剤層15と第2接着剤層16を設けた構成を採用しているが、これら両層15、16は、いずれも必須の構成層ではなく、これらを設けない構成を採用することもできる。
【0053】
図3に、本発明の蓄電デバイス30の一実施形態を示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン二次電池であり、チューブ型外装体32と、該チューブ型外装体32内に収容されたフレキシブル性を有する蓄電デバイス本体部(電池本体部)31と、を備える。前記チューブ型外装体32は、前記蓄電デバイス用外装材1が熱融着性樹脂層13を内側にしてチューブ状に巻かれるとともに、前記外装材1の巻き方向の両端部のうちの一端部2の内面2aと他端部3の内面3aとが重ね合わされて、前記一端部2の内面2aの熱融着性樹脂層13と、前記他端部3の内面3aの熱融着性樹脂層13とが熱融着されてなる。前記一端部2の外面2bは耐熱性樹脂層12であり、前記他端部3の外面3bは耐熱性樹脂層12である。前記チューブ型外装体32の横断面形状は、略円形状である。本実施形態では、前記蓄電デバイス本体部31は、正極、負極、電解質などを含む。
【0054】
前記チューブ型外装体32の長さ及び外径は、特に限定されるものではなく、前記蓄電デバイス本体部31のサイズに対応して設定されるものである。例えば、前記チューブ型外装体32の外径は、2mm〜20mmに設定される。
【0055】
前記蓄電デバイス30では、前記外装材1の巻き方向の前記一端部2の端面2c及び前記他端部3の端面3cは、いずれもチューブ型外装体32の内側(蓄電デバイス本体部31側)に配置されないでチューブ型外装体32の外側に配置されているので、これら端面2c、3cで露出する金属箔層14の端面露出部や接着剤15、16等が電解液に侵される虞はない。これにより、前記チューブ型外装体32の耐用寿命を格段に長くすることができる。
【0056】
本発明において、前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記電池本体部の他、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0057】
上記実施形態では、チューブ型外装体32は、その横断面形状が、略円形状であったが、特にこのような形態に限定されるものではなく、その横断面形状は、例えば、楕円形状であっても良いし、偏平円形状であっても良いし、多角形形状(例:三角形形状、四角形形状、五角形形状、六角形形状、八角形形状等)であっても良い。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
厚さ15μmの軟質アルミニウム箔(JIS H4160で規定されるA8079の軟質アルミニウム合金箔)に無電解ニッケルメッキ(カニゼンメッキ)を行うことによって、前記アルミニウム箔14の一方の面(外側層形成側の面)に厚さ1μmのニッケルメッキ層17を形成して、片面メッキアルミニウム箔を得た。
【0060】
次に、前記片面メッキアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、150℃で乾燥を行うことによって、両面に化成皮膜を形成した片面メッキアルミニウム箔を準備した。この化成皮膜によるクロム付着量は、片面で5mg/m
2であった。
【0061】
次に、前記両面に化成皮膜(図示しない)を形成した片面ニッケルメッキアルミニウム箔14の一方の面(メッキ層17の表面の化成皮膜)に、二液硬化型ポリエステル−ウレタン系樹脂接着剤を塗布して乾燥させて第1接着剤層15を形成し、該第1接着剤層15の表面に、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12を貼り合わせると共に、前記アルミニウム箔14の他方の面に二液硬化型接着剤(酸変性ポリプロピレンを主剤とし、ヘキサメチレンジイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤)を塗布して乾燥させて第2接着剤層16とし、該第2接着剤層16の表面に、厚さ20μmの未延伸ポリプロピレンフィルム13を貼り合わせた。この積層体を40℃環境下で3日間放置する(養生を行う)ことによって、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0062】
<実施例2>
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0063】
<実施例3>
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0064】
<実施例4>
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0065】
<実施例5>
前記アルミニウム箔14の一方の面(外側層形成側の面)に、厚さ1μmのニッケルメッキ層を形成するのに代えて、厚さ3μmの亜鉛メッキ層を形成した以外は、実施例3と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0066】
<実施例6>
前記アルミニウム箔14の一方の面(外側層形成側の面)に、厚さ1μmのニッケルメッキ層を形成するのに代えて、厚さ4μmの錫メッキ層を形成した以外は、実施例3と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0067】
<実施例7>
前記アルミニウム箔14の一方の面(外側層形成側の面)に、厚さ1μmのニッケルメッキ層を形成するのに代えて、厚さ0.5μmのクロムメッキ層を形成した以外は、実施例3と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0068】
<実施例8>
前記アルミニウム箔14の一方の面(外側層形成側の面)に、厚さ1μmのニッケルメッキ層を形成するのに代えて、厚さ1μmのコバルトメッキ層を形成した以外は、実施例3と同様にして、
図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0069】
<実施例9>
厚さ15μmの軟質アルミニウム箔(JIS H4160で規定されるA8079の軟質アルミニウム合金箔)に無電解ニッケルメッキ(カニゼンメッキ)を行うことによって、前記アルミニウム箔14の一方の面(内側層形成側の面)に厚さ1μmのニッケルメッキ層17を形成して、片面メッキアルミニウム箔を得た。
【0070】
次に、前記片面メッキアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、150℃で乾燥を行うことによって、両面に化成皮膜を形成した片面メッキアルミニウム箔を準備した。この化成皮膜によるクロム付着量は、片面で5mg/m
2であった。
【0071】
次に、前記両面に化成皮膜(図示しない)を形成した片面ニッケルメッキアルミニウム箔14の他方の面に、二液硬化型ポリエステル−ウレタン系樹脂接着剤を塗布して乾燥させて第1接着剤層15を形成し、該第1接着剤層15の表面に、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム12を貼り合わせると共に、前記アルミニウム箔14の一方の面(メッキ層17の表面の化成皮膜)に二液硬化型接着剤(酸変性ポリプロピレンを主剤とし、ヘキサメチレンジイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤)を塗布して乾燥させて第2接着剤層16とし、該第2接着剤層16の表面に、厚さ20μmの未延伸ポリプロピレンフィルム13を貼り合わせた。この積層体を40℃環境下で3日間放置する(養生を行う)ことによって、
図2に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0072】
<比較例1>
片面にニッケルメッキ層が形成された厚さ15μmのアルミニウム箔に代えて、(メッキ層を有しない)厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0073】
<比較例2>
片面にニッケルメッキ層が形成された厚さ15μmのアルミニウム箔に代えて、(メッキ層を有しない)厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例2と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0074】
<比較例3>
片面にニッケルメッキ層が形成された厚さ15μmのアルミニウム箔に代えて、(メッキ層を有しない)厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0075】
<比較例4>
片面にニッケルメッキ層が形成された厚さ15μmのアルミニウム箔に代えて、(メッキ層を有しない)厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例4と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0076】
<比較例5>
片面にニッケルメッキ層が形成された厚さ15μmのアルミニウム箔に代えて、(メッキ層を有しない)厚さ30μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について下記評価法に基づいて評価を行った。
【0079】
<突刺強度評価法>
JIS H1707(1997)「食品包装用プラスチックフィルム通則」に準拠し、試験片を固定し、室温で、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を50mm/分の速度で試験片に突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。表1に示す突刺強度(N/15mm)は、5個の試験片の各測定値の平均値である。
【0080】
<面密度測定法>
外装材を縦10cm×横10cmの正方形状(100cm
2)に打ち抜き、その質量M(g)を測定し、
D=M×10000÷100
上記計算式により面密度D(g/m
2)を求めた。この結果を表1に示す。
【0081】
<水分バリア性の評価試験法>
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材を用いて下記のとおり電池(模擬電池)を作成した。
【0082】
厚さ30μmの軟質アルミニウム箔、厚さ100μmのポリプロピレンフィルム、厚さ30μmの軟質銅箔を層状に重ね合わせて模擬電極を作成し、この模擬電極を10枚積層して、ケーブル状の蓄電デバイス本体部(模擬品)31を得た。
【0083】
しかして、
図3に示すように、ケーブル状の蓄電デバイス本体部31の外周面を被覆する態様で蓄電デバイス用外装材1を熱融着性樹脂層(内側層)13を内側にしてチューブ状に巻き付け、外装材1の巻き方向の両端部のうちの一端部2の内面2aと他端部3の内面3aとを重ね合わせて、この重ね合わせ部に200℃に加熱した金属製熱板を0.3MPaの圧力で3秒間当てることによって一端部2の内面2aの熱融着樹脂層13と他端部3の内面3aの熱融着樹脂層13とを一部を残して熱融着させた後(ヒートシールを行った後)、これを露点−60℃のドライルーム内に24時間放置した。
【0084】
次に、露点−60℃のドライルーム内で、前記ヒートシール接合体における未だ接合されていない開放部(前記一部)を介して、注射器を用いて電解液(エチレンカーボネート:ジメチレンカーボネート:ジメチルカーボネートが、1:1:1の体積比率で混合された混合カーボネートにLiPF
6を添加して得られたLiPF
6濃度が1モル/Lの電解液)10mLを内部に注入滴下した後、0.086MPaの減圧状態で、前記ヒートシール接合体の未接合の開放部に、200℃に加熱した金属製熱板を0.3MPaの圧力で3秒間当てて熱融着(ヒートシール接合)を行うことによって、封止を完了して、
図3に示す電池(模擬電池)30を得た。
【0085】
上記のようにして得られた電池(模擬電池)について、下記評価試験法に基づいて、模擬電池内部の電解液中の水分量の測定による水分バリア性の評価を行った。即ち、各実施例、各比較例ごとに、それぞれ3個のサンプル(模擬電池)を準備し、60℃、湿度90%の恒温恒湿槽にそれぞれ3個配置せしめた後、1週間経過後に1個取り出し、2週間経過後に1個取り出し、3週間経過後に1個取り出し、それぞれについてシリンジを用いて電池内部の電解液を1mL取り出し、カールフィッシャー水分測定器(平沼産業株式会社製「AQ2250」)を用いて電解液中の水分量を測定した。この結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
まず、表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9の外装材は、アルミニウム箔として30μmの厚さのものを使用した比較例5と比較して、面密度が小さくなっており軽量化を図ることができていると共に、突刺強度も十分に得られていた。
【0088】
表2の結果において、初期の(試験開始前の)水分量と比較して、1週間経過後以降の水分量は、いずれも明らかに増加しているが、これは、模擬電池や、外装材のポリプロピレンフィルムに微量含まれていた水分が電解液中に溶出したものと考えられる。比較例1〜4の結果(1、2、3週間経過後の水分量)との比較から、実施例1〜9の外装材を用いて構成された模擬電池では、極端な(実質的な)水分増加は認められず、本発明の外装材による水分バリアの優れた効果を確認することができた。
【0089】
以上のとおり、本発明に係る実施例1〜9の蓄電デバイス用外装材は、軽量化が図られていながら、高いバリア性も確保できる。なお、実施例2と実施例4の対比から、外側層としてナイロンを用いた構成の方が、外側層としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いた構成よりも高い突刺強度が得られることがわかる。