(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着用状態の吸収性物品における吸収体を挟んで着用者の身体と反対側に位置する部材である液不透過性ないし液難透過性の透湿性裏面シートの外面に、前記不織布が配されている請求項5に記載の吸収性物品。
熱可塑性樹脂を含む粒子を、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含む繊維を構成繊維とする原反不織布に散布し、次いで加熱処理によって該粒子と該繊維とを融着によって固着させて不織布を製造し、
前記不織布を、吸収性物品の最外面に配置する工程を有する吸収性物品の製造方法。
熱可塑性樹脂を含む粒子を、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含む繊維を構成繊維とするウエブに散布し、次いで加熱処理によって該粒子と該繊維とを融着によって固着させて不織布を製造し、
前記不織布を、吸収性物品の最外面に配置する工程を有する吸収性物品の製造方法であって、
前記ウエブの不織布化工程を、前記粒子を該ウエブに散布した後のいずれかの時点において行う、吸収性物品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明は不織布に係るものである。本発明にいう不織布とは、構成繊維が不定方向を向いて無規則に堆積してなる布のことであり、織物地や編み物地のように構成繊維が規則的に配列された布とは対極の位置にあるものである。
【0013】
不織布には、その製造方法に起因して様々な種類のものがある。例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ヒートロール不織布などが挙げられる。これらの不織布はすべて本発明の適用対象となるものである。また2枚以上の不織布の積層体や、1枚又は2枚以上の不織布と、不織布以外の他のシート材料、例えばフィルムとの積層体からなる複合シートも本発明の適用対象となる。不織布の積層体としては、例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布や、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布などが挙げられる。複合シートとしては、不織布と、液不透過性ないし液難透過性の透湿性シートとの積層体などが挙げられる。
【0014】
不織布は少なくとも1種の構成繊維から構成されている。構成繊維は1種でもよく、あるいは2種以上でもよい。構成繊維は例えば数mmないし数十mm程度の短繊維でもよく、無限長の長さを持つ連続フィラメントであってもよい。短繊維を用いるか、それとも連続フィラメントを用いるかは、不織布の製造方法に応じて適切に選択すればよい。
【0015】
図1は、本発明の不織布の一実施形態を拡大して模式的に示した図である。同図に示すとおり、本実施形態の不織布は、繊維10の表面に複数の粒子11が固着して、該粒子に起因する凸部12が該繊維10の表面から複数突出している構成繊維を含んでいる。以下の説明では、不織布の構成繊維のうち、粒子が付着している繊維のことを「粒子付着繊維10」という。不織布は、その構成繊維が粒子付着繊維10のみからなっていてもよく、あるいは粒子付着繊維10に加えて、粒子が付着していない繊維を含んでいてもよい。
【0016】
粒子付着繊維10においては、粒子11は繊維の表面が露出するように疎らに付着していてもよく、あるいは繊維の表面が露出しない程度に密に付着していてもよい。粒子11の付着密度は、不織布の具体的な用途に応じて適切に選択すればよい。また粒子11の付着密度は、後述する不織布の製造方法において、粒子11の散布量を調整することで変化させることができる。
【0017】
粒子付着繊維10において、粒子11が疎らに付着している場合、該粒子11は不規則に又は規則的に繊維に付着している。後述する不織布の好適な製造方法によれば、粒子付着繊維10における粒子11の付着状態は不規則なものとなる。
【0018】
図2には
図1の要部拡大図が示されている。
図2に示すとおり、粒子付着繊維10においては、繊維10の太さに比べて凸部12が非常に大きくなっている。詳細には、粒子付着繊維10においては、該繊維10の表面からの凸部13の突出高さHが、繊維10の繊維径Dよりも大きくなっている。このように、繊維10の繊維径Dよりも突出高さHが高い凸部12を有する粒子付着繊維10を含む不織布は、該不織布の表面に若干の水分が存在していたとしても、該不織布にヒトの肌が触れたときに、水分とヒトの肌との接触面積が小さくなることから、該水分に起因する湿り気を感じにくくなるという利点がある。したがって、本実施形態の不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品における最外面に位置する部材として用いられることが好ましい。特に本実施形態の不織布を、着用者の肌から最も遠い側に位置する部材として用いることが好ましい。
【0019】
凸部12の突出高さHと繊維10の繊維径Dとの大小関係は、不織布を顕微鏡で拡大観察して判断することができる。この場合、10個以上の凸部12を観察したときに、その個数に対して80%以上の数の凸部12の突出高さHが、該凸部12が位置する部位の近傍での繊維10の繊維径Dよりも大きければ、本発明の効果は充分に奏される。
【0020】
前記の利点を更に顕著なものとする点から、繊維10の表面からの凸部12の突出高さHは、繊維10の繊維径Dの1.5倍以上、特に2倍以上、とりわけ5倍以上であることが好ましい。また、突出高さHは繊維径Dの20倍以下であることが好ましい。具体的には、突出高さHは繊維径Dの1.5倍以上20倍以下であることが好ましく、2倍以上20倍以下であることが更に好ましく、5倍以上20倍以下であることが一層好ましい。なお、凸部12の突出高さHは、10個の粒子を対象とした測定値の平均値である。
【0021】
また、繊維10の表面からの凸部の突出高さHが、粒子11の粒子径Dと等しくなっていると、必要最小限の粒子数でもって、湿り気を知覚しにくくなるので好ましい。突出高さHが粒子径Dと等しいとは、両者の値が全く同じである場合と、粒子径Dに対する突出高さHの割合が90%以上である場合の双方を包含する。
【0022】
不織布における凸部12の突出高さHは次の方法で測定される。不織布の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて500倍に拡大し、観察したときの繊維から突出している凸部の最も突出している点から、凸部が形成されている繊維の表面へと、垂直に線をおろし、その距離を測定する。これを凸部10個の平均値から求め、凸部12の突出高さHとする。一方、不織布における繊維10の繊維径Dは次の方法で測定される。不織布の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて2000倍に拡大し、観察したときの繊維50本の平均値から測定する。
【0023】
粒子付着繊維10における粒子の付着数は、不織布の具体的な用途に応じて適切に選択すればよい。不織布10を例えば吸収性物品の構成部材、具体的には、最外面に位置する部材として用いる場合には、粒子11の付着の割合が、原反不織布の質量に対して10質量%以上であることが好ましく、25質量%であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以上であることが一層好ましい。また200質量%以下であることが好ましく、190質量%以下であることがより好ましく、180質量%以下であることが更に好ましい。具体的には、粒子11の付着の割合は、原反不織布の質量に対して10質量%以上200質量%以下であることが好ましく、25質量%以上200質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上200質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上200質量%以下であることが特に好ましく、80質量%以上190質量%以下であることが殊更好ましく、100質量%以上180質量%以下であることが一層好ましい。この範囲の割合で粒子11が付着していることで、不織布の表面に若干の水分が存在していたとしても、該水分に起因する湿気を一層感じにくくなる。なお「原反不織布の質量」とは、粒子11が付着した状態の不織布の質量から粒子11の質量を差し引いた質量のことである。
【0024】
不織布においては、粒子11は、該不織布の厚み方向全域にわたって存在していてもよく、あるいは厚み方向における一部の部位にのみ存在していてもよい。後者の場合、粒子11は、少なくとも不織布の表面に存在していることが、水分に起因する湿気を一層感じにくくなる点で好ましい。不織布が複数種類の不織布の積層体である場合、例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布である場合、該不織布の一方の面を構成するスパンボンド不織布の層にのみ粒子11を存在させることができる。不織布の面方向に関しては、面方向の全域にわたって粒子11が存在していてもよく、あるいは面方向における一部の部位にのみ粒子11が存在していてもよい。後者の場合、不織布を平面視したときに、粒子11を、ストライプ状や市松模様状に存在させることができる。
【0025】
図1に示す粒子付着繊維10においては、1個の粒子11から1個の凸部12が形成されている。これとは対照的に、
図3に示す実施形態の不織布においては、複数個の粒子11の集合体から1個の凸部12が形成されている。1個の凸部12を構成する複数の粒子11は、例えば分子間力や隣り合う粒子どうしの表面が少なくとも一部が融着するなどの作用によって1個の集合体としての形状を維持している。
図3に示す実施形態の不織布においても、
図1に示す実施形態の不織布と同様に、不織布の表面に若干の水分が存在していたとしても、該水分に起因する湿気を感じにくくなるという利点がある。また、本実施形態では、1個の凸部12が複数の粒子11の集合体から形成することもできるが、1個の粒子から1個の凸部が形成される方が、繊維径よりも大きい凸部を多く形成しやすいため好ましい。
【0026】
図1及び
図3に示す実施形態のいずれにおいても、凸部12はその表面が疎水性であることが好ましい。凸部12が疎水性であることで、水分に起因する湿気を感じにくくなるからである。凸部12の表面の疎水性の程度は、該表面の水に対する接触角で評価することができる。この接触角の値が90度以上である場合、凸部12の表面は疎水性であるということができる。凸部12の表面の疎水性は、その程度が高いほど、水分に起因する湿気を一層感じにくくなるので、凸部12の表面の接触角の値は94度以上であることが更に好ましく、98度以上であることが一層好ましい。凸部12の表面の接触角は次の方法で測定できる。
【0027】
<接触角の測定方法>
接触角の測定には、例えば協和界面科学株式会社製の接触角計MCA−Jを用いる。具体的には、測定部にイオン交換水を滴下(約20ピコリットル)した後、直ちに前記接触角計を用いて接触角度の測定を行う。測定は、5箇所以上の箇所で行い、それらの平均値を接触角とする。測定は22℃65%RH環境下にて行う。
【0028】
図1及び
図3に示す実施形態のいずれにおいても、凸部12は球形ないし略球形であることが、不織布とヒトの肌との接触面積が低減しやすい点から好ましい。尤も凸部の形状は、本発明の効果が奏される範囲において、球形ないし略球形以外の形状であっても差し支えない。球形ないし略球形以外の形状の例としては、四面体や六面体、星形などの多面体などが挙げられる。
【0029】
凸部12を構成する粒子11の形状は、凸部12が1個の粒子11から形成されている場合には、凸部12の形状は粒子11の形状を概ね反映したものとなる。したがって、凸部12が球形ないし略球形である場合には、粒子11もそれと概ね同じ形状となる。一方、凸部12が複数個の粒子11の集合体である場合、該粒子11の形状は、凸部12が球形ないし略球形となりやすい形状であることが有利である。この観点から、粒子11の形状は、球形ないし略球形であることが有利であるが、これらの形状以外の形状であってもよい。
【0030】
凸部12を構成する粒子11の大きさは、凸部12が1個の粒子11から形成されている場合、繊維10の繊維径Dとの関係で、5μm以上、更に10μm以上、特に20μm以上であることが好ましく、80μm以下、特に70μm以下であることが好ましい。具体的には、5μm以上80μm以下であることが好ましく、10μm以上80μm以下であることがより好ましく、20μm以上70μm以下であることが更に好ましい。粒子11の大きさは、不織布上の粒子を不織布表面方向から走査型電子顕微鏡で観察する。その際、走査型電子顕微鏡を用いて粒子を500倍に拡大し、粒子の直径10個の平均値から測定する。粒子径は粒子の長軸径(a)と短軸径(b)の平均値[(a+b)/2]から算出する。長軸径(a)とは、粒子を横断する線と、粒子の外周線とが交わる2つの交点間の距離が最も大きくなる当該距離のことを言う。短軸径(b)とは、長軸径を二等分する位置を通り、且つ長軸径と直交する線と、粒子の外周線とが交わる2つの交点間の距離のことを言う。この場合の粒子11の大きさは、突出高さHの値と同一視できる。なお、粒子11の大きさ、長軸径及び短軸径は、10個の粒子を対象とした測定値の平均値である。
【0031】
一方、凸部12が複数個の粒子11から形成されている場合、各粒子11の大きさは、該粒子11から構成される凸部12の突出高さHが、上述したとおり、繊維径Dの好ましくは1.5倍以上20倍以下、更に好ましくは2倍以上20倍以下、一層好ましくは5倍以上20倍以下となるものであればよい。
【0032】
粒子11を構成する材料は、上述した凸部12の表面の疎水性を考慮して選択される。また、粒子11と繊維10との固着の容易さを考慮して選択される。これらを勘案すると、粒子11は、熱可塑性樹脂を含んで構成されることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂などが挙げられる。
【0033】
粒子11が上述の樹脂からなる場合には、特に疎水化処理を施さなくても凸部12の表面は疎水性を示す。これとは逆に、粒子11が親水性の材料から構成されている場合であっても、粒子11の表面に疎水化処理を施して、凸部12の表面を疎水性にすることもできる。例えば粒子11として、表面が親水性であるアルミナやシリカ等の無機粒子であって、その表面を、1又は2以上の疎水基を有するカップリング剤で疎水化したものを用いることができる。疎水基としては例えば炭素数1以上18以下のアルキル基を用いることができる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤などを用いることができる。
【0034】
粒子11の固着の対象である繊維10は、繊維形成性の樹脂から構成されていることが好ましい。そのような樹脂としては、例えば各種の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、粒子11を構成する熱可塑性樹脂として前記に例示したものと同様のものを用いることができる。特に、粒子11が熱可塑性樹脂を含んで構成される場合には、繊維10は、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。粒子11に含まれる熱可塑性樹脂と、繊維10に含まれる熱可塑性樹脂とが異種である場合、両熱可塑性樹脂は相溶性を有することが好ましい。これによって、後述するとおり、融着によって粒子11を繊維10に固着させるときの固着力が高まるという利点がある。
【0035】
繊維10の繊維径Dは、不織布の具体的な用途に応じて適切に設定できる。不織布を例えば吸収性物品の構成部材として用いる場合には、繊維径Dは0.5μm以上、特に1μm以上であることが好ましく、10μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。具体的には、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることが更に好ましい。繊維径Dの測定方法は、上述したとおりである。
【0036】
粒子11が繊維10に固着する態様には種々のものがある。例えば粒子11及び繊維10の双方に熱可塑性樹脂が含まれている場合には融着によって粒子11を繊維に固着させることができる。別の固着態様として、バインダー樹脂を用いた接着を用いることができる。この場合、バインダー樹脂が疎水性のものであれば、粒子11が本来的に親水性のものであっても、疎水性の該バインダー樹脂によって粒子11の表面が被覆されるので、粒子11の固着と疎水化とを同時に行うことができて有利である。粒子11が融着不能な材質のもの、例えば無機化合物から構成されている場合には、繊維10のみを融着させ、それによって粒子11を機械的に保持させることで、該粒子11を繊維10に固着させることもできる。
【0037】
粒子付着繊維10を構成繊維として含む不織布は、これを例えば吸収性物品の構成部材として用いる場合には、その坪量が5g/m
2以上、特に10g/m
2以上であることが好ましく、30g/m
2以下、特に25g/m
2以下であることが好ましい。具体的には、不織布の坪量は、5g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましく、10g/m
2以上25g/m
2以下であることが更に好ましい。この範囲の坪量を有することで、不織布10は充分な強度のものとなり、吸収性物品の構成部材、特に該物品の最外面を構成する部材として用いた場合であっても破れ等の不都合が生じにくくなる。
【0038】
次に本発明の不織布の好適な製造方法を、
図4を参照しながら説明する。本製造方法は、(1−i)原反不織布への粒子の散布工程、及び(1−ii)粒子の固着工程に大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
【0039】
(1−i)の原反不織布への粒子の散布工程においては、原反不織布13がロール14から繰り出され、一方向Aに向けて搬送される。
図4では、予め製造された不織布原反13をロール14から繰り出す様子が示されているが、これに代えて、原料となる繊維から原反不織布13をインラインで製造しながら、該原反不織布13を
図4に示す工程に供給してもよい。
【0040】
搬送途中の原反不織布13には、その一面に、散布装置15から粒子11が散布される。この場合、粒子11の散布量を調整することで、目的とする不織布における粒子11の含有割合をコントロールすることができる。また、粒子11の散布部位を調整することで、目的とする不織布における平面視での粒子11の存在位置をコントロールすることができる。更に、原反不織布13の厚み方向全域にわたって粒子11が存在するようにするために、原反不織布13を挟んで散布装置15と対向する位置に吸引装置(図示せず)を設置しておき、散布された粒子11を該吸引装置によって吸引するようにしてもよい。
【0041】
散布される粒子11は、その構成材料として熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましい。一方、原反不織布13は、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含む繊維を構成繊維とすることが好ましい。粒子11に含まれる熱可塑性樹脂と、原反不織布13に含まれる熱可塑性樹脂とが異種のものである場合には、両熱可塑性樹脂は相溶性を有していることが好ましい。
【0042】
このようにして、原反不織布13に粒子11が散布されたら、(1−ii)の固着工程を行う。本工程においては、粒子11が散布された原反不織布13を、加熱炉16内に導入し、該加熱炉16内において加熱処理を行う。この加熱処理によって、粒子11に含まれる熱可塑性樹脂、及び原反不織布13に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させて、粒子11を原反不織布13の構成繊維に融着によって固着させる。これによって目的とする不織布17が得られる。
【0043】
加熱炉16内における加熱温度は、粒子11に含まれる熱可塑性樹脂、及び原反不織布13に含まれる熱可塑性樹脂の少なくとも一方が、その軟化点以上となるような温度とすることが好ましい。加熱方法としては、例えば所定温度に加熱された空気等の気体をエアスルー方式で原反不織布13に吹き付ける方法や、赤外線の照射など非接触式の加熱方法を採用することが好ましい。特に加熱された気体をエアスルー方式で吹き付ける方法を採用すると、気体の吹き付けによる吹き付け圧が加わった状態下に融着が生じるので、粒子11と繊維との固着が一層強固なものとなるので好ましい。
【0044】
図5には、不織布の別の好適な製造方法が示されている。本製造方法は、(2−i)ウエブの製造工程、(2−ii)ウエブへの粒子の散布工程、及び(2−iii)粒子の固着工程に大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
【0045】
(2−i)のウエブの製造工程においては、所定の方法でウエブ18が製造される。
図5ではカード機19を用いてウエブ18を製造する様子が示されている。しかしウエブ18の製造方法はこれに限られない。例えば、スパンボンド法で用いられるエアサッカーによって溶融樹脂を紡糸・延伸して、連続フィラメントからなるウエブを製造することもできる。
【0046】
製造されたウエブ18に対して、(2−ii)の散布工程が実施され、該ウエブ18の一面に、散布装置15から粒子11が散布される。粒子11の散布の方法は、
図4に示す製造方法と同様とすることができる。散布する粒子11の種類や、ウエブ18を構成する繊維の種類に関しても、
図4に示す製造方法と同様とすることができる。
【0047】
このようにして、原反不織布13に粒子11が散布されたら、加熱炉16内にて(1−iii)の固着工程を行う。固着工程の条件は、
図4に示す製造方法と同様とすることができる。この場合、加熱炉16内での加熱温度は、粒子11に含まれる熱可塑性樹脂、及びウエブ18に含まれる熱可塑性樹脂の少なくとも一方が、その軟化点以上となるような温度とすることが好ましい。この条件に加えて、ウエブ18に含まれる熱可塑性樹脂がその溶融温度以上に加熱されるようにすることが好ましい。これによって、粒子11と繊維との融着、及び繊維どうしの融着が同時に起こり、粒子11を繊維に固着させるのと同時に不織布17を製造できる。例えば加熱炉16の加熱方法として、加熱された気体をエアスルー方式でウエブ18に吹き付ける方法を採用すると、粒子11が繊維に固着したエアスルー不織布が得られる。
【0048】
上述の説明は、粒子11を繊維に固着させるのと同時にウエブ18を不織布化する方法に関するものであったが、ウエブ18の不織布化の時期は、粒子11をウエブ18に散布した後のいずれかの時点であればよい。例えば粒子11をウエブ18に散布した後、該ウエブ18を不織布化し、然る後に粒子11を繊維に固着させてもよい。あるいは、粒子11をウエブ18に散布した後、粒子11を繊維に固着させ、然る後にウエブ18を不織布化してもよい。
【0049】
なお、
図5に示す製造方法において特に説明しなかった点については、
図4に示す製造方法に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0050】
以上は、粒子11が熱可塑性樹脂を含み、融着によって繊維に固着させる場合の不織布の製造方法であるところ、粒子が無機化合物からなる場合、例えば無機酸化物等からなる場合には、次の方法を採用することができる。まず、無機化合物からなる粒子の表面を疎水化する。疎水化には、例えば上述した各種のカップリング剤を用いることができる。疎水化後の粒子を繊維に固着させるためには、例えば原反不織布13の一面に粒子11が供給された状態において、加熱処理を行えばよい。加熱処理の条件は、
図4及び
図5に示す製造方法と同様とすることができる。
【0051】
このようにして製造された不織布は、先に述べたとおり、吸収性物品の最外面に位置する部材として好適に用いられる。例えば該不織布を、吸収性物品における着用者の肌から最も遠い側に位置する部材として用いることができる。具体的には、着用状態の吸収性物品における吸収体を挟んで着用者の身体と反対側に位置する部材である液不透過性ないし液難透過性の透湿性裏面シートの外面に、本発明の不織布を配置することができる。このような配置形態を採用することで、透湿性裏面シートを通じて外部へ放出された水蒸気が結露した場合であっても、その結露に起因する湿り気が本発明の不織布によって知覚されづらくなる。
【0052】
また本発明の不織布は、着用状態の吸収性物品における肌当接面となる部材、例えば液透過性の表面シートや、防漏カフ用のシートとしても用いることができる。更に本発明の不織布は、吸収性物品の構成部材以外に、衣服やマスクなどとしても用いることができる。
【0053】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0054】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の不織布の製造方法、不織布、及び吸収性物品を開示する。
<1>
熱可塑性樹脂を含む粒子を、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含む繊維を構成繊維とする原反不織布に散布し、次いで加熱処理によって該粒子と該繊維とを融着によって固着させる工程を有する不織布の製造方法。
【0055】
<2>
熱可塑性樹脂を含む粒子を、該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含む繊維を構成繊維とするウエブに散布し、次いで加熱処理によって該粒子と該繊維とを融着によって固着させる工程を有する不織布の製造方法であって、
前記ウエブの不織布化工程を、前記粒子を該ウエブに散布した後のいずれかの時点において行う、不織布の製造方法。
<3>
前記加熱処理の温度を、前記粒子に含まれる熱可塑性樹脂、及び前記原反不織布又は前記ウエブに含まれる熱可塑性樹脂の少なくとも一方が、その軟化点以上となるような温度とする前記<1>又は<2>に記載の不織布の製造方法。
<4>
前記加熱処理を、加熱された気体をエアスルー方式で吹き付けることで行う前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の不織布の製造方法。
<5>
前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の製造方法で製造された不織布。
<6>
繊維の表面に複数の粒子が固着して、該粒子に起因する凸部が該繊維の表面から複数突出している構成繊維を含む不織布であって、
前記凸部はその表面が疎水性であり、
前記繊維の表面からの前記凸部の突出高さが、該繊維の繊維径よりも大きくなっている不織布。
【0056】
<7>
前記固着が融着である前記<6>に記載の不織布。
<8>
前記凸部の表面の水に対する接触角の値が90度以上であることが好ましく、94度以上であることが更に好ましく、98度以上であることが一層好ましい、前記<5>ないし<7>のいずれか1に記載の不織布。
<9>
前記繊維の表面からの前記凸部の突出高さが、該繊維の繊維径の1.5倍以上20倍以下である前記<5>ないし<8>のいずれか1に記載の不織布。
<10>
前記繊維の表面からの前記凸部の突出高さは、該繊維の繊維径の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることが更に好ましく、5倍以上であることが一層好ましく、20倍以下であることが好ましい前記<5>ないし<9>のいずれか1に記載の不織布。
<11>
1個の前記粒子から1個の前記凸部が形成されている前記<5>ないし<10>のいずれか1に記載の不織布。
【0057】
<12>
前記繊維の表面からの前記凸部の突出高さが、前記粒子の粒子径と等しくなっている<5>ないし<11>のいずれか1に記載の不織布。
<13>
複数個の前記粒子の集合体から1個の前記凸部が形成されている前記<5>ないし<10>のいずれか1に記載の不織布。
<14>
前記粒子は前記繊維の表面が露出するように疎らに付着していている前記<5>ないし<13>のいずれか1に記載の不織布。
<15>
前記粒子が前記繊維の表面に疎らに付着している場合、該粒子は該繊維の表面に不規則に付着している前記<5>ないし<14>のいずれか1に記載の不織布。
<16>
前記粒子が前記繊維の表面が露出しない程度に該繊維に密に付着している前記<5>ないし<13>のいずれか1に記載の不織布。
【0058】
<17>
前記不織布の質量から前記粒子の質量を差し引いた原反不織布の質量に対し、前記粒子の付着の割合が10質量%以上200質量%以下である前記<5>ないし<16>のいずれか1に記載の不織布。
<18>
前記不織布の質量から前記粒子の質量を差し引いた原反不織布の質量に対し、前記粒子の付着の割合が10質量%以上であることが好ましく、25質量%であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、80質量%以上であることが更に一層好ましく、100質量%以上であることがとりわけ好ましく、200質量%以下であることが好ましく、190質量%以下であることが更に好ましく、180質量%以下であることが一層好ましい前記<5>ないし<17>のいずれか1に記載の不織布。
<19>
前記粒子が、少なくとも不織布の表面に存在している前記<5>ないし<18>のいずれか1に記載の不織布。
<20>
前記凸部を構成する前記粒子の大きさは、該凸部が1個の粒子から形成されている場合、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更に一層好ましく、80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることが一層好ましい前記<5>ないし<19>のいずれか1に記載の不織布。
【0059】
<21>
前記粒子は、熱可塑性樹脂を含んで構成されている前記<5>ないし<20>のいずれか1に記載の不織布。
<22>
前記粒子は、熱可塑性樹脂を含んで構成されており、該熱可塑性樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂が用いられる前記<5>ないし<21>のいずれか1に記載の不織布。
<23>
前記粒子が熱可塑性樹脂からなる場合には、疎水化処理を施さなくても前記凸部の表面は疎水性を示す前記<5>ないし<22>のいずれか1に記載の不織布。
<24>
前記粒子が親水性の材料から構成されている場合、該粒子の表面に疎水化処理を施して、前記凸部の表面を疎水性にする前記<5>ないし<23>のいずれか1に記載の不織布。
<25>
前記粒子として、表面が親水性であるアルミナやシリカ等の無機粒子であって、その表面を、1又は2以上の疎水基を有するカップリング剤で疎水化したものを用いる前記<5>ないし<24>のいずれか1に記載の不織布。
【0060】
<26>
前記粒子が熱可塑性樹脂を含んで構成されており、前記繊維が該熱可塑性樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂を含み、
前記粒子に含まれる熱可塑性樹脂と、前記繊維に含まれる熱可塑性樹脂とが異種である場合、両熱可塑性樹脂は相溶性を有する前記<5>ないし<25>のいずれか1に記載の不織布。
<27>
前記繊維の繊維径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、10μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが更に好ましい前記<5>ないし<26>のいずれか1に記載の不織布。
<28>
前記<5>ないし<27>のいずれか1に記載の不織布と他のシート材との積層体からなる複合シート。
<29>
前記<5>ないし<27>のいずれか1に記載の不織布を、最外面に位置する部材として用いた吸収性物品。
<30>
着用状態の吸収性物品における吸収体を挟んで着用者の身体と反対側に位置する部材である液不透過性ないし液難透過性の透湿性裏面シートの外面に、前記不織布が配されている前記<29>に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0062】
〔実施例1〕
図4に示す方法に従い不織布を製造した。原反不織布13としてポリプロピレン製のメルトブローン不織布(繊維径D=3.4μm、坪量20g/m
2)を用いた。原反不織布13の一面に、ポリエチレン製の粒子11(粒径70μm)を散布した。散布坪量は37g/m
2(原反不織布13の坪量に対して185%)とした。粒子11を散布した後の原反不織布13に対し、いすゞ製作所製の熱風循環式定温乾燥器DSR−113を用いて加熱処理を行い、粒子11を原反不織布13の構成繊維に融着させ、凸部12を形成した。熱風の設定温度は160℃とし、加熱時間は10分間とした。凸部12の表面の水に対する接触角は94度であった。このようにして、目的とする不織布17を得た。なお、粒子11が繊維に固着しているか否かは、不織布17の表面を光学顕微鏡で200倍程度に拡大して観察し、ピンセントなどで粒子11の近傍に位置する繊維を突き、該粒子11がその場に留まっているか否かを観察することにより確認した。
【0063】
〔実施例2及び3〕
粒子11として、以下の表1に示す材質及び粒径のものを散布した。原反不織布13の坪量に対する粒子11の散布坪量は、同表に示す値とした。これら以外は実施例1と同様にして、目的とする不織布17を得た。なお、表1中、「PE」はポリエチレンを表す。
【0064】
〔実施例4〕
原反不織布13として、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。粒子11として、疎水化処理されたアルミナ粒子(日本アエロジル社製「AEROXIDE Alu C805」、平均一次粒径13nm)を散布し、実施例1と同様の加熱処理を行い構成繊維に固着させ、凸部12を形成した。粒子11の散布坪量は、表1に示す値とした。凸部12の表面の水に対する接触角は140度であった。このようにして、目的とする不織布17を得た。
【0065】
〔実施例5〕
原反不織布13として、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。粒子11として、疎水化処理されたシリカ粒子(日本アエロジル社製「AEROSIL R812S」、平均一次粒径7nm)を散布し、実施例1と同様の加熱処理を行い構成繊維に固着させ、凸部12を形成した。粒子11の散布坪量は、表1に示す値とした。凸部12の表面の水に対する接触角は140度であった。このようにして、目的とする不織布17を得た。
【0066】
〔実施例6ないし8〕
粒子11として、以下の表1に示す材質及び粒径のものを散布した。原反不織布13の坪量に対する粒子11の散布坪量は、同表に示す値とした。これら以外は実施例1と同様にして、目的とする不織布17を得た。なお、表1中、「PP」はポリプロピレンを表す。
【0067】
〔比較例1ないし3〕
粒子11として、以下の表1に示す材質及び粒径のものを散布した。原反不織布13の坪量に対する粒子11の散布坪量は、同表に示す値とした。粒子11の散布後、該粒子11を原反不織布13の構成繊維に固着させる操作を行わなかった。このようにして、粒子11が散布されただけで粒子11が繊維に固着していない状態の不織布を得た。なお、表1中、「PMMA」はポリメタクリル酸メチルを表す。
【0068】
〔比較例4〕
粒子11として、疎水化処理されていないシリカ粒子(日本アエロジル社製「AEROSIL 300」、平均一次粒径7nm)を散布した。粒子11を原反不織布13の構成繊維に固着させる操作は行わなかった。このようにして、粒子11が散布されただけの状態の不織布を得た。
【0069】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた不織布について、構成繊維に形成された凸部の高さHを上述の方法で測定した。また、以下の方法で湿り気の知覚しづらさを評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0070】
〔湿り気の知覚しづらさ〕
花王株式会社製のベビー用使い捨ておむつであるメリーズ(登録商標)Sサイズテープタイプを用意し、その外装不織布及び裏面シートを剥がした。剥がした面を鉛直上方に向けて、おむつを水平に載置し、剥がした面側から50gのイオン交換水50gを注入した。次いで、実施例及び比較例で得られた不織布を、剥がした面に載せた。このとき、粒子の散布面が外方を向くように(つまり鉛直上方を向くように)不織布を載せた。不織布の上に4kPaの荷重を加え、その状態で10分間静置した。その後、荷重を除き、不織布の表面をパネラーに指先で触れさせた。パネラーは5人とし、いずれも子育て経験者を選定した。不織布の表面に湿り気を感じた場合0点、湿り気を感じない場合を1点として各パネラーに評価を行わせ、5人の合計点で湿り気の知覚しづらさを判定する。合計点が高い程、湿り気が知覚しづらいと評価する。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた不織布は、湿り気が知覚しづらいものであることが判る。これに対して比較例の不織布は、湿り気が知覚されやすいものであることが判る。