特許第6550368号(P6550368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550368
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】液圧鉗子システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20190711BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61B34/37
   A61B17/29
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-252568(P2016-252568)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-102633(P2018-102633A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
(72)【発明者】
【氏名】尾形 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩明
【審査官】 菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−517898(JP,A)
【文献】 特表2006−500986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30−34/37
A61B 17/29
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパー、前記グリッパーと連結された第1ピストン、前記第1ピストンを収容して前記第1ピストンと共に作動液で満たされる第1圧力室を形成する第1シリンダ、第2ピストン、前記第2ピストンを収容して前記第2ピストンと共に前記作動液で満たされる第2圧力室を形成する第2シリンダ、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通する連通路、および直動機構を介して前記第2ピストンを駆動するモータ、を含むロボット鉗子と、
前記第2ピストンの位置の検出に用いられる位置センサと、
前記第1ピストンに対する指令位置に基づいて前記モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置に基づいて、前記第1ピストンの推定位置を導出するオブザーバと、
前記第1ピストンの推定位置と前記指令位置との偏差に基づいて、前記モータの目標回転速度を導出する位置制御部と、を含む、液圧鉗子システム。
【請求項2】
前記位置センサは、前記モータの回転変位量を検出し、その回転変位量を前記第2ピストンの位置に変換するロータリエンコーダである、請求項1に記載の液圧鉗子システム。
【請求項3】
前記作動液の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記オブザーバは、前記圧力センサで検出される前記作動液の圧力および前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置に基づいて、前記第1ピストンの推定位置を導出する、請求項1または2に記載の液圧鉗子システム。
【請求項4】
前記オブザーバは、前記第2ピストンの推定位置および前記作動液の推定圧力を導出し、前記圧力センサで検出される前記作動液の圧力と前記作動液の推定圧力との偏差および前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置と前記第2ピストンの推定位置との偏差に基づいて推定誤差を算出し、算出した推定誤差を前記第1ピストンの推定位置の導出にフィードバックする、請求項3に記載の液圧鉗子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧を利用してグリッパーの開閉を行うロボット鉗子を含む液圧鉗子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手術支援ロボットでは、ワイヤの引っ張りおよび引き戻しによってグリッパーの開閉を行うワイヤ駆動式のロボット鉗子が用いられている。近年では、ワイヤ駆動式のロボット鉗子に代えて、空気圧を利用してグリッパーの開閉を行うロボット鉗子も提案されてきている。例えば、特許文献1の図9には、そのようなロボット鉗子に用いられる空気圧アクチュエータが記載されている。図4に、その空気圧アクチュエータ100を示す。
【0003】
具体的に、空気圧アクチュエータ100では、シリンダ140内にピストン130が収容され、そのピストン130がロッド120によりグリッパー110と連結されている。シリンダ140には、ピストン130の移動量を検出する変位センサ150が設けられている。変位センサ150は、外力Fの算出に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−220273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図4に示す空気圧アクチュエータ100において、変位センサ150を、グリッパー110の開閉を制御するためにピストン130の位置を検出する位置センサとして使用することも可能である。しかしながら、ロボット鉗子の先端部は非常に細いため、そのような位置センサ(変位センサ150)をロボット鉗子の先端部に設けることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、ロボット鉗子の先端部に位置センサを設けることなく、グリッパーの開閉を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、グリッパー、前記グリッパーと連結された第1ピストン、前記第1ピストンを収容して前記第1ピストンと共に作動液で満たされる第1圧力室を形成する第1シリンダ、第2ピストン、前記第2ピストンを収容して前記第2ピストンと共に前記作動液で満たされる第2圧力室を形成する第2シリンダ、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通する連通路、および直動機構を介して前記第2ピストンを駆動するモータ、を含むロボット鉗子と、前記第2ピストンの位置の検出に用いられる位置センサと、前記第1ピストンに対する指令位置に基づいて前記モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置に基づいて、前記第1ピストンの推定位置を導出するオブザーバと、前記第1ピストンの推定位置と前記指令位置との偏差に基づいて、前記モータの目標回転速度を導出する位置制御部と、を含む、液圧鉗子システムを提供する。
【0008】
上記の構成によれば、非圧縮性の作動液が用いられるので、グリッパーと連結された第1ピストン、換言すればロボット鉗子の先端側にある第1ピストンの移動量は、外力にほぼ影響されることなく第2ピストンの移動量と比例する。しかも、第2ピストンは、直動機構を介してモータにより駆動される。よって、制御装置が第1ピストンに対する指令位置に基づいてモータを制御すれば、グリッパーの開閉を制御することができる。さらに、制御装置は、第2ピストンの位置に基づいて第1ピストンの推定位置を導出するオブザーバを含み、この第1ピストンの推定位置と指令位置とが比較されるので、第1ピストンの位置を検出する位置センサを設ける必要がない。すなわち、ロボット鉗子の先端部に位置センサを設けることなく、グリッパーの開閉を制御することができる。
【0009】
例えば、前記位置センサは、前記モータの回転変位量を検出し、その回転変位量を前記第2ピストンの位置に変換するロータリエンコーダであってもよい。
【0010】
上記の液圧鉗子システムは、前記作動液の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、前記オブザーバは、前記圧力センサで検出される前記作動液の圧力および前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置に基づいて、前記第1ピストンの推定位置を導出してもよい。この構成によれば、第2ピストンの位置のみに基づいて第1ピストンの推定位置を導出する場合よりも、第1ピストンの位置の推定精度を向上させることができる。
【0011】
例えば、前記オブザーバは、前記第2ピストンの推定位置および前記作動液の推定圧力を導出し、前記圧力センサで検出される前記作動液の圧力と前記作動液の推定圧力との偏差および前記位置センサを用いて検出される前記第2ピストンの位置と前記第2ピストンの推定位置との偏差に基づいて推定誤差を算出し、算出した推定誤差を前記第1ピストンの推定位置の導出にフィードバックしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボット鉗子の先端に位置センサを設けることなく、グリッパーの開閉を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る液圧鉗子システムの概略構成図である。
図2】オブザーバのブロック線図である。
図3】状態変数を表す行列である。
図4】ロボット鉗子に用いられる、従来の空気圧アクチュエータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る液圧鉗子システム1を示す。この液圧鉗子システム1は、ロボット鉗子2と制御装置7を含む。
【0015】
例えば、液圧鉗子システム1が手術支援ロボットに用いられる場合、スレーブ側装置に取り付けられるロボット鉗子2をマスタ側装置で医師が遠隔操作する。この場合、制御装置7は、マスタ側装置に搭載されてもよいし、スレーブ側装置に搭載されてもよい。あるいは、制御装置7は、ロボット鉗子2の後述する駆動ユニット21に組み込まれてもよい。
【0016】
ロボット鉗子2は、作動液20の液圧を利用してグリッパー24の開閉を行うものである。作動液20は、特に限定されるものではないが、例えば、生理食塩水や油などである。
【0017】
具体的に、ロボット鉗子2は、駆動ユニット21と、駆動ユニット21から延びて患者の体内に挿入される挿入シャフト22と、挿入シャフト22の先端に設けられた、一対の爪25からなるグリッパー24を含む。なお、図示は省略するが、駆動ユニット21には、挿入シャフト22をその軸方向にスライドさせる機構、および挿入シャフト22をその中心軸回りに回転させる機構が組み込まれてもよい。さらに、挿入シャフト22の先端部が揺動可能に構成され、その先端部を揺動させる機構が駆動ユニット21に組み込まれてもよい。
【0018】
本実施形態では、挿入シャフト22が、直線状に延びる高剛性の管である。ただし、挿入シャフト22は、フレキシブルな管であってもよい。
【0019】
挿入シャフト22の先端部内には、第1シリンダ31が配置されている。本実施形態では、第1シリンダ31の中心軸が挿入シャフト22の中心軸と一致している。第1シリンダ31は、管状部と、管状部の内部をグリッパー24側から閉塞する前壁と、管状部の内部をグリッパー24と反対側から閉塞する後壁を有している。
【0020】
第1シリンダ31内には、第1ピストン32が収容されている。第1ピストン32と第1シリンダ31の後壁との間には第1圧力室3Aが形成され、第1ピストン32と第1シリンダ31の前壁との間には背圧室3Bが形成されている。第1圧力室3A内は作動液20で満たされており、背圧室3B内は大気中に開放されている。本実施形態では、背圧室3B内に、第1ピストン32を付勢するスプリング34が配置されている。
【0021】
第1ピストン32は、第1シリンダ31の前壁を貫通するロッド33によりリンク機構23を介してグリッパー24と連結されている。リンク機構23は、ロッド33の直線運動をグリッパー24の開閉運動に変換する。
【0022】
駆動ユニット21内には、連通路26により第1シリンダ31と接続された第2シリンダ41が配置されている。本実施形態では、第2シリンダ41の軸方向が、挿入シャフト22の軸方向と平行である。ただし、第2シリンダ41の軸方向は、特に限定されるものではない。第2シリンダ41は、管状部と、管状部の内部を挿入シャフト22側から閉塞する前壁と、管状部の内部を挿入シャフト22と反対側から閉塞する後壁を有している。
【0023】
第2シリンダ41内には、第2ピストン42が収容されている。第2ピストン42と第2シリンダ41の前壁との間には第2圧力室4Aが形成され、第2ピストン42と第2シリンダ41の後壁との間には背圧室4Bが形成されている。第2圧力室4A内は作動液20で満たされており、背圧室4B内は大気中に開放されている。
【0024】
上述した連通路26は、挿入シャフト22内を延びており、第1圧力室3Aと第2圧力室4Aとを連通している。この連通路26内も作動液20で満たされている。例えば、連通路26は、金属製の管または樹脂製のフレキシブルなチューブで構成される。
【0025】
第2ピストン42は、第2シリンダ41の後壁を貫通するロッド43により直動機構51と連結されている。直動機構51は、モータ52の出力シャフト53とも連結されている。直動機構51は、モータ52の出力シャフト53の回転運動をロッド43の直線運動に変換する。つまり、モータ52は、直動機構51およびロッド43を介して第2ピストン42を駆動する。モータ52は、例えばサーボモータである。
【0026】
モータ52の一方向への回転によって第2ピストン42が前進すると、作動液20が第2圧力室4Aから第1圧力室3Aへ供給されて第1ピストン32がスプリング34の付勢力に抗して前進する。一方、モータ52の逆方向への回転によって第2ピストン42が後退すると、スプリング34の付勢力によって第1ピストン32が後退しながら作動液20が第1圧力室3Aから第2圧力室4Aへ排出される。すなわち、第2シリンダ41、第2ピストン42、直動機構51およびモータ52は、第1圧力室3Aに対する作動液給排機構を構成する。
【0027】
制御装置7へは、例えば上述したマスタ側装置から第1ピストン32に対する指令位置txが入力される。ただし、制御装置7にグリッパー24への開度指令が入力され、制御装置7が、その開度指令から第1ピストン32に対する指令位置txを算出する指令位置算出部を含んでもよい。
【0028】
制御装置7は、第1ピストン32に対する指令位置txに基づいてモータ52を制御する。制御装置7は、例えば、ROMやRAMなどのメモリとCPUからなり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。具体的に、制御装置7は、位置制御部71、速度制御部72、インバータ部73、微分部75およびオブザーバ8を含む。制御装置7は、単一の機器であってもよいし、複数の機器に分割されてもよい。
【0029】
本実施形態では、制御装置7が、圧力センサ61および位置センサ62と電気的に接続されている。圧力センサ61は、作動液20の圧力Pを検出するものであり、位置センサ62は、第2ピストン42の位置xの検出に用いられるものである。
【0030】
本実施形態では、位置センサ62が、モータ52に設けられたロータリエンコーダであり、モータ52の回転変位量を検出し、その回転変位量を第2ピストン42の位置xに変換する。ただし、位置センサ62は、直動機構51に設けられたリニアエンコーダであってもよいし、第2シリンダ41に設けられて第2ピストン42の位置xを直接的に検出してもよい。
【0031】
オブザーバ8は、圧力センサ61で検出される作動液20の圧力Pおよび位置センサ62を用いて検出される第2ピストン42の位置xに基づいて、第1ピストン32の推定位置exを導出する。なお、オブザーバ8の機能については、後述にて詳細に説明する。
【0032】
位置制御部71は、第1ピストン32の推定位置exと第1ピストン32に対する指令位置txの偏差Δx(=tx−ex)に基づいて、モータ52の目標回転速度Vtを導出する。偏差Δxと目標回転速度Vtとの関係は、予め設定されている。
【0033】
微分部75は、位置センサ62を用いて検出される第2ピストン42の位置xを微分してモータ52の現在回転速度Vを算出する。速度制御部72は、モータ52の目標回転速度Vtと現在回転速度Vとの偏差ΔV(=Vt−V)に基づいて、モータ52の目標電流Ctを導出する。偏差ΔVと目標電流Ctとの関係は、予め設定されている。
【0034】
インバータ部73とモータ52と間の電力線には、電流センサ74が設けられている。インバータ部73は、電流センサ74で検出される電流Cnと目標電流Ctとの偏差が小さくなるように、モータ52へ電流を供給する。
【0035】
次に、図2を参照して、オブザーバ8の機能について詳細に説明する。オブザーバ8は、第2ピストン42に力Fを加えたときの第2ピストン42および第1ピストン32の移動量をモデル化したものであり、以下の状態方程式1および出力方程式2で示すことができる。なお、以下では、ニュートンの記法に従って変数の上に記すべきドット記号を変数の右上に記す。
【0036】
=AX+BF ・・・(1)
Y=CX ・・・(2)
,X,Y:図3に示す行列で表される状態変数
:第1ピストンの位置
:第2ピストンの位置
P:作動液の圧力
F:第2ピストンに加えられる力
A、B:状態方程式1中の係数を示す行列
C:出力方程式2中の係数を示す行列
行列A,Bは、第1ピストン32に関する状態方程式および第2ピストン42に関する状態方程式などから求められる。
【0037】
より詳しくは、オブザーバ8は、まず行列A,Bを用いて推定状態変数eXを求め、ついでこれを積分して推定状態変数Xを算出する。つまり、オブザーバ8は、第1ピストン32の推定位置exだけでなく、第2ピストン42の推定位置exおよび作動液20の推定圧力ePも導出する。導出された第1ピストン32の推定位置exは、上述したように第1ピストン32に対する指令位置txと比較される。
【0038】
さらに、オブザーバ8は、行列Cを用いて第2ピストン42の推定位置exおよび作動液20の推定圧力ePを抜き出し、それらを位置センサ62を用いて検出される第2ピストン42の位置xおよび圧力センサ61で検出される作動液20の圧力Pと比較する。そして、オブザーバ8は、第2ピストン42の検出された位置xと推定位置exとの偏差Δx(=x−ex)と、作動液20の検出された圧力Pと推定圧力ePとの偏差ΔP(=P−eP)とに基づき、行列Kを用いて状態変数Xの全要素についての推定誤差を算出する。その後、オブザーバ8は、算出した推定誤差を推定状態変数eXの演算にフィードバックする。換言すれば、推定誤差は、第1ピストン32の推定位置exの導出にフォードバックされる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の液圧鉗子システム1では、非圧縮性の作動液20が用いられるので、グリッパー24と連結された第1ピストン32、換言すればロボット鉗子2の先端側にある第1ピストン32の移動量は、外力にほぼ影響されることなく第2ピストン42の移動量と比例する。しかも、第2ピストン42は、直動機構51を介してモータ52により駆動される。よって、制御装置7が第1ピストン32に対する指令位置txに基づいてモータ52を制御すれば、グリッパー24の開閉を制御することができる。さらに、制御装置7は、第2ピストン42の位置xに基づいて第1ピストン32の推定位置exを導出するオブザーバ8を含み、この第1ピストン32の推定位置exと指令位置txとが比較されるので、第1ピストン32の位置を検出する位置センサを設ける必要がない。すなわち、ロボット鉗子2の先端部に位置センサを設けることなく、グリッパー24の開閉を制御することができる。
【0040】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、圧力センサ61が設けられず、オブザーバ8が、位置センサ62を用いて検出される第2ピストン42の位置xのみに基づいて第1ピストン32の推定位置exを導出してもよい。ただし、前記実施形態のように、位置センサ62を用いて検出される第2ピストン42の位置xおよび圧力センサ61で検出される作動液20の圧力Pに基づいて第1ピストン32の推定位置exを導出すれば、第2ピストン42の位置xのみに基づいて第1ピストン32の推定位置exを導出する場合よりも、第1ピストン32の位置の推定精度を向上させることができる。
【0042】
前記実施形態では、スプリング34の付勢力によって第1ピストン32が後退する。しかし、第2シリンダ41、第2ピストン42、直動機構51およびモータ52を含む作動液給排機構がもう1つ設けられるとともに、もう1つの作動液給排機構の第2圧力室4Aが第1シリンダ31の前壁と第1ピストン32の間の背圧室3Bと接続されて、背圧室3Bに供給される作動液の液圧によって第1ピストン32が後退してもよい。あるいは、第1ピストン32にワイヤの一端が固定され、ワイヤの引っ張りによって第1ピストン32が後退してもよい。
【0043】
また、オブザーバ8に対して、第1ピストン32および/または第2ピストン42の状態、負荷条件、ロボット鉗子2の個体差、周辺環境などに応じて補正をかけることを可能とする手段が別途設けられてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 液圧鉗子システム
2 ロボット鉗子
20 作動液
24 グリッパー
26 連通路
31 第1シリンダ
32 第1ピストン
3A 第1圧力室
41 第2シリンダ
42 第2ピストン
4A 第2圧力室
51 直動機構
52 モータ
61 圧力センサ
62 位置センサ
7 制御装置
8 オブザーバ
図1
図2
図3
図4