【実施例】
【0045】
実施例
以下の実施例は、本発明の上記局面および他の局面を説明する。これらの非限定的な実施例は、特許請求されている化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法が作られ、評価される様式について当業者に説明的態様で提供するように記載する。実施例は、本発明の純粋な例示を意図しており、本願発明者らが発明として考えている範囲を限定するものではない。数字(例えば、量、温度など)に対して正確さを保証するように努力しているが、いくらかの誤差および偏差を考慮すべきである。
【0046】
実施例1:本発明のポリペプチドの発現のためのプラスミドの構築
最初に、hOPGアミノ酸残基1から215をコードするDNA、直後にhIgG1−Fcアミノ酸のリーディングフラグメントをコードするDNAを含む第1のDNAフラグメントを化学的に合成した。第1のDNAフラグメントの5’末端において、Hind III制限酵素認識部位、Kozak配列(GCCACC)およびそのシグナル配列がhOPGコード配列より先だった。第1のDNAフラグメントのhIgG1−FcフラグメントコーディングDNAは、3’に、Sac II制限酵素認識部位を含んだ。
【0047】
次に、合成遺伝子を、以前に操作されたHind IIIおよびSac II制限酵素認識部位を利用して、残りのhIgG1−Fcアミノ酸をコードするDNAを含むpCDNA4−Fcベクターにサブクローニングした。pCDNA4−Fcベクターは、興味ある遺伝子の転写を駆動するためにサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを利用し、多種多様の哺乳動物細胞系において高レベル発現を生じることが証明されている。該ベクターは、bGHポリアデニル化および転写終結配列を含む。該ベクターはまた、pUC複製起点および細菌における増殖および選択をサポートするために、アンピシリン耐性を与えるβ−ラクタマーゼ遺伝子を含む。
図1は、pCDNA4−Fcプラスミドのマップおよび注釈付き配列を示す。
【0048】
最後に、hOPG残基1から215およびhIgG1−Fcの残基103から329をコードするDNAを含む第2のDNAフラグメントを、
図1に概略的に示されているpCDNA4−Fcプラスミドを利用して、配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドの高発現のためのpKN002哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。pKH002ベクターは、興味ある遺伝子の転写を駆動するためにサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、次にbGHポリアデニル化および転写終結配列を利用する。該ベクターはまた、pUC複製起点および細菌における増殖および選択をサポートするために、アンピシリン耐性を与えるβ−ラクタマーゼ遺伝子を含む。最後に、pKN002ベクターは、安定なCHOK1およびNSO細胞系を確立するために広範に使用される選択可能なマーカーであるグルタミンシンテターゼ遺伝子を含む。
図2は、配列番号3の得られた高発現pKH002−hOPG−hIgG1−Fcプラスミドのマップおよび注釈付き配列を例示的に示す。
【0049】
実施例2:本発明のポリペプチドを発現するための安定な細胞系の作製
配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドを過剰発現するCHO−K1細胞の安定なクローンを、標準プロトコールを介して作製した。実施例1に記載されている発現プラスミドpKH002−hOPG−hIgG1−Fcを、該ポリペプチドの高発現のための安定な細胞系を産生するために使用した。複数のクローンにおける該ポリペプチドの発現レベルは、7日バッチ培養において125mg/L以上であった。1つのクローン細胞系は、振とうフラスコバッチ培養において、約125mg/Lまたは125mg/L以上の発現レベルを示した。
【0050】
材料
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を、ATCC(CCL−61
TM)からの凍結貯蔵物として得た。該細胞を社内のCD CHO培地に適合させた。培地および試薬は市販の供給源から得た。完全な適合後、細胞をわずかな継代のために高密度で増殖させた。得られた細胞をサブクローニングした。得られたクローンの1つは20時間の倍加時間であり、良い形態を親細胞系として選択した。
【0051】
方法
CHO−K1細胞のバイアル(1.5mlの容量中、7.5x10
6個の生存可能である細胞)を、4mM L−グルタミンを補った20mlのCD CHO培地に解凍し、80から100rpmでオービタルシェーカープラットホーム上37℃/10% CO
2でErlenmeyerフラスコにおいて3.75x10
5細胞/mlの細胞密度を得た。細胞を3から4日毎に継代培養した。
【0052】
それぞれ、7.5%DMSOを含む1.5mlの50%新鮮な増殖培地/50%馴化培地中に7.5x10
6細胞(継代1)を含む研究細胞バンクの19個のcryovialを、液体窒素中に保存した。さらなる拡張後、それぞれ、1.5ml中に7.5x10
6細胞(継代3)を含む50個のcryovialを、(上記のとおり)液体窒素中で凍結し、作業細胞バンクとして使用した。
【0053】
実施例1に記載されているpKH002−hOPG−hIgG1−Fcプラスミドを有するCHO−K1細胞のトランスフェクションを、標準プロトコールを使用するGene Pulse Xcell装置(BIO−RAD)を利用して、エレクトロポレーションにより行った。実験の日に中期対数期(一般的に、約2−3×10
6細胞/ml)に到達するように、エレクトロポレーションの1−2日前に、低濃度の(dilute)CHO−K1細胞を新鮮な増殖培地(CD CHO培地)に移した。トランスフェクション後、標準プロトコールを利用して、細胞系を懸濁培養に適合させ、次に、50mlの培養増殖曲線を測定した。細胞数および生存能力を、それぞれの試験される細胞系に対して毎日測定した。所望のポリペプチドの生産レベルを、2つの方法:ELISA;およびプロテインAカラムによる試験精製により測定した。
【0054】
多くのトランスフェクションを、可能性のあるhOPG−hIgG1−Fc発現細胞系の産生プロセスにてCHO−K1細胞において行った。典型的なトランスフェクション増殖曲線は
図3に示されており、データは表1に示されている。スーパーコイル状DNAをエレクトロポレーション下でCHO−K1細胞にトランスフェクトし、MSXで選択した。細胞を96ウェルプレートにおいてミニプール(minipool)として選択し、生産性をSDS−PAGEおよびELISAを使用して評価した。これらの分析に基づいて、2つのトランスフェクションが、最も高いレベルのhOPG−hIgG1−Fcを生産するとして同定された。これらのトランスフェクションをより詳細に特徴付ける。
【0055】
96ウェルプレートにおける最初の選択後、24個の細胞系を24個のウェルプレート、次にT25フラスコにスケールアップした。培地を24ウェルプレートまたはT25フラスコから回収し、SDS−PAGEおよびELISAを行った。良いhOPG−hIgG1−Fc発現を証明した4つの系を懸濁培養に移した。上記4つの細胞系のうちの2つの発現レベルは7日バッチ培養において125mg/L以上であり、該2つの系を高発現の親細胞系として選択した。
【0056】
2つの高発現の親細胞系を単一のクローニングのために、5x96ウェルプレートに細胞を播種した。両方の親細胞系において、複数のクローンを96ウェルプレートから採取し、24ウェルプレートに移した。培地をコンフルエントウェルから回収し、SDS−PAGEおよびELISA試験により以前のように評価した。所望の結果を得られなかったクローンを廃棄した。複数のクローンのサブセットを無血清懸濁培養中でよく増殖させ、50mLの増殖曲線を評価した。全てのクローンを、SDS−PAGEおよびELISAによりさらに再分析した。クローンのサブセットから、最も高い生産性を有する1つのクローンを1Lの増殖曲線の追加セットにおいて評価されるべきであると選択し、該クローンが最も高い生産性を有し、親細胞系と比較して有意な改良を示したことを確認した。
【0057】
選択された最も高い生産の細胞系を選択し、CD−CHOに解凍した。細胞系に対する増殖曲線を評価し、サンプルを細胞数、細胞生存能力およびhOPG−hIgG1−Fc生産性について毎日回収した。これらの試験に基づいて、選択された最も高い生産性の細胞系は、商業生産をサポートするために必要な量でhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドを発現していたことを決定した。精製後のポリペプチドの収量は、少なくとも125mg/Lであった(何らかの生産最適化なしで)。
【表1】
【0058】
実施例3:本発明のポリペプチドの精製
配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドを、前記実施例2に本質的に記載されているCHO−K1において発現させた。細胞を回収し、十分に確立されたプロトコールを利用して溶解した。細胞溶解物の浄化後、発現されたhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドを含む上清を、最初に、プロテインAアフィニティーカラムに適用した。アフィニティー精製工程は、表2に概説される処理にしたがって行った。hOPG−hIgG1−Fcを含むプロテインA溶出液を、1M Tris−HCl、pH9.0を使用して約pH7.5にpH調整した。必要に応じて、伝導度を、脱イオン水(dH2O)で調整した。
【0059】
DNA、HCP、エンドトキシンおよび起こり得るウイルス汚染の内容物を減少させるために、pH調整されたプロテインAカラム溶出液を、Qセファロース樹脂を利用する陰イオン交換クロマトグラフィー(AIEX)によりさらに精製した。AIEX工程は、表3に概説される処理にしたがってフロースルーモードで操作される。
【0060】
AIEXフロースルーを、サイズ排除HPLC(SEC−HPLC)およびSDS−PAGE(還元)により分析した。分析の結果は、それぞれ、
図4および
図5に示される。
【0061】
SEC−HPLC操作手順は表4に概説されている。hOPG−hIgG1−Fcポリペプチドの生物学的に関連した形態は、C−末端ジスルフィドを介して連結されたホモ二量体である。タンパク質サイズマーカーで行われた試験に基づいて、プレショルダーピーク(保持時間RT=13.5分)の分子量は約378KDaであり、恐らくhOPG−hIgG1−Fcの四量体を表していることを示した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0062】
プロテインAアフィニティー精製工程において使用される低pH溶離条件がより高いオリゴマー形成を引き起こすことができるか否かを調べるために、溶出液濃度およびオリゴマー含有量の相関について試験を行った。MabSelect Sure樹脂を有する分析プロテインAカラム(2mL)を、表1に概説される操作手順にしたがって充填し、使用した。カラム負荷体積を変化させて、すなわち20、50、100および150mLのそれぞれの4つの実験を行った。回収された溶出液をSEC−HPLCにより分析し、オリゴマー含有量を概算した。結果は、オリゴマーが低pH溶離中で形成されるが、オリゴマー含有量はプール濃度と相関関係がなかったことを示す。
【0063】
したがって、望ましくないオリゴマー形成を減少させるために、以下のさらなる精製方法を行った。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CIEX)、およびヒドロキシルアパタイト(HA)クロマトグラフィー。
【0064】
HICにおいて、2つの樹脂、フェニル−およびブチル−、および3つの移動相の塩、NaCl、Na
2SO
4および(NH
4)
2SO
4を試験した。フェニルをベースとする樹脂およびNaClをベースとする移動相を利用して、>97%の純度および約50%の収率をなし遂げることを可能にする良い結果を証明した。2つのCIEX樹脂は、HICから得られるものよりも優れた結果を示すことなくスクリーニングされた。
【0065】
ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー(HAC)を利用するさらなる試験は、優れた結果を生じた。HAカラムを、10.4mLのカラム体積(CV)(ベッド高さ11cm)に、Macro−Prep Ceramic HA Type II 40μm(Bio−Rad)で充填した。最高の溶出条件を同定するために、スクリーニング実験を行った(表6参照)。使用された出発物質は、最初の2工程クロマトグラフィー工程後のAIEXフロースルーであった。最初に、タンパク質の2つのバッチを調製した。第1および第2のバッチに対する全タンパク質発現レベルは、それぞれ、約588mg/Lおよび50mg/mLであった。2つのバッチからのAIEXフロースルーにおける純度および濃度は、同等であり、それぞれ約92%および2.5mg/mLであった。AIEXフロースルーを、HACローディングバッファーに対して透析し、HAカラム上に負荷した。全ての実験を2mL/分の流速で行った。
【表5】
【0066】
表5において要約された実験の中で、実験番号6は優れた結果を生じた。実験番号6からのHACクロマトグラムを
図6に示す。実験番号6からの主なピーク画分のプールは、99%以上の純度を有し(HACの主なピーク画分のSEC−HPLC分析クロマトグラムの例は、
図7に示される)、概算されるタンパク質収率は63%であった。注目すべきは、実験番号5はまた、比較的良い分離を生じたが、しかしながら約55%の低いタンパク質収率であった。
【0067】
インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいて、この実施例に本質的に記載されているとおりに、発現され、精製された配列番号1のポリペプチドは、約100ng/mlの濃度で、50ng/mlのRANKL誘導性破骨細胞分化を完全にブロックした(RAW264.7細胞、約50ng/mlでEC50)。
【0068】
実施例4:マウスへの皮下投与に対する配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドの毒性試験
配列番号1のポリペプチドを、前記実施例に本質的に記載されているとおりに、発現させ、精製させた。動物への投与のために、ポリペプチドを、以下のバッファー:1%w/v スクロース、100mM 塩化ナトリウム、25mM L−塩酸アルギニン、25mM 重炭酸ナトリウム、pH6.3において製剤化した。使用された投与する貯蔵濃度は0.5mg/mLのポリペプチドであった。
【0069】
試験において使用されたSPFマウスを3つのグループにランダムに分類した:製剤バッファーコントロールグループ、低用量グループおよび高用量グループ、それぞれのグループは5匹のマウスを有した。マウスをペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射により麻酔し、麻酔剤の用量は30mg/kgであった。注射部位をモニタリングするために、マウスの背中を剃った。20μL製剤バッファーを、皮下注射によりコントロールグループに投与した。16mg/kgのポリペプチドを低用量グループに投与し、32mg/kgのポリペプチドを高用量グループに投与し、注射部位での応答を観察し、15分、6時、24時、72時および7日に写真を撮った。
【0070】
行われた試験において、急性反応は、製剤バッファー単独または16および32mg/kgの用量における配列番号1のポリペプチドの皮下投与後に、マウスにおいて観察されなかった。皮膚反応または他の異常は、最大7日間の観察中に観察されなかった。
【0071】
実施例5:マウスにおける皮下投与後の配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドの薬物動態学(PK)
配列番号1のポリペプチドを、前記実施例に本質的に記載されているとおりに、発現させ、精製させた。動物への投与のために、ポリペプチドを、以下のバッファー:1%w/v スクロース、100mM 塩化ナトリウム、20mM L−塩酸アルギニン、25mM 重炭酸ナトリウム、pH6.3において製剤化した。使用された投与する貯蔵濃度は0.5mg/mLのポリペプチドであった。
【0072】
試験の0日目に、14匹のメスBalb/c nu/nuマウスを、2匹の動物で7つのグループに、体重に基づいてランダム化した。ポリペプチド(5mg/kg)の単回処置を、試験の0日目に血漿調製のために心穿刺を介して採血されたグループ1におけるマウスを除く全てのグループに0日目に皮下(背側)に投与した。血漿の調製のための試験以外(through-out)に、種々の時点で残りのグループにおいて眼窩静脈叢(orbital sinus)を介してマウスから血液サンプルを回収した。
【0073】
処置日(0日目)に、および次に、各グループの終了日を含んで週に3回で、全ての動物について体重を記録した。
【0074】
血漿調製のために、特定の時点で、マウスのグループを選択した。体重変化は、投与の0時および投与の36時間以内に、サンプル回収のために選択されたグループにおいて測定されなかった。ほとんどのグループは、試験期間中に体重が増加した。グループ5のみは、体重の全体的な増加をなし遂げることに失敗した処置後7日目に終了した。マウスの過度の体重の減少も有害な臨床兆候も、試験期間中に報告されなかった。
【0075】
試験の生存相に続いて、血漿サンプルをHu−Fcタンパク質に対するELISAにより分析した。ELISAによるマウス血漿サンプルにおけるHu−Fcの定量化を、ポリペプチドの循環レベルに対する読み出し(read-out)として使用した。試験において全てのマウスからのサンプルで、アッセイを行った。
【0076】
投与1時間後に、動物の血漿においてポリペプチドを検出した。次に、Prism 5.0c(GraphPad Software Inc, La Jolla, CA, USA)を使用するOne Phase Decay Model等式を使用して、Hu−Fc ELISAにより検出されるとき、配列番号1のポリペプチドの薬物動態学を決定した。Hu−Fcのピーク循環レベル(Cmax)は26.49μg/mLであると決定され、循環レベルのピークの時間(Tmax)は処置10時間後であった。ポリペプチドレベルは、最終評価点である投与から3週間後までに、ほぼ検出不可能なレベルに減少した。半減期(T1/2)は83.52時およびK0.0083時
−1であった。Hu−Fcは、未処置グループ1動物の血漿において検出されなかった。試験の結果は表6に要約されている。
【表6】
Hu−Fcのレベルとして計算できないSEMは、グループにおけるサンプルの1つに対して、ELISAの検出可能な限界以下であった。
ヒト−Fcタンパク質濃度は、に基づくPrism Softwareにより決定した。
^眼窩静脈叢を介する採血
#末端心穿刺を介する採血
【0077】
実施例6:マウス骨溶解モデルとしてのヒト乳癌に対する配列番号1のhOPG−hIgG1−Fcポリペプチドの有効性の決定
本実施例において使用されたマウス骨溶解モデルは、当分野でよく知られている(例えば、Arrington, S.A., et al., Bone. 2006 Mar;38(3):359-67参照)。配列番号1のポリペプチドを、前記実施例に本質的に記載されているとおりに、発現させ、精製させた。動物への投与のために、ポリペプチドを、以下のバッファー:1%w/v スクロース、100mM 塩化ナトリウム、20mM L−塩酸アルギニン、25mM 重炭酸ナトリウム、pH6.3において製剤化した。使用された投与する貯蔵濃度は0.5mg/mLのポリペプチドであった。
【0078】
60匹のメス無胸腺Nude−Foxn1
nuマウスに、それぞれ、5x10
5MDA−MB−468ヒト乳癌細胞(5μL中)を右脛骨に接種させた。接種14日後、マウスを体重により12匹の5つのグループにランダム化した(0日目)。
【0079】
それぞれのグループにおけるマウスに、ビヒクル(製剤バッファー)または配列番号1のポリペプチド(1、5または10mg/kg)での皮下処置、またはZometa(ゾレドロン酸)(0.1mg/kg)での静脈内処置を与えた。処置を0日目に開始し、週に3回投与し、6週間続けた。
【0080】
最初の処置日(0日目)および次に、試験の終了日(最後の処置の48時間後、最初の処置の42日後)を含む週に3回で、全ての動物について体重を記録した。試験クール中、全てのグループにおいて、有意な(p<0.05)平均体重増加があった。過度の体重の減少を含む有害な臨床兆候は、配列番号1のポリペプチドまたはZometaでの処置を受けたマウスにおいて観察されなかった。
【0081】
全ての用量での配列番号1のポリペプチドおよびZometaでの処置は、ビヒクルと比較して、接種の6および8週後の両方で得られた脛骨のX線画像において評価された骨溶解の有意な(p<0.05)阻害をもたらした。ほとんどあるいは全く骨溶解の証拠がなかったが、接種された脚の筋肉は、10mg/kgで配列番号1のポリペプチドを受けた1匹のマウスおよびZometaを受けた2匹のマウスから接種の6週後に得られたX線画像において増大が現れた。接種8週後に、増大された脚の筋肉の発生率は、全てのグループにおいて増加した。配列番号1のポリペプチドまたはZometaを受けた増大された脚の筋肉を有する全てのマウスは、接種8週後に、軽度の骨溶解を有したか、または骨溶解を有さなかった。全てのマウスからのX線画像を提示する。
【0082】
1mg/kgでの配列番号1のポリペプチドおよびZometaでの処置は、ビヒクルと比較して、試験の終了時に摘出された接種された脛骨のmicroCTスキャンにより評価された骨密度パラメーターにより示される骨溶解の有意な(p<0.05)阻害をもたらした。microCTのために分析されたそれぞれのグループ中の1匹のマウスからの典型的な二次元および三次元microCTスキャン画像を提示する。
【0083】
材料および方法
試験のための全ての材料は市販の供給源から得た。MDA−MB−468ヒト乳房腫瘍細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(Rockville, MD, USA)から供給された。MDA−MB−468ヒト乳房腫瘍細胞(作業ストックから継代5)を、10% FBS、1% Glutamaxおよび1% ペニシリン−ストレプトマイシンを補ったRPMI 1640細胞培養培地において培養した。細胞をトリプシン処理により回収し、HBSSで2回洗浄し、計数した。次に、細胞を1x10
8細胞/mLの最終濃度にHBSSに再懸濁した。
【0084】
腫瘍接種前に、注射部位をアルコールでよく消毒した。右後肢脛骨高原から骨髄管(channel)へ5−7mmの長さ(5μLの細胞懸濁液を提供するために十分である)のトンネルを開けるために、27G針を皮膚を介して挿入した。27G針を備えた50μL Hamilton型シリンジを使用して、5μLのMDA−MB−468細胞懸濁液(5x10
5細胞)をあらかじめ形成されたトンネルに流した。マウスの処置をMDA−MB−468細胞接種の14日後に開始した。
【0085】
合計で、65匹のメスマウス(ハツカネズミ)に試験のために接種し、このうちの60匹を実際に試験に使用した(グループにおいて5匹、合計で12グループ)。処置の開始時、動物体重は、約20.3から接種時、約27.8g(平均24.1g)の範囲であった。動物を、1グループあたり3つのケージにて、個々に換気されたケージ(Alternative Design Max, USA)に4匹ずつ入れた。動物を、12時間明/暗サイクルでバリア(検疫)条件下で制御された環境に維持した(標的範囲:温度21±3℃、湿度30−70%、1時間あたり15回換気)。温度および相対湿度を連続的にモニタリングした。全ての動物を同一の環境条件に付した。
【0086】
標準認定された市販の齧歯動物規定食(Teklad Global 18% Protein Rodent Diet, Harlan Laboratories, Inc, IN, USA)および水道水を動物に自由提供した。試験中、朝に1日1回、死亡率チェックを行った。臨床兆候(例えば、健康障害および行動の変化)もまた、1日1回、全ての動物について記録した。最初の処置日(0日目)に、および次に、試験の終了日を含んで週に3回で、全ての動物について体重を記録した。
【0087】
以下のビヒクル製剤を試験において使用した:1% スクロース、100mM 塩化ナトリウム、20mM l−塩酸アルギニン、25mM リン酸ナトリウム、pH6.3。該溶液を4℃で貯蔵した。参照物質Zometa(ゾレドロン酸)を臨床製剤(0.8mg/mL)において使用し、室温で貯蔵した。投与のために必要な濃度をなし遂げるために、試験物質(配列番号1のポリペプチド)(45mg/mL)を製剤バッファー(1% スクロース、100mM 塩化ナトリウム、20mM l−塩酸アルギニン、25mM リン酸ナトリウム、pH6.3)で希釈した。投与のために必要な濃度をなし遂げるために、Zometa(登録商標)臨床製剤(0.8mg/mL)を滅菌食塩水で希釈した。投与する溶液を、投与のそれぞれの日に新鮮に調製した。
【0088】
本試験において使用された投与レジメンは表7に要約される。60匹のマウスを、接種14日後である試験の0日目に体重により、12匹の5つのグループにランダム化した。
【表7】
【0089】
ビヒクルコントロール(製剤バッファー;グループ1)および配列番号1のポリペプチド(1、5および10mg/kg;グループ2、3および4各々)を、皮下注射(s.c.)により投与した(表7)。Zometa(0.1mg/kg;グループ5)を静脈内注射(i.v.)により投与した(表6)。処置を、0日目に開始する週に3回投与し、6週間続けた。
【0090】
ビヒクルコントロールおよび試験物質を10mL/kgの投与容量で投与した。各動物体重を投与直前に測定した。各動物に投与される投与溶液の容量を、個々の体重に基づいて計算し、調整した。
【0091】
接種の6および8週後に(最初の処置の4および6週後に)、全てのマウスに両方の脛骨のX線検査を行った。接種された右脛骨の骨溶解の視覚的評価をそれぞれのX線画像から行い、スコアは溶解の重症度および増大された脚の筋肉の存在を示すために与えた。溶解の程度は、0(溶解なし)から4(非常に重度の骨溶解)の尺度で与えた。筋肉組織の膨隆により示される増大された脚の筋肉の存在は、0.5の追加のスコアを与えた。
【0092】
終了時に全てのグループにおいて全てのマウスから接種された右脛骨を摘出した。摘出された脛骨を、総骨量(TBV)、骨梁体積(Tb.BV)、骨梁パターン因子(Tb.Pf)および構造モデル指数(SMI)を含むmicroCT分析(Adelaide Microscopy, Adelaide, SA, Australia)のために、10% 中性緩衝ホルマリン中に保存した。
【0093】
総骨量(TBV)(mm
3)は興味ある体積(VOI)内の総皮質および骨梁体積(Tb.BV)(mm
3)の尺度であり、VOIは皮質および骨梁からなる断面領域を含む。骨梁パターン因子(Tb.Pf)(mm
−1)は逆崩壊指数であり、これは骨梁に特異的に適用できる構造的結合性を示す。より低いTb.Pf値はより良い結合された柱格子を示し、より高いTb.Pf値はより切断された柱構造を示す(すなわち、より大きい崩壊/骨溶解)。構造モデル指数(SMI)は、骨梁のような3D構造における棒(rod)およびプレートの相対的な有病率の指標である。このパラメーターは骨の骨溶解において重要であり、プレート様(正常)から棒様(分解)構造への移行により特徴付けられる。理想的なプレート、シリンダーおよび球形は、それぞれ、0、3および4のSMI値を有する。値が大きいほど、より多くの損害がある。全ての統計的計算は、Prism 5.0c(GraphPad Software Inc, La Jolla, CA, USA)を使用して行った。
【0094】
対応のあるt検定を、体重が試験の0日目と終了日間で処置グループ内で有意に変化したか否かを決定するために使用した。データが正規性検定(Normality Test)に合格しなかった場合、ウィルコクソンの符号付き順位検定(Wilcoxon Matched Pairs Test)を行った。
【0095】
接種の6および8週後にX線画像において評価された骨溶解スコアの比較を、全てのグループ間で行った。両方のデータセットが正規性検定に不合格であったため、ランク付けにおいて、クラスカル・ウォリス一元配置分散分析(Kruskal-Wallis One Way Analysis of Variance)(ANOVA)を行った。多重比較 対 制御手順(Multiple Comparison vs Control Procedure)(Dunnの方法)を、ビヒクルでのそれぞれの処置と比較するために行った。
【0096】
摘出された接種された脛骨のmicroCTスキャンにより評価された骨溶解パラメーターの比較を、グループ1、2および5におけるマウス間で行った。正常分散データに関して、一元配置ANOVAを行い、全てのグループ間の比較をチューキーの多重比較検定(Tukey's Multiple Comparison Test)を使用して行った。データが正規性検定に合格しなかった場合、ランク付けにおいて、クラスカル・ウォリス一元配置分散分析(ANOVA)を行った。この場合、全てのグループ間の比較は、全多重対比較処理(All Pairwise Multiple Comparison Procedure)(Dunnの方法)を使用して行った。0.05未満のp値を有意と考えた。
【0097】
結果および観察
有害な臨床兆候は、配列番号1のポリペプチドまたはZometaでの処置を受けたマウス(グループ2−5)において観察されなかった。配列番号1のポリペプチドまたはZometaでの処置を受けたマウス(グループ2−5)は、試験期間中、最初の体重の15%以上の体重の喪失はなかった。全てのグループにおいて有意な(p<0.05)平均体重の増加があった(表8)。
【0098】
28および42日目に(接種の6および8週後に)、両方の脛骨のX線検査を全てのマウスから得た。接種された右脛骨の骨溶解の視覚的評価をそれぞれのX線画像から行い、スコアは接種された脚における溶解の重症度および増大された筋肉の存在を示すために与えた(表9、および
図8および
図9)。全ての用量での配列番号1のポリペプチド(1、5および10mg/kg;グループ2、3および4各々)およびZometa(グループ5)での処置は、ビヒクルコントロール(グループ1)と比較して、接種の6および8週後の両方で得られたX線画像において評価された骨溶解の有意な(p<0.05)阻害をもたらした。
【表8】
【表9】
a:ビヒクル(グループ1)と有意に異なる(p<0.05、ランク付けにおいて、クラスカル・ウォリス一元配置ANOVA)
スコア説明:
0 骨溶解なし
1 発症/軽度の骨溶解
2 中程度の骨溶解
3 重度の骨溶解
4 非常に重度の骨溶解
増大された筋肉−スコア+0.5
【表10】
【0099】
骨溶解の評価のためのMicroCTスキャンパラメーターは、総骨量(TBV)、骨梁容量(Tb.BV)、骨梁パターン因子(Tb.Pf)および構造モデル指数(SMI)を含む3次元形態計測分析を含んだ。データは表10に示されている。分析されたグループのそれぞれにおける1匹の動物からのmicroCTスキャンの典型的な画像は、
図10および
図11に示されている。1mg/kgでの配列番号1のポリペプチド(グループ2)およびZometa(グループ5)の両方での処置は、ビヒクルコントロール(グループ1)と比較して、全てのmicroCTスキャンパラメーターにより示される、骨溶解の有意な(p<0.05)阻害をもたらした(有意に高いTBVおよびTb.BV、および有意に低いTb.PfおよびSMI)。
【0100】
したがって、配列番号1のポリペプチド(1、5および10mg/kg、週にs.c.3回、6週間)が、メス無胸腺Nude−Foxn1
nuマウスの脛骨において接種されたMDA−MB−468ヒト乳癌細胞により誘導された骨溶解を防止することにおいて有効であるという結果となった。接種の6および8週後のX線画像および終了時(接種の8週後)に摘出された脛骨のmicroCTスキャンにより測定されるこの有効性は、用量依存であるようには見えなかった。同様に、これらの試験のための参照化合物であるZometa(0.1mg/kg、週にi.v.3回、6週間)もまた有効性を証明した。
【0101】
「Zometa」は、Novartis AG Corporation, Switzerlandの登録商標である。「Prolia」および「Xgeva」は、Amgen Inc., a Delaware Corporationの登録商標である。
【0102】
本明細書に記載されている全ての文献および特許文献は、それぞれの個々の文献または特許文献が、具体的かつ個別的に、出典明示により包含させることを示されていたかのように、それら全体において出典明示により本願明細書に包含させる。
【0103】
対象の特定の態様が議論されているが、上記明細書は例示的であり、制限的でない。多くの変形が、本明細書および特許請求の範囲の再検討時に当業者に明らかになる。本発明の全範囲は、それらの均等の全範囲と共に特許請求の範囲、およびかかる変形と共に明細書を参照することにより決定されるべきである。