(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭化水素が、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、およびシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
前記面材が、有機繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、金属フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
前記フェノール樹脂発泡体の、EN13166:2012 AnnexC C.4.2.2に記載される110℃での加速試験後の、10℃環境下における熱伝導率が0.023W/m・k未満である、請求項1〜5の何れかに記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
(フェノール樹脂発泡体積層板)
以下、発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体積層板は、硬化反応によって形成されたフェノール樹脂中に、多数の気泡(セル)が分散した状態で存在するフェノール樹脂発泡体と、当該フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に設けられた面材とを備える積層体である(
図1参照)。
なお、フェノール樹脂発泡体積層板の寸法比率は、
図1において示す比率に限られるものではない。
図1に示すように、本実施形態に係るフェノール樹脂発泡体積層板1は、フェノール樹脂発泡体3の主面と面材2の主面とが接触し、フェノール樹脂発泡体3が二枚の面材2によって上下から挟まれた形状をなす。
【0014】
<フェノール樹脂発泡体>
まず、フェノール樹脂発泡体について説明する。フェノール樹脂発泡体は、例えば、フェノール樹脂と、発泡剤と、硬化触媒と、界面活性剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化させることにより得られる。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、任意に、上記以外の成分を含有していてもよい。
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、密度が15kg/m
3以上70kg/m
3以下、独立気泡率が80%以上であり、そして
、ハイドロフルオロオレフィン
を単独で又は炭化水素および塩素化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種と併用する発泡剤を含有し、かつEN1609:1996 B法によって求められる24時間水中浸漬後の吸水量W
pが2.00kg/m
2以下であることを特徴とする。
【0015】
[フェノール樹脂]
本実施形態におけるフェノール樹脂は、例えば、フェノール類とホルムアルデヒド類を原料として、アルカリ触媒により40〜100℃の温度範囲で加熱して重合させることによって得られる。また、必要に応じて、フェノール樹脂重合時に尿素等の添加剤を添加してもよい。合成後のフェノール樹脂は、通常過剰の水を含んでいるので、発泡可能な水分量まで脱水される。フェノール樹脂の合成における、フェノール類対アルデヒド類の出発モル比は、1:1から1:4.5の範囲内であることが好ましく、1:1.5から1:2.5の範囲内であることがより好ましい。
フェノール樹脂の合成に好ましく使用されるフェノール類としては、フェノール又はフェノール骨格を有する化合物が挙げられる。フェノール骨格を有する化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、o−、m−及びp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。またフェノール類には、2核フェノール類も含まれる。
フェノール樹脂の合成に好ましく使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物が挙げられる。ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド類には、添加剤として、尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。なお、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは、添加剤が含まれたフェノール樹脂を指す。
【0016】
そして本実施形態のフェノール樹脂は、40℃における粘度が1000mPa・s以上100000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以上80000mPa・s以下であることがより好ましく、3000mPa・s以上60000mPa・s以下であることがさらに好ましく、4000mPa・s以上40000mPa・s以下であることが特に好ましく、5000mPa・s以上20000mPa・s以下であることが最も好ましい。フェノール樹脂の40℃における粘度が1000mPa・s以上であると、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する際に面材から染み出すことを抑制し、設備が汚れることを防止できる。さらには発泡速度が速くなりすぎず、気泡径が過度に大きくなることがなく、かつ高い独立気泡構造を保持できるため、得られるフェノール樹脂発泡体の長期間に亘る優れた断熱性能を確保することができる。一方、フェノール樹脂の40℃における粘度が100000mPa・s以下であると、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡速度が確保される。したがって、必要な発泡倍率を得るために多くの発泡剤が必要となることもなく、気泡内の発泡剤の圧力上昇に起因する発泡剤の液化が抑制され、特に低温領域での断熱性能の悪化を防ぐことができる。くわえて、フェノール樹脂の40℃における粘度が100000mPa・s以下であると、発泡性フェノール樹脂組成物の成形が容易となり、得られるフェノール樹脂発泡体の表面平滑性が確保される。そして当該発泡体の比表面積を小さく抑えることが可能となるため、結果として水分の吸収を抑制することができる。
なお、フェノール樹脂の40℃における粘度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0017】
[発泡剤]
また、発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる発泡剤は
、ハイドロフルオロオレフィ
ンを単独で又は炭化水素および塩素化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種と併用して含有し、使用した発泡剤は、得られるフェノール樹脂発泡体中にも含有される。
【0018】
炭化水素は、水素原子と炭素原子のみより構成される化合物であり、例えば、炭素数が3以上6以下の脂肪族炭化水素が挙げられる。炭素数が3以上6以下の脂肪族炭化水素としては、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、ブテン、ブタジエン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ペンテン、ヘキサン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘキセン等のアルカン、アルケン、ジエンに相当する直鎖状または分岐状の炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキセン等の環状の炭化水素、が挙げられる。これらの中でも、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。これら炭化水素は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。炭化水素の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部の範囲で好ましく使用される。
【0019】
塩素化炭化水素としては、炭素数が2以上5以下の直鎖状または分岐状のものが好適に用いられる。そして、炭素原子に結合している塩素原子の数は限定されるものではないが、1つ以上4つ以下であることが好ましい。そして、塩素化炭化水素としては、例えばクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどが好ましい。これらの中でもプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましく、イソプロピルクロリドがさらに好ましい。これら塩素化炭化水素は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。塩素化炭化水素の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部の範囲で好ましく使用される。
【0020】
ハイドロフルオロオレフィンとしては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd)等の塩素化ハイドロフルオロオレフィン;1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz)、2,3,3,3−テトラフルオロ-1-プロペン(HFO−1234yf)等の非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが好適に用いられる。これらのハイドロフルオロオレフィンは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ハイドロフルオロオレフィンの使用量について特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜25質量部の範囲で好ましく使用される。
【0021】
なお、フェノール樹脂発泡体の高い断熱性能を長期間に亘って保持する観点からは、発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。すなわち、フェノール樹脂発泡体は、上述の観点からは、ハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。ここで発泡剤としてはハイドロフルオロフィンを単独で使用してもよいし、ハイドロフルオロフィンと他の発泡剤と併用してもよい。ハイドロフルオロフィンと他の発泡剤と併用する態様としては、炭化水素と塩素化炭化水素の少なくとも一方と、ハイドロフルオロオレフィンとを併用する態様が好ましく、炭化水素とハイドロフルオロオレフィンとを併用する態様がより好ましい。
【0022】
本実施形態において、上述した発泡剤の沸点平均値Xは、−30℃以上50℃以下であることが好ましく、−20℃以上45℃以下であることがより好ましく、−12℃以上42℃以下であることがさらに好ましく、0℃以上35℃以下であることが特に好ましく、8℃以上35℃以下であることがとりわけ好ましく、12℃以上35℃以下であることが最も好ましい。発泡剤の沸点平均値が−30℃より低いと、フェノール樹脂発泡体を製造する際に発泡速度が過度に速くなり、気泡の破泡が誘発され独立気泡率が低下する。そして、独立気泡率の低下に伴い、吸水量が増大し長期間に亘り優れた断熱性能を保持できなくなる虞がある。一方、発泡剤の沸点平均値が50℃より高いと、フェノール樹脂発泡体を製造する際に、後述する面材上に発泡性フェノール樹脂組成物が吐出される際の発泡圧が低くなり、低発泡倍率で吐出されることとなる。このため面材と接触するフェノール樹脂の量が多くなり、面材から発泡性フェノール樹脂組成物が染み出してしまう懸念がある。さらには、フェノール樹脂発泡体を製造する際に、後述する第1の加熱工程において発泡速度がフェノール樹脂の硬化速度と比較して相対的に遅くなり、例えば複数のビード状に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物を板状に成型することが困難となる。そのため平滑な面を有するフェノール樹脂発泡体形成できなくなり、表面にラインの流れ方向と並行な筋状痕が残るといった懸念がある。この場合、前記筋条痕より水が染み込みやすくなるため吸水量が多くなってしまうため好ましくない。
なお、本実施形態において発泡剤の沸点平均値Xは式(1)によって求めることができる。
沸点平均値X=a×Ta+b×Tb+c×Tc+… ・・・(1)
ここで、上記式(1)において、対象となる物質(A、B、C、…)の各々の含有率(モル分率)がa,b,c,…であり、沸点(℃)がTa,Tb,Tc,…である。)
【0023】
[硬化触媒]
硬化触媒としては、フェノール樹脂を硬化できる酸性の硬化触媒であればよいが、無水酸硬化触媒が好ましい。無水酸硬化触媒としては、無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましい。無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。そして、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化触媒を、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。これら硬化触媒、硬化助剤、溶媒は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして硬化触媒の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して3〜30質量部の範囲で好ましく使用される。なお、硬化助剤、溶媒の使用量は、硬化触媒の種類および量に応じて適宜設定し得る。
【0024】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油の縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物、アルキルエーテル部分の炭素数が14〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、界面活性剤の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.3〜10質量部の範囲で好ましく使用される。
【0025】
[発泡性フェノール樹脂組成物の発泡および硬化]
例えば、上記フェノール樹脂、上記発泡剤、上記硬化触媒、及び上記界面活性剤を、上述したような割合で混合することにより発泡性フェノール樹脂組成物を得る。得られた発泡性フェノール樹脂組成物を、例えば「フェノール樹脂発泡体積層板」の項で後述するようにして発泡及び硬化させることにより、フェノール樹脂発泡体を得ることができる。
【0026】
[フェノール樹脂発泡体の性状]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の密度は、15kg/m
3以上70kg/m
3以下であることが必要であり、18kg/m
3以上50kg/m
3以下であることが好ましく、20kg/m
3以上40kg/m
3以下であることがより好ましく、22kg/m
3以上35kg/m
3以下であることがさらに好ましく、24kg/m
3以上33kg/m
3以下であることが特に好ましい。フェノール樹脂発泡体の密度が15kg/m
3よりも低いと、強度が低下しハンドリング時に取り扱いにくくなる。さらに、発泡倍率を高くするために多くの発泡剤が必要となり、気泡内に多量の発泡剤が含有され内圧が高くなる。この気泡内の内圧の上昇により、発泡剤が液化、凝集しやすくなるため特に低温領域での断熱性能が悪化してしまう。また、フェノール樹脂発泡体の密度が70kg/m
3よりも高いと、フェノール樹脂発泡体中の樹脂部が熱伝導率に寄与する割合が高くなることでフェノール樹脂発泡体全体の断熱性能が悪化してしまう。
なお、フェノール樹脂発泡体の密度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0027】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板において、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、低くなるとフェノール樹脂発泡体積層板の表層から吸水した水が厚み方向の中心部まで浸透する速度が上昇し、吸水性が高くなってしまう。また、気泡に内包された熱伝導率の低いガスが熱伝導率の比較的高い空気と容易に置換され、断熱性能の長期的な安定性が悪化する。さらに、フェノール樹脂発泡体の内部より、フェノール樹脂の硬化の際に生成し、シックハウス症候群の原因となりうるホルムアルデヒドが発泡体から周囲の環境に拡散する速度(ホルムアルデヒドの放散速度)が上昇する虞がある。これらの理由により、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は80%以上であることが必要であり、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97%以上100%以下であることが特に好ましい。
なお、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0028】
フェノール樹脂発泡体積層板における、前記ホルムアルデヒドの放散速度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。そして、ホルムアルデヒドの放散速度は、上述したフェノール樹脂発泡体の独立気泡率に加え、フェノール樹脂発泡体積層板の面材のフラジール通気度、ホルムアルデヒド補足剤の有無及び量、並びにフェノール樹脂中の残留ホルムアルデヒド量によっても影響を受け、好ましくは20μg/m
2・h以下であり、より好ましくは10μg/m
2・h以下、特に好ましくは7μg/m
2・h以下、最も好ましくは5μg/m
2・h以下である。
【0029】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の、EN1609:1996 B法によって求められる24時間水中浸漬後の吸水量W
pは、2.00kg/m
2以下であることが必要であり、1.80kg/m
2以下であることが好ましく、1.60kg/m
2以下であることがより好ましく、1.40kg/m
2以下であることがさらに好ましく、1.00kg/m
2以下であることが特に好ましく、0.5kg/m
2以下であることがとりわけ好ましく、0.30kg/m
2以下であることが最も好ましい。24時間水中浸漬後の吸水量W
pが2.00kg/m
2を超えると、フェノール樹脂発泡体の吸水性が高まり、また、優れた断熱性能を長期間に亘って保持することができない。
なお、上記のフェノール樹脂発泡体の24時間水中浸漬後の吸水量W
pは、具体的には本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0030】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体において、長期間使用に対応した加速試験後の熱伝導率(EN13166:2012 AnnexC C.4.2.2に記載される110℃での加速試験後の、10℃環境下における熱伝導率)は0.023W/m・k未満であることが好ましく、0.022W/m・k未満であることがより好ましく、0.021W/m・k未満であることがさらに好ましく、0.020W/m・k未満であることが特に好ましい。この値が低いほど、フェノール樹脂発泡体が長期間に亘り断熱性能を保持できていること示す。
なお、上記の長時間使用に対応した加速試験後の熱伝導率は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0031】
<面材>
次に、フェノール樹脂発泡体積層板において、上述したフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に配される面材について説明する。フェノール樹脂発泡体の上面に配される面材(上面材)と下面に配される面材(下面材)は、同一ものを使用しても異なるものを使用してもよいが、製造時におけるフェノール樹脂発泡体積層板のそりを防止するため、通常、同一のものを使用する。
そして本実施形態の面材は、生産時の面材破断を防止すべく、可撓性を有する面材であることが好ましい。可撓性を有する面材としては、有機繊維不織布などの合成繊維不織布、合成繊維織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙などの紙類、金属フィルムが挙げられる。これらの中でも、有機繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、金属フィルムが好ましい。これらの面材には必要に応じて孔が開けられていてもよい。また、これら面材は1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
そして面材は、難燃剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、無機フィラーなどを含有していてもよく、ホルムアルデヒド捕捉剤および/または無機フィラーを含有することが好ましい。上記難燃剤、ホルムアルデヒド補足剤、無機フィラーは予め面材の繊維中に混入、または面材上に塗工されていてもよいし、フェノール樹脂発泡体積層板の上下のいずれかまたは両面の面材に塗工してもよい。
【0032】
難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物;芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン又はリン化合物;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いることができる。なお、難燃剤は1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの難燃剤は面材の繊維中に練りこまれていてもよく、また、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等のバインダーに添加した状態で面材に塗布されていてもよい。そして難燃剤は、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、ワックスエマルジョン系、パラフィン系、アクリル樹脂パラフィンワックス併用系などの撥水剤やアスファルト系防水処理剤に添加し、表面の撥水及び防水処理剤として使用されていてもよい。これらの撥水剤や防水処理剤は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記難燃剤を添加した面材に塗布してもよい。
【0033】
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、例えば分子内にアミノ基を有する化合物、分子内にアミド基を有する化合物、分子内にイミド基を有する化合物、分子内にイミノ基を有する化合物、分子内にヒドラジド基を有する化合物、分子内にアジン基を有する化合物、分子内にアゾール基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手し易さや価格等から分子内にアミノ基を有する化合物、分子内にアミド基を有する化合物、分子内にイミド基を有する化合物、分子内にイミノ基を有する化合物、分子内にヒドラジド基を有する化合物が好ましい。
分子内にアミノ基を有する化合物としては、二重結合を有するアミン重合体及び誘導体、二重結合を有するアミン共重合体及び誘導体、ポリアミン及び誘導体、アルギニンなどのアミノ酸類、グアニジン及びグアニジン誘導体、メラミン誘導体などが挙げられる。
分子内にアミド基を有する化合物としては、二重結合を有するアミド重合体及び誘導体、二重結合を有するアミド共重合体及び誘導体、尿素及び尿素誘導体、ジシアノジアミド及びジシアノジアミド誘導体、セミカルバジド及びセミカルバジド誘導体、バルビツル酸、などが挙げられる。
分子内にイミド基を有する化合物としては、二重結合を有するイミド化合物の重合体及び誘導体、二重結合を有するイミド化合物の共重合体及び誘導体、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドなどがある。
分子内にイミノ基を有する化合物としては、二重結合を有するイミン化合物の重合体及び誘導体、二重結合を有するイミン化合物の共重合体及び誘導体、イミダゾール及びイミダゾール誘導体、ピラゾール及びピラゾール誘導体、テトラゾール及びテトラゾール誘導体などが挙げられる。
分子内にヒドラジド基を有する化合物としては、ヒドラジン塩化合物、アルキルヒドラジン、フェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン誘導体などが挙げられる。ヒドラジド基を有する化合物としてはサリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ヒドラジドが挙げられる。
なお、ホルムアルデヒド捕捉剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0034】
面材は、当該面材を介して発泡体に吸水または発泡体から排出される水のpHの調整をするために無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム,酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;亜鉛末等の金属粉などが挙げられる。
これらの無機フィラーは面材の繊維中に練りこまれていてもよく、また、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等のバインダーに添加した状態で面材に塗布されていてもよい。
なお、無機フィラーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0035】
そして、本実施形態の面材のフラジール通気度は、0.3cm
3/cm
2・sec以上50cm
3/cm
2・sec以下である必要があり、0.3cm
3/cm
2・sec以上40cm
3/cm
2・sec以下であることが好ましく、0.3cm
3/cm
2・sec以上30cm
3/cm
2・sec以下であることがより好ましく、0.3cm
3/cm
2・sec以上20cm
3/cm
2・sec以下であることが特に好ましい。面材のフラジール通気度が0.3cm
3/cm
2・secより低いと、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する過程で生成するまたは予め含有する水分をフェノール樹脂発泡体外に放出することが困難となる。それによって内部の発泡圧が過度に高くなり気泡の破泡が誘発され、独立気泡率の低い粗悪なフェノール樹脂発泡体が得られることとなる。この結果、フェノール樹脂発泡体の表層から吸水した水が、厚み方向の中心部まで浸透する速度が上昇し、吸水性が上昇するのみならず、断熱性能の長期的な安定性が悪化する。また、発泡、硬化のための加熱の際に熱風が面材を通過することが困難となりフェノール樹脂発泡体に達しにくくなることから、所定の硬度までフェノール樹脂発泡体の硬化を進めるために過度に長い時間が必要となる。一方、面材のフラジール通気度が50cm
3/cm
2・secを超えると面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する過程において面材から染み出してしまい、製造設備を汚してしまう。さらに、急激な発泡が起こり易くなるため、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率が低下し、そして、吸水性が上昇し、断熱性能が悪化する虞がある。
なお、面材のフラジール通気度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0036】
また、発泡時の発泡性フェノール樹脂組成物の面材への滲み出しや、発泡性フェノール樹脂組成物と面材との接着性の観点から、面材として有機繊維不織布を用いる場合には、目付け量は15g/m
2以上200g/m
2以下であることが好ましく、15g/m
2以上150g/m
2以下であることがより好ましく、15g/m
2以上100g/m
2以下であることがさらに好ましく、15g/m
2以上80g/m
2以下であることが特に好ましく、15g/m
2以上60g/m
2以下であることが最も好ましい。
そして面材としてガラス繊維不織布を用いる場合には、上記と同様の観点から、目付け量は30g/m
2以上600g/m
2以下であることが好ましく、30g/m
2以上500g/m
2以下であることがより好ましく、30g/m
2以上400g/m
2以下であることがさらに好ましく、30g/m
2以上350g/m
2以下であることが特に好ましく、30g/m
2以上300g/m
2以下であることが最も好ましい。
また面材としてガラス繊維混抄紙を用いる場合には、上記と同様の観点から、目付け量は50g/m
2以上300g/m
2以下であることが好ましく、70g/m
2以上250g/m
2以下であることがより好ましく、80g/m
2以上230g/m
2以下であることがさらに好ましく、90g/m
2以上210g/m
2以下であることが特に好ましく、100g/m
2以上200g/m
2以下であることが最も好ましい。
くわえて面材として金属フィルムを用いる場合には、上記と同様の観点から、目付け量は30g/m
2以上500g/m
2以下であることが好ましく、50g/m
2以上400g/m
2以下であることがより好ましく、60g/m
2以上350g/m
2以下であることがさらに好ましく、70g/m
2以上300g/m
2以下であることが特に好ましく、100g/m
2以上300g/m
2以下であることが最も好ましい。
【0037】
(フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法)
上述した本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板を製造する方法としては、例えば、フェノール樹脂と、硬化触媒と、発泡剤と、界面活性剤と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、少なくとも二枚の面材間で発泡及び硬化させる製造方法であって、当該製造方法は第1の加熱工程と、第1の加熱工程後に行う第2の加熱工程を含み、前記第1の加熱工程において、雰囲気温度が60℃以上99℃以下であり、かつフェノール樹脂発泡体内部の最高温度が60℃以上95℃以下であり、前記発泡剤の沸点平均値Xが、前記第1の加熱工程の雰囲気温度未満であり、前記フェノール樹脂の40℃における粘度が、1000mPa・s以上100000mPa・s以下である、ことを特徴とする方法が好ましい。
ここで、40℃における粘度が、1000mPa・s以上100000mPa・s以下であるフェノール樹脂を使用する理由は、「フェノール樹脂発泡体積層板」の項で上述した通りである。
なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体を得るための発泡性フェノール樹脂組成物の発泡及び硬化方法は、上述の方法に限定されない。
【0038】
上記発泡性フェノール樹脂組成物を二枚の面材間に配置する方法は特に限定されないが、発泡性フェノール樹脂組成物を、走行する下面材上に連続的に吐出し、さらに発泡性フェノール樹脂組成物の、下面材と接触する面とは反対側の面(上面)をもう1方の面材(上面材)で被覆する方法が挙げられる。
【0039】
そして、上述した第1の加熱工程と、第2の加熱工程における加熱方法は、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡・硬化可能であれば特に限定されないが、オーブン内での加熱が好ましい。
【0040】
<第1の加熱工程>
第1の加熱工程では、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡させ、発泡圧によって所定の厚み、形状に成形するとともに部分硬化させる。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、混合などにより、第1の加熱工程の前に部分的に発泡、硬化されていてもよい。
第1の加熱工程における雰囲気温度(オーブン内温度)は60℃以上99℃以下であり、60℃以上95℃以下であることがより好ましく、65℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、70℃以上90℃以下であることが特に好ましく、70℃以上85℃以下であることが最も好ましい。第1の加熱工程における雰囲気温度が60℃より低いと、フェノール樹脂の硬化反応が充分に進まなくなるため、フェノール樹脂発泡体が未硬化となり収縮等の不具合が生じてしまう虞がある。また第1の加熱工程における雰囲気温度が99℃より高いと、発泡性フェノール樹脂組成物の面材と接する表面近傍の温度が高くなりすぎてしまう。この結果、当該表面近傍の気泡が破泡して独立気泡率が低い粗悪なフェノール樹脂発泡体が得られ、上記破泡した気泡より水が染み込みやすくなる。
【0041】
また第1の加熱工程にオーブン(以下、「第1のオーブン」という。)を用いる場合、第1のオーブンは無端スチールベルト型ダブルコンベアまたはスラット型ダブルコンベアを有してもよい。これらを用いて、第1のオーブン内で、未硬化の発泡体を板状に成形しながら硬化させ、部分硬化した発泡体を得ることができる。第1オーブン内は全域に亘って均一な温度でなくてよく、複数の温度ゾーンを有していてもよい。
【0042】
ここで第1の加熱工程においては、発泡性フェノール樹脂組成物中のフェノール樹脂の硬化反応による発熱が生じ、この硬化反応および周囲からの熱により、発泡体内部の温度は影響を受けることとなる。そして、第1の加熱工程において、フェノール樹脂発泡体内部の最高温度は60℃以上95℃以下であり、65℃以上95℃以下であることが好ましく、70℃以上95℃以下であることがより好ましく、70℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、75℃以上90℃以下であることが特に好ましい。フェノール樹脂発泡体内部の最高温度が60℃よりも低いと、発泡剤による発泡圧力が低下し、必要な発泡倍率が得られなくなる虞がある。また、フェノール樹脂発泡体内部の最高温度が95℃よりも高くなると、発泡剤の発泡圧が過度に高くなることに加え、発泡性フェノール樹脂組成物中に含まれる水分の蒸気圧の上昇により気泡が破泡してしまうため、得られるフェノール樹脂発泡体の独立気泡率が低下する。この結果、発泡体表面から吸水した水分が内部へ拡散する速度が上昇しより多くの水を吸収してしまうのみならず、気泡に内包された発泡剤が大気中の空気と置換されやすくなることから、断熱性能を長期にわたって維持することができなくなる。
また、第1の加熱工程において、発泡剤の沸点平均値Xが第1の加熱工程の雰囲気温度未満であることが必要となる。発泡剤の沸点平均値Xが第1の加熱工程の雰囲気温度以上であると、発泡剤による発泡が充分に行われないからである。
【0043】
<第2の加熱工程>
第2の加熱工程においては、第1の加熱工程で部分硬化した発泡体を後硬化させる。なお、部分硬化した発泡体をスペーサーやトレイを用いて一定の間隔で重ねて、第2の加熱工程を実施してもよい。第2の加熱工程は、特に限定されないが、オーブン(以下、「第2のオーブン」という。)内で熱風を発生させることにより行うことが好ましい。
第2の加熱工程における雰囲気温度(オーブン内温度)は、70℃以上120℃以下であることが好ましく、80℃以上110℃以下であることがより好ましく、99℃超110℃以下であることがさらに好ましい。第2の加熱工程における雰囲気温度が120℃よりも高いと、発泡体の気泡内部における発泡剤や硬化反応で生じる水の圧力が過度に上昇することより、フェノール樹脂発泡体積層板の表面が凸状に膨らんでしまい、施工後に不陸が生じる虞があるため好ましくない。一方、第2の加熱工程における雰囲気温度が70℃よりも低いと、フェノール樹脂の反応進行に膨大な時間を要することとなり、製造効率が低下する。
【0044】
以上、本実施形態に係る製造方法によれば、難燃性や燃焼時の安全性(有害ガスの発生)を悪化することなく、優れた断熱性能を長期間に亘って保持可能であり、かつ吸水性が低く改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を提供することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。フェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体、面材について、以下の項目について測定及び評価を行った。
【0046】
<フェノール樹脂発泡体の密度>
得られたフェノール樹脂発泡体積層板から切り出した20cm角のボードを試料とし、この試料から面材を取り除いた後、JIS K 7222に従い質量と見かけ容積を測定して求めた。
【0047】
<フェノール樹脂発泡体の独立気泡率>
ASTM−D−2856−94(1998)A法を参考に以下の方法で測定した。
得られたフェノール樹脂発泡体積層板から面材を取り除いた後、フェノール樹脂発泡体の厚み方向中央部から、約25mm角の立方体試片を切り出した。厚みが薄く25mmの均質な厚みの試片が得られない場合は、切り出した約25mm角の立方体試片表面を約1mmずつスライスし均質な厚みを有する試片を用いた。各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm
3)を計測すると共に試片の重量(W:有効数字4桁,g)を測定した。引き続き、エアーピクノメーター(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM−D−2856−94(1998)のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm
3)を測定した。
次に、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径(t:cm)を、JIS K 6402に記載の方法を参考に測定した。具体的には、フェノール樹脂発泡体の厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面を50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値を求めた。平均気泡径は横切った気泡の数の平均値で1,800μmを除した値として求めた。
そして、既測定の各辺の長さより、試片の表面積(A:cm
3)を計測した。t及びAより、式VA=(A×t)/1.14により、試片表面の切断された気泡の開孔体積(VA:cm
3)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度は1.3g/mLとし、試片に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(VS:cm
3)を式VS=試片重量(W)/1.3により、算出した。
下記式(2)により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=〔(V2−VS)/(V1−VA−VS)〕×100 ・・・(2)
同一製造条件の発泡体サンプルについて6回測定し、その平均値をその製造条件サンプルの代表値とした。
【0048】
<面材のフラジール通気度>
面材のフラジール通気度はJIS L 1096:2010年 8.26.1 A法(フラジール形法)に準じて以下のようにして測定した。
面材を200mm×200mmに切断し試験片とし、フラジール形試験機(株式会社東洋精機製作所製、「フラジールパーミアメータ FP−2型」)の円筒の一端に取り付けた。試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファン及び空気孔を調整し,そのときの垂直形気圧計の示す圧力を測定した。測定した圧力と使用した空気孔の種類から、試験片の通過する空気量(cm
3/cm
2・sec)を算出し、面材のフラジール通気度とした。
【0049】
<フェノール樹脂発泡体の24時間水中浸漬後の吸水量W
p>
フェノール樹脂発泡体の24時間水中浸漬後の吸水量は、フェノール樹脂発泡体積層板を200mm×200mmに切り出し試験体とし、EN1609:1996 7.2.1に記載されている測定方法Bに準拠し以下の式(3)によって算出した。この測定方法によれば、試験体の第1の面が水面から10
mmの位置になるように水中に10秒浸漬した後に水中から取り出し、第1の面を水平に保った状態で5秒以内に測定した質量(m
1)を、同様に試験体の第1の面が水面から10
mmの位置になるように水中に24時間浸漬した後に水中から取り出し、第1の面を水平に保った状態で5秒以内に測定した質量(m
24)から差
し引いた値を用いるため、面材自身が吸水した量は打ち消され、フェノール樹脂発泡体が24時間で吸水した量を算出することができる。
W
P=(m
24−m
1)/A
p ・・・(3)
ここで、式(3)中、W
Pは24時間後の吸水量(kg/m
2)を示し、m
24は水中浸漬24時間後の試験体質量(kg)を示し、m
1は水中浸漬10秒後の試験体質量(kg)を示し、そしてA
pは試験体の第1の面の面積(m
2)を示す。
【0050】
<フェノール樹脂発泡体の加速試験後の熱伝導率>
フェノール樹脂発泡体の、110℃での加速試験後の10℃環境下における熱伝導率は以下のようにして測定した。
得られたフェノール樹脂発泡体積層板から面材を取り除いた後、フェノール樹脂発泡体サンプルについて、EN13166:2012 Annex CのC.4.2.2に従い、110℃に温調された循環式オーブン内に14日間入れ加速試験を行ない、その後23±2℃、相対湿度50±5%にて状態調節を行った。
引き続き、JIS A 1412−2:1999に準拠し、10℃における熱伝導率を測定した。具体的には、フェノール樹脂発泡体サンプルを600mm角に切断し、試片を23±1℃・湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに重量の経時変化を測定し、24時間経過の質量変化が0.2質量%以下になるまで、状態調節をした。状態調節された試片は、23±1℃・湿度50±2%の雰囲気に置かれた熱伝導率装置に導入した。
10℃における熱伝導率は、低温板0℃高温板20℃の条件で、試験体1枚・対称構成方式の測定装置(英弘精機製、「HC−074/600」)を用い行った。
【0051】
<フェノール樹脂発泡体積層板のホルムアルデヒドの放散速度>
フェノール樹脂発泡体積層板のホルムアルデヒドの放散速度は、JIS A 1901に準拠して測定した。
【0052】
<フェノール樹脂の40℃における粘度>
フェノール樹脂の40℃における粘度は、回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値とした。
【0053】
<フェノール樹脂発泡体内部の最高温度>
走行する下面材上に連続的に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物の厚み方向の中心部に、上面材で被覆する前に、温度記録計(株式会社ティアンドデイ製、「おんどとりTR−71Ui」)に専用熱電対(株式会社ティアンドデイ製、「TR−1220」)を取り付けた装置の専用熱電対を埋め込んだ。
その後に第1のオーブン内に流し、フェノール樹脂発泡体中の厚み方向中心部の温度を10秒毎に記録した。フェノール樹脂発泡体内部の最高温度は、前記温度記録計内に記録されたフェノール樹脂発泡体内部の温度のうち、最も高い温度とした。
【0054】
<フェノール樹脂発泡体の表面平滑性>
フェノール樹脂発泡体の表面平滑性は、吸水量W
pを算出する際に切り出したフェノール樹脂発泡体積層板の200×200mmの試験体の水と接触する面の平滑性を確認することで評価した。そしてこの平滑性は、フェノール樹脂発泡体を水と接触する面を上にして定盤の上に置き、水と接触する面上における5mm以上のへこみの有無によって評価した。5mm以上のへこみがあるものを×、5mm以上のへこみがないものを○とした。
【0055】
(フェノール樹脂の合成)
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3500kgと99質量%フェノール2510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。オストワルド粘度が60センチストークス(=60×10
−6m
2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液でpHを6.4に中和した。
この反応液を60℃で濃縮処理して、フェノール樹脂Aを得た。なお、フェノール樹脂Aの40℃における粘度は5300mPa・sであった。そして、濃縮時間を適宜変更して、表1に示す粘度(40℃)を有するフェノール樹脂B〜Dを得た。
【0056】
【表1】
【0057】
(
参考例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、「プルロニックF−127」)を2.0質量部の割合で混合した。得られたフェノール樹脂Aと界面活性剤を含む組成物102質量部と、発泡剤として表2に示す発泡剤Aを7質量部と、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物14質量部からなる混合物とを25℃に温調した混合機のミキシングヘッドに供給して得られる発泡性フェノール樹脂組成物を、マルチポート分配管を通して、移動する下面材(表3の面材A)上に供給した。なお、使用する混合機は、特開平10−225993号公報に開示されたものを使用した。即ち、混合機の上部側面に、フェノール樹脂に界面活性剤を添加して得られる組成物、及び、発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に硬化触媒の導入口を備えている混合機を使用した。攪拌部以降は発泡体を吐出するためのノズルに繋がっている。即ち、混合機は、硬化触媒導入口までを混合部(前段)、硬化触媒導入口〜攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部〜ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。
【0058】
下面材(表3の面材A)上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物の、下面材と接触する側とは反対側の面を、上面材(表3の面材A)で被覆すると同時に、発泡性フェノール樹脂組成物を上下二枚の面材で挟み込むようにして、85℃のスラット型ダブルコンベアへ搬送した。続いて第1のオーブン内において、85℃(雰囲気温度)で15分間滞留させ硬化した(第1の加熱工程)後、110℃(雰囲気温度)の第2のオーブンで2時間キュア(第2の加熱工程)した。スラット型ダブルコンベアにより、上下方向から面材を介してフェノール樹脂発泡体に適度に圧力を加えることで、板状のフェノール樹脂発泡体積層板を得た。得られたフェノール樹脂発泡体積層板の上面材側に尿素の15質量%水溶液を30g/m
2塗工し120℃の乾燥炉で2分間乾燥させた。
【0059】
(
参考例2)
面材Aに替えて表3に記載の面材Bを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0060】
(
参考例3)
面材Aに替えて表3に記載の面材Cを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0061】
(
参考例4)
フェノール樹脂A及び発泡剤Aに替えて、それぞれ表1に記載のフェノール樹脂B及び表2に記載の発泡剤Bを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0062】
(
参考例5)
フェノール樹脂Aに替えて表1に記載のフェノール樹脂Cを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0063】
(
参考例6)
フェノール樹脂Aに替えて表1に記載のフェノール樹脂Dを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0064】
(
参考例7)
第1のオーブンの雰囲気温度を95℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0065】
(
参考例8)
第1のオーブンの雰囲気温度を60℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0066】
(
参考例9)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Cを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0067】
(実施例10)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Dを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0068】
(実施例11)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Eを使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を70℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0069】
(
参考例12)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Fを8質量部使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を80℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0070】
(実施例13)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Gを10質量部使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を80℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0071】
(実施例14)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Hを9質量部使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を75℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0072】
(実施例15)
発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Iを10質量部使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を80℃にしたこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0073】
(比較例1)
フェノール樹脂Aに替えて表1に記載のフェノール樹脂Dを使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を100℃に変更したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0074】
(比較例2)
面材Aに替えて表3に記載の面材Dを使用し、発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Cを使用し、第1のオーブンの雰囲気温度を90℃に変更したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0075】
(比較例3)
面材Aに替えて表3に記載の面材Bを使用し、フェノール樹脂Aに替えて表1に記載のフェノール樹脂Dを使用し、発泡剤Aに替えて表2に記載の発泡剤Bを使用したこと以外は、
参考例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0076】
参考例、実施例、比較例の各種物性、評価結果は表4にまとめた。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
表4より、
参考例1
〜9および12ならびに実施例10、11および13〜15で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体は、比較例1〜
2で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体に比して、低吸水性、断熱性能の長期保持性にバランスよく優れていることがわかる。