特許第6550425号(P6550425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550425
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】通気アセンブリ及び微多孔膜複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/36 20060101AFI20190711BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C08J9/36CEW
   C08J7/04 Z
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-130338(P2017-130338)
(22)【出願日】2017年7月3日
(62)【分割の表示】特願2015-533211(P2015-533211)の分割
【原出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2017-165992(P2017-165992A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/705,090
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/839,046
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ サンダース
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−503991(JP,A)
【文献】 特開平07−289865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08J 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む微多孔膜と、
前記微多孔膜上のコーティングと
を含む複合膜であって、
前記コーティングは、クロム含有金属錯体着色剤を含み、前記複合膜の平均透過損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において、前記微多孔膜単独の平均透過損失よりも少なくとも10%大きく、前記複合膜の挿入損失は、300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において、前記微多孔膜の挿入損失よりも小さく、前記複合膜の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜の目付けよりも少なくとも0.5%高い、複合膜。
【請求項2】
前記複合膜の平均透過損失は、300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において、前記微多孔膜単独の平均透過損失よりも少なくとも50%大きい、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
疎油性コーティングをさらに含む、請求項1に記載の複合膜。
【請求項4】
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、0.001〜2.0ミクロンの平均孔径を有する、請求項1に記載の複合膜。
【請求項5】
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、50%を超える有孔率を有する、請求項1に記載の複合膜。
【請求項6】
300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において前記微多孔膜単独の挿入損失の80%以下の挿入損失を有する、請求項1に記載の複合膜。
【請求項7】
前記複合膜は黒色である、請求項1に記載の複合膜。
【請求項8】
前記クロム含有金属錯体着色剤はカーボンブラックを含まない、請求項1に記載の複合膜。
【請求項9】
前記複合膜が筐体の開口部に取り付けられるように構成される場合、前記筐体は、前記複合膜が水の浸入を許すことなく30分間、1メートルの水中の浸漬に耐えられる、請求項1に記載の複合膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての国を指定する出願人である米国国内企業のDonaldson Company,Inc.及び全ての国を指定する発明者である米国市民のJacob Sandersの名の下で、2013年9月20日にPCT国際特許出願として出願されるものであり、内容全体が本明細書に援用される、2013年3月15日に出願された米国特許出願第13/839,046号明細書及び2012年9月24日に出願された米国仮特許出願第61/705,090号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本明細書に記載の技術は、一般に、複合材料に関する。特に、本明細書に記載の技術は、ガス透過性通気アセンブリに使用される微多孔膜複合材料に関する。特に、本技術は、音響トランスデューサを覆うために使用される通気アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な電子機器にとって、水への曝露は、生じ得る水害のため、関心事である。このため、多くの会社は、疎油性及び疎水性を提供する防水性の製品設計へと移行している。その際に、このような製品は、デバイス内に存在するマイクロホン及びスピーカのクリアな音響特性も維持する。製造業者らは、彼らの製品を最低でもIPx7と格付けすることを望む。この格付けは、彼らの製品がダメージを受けることなく30分間1メートルの深さにまで沈められた状態で耐え抜けることを明示する。電子デバイスには、均圧化を可能にし、トランスデューサが適切に機能することを可能にするフィルタ又はベントが必要である。
【0004】
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むフィルタを利用して、マイクロホン及びスピーカに対する必要な防水を提供することができる。音響ベントを使用して、スピーカ及びマイクロホンを水及び塵から保護する。多くの場合、これらのベントは、延伸PTFE膜から成る。PTFE膜は、水及び/又は塵がマイクロホン又はスピーカに到達することを防止する一方で、音響信号が最小限の損失で通過することを可能にする。
【0005】
PTFE膜は、低目付け及び高可撓性を有するように製造可能であることから使用される。これらの特性は、音響信号によって励振された際に、PTFE膜を容易に振動させ、液体の侵入を許すことなく、音響信号を反対側へと透過させる。さらに、PTFE膜は、ガス透過性であり、温度変化による差圧の均一化及び凝縮による水分の排出を可能にする。PTFE膜は、高い除塵効率も有し、液体水を通過させることなく高い差水圧に耐えることができる。
【0006】
一般的に、このようなベントは、トランスデューサを覆う電子機器ハウジングに固定されたディスク形状をとる。当業界は、音響性能、エアフロー、及びフィルタリング能力の標準は維持しながら、フィルタの色等の美的目標の達成に重点を置いてきた。さらに、従来の理解では、例えばPTFEのコーティング又はラミネート加工によるPTFE膜の目付けの増加及び可撓性の低下が、ベントの音響性能の低下をもたらすことを要求する。このような従来の理解は、このような材料の音響性能の低下を示すデータを提供した透過損失試験によって裏付けられてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示が包含する技術は、一般に、音響通気アセンブリにおいて使用可能な膜複合材料に関する。本明細書に開示される技術の一実施形態では、通気媒体複合材料は、微多孔膜層と、微多孔膜層上のコーティングとを有して、複合材料を形成する。複合材料の目付けは、コーティングを持たない微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約0.5%高い。
【0008】
本明細書に開示される技術の別の実施形態では、通気媒体の製造方法が開示される。延伸PTFE膜を準備し、コーティング溶液を作る。膜をコーティング溶液でコーティングすることによって、膜上にコーティングを形成する。通気媒体複合材料の目付けは、コーティングを持たない微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約0.5%高く、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において複合材料を持たない微多孔膜層の挿入損失以下の平均挿入損失を有する。
【0009】
さらに別の実施形態では、微多孔膜と、微多孔膜上のコーティングとを備えた別の複合膜が開示される。複合膜の平均透過損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において、微多孔膜単独の平均透過損失よりも少なくとも40%大きく、複合膜の挿入損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において、微多孔膜の挿入損失よりも小さい。
【0010】
さらに別の実施形態では、通気媒体複合材料が開示される。通気媒体は、微多孔膜層と、微多孔膜層上のコーティングとを有し、コーティングは、クロム含有金属錯体着色剤である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
微多孔膜層と、
前記微多孔膜層上のコーティングと、
を含む通気媒体複合材料であって、
前記微多孔膜層及び前記コーティングは、複合材料であり、前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約0.5%高い、通気媒体複合材料。
(項目2)
前記複合材料は、電子機器筐体に規定された開口部の周囲で前記筐体に結合されるように構成される、項目1及び3〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目3)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の平均挿入損失以下の平均挿入損失を有する、項目1〜2及び4〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目4)
疎油性コーティングをさらに含む、項目1〜3及び5〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目5)
前記微多孔膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、項目1〜4及び6〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目6)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、0.001〜2.0ミクロンの平均孔径を有する、項目1〜5及び7〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目7)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、50%を超える有孔率を有する、項目1〜6及び8〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目8)
前記複合材料は、25%を超える有孔率を有する、項目1〜7及び9〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目9)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記微多孔膜層単独の平均挿入損失の95%以下の平均挿入損失を有する、項目1〜8及び10〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目10)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記微多孔膜層単独の平均挿入損失の90%以下の平均挿入損失を有する、項目1〜9及び11〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目11)
300Hz〜4000HzのH1周波数範囲において前記微多孔膜層単独の平均挿入損失の85%以下の平均挿入損失を有する、項目1〜10及び12〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目12)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記微多孔膜層単独の平均挿入損失の80%以下の平均挿入損失を有する、項目1〜11及び13〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目13)
前記コーティングは着色剤を含む、項目1〜12及び14〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目14)
前記着色剤は金属錯体染料を含む、項目1〜13及び15〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目15)
前記着色剤はクロムを含む、項目1〜14及び16〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目16)
前記複合材料は黒色である、項目1〜15及び17〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目17)
前記着色剤はカーボンブラックを含まない、項目1〜16及び18〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目18)
前記コーティングは、透明樹脂、バインダ、及びポリマーの群の1つを含む、項目1〜17及び19〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目19)
前記コーティングは、フルオロケミカルを含む、項目1〜18及び20〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目20)
10.5フィート/分で移動する0.3ミクロン以上の粒径の場合、99.0%以上のフィルタリング効率を有する、項目1〜19及び21〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目21)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約1%高い、項目1〜20及び22〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目22)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約3%高い、項目1〜21及び23〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目23)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約5%高い、項目1〜22及び24〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目24)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約10%高い、項目1〜23及び25〜26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目25)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約15%高い、項目1〜24及び26のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目26)
前記複合材料が筐体の開口部に取り付けられるように構成される場合、前記筐体は、前記複合材料が水の浸入を許すことなく30分間1メートルの水中の浸漬に耐えられる、項目1〜25のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目27)
通気媒体の製造方法であって、
a.延伸PTFE膜を準備するステップと、
b.コーティング溶液を作るステップと、
c.前記膜を前記コーティング溶液でコーティングすることによって、前記膜上にコーティングを形成するステップと、
を含み、
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約0.5%高く、
前記複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記複合材料を持たない前記微多孔膜層の挿入損失以下の平均挿入損失を有する、方法。
(項目28)
前記コーティング溶液は、フッ素重合体を含む、項目27及び29〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記コーティングステップは、前記膜の浸漬コーティングを含む、項目27〜28及び30〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
ドクターブレード、エアナイフ、又はニップローラを用いて、前記膜から余分のコーティングを除去するステップをさらに含む、項目27〜29及び31〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記コーティングステップは、スプレーコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、及びリックロールコーティングから成る群の1つ以上を含む、項目27〜30及び32のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記コーティングは着色剤を含む、項目27〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
微多孔膜と、
前記微多孔膜上のコーティングと、
を含む複合膜であって、
前記複合膜の平均透過損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において、前記微多孔膜単独の平均透過損失よりも少なくとも10%大きく、前記複合膜の挿入損失は、300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において、前記微多孔膜の挿入損失よりも小さい、複合膜。
(項目34)
電子機器筐体に規定された開口部の周囲で前記筐体に結合されるように構成された、項目33及び35〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目35)
前記複合膜の平均透過損失は、300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において、前記微多孔膜単独の平均透過損失よりも少なくとも50%大きい、項目33〜34及び36〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目36)
疎油性コーティングをさらに含む、項目33〜35及び37〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目37)
前記微多孔膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、項目33〜36及び38〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目38)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、0.001〜2.0ミクロンの平均孔径を有する、項目33〜37及び39〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目39)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、50%を超える有孔率を有する、項目33〜38及び40〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目40)
300Hz〜4000Hzの前記周波数範囲において前記微多孔膜層単独の前記挿入損失の80%以下の挿入損失を有する、項目33〜39及び41〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目41)
前記コーティングは着色剤を含む、項目33〜40及び42〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目42)
前記着色剤は金属錯体染料を含む、項目33〜41及び43〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目43)
前記着色剤はクロムを含む、項目33〜42及び44〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目44)
前記複合膜は黒色である、項目33〜43及び45〜51のいずれか一項に記載の複合膜
(項目45)
前記着色剤はカーボンブラックを含まない、項目33〜44及び46〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目46)
前記コーティングは、透明樹脂、バインダ、及びポリマーの群の1つを含む、項目33〜45及び47〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目47)
前記コーティングは、フルオロケミカルを含む、項目33〜46及び48〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目48)
10.5フィート/分で移動する0.3ミクロン以上の粒径の場合、99.0%以上のフィルタリング効率を有する、項目33〜47及び49〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目49)
前記複合膜の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約3%高い、項目33〜48及び50〜51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目50)
前記複合膜の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約5%高い、項目33〜49及び51のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目51)
前記複合膜が筐体の開口部に取り付けられるように構成される場合、前記筐体は、前記複合膜が水の浸入を許すことなく30分間1メートルの水中の浸漬に耐えられる、項目33〜50のいずれか一項に記載の複合膜。
(項目52)
a.微多孔膜層と、
b.前記微多孔膜層上のコーティングであって、クロム含有金属錯体着色剤を含む前記コーティングと、
を含む、通気媒体複合材料。
(項目53)
電子機器筐体に規定された開口部の周囲で前記筐体に結合されるように構成された、項目52及び54〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目54)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の平均挿入損失以下の平均挿入損失を有する、項目52〜53及び55〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目55)
疎油性コーティングをさらに含む、項目52〜54及び56〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目56)
前記微多孔膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、項目52〜55及び57〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目57)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、0.001〜2.0ミクロンの平均孔径を有する、項目52〜56及び58〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目58)
前記延伸ポリテトラフルオロエチレンは、50%を超える有孔率を有する、項目52〜57及び59〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目59)
300Hz〜4000Hzの周波数範囲において前記微多孔膜層単独の挿入損失の80%以下の挿入損失を有する、項目52〜58及び60〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目60)
前記複合材料は黒色である、項目52〜59及び61〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目61)
10.5フィート/分で移動する0.3ミクロン以上の粒径の場合、99.0%以上のフィルタリング効率を有する、項目52〜60及び62〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目62)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約5%高い、項目52〜61及び63〜64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目63)
前記通気媒体複合材料の目付けは、前記コーティングを持たない前記微多孔膜層の目付けよりも少なくとも約10%高い、項目52〜62及び64のいずれか一項に記載の複合材料。
(項目64)
前記複合材料が筐体の開口部に取り付けられるように構成される場合に、前記筐体は、前記複合材料が水の浸入を許すことなく30分間1メートルの水中の浸漬に耐えられる、項目52〜63のいずれか一項に記載の複合材料。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術の一実施態様例の模式図を示す。
図2図1の音響通気アセンブリ例の正面図である。
図3】線3−3に沿った図2の音響通気アセンブリの断面図である。
図4】本明細書に開示される技術に一致する音響通気複合材料の模式断面図を示す。
図5】第1の微多孔膜の第1の面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図6】第1の微多孔膜の第2の面のSEM画像を示す。
図7】本明細書に開示された技術に一致し、図5及び6の第1の微多孔膜を用いて作られた音響通気複合材料の第1の面のSEM画像を示す。
図8図7の音響通気複合材料の第2の面のSEM画像を示す。
図9】微多孔膜及び本明細書に開示される技術に一致した音響通気複合材料の挿入損失を示すグラフである。
図10】本明細書に開示される音響通気媒体に一致した第1のコーティングされた微多孔膜の第1の面と比較して、第1の微多孔膜の第1の面の漸進的に拡大させたSEM画像を示す。
図11図10の第1のコーティングされた微多孔膜の第2の面と比較して、第1の微多孔膜の第2の面の漸進的に拡大させたSEM画像を示す。
図12】本明細書に開示される音響通気媒体に一致した第2のコーティングされた微多孔膜の第1の面と比較して、第2の微多孔膜の第1の面の漸進的に拡大させたSEM画像を示す。
図13図12の第2のコーティングされた微多孔膜の第2の面と比較して、第2の微多孔膜の第2の面の漸進的に拡大させたSEM画像を示す。
図14】コーティングされていないPTFE膜及び本明細書に開示された技術に一致する通気複合材料の音響透過損失を示し、比較するグラフである。
図15】微多孔膜及び本明細書に開示された技術に一致する膜複合材料の挿入損失を示すグラフである。
図16】本明細書に記載される実験的試験に一致する試験キャップの断面図を示す。
図17】周波数応答の対照試験例の結果を示すグラフである。
図18】膜例の引張試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付の図面に関連した本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解及び正しく認識することができる。
【0013】
図1は、本技術の一実施態様例の模式図を示す。電子機器アセンブリ10は、開口部52を規定する筐体50を有し、音響通気アセンブリ30が開口部52にわたって封止可能に配置される。音響通気アセンブリ30は、一般に、筐体50の開口部52への粉塵及び水の進入を防止し、圧力及び通過する音響圧力波の均一化を可能にするガスフローを提供するように構成される。音響通気アセンブリ30のフィルタリング効率は、一般に、10.5フィート/分で移動する0.3ミクロン以上の粒径の場合、99%以上である。一部の実施形態では、電子機器アセンブリ10は、少なくともIPx7又はIP67のIngress Protection Ratingを有する。IPx7又はIP67の格付けにおける二番目の数字7は、筐体が30分間、最大1メートルの水中に浸された場合に、有害量の水の浸入が可能でないことを意味する。試験手順は、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission(IEC))によって発表され、国際規格IEC60529と呼ばれる国際規格においてさらに定義される。IPx7又はIP67の格付けにおける最初の桁x又は6は、固体及び塵の侵入に対して提供される保護を指す。数字の代わりに「x」が使用されている場合は、保護レベルは、特定されない。最初の桁が6である場合、提供される保護レベルは、防塵であり、塵の侵入がないことを示す。
【0014】
図2は、図1に示した実施態様に一致する音響通気アセンブリ例の正面図を示し、図3は、図2の音響通気アセンブリの断面図を示す。音響通気アセンブリ30は、一般に、開口部52(図1を参照)の周囲で電子機器筐体50に結合されるように構成された周辺領域32を規定し、通気媒体複合材料100を通る音響透過を可能にする内部領域34も規定する。図2及び3において、通気媒体複合材料100は、周辺領域32及び内部領域34にわたって延在する。接着剤36が周辺領域32に配置され、内部領域34は、接着剤を含まない状態にしておく。接着層は、複合材料100の片側又は両側にあってもよい。音響通気アセンブリ30は、当該分野で一般的に公知の発泡層、接着層、及びガスケット層等の、追加の層及び層の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
図1〜3は、音響通気アセンブリ30及び内部領域34の全体形状を円形に描くが、当業者であれば、音響通気アセンブリ及びその内部領域が、本明細書に開示される技術に一致する様々な形状を有し得ることを理解するであろう。例えば、音響通気アセンブリ及び/又はその内部領域は、卵形又は長方形でもよい。少なくとも1つの実施形態では、音響通気アセンブリは、2つの内部領域を規定し得る。
【0016】
本技術によれば、音響通気アセンブリ30は、例えば図4に一致する構造を含む様々な構造を有する通気媒体複合材料を組み込む。一部の実施形態では、音響通気複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲における約0.1dB〜約3dBの平均H1周波数応答に基づいた平均挿入損失を有する。少なくとも1つの実施形態において、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲で2dB未満の挿入損失を有する。多くの実施形態において、音響通気複合材料の平均挿入損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独の平均挿入損失以下である。一部の実施形態では、音響通気複合材料の挿入損失は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独の挿入損失の85%以下である。
【0017】
複合材料又はコーティングされた膜がコーティングされていない膜よりも低い挿入損失を有するこれらの特定の実施形態は、多くの実施形態においてコーティングが膜に重量及び剛性を与えるという事実を考慮すれば驚くべきことである。従来の理解では、膜の目付けの増加及び可撓性の低下がベントの音響性能の低下をもたらすことを要求する。予期される複合膜の音響性能の低下は、一般的に、コーティングされていない膜と比較した場合の複合膜に対して行われた透過損失試験の結果によって立証されてきた。
【0018】
実際、PTFE膜単独(EN0701957)及び本明細書に開示された技術に一致する複合PTFE膜(以下の実施例2に従って準備される)の透過損失データの比較を示す図14は、そのような予想を裏付ける。29mmのチューブ内に取り付けた直径29mmの膜試料と共に、ASTM E2611−09によって確立された試験ガイドラインを用いた。PTFEのみの膜は、約0.69dBの300Hz〜4000Hzのスペクトルにわたる平均透過損失を有し、PTFE複合材料は、1.11dBの同スペクトルにわたる平均透過損失を有した。このように、PTFE複合材料は、PTFE単独の平均透過損失よりも約60%大きい平均透過損失を有した。さらに、図14に見られるように、複合PTFEは、そのPTFEのみの片割れよりも、より不規則に様々な周波数に応答する。また、従来の理解では、例えば本明細書に教示されるような電気機器ハウジングに取り付けられる大きさに形成された膜のように、ずっと小さな膜は、大きな構成部品よりも劣った性能(性能は、透過損失データによって示される)を持つ。
【0019】
上記の従来の理解に反して、本明細書に開示される複合膜の一部の実施形態は、その膜のみの片割れと比較して向上した音響性能を示す。本技術の一部の実施形態では、複合膜は、300〜4000Hzの周波数範囲において、その膜単独の平均透過損失よりも、少なくとも10%大きい、20%大きい、30%大きい、40%大きい、又は50%大きい平均透過損失を示し得る。しかしながら、本明細書にさらに述べられるように、複合膜の一部の実施形態は、H1周波数応答測定及び挿入損失等の異なる測定基準を用いて測定された場合に、著しく悪くはない又は向上した音響性能を示す。
【0020】
平均H1周波数応答測定及び挿入損失を以下に説明する。
【0021】
H1周波数応答及び挿入損失
一般的に、周波数応答は、刺激に応答したシステム又はデバイスの出力スペクトルの定量的計量である。これは、入力と比較した周波数の関数としての出力の大きさ及び位相の計量である。音響ベントの場合、周波数応答関数(FRF)は、特定の音響範囲の各周波数において音響ベントを通過する前の音響波と比較した、音響ベントを通過した音響波の大きさ及び位相の計量である。
【0022】
興味対象の音響ベントのH1周波数応答関数の実験的試験の一例では、ホワイトノイズ等の不規則音響信号が、無響試験室内の拡声器を介して生成される。音響信号を測定するために、2つのマイクロホン、基準マイクロホン及び出力マイクロホンをこの室内に設置する。各マイクロホンは、マイクロホンのアクティブ領域上に取り付けられたキャップを有し、出力マイクロホンのキャップは、キャップに取り付けられた興味対象の音響ベントを有する。基準マイクロホン上に取り付けられたキャップは、音響ベントを持たない。そのため、基準マイクロホンを通して受信された音響信号(音響ベントを通過しない)は、興味対象の音響ベントを通過する前の音響信号に等しいと解釈され、従って、処理ソフトウェアによって入力データ又は基準データとして指定される。興味対象の音響ベントを通過した出力マイクロホンを通して受信された音響信号は、出力データとして指定される。2つのマイクロホンからの音響信号は、次に、スペクトルにわたってH1−FRFを生成するために、ソフトウェアによって比較される。
【0023】
上記の実験設定に一致して、使用可能な分析システムの1つは、デンマークのNaerumにあるBrueel & Kjaer Sound & Vibration Measurement A/SによるPULSE Analyzer Platformである。スピーカは、ホワイトノイズを生成するために、PULSE Analyzer Platformソフトウェアによって電力を供給される。Brueel & Kjaer型の2670個のマイクロホンをPULSE Analyzer Platformと共に使用してこの試験を行うことができる。PULSE Analyzer Platformソフトウェアは、5秒間マイクロホンデータを記録し、周波数範囲にわたってその結果を平均する。基準マイクロホンからの音響データは、ある周波数範囲にわたって周期的にデシベル(dB)表示の出力値を提供するH1−FRF(周波数応答関数)計算方法を用いて、PULSE Analyzer Platformソフトウェアによって、出力マイクロホンからの音響データと比較される。ある音響ベントに関してデシベル表示での周波数応答が低いほど、このベントを通る音響透過が良い。
【0024】
図16は、第1のマイクロホン410上に取り付けられた試験キャップ例400の断面図を示す。キャップ400によって規定される開口部422内にOリングが配置され、これは、キャップ400及びマイクロホン410間の密封を生じさせる。この図には示されないが、試験を受けているベントのサイズ及び形状に一致するように開口部がキャップ400の後壁424の軸中心に機械加工され、ここに、図1の記載において上記で説明したような電子機器ハウジングによって規定された開口部上にベントが取り付けられる方法と同様にして、ベントが取り付けられる。一般に、機械加工された開口部は、図1〜3に関して上述したような興味対象の音響ベントの接着剤を含まない内部領域部分のサイズ及び形状と一致し、第2のマイクロホンに関連する第2の試験キャップは、その内部に機械加工された実質的に同一の開口部を有する。
【0025】
H1−FRF計算は、主に、音響ベントに起因すると考えられる音響信号の損失を示す。しかしながら、音響信号の損失のごく一部は、2つのマイクロホン間の機器の欠陥、それらの位置調整、及びスピーカによって生成される音場によるものである。そのため、H1−FRF対照曲線を生成するために対照試験も行うことが望ましい場合がある。このようなFRF対照試験は、基準マイクロホン及び出力マイクロホンに関連する各キャップが音響ベントを持たない点を除いては、興味対象の音響ベントの試験に関して上述したような類似の試験設定を持つ。H1−FRF計算結果は、試験設定における欠陥に起因すると考えられる。そのため、完璧な試験では、H1−FRFは、スペクトルにわたって0dBとなる。図17は、上記の試験機器を用いた対照試験例に関連する結果を示す。
【0026】
挿入損失を計算するために、対照H1−FRF結果は、以下の式:
IL(f)=H1vent(f)−H1control(f)
を用いて試験H1−FRF計算結果を調整し、式中、IL(f)は、挿入損失であり、H1vent(f)は、興味対象の音響ベントのH1−FRFであり、H1control(f)は、上記の対照設定のH1−FRFである。
【0027】
完璧又は完璧に近い実験設定を用いた場合、挿入損失は、興味対象の音響ベントのH1−FRFと数字的に同等又はほぼ同等となることが当業者には理解されるであろう。しかしながら実際には、機器の品質が異なる場合があり、従って、音響信号に対する構成部品の影響を決定する際には、挿入損失を用いることが一般的である。この特定の試験手順では、挿入損失は、出力信号マイクロホンを覆う音響ベントを有したマイクロホンと、それを持たないマイクロホンとのFRFの比較である。
【0028】
理解されるように、挿入損失結果は、本質的に複雑となり得る。同一の方法で試験された2つの異なる材料の結果を比較しようと試みる場合、興味対象の特定の周波数範囲にわたるdB表示の平均挿入損失を計算することが有用となり得る。これは、平均挿入損失と呼ばれる。この計算用の式を以下に示す。
【数1】

式中、|IL(f)|は、特定の周波数fにおけるH1周波数応答関数の絶対値であり、周波数範囲は、300Hz〜4000Hzである。挿入損失の絶対値は、上記式において、スペクトルにおける負の挿入損失値に起因する平均挿入損失値の不適切な低下(性能の向上を示唆する)を回避するために使用される。
【0029】
一部の実施形態では、本明細書に開示される技術に一致した複合材料は、コーティングされていない膜と比較してそんなに悪くはない音響特性を有する。一部の実施形態では、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において複合材料を持たない微多孔膜層のdBの平均挿入損失よりも100%以下大きいdBの平均挿入損失を有する。一部の実施形態では、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独のdBの挿入損失よりも50%以下大きいdBの挿入損失を有する。一部の実施形態では、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独のdBの挿入損失よりも20%以下大きいdBの挿入損失を有する。
【0030】
一部の実施形態では、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独の挿入損失以下のdB表示の挿入損失を有する。この場合、コーティングされた膜の音響性能は、コーティングされていない膜よりも悪くない。
【0031】
一部の実施形態では、複合材料は、コーティングされていない膜と比べて向上した音響特性を持つ。一部の実施形態では、複合材料は、300Hz〜4000Hzの周波数範囲において微多孔膜層単独のdB表示の挿入損失の95%、90%、85%、又は80%以下のdB表示の挿入損失を有する。
【0032】
図9は、微多孔膜の挿入損失を本明細書に開示される技術に一致した音響通気複合材料と比較したグラフである。このグラフは、ePTFE単独910、5%のコーティング溶液でコーティングしたePTFE920、及び10%のコーティング溶液でコーティングしたePTFE930に関連した300Hz〜4000Hzの挿入損失を示す。コーティングされたePTFE試料は共に、コーティングされていないePTFE試料よりも滑らかな挿入損失曲線を持つ。挿入損失曲線における大きな変動は、時に、音響透過がひずんだ品質を有することを示す。このため、滑らかな曲線が好ましい。
【0033】
以下の表1は、300〜4000Hzの周波数範囲にわたる図9に示された試料に関連するデータの平均挿入損失を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
図9において曲線910を生成したコーティングされていないePTFE膜は、ここで及び他の図面においてEN0701957と呼ばれ、15.57グラム/平方メートルの目付けを有する。曲線920を生成した複合材料又はコーティングされた膜は、ベース膜としてEN0701957を使用し、次に、メチルエチルケトン(MEK)に溶解された、ロードアイランド州のEast ProvidenceのOrganic Dyestuffs Corporationによって販売されるOrcosolve Black RE−MCを5%含むコーティング溶液を用いてコーティングを行った。曲線930を生成した複合媒体は、ベース膜としてEN0701957を使用し、次に、メチルエチルケトン(MEK)に溶解された、ロードアイランド州のEast ProvidenceのOrganic Dyestuffs Corporationによって販売されるOrcosolve Black RE−MCを10%含むコーティング溶液を用いてコーティングを行った。各膜又は複合材料のさらなる特性を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
コーティングを有する膜
図面に戻って、本出願の通気媒体複合材料は、一般に、コーティングを有する微多孔膜である。複合材料という用語は、本明細書において、少なくとも巨視的に互いに区別可能な2つ以上の構成要素(補強要素、充填剤、及び複合材料マトリックスバインダ)の物理的単一化として定義される。構成要素は、それらの個性を保つ、すなわち、それらは協働するが、互いに溶け合わない又は完全に一つにはならない。通常、各構成要素及び構成要素間の境界面は、目に見える。そのような一例が図4に示され、ここでは、音響通気アセンブリ30において使用するための通気媒体複合材料100は、微多孔膜200及び微多孔膜200をコーティングするコーティング300を有する。本明細書において動詞として使用される場合の「コーティング」という用語は、構成部品の外面上に実質的にまとまりのある層を形成することとして定義され、コーティングは、微多孔膜全体に浸透し得る。本明細書において名詞として使用される場合の「コーティング」という用語は、関連の構成部品の外面上に配置された実質的にまとまりのある層として定義され、この層は、膜の全厚さにわたって外面上に配置され得る。
【0038】
微多孔膜200は、様々な実施形態において延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であるが、他の実施形態では、約2ミクロン又は2ミクロン未満の直径の孔を持つ異なる材料が使用され得る。ある実施形態では、微多孔膜層は、約10ミクロン〜約100ミクロンの厚さを有する。ePTFEが微多孔膜層に使用される実施形態では、ePTFEは、0.001〜0.8ミクロンの平均孔径を有する。様々な実施形態において、ePTFEは、体積で40%を超える有孔率を有する。一部の実施形態では、ePTFEは、体積で50%を超える有孔率を有する。
【0039】
コーティング300は、様々な材料及び材料の組み合わせでもよい。ある実施形態では、コーティング300は、着色剤を含み、本明細書で使用される「着色剤」という用語は、インク、染料、及び顔料等の構成部品の知覚着色を調節する構成要素として定義される。様々な実施形態において、コーティング300は、金属錯体着色剤である。これらの実施形態の少なくとも1つにおいて、コーティングは、ロードアイランド州のEast ProvidenceのOrganic Dyestuffs Corporationによって販売されるOrcosolve Black RE−MC等の、クロム(Cr)含有金属錯体着色剤である。有用となり得る他の着色剤には、米国特許出願公開第2009/0311618号明細書及び米国特許第5,387,473号明細書に記載されるものが含まれる。一部の実施形態では、コーティング300は、微多孔膜に黒の着色を与えるが、青色、灰色、濃青色、濃灰色、又は他の色等の他の着色が与えられてもよい。一部の実施形態では、コーティング300は、カーボンブラックを使用せずに黒着色を与える。当業者であれば、黒の着色剤が、実際には、青色、赤色、又は緑色等の色(これらは、塗布後、人間の目には濃灰色又は黒として一般に知覚される)であり得ることを理解するであろう。
【0040】
一部の実施形態では、コーティングは、樹脂、バインダ、ポリマー、又はこれらの内の2つ以上でもよい。一部の実施形態では、このようなコーティングは、着色剤の添加なしに向上した音響特性及び引張強度を示す。ポリマー材料及びポリマー形成方法の例は、以下の特許及び特許出願に記載され、それらの内容全体が本明細書に援用される:2011年9月21日に出願された米国仮特許出願第61/537,171号明細書(代理人整理番号758.7149USP1)、2012年4月4日に出願された米国仮特許出願第61/620,251号明細書(代理人整理番号444.71490161)、2011年8月17日に出願された米国特許出願公開第2012/0204527号明細書(代理人整理番号758.1149USC9)、2010年5月18日に発行された米国特許第7,717,975号明細書(代理人整理番号758.1831USU1)、2010年2月2日に発行された米国特許第7,655,070号明細書(代理人整理番号758.2034USU1)、及び2009年3月31日に出願された米国特許出願公開第2009/0247970号明細書(代理人整理番号758.7089USU1)。
【0041】
様々な実施形態において、コーティング300は、微多孔膜の目付けを少なくとも約0.5%、約1%、約3%、約5%、約10%及び約15%増加させる。音響通気複合材料の平均挿入損失は、一般に、その微多孔膜層単独の平均挿入損失よりも小さい。表1に示した例等の様々な実施形態において、音響通気複合材料の平均挿入損失は、微多孔膜層単独の平均挿入損失の約60〜90%である。これらの実施形態の一部において、音響通気複合材料の平均挿入損失は、微多孔膜層単独の平均挿入損失の約80%である。
【0042】
通気度及びエアフロー
一般に、微多孔膜200上のコーティング300は、微多孔膜単独と比較して、音響通気複合材料100の通気度を約50%低下させる。様々な実施形態において、コーティング300は、微多孔膜200単独と比較して、音響通気複合材料の通気度を約30%〜約70%低下させる。ある実施形態では、音響通気複合材料を通した圧力降下は、直径0.75インチの流路の場合、50ccmで約10mbar未満である。一部の実施形態では、直径0.75インチの流路の場合、50ccmで約8mbar未満である。少なくとも1つの実施形態では、音響通気複合材料を通した圧力降下は、直径0.75インチの流路の場合、50ccmで7mbar未満である。
【0043】
ある実施形態では、複合材料は、25%を超える有孔率を有する。
【0044】
図5〜6は、微多孔膜の各面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図7〜8は、本明細書に開示された技術に一致した音響通気複合材料の各面のSEM画像を示す。図5〜6に一致する微多孔膜は、Cr金属錯体着色剤を用いてコーティングされ、図7〜8に一致する音響通気複合材料に至る。
【0045】
図10〜13はそれぞれ、コーティング後のePTFE膜の隣にコーティング前のePTFE膜の一方の面の漸進的に拡大させたSEM画像を示す。各図の右欄は、コーティング前のePTFEを示し、左欄は、コーティング後のePTFEコーティングを示す。一般に、コーティングは、ePTFEの様々な小繊維が接続する接続点において特に厚く見える。
【0046】
引張強度
様々な実施形態において、図4に一致したもの等の通気媒体複合材料は、微多孔膜単独の引張強度と比較して、少なくとも約105%、110%、115%、120%、130%、150%、175%、及び200%の引張強度を有することが期待される。
【0047】
図18は、以下に説明する実施例2に従って準備された2つの試料である白色(コーティングされていない)膜510、520と、2つの試料である黒色(複合材料)膜512、522とに対して行われた引張試験の結果例を示す。各試料は、幅1インチで、長さ3インチであった。この試験は、3インチ/分で行われ、縦方向に試験された。複合膜は、コーティングされていない膜(Ewhite)と比較して、ヤング率の増加を示した(Eblack)。試料材料の降伏強度は、コーティングの前後で変化しないように見える。これらの材料は、塑性変形中も同様に機能するように見え、これは、塑性変形がベース材料の構造の動きに依存する範囲で起こり得る。
【0048】
方法
この音響通気複合材料の形成に一致する方法をこれより説明する。微多孔膜が準備され、コーティング溶液が作られる。様々な実施形態において、微多孔膜は、一方の表面上に配置された取り外し可能なライナを有する。コーティング溶液は、一般に、溶媒及び溶媒に溶解されたコーティング固体を含む。上記のように、少なくとも1つの実施形態において、コーティングは、ロードアイランド州のEast ProvidenceのOrganic Dyestuffs Corporationによって販売されるOrcosolve Black RE−MC等のCr金属錯体着色剤である。一般に、溶媒は、因子の中でも特に、コーティングを溶解する能力に基づいて選択される。ある実施形態では、溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)である。他の実施形態では、溶媒は、アセトン、エチルアルコール、又はメタノールである。ある実施形態では、コーティングは、溶媒中に溶解され、次に、コーティング溶液を用いて、膜が浸漬コーティングされる。ある実施形態では、コーティングプロセスは、ドクターブレード、エアナイフ、ニップローラ、又はこれらの技術の組み合わせを用いて、余分のコーティングを除去することを含む。ある実施形態では、スプレーコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、及びリックローリング(lick rolling)の1つ等のコーティングに対する計量供給アプローチを用いて膜がコーティングされる。膜の一方の面がコーティング溶液中に沈められる実施形態では、コーティング溶液は、膜の厚さにわたって移動することができ、膜の両面をコーティングして、複合材料を生じさせる結果となる。少なくとも1つの実施形態において、コーティングされた膜の一方の表面は、乾燥及び保管等のためにライナと接触させて置いてもよい。
【実施例】
【0049】
本明細書に開示された技術に一致する3つの膜例をこれより説明する。
【0050】
実施例1
エタノールに溶解されたNylon PA66ターポリマー及びOrcosolve RE−MC黒色クロムアゾ染料錯体から成る溶液を準備した。溶液は、4%(質量で)のPA66ターポリマー、8%のRE−MC染料、及びエタノールから成るものであった。溶液をDonaldsonのEN0701957延伸PTFE膜上に注ぎ、余剰分を拭き取った。膜を乾燥させてエタノールの蒸発をもたらした。その結果得られた複合材料を高温のオーブン内に置き、PTFE繊維の周囲のPA66ターポリマーの架橋結合を促進させた。
【0051】
この材料を測定した結果、延伸PTFEと比較して、透気率の50%の低下が示された。色は、黒色又は濃灰色を示した。H1周波数応答関数を用いて挿入損失を計算し、図15において、それを実施例2(以下に説明する)及びPTFE膜のみの挿入損失と比較して示す。
【0052】
実施例2
メチルエチルケトン(MEK)に溶解された8%(質量で)のOrcosolve RE−MC黒色クロムアゾ染料錯体から成る溶液を準備した。この溶液をDonaldsonのEN0701957延伸PTFE膜上に注ぎ、余剰分を拭き取った。膜を乾燥させ、これにより、MEKを蒸発させた。
【0053】
この材料を測定した結果、延伸PTFEと比較して、透気率の50%の低下が示された。色は、黒色又は濃灰色を示した。H1周波数応答関数を用いて挿入損失を計算し、図15において、それを実施例1及びPTFE膜のみの挿入損失と比較して示す。
【0054】
実施例3
メチルエチルケトン(MEK)に溶解された10%(質量で)のLumiflon LF−916Fフッ素重合体樹脂から成る溶液を準備した。この溶液は、10%のLumiflon LF−916Fと、残りの部分にMEKとを用いて準備した。この溶液をDonaldsonのEN0701957延伸PTFE膜上に注ぎ、余剰分を拭き取った。MEKを乾かして、溶液及びPTFEから抜けさせた。この材料を測定した結果、延伸PTFEと比較して、透気率の50%未満の低下が示された。音響試験は、この試料に対して行わなかった。
【0055】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されるように、「構成された」というフレーズは、ある特定の作業を行う、又はある特定の構成を採用するように構築又は構成されたシステム、装置、又は他の構造を言い表すことにも留意されたい。「構成された」というフレーズは、「配置された」、「配置及び構成された」、「構築及び配置された」、「構築された」、「製造及び配置された」等の他の類似のフレーズと互換的に使用され得る。
【0056】
本明細書の全ての公報及び特許出願は、本発明が属する当業者のレベルを示す。全ての公報及び特許出願は、個々の公報又は特許出願が参照することにより具体的かつ個々に示されるのと同じ程度に本明細書に援用される。本出願は、本発明の要旨の改変例又は変更例を含むものとする。上記の記載は、限定的なものではなく、例示的なものであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18