(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
研削対象とするラビリンスパッキンを固定した状態で、前記ラビリンスパッキンの長手方向に沿うX軸方向と、前記ラビリンスパッキンの幅方向に沿うY軸方向への移動を可能とするステージと、
前記ラビリンスパッキンの幅方向に沿って並ぶ複数の櫛歯を研削する研削手段と、
前記ラビリンスパッキンの弦長を計測する第1計測手段と、
前記ラビリンスパッキンの高さ方向に沿うZ軸方向の座標であるZ軸座標を前記X軸に沿って3点計測する第2計測手段と、
前記第1計測手段によって計測された弦長に基づいて、前記第2計測手段によりZ軸座標を計測する3点のX軸座標を割り出し、前記第2計測手段による計測を実行させる制御信号を出力し、前記第2計測手段によってZ軸座標が計測された後、各計測点におけるX軸座標に基づいて、前記櫛歯上面を予め定められた研削量で研削するための加工データを作成し、前記加工データに基づく制御信号を出力する制御手段と、
前記研削手段を前記Z軸方向へ移動させる第1Z軸アクチュエータと、
脱着可能なユニットにより構成され、前記加工データに基づく制御信号に従って、回転しながら前記櫛歯の頂部側面と接触する研削材から成るバリ取手段を、前記Z軸方向へ移動させる第2Z軸アクチュエータと、
少なくとも、前記ステージと、前記第1Z軸アクチュエータとが設置され、前記第2Z軸アクチュエータの脱着スペースが設けられているベースとを備え、
前記第2計測手段による計測を実行させる制御信号は、複数の前記櫛歯における1点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測した後、前記X軸方向に移動して2点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測し、さらに前記X軸方向に移動して3点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測する旨の信号であることを特徴とするラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示している技術によれば、加工対象とするラビリンスパッキンの大きさや曲率の如何を問わず、櫛歯状のフィンの研削加工を行うことが可能となる。
【0008】
しかし、特許文献3に開示されている技術は、Z軸の座標を検出する点を作業者の任意で選択することとなる。このため、作業者によって計測位置が中心寄りになったり、外側に寄ったりする事があった。
【0009】
そこで本発明では、基準となる計測点の位置についても自動化し、加工に関する人為的なバラつきをより抑制することのできるラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置、およびラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置は、研削対象とするラビリンスパッキンを固定した状態で、前記ラビリンスパッキンの長手方向に沿うX軸方向と、前記ラビリンスパッキンの幅方向に沿うY軸方向への移動を可能とするステージと、前記ラビリンスパッキンの
幅方向に沿って並ぶ複数の櫛歯を研削する研削手段と、前記ラビリンスパッキンの弦長を計測する第1計測手段と、前記ラビリンスパッキンの高さ方向に沿うZ軸方向の座標であるZ軸座標を前記X軸に沿って3点計測する第2計測手段と、前記第1計測手段によって計測された弦長に基づいて、前記第2計測手段によりZ軸座標を計測する3点のX軸座標を割り出し、前記第2計測手段による計測を実行させる制御信号を出力し、前記第2計測手段によってZ軸座標が計測された後、各計測点におけるX軸座標に基づいて、前記櫛歯上面を予め定められた研削量で研削するための加工データを作成し、前記加工データに基づく制御信号を出力する制御手段と、前記研削手段を前記Z軸方向へ移動させる第1Z軸アクチュエータと、脱着可能なユニットにより構成され、前記加工データに基づく制御信号に従って、回転しながら前記櫛歯の頂部側面と接触する研削材から成るバリ取手段を、前記Z軸方向へ移動させる第2Z軸アクチュエータと、少なくとも、前記ステージと、前記第1Z軸アクチュエータとが設置され、前記第2Z軸アクチュエータの脱着スペースが設けられているベースとを備え
、前記第2計測手段による計測を実行させる制御信号は、複数の前記櫛歯における1点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測した後、前記X軸方向に移動して2点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測し、さらに前記X軸方向に移動して3点目のZ軸座標を前記Y軸方向に沿ってそれぞれ計測する旨の信号であることを特徴とする。
【0011】
上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置では、前記加工データに基づく制御信号に従って、回転しながら前記櫛歯の頂部側面と接触する研削材から成るバリ取手段を備える
ことにより、従来手作業で行っていたバリ取作業についても、自動で行うことが可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置において前記研削材は、可撓性を有するものであると良い。このような特徴を有することにより、櫛歯の頂点側面に発生するバリを効果的に解消することができる。
【0013】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置
では、
前記ベースに前記第2Z軸アクチュエータを取り付けた際、前記バリ取手段に対する制御信号は、前記加工データに対して、前記第1Z軸アクチュエータと前記第2Z軸アクチュエータとの間のシフト量を加味して出力される構成と
することができる。このような特徴を有する事によれば、バリ取手段の制御のための加工データを新たに作成する事なく、バリ取加工を実施することができる。
【0014】
さらに、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置において前記第2Z軸アクチュエータ
を脱着可能なユニットとし
たことで、研削装置を拡張型の装置とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置、および方法によれば、ラビリンスパッキンの曲率や大きさ、状態の如何によらず研削加工を行う事ができる。このため、作業者の熟練度に依存する事なく、短時間で高精度に修正加工を行う事が可能となる。また、基準となる3点の計測点の割出についても自動化することで、加工に関する人為的なバラつきをより抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置、およびラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、
図1から
図3は、実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置の外観構成を示す正面図、左側面図、および平面図である。また、
図4は、把持機構の構成を示す拡大側面図であり、
図5は、同正面図である。また、
図6は、研削加工後のラビリンスパッキンに生ずるバリを取り除くバリ取手段における回転ブラシと櫛歯の関係を示す部分拡大図である。
図7は、ラビリンスパッキンの櫛歯と計測手段における計測ピンの関係を示す部分拡大図である。また、
図8は、制御手段を含むラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置のシステム全体のイメージを示すブロック図である。さらに、
図9は、実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置によりラビリンスパッキンの櫛歯研削を行う際の工程を示すフロー図である。また、
図10は、ラビリンスパッキンにおける3点のZ軸を自動計測する際の計測ルートの例を示す図である。
【0019】
[研削装置の構成]
実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置(以下、単に研削装置10と称す)は、ベース12と、ステージ14、研削手段34、第1Z軸アクチュエータ26、バリ取手段70、第2Z軸アクチュエータ74、第1計測手段、第2計測手段38、および制御手段42を有する。ベース12は、実施形態に係る研削装置10の土台である。
【0020】
[ステージについて]
ステージ14は、X軸方向、およびY軸方向への移動を行うテーブルである。また、ステージ14上には、被加工物であるラビリンスパッキン60を固定するための把持機構24が備えられている。本実施形態においてX軸とは、
図1、
図3において矢印Aで示す方向であり、ラビリンスパッキン60を把持機構24により固定した際、その長手方向に沿う方向となる。また、Y軸とは、
図2、
図3において矢印Bで示す方向であり、ラビリンスパッキン60を把持機構24により固定した際、その幅方向に沿う方向となる。
【0021】
実施形態に係るステージ14は、X軸機構16とX軸ステージ18、Y軸機構20、およびY軸ステージ22とを備える構成としている。X軸機構16は、ベース12上に、X軸に沿って配されたガイドレール16aとボールネジ16b、およびボールネジ16bを回転させるX軸モータ16cとを備えて構成される。X軸ステージ18は、ボールネジ16bの回転に伴って移動するスライダであり、ガイドレール16aに沿う摺動部18aを有する。
【0022】
Y軸機構20は、X軸ステージ18上に、Y軸に沿って配されたガイドレール20aと、ボールネジ20b、およびボールネジ20bを回転させるY軸モータ20cとを備えて構成される。Y軸ステージ22は、ボールネジ20bの回転に伴って移動するスライダであり、ガイドレール20aに沿う摺動部22aを有する。また、Y軸ステージ22上には、把持機構24が備えられる。
【0023】
[把持機構について]
把持機構24は、ラビリンスパッキン60を固定するための手段であり、実施形態に係る研削装置10では、固定当板24aと可動当板24b、支柱24c、およびクランプ24dを有する。固定当板24aは、ステージ14を構成するY軸ステージ22に固定される位置決め用の部材である。可動当板24bは、固定当板24aに対向配置され、固定当板24aと可動当板24bとの間にラビリンスパッキン60を挟み込む役割を担う部材である。支柱24cは、固定当板24aを基点としてY軸方向に沿って延設され、可動当板24bを貫通して配置される、可動当板24bのスライドガイドである。本実施形態の場合、X軸に沿って2本一対の支柱24cを設ける構成としている。
【0024】
また、本実施形態では、固定当板24aと可動当板24bの上端に、円弧状の切欠き24a1,24b1(
図5参照)を設けている。切欠き24a1,24b1の円弧形状は、研削対象とするラビリンスパッキン60の円弧形状に倣うものとすれば良い。把持機構24を構成する固定当板24aと可動当板24bに円弧状の切欠き24a1,24b1を設ける事により、円弧状の形態を有するラビリンスパッキン60の把持面積を十分確保でき、把持状態の安定化を図る事ができる。また、切欠き24a1,24b1を成す円弧は、全体の直径が大きなラビリンスパッキン60の円弧に合わせて形成すると良い。大きな円弧に合わせて切欠き24a1,24b1を形成する事で、小さな直径のラビリンスパッキン60にも対応可能となるからである。
【0025】
また、対を成して配置される支柱24cは、その配置高さをラビリンスパッキン60の把持高さに合わせる事で、ラビリンスパッキン60の配置高さを支柱24cを基点として定める事ができる。よって、ラビリンスパッキン60の配置(位置決め)を容易に行う事ができる。
【0026】
クランプ24dは、ラビリンスパッキン60を把持した可動当板24bを固定当板24aへ押し付け、ラビリンスパッキン60の固定状態を維持するという役割を担う。クランプ24dは、その役割を担うものであれば、具体的な構成を問うものではなく、例えばシャコマンのようなものであっても良い。本実施形態では、ラビリンスパッキン60を把持する工程の容易さを考慮して、横方向押し付け型のトグル式クランプを採用している。クランプ24dの本体をY軸ステージ22に固定し、押し付け部を可動当板24bに当接させることで、レバーの揺動に従った押し付けと開放を行う事が可能となる。本実施形態では、クランプ24dをX軸に沿った2点に配置し、把持状態の安定化を図るようにしている。
【0027】
[研削手段について]
研削手段34は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面を研削するための要素である。本実施形態では、研削手段34としてルータを選択し、このルータを後述する第1Z軸アクチュエータ26のスライダ30に取り付けることで、X軸、Y軸、Z軸といった3軸に対する相対的な動作を可能な構成としている。
【0028】
研削手段34は、回転砥石36を備えている。また、研削手段34は、第1Z軸アクチュエータ26のスライダ30に対して、回転砥石36の回転軸がY軸に沿うこととなるように配置されている。
【0029】
[第1Z軸アクチュエータ]
第1Z軸アクチュエータ26は、X軸とY軸の双方に直交する方向(垂直方向)への移動軸(Z軸)に対する動作を担う要素である。第1Z軸アクチュエータ26の構成は、基本的にはX軸機構16やY軸機構20と同様とすることができる。すなわち、ベース12を基点としてZ軸方向に沿って立設された垂直ベース28に沿って配置されるガイドレール26aと、ボールネジ26b、第1Z軸モータ26cを備える動力部と、ボールネジ26bの回転に伴って移動するスライダ30を備え、スライダ30に対してブラケット32が付帯されている。このような構成とすることで、第1Z軸モータ26cへの制御信号により、スライダ30をZ軸に沿って移動させる事が可能となる。
【0030】
[バリ取手段]
バリ取手段70は、研削手段34により研削された後における櫛歯62の上面に生ずるバリ62aを除去するための要素である。本実施形態では、バリ取手段70をセラミック製ブラシから成る回転ブラシ72を備えたルータとしている。本実施形態では、このバリ取手段70を後述する第2Z軸アクチュエータ74のスライダ76に取り付けるようにしている。このような構成とすることで、研削手段34と同様にバリ取手段70も、X軸、Y軸、Z軸といった3軸に対する相対的な動作を行うことが可能となる。
【0031】
なお、バリ取手段70は、第2Z軸アクチュエータ74のスライダ76に対して、回転ブラシ72の回転軸がY軸に沿うこととなるように配置されている。
図6に示すように、バリ取手段70の回転ブラシ72を櫛歯62の先端に食い込ませるように転接させることで、ブラシが櫛歯62の先端に沿って分かれ、上面に生ずるバリ62aを払拭することができる。
【0032】
ここで、本実施形態では、簡易且つ効果的なバリ取手段70の一形態として、セラミック製ブラシから成る回転ブラシ70を例に挙げた。しかしながら、バリ取手段としては、櫛歯62の頂部側面に接触し、バリ取効果を奏するものであれば、砥石などの研削材であっても良い。また、回転ブラシ70と同様な効果を奏する要素としては、研削材のうち、可撓性のあるものを採用すれば良い。例えば、上に挙げた回転ブラシ70の他、布製研削材や、紙製研削材等を回転接触させる構成であれば良い。
【0033】
[第2Z軸アクチュエータ]
第2Z軸アクチュエータ74は、第1Z軸アクチュエータ26と同様に、X軸とY軸の双方に直交する方向(垂直方向)への移動軸(Z軸)に対する動作を担う要素である。第2Z軸アクチュエータ74の構成も、第1Z軸アクチュエータ26と同様に、基本的にはX軸機構16やY軸機構20と同様とすることができる。すなわち、ベース12を基点としてZ軸方向に沿って立設された垂直ベース78に沿って配置されるガイドレール76aと、ボールネジ76b、第2Z軸モータ76cを備える動力部と、ボールネジ76bの回転に伴って移動するスライダ76を備え、スライダ76に対してブラケット80が付帯されている。このような構成とすることで、第2Z軸モータ76cへの制御信号により、スライダ76をZ軸に沿って移動させる事が可能となる。
【0034】
[第1計測手段について]
第1計測手段は、ラビリンスパッキン60における弦の長さを計測や、把持機構24に把持されたラビリンスパッキン60のセット位置を自動認識するための要素であり、本実施形態では、ステージ14におけるX軸ステージ18と、第1Z軸アクチュエータ26のスライダ30に備えられたブラケット32に取り付けられているレーザ変位計82と、によって構成される。レーザ変位計82でZ軸方向の距離を計測しながらX軸方向へステージ14を移動させて、その座標(移動距離)を得た場合、Z軸方向の距離が最も短くなる2点間におけるX軸方向の距離が、ラビリンスパッキン60の弦長となる。
【0035】
また、Z軸方向の距離の長短に基づき、ラビリンスパッキン60の中心位置や、幅、設置時の傾き具合なども算出することができる。
ラビリンスパッキン60における弦長を計測することで、詳細を後述する第2計測手段38においてZ軸座標を計測する3点のX軸座標を自動で求めることが可能となる。例えば
図5に一例を示すように、レーザ変位計82により計測したZ軸距離が最も遠い1点(例えばA点とする)と、この1点を基準としてX軸方向に所定の距離だけずれた1点(例えばB点とする)、およびレーザ変位計とA点を結ぶ直線を軸として、B点と線対称な関係となるX軸座標に位置する1点(例えばC点とする)というように求めることができる。
【0036】
また、レーザ変位計82でZ軸方向の距離を計測しながらY軸方向へステージ14を移動させて、その座標(移動距離)を得た場合、Z軸方向の距離計測軌跡の谷部分のY軸方向位置の間隔が、ラビリンスパッキン60における櫛歯62間におけるピッチ間隔となる。
【0037】
[第2計測手段について]
第2計測手段38は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面のZ軸座標を計測するための要素であり、本実施形態では、第1Z軸アクチュエータ26のスライダ30に備えられたブラケット32に取り付けられている。第2計測手段38によりラビリンスパッキン60における櫛歯62上面のZ軸座標を計測する事で、研削を行う際のゼロ点を導き出す事ができる。また、X軸方向に沿って少なくとも3点のZ軸座標を計測する事で、研削対象とするラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の曲率半径を算出する事ができる。これにより、第1Z軸アクチュエータ26とX軸機構16との関係において、研削手段34の相対的な移動経路を求める事が可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、第2計測手段38と研削手段34の回転砥石36との配置位置が近い事より、第2計測手段38とブラケット32との間にスライド機構40を備える構成としている。スライド機構40を備える事により、第2計測手段38の配置位置は、計測位置と退避位置とに切り替える事が可能となる。
【0039】
スライド機構40の具体的な構成としては、ブラケット32に対してZ軸方向に沿ったレールと、このレール上を移動可能なスライダを備えるものであれば良く、第2計測手段38を、このスライダに固定すれば良い。スライダの駆動形式は、限定するものでは無いが、段階的な移動制御を必要とせず、配置位置の切り替え時間を短くし、かつ構成を簡易なものとするという観点から、本実施形態においては、エアシリンダ型のものを採用している。
【0040】
また、本実施形態では、計測点が平面では無く、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面という幅の狭い凸部としていることより、接触型の第2計測手段38を採用している。また、第2計測手段38の計測ピン38aは
図7に示すように、櫛歯62上面の幅より大きく、隣接配置されている櫛歯62と櫛歯62のピッチよりも小さい線状の接触部38a1を持つものを採用し、櫛歯62の延設方向と交差する方向に線状部が配置される構成としている。このような構成とする事で、Y軸方向(
図7中矢印Bで示す方向)に対する位置がズレることによる計測ミスを防ぐ事ができる。
【0041】
[制御手段について]
制御手段42(
図8参照)は、ステージ14と第1Z軸アクチュエータ26、第2Z軸アクチュエータ74、研削手段34、バリ取手段70、レーザ変位計82、第2計測手段38およびスライド機構40等の動作制御を行う役割を担う。そして制御手段42による制御により、研削手段34によりラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面を研削させ、バリ取手段70により研削後における櫛歯62の上面に生ずるバリ62aを除去する動作が成される。実施形態に係る研削装置10やバリ取手段70に適用される制御手段42の構成の一例を
図8に示す。制御手段42には、予め定められた要素データの入力が成される。なお、要素データの入力は、制御手段42に付帯された制御用PC等の入力端末44を介して行う。また、入力端末44には、研削装置10やバリ取手段70等の要素を制御するためのプログラム(例えば研削アプリ44a)が記憶されていれば良い。
【0042】
制御手段42には、入力端末44との間で制御信号の授受を行うインターフェースとして、モーションコントロールボード46や第1ルータコントローラ48、第2ルータコントローラ49、および計測手段用アンプ50などが備えられている。モーションコントロールボード46は、研削装置10におけるステージ14、第1Z軸アクチュエータ26、および第2Z軸アクチュエータ74を制御するための要素であり、X軸ドライバ46a、Y軸ドライバ46b、第1Z軸ドライバ46c、および第2Z軸ドライバ46dを介して、駆動制御のための制御信号(駆動パルス)の生成、出力を行う。X軸モータ16c、Y軸モータ20c、第1Z軸モータ26c、第2Z軸モータ76cは、各ドライバ(46a〜46d)から出力された制御信号に応じて回転動作が成される。
【0043】
第1ルータコントローラ48は、研削手段34の制御を行うための要素である。第1ルータコントローラ48は、研削手段34における回転砥石36の回転数の制御を行うための信号を出力する。
【0044】
第2ルータコントローラ49は、バリ取手段70の動作制御を行うための要素である。第2ルータコントローラ49は、バリ取手段70における回転ブラシ72の回転数の制御を行うための信号を出力する。
【0045】
コンプレッサ52と、第2計測手段38、並びにスライド機構40との間には、圧縮空気の供給圧を調整するためのレギュレータ54と、バルブ56a,56bが備えられている。バルブ56a,56bは、電磁弁などの切り替え弁であれば良く、図示しないコントローラ等から制御信号が入力される事により、圧縮空気の供給経路を開放する。これにより、計測手段38における計測ピン38aの位置制御や、スライド機構40における計測位置と退避位置の切り替え制御などが成される。具体的には、コンプレッサ52から計測手段38に供給される圧縮空気は、計測手段38の計測ピン38aをスタンバイ状態に伸張させる役割を担う。また、コンプレッサ52からスライド機構40に供給される圧縮空気は、第2計測手段38を退避位置から計測位置へ移動させる役割を担う。
【0046】
計測手段用アンプ50は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の計測に起因して第2計測手段38から出力される電気信号を増幅し、検出信号として入力端末44に出力する役割を担う。
【0047】
また、本実施形態では、第1計測手段を構成するためのレーザ変位計82を制御するためのレーザ用アンプ58を備えている。ここで、レーザ用アンプ58は、制御手段42に組み込む構成としても良い。
【0048】
[研削制御について]
以下、上述した要素データの説明と共に、
図9を参照して、研削装置によるラビリンスパッキン60における櫛歯62の研削について説明する。
【0049】
まず、ワークとしてのラビリンスパッキン60を把持機構24にセットする(ステップ10)。把持機構24にラビリンスパッキン60がセットされた後、ステージ14とレーザ変位計82とにより構成される第1計測手段を稼働させ、ラビリンスパッキン60のセット位置を自動認識する(ステップ20)。
【0050】
第1計測手段による計測値に基づいてラビリンスパッキン60のセット位置を算出した後、制御手段42に対して加工条件の設定値(要素データ)を入力する。ラビリンスパッキン60の研削加工に必要なデータとしては、パッキンの割れ数や、弓寸法(弦長)、櫛歯数、櫛歯ピッチ、開始計測点、および指定加工量などであるが、第1計測手段による計測値に基づき、割れ数や弓寸法、櫛歯数、櫛歯ピッチ、開始計測点等のデータは、算出することができる。よって、オペレータが入力する加工条件の設定値としては、指定加工量程度となる。オペレータによる入力要件を低減することで入力ミスによる加工不良を抑制することができる。
【0051】
なお、割れ数とは、ラビリンスパッキン60の分割数である。ラビリンスパッキンは、タービン(不図示)の軸径に合わせた円形を成すものであり、加工対象となるラビリンスパッキン60(正確にはラビリンスパッキン片)は、円形のラビリンスパッキンを複数に分割した片の1つとなる。また分割は、等分とされていることより、分割数の入力により、円の内角を求める事ができる。
【0052】
弓寸法とは、研削対象とするラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面の端部間距離、すなわち、円弧の弦にあたる部分の長さ(弦長)である。弓寸法を算出、あるいは入力することで、1回の研削におけるX軸の移動距離を得ることができる。また、割れ数により弓寸法を底辺、円の中心を頂点とした二等辺三角形における底辺に位置する頂点の内角が求められる。よって、弓寸法を得ることで、二等辺三角形を構成する二つの辺の長さ(ラビリンスパッキンを構成する円弧の半径R)を求めることができる。具体的には、底辺の長さをa、底辺の両端に位置する内角をθとして、a/(2×cosθ)を計算する事で求めることができる。
【0053】
櫛歯数とは、研削対象とする1つのラビリンスパッキン60に備えられている櫛歯62の数である。研削を行う回数を定めるためである。また、櫛歯ピッチとは、Y軸方向に沿った櫛歯62の配置間隔である。各櫛歯62を研削する際における回転砥石(研削手段)のY軸方向の移動距離を定めるためである。
【0054】
また、開始計測点は、最初に加工を行う櫛歯62における3点のXY座標であり、指定加工量は、櫛歯62の上面を研削する研削量である(ステップ30)。
【0055】
このような要素データを入力された制御手段42では、まず、スライド機構40と計測手段38に対して圧縮エアの供給を行い、計測手段38を計測位置に移動させると共に、計測ピン38aを伸長させてスタンバイ状態にする。その後、ステップ20において自動認識されたセット位置に基づいて算出されたラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の半径Rに沿うように、X軸モータ16cとY軸モータ20c、および第1Z軸モータ26cに対して制御信号を与え、計測手段38による櫛歯62の上面位置における3点のZ軸座標の計測を行う。その後、計測された3点のZ軸座標と、当該座標を計測したX軸座標に基づき、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の曲率半径を算出する。
【0056】
ここで、Z軸座標は、1つの櫛歯に対してそれぞれ3点計測することとなる。本実施形態では、
図10に示すように、櫛歯62の配置方向(Y軸方向:矢印Bで示す方向)に沿うようにして、複数の櫛歯62における共通点(1点目)におけるZ軸座標をそれぞれ計測した後に、X軸方向(矢印Aで示す方向)に移動して2点目のZ軸座標をそれぞれ計測する。さらにX軸方向に移動し、3点目のZ軸座標を計測するようにしている。このように、つづら折り状にステージ14を移動させながらZ軸座標の計測を行うことで、各櫛歯毎に3点を計測する場合に比べ、X軸方向の移動回数を減らすことができるため、計測時間の削減を図ることが可能となる(ステップ40)。
【0057】
櫛歯62上面の曲率半径を求めた後、入力された要素データと算出された曲率半径に基づき、加工経路やX軸モータ16c、Y軸モータ20c、および第1Z軸モータ26cの動作量、研削手段34の回転速度等の加工データの作成を行う(ステップ50)。
【0058】
加工データ作成後、加工データに従って各種制御を行い、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の研削を行う。なお、第2計測手段38は、Z軸座標の計測終了後、少なくとも研削工程の前までに、退避位置に移動させる制御が成される(ステップ60)。
【0059】
研削工程が終了した後、再び第2計測手段38を計測位置に移動させ、計測工程で計測した3点のZ軸座標の計測を行う。そして、研削工程前の計測値と、研削工程後の計測値に基づき、加工量の計算が成される(ステップ70)。算出された加工量が、指定加工量に近似する値となっているか否かを判定する。ここで、近似の範囲は、求める加工精度に応じて予め定めた閾値の範囲とすれば良い(ステップ80)。
【0060】
判定により、加工量が閾値の範囲内である場合には、ラビリンスパッキン60の研削加工が終了する。一方、加工量が閾値の範囲外である場合には、残り加工量に基づく加工量が求められ(ステップ90)、ステップ50に戻り、加工データの作成を行い、ラビリンスパッキン60の研削が成される。ここで、加工量が閾値の範囲外となる要因としては、回転砥石36の摩耗や、研削手段34における回転軸の逃げ、加工量自体が研削工具の研削量よりも大きいといった事項を挙げる事ができる。よって、必要に応じて再加工の前に回転砥石36の寸法や、研削手段34の取付状態のチェックを行い、要素データの再入力の必要性を判定しても良い。
【0061】
ステップ80において研削加工が終了した場合、研削加工によってラビリンスパッキン60の加工面に生じたバリを取る作業が行われる。バリ取りは、研削加工で使用した加工データを利用して、バリ取手段70により行う。バリ取手段70に備えられた回転取ブラシ72と、回転砥石36と、におけるX軸座標、Y軸座標、Z軸座標をそれぞれ比較することで、各座標毎の相違量を求め、この相違量を加工データに対して、各軸方向のシフト量として与えることで、加工データの援用が可能となる。
【0062】
[作用効果]
上記のような研削装置10によれば、ラビリンスパッキン60の曲率や大きさ、状態の如何によらず研削加工を行う事ができる。このため、作業者の熟練度に依存する事なく、短時間で高精度に修正加工を行う事が可能となる。また、基準となる3点の計測点の割出についても自動化することで、加工に関する人為的なバラつきをより抑制することができる。
【解決手段】ラビリンスパッキンを固定した状態で、X軸方向と、Y軸方向への移動を可能とするステージ14と、櫛歯を研削する研削手段34と、ラビリンスパッキンの弦長を計測する第1計測手段と、基準となる3点のZ軸座標を計測する第2計測手段38と、第1計測手段によって計測された弦長に基づいて、前記3点のX軸座標を割り出し、第2計測手段38による計測を実行させ、第2計測手段38によってZ軸座標が計測された後、各計測点におけるX軸座標に基づいて、研削を実行するための加工データを作成し、加工データに基づく制御信号を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする。