特許第6550826号(P6550826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550826
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】描画装置及び描画装置の駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/18 20060101AFI20190722BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A45D29/18
   B05C5/00 101
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-58876(P2015-58876)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-174841(P2016-174841A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】浜岡 奈都美
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−158638(JP,A)
【文献】 特開2015−019769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00−29/22
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に裁置された描画対象に描画を行うペンを備える描画部と、
前記載置部とは異なる領域に設けられ、前記描画部により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、
前記媒体を前記描画部の延在方向に対して直交する面内で回転動作させることにより、前記媒体保持部に保持された前記媒体に前記描画部が試し書きとしての描画を行うよう制御する制御部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体保持部に保持された前記媒体に前記描画部が描画を行うよう制御した後、前記載置部に裁置された前記描画対象に描画を行うよう制御することを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記媒体は、前記描画部が接触する接触面が平坦な形状を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項4】
筐体を有し、
前記媒体保持部は、
前記筐体の内外に出入り可能なトレイと、
前記トレイ上に回転可能に設けられ、前記媒体を保持する保持部材と、
前記筐体内に前記トレイが位置するときに、前記保持部材を回転させる回転軸を回転させる回転駆動部と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記保持部材は前記トレイから着脱可能であることを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記媒体と接触して前記媒体を保持する接触面を有し、前記接触面の静摩擦係数が、前記保持部材が前記媒体を保持していて、前記描画部が前記媒体に接触している状態で、前記保持部材を移動させたときに、前記媒体が前記接触面から滑らない値とされていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の描画装置。
【請求項7】
前記保持部材は、外周縁に前記媒体を把持する把持部を有していることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項8】
描画装置の駆動制御方法であって、
前記描画装置は、載置部に裁置された描画対象に描画を行うペンを備える描画部と、前記載置部とは異なる領域に設けられ、前記描画部により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、を有し、
前記媒体を前記描画部の延在方向に対して直交する面内で回転動作させることにより、前記媒体保持部に保持された前記媒体に前記描画部が試し書きとしての描画を行うよう制御することを特徴とする駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置及び描画装置の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で印刷を行う印刷ヘッドを備え、人の指の爪の表面に色や絵柄等のデザイン画像を印刷するネイルプリント装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
インクジェット方式の印刷ヘッドは、印刷対象に対向する面に設けられたノズルからインクを吐出して記録媒体上に着弾、定着させることにより印刷を行うようになっている。
【0004】
ところで、インクジェット方式の印刷ヘッドは、ノズルの穴径が小さいため、粒径の大きな色材を含むインクや粘性の高いインクを使用することができない等の制約がある。このため、印刷できるネイルデザインに限界があった。
【0005】
一方、ネイルプリント装置ではないが、ペンを装着した描画ヘッドを備え、ペンの先端部を用紙(対象物)に当接させて、ペンをX、Y方向に移動させて描画を行うプロッタ方式のプリント装置が一般に知られている。ペンの場合、インクの制限がインクジェットの場合よりも少ないことから、このようなペンを用いるプロッタ方式をネイルプリント装置に用いることで、ネイルデザインの幅を広げることができると考えられる。
【0006】
しかしながら、ペンを用いる場合、ペンのペン先が乾いていたりしてインクの出が悪く、そのままでは書き始めがかすれたりすることがあるため、爪にネイルデザインの描画を行うのに先立って、試し書きを行い、インクが良好に出る状態にする必要がある。この試し書きにおいては、例えば、用紙上に円などの図形を数回描いてインクの出を良くするような操作を行うことが必要となる。
【0007】
ところが、この試し書きにおける円を描く動作をX、Y移動ステージを有するプロッタで行うことを考えると、ペンをX、Y移動ステージにより円形に移動させる機械的動作となるため、このようにペンを円形に移動させるのにある程度の時間を要し、それにより円を描くのに比較的時間がかかり、試し書きに比較的長い時間を要することになる。このため、頻繁にペンを取り替える必要のあるデザインの場合、試し書きの回数が多くなるため、ネイルデザインを形成するのに比較的長い時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003―534083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、ペン自体を移動させて試し書きを行う場合に比べて、試し書きに要する時間を短縮することができる描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって把握される。
本発明の描画装置は、載置部に裁置された描画対象に描画を行うペンを備える描画部と、前記載置部とは異なる領域に設けられ、前記描画部により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、前記描画部が前記媒体を前記描画部の延在方向に対して直交する面内で回転動作させることにより、前記媒体保持部に保持された前記媒体に前記描画部が試し書きとしての描画を行うよう制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、描画装置の駆動制御方法であって、前記描画装置は、載置部に裁置された描画対象に描画を行うペンを備える描画部と、前記載置部とは異なる領域に設けられ、前記描画部により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、を有し、前記媒体を前記描画部の延在方向に対して直交する面内で回転動作させることにより、前記媒体保持部に保持された前記媒体に前記描画部が試し書きとしての描画を行うよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、描画用具の試し書きに要する時間を短縮することができる描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る描画装置を上方から見た図であり、筐体を水平方向に切断して見た断面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】実施形態に係る媒体保持部を分解して示す断面図である。
図4】実施形態に係る制御の構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る駆動制御方法のフローチャートを示す図である。
図6】実施形態に係る媒体保持部の作用図である。
図7】実施形態に係る媒体を示す図であり、多数の円が試し書きされた図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。また、図面は符号の向きに見るものとする。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0015】
また、以下の実施形態では、描画装置は手の指の爪を描画対象として、この爪の表面に描画するものとして説明するが、本発明の描画対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を描画対象としてもよい。
【0016】
(実施形態の構成)
描画装置の基本構成を図1に基づいて説明する。図1は実施形態に係る描画装置を上方から見た図であり、筐体を水平方向に切断して見た断面図である。
【0017】
図1に示すように、描画装置10は、例えば、描画部30による描画機能により、人の指11の爪12にネイルデザインを施す装置である。描画装置10は、筐体20と、この筐体20の内部に移動可能に設けられる描画部30と、筐体20の中央部に設けられ、指11を挿入可能な指挿入部13と、複数のペン31のペン先を保護する複数のキャップ15とを備える。また、筐体20の内部には、試し書きを行うための、上面(ペン31が接触する接触面)が平坦で例えば円盤状の形状を有する媒体41を保持する媒体保持部40が設けられる。この媒体41は、例えば紙により形成されている。
【0018】
なお、以下の説明及び図中において、色の種類が互いに異なる複数種のペン31及び複数のペン31により描かれた円62を区別して称する場合、ペン31A,31B,31C,31D及び円62A,62B,62C,62Dと記載し、総じて称する場合は、単に、ペン31及び円62と記載する。
【0019】
筐体20の上面には、図示は省略するが、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなど各種のフラットディスプレイで構成されるタッチパネル式の表示部を設けることができる。また、筐体20の内部には、指挿入部13に挿入された指11及びその爪12の画像を取得する画像取得部を設けることができ、描画装置10では、この取得した画像に基づいてネイルデザインを描画部30により爪12に描画することができる。
【0020】
描画部30は、指挿入部13に挿入されて、指挿入部13内に載置された指11の爪(描画対象)12に描画を行うペン(描画用具)31と、ペン31を着脱可能にほぼ垂直に保持するペンホルダ32と、ペンホルダ32に固定されるアーム33とを備える。描画部30では、ペン先がキャップ15に嵌合されている複数種のペン31A〜31D(例えば、色の種類が互いに異なる複数種のペン)から任意のペン31をペンホルダ32に選択的に装着することより、ペン31の交換が可能である。描画部30のアーム33は、移動手段55(後述)によって、装置幅方向となるX方向、装置奥行き方向となるY方向及び装置高さ方向となるZ方向(図2参照)に移動可能である。これにより、描画部30は、待機位置(例えば、キャップ15の近傍位置)から、キャップ15の上方に移動して任意のペン31を選択・保持し、媒体41上に移動・下降して試し書きを行った後、指挿入部13の上方開口13aへ移動・下降し、ペン先で爪12にネイルデザインを描画する。
【0021】
図2に示すように、媒体保持部40は、筐体20の周壁(例えば、側壁)に設けた開口21を通じて内外に出入り可能なトレイ42と、このトレイ42上に取り付けられる保持部材43と、この保持部材43を回転させるための回転駆動部45とを備える。回転駆動部45は、筐体20内に固定された駆動手段45a(例えば、電動モータ)と、この駆動手段45aの上端部に設けられる駆動ギア45bとを備える。媒体保持部40では、トレイ42が筐体20の内部に挿入された状態において、保持部材43上の媒体41に試し書きが可能となり、一方、筐体20の外部に引き出された状態において、媒体41の交換が可能である。媒体41の交換は、媒体41のほぼ全面に試し書きが行われて、媒体41に試し書きを行うスペースがほぼ無くなったときに行われる。
【0022】
図3に示すように、トレイ42は、平面視で四角形状を有し、上面が平坦でほぼ水平に設けられている平板部42aと、この平板部42aの中央部に設けられる軸穴42bと、平板部42aにおけるX方向の装置外側寄りの端部に設けられる第1の立壁42cと、平板部42aにおけるX方向の装置内側寄りの端部に設けられる第2の立壁42dとを有する。
【0023】
保持部材43は、媒体41を保持する、平面視で例えば円形状を有し、後述する把持部43bを除く部分の上面が平坦な部材であり、平面視で異形(例えば、長方形などの四角形又は六角形、八角形などの多角形)の貫通穴43aを中央に有し、トレイ42の第1の立壁42cと第2の立壁42dの間に着脱可能に嵌合され、トレイ42の平板部42a上で回転動作可能に設けられる。これにより、保持部材43に媒体41が保持されているとき、媒体41の上面はペン31に対して直交する面となる。また、保持部材43は、その外周縁に、媒体41の外周部を上方から押さえて把持する把持部43bを有する。さらに、保持部材43において、媒体41と接触する表面の静摩擦係数は、ペン31による試し書きの際に媒体41が保持部材43上で滑らない(ずれない)値に設定される。このような値の静摩擦係数を得るには、例えば、保持部材43の表面をゴム材料などで形成することが有効である。
【0024】
なお、ここでは、媒体41の交換作業の行い易さを考慮し、円盤状の保持部材43をトレイ42に着脱可能に取り付ける構成を例示したが、必ずしも保持部材43は着脱可能とする必要はなく、トレイ42に対して着脱不可とされていてもよい。また、媒体41及び保持部材43の平面形状は、円形の他、六角形、八角形などの多角形でもよい。
【0025】
軸穴42bには、下方から回転軸45cが挿入される。回転軸45cの上端部45c1は、保持部材43の貫通穴43aに対して、嵌合可能でかつ回転方向において係合可能な平面視で異形(例えば、長方形などの四角形)に形成される。回転軸45cの下端部には、筐体20内にトレイ42が挿入されたときに駆動ギア45bに噛み合う従動ギア45dが設けられる。回転軸45cは、筐体20内にトレイ42が位置するときに、駆動ギア45b及び従動ギア45dを介して駆動手段45aからの動力により回転し、貫通穴43aに嵌合された上端部45c1によって保持部材43を回転させる。回転軸45c及び従動ギア45dは、回転駆動部45を構成する要素である。
【0026】
なお、媒体41の中央にも、回転軸45cの異形の上端部45c1に合わさるように、上端部45c1が差し込まれる異形(例えば、長方形などの四角形)の差込穴41aを設けてもよい。また、この例では、保持部材43が回転時に滑らないように回転軸45cの上端部45c1及び保持部材43の貫通穴43aを四角形や多角形としたが、周知のCDドライブやDVDドライブなどに一般的に用いられる機構(回転体を把持して回転させる機構)を採用する場合、保持部材43の貫通穴43aは、円形の穴などでもよい。
【0027】
続いて、描画装置10の制御の構成を図4に基づいて説明する。図4は制御の構成を示すブロック図である。
【0028】
図4に示すように、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)により構成される制御部51と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部56とを備える。
【0029】
制御部51は、描画制御部52及び回転制御部53を備える。これら描画制御部52及び回転制御部53の機能は、制御部51のCPUと記憶部56のROMに記憶されたプログラムとの共働によって実現される。また、制御装置50には、描画部30及び媒体保持部40が接続される。
【0030】
描画制御部52は、X、Y移動ステージを有する移動手段55を介してペン31の動作(より具体的にはアーム33の動作)を制御し、ペン31によって爪12にネイルデザインの描画を行ったり、ペン31を媒体41に移動させたり、試し書きの途中で媒体41上又は媒体41の上方にてペン31を移動させたりする。また、回転制御部53は、ペン31の試し書きにおいて、駆動手段45aの動作を制御し、各ペン31に設定される試し書きに必要な距離に応じて、媒体41の回転角度や回転速度、回転方向を制御する。
【0031】
(実施形態の動作)
続いて、描画装置10の駆動制御方法を図5図6に基づいて説明する。図5は、駆動制御方法のフローチャートを示す図、図6は、媒体保持部の作用説明図である。
【0032】
図5に示すように、この駆動制御方法では、まず、ステップS1において、使用すべきペン31が、試し書きが必要か否かを判断する。試し書きが必要でない場合、ステップS7に進み、描画部30によってペン31を爪12の上方に移動させた後、ペン先を爪12に下降する。そして、ステップS8において、爪12にネイルデザインの描画を行う。一方、試し書きが必要な場合、ステップS2に進む。
【0033】
ステップS2では、保持部材43及び媒体41を駆動手段45aによって、例えば時計回りの回転方向63(図6参照)の向きに回転させて、媒体41を回転させて移動させる。次いで、ステップS3で、後述するペン昇降領域60(図6参照)の上方にペン31を移動させた後、回転している媒体41に対してペン先を下降させ、ペン先を媒体41に接触させる。そして、ステップS4で、必要な試し書きを媒体41に行う。これにより、媒体41上に円62を描くように試し書きが行われる。この際、後述するように、ペン先を適宜移動させることにより同じ位置での試し書きを防ぐことも可能である。
【0034】
ステップS5では、駆動手段45aを制御して保持部材43及び媒体41の回転を停止させる。そして、ステップS6で、ペン31を上昇させて規定の位置(例えば、待機位置)に戻す。そして、ステップS7で、ペン31を爪12の上方に移動させた後、ペン先を爪12に下降し、ステップS8で、爪12にネイルデザインの描画を行う。
【0035】
ここで、ステップS4における試し書きの仕方について、より具体的に説明する。
図6に示すように、例えば、媒体41おいて、キャップ15の並び方向(この例ではX方向)でかつ媒体41の半径方向に延びる領域であって、キャップ15からできるだけ近い領域をペン昇降領域60(図6において、二点鎖線で囲われる長方形の領域)とし、このペン昇降領域60の範囲内において、複数のペン31A〜31Dの試し書き(試し書きの際の各ペンの昇降)が行われるように設定する。なお、各ペン31を昇降させる位置は、ペン昇降領域60の範囲内であれば、任意である。
【0036】
図6では、ペン31Aがペン昇降領域60の位置61Aに対応し、ペン31Bがペン昇降領域60の位置61Bに対応し、ペン31Cがペン昇降領域60の位置61Cに対応し、ペン31Dがペン昇降領域60の位置61Dに対応した例を示す。この場合、少ない移動量で各ペン31を動かして媒体41に当接させることでき、しかも、媒体41の互いに異なる回転軌道上(円62)に互いに色が異なるペン31を位置させることができるため、互いに異なる色のペン31同士でインクの色が混色してしまう恐れがなく、同じ軌道上に何度でも試し書きを行うことができる。
【0037】
但し、同じ位置での試し書きを多く行いすぎると、例えば、媒体41に付着したインクの一部がペン先に移ってペン先にインクが過剰に付着して、その後の描画に支障が出る状態が発生することも懸念される。このため、試し書きを行う際に、ペン31をペン昇降領域60の範囲内においてX方向に移動させるようにして、同じ位置で二重書きが行われないよう制御してもよい。この場合、例えば図7に示すように、試し書きの際に、媒体41の中心側から外周側へ、又は、外周側から中心側にペン先を少しずつ移動させて、試し書きにおいて、一枚の媒体41に、殆ど隙間無く多数の円62を描くようにする。こうした場合、媒体41のスペースを最大限に活用することができ、その結果、筐体20内の省スペース化と共に、媒体41の無駄及び媒体交換の手間を最小限に抑えることができる。
また、媒体41上の円62の円周全体に試し書きを行ったときに試し書きの位置を変え、媒体41のほぼ全面に試し書きを行ったときに媒体41を交換する必要があることを考慮すると、ペン昇降領域60における円周の長さが長い外側の位置(例えば、図6における位置61Cや61D)に、より使用頻度の高いペン31を配置することが好適である。
【0038】
なお、ペン31を昇降させる領域は、ペン昇降領域60に格別に限定されるものではなく、任意に変更可能であり、媒体41においてペン31をどの領域で昇降させるかは、プログラム上の制御で適宜行うことができる。
また、例えば、媒体41の上方に撮影手段を設け、この撮影手段で試し書きがされていない未使用領域を認識することにより、この未使用領域に試し書きを行うようにしてもよい。
また、媒体41において試し書きが行われた領域が一定以上に達したら(例えば、媒体41の大部分に円62を描いたら)、試し書き動作を停止させ、媒体41の交換を促す指示を報知する制御を行ってもよい。
【0039】
(実施形態の効果)
以上、説明した実施形態によれば、試し書きの際、モータなどを用いた媒体41の回転動作により円62を描くため、円を描く動作をアーム機構でペン自体の動作で行う場合(ペンを円形に動かす機械的動作)に比べ、試し書きに必要な円62(距離)を迅速に描くことができる。その結果、頻繁にペン31を取り替える必要のあるネイルデザインの場合であっても、試し書きに要する時間を比較的短くすることができ、ネイルデザインを形成するのに要する時間を比較的短くすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、試し書きを行うための機構において、特に媒体41の上側においてペン31を備える描画部30を移動させる範囲を、描画部自体を円運動させて試し書きを行う場合より狭くすることができる。このため、媒体41の上側のスペースにおいて描画部30と干渉するおそれのないスペース(例えば、ペン昇降領域60を除くスペース)を、描画部自体を円運動させる場合より多く確保できる。このため、描画部30と干渉するおそれのないスペースに、他の部品などを配置してスペースの有効活用を行うことも可能となる。
【0041】
なお、実施形態では、媒体41の時計回りの回転方向63の回転により円62を描くような試し書きを行う例を示したが、媒体41の回転動作は、一方向の回転に限定されるものではなく、例えば、反時計回りと時計回りを交互に細かく繰り返すように媒体41の動かすことにより、ジグザグ状の軌跡を描くような試し書きを行うようにしてもよい。
【0042】
また、実施形態では媒体41を回転させて、位置が固定されたペン31により媒体41上に軌跡を描く構成としたが、要するに、ペン31に対して媒体41が相対的に移動する構成であればよい。すなわち、媒体41を回転機構で回転させる構成の他、例えば、媒体41を一方向に沿って移動(例えば、往復運動)させる構成としてもよい。
【0043】
また、実施形態では、トレイ42の全体が筐体20に対して出入りする構成を例示したが、必ずしもトレイ42の全体を筐体20に対して出入りさせる必要はなく、例えば、トレイ42の半分程度を筐体20に対して出入りさせる構成でもよく、この場合においても媒体41の交換が可能である。
【0044】
また、試し書きは、媒体41の回転動作等による移動だけでなく、例えばペン昇降領域60内でペン31を直線的に動かしながら試し書きを行うようにしてもよい。
【0045】
さらに、実施形態では、ペン31を用い場合について説明したが、描画装置10は、ペン31に加えてインクジェットヘッドを有する印刷部を備えるものでもよい。
【0046】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
<請求項1>
描画を行う描画用具を備える描画部と、
前記描画用具により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、
前記描画部と前記媒体保持部とを制御して、前記媒体保持部に保持された前記媒体と前記描画用具とが接触している状態で前記媒体を移動させることにより、前記描画用具により前記媒体に描画させる制御部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
<請求項2>
前記描画用具により描画される描画対象が載置される載置部を有し、
前記媒体保持部は、前記載置部とは異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
<請求項3>
前記媒体は、前記描画用具が接触する接触面が平坦な形状を有し、
前記制御部は、前記媒体の前記接触面に前記描画用具が接触している状態で、前記媒体を前記描画用具の延在方向に対して直交する面内で回転動作させて、前記媒体に前記描画用具により描画を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の描画装置。
<請求項4>
筐体を有し、
前記媒体保持部は、
前記筐体の内外に出入り可能なトレイと、
前記トレイ上に回転可能に設けられ、前記媒体を保持する保持部材と、
前記筐体内に前記トレイが位置するときに、前記保持部材を回転させる回転軸を回転させる回転駆動部と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
<請求項5>
前記保持部材は前記トレイから着脱可能であることを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
<請求項6>
前記保持部材は、前記媒体と接触して前記媒体を保持する接触面を有し、前記接触面の静摩擦係数が、前記保持部材が前記媒体を保持していて、前記描画用具が前記媒体に接触している状態で、前記保持部材を移動させたときに、前記媒体が前記接触面から滑らない値とされていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の描画装置。
<請求項7>
前記保持部材は、外周縁に前記媒体を把持する把持部を有していることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の描画装置。
<請求項8>
描画装置の駆動制御方法であって、
前記描画装置は、描画を行う描画用具を備える描画部と、前記描画用具により描画可能な媒体を保持する媒体保持部と、を有し、
前記描画用具を前記媒体保持部に保持されている前記媒体に接触させ、
前記描画用具と前記媒体とが接触している状態で前記媒体を移動させて、前記描画用具により前記媒体に描画を行わせることを特徴とする駆動制御方法。
【符号の説明】
【0047】
10 描画装置
12 爪
20 筐体
30 描画部
31 ペン
31A ペン
31B ペン
31C ペン
31D ペン
40 媒体保持部
41 媒体
42 トレイ
43 保持部材
43b 把持部
45 回転駆動部
45c 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7