特許第6550879号(P6550879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550879
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20190722BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20190722BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B60C9/18 J
   B60C9/22 B
   B60C9/20 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-82130(P2015-82130)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-199191(P2016-199191A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】宇治 隆裕
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−203111(JP,A)
【文献】 特開2011−140169(JP,A)
【文献】 特開2012−148680(JP,A)
【文献】 特開2004−338455(JP,A)
【文献】 特開2012−131184(JP,A)
【文献】 実開昭62−178201(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたトレッド補強層とを具えた自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド補強層は、複数本の補強コードを引き揃えてトッピングゴムにより被覆した長尺の帯状プライを前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に螺旋状に巻き付けることにより形成され、
タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記各帯状プライの前記補強コードは、第1補強コードと、前記第1補強コードのタイヤ軸方向外側で隣接する第2補強コードとを含み、
前記第2補強コードの100N負荷時の伸びである初期伸度a2(%)は、前記第1補強コードの前記初期伸度a1(%)よりも小さく、
前記帯状プライは、タイヤ赤道側に配される帯状プライと、トレッド端側に配される帯状プライとを含む、少なくとも2種類が用いられ、
前記タイヤ赤道側に配される帯状プライ内の前記隣接する補強コードの前記初期伸度の差が、前記トレッド端側に配される帯状プライ内の前記隣接する補強コードの前記初期伸度の差よりも小さいことを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記補強コードは、前記第2補強コードのタイヤ軸方向外側で隣接する第3補強コードを含み、
前記第3補強コードの前記初期伸度a3(%)は、前記第2補強コードの前記初期伸度a2(%)よりも小さい請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記帯状プライにおいて、タイヤ軸方向で隣り合う前記補強コードの前記初期伸度(%)の差が0.15〜0.25ポイントである請求項1又は2記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記補強コードは、スチールコードである請求項1乃至3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記帯状プライは、3〜5本の前記補強コードを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記帯状プライは、幅が2〜5mm、厚さが0.8〜2.0mmである請求項1乃至5のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性を損ねずに、高速安定性能及び操縦安定性能を向上させた自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーカスと、その外側に配されかつカーカスをタガ締めするトレッド補強層とが設けられた自動二輪車用タイヤが知られている。トレッド補強層は、複数本の補強コードを引き揃えた長尺の帯状プライをカーカスのタイヤ半径方向の外側に螺旋状に巻き付けることにより形成されている。帯状プライを用いた場合、1本の補強コードを螺旋状に巻きつける場合に比して巻回回数が減る。従って、生産性の悪化が防止される
【0003】
一般に、自動二輪車用タイヤは、トレッド部がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲したプロファイルを有している。従って、トレッド補強層cの成形は、図5(A)に示されるように、トレッド部のプロファイルに近似したプロファイルpを持つドラムa上に、前記帯状プライbが貼り付けられる。
【0004】
ところで、帯状プライは、ドラムに沿って傾けて巻き付けられるため、帯状プライ内のタイヤ軸方向外側の補強コードの貼り付け径は、タイヤ軸方向内側の補強コードの貼り付け径よりも小さくなる。本来的に、帯状プライ内の補強コードは、互いに等しいコード長と伸び特性を有しているので、巻き付けられた帯状プライ内において、外側の補強コードの伸び(テンション)は小さく、かつ、内側の補強コードの伸び(テンション)は大きくなる。従って、トレッド補強層は、タイヤ軸方向で異なる剛性分布を持ち、十分なタガ効果を発揮できないおそれがある。また、図5(B)に示されるように、例えば、加硫後、各帯状プライbは、補強コードdのテンションの差により、そのタイヤ軸方向外側部分が浮き上がり、ひいては、トレッド補強層cに段差eが発生するという問題があった。このようなトレッド補強層の段差は、高速安定性能や操縦安定性能を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−247017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、生産性を損ねることなく、高速安定性能や操縦安定性能を向上させた自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されたトレッド補強層とを具えた自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド補強層は、複数本の補強コードを引き揃えてトッピングゴムにより被覆した長尺の帯状プライを前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に螺旋状に巻き付けることにより形成され、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記各帯状プライの前記補強コードは、第1補強コードと、前記第1補強コードのタイヤ軸方向外側で隣接する第2補強コードとを含み、前記第2補強コードの100N負荷時の伸びである初期伸度a2(%)は、前記第1補強コードの前記初期伸度a1(%)よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補強コードが、前記第2補強コードのタイヤ軸方向外側で隣接する第3補強コードを含み、前記第3補強コードの前記初期伸度a3(%)は、前記第2補強コードの前記初期伸度a2(%)よりも小さいのが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記帯状プライにおいて、タイヤ軸方向で隣り合う前記補強コードの前記初期伸度(%)の差が0.15〜0.25ポイントであるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補強コードが、スチールコードであるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記帯状プライが、3〜5本の前記補強コードを有するのが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記帯状プライが、幅が2〜5mm、厚さが0.8〜2.0mmであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動二輪車用タイヤは、カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されたトレッド補強層を具えている。トレッド補強層は、複数本の補強コードを引き揃えてトッピングゴムにより被覆した長尺の帯状プライをカーカスのタイヤ半径方向の外側に螺旋状に巻き付けることにより形成されている。このようなトレッド補強層は、走行時のトレッド部の動きを抑え、高速安定性能や操縦安定性能を向上するのに役立つ。また、複数本の補強コードを引き揃えた帯状プライを使用するため、短時間でトレッド補強層を形成できるため、生産性を損ねることもない。
【0014】
タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、各帯状プライの補強コードは、第1補強コードと、第1補強コードのタイヤ軸方向外側で隣接する第2補強コードとを含んでいる。第2補強コードの100N負荷時の伸びである初期伸度a2(%)は、第1補強コードの初期伸度a1(%)よりも小さい。即ち、各帯状プライ内において、大きい径で貼り付けられる第1補強コードは、小さい径で貼り付けられる第2補強コードよりも伸びやすい。このような帯状プライは、プロファイルが与えられたドラムに巻き付けられた場合でも、各帯状プライ内の補強コードのテンションが均一化される。従って、トレッド補強層は、その全幅に亘って強固なタガ効果を発揮できる。また、本発明の自動二輪車用タイヤは、トレッド補強層の段差の形成が防止され、ひいては優れた高速安定性能や操縦安定性能を発揮しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの断面図である。
図2】帯状プライの一実施形態を示す斜視図である。
図3図1の左側のトレッド部の部分拡大図である。
図4】本実施形態のトレッド補強層の製造工程を説明する概略図である。
図5】(A)は、帯状プライが貼り付けられるプロファイルドラムの断面図、(B)は、(A)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある)1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、正規状態において特定される値である。
【0017】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0018】
図1に示されるように、自動二輪車用タイヤ1は、トレッド部2のトレッド端2t、2t間の外面2aが、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲してのびている。トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TWがタイヤ最大幅である。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるトレッド補強層7とを具えている。トレッド部2には、適宜排水用の溝(図示省略)が設けられてもよい。
【0020】
カーカス6は、本実施形態では、1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に埋設されたビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5で折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0021】
カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75〜90度、より好ましくは80〜90度の角度で傾けて配列されたカーカスコードを有している。このカーカスコードには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。本体部6aと折返し部6bとの間には、硬質のゴムからなるビードエーペックスゴム8が設けられる。
【0022】
トレッド補強層7は、少なくとも1枚のプライから構成される。本実施形態のトレッド補強層7は、1枚のバンドプライ9Aからなるバンド層9で形成されている。
【0023】
バンドプライ9Aは、図2に示されるように、複数本の補強コード11を引き揃えてトッピングゴム12にて被覆した長尺の帯状プライ10をタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回することにより構成されている。このようなトレッド補強層7は、走行時のトレッド部2の動きを抑え、高速安定性能や操縦安定性能を向上するのに役立つ。トレッド補強層7は、このような態様に限定されるものではなく、複数枚のバンドプライからなるバンド層で形成されても良い。また、タイヤ1は、バンド層9とカーカス6との間にベルト層(図示省略)が設けられても良い。
【0024】
図3は、図1の左側のトレッド部2の部分拡大図である。図3に示されるように、補強コード11は、第1補強コード11Aと、第1補強コード11Aのタイヤ軸方向外側で隣接する第2補強コード11Bと、第2補強コード11Bのタイヤ軸方向外側で隣接する第3補強コード11Cとを有している。本実施形態の第1補強コード11Aは、各補強コード11の中で、最もタイヤ軸方向内側に位置している。
【0025】
第2補強コード11Bの100N負荷時の伸びである初期伸度a2(%)は、第1補強コード11Aの前記初期伸度a1(%)よりも小さい。即ち、帯状プライ10内において、大きい径で貼り付けられる第1補強コード11Aは、小さい径で貼り付けられる第2補強コード11Bよりも伸びやすい。このような帯状プライ10は、プロファイルが与えられたドラム(図5(A)に示す)に巻き付けられた場合、帯状プライ10内の各補強コード11A、11Bのテンションが均一化される。従って、トレッド補強層7は、その全幅に亘って強固なタガ効果を発揮できる。また、本実施形態のタイヤ1は、加硫後の補強コード11A、11Bのテンションの差による浮き上がりが抑えられ、トレッド補強層7の段差の形成が防止されるので、ひいては優れた高速安定性能や操縦安定性能を発揮しうる。
【0026】
上述の作用をさらに効果的に発揮させるため、第3補強コード11Cの初期伸度a3(%)は、第2補強コード11Bの初期伸度a2(%)よりも小さいのが望ましい。これにより、帯状プライ10は、タイヤ軸方向に大きな領域で剛性分布が均一化されるので、十分なタガ効果を発揮することができる。
【0027】
帯状プライ10において、タイヤ軸方向で隣り合う補強コード11の前記初期伸度の差が、0.15〜0.25ポイントであるのが望ましい。前記初期伸度の差が、0.15ポイント未満の場合、タイヤ軸方向で隣り合う補強コード11のテンションの差を小さくすることができず、タイヤ軸方向の剛性を均一化できないおそれがある。また、前記初期伸度の差が0.25ポイントを超える場合、タイヤ軸方向内側の補強コード11のテンションが過度に小さくなり、タイヤ軸方向で隣り合う補強コード11のテンションの差が、かえって大きくなるおそれがある。前記「ポイント」とは、初期伸度(%)の数値の差を表す単位である。
【0028】
図1に示されるようなタイヤ1の場合では、トレッド端2t側のプロファイルのタイヤ軸方向に対する傾斜角度が、タイヤ赤道C側のプロファイルのタイヤ軸方向に対する傾斜角度よりも大きい。即ち、第2補強コード11Bと第3補強コード11Cとの貼り付け径の差は、第1補強コード11Aと第2補強コード11Bとの貼り付け径の差よりも大きくなる。このため、第1補強コード11Aと第2補強コード11Bとの前記初期伸度の差(a1−a2)を、第2補強コード11Bと第3補強コード11Cとの初期伸度の差(a2−a3)よりも小さくするのが望ましい。なお、トレッド端2t側のプロファイルのタイヤ軸方向に対する傾斜角度が、タイヤ赤道C側のプロファイルのタイヤ軸方向に対する傾斜角度よりも小さいタイヤ(図示省略)の場合では、第2補強コード11Bと第3補強コード11Cとの貼り付け径の差は、第1補強コード11Aと第2補強コード11Bとの貼り付け径の差よりも小さくなる。このため、第1補強コード11Aと第2補強コード11Bとの前記初期伸度の差(a1−a2)を、第2補強コード11Bと第3補強コード11Cとの初期伸度の差(a2−a3)よりも大きくするのが望ましい。
【0029】
また、タイヤ赤道C側に配された帯状プライ10内の補強コード11の貼り付け径の差は、トレッド端2t側に配された帯状プライ10内の補強コード11の貼り付け径の差よりも小さい。このため、タイヤ赤道C側に配される帯状プライ10内の隣接する補強コード11の前記初期伸度の差を、トレッド端2t側に配される帯状プライ10内の隣接する補強コード11の前記初期伸度の差よりも小さくするのが望ましい。これにより、トレッド補強層7の剛性分布が、タイヤ軸方向でさらに均一化される。このような態様を実現するために、帯状プライ10内の補強コード11の前記初期伸度の差が異なる、少なくとも2種類の帯状プライ10が用いられても良い。
【0030】
帯状プライ10は、3〜5本の補強コード11を有しているのが望ましい。帯状プライ10の補強コード11が3本未満の場合、短時間でトレッド補強層7を形成することができず、生産性が悪化するおそれがある。補強コード11が5本を超える場合、第1補強コード11Aと、最もタイヤ軸方向外側に位置する補強コード(図示省略)との貼り付け径の差が大きくなり、帯状プライ10のタイヤ軸方向内外で剛性分布を均一化できないおそれがある。本実施形態の帯状プライ10は、補強コード11が3本で形成されている。帯状プライ10の補強コード11が、4本、又は5本の場合でも、いずれの補強コード11は、タイヤ軸方向外側に隣接する補強コード11に比して、前記初期伸度が大きいのが望ましい。
【0031】
図2に示されるように、帯状プライ10の幅w1は、例えば2〜5mmが望ましい。幅w1が2mm未満では、トレッド補強層7を形成する際に帯状プライ10の巻付け回数が多くなって生産性が悪化するおそれがある。帯状プライ10の幅w1が5mmを超えると、タイヤ軸方向の内外で貼り付け径の差が大きくなり、各補強コード11のテンションの差が大きくなるおそれがある。また、タイヤの耐久性能と生産性とをバランス良く確保するため、帯状プライ10の厚さt1は、0.8〜2.0mmが望ましい。
【0032】
補強コード11は、スチールコードが望ましい。スチールコードは、前記初期伸度の範囲を大きく設定できるため、3〜5本で構成される補強コード11の初期伸度の差を効果的に確保しうる。
【0033】
補強コード11は、とりわけ、高速安定性能を高めるため、タイヤ周方向に対して5度以下、より好ましくは1度以下の角度で巻き回されるのが望ましい。
【0034】
図1に示されるように、トレッド補強層7のタイヤ軸方向の幅Waは、好ましくはトレッド幅TWの75%以上、より好ましくは80%以上である。これにより、効果的にカーカス6をタガ締めして、高速安定性能や操縦安定性能を向上する。
【0035】
図4には、本実施形態のタイヤのトレッド補強層7の製造方法の一例が、概念的に示される。図4に示されるように、本実施形態では、プロファイルドラム21とアプリケータ22とを含んだ製造装置Tが用いられる。プロファイルドラム21は、トレッド部2のプロファイルに応じて設定される凸円弧状の外周面21aを有している。アプリケータ22は、プロファイルドラム21の外周面21aに帯状プライ10を供給する。
【0036】
プロファイルドラム21は、例えば、これを回転させるための動力伝達装置等を有する基台(図示せず)によって、その回転軸が回動可能に支持されている。
【0037】
アプリケータ22は、例えばコンベヤ状で形成され、その下流側に送り出しローラ23を有している。送り出しローラ23は、帯状プライ10をプロファイルドラム21の外周面21aで螺旋状に巻き付ける。アプリケータ22の上流側には、例えば、帯状プライ10を連続して押し出すゴム押出機などが設けられる(図示省略)。これにより、帯状プライ10が連続して供給される。アプリケータ22は、例えば、プロファイルドラム21に対してその軸方向及び半径方向に往復移動可能な3次元移動装置(図示省略)などで支持されている。本実施形態では、2台のアプリケータ、即ち、第1のアプリケータ22Aと第2のアプリケータ22Bとが用いられる。
【0038】
本実施形態のトレッド補強層7を成形するトレッド補強層成形工程は、次の通りである。
先ず、各アプリケータ22A、22Bが、プロファイルドラム21のタイヤ赤道Cを挟んで両側に配される。本実施形態では、第1のアプリケータ22Aが、トレッド補強層7の右半分を形成し、第2のアプリケータ22Bが、トレッド補強層7の左半分を形成する。このとき、各アプリケータ22A、22Bが接触しないように、ドラム周方向に位置ずれして配設されても良い。
【0039】
次に、各アプリケータ22A、22Bから供給された帯状プライ10の始端10a、10aが、外周面21a上のタイヤ赤道Cの両側で止着される。このとき、第1のアプリケータ22Aの帯状プライ10の第1補強コード11Aと、第2のアプリケータ22Bの帯状プライ10の第1補強コード11Aは、タイヤ軸方向に隣り合っている。なお、帯状プライ10を確実に止着するために、例えば、図示しない押圧ローラ(省略)が用いられても良い。
【0040】
次に、プロファイルドラム21を回転させるとともに、各アプリケータ22A、22Bをそれぞれドラム軸方向の一方側又は他方側へ移動する。最後に、アプリケータ22で案内された帯状プライ10の終端10b、10bが、トレッド補強層7のタイヤ軸方向の外端位置で止着されて、トレッド補強層7が形成される。なお、帯状プライ10の皺やプロファイルドラム21からの脱落を防止するため、アプリケータ22から供給される帯状プライ10に張力を与えるよう、プロファイルドラム21の回転速度と帯状プライ10の供給速度とを制御するのが望ましい。
【0041】
以上、本発明の空気入りタイヤ及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0042】
図1の基本構造を有するサイズ180/55R17の自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの高速安定性能及び操縦安定性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
トレッド補強層の幅Wa/TW:84%
帯状プライの補強コードの本数:3本
帯状プライの補強コードの材料:スチール
帯状プライの幅w1:4.2mm
帯状プライの厚さt1:0.95mm
【0043】
<高速安定性能・操縦安定性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量750ccの自動二輪車の後輪に装着された。テストドライバーは、上記車両を乾燥アスファルト路面のテストコースを走行させた。このときのハンドル応答性、トラクション及びグリップ等に関する高速走行特性及び旋回走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。なお前輪には市販のタイヤ(サイズ:120/70R17)を使用した。
リム(後輪):17×MT5.50
内圧(後輪):290kPa
テストの結果が表1に示される。
【0044】
【表1】
【0045】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて高速安定性能及び操縦安定性能が優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0046】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
6 カーカス
7 トレッド補強層
10 帯状プライ
11 補強コード
11A 第1補強コード
11B 第2補強コード
12 トッピングゴム
図1
図2
図3
図4
図5