(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記補正用カメラは、上記複数の把持用ロボットの上記移動先端部のそれぞれと、上記固定物又は上記移動機械とに設けられている、請求項1に記載のロボット接合システム。
上記制御装置は、上記協調制御を行う際には、上記第1の把持用ロボットの上記把持ツールに把持された第1のワークと、上記第2の把持用ロボットの上記把持ツールに把持された第2のワークとが合わさる状態で、該第1のワークと該第2のワークとに接合を行う部位が上記接合装置に対して順次対向するよう、該第1の把持用ロボットにおける第1のワークと該第2の把持用ロボットにおける第2のワークとを移動させるよう構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のロボット接合システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットを用いた従来の接合システムにおいては、ワークを、位置決めを行って保持する専用の治具が必要になる。そのため、治具等の段替えをしなくては、大きさ、形状等が異なる複数種類のワークについて接合を行うことはできない。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、簡単な段替えによって、複数種類のワークの接合を行うことができ、複数種類のワークの接合を行うための汎用性を容易に持たせることができるロボット接合システムを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ワークを把持する把持ツールが設けられた移動先端部の位置及び姿勢を三次元的に変更可能な複数の把持用ロボットと、
該複数の把持用ロボットと相対的に移動可能な固定物又は移動機械に設けられ、上記複数の把持用ロボットにおけるそれぞれの上記把持ツールに把持されて、互いに合わされた状態の複数のワークを接合する接合装置と、
上記固定物、上記移動機械及び上記複数の把持用ロボットのうちの少なくともいずれかに設けられ、複数のワークの位置及び姿勢を監視する補正用カメラと、
上記複数の把持用ロボット、上記接合装置、上記補正用カメラの動作を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、上記複数の把持用ロボットを互いに協調させて動作させる協調制御と、上記補正用カメラによって撮影される画像に基づいて複数のワークの位置及び姿勢を求め、該複数のワークの位置及び姿勢が、目標とする位置及び姿勢になるよう上記複数の把持用ロボットの動作を補正する補正制御と、上記接合装置によって複数のワークを接合する接合制御とを行うよう構成されて
おり、
上記複数の把持用ロボットは、互いに隣接して設置された第1の把持用ロボット及び第2の把持用ロボットであり、
上記接合装置は、上記第1の把持用ロボットの上記把持ツールに把持された第1のワークと、上記第2の把持用ロボットの上記把持ツールに把持された第2のワークとを接合するものであり、
上記制御装置は、上記接合装置によって上記第1のワーク及び上記第2のワークにおける一部を接合した後には、上記第1の把持用ロボットの上記把持ツールによって、上記第2のワークが連結された状態の上記第1のワークの把持を継続して、上記第1のワーク及び上記第2のワークの他の部分をさらに接合するとともに、該接合を行う時間を利用して、上記第2の把持用ロボットの上記把持ツールによって上記第1のワーク及び上記第2のワーク以外の第3のワークを把持するよう構成されている、ロボット接合システムにある。
【発明の効果】
【0008】
上記ロボット接合システムは、複数の把持用ロボットにそれぞれ把持されたワーク同士を、固定物又は移動機械に設けられた接合装置によって接合するものである。そして、把持用ロボット同士の動作を協調させるとともに、固定物、移動機械及び複数の把持用ロボットのうちの少なくともいずれかに設けられた補正用カメラを用いて、各把持用ロボットの把持ツールに把持されたワークの位置及び姿勢を補正する。
【0009】
ロボット接合システムを用いて複数のワークの接合を行う際には、制御装置は、各把持用ロボットの把持ツールにそれぞれワークを把持させる。このとき、固定物又は移動機械に補正用カメラが設けられている場合には、制御装置は、協調制御を行って各把持用ロボットの動作を互いに協調させながら、各把持ツールにおけるワークを補正用カメラに近づけ、この補正用カメラによってワークを撮影する。一方、各把持用ロボットの移動先端部に補正用カメラが設けられている場合には、制御装置は、この各補正用カメラによって各把持用ロボットの把持ツールに把持されたワークを撮影する。
【0010】
ところで、各把持用ロボットの把持ツールが移動するときの、各把持ツールに把持されたワークの位置及び姿勢には、ワーク自体の形状のばらつき、ワークの把持状態のばらつき、把持用ロボット及び把持ツールの位置精度のばらつき等によって、誤差が生じる。特に、大きなワーク等の場合には、把持ツールによる把持部位から離れたワークの部位ほど、生じる位置及び姿勢の誤差は大きくなる。
そこで、ロボット接合システムにおいては、制御装置は、各把持用ロボットの把持ツールに把持されたワークを補正用カメラによって撮影し、補正用カメラによって撮影される画像に基づいて、各把持用ロボットの把持ツールに把持されたワークの位置及び姿勢を求める。
【0011】
この補正用カメラによって求められた各ワークの位置及び姿勢のデータは、各把持用ロボットの動作にフィードバックされ、各把持用ロボットの把持ツールの位置及び姿勢を補正するために用いられる。そして、制御装置は、補正用カメラによって求められる複数のワークの位置及び姿勢が、目標とする位置及び姿勢になるよう、各把持用ロボットの動作を補正する。
【0012】
このようなロボット接合システムの構成により、ワークの位置及び姿勢を固定するための専用の治具を用いる必要がなくなり、大きさ、形状等が異なる複数種類のワークの接合を行う場合にも、ワークの種類ごとに専用の治具を準備する必要がなくなる。これにより、ロボット接合システムの簡略化を図ることができる。また、複数種類のワークの接合を行う場合に、専用の治具の段替えを行う必要がなくなり、接合を行う各ワークの種類を変更する際の段替えに要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、補正用カメラを用いて、接合を行うときの各ワークの位置及び姿勢を補正することにより、各把持用ロボットの把持ツールに把持する各ワークの位置及び姿勢を正確に決定する必要がなくなる。これにより、各把持用ロボットの把持ツールの構造は、ワークを把持する機能を有する簡単な構造にすることができる。
そして、専用の治具をなくし、把持ツールも共通化することによって、ロボット接合システムに、複数種類のワークの接合を行うための汎用性を容易に持たせることができる。
【0014】
それ故、ロボット接合システムによれば、簡単な段替えによって、複数種類のワークの接合を行うことができ、複数種類のワークの接合を行うための汎用性を容易に持たせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したロボット接合システムにおける好ましい実施の形態について説明する。
上記ロボット接合システムにおける上記接合装置によって行うワークの接合は、複数のワークを一体化することができる種々の工法とすることができる。接合装置によって行う接合は、例えば、種々の溶接、接着、かしめ等とすることができる。溶接の種類は、例えば、熱、光、ビーム等を利用する融接法としてのアーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接等、電気抵抗を利用する抵抗溶接としてのスポット溶接、プロジェクション溶接等とすることができる。
【0017】
また、上記固定物とは、架台、安全柵等の工場の床面、天面、側壁面等に設置された構造物とすることができる。また、上記移動機械とは、移動先端部の位置及び姿勢を三次元的に変更可能なロボット、可動部分の位置制御が可能な種々の機械等とすることができる。
【0018】
以下に、ロボット接合システムにかかる実施例について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
本実施形態のロボット接合システム1は、
図1〜
図3に示すように、複数の把持用ロボット2A,2B、接合装置としてのスポット溶接ガン3、補正用カメラ41及び制御装置7を備えている。
各把持用ロボット2A,2Bは、工場の床面に設置されており、ワーク8A,8Bを把持する把持ツール22が設けられた移動先端部21の位置及び姿勢を三次元的に変更可能なものである。スポット溶接ガン3は、工場の床面に設置された固定物としての架台11に設けられており、複数の把持用ロボット2A,2Bにおけるそれぞれの把持ツール22に把持されて、互いに合わされた状態の複数のワーク8A,8Bを接合するものである。
補正用カメラ41は、固定物としての安全柵12に設けられており、複数のワーク8A,8Bの位置及び姿勢を監視するものである。
【0019】
制御装置7は、複数の把持用ロボット2A,2Bを互いに協調させて動作させる協調制御と、補正用カメラ41によって撮影される画像に基づいて複数のワーク8A,8Bの位置及び姿勢を求め、複数のワーク8A,8Bの位置及び姿勢が、目標とする位置及び姿勢になるよう複数の把持用ロボット2A,2Bの動作を補正する補正制御と、スポット溶接ガン3によって複数のワーク8A,8Bを接合する接合制御とを行うよう構成されている。
【0020】
以下に、本実施形態のロボット接合システム1について、
図1〜
図3を参照して詳説する。
図1、
図2に示すように、ロボット接合システム1は、架台11に設けられた定置式のスポット溶接ガン3に対して、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22によって把持するワーク8A,8Bを移動させて、ワーク8A,8B同士の接合を行うものである。複数の把持用ロボット2A,2Bは、互いに隣接して設置された第1の把持用ロボット2Aと第2の把持用ロボット2Bとである。各把持用ロボット2A,2Bは、複数のリンクを関節部によって連結し、この関節部をサーボモータによって駆動する多関節型産業用ロボットである。
【0021】
図3は、ロボット接合システム1の構成を概略的に示すブロック図である。制御装置7には、各把持用ロボット2A,2Bを動作させるための動作プログラムが記憶されている。動作プログラムは、作業者が、制御装置7に接続された教示ペンダントを用いて、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の位置及び姿勢を教示するオンラインティーチングによって構築することができる。また、動作プログラムは、コンピュータにおいて動作する教示用ソフトウェアを用い、教示用ソフトウェアにおいて各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の位置及び姿勢を教示するオフラインティーチングによって構築することもできる。オフラインティーチングを利用する場合には、コンピュータから制御装置7へ教示データを送信して、制御装置7における動作プログラムとする。各把持用ロボット2A,2Bの動作は、動作プログラムとして制御装置7に記憶させておく。
【0022】
一般的に、オフラインティーチングの特性は、オンラインティーチングに比べて教示の精度は低いが、迅速な教示が可能であることにある。ロボット接合システム1においては、補正用カメラ41等を用いて各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持するワーク8A,8Bの位置及び姿勢を補正する。そのため、ロボット接合システム1においては、補正用カメラ41等を用いた補正によって教示の精度を補って、オフラインティーチングを有効に活用することができる。
【0023】
制御装置7の協調制御においては、第1の把持用ロボット2Aと第2の把持用ロボット2Bとが、互いに各把持ツール22の位置及び姿勢を確認しながら、各把持ツール22同士の干渉を避けて動作するよう制御される。また、制御装置7においては、第1の把持用ロボット2Aの動作プログラムと、第2の把持用ロボット2Bの動作プログラムとは、互いに連携した一体のものとして扱われる。
制御装置7の補正制御においては、第1の把持用ロボット2Aの動作プログラムにおける把持ツール22の位置及び姿勢を、補正用カメラ41によって撮影される画像に基づいて補正し、第2の把持用ロボット2Bの動作プログラムにおける把持ツール22の位置及び姿勢を、補正用カメラ41によって撮影される画像に基づいて補正する。また、制御装置7の補正制御においては、動作プログラムにおける各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の位置及び姿勢の教示データが変更される。
【0024】
スポット溶接ガン3は、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持された第1のワーク8Aと、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持された第2のワーク8Bとに対して抵抗溶接としてのスポット溶接を行う。スポット溶接ガン3は、その一対のチップが向き合う方向が鉛直方向に対して略平行になるよう、架台11に設置されている。
制御装置7の接合制御においては、各把持用ロボット2A,2Bが各ワーク8A,8Bを移動させる動作と連携して、制御装置7がスポット溶接ガン3によるスポット溶接を行う。
【0025】
図2に示すように、第1のワーク8A及び第2のワーク8Bに対してスポット溶接を行う部位81は、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとが重なり合う部位における複数個所に設定されている。
第1の把持用ロボット2Aと第2の把持用ロボット2Bとは、協調制御を行って、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとを互いに重ね合わせ、互いに重ね合わされた第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにおけるスポット溶接を行う各部位81を、スポット溶接ガン3の一対のチップによる溶接位置に順次移動させるよう構成されている。
【0026】
補正用カメラ41には、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持する第1のワーク8Aの位置及び姿勢を監視するものと、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持する第2のワーク8Bの位置及び姿勢を監視するものとがある。補正用カメラ41は、固定物としての安全柵12に設けられており、スポット溶接ガン3の上方から第1のワーク8A及び第2のワーク8Bをそれぞれ撮影するよう構成されている。なお、補正用カメラ41は、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持する第1のワーク8Aの位置及び姿勢と、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持する第2のワーク8Bの位置及び姿勢とを同時に監視するものとしてもよい。
【0027】
制御装置7は、補正制御を行う際には、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22を設計上の基準位置及び基準姿勢にする。基準位置は、X方向、Y方向、Z方向における三次元の位置によって示され、基準姿勢は、各方向に沿った軸線を中心とする回転角度によって示される。各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22を基準位置及び基準姿勢にしたとき、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持された各ワーク8A,8Bは、補正用カメラ41によって撮影可能な位置に配置される。
【0028】
また、制御装置7においては、基準位置及び基準姿勢にある各把持ツール22に把持されたときの各ワーク8A,8Bの正規位置及び正規姿勢が設定されている。制御装置7は、補正制御を行う際に、各ワーク8A,8Bを補正用カメラ41によって撮影した画像に基づいて、各ワーク8A,8Bが正規位置及び正規姿勢にあるかを判別する。そして、制御装置7は、制御装置7に設定された各ワーク8A,8Bの正規位置及び正規姿勢と、補正用カメラ41による画像から求められる各ワーク8A,8Bの実際の位置及び姿勢との誤差(ずれ)を補正用誤差として求める。制御装置7の補正制御においては、この補正用誤差に基づいて、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22が基準位置及び基準姿勢にあるときの、各把持ツール22に把持された各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢が、目標とする位置及び姿勢になるように補正される。
【0029】
また、補正用誤差が、制御装置7の動作プログラムにおける、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の位置及び姿勢の教示データにフィードバックされ、動作プログラムにおける教示データが補正用誤差に応じて補正される。そして、スポット溶接ガン3における一対のチップの位置及び姿勢に対して、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにおけるスポット溶接を行う各部位81の位置及び姿勢が一致するように補正される。
【0030】
制御装置7は、協調制御を行う際には、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持された第1のワーク8Aと、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持された第2のワーク8Bとが重ね合わされた状態で、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにスポット溶接を行う部位81がスポット溶接ガン3における一対のチップが対向する位置に対して順次対向するよう、第1の把持用ロボット2Aにおける第1のワーク8Aと第2の把持用ロボット2Bにおける第2のワーク8Bとを移動させる。そして、スポット溶接ガン3は、架台11に固定させたままにすることができ、スポット溶接ガン3によってスポット溶接を行う接合制御を簡単にすることができる。
【0031】
図1に示すように、ロボット接合システム1は、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22によって把持される第1のワーク8Aと、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22によって把持される第2のワーク8Bとが載置される載置台5を備えている。載置台5には、大きさ、形状等が異なる種々の第1のワーク8A及び第2のワーク8Bを載置するために、各ワーク8A,8Bの位置決め及び保持を行う治具等は設けられていない。ただし、載置台5には、各ワーク8A,8Bの概略的な位置を決定することができる位置決定用のピン、部材等を設けることができる。載置台5は、2台の把持用ロボット2A,2Bに合わせて2台設置することができる。
【0032】
同図に示すように、ロボット接合システム1は、載置台5に載置された第1のワーク8A及び第2のワーク8Bのそれぞれの位置及び姿勢を監視する把持用カメラ42を備えている。把持用カメラ42は、載置台5の上方から第1のワーク8A及び第2のワーク8Bをそれぞれ撮影するよう構成されている。制御装置7は、把持用カメラ42によって撮影される画像に基づいて、載置台5における第1のワーク8A及び第2のワーク8Bの位置及び姿勢を求める。そして、制御装置7は、把持制御を行い、第1のワーク8Aを把持するための位置及び姿勢に第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22を移動させ、この把持ツール22によって第1のワーク8Aを把持させる。また、制御装置7は、把持制御を行い、第2のワーク8Bを把持するための位置及び姿勢に第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22を移動させ、この把持ツール22によって第2のワーク8Bを把持させる。
【0033】
把持制御においては、補正制御の場合と同様に、オンラインティーチング又はオフラインティーチングによって、把持制御を行うための各把持用ロボット2A,2Bの動作プログラムを構築しておくことができる。そして、この動作プログラムに基づいて移動させる各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の位置及び姿勢を、把持用カメラ42によって求められる実際の各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢に合わせるよう補正することができる。
載置台5と把持用カメラ42とを用いることにより、大きさ、形状等が異なる種々の各ワーク8A,8Bの接合を行う際に、各ワーク8A,8Bごとに専用の治具を用いない汎用性の高いロボット接合システム1を形成することができる。
【0034】
次に、ロボット接合システム1の動作及び作用効果について説明する。
ロボット接合システム1を用いて第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとの接合を行う際には、制御装置7は、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22によって載置台5に載置された第1のワーク8Aを把持させ、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22によって載置台5に載置された第2のワーク8Bを把持させる。このとき、制御装置7は、把持用カメラ42によって第1のワーク8A及び第2のワーク8Bの位置及び姿勢を検出し、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22を移動させる位置及び姿勢を求める。そして、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に各ワーク8A,8Bをそれぞれ把持する。
【0035】
ところで、第1の把持用ロボット2Aによって移動させる第1のワーク8Aの位置及び姿勢には、第1のワーク8A自体の形状のばらつき、把持ツール22による第1のワーク8Aの把持状態のばらつき、第1の把持用ロボット2A及び第1の把持用ロボット2Aにおける把持ツール22の位置精度のばらつき等によって、誤差が生じる。また、第2の把持用ロボット2Bによって移動させる第2のワーク8Bの位置及び姿勢についても、第1の把持用ロボット2Aの場合と同様に誤差が生じる。特に、第1のワーク8A又は第2のワーク8Bが大きい場合等には、生じる位置及び姿勢の誤差はより大きくなる。
【0036】
そこで、制御装置7は、協調制御を行って第1の把持用ロボット2Aと第2の把持用ロボット2Bとの動作を互いに協調させながら、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持する第1のワーク8Aと第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持する第2のワーク8Bとを、補正用カメラ41に近づける。そして、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22が基準位置及び基準姿勢に移動したときに、制御装置7は、補正用カメラ41によって各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持された各ワーク8A,8Bを撮影する。また、制御装置7は、補正用カメラ41によって撮影される画像に基づいて、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持された各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を求める。
【0037】
補正用カメラ41及び制御装置7によって求められた第1のワーク8Aの位置及び姿勢のデータは、第1の把持用ロボット2Aの動作にフィードバックされ、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22の位置及び姿勢を補正するために用いられる。また、補正用カメラ41によって求められた第2のワーク8Bの位置及び姿勢のデータは、第2の把持用ロボット2Bの動作にフィードバックされ、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22の位置及び姿勢を補正するために用いられる。
【0038】
こうして、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持する第1のワーク8Aの位置及び姿勢が正規位置及び正規姿勢になるよう、制御装置7における動作プログラムに構築された第1の把持用ロボット2Aの教示データが補正される。また、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22に把持する第2のワーク8Bの位置及び姿勢が正規位置及び正規姿勢になるよう、制御装置7における動作プログラムに構築された第2の把持用ロボット2Bの教示データが補正される。
その後、位置及び姿勢の補正が行われた第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとに対してスポット溶接ガン3によってスポット溶接を行う。
【0039】
ロボット接合システム1においては、位置決め治具等によって固定された複数のワークに対して、スポット溶接ガンを支持するロボットによってスポット溶接を行う従来の方法とは全く異なるシステムを提供する。
具体的には、スポット溶接ガン3を固定し、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持する各ワーク8A,8Bを、各把持用ロボット2A,2Bの協調制御を行いながらスポット溶接ガン3へ移動させる。そして、補正用カメラ41を用いて各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢の補正を行った後にスポット溶接を行う。
【0040】
このようなロボット接合システム1の構成により、各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を固定するための専用の治具を用いる必要がなくなり、大きさ、形状等が異なる複数種類のワーク8A,8Bのスポット溶接を行う場合にも、ワーク8A,8Bの種類ごとに専用の治具を準備する必要がなくなる。これにより、ロボット接合システム1の簡略化を図ることができる。また、複数種類のワーク8A,8Bのスポット溶接を行う場合に、専用の治具の段替えを行う必要がなくなり、スポット溶接を行う各ワーク8A,8Bの種類を変更する際の段替えに要する時間を短縮することができる。
【0041】
また、補正用カメラ41を用いて、スポット溶接を行うときの各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を補正することにより、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持する各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を正確に決定する必要がなくなる。これにより、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22の構造は、ワーク8A,8Bを把持する機能を有する簡単な構造にすることができる。
そして、専用の治具をなくし、把持ツール22も共通化することによって、ロボット接合システム1に、複数種類のワーク8A,8Bのスポット溶接を行うための汎用性を容易に持たせることができる。
【0042】
それ故、ロボット接合システム1によれば、簡単な段替えによって、複数種類のワーク8A,8Bの接合を行うことができ、複数種類のワーク8A,8Bの接合を行うための汎用性を容易に持たせることができる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態は、
図4、
図5に示すように、ロボット接合システム1において、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとの接合を行うだけでなく、第1のワーク8A及び第2のワーク8Bに対してさらに第3のワーク8Cを接合する場合を示す。この場合に、第3のワーク8Cは、第2のワーク8Bの把持を解除した、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22によって把持する。
具体的には、制御装置7は、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとを各把持用ロボット2A,2Bによってスポット溶接ガン3に対向する位置まで移動させて、スポット溶接ガン3によって第1のワーク8A及び第2のワーク8Bにおける少なくとも2箇所の部位にスポット溶接を行う。
【0044】
次いで、
図4に示すように、第2の把持用ロボット2Bは、その把持ツール22に把持する第2のワーク8Bの把持を解除する。このとき、第2のワーク8Bは、スポット溶接が行われた少なくとも2箇所の部位によって第1のワーク8Aに連結されている。そのため、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22が第1のワーク8Aの把持を継続することにより、第2のワーク8Bも第1のワーク8Aとともに第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22によって支持される。そして、第1の把持用ロボット2Aの把持ツール22に把持する第1のワーク8A及び第2のワーク8Bを適宜移動させて、スポット溶接ガン3によって、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにおけるスポット溶接を行う部位81にさらにスポット溶接を行う。
【0045】
一方、第1の把持用ロボット2Aに支持される第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにスポット溶接ガン3によってスポット溶接を行う時間を利用して、第2の把持用ロボット2Bは、その把持ツール22によって載置台5に載置された第3のワーク8Cを把持する。そして、第2の把持用ロボット2Bの把持ツール22の移動によって第3のワーク8Cを、第1のワーク8A又は第2のワーク8Bに重なり合う位置まで移動させる。
【0046】
その後、
図5に示すように、第1のワーク8A及び第2のワーク8Bを把持する第1の把持用ロボット2Aと、第3のワーク8Cを把持する第2の把持用ロボット2Bとの協調制御を行って、第1のワーク8A又は第2のワーク8Bと第3のワーク8Cとにスポット溶接を行う部位81を、スポット溶接ガン3における一対のチップに順次対向させる。こうして、第3のワーク8Cを、第1のワーク8A又は第2のワーク8Bに接合することができる。
【0047】
本実施形態のロボット接合システム1によれば、把持用ロボット2A,2Bの台数を増やすことなく、第1のワーク8A又は第2のワーク8Bに対して第3のワーク8Cをさらに接合することができる。
本実施形態においても、ロボット接合システム1のその他の構成は実施形態1の場合と同様であり、図中の符号が示す内容は実施形態1の場合と同様である。また、本実施形態においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
(実施形態3)
本実施形態は、
図6、
図7に示すように、スポット溶接ガン3及び補正用カメラ41を、移動機械としての接合用ロボット6の移動先端部61に設けた場合を示す。接合用ロボット6は、把持用ロボット2A,2Bと同様に、移動先端部61の位置及び姿勢を三次元的に変更可能な多関節型産業用ロボットによって構成されている。
【0049】
本実施形態においても、実施形態1に示した場合と同様にして、制御装置7によって協調制御及び補正制御が行われる。そして、制御装置7は、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に各ワーク8A,8Bを把持し、各ワーク8A,8Bを、接合用ロボット6の移動先端部61における補正用カメラ41に接近させる。このとき、制御装置7は、接合用ロボット6の移動先端部61における補正用カメラ41を各ワーク8A,8Bと対向する位置に適宜移動させ、補正用カメラ41によって各ワーク8A,8Bを撮影することができる。
【0050】
また、制御装置7によって協調制御が行われ、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとがスポット溶接を行う状態に互いに重ね合わされる。
制御装置7は、接合用ロボット6の移動先端部61における補正用カメラ41によって、互いに重ね合わせられる前の第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとを別々に撮影し、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持する各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢の補正を行うことができる。この補正は、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持する各ワーク8A、8Bの位置及び姿勢が正規位置及び正規姿勢になるよう、制御装置7における動作プログラムに構築された各把持用ロボット2A,2Bの教示データを変更することによって行うことができる。また、この補正は、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21の位置及び姿勢の教示データと、補正用カメラ41による各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢の撮影データとを照合して、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21に対する各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を特定することによって行うことができる。
【0051】
また、制御装置7は、接合用ロボット6の移動先端部61における補正用カメラ41によって、互いに重ね合わされた第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとを同時に撮影し、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に把持する各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢の補正を行うことができる。補正は、上記と同様に行うことができる。また、この場合には、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとの干渉を検知するために、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21又は把持ツール22に力センサを設けることができる。力センサを用いることにより、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとの意図しない干渉を回避して、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとを重ね合わせることができる。力センサは、ロードセル、荷重計等を用いて構成することができる。なお、力センサは、他の実施形態に示す把持用ロボット2A,2Bに設けても勿論よい。
【0052】
また、制御装置7は、スポット溶接ガン3における一対のチップを第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにおけるスポット溶接を行う部位81に対向させるときには、接合用ロボット6におけるスポット溶接ガン3を移動させることができる。そして、第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとにおけるスポット溶接を行う部位81に対して、スポット溶接ガン3が順次対向するよう、接合用ロボット6におけるスポット溶接ガン3を移動させることができる。
【0053】
本実施形態のロボット接合システム1によれば、スポット溶接ガン3による第1のワーク8Aと第2のワーク8Bとのスポット溶接を、一層柔軟に行うことができる。
本実施形態においても、ロボット接合システム1のその他の構成は実施形態1の場合と同様であり、図中の符号が示す内容は実施形態1の場合と同様である。また、本実施形態においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
(実施形態4)
本実施形態は、
図8、
図9に示すように、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21に補正用カメラ41を設けた場合を示す。
本実施形態の制御装置7は、各把持用ロボット2A,2Bの把持ツール22に各ワーク8A,8Bを把持するときに、各補正用カメラ41によって各ワーク8A,8Bを撮影する。そして、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21に対する各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢が正規位置及び正規姿勢になるよう、制御装置7における動作プログラムに構築された各把持用ロボット2A,2Bの教示データを補正することができる。
【0055】
各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21に補正用カメラ41を設けることにより、実施形態1に示した把持用カメラ42を省略することができる。また、各把持用ロボット2A,2Bの移動先端部21に設けられた補正用カメラ41によって、各ワーク8A,8Bの位置及び姿勢を監視しながら、各ワーク8A,8Bを互いに重ね合わせることができる。
【0056】
なお、補正用カメラ41は、実施形態3に示した接合用ロボット6及び各把持用ロボット2A,2Bの両方に設けることができる。また、補正用カメラ41は、実施形態1に示した安全柵12及び各把持用ロボット2A,2Bの両方に設けることもできる。
また、実施形態1に示した安全柵12等の固定物に設ける補正用カメラ41は、任意の位置に任意の数を設けることができる。