(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブームの上部に、所定の間隔ごとに複数配設された長尺の棒体と、前記複数の棒体の間を掛け渡される索体と、を有する移動式クレーンに備えられたスタンションであって、
前記棒体は、一方端側に向けて他方端が屈曲するように形成されており、前記棒体の屈曲した部位が前記ブームの上部に対して回動自在に取り付けられていて、
前記棒体の一方端側が前記ブームの上部で横たわった状態において、前記棒体の一方端側に対して斜め上方を向くように延びている前記棒体の他方端側を作業者の人力によって下方向に引くことで、前記棒体が回動し前記棒体の一方端側が上方向に起立状態となる構成とされていることを特徴とする移動式クレーンに備えられたスタンション。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の作業現場においては、ブームが搬送されてきた時点、例えばブームがトレーラやトラックの荷台に載置された状態でブームの上部にスタンションを立設するという要求がある。
しかしながら、スタンションを立設するにあたっては、これまでは作業者がブームの上部に搭乗して立設作業(ポールを引き起こす作業)を行っていた。ところが、特に大型の移動式クレーンに備えられているジブやブームが、横たわった状態で載置されている場合、その上部(上面)までの高さが、例えば2m〜4mといったように非常に高くなることがある。
【0008】
このような非常に高い場所で、作業者がスタンションの立設作業をする際には、高所作業の安全性を確保する必要がある。
そこで、特許文献1、2の技術を用いて、高所でのスタンションの立設作業について考える。
特許文献1は、各スタンションの端部に複数の滑車を用いた立ち上げ機構を備え、巻き取り機を用いてロープを引くことで、各スタンション端部の滑車を経由する1本のロープで全てのスタンションを立ち上げるスタンションの倒立装置である。
【0009】
同文献の
図1(c)を参照すると、スタンションが倒れた状態において、動滑車(符号3)が立ち上げの支点である支持軸(符号9)より、上方に位置しているので、動滑車を斜め下方に引っ張る力が必要であることから、立ち上げるモーメントが小さくなりやすく立ち上げには大きな力(T)が必要となる。そのため、ロープを巻き取るためには、巻き取り装置のような大きな動力を発生させることが可能な装置が必要とされる。またこの技術は、滑車が多く複雑な装置構成でもある。また、滑車が多いことから、そこでの摩擦や摺動抵抗等から効率が悪くなりやすく、重量も増加することからブームが重くなりクレーンの吊り能力を削いでしまうことになる。さらには、滑車のメンテナンスが必要であり、これに多くの手間とコストが必要となる。
【0010】
特許文献2は、木材運搬船の各スタンションがそれぞれ別々の2本の連動ワイヤで結ばれており、端部のスタンションの先端近傍に起倒用ワイヤを取付け、これをクレーン又はウインチで巻き上げることにより引き起こす装置である。
しかしながら、木材運搬船用で、起倒用ワイヤ、連動ワイヤともスタンションの先端近傍についていることから、船上にて作業することを想定されているものである。
【0011】
ところで、そもそも同文献は、木材運搬船用の起倒式スタンションであり、スタンション自体の長さが7〜10mにもなり、木材運搬船は数十mから数百mの長さになるものであることから、クレーンかウインチなど動力装置が必要であるが、相当に大きなものが必要となり、コストも嵩む。このため、ほぼ固定式に近いものであり、移動式クレーンなど建設機械のように頻繁に組立・解体するための目的とされた技術ではないので、適用が困難である。
【0012】
以上より、特許文献1、2の技術は、作業者が容易に且つ安全にスタンションを立設することはできない。また、特許文献1、2など従来技術では、スタンションを起こすウインチなど別途の動力装置が必要となり、且つこの動作装置を稼働させるための動力供給、設置場所が必要となる。また、スタンションの立設作業が繁雑且つ労力がかかるとともに、設置コストの増加を招いていた。それ故、これらの技術を採用することは難しい。
【0013】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、作業者がブームの下部から容易に立設することができる移動式クレーンに備えられたスタンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明のかかる移動式クレーンに備えられたスタンションは、ブームの上部に、所定の間隔ごとに複数配設された長尺の棒体と、前記複数の棒体の間を掛け渡される索体と、を有する移動式クレーンに備えられたスタンションであって、前記棒体は、一方端側に向けて他方端が屈曲するように形成されており、前記棒体の屈曲した部位が前記ブームの上部に対して回動自在に取り付けられていて、前記棒体の一方端側が前記ブームの上部で横たわった状態から、前記棒体の他方端側を下方向に引くことで、前記棒体の一方端側が上方向に起立状態となる構成とされていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記ブームの上部に配設されている第1棒体の一方端と、前記第1棒体に隣り合う第2棒体の一方端とが、前記索体により連結されているとよい。
好ましくは、複数配設された前記棒体のうち、最後端に配設されている第n棒体の一方端には、前記第n棒体の長手方向軸心に対して交差する方向に突出する突出体が設けられているとよい。
【0016】
好ましくは、前記棒体は、一方端側が長尺とされると共に、他方端側が前記長尺側に対して短尺とされている構成であり、前記長片と前記短片とが成す角度は、鈍角とされているとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の移動式クレーンに備えられたスタンションによれば、作業者がブームの下部から容易に立設することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態では、移動式クレーン1のブーム6の側方に備えられ、且つ作業者がブーム6の上部で移動式クレーン1の組立・分解作業するときに、作業者の安全性を確保するスタンション12(手摺り)について説明する。しかしながら、その前に、スタンション12が備えられている移動式クレーン1について、ラチスブーム式のクローラクレーンを例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、組立・解体作業時の状態のラチスブーム式のクローラクレーン1の概略を示した図であるので、クローラクレーン1を構成する一部の部材を省略して描いている。
図1に示すように、本実施形態における移動式クレーン1(以下、単にクレーン1と呼ぶ。)は、ラチスブーム6を備えたラチスブーム式のクローラクレーンであり、上部旋回体2と、上部旋回体2を旋回自在に下から支持するとともに、走行を行う下部走行体4とを備えている。
【0021】
下部走行体4には、地面や路面を走行可能とする、金属製の帯体を環状に形成してなる無限軌道(クローラ5)が、左右方向の両端にそれぞれ備えられ、上部旋回体2を旋回自在に下から支持し、且つ長手方向軸心回りに旋回させる旋回手段3が、中央上部に備えられている。
上部旋回体2には、フック装置などを吊りロープを介して吊り下げる長尺のブーム6が、左右方向中央の前方に備えられていて、そのブーム6に対して略平行となるように張り渡された主巻ワイヤロープを巻き取る主巻ドラム7がブーム6の後方に備えられている。
【0022】
なお、ラチスブーム式のクローラクレーン1などの大型のクレーンに備えられた長尺のブーム6は、複数のセグメントごとに分割されている。クレーン1の組立時には、作業者によって複数のセグメントが連結されて、長尺のブーム6として組み立てられる。一方、クレーン1の解体時には、作業者によってセグメントごとに分解されて、輸送用のトラックなどに積載される。
【0023】
また、上部旋回体2には、上記のブーム6を操作する操作ユニットが内部に配備されたキャブ8(運転室)が、左右方向一方側(右側)の前方に備えられていて、エンジンなどクレーン1を駆動させる装置を内部に格納するエンジンガード9が、キャブ8の後方に備えられている。上部旋回体2には、上部にブーム6に対して交差方向に伸びるガントリ10が配備されていて、後方にカウンターウェイト11が配備されている。
【0024】
ところで、クレーン1の組立・解体作業時、すなわちブーム6のセグメントの連結・分解作業を行うときには、ブーム6のセグメントごとに、その上部(上面)にスタンション12(手摺り)が備えられている。
ここで、ブーム6の上部とは、
図2に示すように、地面、路面やトレーラの荷台など床面上に対して、略水平に載置された状態のブーム6の上側を指し示す。また、
図2の紙面貫通方向を、ブーム6の左右(幅)方向とし、
図2の左右方向をブーム6の前後方向(長手方向)とする。
【0025】
なお、以下の本実施形態を説明する上で、複数のセグメントに分解されたブーム6のうち、1つのセグメントを例に挙げて説明する。また、本実施形態のスタンション12は、ブーム6の右側方(ブーム6の基端側から見て右側)に備えられているものを例示して、説明する。
[第1実施形態]
図2に示すように、本実施形態にかかるスタンション12は、作業者がブーム6の上部に搭乗せずに、ブーム6の下部から棒体13を立設するものであって、ブーム6の右側方に備えられていて、ブーム6の上部に対して、回動自在に取り付けられているものである。ブーム6の組立・分解作業を行うときには、スタンション12を構成する棒体13が、ブーム6の上部に対して上方向に回動して起立され(棒体13の起立状態)、ブーム6の組立・分解作業を終えると、棒体13がブーム6の上部に水平方向を向いて寝かせられるように格納される(棒体13の格納状態)。
【0026】
なお、本実施形態にかかる格納自在とされたスタンション12は、ブーム6がトレーラの荷台や地面などに載置された状態で機能されるものであり、クレーン作業中では格納された上で起立動作しないようにロックされている。
本実施形態のスタンション12は、ブーム6のセグメントごとに備えられているものであり、ブーム6の長手方向に所定の間隔ごとに複数配設された長尺の棒体13と、両端部にフック(図示せず)が備えられ、複数の棒体13の間をフックを介して掛け渡される索体16(ロープ体)とを有し、この棒体13の先端には、フックが掛け止めされるリング状のステーが配備されている。
【0027】
つまり、本実施形態のスタンション12は、索体16が張られた手摺り(安全柵)とされている。なお、本実施形態の索体16(紐体)及びフックは、当業者常法のものであり、ロープ、チェーンなどクレーン1の組立・解体作業を行う際に、安全が確保できるものであれば、特に限定しない。
図2に示すように、本実施形態の棒体13は、他方端14が一方端15に向けて屈曲して形成されているポールであり、例えば上端と下端が開放された長尺のパイプ材を、長手方向中途部より下方の位置で屈曲させて形成した部材である。棒体13は、一方端15側が長尺(長片)とされ、他方端14側は長尺側(長片15)に対して短尺(短片)とされている構成である。
【0028】
屈曲形状の棒体13は、長片15がブーム6の上部で横たわった状態(長片15の長手方向軸心がブーム6前後方向を向いた状態)から、短片14を下方向に引くことで、長片15が上方向に起立状態(長片15の長手方向軸心がブーム6上下方向を向いた状態)となる構成とされている。
棒体13の長片15の長さは、起立状態とした際に、一方端15(上部)がおよそ作業者の腰部に対応する位置となるような長さとされている。一方、棒体13の短片14の長さは、長片15の長さに対して非常に短く、例えば作業者が握れる程度の長さである。つまり、短片14は、作業者がブーム6の上部に上らずに、ブーム6の下部から長片15(棒体13)を起こす際のグリップとして機能するものである。
【0029】
棒体13は、長片15の長手方向軸心と短片14の長手方向軸心とが交差するように形成されていて、例えば長片15がブーム6の上部で横たわった状態のとき、短片14の長手方向軸心が、ブーム6の前後方向を向く長片15の長手方向軸心に対して、斜め上方を向くように形成される。この棒体13は、長片15の長手方向軸心と短片14の長手方向軸心とが同じ軸線上とはならないように構成されているともいえる。
【0030】
棒体13の屈曲部位における交差角度、すなわち長片15と短片14とが成す角度αは、鈍角(90°より大きく〜180°より小さい角度)とされている。
この屈曲部位には、棒体13をブーム6の上部に対して回動自在に支持する支持ピン20が挿入される貫通孔が形成されている。この貫通孔の軸心は、長片15の長手方向軸心に対して、略直交する方向である。
【0031】
棒体13は、貫通孔の軸心がブーム6の左右方向を向くように、ブーム6の上部に配設され、屈曲部位がブラケット19を介して、ブーム6の上部に回動自在に取り付けられる。
ブラケット19は、棒体13を回動自在に支持するものであり、ブーム6の右側方の上部に、棒体13と同数配設されている。ブラケット19は、ブーム6右側方にボルトなどの締結具22を介して取り付けられる。ブラケット19は、基台21と支持ピン20とからなる部材であって、その基台21に取り付けられた支持ピン20で、棒体13を回動自在に支持するものである。
【0032】
基台21は、2枚の板材からなるものであり、所定の広さを有する長方形状とされている。2枚の板材は、長手方向がブーム6の上部から上方向を向くように取り付けられる。この基台21は、2枚の板材で棒体13を挟み込んだ上で、支持ピン20の軸心回りに回動自在に支持する。
板材の中央には、貫通状の孔が上下に2つ設けられている。すなわち、板材の中央に設けられた2つの孔の中心を結ぶ線が、ブーム6の前後方向に対して略直交する方向を向いている。
【0033】
板材の下側に設けられた孔は、ブラケット19をブーム6に固定するための締結具22が取り付けられるものである。一方、板材の上側に設けられた孔は、棒体13をブーム6の上部で回動自在に支持する支持ピン20が挿入されるものである。
すなわち棒体13は、貫通孔の軸心と板材の下側に形成されている孔の軸心とを合わせられた貫通状の孔に支持ピン20が挿入されたブラケット19を介して、ブーム6の左右方向を向く支持ピン20の軸心回りに回動自在に支持されている。
【0034】
図示はしないが、ブラケット19には、起立状態とされた棒体13が倒れない、すなわち格納状態に戻ることを防ぐロック手段が配備されている。このロック手段としては、例えば起立状態とされた棒体13の屈曲部位に近接する位置にピンなどの部材を配備して、棒体13が回動方向に移動しないようにするとよい。また、このロック手段は、棒体13の格納状態のとき、棒体13が回動方向に移動しないようにロックすることも可能である。なお、このロック手段は、ボルト及びナットなど当業者常法のものが使用可能であり、特に限定はしない。
【0035】
一方で、
図2に示すように、棒体13の一方端(長片)15には、ステー17が配備されている。
ステー17は、索体16の両端部に備えられたフックを受け止めするフック受け具であり、ブーム6の側面視で、クレーン1の組立・解体作業を行う作業者の腰部近傍に来るように配備される。このステー17は、棒体13の起立状態において、一方方向を向けて固定されて配備されるものである。
【0036】
ステー17は、短尺で小径とされた円柱状の棒材を、U字状に湾曲させて、直線状に部位を棒体13の一方端15の外周面に取り付けて、リング形状とした部材である。ステー17は、湾曲部位が棒体13の径外方向、すなわちブーム6の前後方向に突出する状態で棒体13の外周面に、2つ取り付けられている。
つまり、U字状に湾曲されたステー17は、棒体13に配備された際に、その棒体13の長手方向軸心に対して交差する方向に突出して、その外周面に2つ取り付けられている。
【0037】
ステー17の向きは、棒体13の起立状態において、リング形状の内側を含む平面(リング面18)が、ブーム6の一方方向を向いている。
具体的には、
図2に示すように、1つのセグメントに着目した場合、ステー17a,17bは、ブーム6の側面視で、U字状に湾曲された湾曲部位が前方へ突出するように1つ配備され、且つ湾曲部位が後方へ突出するように1つ配備されている。このステー17a,17bは、リング面18がブーム6の左右方向を向いた状態で固定配備される。
[第1実施形態の作動態様]
以下に、上記した本実施形態のスタンション12の作動態様について、
図2を参照して説明する。
【0038】
本実施形態のスタンション12の使用を説明するに際しては、まず、作業現場にセグメントごとに搬送されて、トレーラやトラックの荷台などに載置された状態、つまりスタンション12の格納状態から始めることとする。
図2(a)に示すように、本実施形態のスタンション12は、棒体13が起立状態とならないように、ロック手段により、長片15の長手方向軸心がブーム6の前後方向を向いて、固定されている(棒体13の格納状態)。
【0039】
ブーム6の下部において、作業者は、棒体13が支持ピン20の軸心回りに回動自在となるように、ロック手段を解除する。
図2(b)に示すように、作業者は、ブーム6の上部に搭乗せずに、ブーム6の下部から棒体13の短片14(他方端側)を握って下方に引っ張り、棒体13を支持ピン20の軸心回りに回動させて、長片15(一方端側)を上方に持ち上げる。なお、短片14にロープなどの紐体を取り付けておき、その紐体を下方に引っ張って、長片15を起立させるようにしてもよい。
【0040】
そして、長手方向軸心が略垂直状態、すなわち起立状態となった棒体13を、ロック手段で固定する。この起立作業をすべてのセグメントごとに、ブーム6の上部に配設された棒体13に対して行う。
図2の(c)に示すように、棒体13の起立作業を終えると、作業者はブーム6の上部に搭乗してロープなどの索体16を張ってゆく。
【0041】
まず、ブーム6の1つのセグメントにおける後端部側の棒体(第1棒体13aとする)に配備されていて、湾曲部位が前方向を向くステー17aに、第1索体16aの両端部に備えられたフック(図示せず)を掛ける。次に、第1棒体13aと隣り合う棒体(第2棒体13bとする)に配備されていて、湾曲部位が後方向を向くステー17bに、もう一方のフックを掛けて第1索体16aを張る。
【0042】
続いて、第2棒体13bに配備されていて、湾曲部位が前方向を向くステー17aに、第2索体16bの両端部に備えられたフックを掛ける。次に、第2棒体13bと隣り合う棒体(第3棒体13cとする)に配備されていて、湾曲部位が後方向を向くステー17bに、もう一方のフックを掛けて、第2索体16bを張る。
このように、索体16を張る作業をすべてのセグメントごとに行って、クレーン1の組立・解体作業を行える状態とする。スタンション12は、索体16に作業者の腰部に取り付けられた安全帯がフックを介して掛けられる。
【0043】
一方で、本実施形態におけるスタンション12の起立状態から格納状態とする場合、フックを介して張られた索体16を各ステーからすべて取り外す。
そして、ブーム6の下部において、作業者は、棒体13が支持ピン20の軸心回りに回動自在となるように、ロック手段を解除する。
作業者は、ブーム6の下部から棒体13の短片14を握って上方に持ち上げて、棒体13を支持ピン20の軸心回りに回動させて、長片15を寝かせる。そして、長手方向軸心が略水平状態、すなわち格納状態となった棒体13を、ロック手段で固定する。この格納作業をすべてのセグメントごとに、ブーム6の上部に配設された棒体13に対して行う。
【0044】
このように、棒体13を屈曲形状とし、短片14(他方端)をブーム6の下部にいる作業者が握ることができる位置に配備しておくことで、ブーム6の上部に搭乗せずに、ブーム6の下部から容易且つ安全に、棒体13、すなわち長片15(一方端)を起立〜格納状態とすることができる。
[第2実施形態]
次に、上記した本実施形態のスタンション12における第2実施形態について、
図3を参照して説明する。
【0045】
なお、本実施形態のスタンション12は、作業者がブーム6の上部に搭乗せずに、ブーム6の下部から棒体13を立設するものであり、基本的な構成(棒体13、ステーなど)が第1実施形態(
図2参照)と同じであるので、詳細な説明は省略する。
しかしながら、
図3に示すように、本実施形態のスタンション12は、ブーム6の上部に配設されている全ての棒体13に関し、隣り合う棒体13a〜13cの一方端15(上端)同士が索体16により予め連結されている点が、第1実施形態と異なるものとなっている。加えて、ブーム6の1つのセグメントにおける後端部側の棒体である第1棒体13aが他方端14(短片の先端)にガイドローラ23(滑車)が取り付けられている点が、第1実施形態と異なる。
【0046】
具体的には、本実施形態のスタンション12は、1つのセグメントに着目した場合、ブーム6の最後端に第1棒体13aが配備され、ブーム6の最前端に第3棒体13cが配備されている。ブーム6の中途部の位置、言い換えれば、第1棒体13aと第3棒体13cとの間に、第2棒体13bが配備されている。その上で、第1棒体13aの一方端15に取り付けられ且つ湾曲部位が前方向を向くステー17aと、第2棒体13bの一方端15に取り付けられ且つ湾曲部位が後方向を向くステー17bとの間に、予め第1索体16aが掛け渡された状態で連結されている。
【0047】
また、第2棒体13bの一方端15に取り付けられ且つ湾曲部位が前方向を向くステー17aと、第3棒体13cの一方端15に取り付けられ且つ湾曲部位が後方向を向くステー17bとの間に、予め第2索体16bが掛け渡された状態で連結されている。
なお、本実施形態においては、ブーム6の上部に棒体13が3本配設されたスタンション12を一例として示したが、ブーム6の後端部側から上部の前端部側に配設されているすべての棒体13に、予め索体16が掛け渡された状態で連結される。
【0048】
一方で、第1棒体13aの一方端15に配備されていて、湾曲部位が後方向を向くステー17bには、引張索体24が取り付けられている。この引張索体24は、棒体13の格納状態において、第1棒体13aの他方端14に設けられているガイドローラ23により、吊下された状態である(
図3の1段目の図参照)。引張索体24が、ブーム6の下部にいる作業者に引っ張られると、引張索体24の張力がガイドローラ23にかかって短片14が下方に移動して、長片15(第1棒体13a)が持ち上げられる。
[第2実施形態の作動態様]
以下に、上記した本実施形態のスタンション12の作動態様について、
図3を参照して説明する。
【0049】
本実施形態のスタンション12の使用を説明するに際しては、まず、作業現場にセグメントごとに搬送されて、トレーラやトラックの荷台などに載置された状態、つまりスタンション12の格納状態から始めることとする。
図3の(a)に示すように、ブーム6の下部において、作業者は、長片15の長手方向軸心がブーム6の前後方向を向いて固定されているすべての棒体13を、支持ピン20の軸心回りに回動自在となるように、ロック手段を解除して、ブーム6の上部に搭乗せずに、ブーム6の下部から引張索体24を下方に引っ張る。
【0050】
図3(b)に示すように、作業者が引張索体24を引っ張ると、第1棒体13aの短片14が下方へ移動して、長片15が上方に持ち上げられる。すなわち、第1棒体13aは、支持ピン20の軸心回りに回動して、格納状態から起立状態に移行する。
このとき、第1棒体13aに隣接する第2棒体13bは、連結されている第1索体16aにより長片15が上方に持ち上げられる。また、第2棒体13bに隣接する第3棒体13cは、連結されている第2索体16bにより長片15が上方に持ち上げられる。つまり、第1棒体13aが引張索体24を介して起立させられると、索体16を通じて連結されているすべての棒体13b,13cも連動して起立させられる。
【0051】
図3(c)に示すように、長手方向軸心が略垂直状態、すなわち起立状態となった棒体13a〜13cを、ロック手段で固定する。
この起立作業をすべてのセグメントごとに、ブーム6の上部に配設された棒体13に対して行う。
図3(d)に示すように、セグメントごとの棒体13の起立作業を終えると、作業者はブーム6の上部に搭乗して、ブーム6の前端部側の棒体(第3棒体13c)の一方端15に取り付けられ且つ湾曲部位が前方向を向くステー17aに、前方に隣接する、すなわち隣り合う別のブーム6に配備されている引張索体24を取り付ける。
【0052】
一方で、本実施形態におけるスタンション12の起立状態から格納状態とする場合、引張索体24を隣り合うブーム6の前端部側の第3棒体13cのステーから取り外して、各ロック手段を解除する。棒体13は支持ピン20の軸心回りに回動自在となる。
作業者は、引張索体24を徐々戻して、第1棒体13aを寝かせてゆく。このとき、他の棒体13b,13cも連動して寝てゆく。長手方向軸心が略水平状態、すなわち格納状態となった棒体13を、ロック手段で固定する。この格納作業をすべてのセグメントごとに行う。
【0053】
なお、本実施形態においては、複数の索体16を用いて、複数の棒体13を連結することとしたが、1本の索体16を用いて複数の棒体13を連結してもよい。
本実施形態のスタンション12、すなわち複数の棒体13を予め索体16で連結しておいたスタンション12を用いれば、作業者がブーム6の下部から容易且つ安全に起立〜格納状態とすることができる。
[第2実施形態の変形例]
さらに、本実施形態のスタンション12における第2実施形態の変形例について、
図4を参照して説明する。
【0054】
図4に示すように、本変形例にかかるスタンション12は、ブーム6の上部の前端部側に配設されている棒体13に特徴があり、その棒体13に着目して説明する。
なお、本変形例のスタンション12は、基本的な構成が第2実施形態(
図3参照)と同じであるので、詳細な説明を省略する。
すなわち、本変形例にかかるスタンション12は、1つのセグメントに着目した場合、ブーム6の上部に複数配設された棒体13a〜13cのうち、最前端に配設されている第3棒体13c(引張索体24が取り付けられた第1棒体13aより、ブーム6の前後方向で最も遠い位置に配設された棒体)の一方端15に、第3棒体13cの長手方向軸心に対して交差する方向に突出する突出体25が設けられている。
【0055】
図4に示す如く、突出体25は、索体16とほぼ同じ太さで且つ長尺の棒材であって、第3棒体13cの一方端15に配備された湾曲部位が前方向を向くステー17aに、取り付けられている。突出体25の長さは、第3棒体13cと、隣接する別のブーム6に配設された第1棒体13aとの間隔と略同じとされている。
図4(a)に示すように、第3棒体13cの一方端15に取り付けられた突出体25は、格納状態のとき、垂下された状態となっている。すなわち、突出体25の長手方向軸心が、ブーム6の前後方向に対して、略直交する方向を向いた状態である。
【0056】
図4(b)、
図4(c)に示すように、突出体25は、連結された第2索体16bにより第3棒体13cが持ち上げられると、垂下状態から水平方向を向く状態へと移行する。すなわち、本変形例の突出体25は、第3棒体13c(すべての棒体13a〜13c)が起立状態にされると、手摺りとなる。
本変形例によれば、作業者がブーム6の上部に搭乗することなく、ブーム6の下部から容易且つ安全に、スタンション12を立設することができる。
【0057】
以上まとめると、本発明の移動式クレーンに備えられたスタンション12は、作業者が短片14(グリップ)を握って手動で操作可能であるので、地面やトレーラの荷台などブーム6の下部から、容易に棒体13の立設作業をすることができる。また、本発明のスタンション12は、簡易な構造であることから、製造コストも抑えることができる。
なお、今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0058】
例えば、本発明のスタンション12は、例示した移動式クレーン1(ラチスブーム式のクローラクレーン)の他に、様々な種類のクレーン、すなわち建設機械に備えることが可能な技術である。
また、本実施形態の棒体13においては、1つのパイプ材を屈曲させて形成したものを例示して説明するが、棒体13として用いる材料などに関しては、当業者常法のものであり、特に限定はしない。例えば、長尺及び短尺の2つのパイプ材(中実の棒材でもよい)を屈曲形状に組み合わせたものであってもよい。
【0059】
また、本実施形態の説明においては、ステーにフックで掛けて索体16を張るようにしたが、索体16をステーに直接縛り付けて張るようにもよい。
また、ステーにおいては、棒材をU字状に湾曲させたものとして説明したが、そのU字形状及び部材は一例を示したものであり、索体16乃至は索体16に備えられたフックを受け止めできる形状及び部材であれば、特に限定はしない。
【0060】
今回開示された各実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。