(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図21はアウトサイドハンドル装置を示している。このアウトサイドハンドル装置は、サイドドアである車両ドアのアウタパネルの車外側面に回転可能に支持されたアウトサイドハンドルを備えている。
【0003】
アウタパネルには貫通孔が形成されている。アウタパネルの車内側面には、貫通孔と対向する軸受部材(図示略)が固定されている。
アウトサイドハンドルの長手方向の一端(
図21の左側端部。図示略)は、貫通孔を車内方向に貫通しかつ軸受部材によって上下方向の回転軸まわりに回転可能に支持されている。アウトサイドハンドルは車両ドアに対して、この回転軸を中心に初期位置と、初期位置よりも車外側に位置する操作位置と、の間を回転可能である。さらにアウトサイドハンドルには、車内側に向かって延びる押圧アームが設けられている。
【0004】
さらにアウタパネルにはベルクランク支持部材が装着されている。ベルクランク支持部材の一部はアウタパネルの車外側に位置しており、ベルクランク支持部材の残りの一部はアウタパネルの車内側に位置している。
【0005】
ベルクランク支持部材には、ベルクランク支持部材を車両ドアの厚み方向(車内外方向)に貫通するアーム用貫通孔が形成されている。
アウトサイドハンドルの押圧アームは、ベルクランク支持部材のアーム用貫通孔を車内外方向(車両ドアの厚み方向)に相対移動可能に貫通している。
【0006】
図21に示すように、アーム用貫通孔の回転軸側の内面及び回転軸と反対側の内面の車内外方向の中央部には案内突起がそれぞれ突設されている。これらの案内突起には、押圧アームの回転軸側面と回転軸と反対側面がそれぞれスライド自在に接触している。そのため、アウトサイドハンドルが初期位置と操作位置との間を回転するとき、押圧アームは各案内突起によって案内されながらアーム用貫通孔(ベルクランク支持部材)に対して車内外方向に相対移動する。
【0007】
ベルクランク支持部材には、アウタパネルの車内側に位置するベルクランクが回転可能に支持されている。ベルクランクは、初期位置と操作位置との間を回転可能であり、バネによって初期位置側へ回転付勢されている。
図21に示すようにベルクランクの一部は、アウトサイドハンドルの押圧アームと連係している。そのため、ベルクランクが初期位置に位置するときアウトサイドハンドルが初期位置に位置し、ベルクランクが操作位置に位置するときアウトサイドハンドルが操作位置に位置する。
【0008】
車両ドアは周知のロック装置を内蔵している。このロック装置は、車両ドアを車体に対して閉状態に保持するラッチ状態と、車両ドアが車体に対して回転するのを許容するアンラッチ状態と、に移行可能である。
ベルクランクとロック装置は連結レバーを介して互いに連係している。
【0009】
アウトサイドハンドルが初期位置に位置するときベルクランクが初期位置に位置し、ロック装置はラッチ状態となる。一方、アウトサイドハンドルが操作位置に位置するときベルクランクが操作位置に位置し、ロック装置がアンラッチ状態となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示す車両ドア10は、車体(図示略)に対して上下方向の回転軸まわりに回転可能として支持されており、車体の側面に形成された開口部を開閉可能である。即ち、車両ドア10はサイドドアである。
車両ドア10の下半部を構成するドア本体11の車外側面は金属板からなるアウタパネル12により構成されている。
車両ドア10の内部には、その一部が車両ドア10の後端面において露出するロック装置13が設けられている。このロック装置13は、ラッチやポールを備える周知の構造である。ロック装置13は、車両ドア10の車内側面を構成するトリム(図示略)の上端面に上下方向にスライド自在に設けられたロックノブ14と連係している。さらにロック装置13は、アウタパネル12に回転可能に支持されたアウトサイドハンドル21を具備するアウトサイドハンドル装置20と連係している。
【0022】
周知のように、車両ドア10が車体の開口部を閉じている場合にロックノブ14がロック位置(図示略)に位置するときは、ロック装置13はラッチが車体に固定されたストライカ(図示略)を把持するラッチ状態となる。この場合は、アウトサイドハンドル21を初期位置(
図1、
図2及び
図7に実線で示す位置)から回転操作しても、ロック装置13はラッチ状態を維持する。一方、ロックノブ14がアンロック位置(
図1の位置)に位置する場合は、アウトサイドハンドル21を初期位置から車外側へ回転させて操作位置(
図7に仮想線で示す位置)へ移動させると、ロック装置13はラッチがストライカを解放するアンラッチ状態となる。従って、車両ドア10を車体に対して開方向に回転させることが可能になる。
【0023】
続いてアウトサイドハンドル装置20の詳しい構造について説明する。
アウトサイドハンドル装置20は大きな構成要素としてアウトサイドハンドル21、回転支持部材30、ベルクランク支持部材40、パッド57、ベルクランク60、連係レバー70、捩じりコイルバネ75及び回転支持ピン79を具備している。
【0024】
アウトサイドハンドル21は前後方向に延びる長尺状部材である。アウトサイドハンドル21は樹脂製であり、図示を省略した成形型を用いて成形される。さらにアウトサイドハンドル21の表面全体にはメッキが施されている。
アウトサイドハンドル21は、平面視略U字形をなす本体部22と、本体部22の後端部から車内側に向かって延びる押圧アーム23(押圧部)と、本体部22の前端部から車内側に向かって延びる回転支持アーム25と、を一体的に備えている。本体部22の車外側面は曲面によって構成されている。押圧アーム23の上面には係合溝24が凹設されている。回転支持アーム25の平面形状は略L字形である。回転支持アーム25には、回転支持アーム25を上下方向に貫通する回転軸27が固定されている。
【0025】
押圧アーム23の水平面に沿う断面形状は
図7及び
図8に示す通りである。これらの図面から明らかなように押圧アーム23の平面形状は略円弧形である。押圧アーム23の前面23aは回転軸27を中心とする小径円弧に沿って形成されている。同様に、押圧アーム23の後面23bは回転軸27を中心とする大径円弧に沿って形成されている。そのため、後面23b(大径円弧)の曲率は前面23a(小径円弧)の曲率より小さい(曲率半径が大きい)。
押圧アーム23の横断面形状は
図13に示す通りである。
図13から明らかなように押圧アーム23の横断面形状は略矩形である。押圧アーム23の前面23a及び後面23bの上下方向の中央部には、押圧アーム23の長手方向に沿って延びかつ突出量が微小な線形突条であるパーティングラインPL1が形成されている。このパーティングラインPL1は、上記成形型を利用した押圧アーム23の成形時に押圧アーム23の表面に形成されるものである。
さらに押圧アーム23の車内側端部の前方の角部23c及び後方の角部23dの断面形状はいずれも略円弧形である。但し、その曲率は角部23cより角部23dの方が大きい。
【0026】
回転支持部材30は、平板状のベース板31と、ベース板31から前方に延びる支持部33と、を一体的に備えている。
ベース板31には雌ネジ孔32が設けられている。
支持部33は、共に略水平な天井板34及び底板35と、天井板34及び底板35の車内側縁部どうしを接続する側面板36と、を有している。天井板34及び底板35には互いに同軸をなす回転支持孔37がそれぞれ穿設されている。さらに支持部33の前部には逃がし孔38が形成されている。
【0027】
アウトサイドハンドル21と回転支持部材30は、回転支持部材30の上下の回転支持孔37に対してアウトサイドハンドル21の回転軸27の上下両端部を回転可能に嵌合することにより互いに一体化する。
アウトサイドハンドル21と回転支持部材30が一体化すると、アウトサイドハンドル21は回転軸27及び回転支持孔37を中心にして回転支持部材30に対して相対回転可能となる。具体的には、
図1、
図2及び
図7に実線で示す初期位置と、
図7に仮想線で示す操作位置と、の間を水平方向に回転可能となる。さらに
図7に示すように、回転支持アーム25の前端部が逃がし孔38を通り抜け、本体部22の前端部の車内側面がベース板31と対向する。
【0028】
樹脂製の一体成形品であるベルクランク支持部材40(支持部材)は、中空状の本体部41を備えている。ベルクランク支持部材40の表面全体にはメッキが施されている。本体部41の車外側面は曲面によって構成されている。本体部41の車外側面の前部にはハンドル受容凹部41aが形成されている。
本体部41の車内側面の前部には前後一対の支持片42、43が車内側に向けて突設されている。前後の支持片42、43には互いに同軸をなす断面円形のピン支持孔44が穿設されている。
本体部41の車内側面の前部には、支持片42、43の直下に位置しかつ断面略矩形をなすアーム受容部46が車内側に向けて突設されている。さらにベルクランク支持部材40にはアーム受容部46を車幅方向(車内外方向)に貫通するアーム用貫通孔47(貫通孔)が形成されている。さらにアーム受容部46の上部と下部にはそれぞれ切欠部46a、46bが形成されている。
【0029】
図6及び
図9乃至
図13等に示すように、アーム用貫通孔47の断面形状は略矩形である。アーム用貫通孔47の内面の前面は、回転軸27の軸線方向に見たときに当該内面の中で最も回転軸27側に位置する近距離面47aを構成している。一方、
図13及び
図15に示すように、アーム用貫通孔47の内面の後面は、回転軸27の軸線方向に見たときに当該内面の中で最も回転軸27から離れた位置に位置しかつ近距離面47aと前後方向に対向する遠距離面47bを構成している。
アーム用貫通孔47の近距離面47aには一対の近距離側案内突条49が上下に並べて突設されている。また、アーム用貫通孔47の遠距離面47bには一対の遠距離側案内突条50が上下に並べて突設されている。上側の近距離側案内突条49と遠距離側案内突条50は同じ高さに位置しており、下側の近距離側案内突条49と遠距離側案内突条50は同じ高さに位置している。
図8及び
図18(
図18は模式図である)から明らかなように、上下の近距離側案内突条49の近距離面47aからの遠距離面47b側への突出量は、車外側から車内側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。そして上下の近距離側案内突条49の車外側端部近傍が案内突起49a(近距離側案内突起)を構成している。
図8及び
図18から明らかなように、上下の遠距離側案内突条50の遠距離面47bからの近距離面47a側への突出量は、車内側から車外側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。そして上下の遠距離側案内突条50の車内側端部近傍が案内突起50a(遠距離側案内突起)を構成している。
【0030】
本体部41の車内側面の支持片43より後方に位置する部位は中空形状である。本体部41の前後方向の中央部の内面には円筒状の円筒部53が車内側に向けて突設されている。円筒部53の車内側端面には雌ネジ孔53aが形成されている。
さらにベルクランク支持部材40の車内側面の後部の内面には弾性変形可能な係止突起55が車内側に向けて突設されている。
【0031】
ベルクランク支持部材40の本体部41の車内側面には樹脂製の薄板状部材であるパッド57が固定されている(
図2、
図6、7参照)。
パッド57は複数の孔を備えている。パッド57は、ベルクランク支持部材40の支持片42、43、アーム受容部46、係止突起55等の各突部を各孔を通してパッド57の車内側に突出させながら、本体部41の車内側面を塞いでいる。
さらにパッド57の前端部には係止突起58が突設されている。
【0032】
互いに一体化したベルクランク支持部材40及びパッド57とアウトサイドハンドル21とは、押圧アーム23をアーム用貫通孔47に対して車外側から挿入しかつ本体部22の後端部をハンドル受容凹部41a内に位置させることにより互いに一体化される。
アウトサイドハンドル21とベルクランク支持部材40が一体化しかつアウトサイドハンドル21が回転支持部材30に対して初期位置に位置するとき、
図1、
図2及び
図7の実線で示すように、本体部22の曲面からなる車外側面が本体部41の曲面からなる車外側面と連続する。
【0033】
ベルクランク60は、本体部61と、被押圧突起66と、レバー支持部68と、を一体的に備えている。
図4及び
図5(
図4及び
図5ではベルクランク60の一部を破断して示している)に示すように本体部61は、前後方向に延びる円筒部62を有している。円筒部62の内部は本体部61全体を前後方向に貫通するピン挿入孔63となっている。
被押圧突起66は、本体部61の下端部から車内側に向かって延びている。
レバー支持部68にはレバー支持凹部69が凹設されている。
【0034】
図6に示す連係レバー70は、その基端部(下端部)がベルクランク60のレバー支持凹部69に固定状態で嵌合している。
【0035】
捩じりコイルバネ75は一対の係止片76、77を備えている。
捩じりコイルバネ75はベルクランク60の円筒部62の外周面に装着されており、一方の係止片76はベルクランク60に係止されている。
【0036】
回転支持ピン79は、鍔部80と、鍔部80より小径の軸部81とを一体的に備えている。
【0037】
互いに一体化されたベルクランク60、連係レバー70及び捩じりコイルバネ75はベルクランク支持部材40に装着されている。支持片42と支持片43の間の空間に本体部61が挿入され、さらに
図2、
図5、
図7及び
図8に示すように被押圧突起66が押圧アーム23の係合溝24に嵌合している。捩じりコイルバネ75の係止片77はベルクランク支持部材40に係止されている(
図5参照)。係止片77をベルクランク支持部材40に係止させると、捩じりコイルバネ75が弾性変形する。さらに回転支持ピン79の軸部81が支持片42のピン支持孔44、本体部61のピン挿入孔63及び支持片43のピン支持孔44に挿入されている。従って、ベルクランク60、連係レバー70及び捩じりコイルバネ75の一体物は、支持片42及び支持片43のピン支持孔44並びに回転支持ピン79を中心にしてベルクランク支持部材40に対して相対回転可能である。
【0038】
上述のようにベルクランク60の被押圧突起66がアウトサイドハンドル21の押圧アーム23の係合溝24に嵌合するため、アウトサイドハンドル21の回転動作とベルクランク60(ベルクランク60、連係レバー70及び捩じりコイルバネ75の一体物)の回転動作は連動する。即ち、アウトサイドハンドル21が初期位置に位置するときにベルクランク60は
図2及び
図6に示す初期位置に位置し、アウトサイドハンドル21が操作位置に位置するときにベルクランク60は図示を省略した操作位置に位置する。アウトサイドハンドル21が初期位置と操作位置との間を回転するとき、前面23aと後面23bが案内突起49aと案内突起50aとによってそれぞれ移動案内されることにより、押圧アーム23がアーム受容部46に対して車内外方向に進退する。さらにアウトサイドハンドル21が操作位置に移動すると、押圧アーム23の角部23dが案内突起50aによって支持される。
さらに捩じりコイルバネ75の回転付勢力は、ベルクランク60を初期位置側に付勢する力である。そのため、アウトサイドハンドル21に対して捩じりコイルバネ75の付勢力以外の外力を及ぼさないとき、アウトサイドハンドル21及びベルクランク60は初期位置に保持される。
【0039】
このようにしてアウトサイドハンドル21、回転支持部材30、ベルクランク支持部材40、パッド57、ベルクランク60、連係レバー70、捩じりコイルバネ75及び回転支持ピン79をアッセンブリすることによりアウトサイドハンドル装置20が完成する。
【0040】
アッセンブリされたアウトサイドハンドル装置20はアウタパネル12に対して装着される。
図1、
図2及び
図7に示すようにアウタパネル12には凹部構成部12aが形成されている。凹部構成部12aの車外側には凹部が形成されている。さらにアウタパネル12には第一貫通孔12b、第二貫通孔12c及び第三貫通孔12dがそれぞれ穿設されている。さらにアウタパネル12には円形貫通孔12e、12fが穿設されている。
【0041】
アウトサイドハンドル装置20をアウタパネル12に対して装着するには、まずアウトサイドハンドル装置20をアウタパネル12に対して車外側から接近させ、
図7に示すように、回転支持アーム25の前端部を第一貫通孔12bを通してアウタパネル12の車内側に位置させる。
さらに
図7に示すように、押圧アーム23、アーム受容部46、ベルクランク60、捩じりコイルバネ75及び回転支持ピン79を第二貫通孔12cを通してアウタパネル12の車内側に位置させ、係止突起58を第二貫通孔12cの前縁部に係合させる。
【0042】
さらに
図7に示すように、ベルクランク支持部材40の係止突起55を第三貫通孔12dを通してアウタパネル12の車内側へ移動させ、さらに係止突起55を弾性変形させながら第三貫通孔12dの後縁部に係止させる。このようにしてベルクランク支持部材40及びパッド57を第二貫通孔12c及び第三貫通孔12dに対して装着すると、アウトサイドハンドル装置20全体がアウタパネル12に対して仮止めされる。
【0043】
アウトサイドハンドル装置20がアウタパネル12に仮止めされると、回転支持部材30の雌ネジ孔32が円形貫通孔12eと対向しかつベルクランク支持部材40の雌ネジ孔53aが円形貫通孔12fと対向する。
アウタパネル12の車内側からネジ85を円形貫通孔12eに挿入しかつネジ85を雌ネジ孔32に螺合させると、ベース板31がアウタパネル12の車外側面に接触した状態で回転支持部材30がアウタパネル12に対して固定される。また、アウタパネル12の車内側からネジ86を円形貫通孔12fに挿入しかつネジ86を雌ネジ孔53aに螺合させると、パッド57がアウタパネル12の車外側面に接触した状態でベルクランク支持部材40及びパッド57がアウタパネル12に対して固定される。
【0044】
このようにしてアウトサイドハンドル装置20をアウタパネル12に固定したら、続いて図示を省略した金属製ロッドを連係レバー70とロック装置13に対してそれぞれ接続する。即ち、ロッドを介してロック装置13と連係レバー70を連係する。
ベルクランク60が初期位置に位置するときはロック装置13はラッチ状態となる。その一方で、ロックノブ14をアンロック位置に位置させた上でアウトサイドハンドル21を操作位置まで回転させることによりベルクランク60を操作位置に移動させるとロック装置13がアンラッチ状態となる。
【0045】
さらに、アウトサイドハンドル装置20をアウタパネル12に固定すると、
図8及び
図18に示すように、回転軸27を中心とする押圧アーム23の前面23a(前記小径円弧)がアーム用貫通孔47の近距離側案内突条49の案内突起49aにスライド可能に接触する。図示するように、近距離側案内突条49の案内突起49a以外の部位は前面23a(小径円弧)の内周側(前方)に位置している。また、アウトサイドハンドル装置20をアウタパネル12に固定すると、回転軸27を中心とする押圧アーム23の後面23b(前記大径円弧)がアーム用貫通孔47の遠距離側案内突条50の案内突起50aにスライド可能に接触する。図示するように、遠距離側案内突条50の案内突起50a以外の部位は後面23b(大径円弧)の外周側(後方)に位置している。
従って、アウトサイドハンドル21が初期位置と操作位置との間を回転するとき、押圧アーム23はアーム受容部46の近距離側案内突条49の案内突起49a及び遠距離側案内突条50の案内突起50aによって案内されながらアーム受容部46(本体部41)に対して車内外方向に相対移動する。しかも、押圧アーム23の前面23aと後面23bがそれぞれ二本の近距離側案内突条49(案内突起49a)と遠距離側案内突条50(案内突起50a)によって支持されているので、近距離側案内突条49(案内突起49a)と遠距離側案内突条50(案内突起50a)が一本ずつの場合と比べて、近距離側案内突条49(案内突起49a)と遠距離側案内突条50(案内突起50a)による押圧アーム23の支持状態が安定する。
【0046】
上述したようにベルクランク支持部材40は樹脂製の一体成形品である。そのためベルクランク支持部材40は
図14乃至
図18に示す成形型90(金型)を利用して成形される。成形型90は、図示を省略した射出成形機の射出シリンダのノズルに接続している。
【0047】
成形型90は、互いに水平方向に対向しかつ水平方向に相対移動可能な第一成形型91と第二成形型95とを備えている。
【0048】
第一成形型91の水平方向に対して直交する平面である接触平面92には成形用凹部93が形成されている。さらに成形用凹部93の内面からは成形用凸部94が第二成形型95側に向かって突出している。図示するように、成形用凸部94は接触平面92よりも第二成形型95側へ突出している。成形用凸部94は
図14及び
図16乃至
図18に示す形状であり、その基端部を構成する広幅部94aと、その先端部を構成する狭幅部94bと、を有している。さらに
図16乃至
図18に示すように、成形用凸部94の外面には互いに平行をなしながら水平方向に延びる二本の案内突条成形用溝94cが凹設されている。図示するように案内突条成形用溝94cの第二成形型95側端部は、成形用凸部94の第二成形型95側端面において開放している。さらに案内突条成形用溝94cの凹み量は、第二成形型95と反対側から第二成形型95側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。
【0049】
第二成形型95の水平方向に対して直交する平面である接触平面96には成形用凸部97が突設されている。成形用凸部97は成形用凹部93と対応する形状である。接触平面96には成形用凹部98が凹設されている。さらに成形用凹部98の内面には成形用凸部99が第一成形型91側に向かって突設されている。成形用凸部99は
図14及び
図16乃至
図18に示す形状であり、その基端部を構成する広幅部99aと、その先端部を構成する狭幅部99bと、を有している。さらに
図16及び
図18に示すように、成形用凸部99の外面には互いに平行をなしながら水平方向に延びる二本の案内突条成形用溝99cが凹設されている。図示するように案内突条成形用溝99cの第一成形型91と反対側の端部は、成形用凸部99の第一成形型91と反対側の端面より第一成形型91側において終端している。さらに案内突条成形用溝99cの凹み量は、第一成形型91側から第一成形型91と反対側に向かうにつれて徐々に小さくなっている。
図15乃至
図17に示すように成形用凸部94と成形用凸部99の幅(
図15における上下寸法)は互いに同一である。さらに広幅部99aには成形用凹部98の内面(第二成形型95の本体部)に接続する接続部100が一対として突設されている。
【0050】
第一成形型91と第二成形型95を閉じると(型締めすると)、
図14、
図17及び
図18に示すように第一成形型91の成形用凸部94(狭幅部94b)の第二成形型95側端面が成形用凹部98の内面に接触する。さらに、第二成形型95の成形用凸部99(狭幅部99b)の第一成形型91側の端面が成形用凹部93の内面に接触する。また、成形用凸部94(広幅部94a、狭幅部94b)と成形用凸部99(広幅部99a、狭幅部99b)の互いの対向面どうしが接触する。さらに第一成形型91と第二成形型95との間の隙間(例えば、成形用凹部93と成形用凸部97との間、成形用凹部98と成形用凸部94との間、案内突条成形用溝94cなど)にはキャビティが形成される。
【0051】
第一成形型91と第二成形型95を閉じた状態で上記キャビティに射出シリンダから熱可塑性の溶融樹脂を射出すると、溶融樹脂がキャビティ全体に流れ込む。
成形型90を冷却してキャビティ内で樹脂を固化させた後に、第一成形型91と第二成形型95を互いに離間する方向に移動させて成形型90を型開きすると、キャビティ内で成形された樹脂成形品であるベルクランク支持部材40が得られる。
図14、
図15及び
図18に示したように、成形用凸部94及び成形用凸部99の外周部に形成されたキャビティによってアーム受容部46が形成され、かつ、一対の接続部100によって切欠部46a、46bが形成される。さらに、一対の案内突条成形用溝94cによって一対の近距離側案内突条49が形成され、かつ、一対の案内突条成形用溝99cによって一対の遠距離側案内突条50が形成される。
【0052】
図17に示すように、第一成形型91と第二成形型95を閉じると第一成形型91の外形線の一部と第二成形型95の外形線の一部どうしが互いに線接触する(
図17の太線部を参照)。
そしてアーム受容部46の表面には、この外形線どうしが線接触した部位によって、突出量が微小な線形突条であるパーティングラインPL2が形成される(
図8乃至
図12、
図14、及び
図18の太線部を参照)。これらの各図から明らかなように、パーティングラインPL2は近距離側案内突条49の案内突起49a及び遠距離側案内突条50の案内突起50aを避けながらアーム受容部46の表面に形成されている。
【0053】
従って、前面23aと後面23bが近距離側案内突条49の案内突起49aと遠距離側案内突条50の案内突起50aとによってそれぞれ案内されながら押圧アーム23が初期位置と操作位置との間を回転するときに、前面23aと後面23bがアーム受容部46のパーティングラインPL2(の表面に施されたメッキ)に接触することがない。さらに
図13に示すように、押圧アーム23の前面23a及び後面23bのパーティングラインPL1の上下に一対の近距離側案内突条49(案内突起49a)と一対の遠距離側案内突条50(案内突起50a)がそれぞれ接触するので、案内突起49aと案内突起50aはパーティングラインPL1と干渉しない。そのため、押圧アーム23はベルクランク支持部材40(アーム受容部46)に対して初期位置と操作位置との間を円滑に相対移動可能である。さらに押圧アーム23が移動(回転)するときに、押圧アーム23(パーティングラインPL1)とアーム受容部46(パーティングラインPL2)との間で異音が発生するおそれを無くすことが可能である。
【0054】
さらにベルクランク支持部材40では、近距離側案内突条49の突出量を車外側から車内側に向かうにつれて徐々に大きくした上で車外側端部近傍に案内突起49aを形成し、かつ、遠距離側案内突条50の突出量を車内側から車外側に向かうにつれて徐々に大きくした上で車内側端部近傍に案内突起50aを形成している。そのため、
図19に示す比較例と比べて以下の利点がある。
図19の比較例は、近距離側案内突条49’の突出量を車内側から車外側に向かうにつれて徐々に大きくしかつ遠距離側案内突条50’の突出量を車外側から車内側に向かうにつれて徐々に大きくした例である。この場合の第一成形型91’と第二成形型95’は図示の断面形状となる。この例ではパーティングラインPL2’は
図19に示した位置に形成される。そのため、パーティングラインPL2’(の表面に施されたメッキ)と押圧アーム23(前面23a)との干渉を避けるべく、案内突起49a’を近距離側案内突条49’の車内側端部近傍に形成している。
図19の比較例では本来、遠距離側案内突条50’の車内側端部に形成されるパーティングラインPL2’(の表面に施されたメッキ)と押圧アーム23(後面23b)との干渉を避けるために、案内突起50a’を遠距離側案内突条50’の車外側端部近傍に形成したいところである。しかし、遠距離側案内突条50’の傾斜方向と後面23bの形状(後面23bを構成する大径円弧の中心である回転軸27の位置)とに起因して、(後面23bが接触するように)案内突起50a’を遠距離側案内突条50’の車外側端部近傍に形成することができない。そのため、
図19に示すように、案内突起50a’を遠距離側案内突条50’の車内側端部に接近した位置に形成している。しかし、遠距離側案内突条50’の車内側端部にはパーティングラインPL2’が形成されているため、案内突起50a’と遠距離側案内突条50’のパーティングラインPL2’との距離が近くなっている。換言すると、押圧アーム23の後面23bが遠距離側案内突条50’のパーティングラインPL2’に接触し易くなっている。そのため、例えば経年変化によって近距離側案内突条49’や遠距離側案内突条50’の形状が初期形状(設計形状)から変化したときに、押圧アーム23の後面23bが遠距離側案内突条50’のパーティングラインPL2’(の表面に施されたメッキ)に接触するおそれがある。
これに対して本実施形態では、遠距離側案内突条50の傾斜方向と後面23bの形状(後面23bを構成する大径円弧の中心である回転軸27の位置)とに起因して、(後面23bが接触するように)案内突起50aを遠距離側案内突条50の車内側端部近傍に形成することが可能である。換言すると、遠距離側案内突条50のパーティングラインPL2と案内突起50aとの距離が長くなる位置に案内突起50aを形成することが可能である。従って、例えば経年変化によって近距離側案内突条49や遠距離側案内突条50の形状が初期形状(設計形状)から変化しても、押圧アーム23の後面23bが遠距離側案内突条50のパーティングラインPL2に接触するおそれは小さい。
【0055】
なお
図20に示す比較例の断面形状の第一成形型91’’と第二成形型95’’とを用いれば、近距離側案内突条49’の車内側端部にパーティングラインPL2’を形成した上で近距離側案内突条49’の車外側端部近傍に案内突起49a’を形成し、かつ、遠距離側案内突条50’の車外側端部にパーティングラインPL2’を形成した上で遠距離側案内突条50’の車内側端部近傍に案内突起50a’を形成することが可能である。
しかし
図20から明らかなように、この場合は第一成形型91’’と第二成形型95’’を成形した成形品(ベルクランク支持部材40)に対して型抜きできない。
そのため、この比較例はベルクランク支持部材40を実質的に成形できず実用性がない。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。
例えばサイドドア以外の車両ドア(例えばバックドア)に本発明を適用してもよい。
【0057】
またスライド式の車両ドアに本発明を適用してもよい。
【0058】
アーム受容部46に設ける近距離側案内突条49と遠距離側案内突条50の数はそれぞれ一つであってもよい。
また、アーム受容部46から近距離側案内突条49と遠距離側案内突条50との一方を省略してもよい。
【0059】
案内突起49a、50aの位置は、近距離側案内突条49と遠距離側案内突条50のパーティングラインPL2と反対側の端部近傍である必要はない。但し、案内突起49a、50aが設けられた案内突条のパーティングラインPL2から、案内突起49a、50aをできる限り遠ざけて案内突条に設けるのが好ましい。
【0060】
回転支持部材30とベルクランク支持部材40を一体化して一つの部材として構成してもよい。
【0061】
アウタパネル12の車内側面に補強板(固定部材)を固定し、この補強板にベルクランク支持部材40を固定してもよい。即ち、ベルクランク支持部材40をアウタパネル12に対して間接的に固定してもよい。
さらに、この補強板(支持部材)を成形型を利用して成形した樹脂製品とし、この補強板に押圧アーム23が相対移動可能に貫通するアーム用貫通孔(貫通孔)を形成し、さらにアーム用貫通孔の内周面に近距離面、遠距離面、近距離側案内突条及び遠距離側案内突条を形成してもよい。この場合は、補強板の表面に形成されるパーティングラインの位置を、近距離側案内突条(案内突起)及び遠距離側案内突条(案内突起)から避けた位置に形成する。なお、この場合はベルクランク支持部材40に相当する部材は、押圧アーム23が貫通するアーム用貫通孔を具備しない。