(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリップ、シャフト及びヘッドを有するゴルフクラブをスイングしてゴルフボールを打撃したときの前記ヘッドのフェース面上における打点を推定する打点推定装置であって、
前記グリップ及び前記シャフトの少なくとも一方に取り付けられた角速度センサ及び加速度センサの少なくとも一方から出力される時系列のセンサデータを取得する取得部と、
インパクト後の初期の期間を含む分析期間における前記センサデータから、インパクトにより生じる初期の応力波の特性値として、前記フェース面に概ね平行な平面内に含まれる第1軸周りの角速度の第1特性値、及び前記フェース面に概ね平行な前記平面内に含まれ、前記第1軸に実質的に直交する第2軸周りの角速度の第2特性値を算出する算出部と、
前記第1特性値及び前記第2特性値に応じて、前記フェース面上における前記打点を二次元的に推定する推定部と
を備え、
前記分析期間は、インパクトから遅くとも0.005秒後までの期間であり、
前記推定部は、前記第1特性値及び前記第2特性値を説明変数とし、前記フェース面上の第1方向の打点を目的変数とする所定の重回帰式に基づいて、前記第1方向の前記打点を推定し、前記第1特性値及び前記第2特性値を説明変数とし、前記第1方向に実質的に直交する前記フェース面上の第2方向の打点を目的変数とする別の所定の重回帰式に基づいて、前記第2方向の前記打点を推定する、
打点推定装置。
グリップ、シャフト及びヘッドを有するゴルフクラブをスイングしてボールを打撃したときの前記ヘッドのフェース面上における打点を推定する打点推定プログラムであって、
前記グリップ及び前記シャフトの少なくとも一方に取り付けられた角速度センサ及び加速度センサの少なくとも一方から出力される時系列のセンサデータを取得するステップと、
インパクト後の初期の期間を含む分析期間における前記センサデータから、インパクトにより生じる初期の応力波の特性値として、前記フェース面に概ね平行な平面内に含まれる第1軸周りの角速度の第1特性値、及び前記フェース面に概ね平行な前記平面内に含まれ、前記第1軸に実質的に直交する第2軸周りの角速度の第2特性値を算出するステップと、
前記第1特性値及び前記第2特性値に応じて、前記フェース面上における前記打点を二次元的に推定するステップと
をコンピュータに実行させ、
前記分析期間は、インパクトから遅くとも0.005秒後までの期間であり、
前記推定するステップは、前記第1特性値及び前記第2特性値を説明変数とし、前記フェース面上の第1方向の打点を目的変数とする所定の重回帰式に基づいて、前記第1方向の前記打点を推定し、前記第1特性値及び前記第2特性値を説明変数とし、前記第1方向に実質的に直交する前記フェース面上の第2方向の打点を目的変数とする別の所定の重回帰式に基づいて、前記第2方向の前記打点を推定することを含む、
打点推定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るゴルフスイング時の打点推定装置、方法及びプログラムについて説明する。
【0023】
<1.分析システムの全体構成>
図1及び
図2に、本実施形態に係る打点推定装置である分析装置2を備えるスイング分析システム100の全体構成を示す。分析装置2は、ゴルフスイングを分析する装置である。より具体的には、分析装置2は、ゴルファー7がゴルフクラブ4をスイングしてゴルフボール43を打撃したときの、ヘッド41のフェース面41a(
図6参照)上におけるゴルフボール43の打点(衝突位置)を推定する機能を有している。分析装置2により推定された打点の情報は、例えば、ゴルフの練習時にゴルファー7がどれだけスイートエリアでボール43を捉えられているのか等を把握するのに使用することができる。或いは、ゴルフクラブ4のフィッティングを支援する用途でも使用することができる。分析の対象となるデータの収集は、ゴルフクラブ4のシャフト40に取り付けられたセンサユニット1により行われ、分析装置2は、このセンサユニット1とともに、スイング分析システム100を構成する。
【0024】
以下、センサユニット1及び分析装置2の構成について説明した後、ゴルフスイングの分析処理の流れについて説明する。
【0025】
<1−1.センサユニットの構成>
センサユニット1は、
図1及び
図3に示すとおり、ゴルフクラブ4のシャフト40においてグリップ42の近傍に取り付けられており、当該取り付け位置の挙動、すなわち、凡そのグリップ42の挙動を計測する。本実施形態に係るセンサユニット1は、着脱自在に構成されており、任意のゴルフクラブ4に取り付けることができる。なお、ゴルフクラブ4は、一般的なゴルフクラブであり、シャフト40と、シャフト40の一端に設けられたヘッド41と、シャフト40の他端に設けられたグリップ42とから構成される。センサユニット1は、スイング動作の妨げとならないよう、小型且つ軽量に構成されている。
図2に示すように、本実施形態に係るセンサユニット1には、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13が搭載されている。また、センサユニット1には、これらのセンサ11〜13から出力されるセンサデータを外部の分析装置2に送信するための通信装置10も搭載されている。なお、本実施形態では、通信装置10は、スイング動作の妨げにならないように無線式であるが、ケーブルを介して有線式に分析装置2に接続するようにしてもよい。
【0026】
加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13はそれぞれ、xyz局所座標系における加速度、角速度及び地磁気を計測する。より具体的には、加速度センサ11は、x軸、y軸及びz軸方向の加速度a
x,a
y,a
zを計測する。角速度センサ12は、x軸、y軸及びz軸周りの角速度ω
x,ω
y,ω
zを計測する。地磁気センサ13は、x軸、y軸及びz軸方向の地磁気m
x,m
y,m
zを計測する。これらのセンサデータは、所定のサンプリング周期Δtの時系列データとして取得される。サンプリング周波数(1/Δt)は、5kH以上であることが好ましく、10kH以上であることがさらに好ましい。なお、xyz局所座標系は、
図3に示すとおりに定義される3軸直交座標系である。すなわち、z軸は、シャフト40の延びる方向に一致し、ヘッド41からグリップ42に向かう方向が、z軸正方向である。y軸は、ゴルフクラブ4のアドレス時の飛球方向にできる限り沿うように、すなわち、フェース−バック方向に概ね沿うように配向される。x軸は、y軸及びz軸に直交するように、すなわち、トゥ−ヒール方向に概ね沿うように配向され、ヒール側からトゥ側に向かう方向がx軸正方向である。従って、x軸及びz軸は、フェース面41aに概ね平行な平面内に含まれることになる。
【0027】
なお、トゥ−ヒール方向、フェース−バック方向及びトップ−ソール方向とは、基準状態を基準として定義される。基準状態とは、シャフト40の延びる方向が水平面に対して垂直な平面(以下、基準垂直面)に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で水平面上にヘッド41が載置された状態である。そして、基準垂直面と水平面との交線の方向が、トゥ−ヒール方向であり、このトゥ−ヒール方向に対して垂直であり且つ水平面に対して平行な方向が、フェース−バック方向である。また、水平面に対して垂直な方向をトップ−ソール方向と称する。なお、本実施形態の説明においては、特に断らない限り、「左右」はトゥ−ヒール方向を意味し、トゥ側が左、ヒール側が右である。また、特に断らない限り、「上下」はトップ−ソール方向を意味し、トップ側が上、ソール側が下である。
【0028】
本実施形態では、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13からのセンサデータは、通信装置10を介してリアルタイムに分析装置2に送信される。しかしながら、例えば、センサユニット1内の記憶装置にセンサデータを格納しておき、スイング動作の終了後に当該記憶装置からセンサデータを取り出して、分析装置2に受け渡すようにしてもよい。
【0029】
<1−2.分析装置の構成>
図2を参照しつつ、分析装置2の構成について説明する。分析装置2は、ハードウェアとしては汎用のパーソナルコンピュータであり、例えば、タブレットコンピュータ、スマートフォン、ノート型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータとして実現される。分析装置2は、CD−ROM、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体20から、或いはインターネット等のネットワークを介して、分析プログラム3を汎用のコンピュータにインストールすることにより製造される。分析プログラム3は、本実施形態に係る打点推定プログラムであり、センサユニット1から送られてくるセンサデータに基づいてゴルフスイングを分析するソフトウェアである。分析プログラム3には、フェース面41a上における打点を推定する機能が実装されている。分析プログラム3は、分析装置2に後述する動作を実行させる。
【0030】
分析装置2は、表示部21、入力部22、記憶部23、制御部24及び通信部25を備える。そして、これらの部21〜25は、バス線26を介して接続されており、相互に通信可能である。本実施形態では、表示部21は、液晶ディスプレイ等で構成され、後述する情報をユーザに対し表示する。なお、ここでいうユーザとは、ゴルファー7自身やそのインストラクター等の、分析結果を必要とする者の総称である。また、入力部22は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成することができ、分析装置2に対するユーザからの操作を受け付ける。
【0031】
記憶部23は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置により構成される。記憶部23内には、分析プログラム3が格納されている他、センサユニット1から送られてくるセンサデータが保存される。また、記憶部23内には、打点の推定に用いられる回帰式の係数を示すデータ(以下、係数データ)28が格納されている。係数データ28の詳細については、後述する。通信部25は、分析装置2と外部装置との通信を可能にする通信インターフェースであり、センサユニット1からデータを受信する。
【0032】
制御部24は、CPU、ROMおよびRAM等から構成することができる。制御部24は、記憶部23内の分析プログラム3を読み出して実行することにより、仮想的にデータ取得部24A、特性値算出部24B、打点推定部24C及び表示制御部24Dとして動作する。各部24A〜24Dの動作の詳細については、後述する。
【0033】
<2.ゴルフスイングの分析処理>
続いて、スイング分析システム100による、ゴルフスイングの分析処理について説明する。この分析処理は、センサユニット1から出力されるセンサデータを収集するデータ収集処理と、当該センサデータに基づいて、分析装置2により打点を推定する打点推定処理との2つの処理を含む。以下、これらの処理について、順に説明する。
【0034】
<2−1.データ収集処理>
データ収集処理では、ゴルファー7により、上述のセンサユニット1付きゴルフクラブ4がスイングされる。このとき、センサユニット1により、ゴルフスイング中の加速度a
x,a
y,a
z、角速度ω
x,ω
y,ω
z及び地磁気m
x,m
y,m
zのセンサデータが検出される。また、これらのセンサデータは、センサユニット1の通信装置10を介して分析装置2に送信される。一方、分析装置2側では、データ取得部24Aが通信部25を介してこれを受信し、記憶部23内に格納する。本実施形態では、少なくともアドレスからフィニッシュまでの時系列のセンサデータが収集される。
【0035】
なお、ゴルフクラブのスイング動作は、一般に、アドレス、トップ、インパクト、フィニッシュの順に進む。アドレスとは、
図4(A)に示すとおり、ゴルフクラブ4のヘッド41をボール近くに配置した初期の状態を意味し、トップとは、
図4(B)に示すとおり、アドレスからゴルフクラブ4をテイクバックし、最もヘッド41が振り上げられた状態を意味する。インパクトとは、
図4(C)に示すとおり、トップからゴルフクラブ4が振り下ろされ、ヘッド41がボールと衝突した瞬間の状態を意味し、フィニッシュとは、
図4(D)に示すとおり、インパクト後、ゴルフクラブ4を前方へ振り抜いた状態を意味する。
【0036】
<2−2.打点推定処理>
続いて、
図5を参照しつつ、分析装置2により実行される打点推定処理について説明する。本実施形態では、フェース面41a上に定義される
図6に示すD
th−D
ts平面における打点の座標(D
th,,D
ts)が特定される。D
th−D
ts平面は、スイートスポットSSを原点とする。D
th軸は、トゥ−ヒール方向に延びており、トゥ側からヒール側に向かう方向がD
th軸正方向である。また、D
ts軸は、トップ−ソール方向に延びており、ソール側からトップ側に向かう方向がD
ts軸正方向である。
【0037】
<2−2−1.原理>
図5の処理の流れの詳細について説明する前に、
図5の処理により打点推定が可能となる原理について説明する。
【0038】
本発明者は、インパクト時の打点推定を行うための分析対象として、インパクトにより生じ、シャフト40を伝わってセンサユニット1に達する応力波に注目した。特に、インパクト後の初期の数ミリ〜10ミリ秒の期間の応力波の波形を分析すれば、応力波の特性の分析が容易であると考えた。なぜならば、このような初期の期間を過ぎると、多数の波が干渉し始め、応力波の特性を捉えることが困難となり得るからである。また、このような初期の期間のデータであれば、フィニッシュでゴルフクラブ4がゴルファー7の身体に触れることの影響を排除できる点でも優れていると考えた。
【0039】
ここで、説明の便宜上、上述したD
th−D
ts平面とは別に、フェース面41a上においてz’−x’平面を定義する(
図6参照)。z’−x’平面は、スイートスポットSSを原点とし、z’軸がz軸と平行となり、x’軸がx軸と平行となるように定義される。ただし、厳密には、z’−x’平面は、y軸に垂直な平面にフェース面41aを投影した面上に定義される。
【0040】
このとき、打点がz’−x’平面内の第1象限内であれば、ヘッド41はz’軸周りに負の方向に回転し、x’軸周りに正の方向に回転する。打点が第2象限内であれば、ヘッド41はz’軸周りに負の方向に回転し、x’軸周りに負の方向に回転する。打点が第3象限内であれば、ヘッド41はz’軸周りに正の方向に回転し、x’軸周りに負の方向に回転する。打点が第4象限内であれば、ヘッド41はz’軸周りに正の方向に回転し、x’軸周りに正の方向に回転する。
【0041】
そして、z’軸周りにヘッド41が回転すると、シャフト40にはその回転に応じたねじり変形の応力波が生じ、シャフト40を伝わってグリップ42の近傍のセンサユニット1まで届く。センサユニット1にはその応力波に応じた回転運動が生じ、その回転運動はz’軸周りの角速度ω
z’として角速度センサ12で検出される。角速度ω
z’はz’軸周りの回転方向に応じて正または負の値として検出される。また角速度ω
z’の大きさは、z’軸から打点までの距離にほぼ比例する。
【0042】
一方、x’軸周りにヘッド41が回転すると、シャフト40にはその回転に応じたx’軸周りの曲げ変形の応力波が生じ、シャフト40を伝わってグリップ42の近傍のセンサユニット1まで届く。センサユニット1にはその応力波に応じた回転運動が生じ、その回転運動はx’軸周りの角速度ω
x’として角速度センサ12で検出される。ただし、z’軸周りのヘッド41の回転と異なり、打点がSSであってヘッド41が回転しなかったとしても、ヘッド41がシャフト40の動きに対して相対的に減速するために、ヘッド41近くのシャフト40には曲げ変形が生じることになる。つまり、スイートスポットSSの打点に対して正負が変わるということにはならない。しかしながら、x’軸から打点までの距離にほぼ比例した応力波の振幅となるために、角速度センサ12で検出される角速度ω
x’もx’軸から打点までの距離にほぼ比例する。
【0043】
以上のことから、本発明者は、インパクト後の初期の期間の応力波の影響による角速度ω
x’,ω
z’を測定することで、打点を推定することができると考えた。そして、これを検証するために、本発明者はシミュレーションを行った。
【0044】
また、角速度ω
x’,ω
z’の振幅は、それぞれヘッド41がボール43と衝突するときの反力に依存し、ヘッド速度にほぼ比例する。従って、本発明者は、ヘッド速度のような、衝突するときの反力に影響する指標が分かれば、より高精度に打点を推定することができると考えた。
【0045】
図7は、シミュレーションにより求めた、様々な打点での角速度ω
z’のグラフの一覧である。各グラフの縦軸の単位は、deg/sであり、横軸は時間であり、インパクトから0.003秒までの期間を表している。このシミュレーションは、インパクト時のヘッド速度が40m/sとして行われた。また、中央のグラフは、打点がスイートスポットSSにあるときのグラフである。そして、このグラフを基準として、1つ右のグラフはスイートスポットSSからヒール側へ10mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ右のグラフはスイートスポットSSからヒール側へ20mmの位置を打点としたときのグラフである。同様に、1つ左のグラフはスイートスポットSSからトゥ側へ10mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ左のグラフはスイートスポットSSからトゥ側へ20mmの位置を打点としたときのグラフである。また、スイートスポットSSのグラフを基準として、1つ上のグラフはスイートスポットSSから上方へ5mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ上のグラフはスイートスポットSSから上方へ10mmの位置を打点としたときのグラフである。同様に、1つ下のグラフはスイートスポットSSから下方へ5mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ下のグラフはスイートスポットSSから下方へ10mmの位置を打点としたときのグラフである。
【0046】
同図からは、打点がスイートスポットSSにあるとき、ω
z’の山がほぼ検出されないが、打点がヒール側へ向かう程、ω
z’のより大きな正の山が検出され、トゥ側へ向かう程、ω
z’のより大きな負の山が検出されることが分かる。また、トゥ側の領域では、打点が上へ向かう程、より大きな負の山が検出され、ヒール側の領域では、打点が下へ向かう程、より大きな正の山が検出されることが分かる。従って、打点D
th,D
tsはそれぞれ、ω
z’と相関を有することが分かる。
【0047】
図8は、シミュレーションにより求めた、様々な打点での角速度ω
x’のグラフの一覧である。角速度ω
z’の場合と同様に、各グラフの縦軸の単位は、deg/sであり、横軸は時間であり、インパクトから0.003秒までの期間を表している。このシミュレーションは、インパクト時のヘッド速度が40m/sとして行われた。また、中央のグラフは、打点がスイートスポットSSにあるときのグラフである。そして、このグラフを基準として、1つ右のグラフはスイートスポットSSからヒール側へ10mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ右のグラフはスイートスポットSSからヒール側へ20mmの位置を打点としたときのグラフである。同様に、1つ左のグラフはスイートスポットSSからトゥ側へ10mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ左のグラフはスイートスポットSSからトゥ側へ20mmの位置を打点としたときのグラフである。また、スイートスポットSSのグラフを基準として、1つ上のグラフはスイートスポットSSから上方へ5mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ上のグラフはスイートスポットSSから上方へ10mmの位置を打点としたときのグラフである。同様に、1つ下のグラフはスイートスポットSSから下方へ5mmの位置を打点としたときのグラフであり、2つ下のグラフはスイートスポットSSから下方へ10mmの位置を打点としたときのグラフである。
【0048】
同図からは、打点がヒール側へ向かう程、ω
x’のより大きな正の山が検出され、トゥ側へ向かう程、ω
x’のより小さな正の山が検出されることが分かる。また、打点が上へ向かう程、より大きな山が検出され、打点が下へ向かう程、より小さな山が検出されることが分かる。従って、打点D
th,D
tsはそれぞれ、ω
x’と相関を有することが分かる。
【0049】
以上のシミュレーションの結果、角速度ω
x’,ω
z’又はω
x,ω
zの値が分かれば、打点D
th,D
tsの推定が可能であることが分かった。
【0050】
また、
図9は、角速度ω
x’,ω
z’に対するヘッド速度の影響を検証したグラフの一覧である。上段のグラフは、左から順にヘッド速度が35m/s,40m/s,45m/sの場合の、打点[mm]とω
x’[deg/s]との関係を示すグラフである。下段のグラフは、左から順にヘッド速度が35m/s,40m/s,45m/sの場合の、打点[mm]とω
z’[deg/s]との関係を示すグラフである。各グラフの横軸は、打点D
thを表しており、右方向がヒール側に向かう方向である。また、U10,U5は、それぞれスイートスポットSSと同じ上下位置から上へ10mm,5mmの打点を表し、Cは、スイートスポットSSと同じ上下位置の打点を表し、D5,D10は、それぞれスイートスポットSSと同じ上下位置から下へ5mm,10mmの打点を表している。また、グラフに示されている角速度ω
z’の値は、インパクトから0.003秒の期間における角速度ω
z’の最大値又は最小値(ピーク振幅)である。また、グラフに示されている角速度ω
x’の値は、インパクトから0.003秒の期間におけるω
x’の最大値(ピーク振幅)である。
【0051】
同図からは、ヘッド速度が大きくなる程、同じ打点であっても、角速度ω
x’,ω
z’の大きさが大きくなることが分かる。従って、ヘッド速度が分かれば、より高精度に打点D
th,D
tsの推定が可能であることが分かった。このことは、以下のシミュレーション結果からも裏付けられた。
【0052】
すなわち、本発明者らは、ヘッド速度を40m/sとしたときの、以下の25の打点(D
th,D
ts)での角速度ω
x’,ω
z’のシミュレーションのデータに基づいて、重回帰分析を行った。そして、得られた重回帰式に角速度ω
x’,ω
z’のシミュレーション値を代入し、打点(D
th,D
ts)を算出した。さらに、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの差を計算した。この結果を以下の表1に示す。下表からは、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの間には、僅かな誤差しかないことが分かる。なお、下表のD
th,D
tsの単位はmmである。
【表1】
【0053】
同様に、本発明者らは、ヘッド速度を35m/sとしたときの、25の打点(D
th,D
ts)での角速度ω
x’,ω
z’の値をシミュレーションにより算出した。そして、ヘッド速度の影響を検証するために、ヘッド速度が35m/sのときの角速度ω
x’,ω
z’の値を、ヘッド速度が40m/sであったとした場合の値に規格化した。具体的には、ヘッド速度が35m/sのときの角速度ω
x’,ω
z’に、40/35を掛けた値を、規格化後の角速度ω
x’,ω
z’とした。そして、規格化後の角速度ω
x’,ω
z’を、ヘッド速度が40m/sのときの上記重回帰式に代入し、打点D
th,D
tsを算出した。さらに、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの差を計算した。この結果を以下の表2に示す。下表からは、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの間には、最大で3mm程度の僅かな誤差しかないことが分かる。なお、下表のD
th,D
tsの単位はmmである。
【表2】
【0054】
表2のシミュレーションと同様に、本発明者らは、ヘッド速度を45m/sとしたときの、25の打点(D
th,D
ts)での角速度ω
x,ω
zの値をシミュレーションにより算出した。そして、ヘッド速度の影響を検証するために、ヘッド速度が45m/sのときの角速度ω
x’,ω
z’の値を、ヘッド速度が40m/sであったとした場合の値に規格化した。具体的には、ヘッド速度が45m/sのときの角速度ω
x’,ω
z’に、40/45を掛けた値を、規格化後の角速度ω
x’,ω
z’とした。そして、規格化後の角速度ω
x’,ω
z’を、ヘッド速度が40m/sのときの上記重回帰式に代入し、打点D
th,D
tsを算出した。さらに、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの差を計算した。この結果を以下の表3に示す。下表からは、ヘッド速度が45m/sのときも、重回帰式から算出された打点D
th,D
tsと、真値の打点D
th,D
tsとの間には、最大で3mm程度の僅かな誤差しかないことが分かる。なお、下表のD
th,D
tsの単位はmmである。
【表3】
【0055】
<2−2−2.処理の詳細>
次に、
図5の打点推定処理の詳細について説明する。打点推定処理は、データ収集処理が終了し、センサデータが記憶部23内に格納され、かつ、ユーザから打点推定処理の実行が命令された時に開始する。最初のステップS1では、特性値算出部24Bが、記憶部23内に格納されているセンサデータに基づいて、インパクト、トップ及びアドレスの時刻t
i,t
t,t
aを導出する。本実施形態では、まずインパクトの時刻t
iが導出され、インパクトの時刻t
iに基づいてトップの時刻t
tが導出され、トップの時刻t
tに基づいてアドレスの時刻t
aが導出される。
【0056】
具体的には、角速度ω
xの所定の期間T
1当たりの増分が所定の閾値D
1を最初に超えた時刻が、仮のインパクトの時刻として設定される。そして、この仮のインパクトの時刻から所定の時間を溯った時刻から、仮のインパクトの時刻までで、角速度ω
xの期間T
1当たりの増分が所定の閾値D
2(D
2<D
1)を超えた時刻が検出され、インパクトの時刻t
iとして設定される。
【0057】
次に、インパクトの時刻t
iよりも前の時刻であって、角速度ω
yが負から正へ切り替わった時刻が、トップの時刻t
tとして特定される。また、アドレスの時刻t
aは、
図10のフローチャートに従って算出される。なお、インパクト、トップ及びアドレスの時刻t
i,t
t,t
aの算出のアルゴリズムとしては、様々なものが公知であり、ここで説明したものは、単なる例示である。
【0058】
続くステップS2では、特性値算出部24Bが、記憶部23内に格納されているセンサデータから、分析期間における時系列の角速度ω
z,ω
zのデータ(以下、分析データという)を導出する。ここでいう分析期間とは、インパクト後の初期の期間を含む期間であり、本実施形態では、インパクトの時刻t
iから(インパクトの時刻t
i+T)までの期間である。なお、0秒<T≦0.01秒であることが好ましく、0秒<T≦0.005秒であることがより好ましく、0秒<T≦0.003秒であることがさらに好ましい。このような分析期間には、インパクトにより生じる応力波の第一波のみが現れ、或いは多くて第三波程度までしか現れない。すなわち、上記分析期間の角速度データは、多数の波が干渉を起こす前の応力波の特性を表すデータとなる。なお、分析期間の始期は、インパクトの時刻t
iでなくてもよく、例えば、分析期間を、(インパクトの時刻t
i+T
0)〜(インパクトの時刻t
i+T)とすることができる。ただし、0<T
0<Tである。また、分析期間は、インパクトの時刻t
iよりも後の期間のみが含まれるように設定することもできるし、インパクトの時刻t
iよりも前の期間が含まれるように設定することもできる。なお、実際にクラブをスイングしたときのセンサデータでは、アドレスからフィニッシュまでのスイングによる角速度のデータに、インパクトによる応力波の角速度ω
x’,ω
z’のデータが重畳している。従って、分析データの導出に当たっては、センサデータにハイパスフィルターをかける等して、高周波成分である応力波のデータを予め抽出しておくことが好ましい。これにより、インパクトによる応力波の角速度ω
x’,ω
z’の特性をより高精度に評価することができる。ただし、ω
x,ω
zを直接的に評価することで、インパクトによる応力波の角速度ω
x’,ω
z’の特性を評価することも可能である。この意味で、以下では、ハイパスフィルター通過後の角速度ω
x,ω
zのデータも、ω
x’,ω
z’ではなく、ω
x,ω
zを用いて表現する。
【0059】
続くステップS3では、特性値算出部24Bが、ステップS2で導出された分析データに基づいて、特性値C
1を算出する。特性値C
1とは、打点に依存する指標であって、インパクトにより生じる初期の応力波の特性を表す値であり、本実施形態では、分析期間における角速度ω
zの最大値又は最小値(ピーク振幅)である。
【0060】
同様に、続くステップS4では、特性値算出部24Bが、ステップS2で導出された分析データに基づいて、特性値C
2を算出する。特性値C
2も、打点に依存する指標であって、インパクトにより生じる初期の応力波の特性を表す値であり、本実施形態では、分析期間における角速度ω
xの最大値又は最小値(ピーク振幅)である。
【0061】
続くステップS5では、打点推定部24Cが、インパクト時のヘッド速度V
hに応じて、ステップS3,S4で算出された特性値C
1,C
2を補正する。この補正は、特性値C
1,C
2から、それぞれヘッド速度V
hの大きさの影響をキャンセルした特性値C
1’,C
2’を算出する処理である。すなわち、ステップS5では、特性値C
1,C
2が、基準となるヘッド速度V
rが発揮されていたとした場合の特性値C
1’,C
2’に換算される。本実施形態では、以下の式に従って、特性値C
1’,C
2’が算出される。なお、ヘッド速度V
hの算出のアルゴリズムとしては、様々なものが公知であるが、本実施形態では、後述するアルゴリズムが用いられる。
C
1’=(V
r/V
h)C
1
C
2’=(V
r/V
h)C
2
【0062】
続くステップS6では、打点推定部24Cが、補正後の特性値C
1’,C
2’に応じて、フェース面41a上におけるトゥ−ヒール方向のボールの打点D
thを推定する。より具体的には、本実施形態では、打点D
thを目的変数とし、特性値C
1’,C
2’を説明変数とする以下の式に従って、打点D
thが算出される。
D
th=k
th0+k
th1・C
1’+k
th2・C
2’
【0063】
ここで、k
th0,k
th1,k
th2は、定数であり、上述した係数データ28である。上記のとおり、発明者の行ったシミュレーションによると、打点D
thは、特性値C
1’,C
2’と相関がある。従って、シミュレーションや実験により得られる(D
th,C
1’,C
2’)の多数のデータセットに対し重回帰分析を行うことで、k
th0,k
th1,k
th2を予め設定しておくことができる。
【0064】
同様に、続くステップS7では、打点推定部24Cが、補正後の特性値C
1’,C
2’に応じて、フェース面41a上におけるトップ−ソール方向のボールの打点D
tsを推定する。より具体的には、本実施形態では、打点D
tsを目的変数とし、特性値C
1’,C
2’を説明変数とする以下の式に従って、打点D
tsが算出される。
D
ts=k
ts0+k
ts1・C
1’+k
ts2・C
2’
【0065】
ここで、k
ts0,k
ts1,k
ts2は、定数であり、上述した係数データ28である。上記のとおり、発明者の行ったシミュレーションによると、打点D
tsも、特性値C
1’,C
2’と相関がある。従って、シミュレーションや実験により(D
ts,C
1’,C
2’)のデータセットを多数用意し、これらのデータセットに対し重回帰分析を行うことで、k
ts0,k
ts1,k
ts2を予め設定しておくことができる。
【0066】
続くステップS8では、表示制御部24Gは、ステップS6,S7で算出された打点D
th,D
tsの情報を、表示部21上に表示させる。これにより、ユーザは、自身のスイング時の打点の位置を正確に把握することができる。ステップS8が終了すると、打点推定処理は終了する。
【0067】
<2−2−3.ヘッド速度の算出処理>
以下、ヘッド速度V
hの算出処理について説明する。ただし、ここで説明する算出のアルゴリズムは一例であり、公知の様々なアルゴリズムで代替することができる。
【0068】
まず、記憶部23内に格納されているxyz局所座標系での加速度a
x,a
y,a
zに関する時系列のセンサデータが、XYZ全体座標系での値へと変換される。なお、XYZ全体座標系は、
図1に示すとおりに定義される3軸直交座標系である。すなわち、Z軸は、鉛直下方から上方に向かう方向であり、X軸は、ゴルファー7の背から腹に向かう方向であり、Y軸は、地平面に平行でボールの打球地点から目標地点に向かう方向である。
【0069】
具体的には、アドレス以降の任意の時刻tにおける姿勢行列N(t)が算出される。今、姿勢行列を以下の式で表すとする。姿勢行列N(t)は、時刻tにおけるXYZ全体座標系をxyz局所座標系に変換するための行列である。
【数1】
【0070】
姿勢行列N(t)の9つの成分の意味は、以下のとおりである。
成分a:全体座標系のX軸と、局所座標系のx軸とのなす角度の余弦
成分b:全体座標系のY軸と、局所座標系のx軸とのなす角度の余弦
成分c:全体座標系のZ軸と、局所座標系のx軸とのなす角度の余弦
成分d:全体座標系のX軸と、局所座標系のy軸とのなす角度の余弦
成分e:全体座標系のY軸と、局所座標系のy軸とのなす角度の余弦
成分f:全体座標系のZ軸と、局所座標系のy軸とのなす角度の余弦
成分g:全体座標系のX軸と、局所座標系のz軸とのなす角度の余弦
成分h:全体座標系のY軸と、局所座標系のz軸とのなす角度の余弦
成分i:全体座標系のZ軸と、局所座標系のz軸とのなす角度の余弦
ここで、ベクトル(a,b,c)は、x軸方向の単位ベクトルを表し、ベクトル(d,e,f)は、y軸方向の単位ベクトルを表し、ベクトル(g,h,i)は、z軸方向の単位ベクトルを表している。
【0071】
また、姿勢行列N(t)は、Z−Y−Z系のオイラー角の考え方に従うと、以下の式で表すことができる。ただし、φ,θ,ψは、Z軸、Y軸、Z軸周りの回転角度とする。
【数2】
【0072】
アドレス以降の姿勢行列N(t)を算出するに当たり、まず、アドレスの時刻t
aにおける姿勢行列N(t
a)が算出される。具体的には、以下の式に従って、アドレス時のφ,θが算出される。なお、以下の式は、アドレス時にはゴルフクラブ4は静止しており、加速度センサ11によって鉛直方向の重力のみが検出されることを利用している。以下の式中の加速度a
x,a
y,a
zは、アドレス時の値である。
【数3】
【数4】
【0073】
続いて、以下の式に従って、アドレス時のψが算出される。
【数5】
ただし、上式中のm
xi,m
yiの値は、以下の式に従って算出される。また、以下の式中の地磁気m
x,m
y,m
zは、アドレス時の値である。
【数6】
【0074】
以上より、アドレス時のφ,θ,ψが、xyz局所座標系での加速度a
x,a
y,a
z及び地磁気m
x,m
y,m
zに基づいて算出される。そして、これらのφ,θ,ψの値を数2の式に代入することにより、アドレス時の姿勢行列N(t
a)が算出される。
【0075】
続いて、アドレス時の姿勢行列N(t
a)をサンプリング周期Δt間隔で時々刻々更新してゆくことにより、アドレス以降の姿勢行列N(t)が算出される。具体的に説明すると、まず、姿勢行列N(t)は、クォータニオンの4変数q
1,q
2,q
3,q
4(q
4がスカラー部)を用いて、以下の式で表される。
【数7】
【0076】
従って、数1及び数7より、クォータニオンの4変数q
1,q
2,q
3,q
4は、以下の式に従って、算出することができる。
【数8】
【0077】
今、アドレス時の姿勢行列N(t
a)を規定するa〜iの値は既知である。よって、以上の式に従って、まず、アドレス時のクォータニオンの4変数q
1,q
2,q
3,q
4が算出される。
【0078】
そして、時刻tから微小時刻経過後のクォータニオンq’は、時刻tにおけるクォータニオンqを用いて以下の式で表される。
【数9】
【0079】
また、クォータニオンの4変数q
1,q
2,q
3,q
4の時間変化を表す1階微分方程式は、以下の式で表される。
【数10】
【0080】
数9及び数10の式を用いれば、時刻tのクォータニオンを順次、次の時刻t+Δtのクォータニオンへと更新することができる。ここでは、アドレス以降のクォータニオンが算出される。そして、アドレス以降のクォータニオンの4変数q
1,q
2,q
3,q
4を数7の式に順次代入してゆくことにより、アドレス以降の姿勢行列N(t)が算出される。
【0081】
続いて、アドレス以降の姿勢行列N(t)に基づいて、xyz局所座標系での加速度a
x,a
y,a
zの時系列データが、XYZ全体座標系での時系列データに変換される。変換後の加速度a
X,a
Y,a
Zは、以下の式に従って算出される。
【数11】
【0082】
次に、加速度a
X,a
Y,a
Zの時系列データを積分することにより、アドレス以降のXYZ全体座標系での速度v
X,v
Y,v
Zの時系列データが導出される。このとき、アドレスからインパクトまでの速度v
X,v
Y,v
Zを、トップにおいて0m/sとなるように、オフセットを行うことが好ましい。例えば、任意の時刻tにおけるオフセットは、時刻tにおける速度v
X,v
Y,v
Zから、(トップの時刻t
tでの速度v
X,v
Y,v
Z)×t/(t
t−t
a)を減算することにより行われる。
【0083】
また、速度v
X,v
Y,v
Zの時系列データを積分することにより、アドレス以降のXYZ全体座標系でのセンサユニット1の位置座標(X(t),Y(t),Z(t))の時系列デーが導出される。
【0084】
続いて、アドレス以降のXYZ全体座標系でのヘッド41の位置座標(X
h(t),Y
h(t),Z
h(t))が算出される。具体的には、位置座標(X
h(t),Y
h(t),Z
h(t))は、姿勢行列N(t)を用いて、以下の式に従って算出される。なお、Lは、センサユニット1からヘッド41までの距離であり、(0,0,L)は、xyz局所座標系でのヘッド41の位置を表す。
【数12】
【0085】
続いて、以下の式に従って、ヘッド41の位置座標(X
h(t),Y
h(t),Z
h(t))が、センサユニット1の位置座標(X(t),Y(t),Z(t))分だけ平行移動させられ、修正される。以下では、修正後のヘッド41の位置座標も、(X
h(t),Y
h(t),Z
h(t))と表現する。
【数13】
【0086】
次に、ヘッド41の位置座標(X
h(t),Y
h(t),Z
h(t))の各成分を微分することにより、ヘッド41の速度ベクトル(v
h(t),v
h(t),v
h(t))を算出することができる。インパクト時のヘッド速度V
hは、速度ベクトル(v
h(t
i),v
h(t
i),v
h(t
i))の大きさとして算出される。
【0087】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0088】
<3−1>
上記実施形態では、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13の3つを有するセンサユニット1が使用されたが、地磁気センサ13及び加速度センサ11の少なくとも一方を省略することもできる。
【0089】
また、センサユニット1に加速度センサ11が複数個搭載されていてもよい。この場合、一対の加速度センサ11,11の出力値の差分から、角加速度を取得することができる。例えば、
図11に示すように、z軸方向に距離を離して加速度センサを2つ取り付け、x軸方向の加速度を2か所で計測する。そして、この2つの加速度(a
x1,a
x2とする)の差は、両センサ11,11の中心を回転中心とするy軸周りの角加速度に比例した値(加速度センサ11,11間の距離に依存)となる。同様に、z軸周りの角加速度は、z軸を挟んでその両側に加速度センサを配置し、z軸に垂直な方向の2つの加速度を計測してその差を求めることで特定することができる。また、x軸周りの角加速度は、x軸を挟んでその両側に加速度センサを配置し、x軸に垂直な方向の2つの加速度を計測してその差を求めることで特定することができる。そして、角加速度は、角速度と同様に、打点と線形関係を有すると考えられるため、これを打点推定のための特性値として用いることができる。すなわち、この場合、角速度センサ12を省略することもできる。
【0090】
<3−2>
ヘッド速度V
hを算出する方法は、上述した例に限られず、また、センサデータを用いる必要もない。例えば、特定の電波を発射し測定するレーダ(電波式)方式や、レーザ光を用いて測定する光電管方式、スイング動作をカメラにより撮影した画像から求める画像処理方式等を採用することができる。かかる場合には、それぞれに必要な計測機器を用意すればよい。
【0091】
<3−3>
上記実施形態では、センサユニット1は、シャフト40のグリップ42近傍に取り付けられたが、グリップ42に取り付けてもよいし、シャフト40の中間部やヘッド41近傍に取り付けてもよい。ただし、センサユニット1の存在によるゴルフスイングへの影響を抑制する観点からは、ヘッド41から十分に離れた位置に取り付けることが好ましい。
【0092】
<3−4>
上記実施形態では、センサデータのうち角速度ω
x,ω
zのデータを用いて打点推定が行われたが、打点推定には、打点に依存する様々な指標を用いることができる。例えば、角速度ω
yのデータを用いることもできるし、加速度a
x,a
y,a
zのデータを用いることもできる。また、センサデータに基づく打点推定には、重回帰分析に限らず、説明変数とする指標によっては単回帰分析を行うこともできる。さらに、非線形回帰式を用いてもよい。また、回帰分析に限らず、機械学習やニューラルネットワーク等のアルゴリズムにより、センサデータから打点推定を行うことができる。また、特性値C
1,C
2として、振幅の値そのものではなく、分析期間における積分値等、振幅に応じた値を用いることができる。
【0093】
<3−5>
インパクトの時刻t
iは、上記したようにセンサユニット1の出力値に基づいて特定するのではなく、他の計測機器の出力値に基づいて特定することもできる。例えば、ゴルフボール43に振動センサを取り付け、当該振動センサの出力値からインパクトの時刻t
iを特定することができる。また、カメラを設置し、カメラでスイング動作を撮影し、撮像画像に基づいてインパクトの時刻t
iを特定することもできる。