(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551142
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを内蔵した回路基板
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20190722BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20190722BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20190722BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20190722BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F27/29 123
H01F27/28 K
H05K1/18 H
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-205162(P2015-205162)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-79216(P2017-79216A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 知一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 文男
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/136342(WO,A1)
【文献】
特開2011−091097(JP,A)
【文献】
特開2011−054672(JP,A)
【文献】
特開2005−101406(JP,A)
【文献】
特開2014−039036(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0287516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 27/29
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面スパイラル導体と、
前記第1の平面スパイラル導体に積層され、前記第1の平面スパイラル導体とは逆方向に巻回された第2の平面スパイラル導体と、
前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続された第1の外部端子と、
前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続された第2の外部端子と、
前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内周端に共通接続された第3の外部端子と、
前記第1の平面スパイラル導体と前記第2の平面スパイラル導体との間に設けられた非磁性絶縁層と、
前記第1の平面スパイラル導体、前記非磁性絶縁層及び前記第2の平面スパイラル導体を積層方向に挟む第1及び第2の磁性部材と、
前記第2の平面スパイラル導体と同一平面上に設けられ、前記第1の平面スパイラル導体の前記外周端に接続された接続導体と、を備え、
前記第2の磁性部材は、前記第2の平面スパイラル導体の前記内周端を露出させる開口部と、前記接続導体を露出させる第1の切り欠き部と、前記第2の平面スパイラル導体の前記外周端を露出させる第2の切り欠き部とを有し、
前記第3の外部端子は、前記開口部に埋め込まれており、
前記第1の外部端子は、前記第1の切り欠き部に埋め込まれており、
前記第2の外部端子は、前記第2の切り欠き部に埋め込まれていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、互いに異なる磁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
積層方向から見て前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端の近傍に設けられ、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内径部を貫通して設けられた第3の磁性部材をさらに備え、
前記第1及び第2の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の一方側に位置し、
前記第3の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の他方側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1乃至第3の外部端子は、前記第1及び第2の平面スパイラル導体を構成する金属材料と同じ金属材料が露出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
第1の平面スパイラル導体と、
前記第1の平面スパイラル導体に積層され、前記第1の平面スパイラル導体とは逆方向に巻回された第2の平面スパイラル導体と、
前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続された第1の外部端子と、
前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続された第2の外部端子と、
前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内周端に共通接続された第3の外部端子と、
積層方向から見て前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端の近傍に設けられ、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内径部を貫通して設けられた第3の磁性部材と、を備え、
前記第1及び第2の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の一方側に位置し、
前記第3の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の他方側に位置することを特徴とするコイル部品。
【請求項6】
前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端は、積層方向から見て重なっており、重なる位置にて前記積層方向に短絡されていることを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第3の外部端子は、前記積層方向から見て少なくとも一部が前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端と重なることを特徴とする請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1の平面スパイラル導体と前記第2の平面スパイラル導体との間に設けられた非磁性絶縁層をさらに備えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1の平面スパイラル導体、前記非磁性絶縁層及び前記第2の平面スパイラル導体を積層方向に挟む第1及び第2の磁性部材をさらに備え、
前記第2の磁性部材は、前記第2の平面スパイラル導体の前記内周端を露出させる開口部を有し、
前記第3の外部端子は、前記開口部に埋め込まれていることを特徴とする請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、互いに異なる磁性材料からなることを特徴とする請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1乃至第3の外部端子は、前記第1及び第2の平面スパイラル導体を構成する金属材料と同じ金属材料が露出していることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコイル部品が埋め込まれた回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、カップリングインダクタとして用いることが可能なコイル部品に関する。また、本発明は、このようなコイル部品が埋め込まれた回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータなどのスイッチング電源の平滑用コイルとして、カップリングインダクタと呼ばれるコイル部品が用いられることがある。カップリングインダクタは、特許文献1,2に記載されるように、互いに逆方向に巻回された巻線を磁気結合させたものであり、一方の巻線に電流を流すと、起電力によって他方の巻線にも電流が流れる。このため、スイッチング電源の平滑用コイルとして用いれば、突入電流のピークを低減することが可能となる。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されたコイル部品は、巻線をワイヤまたはフォイルで形成したものであり、その
図32には、2つの巻線の端部を共通の外部端子に接続した構成が開示されている。また、特許文献2には、絶縁基板の表裏に平面スパイラル導体を形成してなるコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−526787号公報
【特許文献2】特開2015−130472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品は、巻線がワイヤまたはフォイルによって構成されていることから、製造工程が複雑であるばかりでなく、得られる特性に大きなばらつきが生じてしまう。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたコイル部品は、巻線として平面スパイラル導体を用いていることから、特性のばらつきは小さい。しかしながら、特許文献2においては、2つの平面スパイラル導体を同心円状に巻回していることから、磁気結合率の調整が困難であるという問題がある。つまり、カップリングインダクタは、磁気結合しない漏れ磁束成分が平滑作用をもたらすため、所望の特性を得るためには磁気結合率をある程度弱め、これにより十分な漏れ磁束成分を確保する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載されたコイル部品において磁気結合率を低下させるためには、同心円状に巻回された2つの平面スパイラル導体の導体間隔を広げる必要があり、この場合には、製品の平面サイズが大型化してしまう。
【0007】
したがって、本発明は、製品の平面サイズを増大させることなく磁気結合率の調整が可能であり、且つ、特性ばらつきの少ないコイル部品及びこれを内蔵する回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるコイル部品は、第1の平面スパイラル導体と、前記第1の平面スパイラル導体に積層され、前記第1の平面スパイラル導体とは逆方向に巻回された第2の平面スパイラル導体と、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続された第1の外部端子と、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続された第2の外部端子と、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内周端に共通接続された第3の外部端子とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による回路基板は、上記のコイル部品が埋め込まれたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、巻線として平面スパイラル導体を用いていることから、特性のばらつきが少なく、且つ、2つの平面スパイラル導体を積層方向に磁気結合させていることから、製品の平面サイズに影響を与えることなく磁気結合率を調整することができる。しかも、2つの平面スパイラル導体の内周端同士を短絡していることから、これらを回路基板上で短絡する必要もない。また、端子数が少ないことから、端子部分によって生じる渦電流損も少ない。
【0011】
本発明において、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端は、積層方向から見て重なっており、重なる位置にて前記積層方向に短絡されていることが好ましい。これによれば、内周端同士を接続するための接続導体などが不要となることから、構造を単純化することができる。
【0012】
この場合、前記第3の外部端子は、前記積層方向から見て少なくとも一部が前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端と重なることが好ましい。これによれば、平面スパイラル導体の内周端と第3の外部端子とを接続するための接続導体などが不要となることから、構造を単純化することができる。しかも、第3の外部端子が内周端の直上に配置されるため、高い放熱効果を得ることも可能となる。
【0013】
本発明によるコイル部品は、前記第1の平面スパイラル導体と前記第2の平面スパイラル導体との間に設けられた非磁性絶縁層をさらに備えることが好ましい。これによれば、スパイラル導体間において高い磁気結合を得ることが可能となる。
【0014】
この場合、前記第1の平面スパイラル導体、前記非磁性絶縁層及び前記第2の平面スパイラル導体を積層方向に挟む第1及び第2の磁性部材をさらに備え、前記第2の磁性部材は、前記第2の平面スパイラル導体の前記内周端を露出させる開口部を有し、前記第3の外部端子は、前記開口部に埋め込まれていることが好ましい。これによれば、第2の磁性部材に設けられた開口部から効率よく放熱することが可能となる。
【0015】
さらにこの場合、前記第2の平面スパイラル導体と同一平面上に設けられ、前記第1の平面スパイラル導体の前記外周端に接続された接続導体をさらに備え、前記第2の磁性部材は、前記接続導体を露出させる第1の切り欠き部と、前記第2の平面スパイラル導体の前記外周端を露出させる第2の切り欠き部とをさらに有し、前記第1の外部端子は、前記第1の切り欠き部に埋め込まれており、前記第2の外部端子は、前記第2の切り欠き部に埋め込まれていることが好ましい。これによれば、第2の磁性部材の上面に第1〜第3の外部端子を露出させることが可能となる。
【0016】
ここで、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、互いに異なる磁性材料からなるものであっても構わない。この場合、前記第2の磁性部材は、磁性体を含有する樹脂からなるものであっても構わない。
【0017】
本発明において、積層方向から見て前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端の近傍に設けられ、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内径部を貫通して設けられた第3の磁性部材をさらに備え、前記第1及び第2の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の一方側に位置し、前記第3の外部端子は、前記積層方向から見て前記第3の磁性部材の他方側に位置することが好ましい。これによれば、第1及び第2の外部端子と第3の外部端子との距離がより離れることから、これらの間の短絡を防止することが可能となる。
【0018】
本発明において、前記第1乃至第3の外部端子は、前記第1及び第2の平面スパイラル導体を構成する金属材料と同じ金属材料が露出していることが好ましい。これによれば、第1〜第3の外部端子に対するメッキなどが不要となることから、製造コストを削減することが可能となる。この場合、前記金属材料は、銅(Cu)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製品の平面サイズを増大させることなく磁気結合率の調整が可能であり、且つ、特性ばらつきの少ないコイル部品及びこれを内蔵する回路基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、コイル部品10の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、コイル部品10の等価回路図である。
【
図6】
図6は、コイル部品10が埋め込まれた回路基板50の構成例を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)〜(g)は、コイル部品10の製造工程を説明するための平面パターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す斜視図である。また、
図2はコイル部品10の分解斜視図であり、
図3は
図1に示すA−A線に沿った断面図であり、
図4は
図1に示すB−B線に沿った断面図である。
【0023】
本実施形態によるコイル部品10はカップリングインダクタとして用いることが可能なチップ部品であり、
図1〜
図4に示すように、第1及び第2の磁性部材11,12と、これら磁性部材11,12に挟まれた第1及び第2の平面スパイラル導体21,22とを備える。
【0024】
磁性部材11は、焼結フェライトなどの磁性材料からなる基板である。後述するように、コイル部品10の製造過程においては、磁性部材11を基板として、その上面に平面スパイラル導体21,22及び磁性部材12を順次形成する。一方、磁性部材12は、フェライト粉や金属磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材である。金属磁性粉を用いる場合、パーマロイ系材料を用いることが好適である。また、樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
第1の平面スパイラル導体21は、磁性部材11の上面に絶縁層31を介して形成されている。平面スパイラル導体21は、積層方向から見ると、外周端21aから内周端21bに向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。巻回数については特に限定されないが、例えば、4.5ターンである。また、平面スパイラル導体21と同じ導体層には、接続導体23も形成されている。接続導体23は、平面スパイラル導体21とは独立して設けられている。外周端21aおよび内周端21bは、それ以外の部分よりも十分に大きい導体幅を有している。
【0026】
第2の平面スパイラル導体22は、第1の平面スパイラル導体21の上面に絶縁層32を介して形成されている。平面スパイラル導体22は、積層方向から見ると、外周端22aから内周端22bに向かって時計回り(右回り)に巻回されている。つまり、平面スパイラル導体21,22の巻回方向は、互いに逆方向である。巻回数については、第1の平面スパイラル導体21と同一ターンとすることが好ましい。また、平面スパイラル導体22と同じ導体層には、接続導体24も形成されている。接続導体24は、平面スパイラル導体21の外周端21aと重なる位置に設けられており、絶縁層32に形成されたスルーホールを介して短絡されている。同様に、上述した接続導体23は、平面スパイラル導体22の外周端22aと重なる位置に設けられている。接続導体23と平面スパイラル導体22の外周端22aは、互いに接続されていても構わないし、接続されていなくても構わない。外周端22aおよび内周端22bは、それ以外の部分よりも十分に大きい導体幅を有している。
【0027】
さらに、平面スパイラル導体21の内周端21bと平面スパイラル導体22の内周端22bは、積層方向から見て同じ平面位置に配置されており、絶縁層32に形成されたスルーホールを介して短絡されている。平面スパイラル導体21,22の内周端21b,22bは、平面位置が完全に一致している必要はなく、少なくとも短絡位置において重なりを有していれば足りる。
【0028】
平面スパイラル導体21,22及び接続導体23,24は、いずれも銅(Cu)などの良導体によって構成され、電解メッキ法を用いて形成することが好ましい。
【0029】
平面スパイラル導体22の上面は、絶縁層33を介して第2の磁性部材12で覆われる。磁性部材12には2つの切り欠き部12a,12bと1つの開口部12cが設けられており、これらにそれぞれ第1〜第3の外部端子41〜43が埋め込まれている。切り欠き部12a,12bは、磁性部材12の外周部の一部(角部)を削除した形状であり、したがって、切り欠き部12a,12bの壁面は磁性部材12の外周壁を構成する。これに対し、開口部12cは、磁性部材12の外周部から離れた内部を貫通する形状を有している。したがって、開口部12cの内周壁は、磁性部材12の外周壁を構成するものではない。
【0030】
切り欠き部12aは、接続導体24の直上に位置し、接続導体24の少なくとも一部を露出させる。これにより、切り欠き部12aに埋め込まれた第1の外部端子41は、接続導体24を介して第1の平面スパイラル導体21の外周端21aに接続されることになる。第1の外部端子41は、第1の平面スパイラル導体21の外周端21aや接続導体24よりも大きな面積を有する。
【0031】
切り欠き部12bは、第2の平面スパイラル導体22の外周端22aの直上に位置し、外周端22aの少なくとも一部を露出させる。これにより、切り欠き部12bに埋め込まれた第2の外部端子42は、第2の平面スパイラル導体22の外周端22aに接続されることになる。第2の外部端子42は、第2の平面スパイラル導体22の外周端22aよりも大きな面積を有する。
【0032】
開口部12cは、第2の平面スパイラル導体22の内周端22bの直上に位置し、内周端22bの少なくとも一部を露出させる。これにより、開口部12cに埋め込まれた第3の外部端子43は、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22の内周端21b,22bに共通接続されることになる。第3の外部端子43は、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22の内周端21b,22bよりも大きな面積を有する。
【0033】
外部端子41〜43は、平面スパイラル導体21,22と同様、銅(Cu)などの良導体によって構成される。本実施形態においては外部端子41〜43と平面スパイラル導体21,22は、互いに同じ金属材料によって構成されており、この金属材料がそのまま外部端子41〜43に露出している。
【0034】
外部端子41〜43の上面は、第2の磁性部材12の上面から露出し、且つ、第2の磁性部材12の上面とほぼ同一平面を構成している。また、外部端子41,42については、側面の一部が第2の磁性部材12の側面から露出している。これに対し、外部端子43の側面は全て第2の磁性部材12によって覆われている。なお、外部端子43は、その側面の一部が、外部端子41,42と反対側の第2の磁性部材12の側面から露出する構成としても構わない。
【0035】
外部端子41,42は、積層方向からみてコイル部品10の互いに隣接する角部に設けられる。外部端子41,42が設けられる角部に対して対角に位置する2つの角部には、第2の磁性部材12と同じ材料からなる磁性部材13,14が埋め込まれている。また、平面スパイラル導体21,22の内周部にも、第2の磁性部材12と同じ材料からなる第3の磁性部材15が埋め込まれている。第3の磁性部材15は、平面スパイラル導体21,22の内径部を貫通して設けられている。ここで、平面スパイラル導体21,22の内径部に設けられた内周端21b,22bは、積層方向から見て一方側(
図2においては左上側)にオフセットして配置されており、第3の磁性部材15は、積層方向から見て他方側(
図2においては右下側)にオフセットして配置されている。これにより、外部端子41,42と外部端子43との距離がより離れることから、これらの間の短絡を防止することが可能となる。
【0036】
磁性部材13〜15は、絶縁層31〜33に設けられたスルーホールを介して第1の磁性部材11と第2の磁性部材12を磁気的に接続し、これによって閉磁路を形成する役割を果たす。絶縁層31〜33は、例えば樹脂からなり、少なくとも絶縁層32については非磁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁層32の厚さは、平面スパイラル導体21,22の厚さの1/2以下とすることが好ましい。これによれば、直流抵抗の増大を抑えつつ、磁気結合の調整が可能となる。
【0037】
以上が本実施形態によるコイル部品10の構成である。かかる構成により、第1の外部端子41と第3の外部端子43は、第1の平面スパイラル導体21を介して接続されることになる。同様に、第2の外部端子42と第3の外部端子43は、第2の平面スパイラル導体22を介して接続されることになる。そして、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22は積層方向に磁気結合していることから、一方の平面スパイラル導体に電流を流すと、起電力によって他方の平面スパイラル導体にも電流が流れる。この時、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22は互いに逆方向に巻回されていることから、電流の流れる方向は同一方向となる。
【0038】
図5は本実施形態によるコイル部品10の等価回路図である。
【0039】
図5に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、磁気結合する理想トランス部L1と、漏れ磁束を発生させる漏れインダクタンス成分L2を有する。理想トランス部L1は、第1及び第2の外部端子41,42を入力側とすると、互いに逆方向に磁気結合する成分である。
【0040】
コイル部品10をカップリングインダクタとして使用すると、理想トランス部L1によって電流が分割され、漏れインダクタンス成分L2によって平滑化される。したがって、所望の特性を得るためには磁気結合率がある程度弱まるよう調整することによって、漏れインダクタンス成分L2を確保する必要がある。
【0041】
本実施形態においては、磁気結合率を絶縁層32の膜厚によって調整することができる。これは、第1の平面スパイラル導体21と第2の平面スパイラル導体22が積層方向に磁気結合しているからである。したがって、磁気結合率を弱めるためには、絶縁層32の膜厚を大きくすればよい。絶縁層32の膜厚は、コイル部品10の平面サイズには影響しないため、磁気結合率を調整してもコイル部品10の平面サイズが大型化することはない。
【0042】
しかも、本実施形態によるコイル部品10は、外部端子41〜43の数が3つであることから、端子部分によって生じる渦電流損も少ない。しかも、一般的なコイル部品のようなL字型の端子電極を用いるのではなく、磁性部材12の上面に外部端子41〜43が直接露出する構成を有していることから、L字型の端子電極による直流抵抗の増大も生じない。
【0043】
図6は、本実施形態によるコイル部品10が埋め込まれた回路基板50の構成例を示す断面図である。
【0044】
図6に示す回路基板50は、樹脂基板51及び樹脂層52を備え、これらの間にコイル部品10が埋め込まれた構成を有している。具体的には、樹脂基板51の上面にコイル部品10がフェイスアップ方式で搭載されており、これによりコイル部品10に設けられた外部端子41〜43が上方に露出する。そして、コイル部品10を埋め込むように樹脂基板51上に樹脂層52が設けられる。樹脂層52には、外部端子41〜43を露出させるスルーホール53が形成されている。そして、樹脂層52の上面に形成された配線パターン54は、スルーホール53を介してコイル部品10の外部端子41〜43に接続される。
【0045】
このように、コイル部品10を回路基板50に埋め込んで使用する場合、外部端子41〜43と配線パターン54との接続にハンダを用いないため、外部端子41〜43の表面にスズメッキなどを施す必要が無く、外部端子41〜43を構成する銅(Cu)をそのまま露出させることができる。
【0046】
このような回路基板50にスイッチング電源を搭載すれば、カップリングインダクタを含むスイッチング電源を1枚の回路基板によって実現することが可能となる。スイッチング電源用のカップリングインダクタには大電流が流れるため、比較的大きな発熱が生じる。このようにして生じた熱は、金属からなる外部端子から主に放熱されるが、本実施形態によるコイル部品10では、外部端子43が平面視で略中央部に配置されていることから、コイル部品10の中心部付近に蓄積された熱を効率よく放出することが可能となる。
【0047】
また、コイル部品10は外部端子41〜43を上に向けて回路基板の表面に搭載することも可能であり、この場合、直接外部端子41〜43にワイヤーボンディングすることもできる。さらに、上述した外部端子43の側面の一部が外部端子41,42と反対側の第2の磁性部材12の側面から露出している構成のコイル部品10については、外部端子41〜43を回路基板に向けてボンディングする、通常のはんだ実装も可能である。
【0048】
次に、本実施形態によるコイル部品10の製造方法について説明する。
【0049】
図7(a)〜(g)は、本実施形態によるコイル部品10の製造工程を説明するための平面パターン図である。
【0050】
まず、所定の厚さを持った焼結フェライトなどからなる磁性部材11を用意し、その上面に絶縁層31を
図7(a)に示すパターンで形成する。具体的には、磁性部材11の上面にスピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成する。
図7(a)に示すスルーホール63〜65は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
【0051】
次に、
図7(b)に示すように、絶縁層31の上面に第1の平面スパイラル導体21及び接続導体23を形成する。これら導体の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚までメッキ成長させることが好ましい。
【0052】
次に、
図7(c)に示すように、第1の平面スパイラル導体21及び接続導体23を覆うように、絶縁層31の上面に絶縁層32を形成する。形成方法は絶縁層31と同様であり、スピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成する。
図7(c)に示すスルーホール81,82は、それぞれスパイラル導体21の外周端21a及び内周端21bを露出させる位置に形成される。一方、スルーホール83〜85は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
【0053】
次に、
図7(d)に示すように、絶縁層32の上面に第2の平面スパイラル導体22及び接続導体24を形成する。これにより、平面スパイラル導体22の内周端22bは、スルーホール82を介して平面スパイラル導体21の内周端21bに接続される。また、接続導体24は、スルーホール81を介して平面スパイラル導体21の外周端21aに接続される。これら導体の形成方法は上述の通りである。
【0054】
次に、
図7(e),(f)に示すように、第2の平面スパイラル導体22及び接続導体24を覆うように、絶縁層32の上面に絶縁層33及びイオンミリング用マスク34をこの順に形成する。形成方法は絶縁層31,32と同様である。
図7(e)に示すスルーホール101,102は、それぞれ平面スパイラル導体22の外周端22a及び内周端22bを露出させる位置に形成される。また、スルーホール106は、接続導体24を露出させる位置に形成される。一方、スルーホール103〜105は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
図7(f)に示すスルーホール113〜115も、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる位置に形成される。
【0055】
この状態で、スルーホール113〜115の範囲についてイオンミリング用マスク34を用いてイオンミリングを行うと、絶縁層31〜33の対応部分が除去され、当該位置において磁性部材11が露出する。次に、イオンミリング用マスク34を除去した後、
図7(g)に示すように、絶縁層33の上面に外部端子41〜43を形成する。これにより、外部端子41はスルーホール106を介して接続導体24に接続され、外部端子42はスルーホール101を介して平面スパイラル導体22の外周端22aに接続され、外部端子43はスルーホール102を介して平面スパイラル導体22の内周端22bに接続される。これら導体の形成方法は上述の通りである。
【0056】
そして、磁性体を含有する樹脂を全面に形成する。これにより、絶縁層31〜33の対応部分が除去されてなる凹部に磁性体含有樹脂が入り込み、磁性部材13〜15が形成されるとともに、絶縁層33の上面を覆う磁性部材12が形成される。その後は、外部端子41〜43の上面が露出するまで磁性部材12を研削するとともに、基板である磁性部材11を所望の厚みになるまで研削すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
【0057】
このように、本実施形態によるコイル部品10は、薄膜プロセス及び電解メッキ法を用いて平面スパイラル導体21,22を形成していることから、巻線をワイヤまたはフォイルで形成する場合と比べて、非常に正確なパターンを形成することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 コイル部品
11〜15 磁性部材
12a,12b 切り欠き部
12c 開口部
21,22 平面スパイラル導体
21a,22a 平面スパイラル導体の外周端
21b,22b 平面スパイラル導体の内周端
23,24 接続導体
31〜33 絶縁層
34 イオンミリング用マスク
41〜43 外部端子
50 回路基板
51 樹脂基板
52 樹脂層
54 配線パターン
53,63〜65,81〜85,101〜106,113〜115 スルーホール
L1 理想トランス部
L2 漏れインダクタンス成分