(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハンドルハウジング及び前記ケースの少なくとも一方には、前記係合部と前記被係合部との係合を解除可能な解除操作部が設けられている請求項3記載のケーブル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のケーブル装置は、互いに連結された第1、2の結合ケース内で、第1のケーブルの他端、第1、2の結合ピース及び第2のケーブルの一端が一体で往復移動可能に連結される複雑な構成を採用している。このため、このケーブル装置は、製造コストの低廉化と、組付作業の簡素化とを実現することが難しい。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化と、組付作業の簡素化とを実現できるケーブル装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブル装置は、ハンドルと作動体との間に配置され、前記ハンドルの操作を前記作動体に伝達するケーブル装置であって、
前記ハンドルは、収容室が形成されたハンドルハウジングと、第1軸心周りで揺動可能に前記ハンドルハウジングに支持された操作レバーとを有し、
前記ケーブル装置は、前記収容室に収容されるケースと、
前記ケース内に一端が配置され、他端が前記作動体に接続されるケーブルと、
第2軸心周りで揺動可能に前記ケースに支持されるとともに、前記ケース内で前記ケーブルの前記一端と接続され、前記操作レバーの揺動によって変位可能なリンクレバーとを備え、
前記第1軸心と前記第2軸心とは、前記ケースが前記収容室に収容されることにより、同軸に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明のケーブル装置では、上記従来のケーブル装置とは異なり、ケーブルが第1のケーブルと第2のケーブルとに分割されておらず、また、第1のケーブルの他端と第2のケーブルの一端とを連結するための第1、2の結合ケースや第1、2の結合ピースを有しない簡素な構成を採用している。
【0011】
そして、このケーブル装置では、ケースにリンクレバーが第2軸心周りで揺動可能に支持されており、リンクレバーにケーブルの一端が接続されている。このため、ケースをハンドルハウジングの収容室に収容するだけで、ハンドルにケーブル装置を取り付ける作業を容易に実施でき、操作レバーで作動体を操作可能となる。
【0012】
したがって、本発明のケーブル装置では、製造コストの低廉化と、組付作業の簡素化とを実現できる。
【0013】
操作レバーには、リンクレバーと接続可能な接続部が設けられていることが望ましい。そして、リンクレバーには、収容室にケースが収容されることにより、接続部に接続する被接続部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、収容室にケースが収容されると同時に、操作レバーの接続部にリンクレバーの被接続部が接続して、リンクレバーが操作レバーの揺動によって変位可能となる。その結果、連結ピン等の連結手段によってリンクレバーを操作レバーに連結する作業を別途行う必要がないので、組付作業を一層簡素化できる。
【0014】
ハンドルハウジングには係合部が設けられていることが望ましい。そして、ケースには、収容室に収容されることにより、係合部に係合する被係合部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、収容室にケースが収容されると同時に、ハンドルハウジングの係合部にケースの被係合部が係合して、ケースを収容室に固定する。その結果、ネジ等の締結手段によってケースを収容室に固定する作業を別途行う必要がないので、組付作業を一層簡素化できる。
【0015】
ハンドルハウジング及びケースの少なくとも一方には、係合部と被係合部との係合を解除可能な解除操作部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、解除操作部を操作して係合部と被係合部との係合を解除することにより、ハンドルハウジングの収容室からケースを容易に取り外すことができる。その結果、ハンドルやケーブル装置の保守作業等を容易に実施できる。
【0016】
第1軸心と第2軸心とは、ケースが収容室に収容されることにより、同軸に配置され
る。この構成によれば、第1軸心と第2軸心とが異軸に配置される場合と比較して、操作レバーとリンクレバーとが近接して配置される。その結果、ハンドルハウジングを小型化できる。
【0017】
ハンドルは、車室内に設けられ、車両用シートのバックレストの傾動姿勢を操作する車両用ハンドルであることが望ましい。そして、作動体は、車体に設けられ、バックレストを車体に固定しつつ、傾動姿勢を変更する車両用シートリクライニング装置であることが望ましい。この場合、本発明のケーブル装置が奏する作用効果により、車両の車室内に車両用シートリクライニング装置を組み付ける製造工程においても、組付作業の簡素化と、製造コストの低廉化とを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のケーブル装置によれば、組付作業の簡素化と、製造コストの低廉化とを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例)
図1に示すように、車両の一例である自動車の車室9A内には、後部座席としての車両用シート8が設けられている。車両用シート8は、搭乗者が腰掛けるシート本体8Aと、搭乗者がもたれ掛かるバックレスト8Bとを備えている。
【0022】
なお、
図1において、車両用シート8に腰掛ける搭乗者の前方、すなわち、紙面手前側が車両の前方であり、その搭乗者の後方、すなわち、紙面奥側が車両の後方である。また、車両用シート8に腰掛ける搭乗者の右手にくる側、すなわち、紙面左側が車両の内側であり、その搭乗者の左手にくる側、すなわち、紙面右側が車両の外側である。そして、
図2以降の各図に示す前後方向、車両内外方向及び上下方向は、すべて
図1に対応させて表示する。
【0023】
図1〜
図3に示すように、シート本体8Aは、車体9Bの床面に固定されている。バックレスト8Bは、シート本体8Aの後端側で車両内外方向に延びる揺動軸心X8周りで揺動可能にシート本体8Aに支持されている。
【0024】
車室9Aにおける車両用シート8に対して車両外側に位置する内壁には、ハンドル7が設けられている。ハンドル7は、バックレスト8Bの傾動姿勢を操作するためのものである。ハンドル7は、ハンドルハウジング70と操作レバー80とを有している。操作レバー80は、車両用シート8に腰掛ける搭乗者が左手で操作可能な位置で、車室9Aの内壁に固定されたハンドルハウジング70に揺動可能に支持されている。
【0025】
図3に示すように、車体9Bにおいて、起立した状態のバックレスト8Bに対して車両外側に位置する部位には、シートリクライニング装置5が組み付けられている。シートリクライニング装置5は、バックレスト8Bを車体9Bに固定しつつ、バックレスト8Bの傾動姿勢を変更するためのものである。
図3では、車両用シート8は、ハンドル7及びシートリクライニング装置5に対して紙面手前側に位置しているので、仮想線によって図示している。
【0026】
ハンドル7は、本発明の「車両用ハンドル」の一例である。シートリクライニング装置5は、本発明の「作動体」及び「車両用シートリクライニング装置」の一例である。
【0027】
図3〜
図11に示すように、実施例のケーブル装置1は、本発明のケーブル装置の具体的態様の一例である。ケーブル装置1は、ハンドル7とシートリクライニング装置5との間に配置されている。ケーブル装置1は、ハンドル7の操作レバー80に対する操作をシートリクライニング装置5に伝達するためのものである。
【0028】
ケーブル装置1及びハンドル7の具体的構成については後で詳しく説明するが、
図10等に示すように、ケーブル装置1は、ケース10、ケーブル20及びリンクレバー30を備えている。ケース10は、ハンドルハウジング70に形成された収容室71に収容されている。ケーブル20は、アウターチューブ20Tに挿通されている。ケーブル20の一端21は、ケース10に揺動可能に支持されたリンクレバー30を介して操作レバー80に接続されている。操作レバー80を
図4等に示す矢印D2方向に揺動させることにより、ケーブル20の一端21が前方に変位し、ケーブル20がアウターチューブ20T内で摺動する。すると、
図5に示すケーブル20の他端22が下方に変位する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、バックレスト8B内のフレーム95には、ロック装置90が組み付けられている。
図1及び
図3に示すように、ロック装置90は、起立した状態のバックレスト8Bにおける上端部かつ車両外側の角部に配置されている。
図3に示すように、ロック装置90は、進入口90A、及び進入口90Aを塞ぐように変位可能な図示しないフォーク等を有する周知の構成を有している。
【0030】
図1〜
図3及び
図5に示すように、シートリクライニング装置5は、ストライカ53を有している。ストライカ53は、金属丸棒が略「U」字形状に折り曲げ加工されてなる。ロック装置90は、進入口90A内で図示しないフォークがシートリクライニング装置5のストライカ53と係合することにより、バックレスト8Bの傾動姿勢を固定する。
【0031】
なお、図示は省略するが、バックレスト8Bの上端部には、ロック装置90に作用してロック装置90とストライカ53との係合を解除する解除レバーが設けられている。搭乗者がその解除レバーを操作してロック装置90とストライカ53との係合を解除すると、
図2に示すように、バックレスト8Bを揺動軸心X8周りで前方に倒すことができる。
【0032】
図3及び
図5に示すように、シートリクライニング装置5は、レール50、スライダ52及びロックレバー55を有している。
【0033】
レール50は、金属鋼板が略「C」字断面形状に折り曲げ加工され、D1方向に直線状に延びる形状とされている。D1方向は、前から後に向かいながら下り傾斜する方向である。レール50には、略クランク形状に折り曲げられた取付部50Tが取り付けられている。レール50は、図示しない止めネジを用いて取付部50Tを車体9Bに締結することにより、車体9Bに固定される。レール50には、D1方向に並ぶ複数のラッチ穴50Bが貫設されている。
【0034】
図3に示すように、スライダ52は、D1方向に長い略矩形状の金属板材である。スライダ52は、レール50内に収容されている。スライダ52には、ストライカ53及びレバー支持部材54が固定されている。スライダ52は、ストライカ53及びレバー支持部材54と一体で、レール50に案内されてD1方向に摺動可能となっている。
【0035】
図3及び
図5に示すように、ロックレバー55は、レバー支持部材54の上端部に保持された揺動軸56周りに揺動可能に支持されている。ロックレバー55は、揺動軸56より上方に延びた後、車両外側に向かって突出する入力部55Bを有している。また、ロックレバー55は、
図5に示すように、揺動軸56よりも下方に延びた後、車両外側に向かって突出するラッチ爪55Aを有している。
【0036】
ロックレバー55は、図示しないねじりコイルバネによって、ラッチ爪55Aを車両外側に進行させる方向に付勢されている。これにより、ラッチ爪55Aがレール50の複数のラッチ穴50Bのいずれか1つと対向すれば、その内部に進行して、双方が互いに係合し、レール50に対するスライダ52の摺動を規制する。このため、例えば、ラッチ爪55Aが最前方のラッチ穴50Bに係合すれば、ストライカ53が最前方の位置で固定される。ラッチ爪55Aが最後方のラッチ穴50Bと係合すれば、ストライカ53は最後方の位置で固定される。
【0037】
レバー支持部材54の下端部は、車両外側に向かって突出している。レバー支持部材54の下端部には、アウターチューブ20Tにおけるケーブル20の他端22に近い端部22Tが係止されている。ロックレバー55の入力部55Bには、ケーブル20の他端22が連結されている。
【0038】
バックレスト8Bの傾動姿勢を変更する場合、搭乗者がハンドル7の操作レバー80を
図4等に示すD2方向に揺動させるように操作すると、
図5に示すケーブル20の他端22が下方に変位する。これにより、ロックレバー55が揺動し、ラッチ爪55Aが車両内側に後退して、ラッチ穴50Bから離脱する。その結果、レール50に対するスライダ52の摺動が許容され、ストライカ53の位置を変更可能となる。そして、ストライカ53の位置が
図1〜
図3及び
図5に示すD1方向に段階的に変位することにより、その変位がロック装置90を介してバックレスト8Bに伝達され、バックレスト8Bの傾動姿勢が段階的に変化する。
【0039】
<ハンドルの具体的構成>
図4、
図6、
図7及び
図9〜
図11に示すように、ハンドル7を構成するハンドルハウジング70は、本実施例では樹脂成形品であり、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形によって製造されている。また、ハンドル7を構成する操作レバー80も、本実施例では樹脂成形品であり、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形によって製造されている。
【0040】
図4に示すように、ハンドルハウジング70は、フランジ部73を有している。フランジ部73は、上方から見て前後方向に長い略矩形環状をなしている。フランジ部73の上面は、車室9Aに露出する意匠面とされている。
【0041】
図4、
図6〜
図7及び
図9等に示すように、ハンドルハウジング70は、前壁70F、底壁80G、第1壁70A、第2壁70B、第3壁70C及び第4壁70Dを有している。
【0042】
前壁70Fは、フランジ部73の内周縁のうちの前方の部分から下向きに延びる略板状部分である。底壁80Gは、前壁70Fの下端部に接続し、後向きに延びる略板状部分である。底壁80Gは、前後方向の中間部において下向きにクランク状に屈曲し、さらに後方に延びている。底壁80Gの後端部は、フランジ部73の内周縁のうちの後方の部分の真下まで延びている。
【0043】
第1壁70Aは、フランジ部73の内周縁のうちの車両外側の部分から下向きに延びる略板状部分である。第2壁70Bは、フランジ部73の内周縁のうちの車両内側の部分から下向きに延びる略板状部分である。第1壁70Aの前端部と第2壁70Bの前端部とはそれぞれ、前壁70Fに接続している。第1壁70Aの下端部と第2壁70Bの下端部とはそれぞれ、底壁80Gに接続している。
図6及び
図7に示すように、第1壁70Aの後端部及び第2壁70Bの後端部は、フランジ部73の内周縁のうちの後方の部分の真下まで延びている。
【0044】
図7に示すように、第3壁70Cは、第1壁70Aにおける前後方向の中間部から車両内側に突出した後に屈曲し、後向きに略板状に延びている。第3壁70Cは、第1壁70A及び第2壁70Bと略平行に延在している。第3壁70Cの後端部も、フランジ部73の内周縁のうちの後方の部分の真下まで延びている。
図9〜
図10では、第3壁70Cにおける後向きに略板状に延びる部分は、紙面手前に位置しているので図示されていない。
【0045】
図9等に示すように、第4壁70Dは、第1壁70Aにおける後方、かつ上方の部分から車両内側に向かって突出し、かつ前後方向に延びている。第4壁70Dの前端部は、第3壁70Cの前端かつ上端の部分に接続している。
【0046】
図4、
図7及び
図9等に示すように、ハンドルハウジング70には、操作レバー収容部72及び収容室71が形成されている。
【0047】
操作レバー収容部72は、前壁70F、底壁80Gの前方の部分、第1壁70A、第2壁70Bの前方の部分、第3壁70C及び第4壁70Dによって区画されている。操作レバー収容部72は、上方と後方が開放されている。
【0048】
収容室71は、底壁80Gの後方の部分、第1壁70Aの後方の部分、第3壁70C及び第4壁70Dによって区画されている。収容室71は、後方が開放されている。
【0049】
図4〜
図7に示すように、第2壁70Bの後方の部分には、支持穴74Aが車両内外方向に貫設されている。
図7に示すように、第3壁70Cには、支持穴74Bが車両内外方向に貫設されている。支持穴74A、74Bは、第1軸心X1を規定している。
【0050】
図9に示すように、底壁80Gの後方の部分には、係合部76と解除操作部78とが形成されている。係合部76は、底壁80Gの後方の部分を上下方向に貫通する穴である。解除操作部78は、底壁80Gの係合部76よりも前方の部分から下方に分岐した後、後方に片持ち梁状に延びている。解除操作部78の後端部は、上向きに屈曲し、係合部76の後方の部分に進入している。
【0051】
第4壁70Dには、係合部77と解除操作部79とが形成されている。係合部77及び解除操作部79は、係合部76及び解除操作部78と対をなしている。係合部77は、第4壁70Dを上下方向に貫通する穴である。解除操作部79は、第4壁70Dの係合部77よりも前方の部分から上方に分岐した後、後方に片持ち梁状に延びている。解除操作部79の後端部は、下向きに屈曲し、係合部77の後方の部分に進入している。
【0052】
図4、
図7及び
図9等に示すように、操作レバー80は、レバー本体81、軸部82及び接続部85を有している。
【0053】
レバー本体81は、操作レバー収容部72内に収容されている。レバー本体81の後部は、
図9に示すように、下向きに膨らんでおり、
図7に示すように、第2壁70Bの後方の部分と、第3壁70Cとによって、車両内外方向から挟まれている。
【0054】
軸部82は、レバー本体81の後部から車両外側と車両内側との向かって円柱軸状に突出し、支持穴74A、74Bに挿入されている。これにより、操作レバー80は、第1軸心X1周りで揺動可能にハンドルハウジング70に支持されている。
【0055】
図4に示すように、第2壁70Bの車両内側を向く面には、第1軸心X1を軸心とする円筒部70Kが凸設されている。円筒部70Kには、捻りコイルバネ89が装着されている。捻りコイルバネ89の一端部89Aは、第2壁70Bの後端部に係止されている。捻りコイルバネ80Sの他端部は、第2壁70Bに形成された開口70Uを介して、操作レバー収容部72内に進入し、レバー本体81に係止されている。捻りコイルバネ89は、操作レバー80が
図4等に示すD2方向とは逆方向に、すなわち、操作レバー収容部72内に引っ込むように、操作レバー80を付勢している。
【0056】
図4、
図7及び
図9等に示すように、レバー本体81の後部には、第1突出部85A及び第2突出部85Bが形成されている。第1突出部85Aは、軸部82よりも後方の位置から後向きに突出している。第2突出部85Bは、軸部82よりも下方の位置から後向きに下り傾斜して突出している。接続部85は、第1突出部85Aと第2突出部85Bとの間に形成される凹部である。
【0057】
<ケーブル装置の具体的構成>
図8に示すように、ケーブル装置1を構成するケース10は、本実施例では樹脂成形品であり、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形によって製造されている。また、ケーブル装置1を構成するリンクレバー30も、本実施例では樹脂成形品であり、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形によって製造されている。なお、以下の説明では、前後方向、上下方向及び車両内外方向について、
図10等に示すように、ケース10がハンドルハウジング70の収容部71に収容された状態を基準とする。
【0058】
図8に示すように、ケーブル装置1を構成するケーブル20は、本実施例では複数の鋼製ワイヤが撚り合わされてなる鋼索である。ケーブル20は、可撓性を有するアウターチューブ20Tに摺動可能に挿通されている。ケーブル20の一端21は、鋼索の先端にアルミ製のエンド部材がかしめられてなる。アウターチューブ20Tにおけるケーブル20の一端21に近い端部21Tは、頭部と、ネジ溝によって頭部に対して接近及び離間可能な略筒状の締結部とからなる周知の構成である。
図5に示すように、ケーブル20の他端22も、鋼索の先端にアルミ製のエンド部材がかしめられてなる。アウターチューブ20Tにおけるケーブル20の他端22に近い端部22Tも、頭部と、ネジ溝によって頭部に対して接近及び離間可能な略筒状の締結部とからなる周知の構成である。
【0059】
図8及び
図9等に示すように、ケース10は、基部11、支持軸13、前部対向壁11F、第1対向壁11G、第2対向壁11D及びアウターチューブ保持部12を有している。
【0060】
基部11は、前後方向及び上下方向に略平板状に延在している。基部11は、車両内外方向から見て略矩形状とされている。
【0061】
支持軸13は、基部11の上方の部分から車両内側に向かって突出する円柱軸である。支持軸13は、車両内外方向に延びる第2軸心X2を規定している。支持軸13の外周面には、複数の係止爪13Tが径内方向に弾性変形可能に形成されている。
【0062】
前部対向壁11Fは、基部11の前端から車両内側に向かって突出し、かつ上下方向に延びている。第1対向壁11Gは、基部11の下端から車両内側に向かって突出し、かつ前後方向に延びている。第2対向壁11Dは、基部11の上端から車両内側に向かって突出し、かつ前後方向に延びている。
【0063】
第1対向壁11Gには、被係合部16が形成されている。被係合部16は、第1対向壁11Gにおける前後方向の中間部が部分的に切り離されて、片持ち梁状とされた部分である。被係合部16は、後方に向かうにつれて下り傾斜し、その後端が段状に凹んでいる。
【0064】
第2対向壁11Dには、被係合部17が形成されている。被係合部17は、被係合部16と対をなしている。被係合部17は、第2対向壁11Dにおける前後方向の中間部が部分的に切り離されて、片持ち梁状とされた部分である。被係合部17は、後方に向かうにつれて上り傾斜し、その後端が段状に凹んでいる。
【0065】
アウターチューブ保持部12は、基部11の後端かつ下端の角部から後方に突出している。アウターチューブ保持部12は、断面略C字形状とされ、その途中に形成された区画壁に係止凹部12Cが切り欠かれている。アウターチューブ20Tの端部21Tは、頭部と締結部とで係止凹部12Cの周囲を挟持することにより、アウターチューブ保持部12に保持される。その結果、ケーブル20の一端21が、ケース10内に配置される。
【0066】
リンクレバー30は、一端部に挿通穴30Hが形成され、他端部にエンド保持部30Eが形成され、中間部に被接続部35が形成されている。被接続部35は、円柱形状をなして車両内側に向かって突出している。挿通穴30Hがケース10の支持軸13に挿通され、各係止爪13Tが挿通穴30Hの内周縁に係合することにより、リンクレバー30は、第2軸心X2周りで揺動可能にケース10に支持されている。リンクレバー30のエンド保持部30Eは、アウターチューブ保持部12よりも前方に位置し、ケース10内でケーブル20の一端21と接続されている。
【0067】
このような構成であるケーブル装置1は、予め、ケース10、リンクレバー30、ケーブル20及びアウターチューブ20Tが組み付けられたユニットとして製造され、車両の製造ラインにおいて、車両用シート8、ハンドル7及びシートリクライニング装置5とともに組み付けられる。
【0068】
この際、
図9に示すように、ケーブル装置1のケース10をハンドルハウジング70よりも後方の位置から前方に変位させ、
図10に示すように、収容部71に挿入する。すると、ケース10は、第1対向壁11Gが底壁80Gの後方の部分に案内され、かつ、第2対向壁11Dが第4壁70Dに案内されて、収容部71内に進入する。この際、被係合部16、17は、弾性変形する。そして、前部対向壁11Fが第3壁70Cにおける第1壁70Aから車両内側に突出する部分に当て止まる位置までケース10が進入すると、被係合部16、17が復元力によって係合部76、77に係合し、ケース10が収容部71から抜けないように固定する。
【0069】
こうして、ケース10は、収容室71に収容された状態で、ハンドルハウジング70に保持される。この際、凹部である接続部85内に被接続部35が進入して、被接続部35が接続部85に接続する。また、
図7及び
図10等に示すように、第1軸心X1と第2軸心X2とは、同軸に配置される。
【0070】
図10に示すように、被接続部35は、接続部85に接続した状態で、第1突出部85Aの下端縁に隣接した位置にある。このため、
図11に示すように、搭乗者が操作レバー80を揺動させると、被接続部35は、第1突出部85Aに押し下げられて、第2軸心X2周りで下方かつ前方に変位する。このため、リンクレバー30が第2軸心X2周りで揺動し、エンド保持部30Eが前方に変位して、ケーブル20の一端21を引く。その結果、上述したように、シートリクライニング装置5において、ストライカ53の位置を変更可能となる。
【0071】
図10に示すように、係合部76と被係合部16とが係合する状態で、解除操作部78を上向きに押すと、解除操作部78の後端部が被係合部16を押し上げて、被係合部16を係合部76から離間させる。また、係合部77と被係合部17とが係合する状態で、解除操作部79を下向きに押すと、解除操作部79の後端部が被係合部17を押し下げて、被係合部17を係合部77から離間させる。こうして、解除操作部78、79が係合部76、77と被係合部16、17との係合を解除した状態では、ケース10を収容室71から容易に引き抜くことができる。この際、被接続部35は、凹部である接続部85内から後方に離間するだけであって、ケース10の引き抜きを妨げない。
【0072】
<作用効果>
実施例のケーブル装置1では、
図3等に示すように、上記従来のケーブル装置とは異なり、ケーブル20が第1のケーブルと第2のケーブルとに分割されておらず、また、上記従来のケーブル装置に係る第1、2の結合ケースや第1、2の結合ピースを有しない簡素な構成を採用している。
【0073】
そして、このケーブル装置1では、
図8及び
図9等に示すように、ケース10にリンクレバー30が第2軸心X2周りで揺動可能に支持されており、リンクレバー30のエンド保持部30Eにケーブル20の一端21が接続されている。このため、
図4及び
図10等に示すように、ケース10をハンドルハウジング70の収容室71に収容するだけで、ハンドル7にケーブル装置1を取り付ける作業を容易に実施でき、操作レバー80でシートリクライニング装置5を操作可能となる。
【0074】
したがって、実施例のケーブル装置1では、製造コストの低廉化と、組付作業の簡素化とを実現できる。また、実施例のケーブル装置1が奏する作用効果により、車両の車室9A内にハンドル7やシートリクライニング装置5を組み付ける製造工程においても、組付作業の簡素化と、製造コストの低廉化とを実現できる。
【0075】
また、このケーブル装置1では、
図10に示すように、収容室71にケース10が収容されると同時に、操作レバー80の接続部85にリンクレバー30の被接続部35が接続して、リンクレバー30が操作レバー80の揺動によって変位可能となる。その結果、連結ピン等の連結手段によってリンクレバー30を操作レバー80に連結する作業を別途行う必要がないので、組付作業を一層簡素化できる。
【0076】
さらに、このケーブル装置1では、
図10に示すように、収容室71にケース10が収容されると同時に、ハンドルハウジング70の係合部76、77にケース10の被係合部16、17が係合して、ケース10を収容室71に固定する。その結果、ネジ等の締結手段によってケース10を収容室71に固定する作業を別途行う必要がないので、組付作業を一層簡素化できる。
【0077】
また、このケーブル装置1では、
図10に示すように、収容室71にケース10が収容された状態で、解除操作部78によって被係合部16を押し上げ、解除操作部79によって被係合部17を押し下げる操作によって、係合部76、77と被係合部16、17との係合が解除される。これにより、このケーブル装置1では、ハンドルハウジング70の収容室71からケース10を容易に取り外すことができる。その結果、ハンドル7やケーブル装置1の保守作業等を容易に実施できる。
【0078】
さらに、このケーブル装置1では、
図7に示すように、第1軸心X1と第2軸心X2とは、ケース10が収容室71に収容されることにより、同軸に配置される。このため、このケーブル装置1では、第1軸心X1と第2軸心X2とが異軸に配置される場合と比較して、操作レバー80とリンクレバー30とが近接して配置される。その結果、ハンドルハウジング70を小型化できる。
【0079】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0080】
ハンドルの配置の位置や姿勢は、本実施例には限定されず、適宜変更できる。例えば、
図4等に示すハンドルハウジング70の前端が下方を向くようにハンドル7を第1軸心X1周りで60°〜80°程度下向きに回転させて配置してもよい。この場合、搭乗者は、操作レバー80の下方に突出する先端部を前方に引くように操作することになる。
【0081】
また、ケーブル装置が2個以上であって、1つのハンドルでそれらのケーブル装置を操作可能な構成も、本発明に含まれる。
【0082】
また、実施例では、解除操作部がハンドルハウジングに設けられているがこの構成には、限定されず、解除操作部をケースに設けることもできる。