(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブロック重合体(A)に含まれる、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]=0.01〜0.5である、請求項1記載の皮膚貼付用粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<ブロック重合体(A)>
本発明におけるブロック重合体(A)は、アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチ
レンオキサイド部分(A2)とを有する。
ブロック重合体(A)は、従来のアクリル樹脂に対し、ポリエチレンオキサイド部分が
主鎖に位置する。そのため、水に対する溶解性が向上し、その結果、皮膚貼付用粘着剤に
適用した場合に、粘着剤中の薬剤溶解性や粘着剤中からの薬剤放出性が向上する。さらに
は、ポリエチレンオキサイド部分がアクリル樹脂の側鎖ではなく主鎖に配置されているた
め、ガラス転移温度の低下が抑制でき、皮膚貼付用粘着剤を塗工した後の塗膜を裁断する
際に、粘着剤層が刃に付着しにくいという加工性も向上する。
また、ブロック重合体(A)中のアクリル系ポリマー部分(A1)を、後述する架橋剤
と反応し得る官能基を有するモノマーを用いて形成することで、架橋塗膜を形成すること
もできる。架橋塗膜を形成することによって、粘着剤を剥離する際の皮膚への糊残りや角
質剥離による皮膚刺激性を抑えることができる。アクリル系ポリマー部分(A1)の有し
得る官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート
基などを挙げることができる。
【0020】
ブロック重合体(A)を構成する親水性に富むポリエチレンオキサイド部分(A2)と
疎水性に富むアクリル系ポリマー部分(A1)のバランスにより、粘着剤中の薬剤安定性
、粘着剤中からの薬剤放出性等を効果的に制御し得る。ブロック重合体(A)は、ポリエ
チレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレ
ンオキサイド部分(A2)との合計の質量]=0.01〜0.5であることが好ましく、
(A2)/[(A1)+(A2)]=0.1〜0.4であることがより好ましい。即ち、
アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量
100質量%中、ポリエチレンオキサイド部分(A2)は1〜50質量%であることが好
ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、ブロック重合体(A)は、アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエ
チレンオキサイド部分(A2)とが、下記式(I−1)〜(I−3)のいずれかの構造を
介して結合されていればよく、合成方法に関して特に限定されるものではない。
【0025】
上記式(I−1)により結合してなるブロック重合体(A)について説明する。
ラジカル重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(例えば、和光純
薬工業株式会社の市販品「V−501」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、
末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、ポリエチレンオキサイ
ド部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応することで
、アクリル系ポリマー部分(A1)と、ポリエチレンオキサイド部分(A2)とが式(I
−1)により結合してなるブロック重合体を(A)得ることができる。
【0026】
あるいは、アクリル系ポリマーを合成する際のラジカル重合開始剤として、ポリエチレ
ンオキサイド部分(A2)を有し、質量平均分子量が5,000〜10万である、下記一
般式(II)にて示される部位を有する高分子アゾ系重合開始剤を用いて、アクリル系モ
ノマーを重合して得ることができる。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ
基(−N=N−)が繰り返し結合した構造を有しており、本実施形態では、高分子セグメ
ントとしてPEGブロックを含む高分子アゾ開始剤を用いることで、容易にブロック重合
体(A)を合成できる。
【0027】
【化4】
(式中、m、nは1以上の整数を示す。)
【0028】
前記高分子アゾ重合開始剤の質量平均分子量は、5000〜10万程度、好ましくは1
万〜5万であればよい。また、該開始剤のPEG部分の分子量は、800〜1万程度、好
ましくは1000〜8000程度であればよい。
前記高分子アゾ重合開始剤は、ポリエチレンオキサイド部分(A2)及びアゾ基(−N
=N−)を含有する繰り返し部分を含む。
前記高分子アゾ重合開始剤はポリエチレンオキサイド部分(A2)を有しているため、
水、アルコール、有機溶剤に可溶であり、溶液重合や乳化重合、分散重合にてブロック重
合体(A)の合成が可能である。また、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分
:―N=N−)を有しているため、別途重合開始剤を使用する必要がなく、さらには末端
反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性、安定性が高いという特徴を有している
。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH
3)CN−(CH
2)
2−COO−(CH
2CH
2O)
m−CO−(CH
2)
2−C(CH
3)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、後
述するアクリル系モノマーを重合させる。そして、アクリル系モノマーから形成されるア
クリル系ポリマー部分(A1)と前記ラジカル由来の部分とが結合した主鎖を形成し、ブ
ロック重合体(A)を形成する。ポリエチレンオキサイド部分(A2)は、ラジカルの一
部に由来する。
高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、和光純薬製の高分子アゾ開始剤VPE020
1((CH
2CH
2O)
mの部分の分子量が約2000、nが6程度)などが例示される。
【0029】
また、本発明では前記の高分子アゾ重合開始剤と併用して、2,2’−アゾビスイソブ
チロニトリルや2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(
シクロヘキサン1−カルボニトリル)や2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニ
トリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)やジ
メチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シ
アノバレリック酸)や2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系開始剤
や、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド
やジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネー
トやジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ
−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエートやtert
−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド
やジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物開始剤を用い
ることができる。これらの開始剤を併用することにより、開始効率を高め効率よくアクリ
ル系ポリマー部分(A1)にPEGに組み込むことができ、残留モノマーを減らすことが
できる。
【0030】
また、合成時には、用途に応じてラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等
のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用して、
分子量や末端構造を制御しても良い。
【0031】
次にアクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とが上記
式(I−2)を介して結合してなるブロック重合体(A)について説明する。
ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−
メチルプロパンアミド](例えば、和光純薬工業株式会社の市販品「VA−086」等)
を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂
が得られる。これに、ポリエチレンオキサイド部分を構成する原料としてポリエチレング
リコールを加え、2官能イソシアネート化合物を用いてウレタン化反応することで、アク
リル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とが結合してなるブ
ロック重合体(A)を得ることができる。
【0032】
次に上記式(I−3)により結合してなるブロック重合体(A)について説明する。
ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−
メチルプロピオンアミジン]4水和物(例えば、和光純薬工業株式会社の市販品「VA−
057」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有する
アクリル樹脂が得られる。これに、ポリエチレンオキサイド部分を構成する原料としてポ
リエチレングリコールを加え、エステル化反応することで、アクリル系ポリマー部分(A
1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とが式(I−3)により結合してなるブロッ
ク重合体(A)を得ることができる。
【0033】
ブロック共重合体(A)のガラス転移温度について説明する。ブロック共重合体(A)のガラス転移温度は、−70〜50℃であることが好ましく、−60〜40℃であることがより好ましい。ガラス転移温度を−70〜50℃にすることで、皮膚面への接着性を向上でき、さらには基材に対する良好な埋め込み性が可能となり、皮膚貼付用粘着剤としての加工性を向上することができる。
【0034】
ガラス転移温度の調整は、アクリル系ポリマー部分(A1)を構成するモノマーの種類
を適宜調製することによって可能となる。例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレ
ートなどのポリアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの比率を高くすることにより、
側鎖エーテル結合特有の柔軟性を付与することができるため、ガラス転移温度は−50℃
に近い範囲で調製することができる。
【0035】
<モノマー>
次に、ブロック重合体(A)のアクリル系ポリマー部分(A1)の原料であるアクリル
系モノマーについて説明する。なお、本発明において、アクリル系モノマーとは、アクリ
ルモノマーとメタクリルモノマーの両方を意味する。
使用できるモノマーとしては、例えば、架橋点となる官能基を有さないモノマーや、架
橋点となる官能基を有するモノマーに分けて挙げることができる。
架橋点となる官能基を有さないモノマーとしては、例えば、
アルキル基の炭素数が1〜20のアルキルアクリレート;
アルキル基の炭素数が1〜20のアルキルメタクリレート;
メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エト
キシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチ
ル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエ
トキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エ
チル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2
−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ
フルフリル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレン、スチレンなどのビ
ニル基含有モノマー;
N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、
N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有
モノマー;
などが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0036】
架橋点となる官能基を有するモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基
含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有
モノマーなどを使用することができる。
例えば、カルボキシル基が導入された共重合体は、エポキシ化合物やアジリジン化合物
、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド化
合物により架橋することができる。水酸基が導入された共重合体は、イソシアネート化合
物、カルボジイミド化合物等により架橋することができる。アミノ基が導入された共重合
体は、エポキシ化合物により架橋することができる。イソシアネート基が導入された共重
合体は、水酸基含有化合物により架橋することができる。これら、架橋点となる官能基を
有するモノマーの使用量は、全モノマーの合計100質量%中、10質量%以下で使用す
ることが好ましい。10質量%以下で使用することで、架橋剤を併用した場合に適度な架
橋密度を有する塗膜を得ることができる。
【0037】
カルボキシル基含有モノマーとしては、その構造中にカルボキシル基有するものであれ
ば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエ
チル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの
繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(
メタ)アクリレート、マレイン酸等が挙げられる。
【0038】
水酸基含有モノマーとしては、その構造中に水酸基を有するものであれば、特に制限は
なく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒド
ロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−
ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシブチル、単官能(メタ)アクリ
ル酸グリセロール、ラクトン環の開環付加により末端に水酸基を有するポリラクトン系(
メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレン
オキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ
)アクリル酸エステル、グルコース環系(メタ)アクリル酸エステル、4−ヒドロキシス
チレン、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0039】
エポキシ基含有モノマーとしては、その構造中にエポキシ基を有するものであれば、特
に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エ
ポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0040】
アミノ基含有モノマーとしては、その構造中にアミノ基を有するものであれば、特に制
限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モ
ノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリ
ル酸モノエチルアミノプロピル等が挙げられる。
【0041】
本発明では、ブロック重合体(A)の皮膚への糊残りを抑えるという観点から、架橋点
となる官能基を有するモノマーを共重合させることが好ましい。これにより後述する架橋
剤と反応し得る官能基を導入することができ、架橋塗膜を形成できる。
【0042】
さらに、本発明では、ブロック重合体(A)に部分的に架橋構造を導入するために多官
能モノマーをさらに共重合させてもよい。
共重合しながら架橋する場合、架橋割合は、用いる多官能モノマー量が多いほど架橋度
が高くなり、反応中にゲル化する可能性も高まる。そのため、多官能モノマーの量として
は、全モノマー100質量%中、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜5質
量%がより好ましい。ブロック重合体(A)が多官能モノマーにより架橋している場合、
難水溶性になるため、架橋剤を使用した場合と同様に、基材からはがれるという問題を低
減することができる。
【0043】
多官能モノマーとしては、その構造中にエチレン性不飽和基を2つ以上有するものであ
れば、特に制限はなく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート
、プロプレングリコールポリエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ジプロプレン
グリコールポリエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリ
ンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ト
リプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコール変性トリ
メチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ
)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリ
トールヘキサ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリ
レート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレート類;あるいは、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ネオペ
ンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、グリセロールジグ
リシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル
の(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールF型エポキシの(メタ)アクリル酸付加物
、又はノボラック型エポキシの(メタ)アクリル酸付加物等のエポキシ(メタ)アクリレ
ート類等が挙げられる。また、以上に挙げた(メタ)アクリレートを、更に(ポリ)アル
キレンオキシドや(ポリ)カプロラクトン等で変性したものも使用することができる。
【0044】
本発明において、ブロック重合体(A)は、公知の方法により合成できる。例えば、溶
液重合、塊状重合、乳化重合、分散(沈殿)重合などが好ましく、溶液重合や分散(沈殿
)重合がより好ましい。
【0045】
前述の通り、ブロック重合体(A)は、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/
[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質
量]=0.01〜0.5であることが好ましく、(A2)/[(A1)+(A2)]=0
.1〜0.4であることがより好ましい。
本発明における、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー
部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]の求め方について
説明する。
ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量を計算する際、厳密には、アゾ系重合開始
剤中のポリエチレンオキサイドの重量のみを計算して求めるべきであるが、本発明におい
ては、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する高分子アゾ系重合開始剤の質量をそ
のまま適応することにする。また、アクリル系ポリマー部分(A1)の質量は、重合に供
したアクリル系モノマーの合計量である。
すなわち、モノマー90質量部、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する高分子
アゾ系重合開始剤10質量部を用いて合成した場合、ポリエチレンオキサイド部分(A2
)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)と
の合計の質量]は0.1となる。
【0046】
ブロック重合体(A)の質量平均分子量は、取り扱い性およびシート状支持体へ塗布す
る観点から、10万〜200万であることが好ましい。質量平均分子量が10万以上であ
ることにより、ポリマーの絡み合いによる高い凝集力を付与することができ、皮膚への貼
り付け後に剥がす際、糊残りが発生しにくくなる。
なお、ブロック重合体(A)の質量平均分子量の調製は、例えば、高分子アゾ重合開始
剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率を適宜変
更することによって可能となる。たとえば、高分子アゾ重合開始剤中に含まれるアゾ基の
モル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率が200であると200量体のア
クリル系ポリマーがPEG鎖の間に組み込まれることになる。
【0047】
<架橋剤>
次に、本発明で用いることのできる架橋剤について説明する。本発明において用いるこ
とのできる架橋剤としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、およびアジリジニ
ル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものの他、金属キレート化合物、カル
ボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、塗膜の弾性率や耐性を上げ
る目的で使用したり、接着力を調製したりするために用いることができる。
【0048】
[エポキシ基を有する架橋剤]
本発明で用いられるエポキシ基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキ
シ基を有するものであればよく、特に限定されるものではない。
2官能エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジル
エーテル、ポリエチレンオキサイドジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリ
シジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリ
コールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1
,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエ
ーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、ビスフェノー
ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹
脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、
レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキ
シアントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、N,
N−ジグリシジルアニリン等の芳香族エポキシ化合物、上記記載の芳香族エポキシ化合物
の水素添加物、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の脂環式エポキシ化合物な
どが挙げられる。
エポキシ基を3つ以上有する架橋剤としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレー
ト、トリスフェノール型エポキシ化合物、テトラキスフェノール型エポキシ化合物、フェ
ノールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0049】
[イソシアネート基を有する架橋剤]
本発明で用いられるイソシアネート基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上の
イソシアネート基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。
2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシ
アネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン
ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネ
ート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることが
できる。
3官能イソシアネート化合物としては、上記で説明したジイソシアネートのトリメチロ
ールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3
量体が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する架橋剤中のイソシアネート基は、ブロック化されてい
ても良いし、ブロック化されていなくても良い。
本発明で用いられるブロック化イソシアネート架橋剤としては、前記イソシアネート化
合物中のイソシアネート基がε−カプロラクタム、MEK(メチルエチルケトン)オキシ
ム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックされたブロック化
イソシアネート化合物であればよく、特に限定されるものではない。
【0050】
[アジリジニル基を有する架橋剤]
本発明で用いられるアジリジン化合物としては、1分子中に2個以上のアジリジン基を
有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。アジリジン化合物としては、
例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)
プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン
等が挙げられる。
【0051】
[金属キレート化合物]
本発明で用いられる金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムキレート化合
物、アルミニウムアルコキシド化合物、アルミニウムアシレート化合物などの有機アルミ
ニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタンアシレート化
合物などの有機チタン化合物、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド
化合物、ジルコニウムアシレート化合物などの有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0052】
[カルボジイミド基含有化合物]
本発明で用いられるカルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボ
ジライトシリーズを用いることができ、V−02、V−04、V−06などの水性タイプ
、V−01、V−03、V−05、V―07、V―09などの油性タイプ等が挙げられる
。
【0053】
[β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物]
本発明では、β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物も架橋剤として用いることが
できる。
β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、分子内にβ−ヒドロキシアルキ
ルアミド基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。β−ヒドロキ
シアルキルアミド基含有化合物としては、N,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシ
エチル)アジパミド(エムスケミー社製PrimidXL−552)をはじめとする種々
の化合物を挙げることができる。
【0054】
本発明において、架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い
。架橋剤の使用量は、ブロック重合体(A)中に含まれる官能基の種類やモル数を考慮し
て決定すればよく、特に限定されるものではないが、通常はブロック重合体(A)100
質量部に対して0.1質量部〜10質量部の範囲で用いられる。ブロック重合体(A)中
に含まれる官能基のモル数よりも少ない範囲で配合することで、未反応の架橋剤が経皮的
に体内に吸収される懸念をなくすことができる。この範囲であれば、粘着剤組成物の弾性
率や接着力の調整が可能となる。
【0055】
<粘着付与剤>
本発明において添加することができる粘着付与剤としては、例えば、ロジン、水素添加
ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テ
ルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン
樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。
これらの粘着付与剤を配合させた場合、タック、接着剤及び保持力の調整が容易となる
。また、これらは1種または2種以上を併用して用いることもできる。粘着付与剤の配合量
は、その種類および極性等により異なるが、通常は皮膚貼付用粘着剤の総重量に対して1
重量%〜50重量%の範囲で用いられる。
【0056】
本発明の皮膚貼付用粘着剤は、次項で述べるような経皮吸収性薬剤を含まずに、皮膚に
貼付するための粘着シート形成に用いることもできる。そのような場合、本発明の皮膚貼
付用粘着剤は、皮膚との親和性を高めるためにグリセリンのような成分をさらに含むこと
ができる。
【0057】
[経皮吸収性粘着剤]
本発明の経皮吸収性粘着剤は、上記本発明の皮膚貼付用粘着剤と経皮吸収性薬剤とを含
む。
<経皮吸収性薬剤>
本発明において添加することができる薬剤としては、特に限定はなく、創傷治療用、局
所投与用、または全身投与用等いずれの薬剤を添加しても良い。具体的には、消炎鎮痛剤
、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗腫瘍剤
、抗高血圧・不整脈用剤、抗うつ・抗不安剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、喘息・鼻アレル
ギー治療剤、抗凝血剤、鎮痙剤、脂溶性ビタミンなどがあげられる。
薬剤の配合量は、薬剤の種類、貼付剤の使用目的により異なるが、皮膚貼付用粘着剤の
総重量に対して0.1重量%〜30重量%の範囲で通常は用いられる。
【0058】
<経皮吸収促進剤>
本発明では、粘着剤層内での薬剤の溶解性や拡散性をよくするために、さらに経皮吸収
促進剤を添加することができる。
経皮吸収促進剤としては、具体的には、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン類、
オリーブ油などの動植物油、流動パラフィン、ワックス等の炭化水素類、ラウリン酸、ミ
リスチン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、
イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン
酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル等
の一価アルコール脂肪酸エステル、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、
グリセリンなどのアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、脂肪酸グリ
セリンエステル、脂肪酸ポリエチレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ
糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリアクリ
ル酸、ポリメタクリル酸等の液状樹脂、レチノール、パルミチン酸レチノール、トコフェ
ノール、酢酸トコフェノール等の油性ビタミンが挙げられる。
これらの経皮吸収促進剤を配合させた場合、皮膚貼付用粘着剤層の粘度を調節すること
ができる。また、特に、ミリスチン酸イソプロピルなどの疎水性の高い化合物とグリセリ
ンなどの多価アルコールとを併用するとき、薬剤の経皮吸収を促進する効果もある。経皮
吸収促進剤の配合量は、その種類および極性、粘着剤の種類、極性および分子量などによ
り異なるが、通常は皮膚貼付用粘着剤の総重量に対して1重量%〜50重量%の範囲で用
いられる。
【0059】
さらに本発明の皮膚貼付用粘着剤は、目的を損なわない範囲で任意成分としてさらに、
増粘剤、酸化防止剤、保湿剤、pH調整剤等の添加剤も適宜使用することができる。特に、
皮膚貼付用粘着剤用途で直接肌に接するような用途に使用する場合は、保湿剤を併用する
のが好ましい。
【0060】
本発明の経皮吸収性粘着シートは、経皮吸収性薬剤と、アクリル系ポリマー部分(A1
)とポリエチレンオキサイド部分(A2)が、前述の一般式(I−1)〜(I−3)のい
すれかで結合してなるブロック重合体(A)を含有する経皮吸収性粘着剤から形成される
粘着剤層を、シート状支持体層に直接あるいは間接に積層して得ることができる。たとえ
ば、シート状支持体上に経皮吸収性粘着剤を塗布・乾燥する、あるいは、あらかじめ剥離
性シート(ライナーともいう)上に経皮吸収性粘着剤を塗布・乾燥して形成した粘着剤層
上に、シート状支持体をラミネートすることにより得ることができる。
【0061】
本発明に用いられるシート状支持体としては、通常皮膚貼付剤に用いられる柔軟な基材
を使用することができ、特に限定されない。具体的には例えば、ポリエステル、ポリオレ
フィン、またはセルロースエステル等のポリマーフィルム;ポリエステル、ポリオレフィ
ン、セルロースエステル、ポリウレタン、またはポリアミド等からなる織物・編物・不織
布;または紙などを使用することができる。これらの支持体の厚みは、貼付剤の種類にも
よるが基材の場合、通常50μm〜300μm、好ましくは、70μm〜200μmに設
定され、離型材の場合、3μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μmに設定される
。
【0062】
シート状支持体のうち、不織布のように目が粗く多孔なものは、前述した有機溶媒に溶
解したものを支持体に塗布する方法では、溶解物が抜け落ちる恐れがあり、また、抜け落
ちないまでも内部にまで浸透することから溶解物を余分に消費することにもなり、前述し
たあらかじめ別の基材上に皮膚貼付用粘着剤を塗布・乾燥して形成した粘着剤層をラミネ
ートする製造方法が好ましい。
【0063】
また、皮膚貼付剤は、支持体層、粘着剤層のほかに、例えばライナーや表面保護層等、
通常用いられる他の機能層を積層することができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権
利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「
重量部」および「重量%」をそれぞれ表し、Mwは質量平均分子量、Tgはガラス転移温
度を意味する。
【0065】
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GP
C-101」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質を
その分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明におけ
る測定は、カラムに「KF−805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×3
00mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1wt%、流量1.0ml/mi
n、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mw)の決定
はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線および
分子量、ピーク面積を算出し、保持時間15〜30分の範囲を分析対象として質量平均分
子量を求めた。
【0066】
<ガラス転移温度の測定方法>
溶剤を乾燥除去したブロック重合体(A)について、メトラー・トレド社製「DSC−
1」を使用し、サンプル量約5mgをアルミニウム製標準容器に秤量し、温度変調振幅±
1℃、温度変調周期60秒、昇温速度2℃/分の条件にて、−80〜100℃まで測定し
、可逆成分の示差熱曲線からガラス転移温度を求めた。
【0067】
<ブロック重合体の合成>
[製造例1]
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、
有機溶媒として酢酸エチル100重量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下
管にモノマーとして2―エチルへキシルアクリレートを68重量部、イソブチルアクリレ
ートを20重量部、アクリル酸を2重量部、M−90G(新中村化学社製:メトキシポリ
エチレングリコール#400メタクリレート)を10重量部、重合開始剤としてVPE0
201(和光純薬工業社製:ポリエチレングリコールユニット含有マクロアゾ開始剤)を
10重量部、溶媒として酢酸エチルを10重量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終
了後8時間熟成した後、室温に冷却して反応を停止した。その後、酢酸エチルを加えて希
釈することで、固形分40重量%のブロック共重合体溶液を得た。得られたブロック共重
合体のMwは92万、PEGの割合は9.1重量%、Tgは−58℃であった。
【0068】
[製造例2〜7]
製造例1と同様の方法で、表1の組成および仕込み重量部に従って合成を行い、ブロッ
ク共重合体溶液を得た。その特性値を表1に示す。
【0069】
[製造例8]
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、
有機溶媒としてMEK65重量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモ
ノマーとして2―エチルへキシルアクリレートを30重量部、イソブチルアクリレートを
20重量部、重合開始剤としてV501(和光純薬工業社製:アゾ開始剤)を8.1重量
部、溶媒としてメチルエチルケトン(以下、MEKという)を5重量部仕込み、2時間か
けて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端がカル
ボン酸のアクリル樹脂を得た。その後、PEG2000(日油株式会社製、ポリエチレン
グリコール、Mn=2000、水酸基価=56)を20重量部、触媒としてテトラブチル
オルソチタネートを0.05重量部仕込み、85℃まで昇温し、MEKの流出を確認して
から、温度を120℃に昇温し、その後、30分毎に10℃ずつ昇温しながら脱水反応を
続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真
空下で、1時間保持し、さらに約1kPaの真空下で、2〜3時間反応させ、温度を低下
させた。内温が100℃まで低下したところに、酢酸エチルを加えて希釈することで、固
形分40重量%のブロック重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体のMwは102
,000、PEGの割合は25.5重量%、Tgは−45℃であった。
【0070】
[比較製造例1]
重合開始剤としてVPE0201(和光純薬工業社製:ポリエチレングリコールユニッ
ト含有マクロアゾ開始剤)を10重量部の代わりに、V601(和光純薬工業社製:2,
2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル)を0.9重量部用いた以外は製造例1と同様にし
て、アクリル系モノマーを重合し、固形分40重量%のアクリル重合体溶液を得た。得ら
れたアクリル重合体のMwは76万、PEGの割合は0重量%、Tgは−52℃であった
。
【0071】
[比較製造例2〜3]
比較製造例1と同様の方法で、表1の組成および仕込み重量部に従って合成を行い、ア
クリル重合体溶液を得た。その特性値を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1中、記号は以下の通り。
2EHA:2―エチルへキシルアクリレート
iBA:イソブチルアクリレート
AA:アクリル酸
M−90G:メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
MEA:メトキシエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
VPE0201:ポリエチレングリコールユニット含有マクロアゾ開始剤
V601:2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル
【0074】
[実施例1〜17]、[比較例1〜6]
表2〜3に示した組成で、ブロック重合体、架橋剤、粘着付与剤を配合し、酢酸エチル
溶媒で固形分濃度が30%になるように溶解し、皮膚貼付用粘着剤を調整し、粘着力、糊
残り、皮膚刺激性、経皮吸収促進剤の保持力、薬物放出性を評価した。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表2〜3中、記号は以下の通り。
ALCH:川研ファインケミカル社製、アルミキレート化合物
ケミタイトPZ:日本触媒社製、多官能アジリジン化合物
EX321L:ナガセケムテックス社製、多官能脂肪族エポキシ化合物
V05:日清紡社製、油性カルボジイミド基含有化合物
XL552:エムスケミー社製、ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物
TDI−TMP:トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
エステルガムH:荒川化学工業株式会社製、水素化ロジンエステル化合物
【0078】
<評価>
(1)粘着力
実施例及び比較例で作製した皮膚貼付用粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルム
上にアプリケーターで乾燥塗膜30μになるように塗工し、100℃で2分乾燥した。次
に剥離処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層側にラミネートし
、粘着剤シートを作製した。この粘着剤シートを幅25mm、長さ75mmに切断後、剥
離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、ベークライト板に23℃6
5%RHの条件で貼付した。JISに準じてロール圧着し20分静置させた後、300m
m/minの速度で180度方向に剥離し、その時の剥離力を測定した。
aa:15[N/25mm]<粘着強度
a:12[N/25mm]<粘着強度≦15[N/25mm]
b:8[N/25mm]<粘着強度≦12[N/25mm]
c:粘着強度≦8[N/25mm]
【0079】
(2)糊残り
上記(1)で粘着力を測定したのと同様の試料を用い、拇指テストにより粘着剤の触感
を評価した。指を離した後に、指上に粘着剤が残留するかについて目視で評価した。
aa:指上への糊以降の全くないもの
a:ごくわずかにあるもの
b:部分的にあるもの
c:完全に糊以降するもの
【0080】
(3)皮膚刺激性
上記(1)で粘着力を測定したのと同様の試料を用い、貼付剤から面積が30cm
2の
平面正方形上の試験片を切断後、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを
除去して粘着剤層を全面的に露出した状態とした後、試験片を試験者の上腕部に貼付して
12時間経過した時点において、皮膚表面の状態を目視観察した。
a:紅斑なし
b:ごく弱い紅斑あり
c:紅斑あり
【0081】
(4)経皮吸収促進剤の保持力
実施例及び比較例で作製した皮膚貼付用粘着剤の固形分100質量部対し、経皮吸収促
進剤としてグリセリンを30質量部配合した後、上記(1)と同様にしてポリエチレンテ
レフタレートフィルム/粘着剤層/剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム
からなる積層構成の皮膚貼付用粘着シートを作製した。作製後、皮膚貼付用粘着シートを
23℃、65%RHの条件で1か月静置後、表面剥離処理したポリエチレンテレフタレー
トフィルムを剥がし、前記フィルム表面にグリセリンが転写しているかについて目視で評
価した。
aa:全く転写していない
a:ごくわずかに転写している
b:部分的に転写している
c:完全に転写している
【0082】
(5)薬剤放出性
実施例及び比較例で作製した皮膚貼付用粘着剤の固形分100質量部に対し、経皮吸収
性薬剤としてサリチル酸メチルを1質量部配合した後、上記(1)と同様にしてポリエチ
レンテレフタレート/粘着剤層/剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムか
らなる積層構成の貼付剤を作製し、直径2cmの円形(=3.14cm
2)の大きさに切
り出した。ヌードマウスの背部剥離皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、この皮膚に、
上記貼付剤から剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、露出した
粘着剤層を貼り付け、皮膚透過性を調べた。レセプター液としては、リン酸緩衝液(pH
7.2)を用い、貼付剤から皮膚を通じてレセプター液に移行したサリチル酸メチルの量
を24時間後にHPLCで測定した。サリチル酸メチルの皮膚透過率は、24時間後のレ
セプター液中のサリチル酸メチルの量を、貼付剤中のサリチル酸メチルの量で除算した後
、100倍して求めた。
aa:80[%]≦皮膚透過率
a :60[%]≦皮膚透過率<80[%]
b :40[%]≦皮膚透過率<60[%]
c :皮膚透過率<40[%]
【0083】
表2〜3に示す実施例と比較例を見て分かる通り、比較例1〜6に用いたアクリル重合
体は、アクリル樹脂の主鎖にポリエチレングリコール部分を有していないため、経皮吸収
促進剤の保持力と薬物放出性を共に満足する物性を得ることができなかった。
一方、実施例に用いたブロック重合体は、主鎖にポリエチレングリコール部分(A2)
を有しているため、すべての物性においてバランスよく良好な結果が得られた。また、皮
吸収促進剤の保持力と薬剤放出性を付与することもできた。これは、本発明のブロック重
合体が、主鎖にポリエチレングリコール部分を有することにより、アクリル系ポリマー部
分(A1)の本来の特徴である高い凝集力を保持したまま、水に対する溶解性が向上した
ためだと考えられる。そして、これにより、粘着力の向上に繋がる柔軟性や、経皮吸収促
進剤の保持力と薬物放出性につながる親水疎水バランスを制御することが可能となり、皮
膚貼付用粘着剤として好適なブロック共重合体になったと考えられる。