(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク(2)と前記燃料タンクから排出される燃料蒸気を処理する燃料蒸気処理装置(4)との間の通路に設けられ、燃料を捕捉し、捕捉された燃料を貯留燃料として溜める燃料捕捉器(7)、および
前記燃料捕捉器から延び出し、フィラーパイプ(3)を通して前記燃料タンクに給油される燃料の流れによって低圧を生成する低圧生成部(8)に接続されることによって、前記貯留燃料を前記燃料タンクに戻す戻り系統(9)を備え、
前記低圧生成部は、前記燃料タンクと前記フィラーパイプとを連通する循環系統(8)であり、
前記戻り系統と前記循環系統とは合流部(11)において接続されており、前記貯留燃料は、前記戻り系統および前記循環系統を経由して前記燃料タンクに戻され、
前記循環系統は、前記燃料タンクと前記合流部との間に、前記合流部に低圧を作用させるように通路の断面積を調節する調節弁(12)を有する燃料戻し装置。
前記燃料捕捉器は、前記燃料タンクから前記燃料蒸気処理装置への燃料の漏れ出しを阻止する弁機構(6)を備え、前記燃料捕捉器は、前記弁機構と前記燃料蒸気処理装置との間において燃料を捕捉するように形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料戻し装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
第1実施形態
図1において、燃料タンクシステム1は、車両、船舶などの乗り物に搭載されている。例えば、燃料タンクシステム1は、道路走行車両に搭載されている。燃料タンクシステム1は、液体の燃料を溜める燃料タンク2を有する。液体の燃料は、燃料タンクシステム1が使用される通常の温度において蒸発し、燃料蒸気を生成する。燃料蒸気は、空気と混じる。液体の燃料は、例えばガソリンまたは軽油である。燃料タンクシステム1は、内燃機関などの燃料消費装置に供給される燃料を貯えている。燃料タンクシステム1は、燃料タンク2に燃料を補給するために利用されるフィラーパイプ3を有する。フィラーパイプ3は、燃料タンク2から上へ延び出している。
【0013】
以下の説明では、多くの場合に、液体の燃料は、燃料と呼ばれる。多くの場合に、燃料蒸気と空気との混合気体は、燃料蒸気と呼ばれる。また、「上」および「下」の語は、燃料タンク2が正規の設置状態にあるときの重力方向に対応する。
【0014】
燃料が給油されるとき、フィラーパイプ3の入口端3aから燃料が供給される。燃料は、周囲の気体、例えば空気を巻き込みながらフィラーパイプ3内の通路を流れ下る。燃料は、フィラーパイプ3の出口端3bに到達する。燃料は、出口端3bから、燃料タンク2内に補給される。図中において、燃料の流れは、矢印LFで示されている。図中において、燃料蒸気の流れは、矢印GFで示されている。
【0015】
燃料タンク2は、車両への搭載のために、複雑な形状を有する場合がある。さらに、燃料タンクシステム1を構成するいくつかの部品は、燃料タンク2から離れて設置される場合がある。いくつかの部品は、燃料タンク2よりも高い位置に設置される場合がある。
【0016】
燃料タンクシステム1は、燃料蒸気処理装置(EVPD)4を有する。燃料蒸気処理装置4は、燃料蒸気を処理する。燃料蒸気処理装置4は、燃料タンク2から大気へ放出される燃料蒸気の量を抑制する装置である。燃料蒸気処理装置4は、燃料蒸気を吸着する活性炭を収容したキャニスタを有する。燃料蒸気処理装置4は、燃料タンク2から排出される燃料蒸気を捕捉し、溜める。さらに、燃料蒸気処理装置4は、捕捉された燃料蒸気を燃料消費装置に供給することによって燃料蒸気を燃焼させるパージ装置を備える。パージ装置の一例は、活性炭に空気を供給することにより、活性炭から燃料蒸気を脱離する。さらに、パージ装置は、脱離された燃料蒸気を内燃機関の吸入空気に混合する。燃料蒸気は内燃機関によって燃焼され、処理される。
【0017】
燃料タンクシステム1は、排気系統5を有する。排気系統5は、燃料タンク2と燃料蒸気処理装置4との間に設けられている。排気系統5は、燃料タンク2内の燃料蒸気を燃料蒸気処理装置4に供給する。排気系統5は、燃料タンク2からの排気のための通路を提供する。例えば、給油時において、燃料タンク2内の燃料蒸気は、矢印VFで示されるように排気系統5を経由して燃料蒸気処理装置4に向けて流れる。
【0018】
排気系統5は、上部延長管5aを有する。上部延長管5aは、燃料タンク2から、上への向けて延び出す配管である。上部延長管5aは、燃料タンク2の上部2aから、さらに上へ向けて所定高さだけ延び出している。上部延長管5aの一端は、上部2aに開口している。上部延長管5aの一端は、出口端3bより上に開口している。上部延長管5aは、燃料タンク2の一部とも解することができる。
【0019】
上部延長管5aは、後述の弁機構6および燃料捕捉器7を、燃料タンク2から離れて位置付けることを可能とする。上部延長管5aは、弁機構6および燃料捕捉器7を、上部延長管5aの一端よりも高い位置に位置付けることを可能とする。このような配置は、燃料タンク2の上部壁が凹凸を有している場合に、弁機構6および燃料捕捉器7の設置位置の選択自由度を高める。上部延長管5aの他端は、弁機構6に接続されている。
【0020】
排気系統5は、弁機構6を有する。弁機構6は、排気系統5を経由する燃料の漏れ出しを抑制する。弁機構6は、燃料の到達に応答して排気系統5の通路を開から閉へ切り替える弁、および/または燃料タンク2の傾斜角が所定の角度を上回ると排気系統5の通路を開から閉へ切り替える弁である。弁機構6は、燃料遮断弁とも呼ばれる。弁機構6は、例えば、ロールオーバーバルブと呼ばれる弁によって提供されてもよい。この場合、弁機構6は、燃料タンク2が正規の姿勢から傾斜した場合に、傾斜角が所定角を上回ると、閉弁することによって燃料の漏れ出しを抑制する。弁機構6は、フロートバルブと呼ばれる弁によって提供されてもよい。この場合、弁機構6は、燃料が弁機構6に到達すると、閉弁することによって燃料の漏れ出しを抑制する。図示の例では、弁機構6は、フロートバルブである。
【0021】
排気系統5は、燃料捕捉器7を有する。燃料捕捉器7は、燃料を溜める容器を提供する。燃料捕捉器7は、燃料タンク2と燃料蒸気処理装置4との間の通路に設けられている。燃料捕捉器7は、弁機構6と燃料蒸気処理装置4との間に設けられている。燃料捕捉器7は、弁機構6の直後に設けられている。燃料捕捉器7は、燃料を捕捉し、捕捉された燃料を溜める。燃料捕捉器7は、弁機構6に隣接して設けられた容器によって提供されている。燃料捕捉器7は、弁機構6の径方向外側を囲むように設けられている。
【0022】
燃料捕捉器7は、燃料タンク2から離れて位置付けられている。図示の例では、上部延長管5aによって燃料捕捉器7は、燃料タンク2から離れて位置づけられている。燃料タンク2の上壁が大きい凹凸を有する場合、燃料タンク2の凸部は、燃料捕捉器7の近傍に到達する場合がある。この場合も、燃料捕捉器7は、上部延長管5aと燃料タンク2との接続部位から、離れているから、燃料タンク2から離れて位置づけられているといえる。言い換えると、燃料捕捉器7は、上部延長管5aと燃料タンク2との接続部位より、上に位置づけられている。
【0023】
弁機構6と燃料捕捉器7とは、ひとつの部品として一体化されている。弁機構6と燃料捕捉器7とは、捕捉器ユニット20によって提供されている。この構成では、燃料捕捉器7は、弁機構6を備える関係にある。捕捉器ユニット20は、ハウジング21を有する。ハウジング21は、例えば樹脂製である。ハウジング21は、入口22、出口23、および戻り出口24を有する。入口22は、上部延長管5aに接続されている。入口22は、上部延長管5aを通して燃料タンクから供給される燃料と燃料蒸気とをハウジング21内に導入する。入口22を通る流れは矢印
VF(L1
)で示されている。出口23は、燃料蒸気処理装置4に接続されている。出口23は、ハウジング21内の燃料蒸気を燃料蒸気処理装置4に供給する。戻り出口24は、後述する戻り系統9に接続されている。戻り出口24は、捕捉器ユニット20から戻り系統9へ貯留燃料を供給する。
【0024】
図1および
図2において、捕捉器ユニット20は、弁機構6と燃料捕捉器7とを提供するひとつの配管部品として形成されている。捕捉器ユニット20は、弁機構6を提供するフロート弁25を有する。フロート弁25は、可動弁体を提供する。フロート弁25は、ハウジング21に形成された固定弁座21aと協働して、入口22とハウジング21内との間を、連通状態と遮断状態とに切り替える。図中には、閉弁状態が図示されている。
【0025】
捕捉器ユニット20は、気液分離室26を有する。気液分離室26は、弁機構6と出口23との間に設けられている。気液分離室26は、弁機構6を通過した燃料と燃料蒸気とを分離する。気液分離室26は、ハウジング21によって提供される通路部分と、ハウジング21によって提供される障壁とを有する。通路部分を流れる燃料と燃料蒸気とは、障壁に衝突することによって燃料と燃料蒸気とに分離される。燃料蒸気は障壁を迂回して流れ、出口23へ到達する。図中には、燃料の流れが矢印L2で示されている。燃料は障壁に衝突することによってハウジング21の内面を流れ下る。図中には、燃料の流れが矢印L3で示されている。気液分離室26は、複数の障壁、および/または蛇行状の通路を区画する複数の障壁を有していてもよい。
【0026】
捕捉器ユニット20は、貯留室27を有する。貯留室27は、気液分離室26の下に配置されている。貯留室27は、気液分離室26において分離された燃料を貯留燃料として溜める。貯留室27は、フロート弁25を含む弁機構6を囲むように環状に延在している。貯留室27は、環状の容器として形成されている。貯留室27は、底壁に形成された出口穴21bを通して戻り出口24と連通可能に形成されている。貯留燃料は、出口穴21bを通して戻り出口24へ到達可能である。
【0027】
気液分離室26と貯留室27とは、燃料捕捉器7を形成する。燃料捕捉器7は、弁機構6と燃料蒸気処理装置4との間において燃料を捕捉するように形成されている。
図2には、捕捉され、溜められた貯留燃料の液面CFが例示されている。
【0028】
捕捉器ユニット20は、逆止弁28を有する。逆止弁28は、貯留室27と戻り出口24との間に設けられている。逆止弁28は、その前後に作用する差圧に応答する弁である。逆止弁28は、貯留室27に溜められた貯留燃料の重さに応答する弁である。逆止弁28は、燃料捕捉器7側に入口28aを有し、後述の低圧生成部としての循環系統8側に出口28bを有するダックビル弁である。ダックビル弁は、筒状のボディ28cを有する。出口28bは、ボディ28cに形成されたスリットである。ボディ28cは、出口28bが閉弁状態を維持するようにバイアス力を発生する。出口28bは、ボディ28c内に作用する圧力と、ボディ28c外に作用する圧力との差圧が所定の開弁差圧を上回ると開く。
【0029】
逆止弁28は、貯留室27から戻り系統9への貯留燃料の流れを許容または禁止する。逆止弁28は、貯留室27から戻り系統9への貯留燃料の流れを許容するが、戻り系統9から貯留室27への燃料および燃料蒸気の流れを阻止する。逆止弁28は、戻り系統9を通して燃料タンク2へ向かう順方向流れを許容し、燃料タンク2からの逆方向流れを阻止する。逆止弁28は、燃料捕捉器7の圧力が、低圧生成部側の圧力より所定の閾値差圧を上回って高いときに開弁する。逆止弁28は、貯留室27に溜められた貯留燃料の重さによっても開弁することができる。貯留室27に所定量を上回る貯留燃料が溜まると逆止弁28は開弁する。さらに、上記差圧は、逆止弁28を開きやすくする。これにより、貯留室27内に溜められた貯留燃料が戻り系統9を通して燃料タンク2に戻される。図中には、逆止弁28を通過した貯留燃料の流れが矢印L4で示されている。
【0030】
フロート弁25は、燃料タンク2から燃料蒸気処理装置4への燃料の漏れ出しを阻止する弁機構6を提供するように、その浮力が設定されている。さらに、弁機構6は、フロート弁25の作動特性を調節するためのコイルバネ29を有する。コイルバネ29は、フロート弁25を閉弁方向に押す。フロート弁25は、捕捉器ユニット20へ燃料が到達していないときに開弁状態となり、排気系統5を連通状態とする。捕捉器ユニット20に燃料が到達すると、フロート弁25は燃料に浮くことによって固定弁座21aに着座し、排気系統5を遮断状態とする。
【0031】
図1に戻り、燃料タンクシステム1は、循環系統8を有する。循環系統8は、通路によって提供されている。循環系統8は、循環通路とも呼ばれる。循環系統8は、燃料タンク2内とフィラーパイプ3の入口端3aの近傍との間において気体を循環させる。循環系統8は、燃料タンク2内の上部2aと、フィラーパイプ3の入口端3aの近傍の入口内部3cとを連通する。循環系統8は、燃料タンク2内の気体を入口内部3cに戻す。循環系統8は、液体燃料に巻き込まれる気体を、燃料タンク2内から供給する。循環系統8は、燃料が補給されるときに、入口端3aから外部へ排出される燃料
蒸気の量を抑制する。
【0032】
循環系統8は、低圧生成部を提供する。循環系統8は、燃料タンク2に給油されるときにフィラーパイプ3を通して燃料タンク2に給油される燃料の流れによって低圧を生成する。循環系統8が生成する低圧は、貯留室27内の圧力より低い。循環系統8が生成する低圧は、燃料捕捉器7の内部の圧力よりも低い。循環系統8が生成する低圧は、逆止弁28を開弁させやすくするように逆止弁28の出口28b側に作用する。
【0033】
循環系統8は、上部2aに連通する通路管8bと、入口内部3cに連通する通路管8aとを有する。通路管8bは、燃料タンク2から延び出している。通路管8aは、フィラーパイプ3から延び出している。通路管8aと、通路管8bとの間には、調節弁ユニット30が設けられている。調節弁ユニット30は、循環系統8の一部を提供している。
【0034】
調節弁ユニット30は、ハウジング31を有する。ハウジング31は、例えば樹脂製である。ハウジング31は、入口32、出口33、および戻り入口34を有する。入口32は、通路管8bに接続されている。入口32は、通路管8bを通して燃料タンク2から供給される燃料蒸気をハウジング31内に導入する。入口32を通る流れは矢印GFで示されている。出口33は、通路管8aに接続されている。出口33は、ハウジング31内の燃料蒸気を入口内部3cに供給する。戻り入口34は、後述する戻り系統9に接続されている。戻り入口34は、合流部11を経由して低圧を戻り系統9へ作用させる。さらに、戻り入口34は、戻り系統9から供給される貯留燃料を合流部11に供給する。
【0035】
燃料タンクシステム1は、合流部11を有する。合流部11は、循環系統8と後述の戻り系統9とが合流する通路部分である。合流部11は、循環系統8の一部として機能することによって上記低圧を生成するために寄与する。戻り系統9と循環系統8とは合流部11において接続されている。貯留燃料は、戻り系統9および循環系統8を経由して燃料タンク2に戻される。
【0036】
燃料タンクシステム1は、調節弁12を有する。調節弁12は、循環系統8に設けられている。調節弁12は、燃料タンク2と合流部11との間に設けられている。調節弁12は、合流部11に低圧を作用させるように循環系統8の通路の断面積を調節する。
【0037】
調節弁12は、循環系統8のための通路の流路断面積を小断面積と大断面積とに切り替える。調節弁12は、循環系統8の両端に作用する圧力差に応じて流路断面積を調節する。調節弁12は、循環系統8の両端に作用する圧力差が所定水準を下回るときに小断面積を提供し、上記圧力差が所定水準を上回るときに大断面積を提供する。言い換えると、調節弁12は、上記圧力差が所定水準を下回るときに小流量を許容し、上記圧力差が所定水準を上回るときに大流量を許容する。
【0038】
図1および
図3において、調節弁ユニット30は、合流部11と調節弁12とを提供するひとつの配管部品として形成されている。ハウジング31は、入口32と連通する上流通路35と、出口33と連通する下流通路36とを形成する。ハウジング31は、さらに、合流部11において下流通路36に合流する戻り通路37を形成する。合流部11は、循環系統8における流れ方向に関して、調節弁12よりも下流に設けられている。
【0039】
戻り通路37は、合流部11において下流通路36と合流する。戻り通路37は、貯留燃料を回収するための回収通路とも呼ばれる。合流部11は、下流通路36内における燃料蒸気の流れに沿うように戻り通路37を合流させるように形成されている。戻り通路37は、下流通路36における燃料タンク2からフィラーパイプ3へ向かう方向に沿って徐々に下流通路36に合流するように形成されている。下流通路36と戻り通路37とは、合流部11を頂点とする鋭角をなすように互いに傾斜している。戻り通路37は、下流通路36の上側から、下流通路36に向けて合流している。合流部11は、ベンチュリを形成しており、ベンチュリ部とも呼ぶことができる。
【0040】
図中には、循環系統8における燃料蒸気の流れが矢印L5で示されている。戻り系統9を通して合流部11に到達した貯留燃料の流れL4は、循環系統8における燃料蒸気の流れL5に合流しながら、出口33へ向けて流れる。
【0041】
ハウジング31は、上流通路35と下流通路36とを連通する第1貫通穴31aを有する。第1貫通穴31aは、循環系統8における燃料蒸気の流量が所定の閾値流量を下回る時に、下流通路36において上記低圧を生成するように設定されている。ハウジング31は、上流通路35と下流通路36とを連通する第2貫通穴31bを有する。第2貫通穴31bは、循環系統8における燃料蒸気の流量が所定の閾値流量を上回る時に、下流通路36において上記低圧を生成するように設定されている。第1貫通穴31aは、第2貫通穴31bよりも小さい。第1貫通穴31aは、常時連通している。第2貫通穴31bは、調節弁12によって開閉される可変通路である。
【0042】
調節弁ユニット30は、調節弁12を提供する可動弁体38を有する。可動弁体38は、ハウジング31内に収容されている。可動弁体38は、第2貫通穴31bの周囲に形成された固定弁座と協働する。調節弁12は、可動弁体38の作動特性を調節するためのコイルバネ39を有する。コイルバネ39は、可動弁体38とハウジング31との間に圧縮状態で配置されている。コイルバネ39は、可動弁体38を閉弁方向に押す。可動弁体38は、固定弁座に着座することにより第2貫通穴31bを
遮断状態とする。可動弁体38は、固定弁座から離座することにより第2貫通穴31bを
連通状態とする。可動弁体38は、その弁体の前後、すなわち移動方向に作用する差圧に応答して移動する。可動弁体38は、その前後に作用する差圧に応答して開弁状態と閉弁状態とを切り替える。
【0043】
可動弁体38が第2貫通穴31bを遮断状態としているとき、循環系統8を流れる燃料蒸気の流量は、第1貫通穴31aによって制限される。この結果、循環系統8を流れる流量が制限され、合流部11に十分な低圧が作用する。フィラーパイプ3を流れる燃料によって生成される低圧が大きい場合、可動弁体38の前後にも大きい差圧が作用する。可動弁体38が第2貫通穴31bを連通状態としているとき、循環系統8を流れる燃料蒸気の流量は、大流量となる。この結果、循環系統8として供給することが求められる大量の燃料蒸気の流通を許容しながら、合流部11に低圧を作用させる。
【0044】
図1に戻り、燃料タンクシステム1は、戻り系統9を有する。戻り系統9は、燃料捕捉器7と低圧生成部とを連通する。戻り系統9は、低圧生成部が生成する低圧によって燃料捕捉器7に溜められた捕捉燃料を燃料タンク2に戻す。戻り系統9は、燃料捕捉器7と循環系統8とを連通する通路によって提供される。戻り系統9は、捕捉器ユニット20と調節弁ユニット30とを連通する通路管9aを有する。通路管9aは、戻り出口24と戻り入口34とに接続されている。この実施形態では、燃料捕捉器7、および戻り系統9によって燃料戻し装置が形成されている。
【0045】
合流部11における低圧は、戻り通路37を経由して逆止弁28に作用する。この低圧によって、逆止弁28は開きやすくなる。逆止弁28が開くと、貯留燃料は、戻り出口24、通路管9a、および戻り通路37を経由して合流部11に到達する。貯留燃料は、合流部において循環系統8を流れる燃料蒸気の流によって入口内部3cへ運ばれる。さらに貯留燃料は、フィラーパイプ3を通して燃料タンク2へ戻される。合流部11に十分な低圧が作用しない場合、逆止弁28は開弁しないかもしれない。
【0046】
一方、貯留室27に十分な量の貯留燃料が溜まると、貯留燃料の重さによって逆止弁28が開弁することがある。この場合、貯留燃料は、戻り出口24、通路管9a、および戻り通路37を経由して合流部11に到達する。貯留燃料は、重力によって循環系統8の中を流れ、燃料タンク2へ戻される。例えば、貯留燃料は、合流部11から調節弁12を通して循環系統8を逆流することによって燃料タンク2に戻ることができる。
【0047】
以上に述べた実施形態によると、戻り系統9は、燃料タンク2の外に溜められた貯留燃料を、燃料タンク2に戻す。戻り系統9は、低圧生成部である循環系統8によって生成された低圧によって貯留燃料を燃料タンク2に戻す。しかも、低圧生成部は、フィラーパイプ3を通して燃料タンク2に給油される燃料の流れによって低圧を生成する。よって、電動ポンプに依存することなく貯留燃料を燃料タンク2内に戻すことができる。しかも、給油されている期間中に、貯留燃料を燃料タンク2に戻すことができる。よって、給油されている期間中に燃料タンク2から出る排気に燃料が含まれていても、燃料捕捉器7は、捕捉と貯留とを継続することができる。
【0048】
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0049】
上記実施形態では、弁機構6と燃料捕捉器7とがひとつの捕捉器ユニット20内に配置されている。これに代えて、弁機構6と燃料捕捉器7とは、別の部品として形成されていてもよい。上記実施形態では、燃料捕捉器7は、排気系統5における弁機構6の直後に設けられている。これに代えて、燃料捕捉器7は、燃料タンクシステム1における多様な位置に設けることができる。例えば、燃料蒸気処理装置4の直前に設けられてもよい。また、燃料捕捉器7は、配管の途中に設けられてもよい。
【0050】
上記実施形態では、循環系統8に調節弁12が設けられている。これに代えて、循環系統8は、調節弁12に代わる固定の
オリフィスを備えていてもよい。上記実施形態では、低圧生成部は、循環系統8によって提供される。これに代えて、低圧生成部は、多様な構成をとることができる。例えば、低圧生成部は、フィラーパイプ3内に設けられたベンチュリによって提供されてもよい。また、上記実施形態では、合流部11は調節弁ユニット30に設けられている。これに代えて、合流部11と調節弁12とは、別の配管部品として形成されてもよい。
【0051】
また、循環系統8に代えて、ブリーザー系統における燃料蒸気および/または燃料の流れを利用して低圧が生成されてもよい。また、循環系統8としての機能とブリーザー系統としての機能とを備える通路が利用されてもよい。多くの場合、フィラーパイプ3に挿し込まれる燃料供給ノズルは、燃料を検知することによって給油を停止させる自動停止機構を備えている。ブリーザー系統は、燃料タンク2内の燃料液面が所定水準を超えると、入口内部3cに燃料を流出させることにより、自動停止機構を作動させるための通路である。
【0052】
上記実施形態では、ダックビル弁によって逆止弁28が提供されている。これに代えて、可動弁体と、可動弁体を閉弁方向に付勢するスプリングとを有するチェックバルブを逆止弁として利用してもよい。上記実施形態では、逆止弁28は、捕捉器ユニットに設けられている。これに代えて、逆止弁は戻り系統9の中の任意の位置に設けることができる。例えば、逆止弁を調節弁ユニット30の中に設けてもよい。例えば、逆止弁を合流部11の直前に設けてもよい。また、逆止弁28は、燃料捕捉器7に属する要素として解されてもよい。
【0053】
上記実施形態では、上部延長管5aと通路管8a、8b、9aは、それぞれ独立した配管によって提供されている。これに代えて、これらの配管は、部分的に、または全体的に、他の部材または配管と一体化されてもよい。例えば、上部延長管5aと通路管9aとは部分的に束ねられてもよい。また、捕捉器ユニット20と調節弁ユニット30とがひとつの配管部品として形成されてもよい。