特許第6551219号(P6551219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551219オイルレシーバおよびオイルレシーバの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551219
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】オイルレシーバおよびオイルレシーバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20190722BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-251750(P2015-251750)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-115976(P2017-115976A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】市川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大澤 英也
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−364738(JP,A)
【文献】 特開平5−71616(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/033940(WO,A1)
【文献】 特開2005−83491(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009052595(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機のケース内に配設され、前記変速機内に設けられたギヤの回転により掻き上げられたオイルを捕集するオイルレシーバであって、
鉛直方向の上方向に向けて開放する断面U字形状に、かつ、第一方向に沿って延びるように形成され、前記オイルが流れる底部と、前記底部の幅方向両端から前記上方向に向けて延びる第一側壁部および第二側壁部と、を有する樋部と、
前記オイルを捕捉するとともに、前記樋部に導出する捕捉部と、を備え、
前記捕捉部は、
上面および下面を有する板状に形成されるとともに、前記第一側壁部および前記第二側壁部の一方の上端部から、前記幅方向のうち前記第一側壁部および前記第二側壁部の他方から前記一方に向かう方向である第一幅方向に向かうにしたがって前記上方向に向かって延びるように形成された第一下庇部と、
上面および下面を有し、前記第一幅方向に向かうにしたがって前記上方向に向かって延びる板状に形成された第一本体部を有するとともに、前記第一本体部における前記幅方向のうち前記第一幅方向と反対方向である第二幅方向側の一端が、前記第一下庇部の前記上面の鉛直上の範囲内に前記第一下庇部から離れて位置し、前記第一本体部における前記第一幅方向側の一端が前記第一下庇部より前記第一幅方向に位置する第一上庇部と、
前記第一上庇部の前記第一本体部の前記第二幅方向側の一端の一部と前記第一下庇部の前記上面との一部とを接続する第一接続部と、を備えているオイルレシーバ。
【請求項2】
前記第一下庇部の前記幅方向の長さは、前記車両の傾斜方向が、前記幅方向のうち前記一側壁部および前記第二側壁部の前記一方が前記他方より下方側となる方向である第一傾斜方向であり、かつ、前記車両の傾斜角度が前記第一傾斜方向における最大傾斜角度である場合、前記第一上庇部における前記第二幅方向側の一端が前記第一下庇部の前記上面の鉛直上の範囲内に位置する最小長さに設定されている請求項1記載のオイルレシーバ。
【請求項3】
前記捕捉部は、
上面および下面を有する板状に形成されるとともに、前記第一側壁部および前記第二側壁部の前記他方の上端部から、前記第二幅方向に向かうにしたがって前記上方向に向かって延びるように形成された第二下庇部と、
上面および下面を有し、前記第二幅方向に向かうにしたがって前記上方向に向かって延びる板状に形成された第二本体部を有するとともに、前記第二本体部の前記第一幅方向側の一端が前記第二下庇部の前記上面の鉛直上の範囲内に前記第二下庇部から離れて位置し、前記第二本体部の前記第二幅方向の一端が前記第二下庇部より前記第二幅方向に位置する第二上庇部と、
前記第二上庇部の前記第二本体部の前記第一幅方向側の一端の一部と前記第二下庇部の前記上面との一部とを接続する第二接続部と、をさらに備えている請求項1または請求項2記載のオイルレシーバ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のオイルレシーバの製造方法であって、
熱可塑性樹脂を射出成形するとともに、前記樋部と前記捕捉部とを一体的に形成するオイルレシーバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルレシーバ、特に変速機に用いられるオイルレシーバ、およびオイルレシーバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機のオイルレシーバの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1のオイルレシーバ1は、特許文献1の図2に示すように、上部集油室1aおよび下部集油室1bを備えている。上部集油室1aは、上方に向けて開口する断面U字状に形成され、ギヤによって掻き上げられて上方から下方に向けて落下するオイルの一部を捕捉する。下部集油室1bは、ギヤによって掻き上げられて下方から上方に向けて飛散するオイルの一部を捕捉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−286030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のオイルレシーバの下部集油室1bは、特許文献図2の左方に向けて開口しているため、下方から上方に向けて飛散するオイルを捕捉する効率が比較的低くなると考えられる。また、オイルレシーバにおいては、低コスト化のために簡便な構成にしたいとの要請がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解消するためになされたもので、簡便な構成にて、オイルレシーバの上方から下方に向けて落下するオイルの一部と、オイルレシーバの下方から上方に向けて飛散するオイルの一部とを効率よく捕捉できる変速機のオイルレシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るオイルレシーバは、車両の変速機のケース内に配設され、変速機内に設けられたギヤの回転により掻き上げられたオイルを捕集するオイルレシーバであって、鉛直方向の上方向に向けて開放する断面U字形状に、かつ、第一方向に沿って延びるように形成され、オイルが流れる底部と、底部の幅方向両端から上方向に向けて延びる第一側壁部および第二側壁部と、を有する樋部と、オイルを捕捉するとともに、樋部に導出する捕捉部と、を備え、捕捉部は、上面および下面を有する板状に形成されるとともに、第一側壁部および第二側壁部の一方の上端部から、幅方向のうち第一側壁部および第二側壁部の他方から一方に向かう方向である第一幅方向に向かうにしたがって上方向に向かって延びるように形成された第一下庇部と、上面および下面を有し、第一幅方向に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第一本体部を有するとともに、第一本体部における幅方向のうち第一幅方向と反対方向である第二幅方向側の一端が、第一下庇部の上面の鉛直上の範囲内に第一下庇部から離れて位置し、第一本体部における第一幅方向側の一端が第一下庇部より第一幅方向に位置する第一上庇部と、第一上庇部の第一本体部の第二幅方向側の一端の一部と第一下庇部の上面との一部とを接続する第一接続部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、捕捉部の上方から下方に向けて落下するオイルの一部は、第一上庇部の上面によって捕捉され、第一上庇部の上面に沿って第一上庇部の第二幅方向側の一端に流れ、第一接続部を伝って、または、第一上庇部の第二幅方向側の一端から落下して第一下庇部の上面に到達し、第一下庇部の上面から樋部の底部に導出される。また、第一上庇部の下面における第一下庇部より第一幅方向の範囲は、捕捉部の下方から上方に向けて飛散するオイルの一部を捕捉する。第一上庇部の下面は下方に向いているため、従来技術のように、オイルを捕捉する部位が側方に向けて設けられている場合に比べ、オイルを効率よく捕捉する。第一上庇部の下面によって捕捉されたオイルは、第一上庇部の下面に沿って第一上庇部の第二幅方向側の一端に流れ、上述したように第一下庇部の上面に到達して樋部の底部に導出される。そして、各庇部が板状に形成されているため、捕捉部を比較的簡便に構成することができる。したがって、オイルレシーバは、簡便な構成にて、オイルレシーバの上方から下方に向けて落下するオイルの一部と、オイルレシーバの下方から上方に向けて飛散するオイルの一部とを効率よく捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態における変速機の軸方向断面図である。
図2図1に示すII−II線に沿った変速機の断面図である。
図3図1に示すオイルレシーバの側面図である。
図4図1に示すオイルレシーバの部分拡大上面図である。
図5】図に示すV−V線に沿ったオイルレシーバの断面図である。
図6図5に示すオイルレシーバが第一傾斜方向に傾斜した状態を示す断面図である。
図7】図に示すV−V線に相当する線に沿ったオイルレシーバの金型の断面図である。
図8】本発明の第二実施形態における変速機の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一実施形態)
以下、本発明によるオイルレシーバの第一実施形態について図面を参照しながら説明する。オイルレシーバは、車両(図示なし)の変速機1に取り付けられている。変速機1は、前進6速および後退1速の変速段が手動にて選択される手動変速機(MT;マニュアルトランスミッション)である。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側および下側をそれぞれ変速機1の上方および下方とし、同じく左側および右側をそれぞれ変速機1の前方および後方とし、同じく紙面奥側および紙面手前側を、それぞれ変速機1の右方および左方として説明する。また、図1乃至図8には、各方向を示す矢印を示している。
【0010】
変速機1は、車両が水平面上に停止している状態において、変速機1の上方が鉛直方向の上方となるように取り付けられている。変速機1は、図1に示すように、ケース2、インプットシャフト3、アウトプットシャフト4、カウンタシャフト5、リバースドライブギヤ6a、六つのドライブギヤ6b,6c,6d,6e,6f,6g、リバースドリブンギヤ7a、六つのドリブンギヤ7b,7c,7d,7e,7f,7g、4つの選択機構8a,8b,8c,8d、および、オイルレシーバ10を備えている。
【0011】
インプットシャフト3は、ケース2内に軸受9aを介して回転可能に、軸方向を前後方向とするように取り付けられている。インプットシャフト3には、エンジン(図示なし)からの駆動力が入力される。アウトプットシャフト4は、ケース2内に軸受9bを介してインプットシャフト3と互いに同軸に、かつ、相対回転可能に取り付けられている。また、アウトプットシャフト4は、後述する第二の選択機構8bによってインプットシャフト3と相対回転不能に結合する。アウトプットシャフト4からの駆動力は、駆動輪(図示なし)に出力される。カウンタシャフト5は、ケース2内に軸受9c,9dを介して回転可能に、インプットシャフト3と互いに平行かつインプットシャフト3より下方に取り付けられている。
【0012】
インプットシャフト3には、前方から順に、リバースドライブギヤ6aおよび第一乃至第五のドライブギヤ6b,6c,6d,6e,6fが配設されている。リバースドライブギヤ6a、第一のドライブギヤ6bおよび第二のドライブギヤ6cは、インプットシャフト3に相対回転不能(遊転不能)に固定されている。第三乃至第五のドライブギヤ6d,6e,6fは、インプットシャフト3に相対回転可能(遊転可能)に固定されている。アウトプットシャフト4には、第六のドライブギヤ6gが相対回転不能に固定されている。
【0013】
カウンタシャフト5には、前方から順に、リバースドリブンギヤ7aおよび第一乃至第六のドリブンギヤ7b,7c,7d,7e,7f,7gが配設されている。リバースドリブンギヤ7a、第一,第二のドリブンギヤ7b,7cは、カウンタシャフト5に相対回転可能に固定されている。第三乃至第六のドリブンギヤ7d,7e,7f,7gは、カウンタシャフト5に相対回転不能に固定されている。
【0014】
各ドライブギヤ6b〜6gと各ドライブギヤ6b〜6gに対応するドリブンギヤ7b〜7gとが互いに噛合し、変速ギヤ列をそれぞれ構成する。リバースドライブギヤ6aは、アイドラギヤ(図示なし)を介してリバースドリブンギヤ7aと噛合する。リバースドライブギヤ6a、リバースドリブンギヤ7aおよびアイドラギヤは、リバース用ギヤである。
【0015】
第一の選択機構8aは、第三のドライブギヤ6dおよび第四のドライブギヤ6eの一方を選択して、インプットシャフト3に相対回転不能に連結するものである。第二の選択機構8bは、第五のドライブギヤ6fおよびアウトプットシャフト4の一方を選択して、インプットシャフト3に相対回転不能に連結するものである。第三の選択機構8cは、リバースドリブンギヤ7aをカウンタシャフト5に相対回転不能に連結するものである。第四の選択機構8dは、第一のドリブンギヤ7bおよび第二のドリブンギヤ7cの一方を選択して、カウンタシャフト5に相対回転不能に連結するものである。各選択機構8a〜8dは、使用者のシフトレバー(図示なし)の操作によるシフトフォーク(図示なし)の作動によって駆動される。
【0016】
また、ケース2内の底部には、図2に示すように、オイル(潤滑油)LOが貯留されている。オイルLOの量は、車両が停止している状態において、油面がおよそカウンタシャフト5の軸線5a(図1参照)の高さに位置する量である。オイルLOは、リバースドリブンギヤ7aおよび各ドリブンギヤ7b〜7gの実線の矢印の方向の回転により、ケース2内の底部からケース2内の上方に向けて掻き上げられる(破線の矢印参照)。
【0017】
オイルレシーバ10は、ケース2内に配設され、リバースドリブンギヤ7aおよび各ドリブンギヤ7b〜7gの回転により掻き上げられたオイルLOを捕集するものである。オイルレシーバ10は、捕集したオイルLOを変速機1の潤滑部位に直接または間接に導出する。潤滑部位は、例えば、第一,第二の選択機構8a,8bや軸受9a,9b等の摺動部位である。オイルレシーバ10は、ケース2内の上部の右側に、長手方向を前後方向とするように取り付けられている(図1および図2参照)。以下、オイルレシーバ10について、ケース2に取り付けられた状態にて説明する。オイルレシーバ10は、図3乃至図5に示すように、樋部11および捕捉部12を備えている。樋部11と捕捉部12とは、一体的に形成されている。
【0018】
樋部11は、捕集されたオイルLOが流れる部位である。樋部11は、第一方向D1に沿って延びるように形成されている。第一方向D1は、前後方向において前方から後方に向かうにしたがって、僅かに下方に向かう方向である。また、樋部11は、後端部において下方に折り曲げられるように形成されている。これにより、オイルLOが、底部11aを第一方向D1に沿って自重にて流れて、樋部11の後端部から下方に導出される。樋部11は、底部11a、第一側壁部11b、第二側壁部11c、第三側壁部11dおよび二つのオイル導出口11eを有している。
【0019】
底部11aは、図4および図5に示すように、鉛直方向の上方向に向けて開放する断面U字形状(図5参照)に、かつ、第一方向D1に沿って延びるように形成され、オイルLOが流れる部位である。
第一側壁部11bおよび第二側壁部11cは、底部11aの幅方向H両端から上方向(本第一実施形態においては上方向)に向けて延びるように形成されている。底部11aの幅方向Hは、本第一実施形態において左右方向である。第一側壁部11bは、底部11aの幅方向H右端にて第一方向D1に沿って延びるように形成されている。第二側壁部11cは、底部11aの幅方向H左端にて第一方向D1に沿って延びるように形成されている。
第三側壁部11dは、底部11aの前端から上方向に向けて延びるように形成されている。第三側壁部11dの右端は、第一側壁部11bの前端と接続する。第三側壁部11dの左端は、第二側壁部11cの前端と接続する。すなわち、各側壁部11b,11c,11dによって後方に向けて開放する上面視コの字状が形成される(図4参照)。
【0020】
オイル導出口11eは、底部11aを流れるオイルLOを下方に向けて導出するものである。オイル導出口11eは、具体的には、樋部11の内側から下方に向けて開口するように形成されている。本第一実施形態においては、オイル導出口11eは、二つ形成されるとともに、オイルレシーバ10が変速機1に取り付けられた状態にて、第一,第二の選択機構8a,8bの上方に位置するように形成されている。このように、樋部11は、上下方向において、アンダーカット形状がないように形成されている。アンダーカット形状は、後述する射出成形に用いられる金型Kにおいて、金型Kの開閉動作を妨げる成形品の凸形状や凹形状である。
【0021】
捕捉部12は、オイルLOを捕捉するとともに、樋部11に導出する部位である。捕捉部12は、シフトフォーク(図示なし)等の変速機1を構成する部材と干渉しない位置に形成されている。捕捉部12は、具体的には、樋部11の前端部の右側および前後方向中央部の右側に形成されている。捕捉部12は、図4および図5に示すように、第一下庇部12a、第一上庇部12bおよび第一接続部12eを備えている。
【0022】
第一下庇部12aは、上面12a1および下面12a2を有する板状に形成されるとともに、第一側壁部11bの上端部から、底部11aの幅方向H(左右方向)のうち第二側壁部11cから第一側壁部11bに向かう方向である第一幅方向H1(本第一実施形態において右方向)に向かうにしたがって上方向に向かう方向である第二方向D2(本第一実施形態において、右斜め上方向)に延びるように形成されたものである。また、第一下庇部12aの各側面(前端、後端および右端の側面)は、上下方向に沿った形状に形成されている。
【0023】
また、車両の傾斜方向が、底部11aの幅方向H(左右方向)のうち第一側壁部11bが第二側壁部11cより下方側となる方向である第一傾斜方向(本第一実施形態において右方向)であり、かつ、車両の傾斜角度が第一傾斜方向における最大傾斜角度θmaxである場合、第一下庇部12aにおける底部11aの幅方向H(左右方向)の長さは、後述する第一上庇部12bの第二幅方向H2(左方向)側の一端が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に位置する長さに設定されている(図6参照)。さらに、この場合、第一下庇部12aにおける左側の一端より右側の一端が上方に位置するように形成されている(図6参照)。
【0024】
第一上庇部12bは、第一本体部12cおよび本体側壁部12dを有している。
第一本体部12cは、上面12c1および下面12c2を有し、第一幅方向H1(右方向)に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成されたものである。第一本体部12cは、第一下庇部12aと互いに平行となるように、第二方向D2に沿って延びるように形成されている。第一本体部12cにおける幅方向H(左右方向)のうち第一幅方向H1(右方向)と反対方向である第二幅方向H2(左方向)側の一端が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に第一下庇部12aから離れて位置し、第一本体部12cにおける第一幅方向H1(右方向)側の一端が第一下庇部12aより第一幅方向H1(右方向)に位置する。本第一実施形態においては、第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端部(下端部)が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に第一下庇部12aから離れて位置する。さらに、車両の傾斜方向が第一傾斜方向(本第一実施形態において右方向)であり、かつ、車両の傾斜角度が第一傾斜方向における最大傾斜角度θmaxである場合、第一上庇部12bにおける左側の一端より右側の一端が上方に位置するように形成されている(図6参照)。
【0025】
本体側壁部12dは、第一本体部12cの前端および後端から上方向および下方向それぞれに向けて延びるように形成されたものである。また、第一上庇部12bの前後方向長さは、第一下庇部12aの前後方向長さより短くなるように設定されている。また、第一上庇部12bの左端および右端は、上下方向に沿った形状に形成されている。
【0026】
第一接続部12eは、第一上庇部12bの第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端の一部と第一下庇部12aの上面12a1との一部とを接続するものである。第一接続部12eは、具体的には、本体側壁部12dの第二幅方向H2(左方向)側の一端から、下方に向けて延びる板状に形成されている。すなわち、第一接続部12eは、第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端の前後両端と上面12a1との一部とを接続する。また、第一上庇部12bの各側面(前端、後端、右端および左端の側面)は、上下方向に沿った形状に形成されている。
また、ケース2には、図2に示すように、捕捉部12の第一幅方向H1(右方向)側の上方に位置する突起部2aが形成されている。
【0027】
このように、捕捉部12における第一上庇部12bの上面12c1から上側の部位および左端の側面は、上下方向においてアンダーカット形状がないように形成されている。さらに、捕捉部12における第一上庇部12bの上面12c1と第一下庇部12aの上面12a1との間の部位は、第二方向D2においてアンダーカット形状がないように形成されている。そして、捕捉部12における第一下庇部12aの上面12a1から下側の部位は、上下方向においてアンダーカット形状がないように形成されている。
【0028】
次に、上述したオイルレシーバ10によって捕集されたオイルLOが、潤滑部位に導出される動作について説明する。底部11aに貯留しているオイルLOは、カウンタシャフト5に配設された各ギヤ7a〜7gによって、ケース2内の上方に向けて掻き上げられる(図2参照)。
【0029】
捕捉部12の上方から下方に向けて落下するオイルLOの一部、および、ケース2の側壁内側面を伝って突起部2aに到達して落下するオイルLOの一部は、第一上庇部12bの上面12c1に付着する。第一上庇部12bの上面12c1に付着したオイルLOは、図4および図5の実線の矢印にて示すように、自重によって上面12c1に沿って第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端に向かって流れる。このとき、オイルLOの流れが本体側壁部12dによって、第二幅方向H2(左方向)側の一端に向くように整流されるため、オイルLOが第一本体部12cの前側および後側から落下しない。そして、第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端に流れ着いたオイルLOは、第一接続部12eを伝って、または、第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端から落下して第一下庇部12aの上面12a1に到達する。そして、第一下庇部12aの上面12a1に到達したオイルLOは、上面12a1に沿って第一下庇部12aの第二幅方向H2(左方向)側の一端に流れて、樋部11の第一側壁部11bの内側面を伝って、底部11aに到達する。
【0030】
また、捕捉部12の下方から上方に向けて飛散するオイルLOの一部は、第一上庇部12bの下面12c2における第一下庇部12aより第一幅方向H1(右方向)側の範囲にオイルLOの粘性により付着する。第一上庇部12bの下面12c2に付着したオイルLOは、図5の破線の矢印にて示すように、自重によって下面12c2に沿って第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端に流れ着いて、第一接続部12eを伝って、または、第一本体部12cの第二幅方向H2(左方向)側の一端から落下して第一下庇部12aの上面12a1に到達する。そして、第一下庇部12aの上面12a1に到達したオイルLOは、上述したように、底部11aに到達する。
【0031】
また、掻き揚げられたオイルLOの一部は、本体側壁部12dにも付着し、自重にて本体側壁部12dまたは上面12c1または下面12c2を伝って、上述したように、底部11aに到達する。
【0032】
底部11aに到達したオイルLOは、底部11aを自重にて第一方向D1に沿って流れる。底部11aを流れるオイルLOの一部は、各オイル導出口11eから下方に向けて導出され、第一,第二の選択機構8a,8bに到達する。また、各オイル導出口11eから導出されなかったオイルLOの一部は、樋部11の後端部から下方に向けて導出され、例えば、ケース2内に形成された油路(図示なし)を介して軸受9a,9bに到達する。
【0033】
次に、オイルレシーバ10の製造方法について説明する。オイルレシーバ10の製造方法は、熱可塑性樹脂を射出成形するとともに、樋部11と捕捉部12とを一体的に形成する。すなわち、オイルレシーバ10は、熱可塑性樹脂が金型Kを用いて射出成形された成形品である。熱可塑性樹脂は、例えばナイロンである。金型Kは、固定型Kr、可動型Kmおよびスライド型Ksを有している。スライド型Ksは、図7に示すように、オイルレシーバ10の前後方向における捕捉部12の第一本体部12cが形成されている部位にのみ、設けられている。なお、図7に示す金型Kは、金型Kが閉められた状態を示している。以下、金型Kについて、図7に示す部位について説明する。
【0034】
固定型Krは、主として樋部11の外側面を形成するものである。固定型Krは、具体的には、樋部11の第二側壁部11cの上左端の点P1から左方向に向けて可動型Kmとの分割面が形成されている。また、固定型Krは、点P1から第二側壁部11c、底部11aおよび第一側壁部11bの外側面、並びに、第一下庇部12aの下面12a2の形状に沿って上面12a1の右端の点P2に到達する形状に形成されている。そして、固定型Krは、点P2から右方向に向けて延びるように、スライド型Ksとの分割面が形成されている。金型Kが開いた場合、オイルレシーバ10が取り出せるように、オイルレシーバ10の形状が、上述したように、アンダーカット形状のない形状に形成されている。
【0035】
可動型Kmは、主として樋部11の内側面および第一上庇部12bの上側面を形成するものである。可動型Kmは、具体的には、点P1から左方向に向けて固定型Krとの分割面が形成されている。また、可動型Kmは、点P1から第二側壁部11c、底部11aおよび第一側壁部11bの内側面に沿って第一下庇部12aの上面12a1の左端の点P3に到達する形状が形成されている。可動型Kmは、点P3から第一上庇部12bの第一本体部12cの左下端の点P4まで、スライド型Ksとの分割面が形成されている。そして、可動型Kmは、点P4から上下方向に沿って第一本体部12cの左端の形状が形成され、第一本体部12cの上面12c1に沿って第一本体部12cの右上端の点P5までの形状が形成されている。可動型Kmは、点P5から第二方向D2に向けて延びるように、スライド型Ksとの分割面が形成されている。可動型Kmは、金型Kが開く場合、上方向に向けて移動する。可動型Kmが、上方向に向けて移動可能となるように、オイルレシーバ10の形状が、上述したように、アンダーカット形状のない形状に形成されている。
【0036】
スライド型Ksは、捕捉部12が形成されている部位に配設されている。本第一実施形態において、オイルレシーバ10が捕捉部12を二つ有しているため、金型Kは、スライド型Ksを二つ有している。スライド型Ksは、主として第一上庇部12bの下面12c2および第一下庇部12aの上面12a1の形状を形成するものである。スライド型Ksは、点P2から右方向に向けて延びるように、固定型Krとの分割面が形成されている。スライド型Ksは、点P2から第一下庇部12aの上面12a1に沿って点P3、さらに、可動型Kmとの分割面に沿って点P4に到達までの形状が形成されているとともに、点P4から第一上庇部12bの下面12c2および右端の形状に沿って点P5まで到達する形状が形成されている。さらに、スライド型Ksは、点P5から第二方向D2に沿って延びるように、可動型Kmとの分割面が形成されている。スライド型Ksは、金型Kが開く場合、第二方向D2方向に向けて移動する。スライド型Ksが、第二方向D2に向けて移動可能となるように、オイルレシーバ10の形状が、上述したように、アンダーカット形状のない形状に形成されている。
【0037】
また、オイルレシーバ10の前後方向における捕捉部12の第一本体部12cが形成されている部位(図7参照)以外の部位(すなわち、捕捉部12の第一本体部12cの前後方向の部位および樋部11)においては、金型Kは、固定型Krおよび可動型Kmのみによって形成されている。この部位においても、固定型Krおよび可動型Kmが、上下方向に向けて移動可能となるように、オイルレシーバ10の形状が、上述したように、アンダーカット形状のない形状に形成されている。
このように、オイルレシーバ10は、1セット(固定型Kr、可動型Kmおよび二つのスライド型Ks)の金型Kにより、樋部11と捕捉部12とが一体的に形成される。
【0038】
本第一実施形態によれば、オイルレシーバ10は、車両の変速機1のケース2内に配設され、変速機1内に設けられたギヤ7a〜7gの回転により掻き上げられたオイルLOを捕集するオイルレシーバ10であって、鉛直方向の上方向に向けて開放する断面U字形状に、かつ、第一方向D1に沿って延びるように形成され、オイルLOが流れる底部11aと、底部11aの幅方向H両端から上方向に向けて延びる第一側壁部11bおよび第二側壁部11cと、を有する樋部11と、オイルLOを捕捉するとともに、樋部11に導出する捕捉部12と、を備えている。捕捉部12は、上面12a1および下面12a2を有する板状に形成されるとともに、第一側壁部11bの上端部から、幅方向Hのうち第二側壁部11cから第一側壁部11bに向かう方向である第一幅方向H1に向かうにしたがって上方向に向かって延びるように形成された第一下庇部12aと、上面12c1および下面12c2を有し、第一幅方向H1に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第一本体部12cを有するとともに、第一本体部12cにおける幅方向Hのうち第一幅方向H1と反対方向である第二幅方向H2側の一端が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に第一下庇部12aから離れて位置し、第一本体部12cにおける第一幅方向H1側の一端が第一下庇部12aより第一幅方向H1に位置する第一上庇部12bと、第一上庇部12bの第一本体部12cの第二幅方向H2側の一端の一部と第一下庇部12aの上面12a1との一部とを接続する第一接続部12eと、を備えている。
これによれば、捕捉部12の上方から下方に向けて落下するオイルLOの一部は、第一上庇部12bの上面12c1によって捕捉され、第一上庇部12bの上面12c1に沿って第一上庇部12bの第二幅方向H2側の一端に流れ、第一接続部12eを伝って、または、第一上庇部12bの第二幅方向H2側の一端から落下して第一下庇部12aの上面12a1に到達し、第一下庇部12aの上面12a1から樋部11の底部11aに導出される。また、第一上庇部12bの下面12c2における第一下庇部12aより第一幅方向H1側の範囲は、捕捉部12の下方から上方に向けて飛散するオイルLOの一部を捕捉する。第一上庇部12bの下面12c2は下方に向いているため、従来技術のように、オイルLOを捕捉する部位が側方に向けて設けられている場合に比べ、オイルLOを効率よく捕捉する。第一上庇部12bの下面12c2によって捕捉されたオイルLOは、第一上庇部12bの下面12c2に沿って第一上庇部12bの第二幅方向H2側の一端に流れ、上述したように第一下庇部12aの上面12a1に到達して樋部11の底部11aに導出される。そして、第一下庇部12aおよび第一上庇部12bが板状に形成されているため、捕捉部12を比較的簡便に構成することができる。したがって、オイルレシーバ10は、簡便な構成にて、オイルレシーバ10の上方から下方に向けて落下するオイルLOの一部と、オイルレシーバ10の下方から上方に向けて飛散するオイルLOの一部とを効率よく捕捉することができる。
【0039】
また、オイルレシーバ10の製造方法は、熱可塑性樹脂を射出成形するとともに、樋部11と捕捉部12とを一体的に形成する。
これによれば、オイルレシーバ10は、樋部11と捕捉部12とが一体に形成されているため、一つの部材にて構成されている。さらに、オイルレシーバ10は、熱可塑性樹脂によって形成されているため、1セットの金型Kで形成可能に構成することができる。よって、樋部11と捕捉部12とが別体に構成されている場合に比べて、オイルレシーバ10の部品点数および金型Kのセット数を低減することができる。よって、オイルレシーバ10の低コスト化を図ることができる。
【0040】
(第二実施形態)
次に、本発明によるオイルレシーバ10の第二実施形態について、主として第一実施形態と異なる部分について説明する。上述した第一実施形態においては、捕捉部12は、樋部11の第一幅方向H1側に形成されているが、本第二実施形態においては、捕捉部12は、幅方向H両側に形成されている。捕捉部12は、具体的には、図8に示すように、第二下庇部12f、第二上庇部12gおよび第二接続部12jをさらに備えている。
【0041】
第二下庇部12fは、底部11aの幅方向H(左右方向)において第一下庇部12aと対称となる形状である。第二下庇部12fは、具体的には、上面12f1および下面12f2を有する板状に形成されるとともに、第二側壁部11cの上端部から第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かう方向である第三方向D3(本第二実施形態において、左斜め上方向)に延びるように形成されたものである。また、車両の傾斜方向が、底部11aの幅方向H(左右方向)のうち第二側壁部11cが第一側壁部11bより下方側となる方向である第二傾斜方向(本第二実施形態において左方向)であり、かつ、車両の傾斜角度が第二傾斜方向における最大傾斜角度である場合、第二下庇部12fにおける底部11aの幅方向H(左右方向)の長さは、後述する第二上庇部12gの第一幅方向H1(右方向)側の一端が、第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に位置する長さに設定されている。さらに、この場合、第二下庇部12fにおける右側の一端より左側の一端が上方に位置するように形成されている。
【0042】
第二上庇部12gは、底部11aの幅方向H(左右方向)において第一上庇部12bと対称となる形状である。第二上庇部12gは、上面12h1および下面12h2を有し、第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第二本体部12hを有するとともに、第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端が第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に第二下庇部12fから離れて位置し、第二本体部12hの第二幅方向H2の一端が第二下庇部12fより第二幅方向H2に位置する。また、第二上庇部12gの第二本体部12hは、第二下庇部12fと互いに平行となるように、第三方向D3に沿って延びるように形成されている。本第二実施形態においては、第二本体部12hの第一幅方向H1(右方向)側の一端部(下端部)が、第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に第二下庇部12fから離れて位置する。さらに、車両の傾斜方向が第二傾斜方向(本第二実施形態において左方向)であり、かつ、車両の傾斜角度が第二傾斜方向における最大傾斜角度である場合、第二上庇部12gにおける右側の一端より左側の一端が上方に位置するように形成されている。また、第二本体部12hの前端および後端には、上方向および下方向に向けてそれぞれ延びる本体側壁部12iがそれぞれ形成されている。
【0043】
第二接続部12jは、底部11aの幅方向H(左右方向)において第一接続部12eと対称となる形状である。第二接続部12jは、第二上庇部12gの第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端の一部と第二下庇部12fの上面12f1との一部とを接続するものである。
なお、本第二実施形態の場合、オイルレシーバ10は、ケース2内上部のおよそ中央に取り付けられている。また、ケース2には、図8に示すように、第二上庇部12gの第二幅方向H2(左方向)側の上方に位置する突起部2bがさらに形成されている。また、金型Kにおいては、第一実施形態の場合と比べて、第二上庇部12gおよび第二下庇部12fの形状を形成可能とするとともに、第三方向D3にスライド移動可能なスライド型がさらに構成される。
【0044】
本第二実施形態によれば、捕捉部12は、上面12f1および下面12f2を有する板状に形成されるとともに、第二側壁部11cの上端部から、第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かって延びるように形成された第二下庇部12fと、上面12h1および下面12h2を有し、第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第二本体部12hを有するとともに、第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端が第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に第二下庇部12fから離れて位置し、第二本体部12hの第二幅方向H2の一端が第二下庇部12fより第二幅方向H2に位置する第二上庇部12gと、第二上庇部12gの第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端の一部と第二下庇部12fの上面12f1との一部とを接続する第二接続部12jと、をさらに備えている。
これによれば、オイルレシーバ10は、樋部11の幅方向H両側にてケース2内に飛散するオイルLOの一部を捕捉する。よって、オイルレシーバ10は、樋部11の幅方向Hの一方側にてオイルLOを捕捉する場合に比べて、捕捉するオイルLOの量を増加させることができるため、オイルLOをさらに効率よく捕捉することができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態において、オイルレシーバの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した第一実施形態おいて、捕捉部12は、第一側壁部11bの上端部に形成されているが、これに代えて、第二側壁部11cの上端部に形成するよういしても良い。この場合、第一下庇部12aは、上面12a1および下面12a2を有する板状に形成されるとともに、第二側壁部11cの上端部から、底部11aの幅方向H(左右方向)のうち第一側壁部11bから第二側壁部11cに向かう方向である第一幅方向H1(この場合においては左方向)に向かうにしたがって上方向に延びるように形成された部位である。また、この場合、第一上庇部12bの第一本体部12cは、上面12c1および下面12c2を有し、第一幅方向H1(この場合においては左方向)に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成される。第一本体部12cにおける幅方向Hのうち第一幅方向H1と反対方向である第二幅方向H2(この場合においては右方向)側の一端が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に第一下庇部12aから離れて位置し、第一本体部12cにおける第一幅方向H1側の一端が第一下庇部12aより第一幅方向H1に位置する部位である。
このように、捕捉部12は、上面12a1および下面12a2を有する板状に形成されるとともに、第一側壁部11bおよび第二側壁部11cの一方の上端部から、底部11aの幅方向Hのうち第一側壁部11bおよび第二側壁部11cの他方から一方に向かう方向である第一幅方向H1に向かうにしたがって上方向に延びるように形成された第一下庇部12aと、上面12c1および下面12c2を有し、第一幅方向H1に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第一本体部12cを有するとともに、第一本体部12cにおける底部11aの幅方向Hのうち第一幅方向H1と反対方向である第二幅方向H2側の一端が、第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に第一下庇部12aから離れて位置し、第一本体部12cにおける第一幅方向H1側の一端が第一下庇部12aより第一幅方向H1に位置する第一上庇部12bと、第一上庇部12bの第一本体部12cの第二幅方向H2側の一端の一部と第一下庇部12aの上面12a1との一部とを接続する第一接続部12eと、を備えている。
さらに、底部11aの幅方向H両側に捕捉部12が形成されるときにおいては、捕捉部12は、上面12f1および下面12f2を有する板状に形成されるとともに、第一側壁部11bおよび第二側壁部11cの他方の上端部から、第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かって延びるように形成された第二下庇部12fと、上面12h1および下面12h2を有し、第二幅方向H2に向かうにしたがって上方向に向かって延びる板状に形成された第二本体部12hを有するとともに、第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端が第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に第二下庇部12fから離れて位置し、第二本体部12hの第二幅方向H2の一端が第二下庇部12fより第二幅方向H2に位置する第二上庇部12gと、第二上庇部12gの第二本体部12hの第一幅方向H1側の一端の一部と第二下庇部12fの上面12f1との一部とを接続する第二接続部12jと、をさらに備えている。
【0046】
また、上述した第一実施形態において、第一下庇部12aの底部11aの幅方向Hの長さは、車両の傾斜方向が第一傾斜方向であり、かつ、車両の傾斜角度が第一傾斜方向における最大傾斜角度θmaxである場合、第一上庇部12bにおける第二幅方向H2側の一端が第一下庇部12aの上面12a1の鉛直上の範囲VR1内に位置する最小長さに設定されているようにしても良い。
これによれば、第一下庇部12aの長さが、オイルLOを捕集可能な最小長さに設定される。よって、第一下庇部12aの長さが最小長さより長い場合に比べて、第一上庇部12bの下面12c2にて捕捉できるオイルLOの量を増加させることができるため、オイルLOをより効率よく捕捉することができる。また、上述した第二実施形態における第二下庇部12fにおいても、第一下庇部12aと同様に第二下庇部12fの底部11aの幅方向Hの長さが、車両の傾斜方向が第二傾斜方向であり、かつ、車両の傾斜角度が第二傾斜方向における最大傾斜角度である場合、第二上庇部12gにおける第一幅方向H1側の一端が第二下庇部12fの上面12f1の鉛直上の範囲VR2内に位置する最小長さに設定されているようにしても良い。
【0047】
また、上述した各実施形態において、変速機1は、手動変速機(MT;マニュアルトランスミッション)であるが、本発明を、AMT(オートメーテッドマニュアルトランスミッション)またはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)に適用するようにしても良い。
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、ケース2内に取り付けるオイルレシーバ10の個数、樋部11および捕捉部12の個数や位置、上庇部12b,12gおよび下庇部12a,12fの形状、第一上庇部12bと第一下庇部12aとの位置関係、第二上庇部12gと第二下庇部12fとの位置関係、並びに各接続部12e,12jの個数および位置を変更するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1…変速機、2…ケース、7a…リバースドリブンギヤ(ギヤ)、7b,7c,7d,7e,7f,7g…ドリブンギヤ(ギヤ)、10…オイルレシーバ、11…樋部、11a…底部、11b…第一側壁部、11c…第二側壁部、12…捕捉部、12a…第一下庇部、12a1…上面、12a2…下面、12b…第一上庇部、12c…第一本体部、12c1…上面、12c2…下面、12d…本体側壁部、12e…第一接続部、12f…第二下庇部、12f1…上面、12f2…下面、12g…第二上庇部、12h…第二本体部、12h1…上面、12h2…下面、12i…本体側壁部、12j…第二接続部、H…幅方向、H1…第一幅方向、H2…第二幅方向、LO…オイル、θmax…最大傾斜角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8