特許第6551264号(P6551264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551264
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/40 20060101AFI20190722BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01J49/40
   H01J49/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-40717(P2016-40717)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-157457(P2017-157457A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大輔
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008-77980(JP,A)
【文献】 特開2015-118887(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0028202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 電極と、
b) 前記電極に所定の電圧及び/又は電流で電力を供給する電源部と、
c) 弾性を有する導電性の線材から成り、前記電極と前記電源部を電気的に接続する接続線と、
d) 前記接続線の一端に設けられたコネクタ部と、
e) 前記電極に設けられた、前記コネクタ部と接触する座部と、
f) 前記接続線に設けられた、前記電源部に固定される固定部と、
g) 前記接続線の前記コネクタ部と前記固定部の間又は前記コネクタ部に形成された、前記コネクタ部を前記座部に付勢するバネ部と
を備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記コネクタ部と前記座部は、一方がオス、他方がメスの差込構造を有することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記電極を所定の間隔で複数並べて配置した積層電極を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記積層電極はイオンガイド電極であることを特徴とする請求項3に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記積層電極は飛行時間型質量分析装置の飛行空間におけるイオンの輸送に用いる電極であることを特徴とする請求項3又は4に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記積層電極はリフレクトロンであることを特徴とする請求項5に記載の質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置に関し、特に、質量分析装置が有する電極と電源を電気的に接続するための接続構造に特徴を有する質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置の一例として、特許文献1に記載の飛行時間型質量分析装置がある。この飛行時間型質量分析装置90は、図9に示すように、測定対象であるイオンを導入するイオン導入部91に、該イオンを加速させるイオン加速部92としての押出電極921とグリッド電極(引出電極)922が配置され、飛行空間93の終端に多数の板状電極から成る反射電極94が配置されている。測定の際には、飛行時間型質量分析装置90内は真空ポンプ80により高真空状態にする。測定対象であるイオンは、イオン導入部91に導入され、押出電極921とグリッド電極922により形成された電場によって飛行空間93に向けて加速される。加速されたイオンは飛行空間93を飛行し、反射電極94により形成された反射電場の作用で折返して再び飛行空間93を飛行してイオン検出器98に到達する。イオンが加速を開始してからイオン検出器98へ入射するまでの時間に基づき、イオンの質量電荷比を測定することができる。
【0003】
このように飛行時間型質量分析装置90は電場を形成するための様々な電極を備えており、各電極にそれぞれ所定の電圧が供給される。例えば、反射電極94は、飛行空間93の側方に配置された電源基板95に、接続線97を介して接続されている。電源基板95は、飛行時間型質量分析装置90の外に設けられた電源99と、真空フィードスルー96を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-165053号公報
【特許文献2】特開2015-118887号公報(図1〜4)
【特許文献3】米国特許第5689111号明細書(Fig. 2)
【特許文献4】米国特許第6812453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源基板95は通常、プリント基板が用いられ、電源基板95と各電極を接続する接続線97はハンダ付けにより電気的に接続される。反射電極94は通常、アルミニウムやステンレス鋼などの金属板で構成されており、反射電極94と接続線97はスポット溶接により電気的に接続される。一方で、前述のように飛行時間型質量分析装置90の内部を真空にするために用いられる真空ポンプ80は、その内部でフィンなどの回転体が高速で回転するため、この回転により発生した振動により、飛行時間型質量分析装置90に振動を与える。反射電極94と接続線97のスポット溶接による固定が十分にできていなかった場合等には、この振動により、反射電極94と接続線97が外れるという問題があった。また、真空ポンプ80による振動以外にも輸送時の振動や衝撃でも同様に、反射電極94と接続線97が外れることがあった。特に、特許文献1に記載の飛行時間型質量分析装置の反射電極94のような多数の電極から成る積層電極の場合、各電極に電圧を供給する接続線97が外れた場合、従来のスポット溶接等では,現地での再接続・修復が困難であった。また、そのようなスポット溶接部の固定が十分でない場合、仮に電気的接触自体は維持されていたとしても接触状態が弱いため、真空ポンプ等の振動により電源99から供給される電圧が不安定になりやすく、質量分析装置の質量精度や質量分解能および感度が不安定になるという問題も発生していた。
【0006】
このような問題は押出電極911やグリッド電極912でも発生していた。また、特許文献2に記載の飛行空間内の加速電極である積層イオンガイド電極や、特許文献3に記載のイオン導入部の手前に設けられる積層イオンガイド電極でも発生し得る。また、飛行時間型質量分析装置以外にも、例えば特許文献4に開示される複数アパーチャイオンガイド電極など、質量分析装置に使用される積層電極全般において同様な問題が発生し得る。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、輸送による振動及び衝撃や、回転駆動機構等による振動が加わっても電極と電源の接続状態を良好に維持することができ、また、たとえ電極と電源の接続が外れたとしても容易に再接続可能な質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、
a) 電極と、
b) 前記電極に所定の電圧及び/又は電流で電力を供給する電源部と、
c) 弾性を有する導電性の線材から成り、前記電極と前記電源部を電気的に接続する接続線と、
d) 前記接続線の一端に設けられたコネクタ部と、
e) 前記電極に設けられた、前記コネクタ部と接触する座部と、
f) 前記接続線に設けられた、前記電源部に固定される固定部と、
g) 前記接続線の前記コネクタ部と前記固定部の間又は前記コネクタ部に形成された、前記コネクタ部を前記座部に付勢するバネ部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る質量分析装置では、接続線の固定部が電源部に固定され、コネクタ部が電極の座部と接触していることにより、接続線を介して電源部と電極が電気的に接続されている。ここで、コネクタ部がバネ部により座部に付勢されているため、コネクタ部はバネ部のバネ力により座部に押しつけられており、装置に多少の振動が加わっても両者が離れることがない。また、このコネクタ部の摩擦力を超える振動が加わった場合には、コネクタ部がずれることにより振動を吸収するため、接続線やコネクタ部に無理な力が掛かることがなく、電気的接続が良好に維持される。更に大きな振動が加わった場合には、コネクタ部が外れることにより、電気的接続は遮断されるものの、接続線の断線や接続部(コネクタ部)の損傷というという事態は避けることができる。そして、そのような場合には、ハンダ付けや溶接等を行うことなく容易に再接続することができる。
【0010】
前記電源部は、前記電極に所定の電圧及び/又は電流で電力を供給するものであり、通常は商用電源又はバッテリからの電力を該所定の電圧及び/又は電流に調整する電気回路を有する。また、複数の電極に電力を分配する場合には、電源部がその分配のための電気回路を有することもある。接続線の固定部は、例えばこれらの電気回路が形成されたプリント基板に固定することができる。その場合、プリント基板への固定は、該プリント基板に設けられた孔に接続線を挿入したうえで該接続線を該プリント基板にハンダ付けすることで行うことができる。
【0011】
前記バネ部は、前記接続線をねじりバネや弦巻バネの形状に巻回することにより形成することができる。また、バネ部は、コネクタ部とは別に該コネクタ部と固定部の間に設けて該コネクタ部を電極の座部に付勢するようにしてもよいし、前記接続線を複数回巻回したうえで隣接する2つの巻回部の間に電極の座部を挟むことにより、該バネ部自身をコネクタ部として用いることもできる。
【0012】
前記コネクタ部と前記座部は、一方がオス、他方がメスの差込構造を有することが望ましい。これにより、コネクタ部が座部から一層外れ難くなる。
【0013】
本発明に係る質量分析装置における電極と電源の接続構造は、飛行時間型質量分析装置の飛行空間におけるイオンの輸送に用いる積層電極に好適に適用することができる。このような積層電極の例として、複数枚の加速電極を積層した電極や、押出電極と引出電極と複数枚の加速電極を積層した電極、反射電極(リフレクトロン)、あるいはイオン導入部の手前に設けられる積層電極が挙げられる。また、飛行時間型質量分析装置に限らず、質量分析装置全般で用いられるイオンガイド電極や反射電極にも、本発明に係る質量分析装置の電極と電源の接続構造を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る質量分析装置によれば、振動が加わっても、電源部との接続線が電極から外れ難く、電極と電源の接続状態を良好に維持することができる。また、電極と電源の接続が外れたとしても容易に再接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る飛行時間型質量分析装置の概略構成図。
図2】電極と電源部の接続構造を示す図。
図3】座部とコネクタ部の接続について説明する図。
図4】変形例1の電極と電源部の接続構造を示す図。
図5】変形例2の電極と電源部の接続構造を示す図。
図6】変形例3の電極と電源部の接続構造を示す図。
図7】電源基板を筐体の外部に配置した飛行時間型質量分析装置の概略構成図。
図8】加速電極を有する飛行時間型質量分析装置の要部の概略構成図。
図9】従来の飛行時間型質量分析装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る質量分析装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本発明の一実施形態に係る飛行時間型質量分析装置10の概略構成図を図1に示す。飛行時間型質量分析装置10は、筐体20の内部に、測定対象のイオンを導入するイオン導入部11と、イオン導入部11から導入されたイオンを加速するイオン加速部12としての押出電極121及びグリッド電極(引出電極)122と、イオン加速部12を始端としてイオンが飛行する飛行空間13と、飛行空間13の終端に配置された反射電極14と、反射電極14で反射したイオンを検出するイオン検出器18とを有する。これらの反射電極14及び検出器18はそれぞれが所定の位置で筐体20に固定されている。筐体20の内部にはさらに電源基板15が固定されており、反射電極14が複数の接続線17を介して電源基板15に電気的に接続されている。電源基板15は筐体20の壁面に設けられた真空フィードスルー16を介して、筐体20外に設けられた電源19に接続されている。この電源19と、真空フィードスルー16と、電源基板15が本発明の電源部に相当する。筐体20外には、筐体20内の気体を排出する真空ポンプ30が設けられている。
【0018】
反射電極14は、ステンレス鋼の金属板から成る板状電極141を所定の間隔で複数配置することにより構成された1組の積層電極から成る。板状電極141には、最後端の1枚を除いて、イオンを通過させるための孔が中央に設けられている。各板状電極141の外縁には、外側に突出した長方形状の座部1411が設けられている(図2(a))。飛行時間型質量分析装置10では、この反射電極14を、イオンの進行方向を反転させるリフレクトロンとして用いている。反射電極14の各板状電極141にはステンレス鋼以外に、アルミニウムなどの金属を使用してもよい。
【0019】
電源基板15は、電源19からの電源電圧を所定の電圧に変換して各板状電極141に印加するための電気回路151が形成されたプリント基板である。
【0020】
接続線17は、弾性を有する導電性の線材から成り、図2(b)に示すように、その一部をねじりバネ状に巻回してバネ部172が形成されている。接続線17の一端にはメスの平型圧着端子がコネクタ部173として取り付けられている。接続線17の他端は、電源基板15に設けられた孔に挿通され、電気回路151に電気的に導通するようにハンダ152によって電源基板15に固定されている。このように接続線17のうち電源基板15に固定されている部分が本発明における固定部171となる。なお、コネクタ部173と同様に、接続線17の他端にコネクタを取り付けたものを固定部とすることもでき、この場合、電源基板15に該コネクタに対応する接続機構を設けて接続を行う。
【0021】
接続線17は、図2(b)に示すように矩形に曲げられ、コネクタ部173が板状電極141の座部1411と対向するように配置されている。また、バネ部172はコネクタ部173を座部1411の方向に付勢するように配置されている。
【0022】
コネクタ部173と座部1411は、前者がメス、後者がオスの、対応した差し込み可能な構造を有する。図3(a)及び(b)はそれぞれ、コネクタ部173に座部1411が差し込まれる前、差し込んだ後の状態を示す断面図である。コネクタ部173は内部に板バネ174を有する。座部1411がコネクタ部173に差し込まれた状態で、板バネ174は座部1411をその挿入方向と平行なコネクタ部173の内壁面に押し付ける(図3(b))。なお、板バネ174は本発明のバネ部には該当しない。
【0023】
押出電極121及びグリッド電極122も反射電極14の各板状電極141と同様の構成により、それらの近傍に設けられた電源基板と接続される。
【0024】
次に飛行時間型質量分析装置10の動作を説明する。まず真空ポンプ30により筐体20の内部を高真空状態にする。そして、電源19から各電極に電圧が印加される。測定対象であるイオンは、イオン導入部11に導入されると、各電極が形成する電場により次のように輸送される。まず、押出電極121とグリッド電極122により形成された電場によって飛行空間13に向けて加速される。加速されたイオンは飛行空間13を飛行し、反射電極14により形成された反射電場の作用で折返して再び飛行空間13を飛行してイオン検出器18に到達する。イオンが加速を開始してからイオン検出器18へ入射するまでの時間に基づき、イオンの質量電荷比を測定する。
【0025】
真空ポンプ30が動作すると、該真空ポンプ30内の回転機構により発生した振動が飛行時間型質量分析装置10の全体に伝達される。これにより反射電極14や電源基板15等が振動するが、バネ部172がコネクタ部173を板状電極141の座部1411に付勢しているため、多少の振動が加わっても両者が離れることがなく、両者の間の接触抵抗が抑えられた状態で電気的接触が良好に維持される。そのため、反射電極14内の電界が安定し、質量精度や質量分解能および感度が不安定になることを防ぐことができる。
【0026】
更に大きな振動が加わって、コネクタ部173が座部1411から抜けた場合でも、その際に反射電極14や接続線17等が破損することがない。また、接続が外れた後は現場作業者がコネクタ部173を座部1411に差し込むことで容易に再接続できる。
【0027】
上記実施形態では座部1411をオス、コネクタ部173をメスのコネクタ構造としたが、コネクタ部をオス、座部をメスとしてもよい。
【0028】
次に反射電極14と、電源基板15と、接続線17の別の接続構造について図4を参照しつつ説明する。この変形例では、バネ部172Aの構造と配置が上記実施形態と異なるが他の構造は同一である。バネ部172Aは、コネクタ部173の直近に位置する接続線17の線材を弦巻状に成形した弦巻バネが圧縮されている状態で設けられた圧縮バネである。この変形例でもコネクタ部173は、圧縮されているバネ部172Aが伸張しようとすることによって座部1411の差込方向に付勢されるため、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0029】
反射電極14と、電源基板15と、接続線17の接続構造の第2の変形例を図5に示す。この変形例では、バネ部を引張バネとし、その巻回部の間に板状電極141の座部1411を挟むことで接続線17と板状電極141が接続される。すなわち、当該バネ部はコネクタ部を兼ねる(バネ部兼コネクタ部1723)。この接続構造は、接続線17が線材のみで構成されているため、容易に接続線を製造することができる。
【0030】
反射電極14と、電源基板15と、接続線17の接続構造の第3の変形例を図6に示す。この変形例では、バネ部172をねじりバネとし、接続線17の一端をU字状に曲げて該U字の底部をコネクタ部173Aとした。板状電極141には、外縁から外側に突出する座部は設けず、その代わりに、板面の一部にコネクタ部173Aを接触させ、その接触部を座部1411Aとした。比較的弱い振動が加わる場合には、コネクタ部173Aは座部1411Aとの静止摩擦力によって該座部1411Aに固定される。それよりも強い振動が加わると、コネクタ部173Aが座部1411Aの表面を摺動するが、板状電極141や接続線17に無理な力が掛かることがなく、電気的接続が維持される。このような摺動が生じることから、座部1411Aにめっき処理を施し、板状電極141の表面を保護しておくことが好ましい。更に強い振動が加わると、コネクタ部173Aは座部1411Aから外れることにより、両者の電気的接続は遮断されるものの、接続線17の断線やコネクタ部173Aの損傷が生じることはない。また、コネクタ部173Aが座部1411Aから外れても、現場作業者がコネクタ部173Aを座部1411Aに戻すだけで簡単に再接続することができる。この変形例においても、接続線17が線材のみで構成されているため、容易に接続線を製造することができる。
【0031】
上記実施形態では、電源基板を筐体内部に配置したが、電源基板を筐体の外部に配置してもよい。この場合、図7に示すように、各板状電極141に対応した真空フィールドスルー16を設け、これらを接続線17で接続する構成とすることができる。また、接続線17の固定部は、線材の一端に真空フィードスルーに対応したコネクタを取り付けて構成すればよい。
【0032】
反射電極と該電極用の電源部の接続構造についてのみ説明したが、押出電極やグリッド電極等、飛行空間内のイオンの輸送に寄与する他の電極と電源部についても同様な接続構造を適用することができる。例えば、図8に示すように、押出電極121及びグリッド電極(引出電極)122に加えて、グリッド電極122よりも飛行空間13側に、イオンが通過する孔が中央に設けられた1枚又は複数枚の加速電極123を配置してもよい。この例では、これら押出電極121、グリッド電極122及び加速電極123を合わせて積層電極が構成されており、個々の電極に上記と同様の接続構造が用いられている。また、イオン導入部11の手前に、イオンをイオン導入部11に輸送するための積層電極を設け、当該積層電極に上記と同様の接続構造を適用してもよい。さらに、本実施例で示した接続構造は、飛行時間型質量分析装置以外の質量分析装置のイオンガイド電極として使用される積層電極全般にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10、90…飛行時間型質量分析装置
11、91…イオン導入部
12、12A、92…イオン加速部
121、921…押出電極
122、922…グリッド電極(引出電極)
123…加速電極
13、93…飛行空間
14、94…反射電極
141…板状電極
1411、1411A…座部
15、95…電源基板
151…電気回路
152…ハンダ
16、96…真空フィードスルー
17、97…接続線
171…固定部
172、172A…バネ部
173、173A…コネクタ部
1723…バネ部兼コネクタ部
174…板バネ
18、98…イオン検出器
19、99…電源
30、80…真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9