(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号処理部が生成する前記振動データには、前記タイヤのうち前記タイヤマウントセンサの配置箇所と対応する部分が路面接地したときを接地開始時、路面から離れるときを接地終了時として、前記路面接地時および前記接地終了時に前記検出信号に発生するピーク波形の両方のデータが含まれ、
前記ハイドロプレーニング判定部は、前記車速取得部が取得した前記車速と対応する第1判定閾値よりも前記振動データに含まれる前記路面接地時のピーク波形のデータが示すピーク値の絶対値が小さい場合、および、前記車速と対応する第2判定閾値よりも前記振動データに含まれる前記路面終了時のピーク波形のデータが示すピーク値の絶対値が小さい場合の少なくとも一方が成り立つとハイドロプレーニング現象が発生したと判定する請求項1に記載のハイドロプレーニング判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
図1〜
図8を参照して、本実施形態にかかるハイドロプレーニング判定装置について説明する。本実施形態にかかるハイドロプレーニング判定装置は、車両の各車輪に備えられるタイヤの接地面における振動に基づいて走行中の路面状態を推定し、それに基づいてハイドロプレーニング現象の発生を判定する。
【0012】
図1および
図2に示すようにハイドロプレーニング判定装置100は、車輪側に設けられたタイヤマウントセンサ1と、車体側に備えられた各部を含む車体側システム2とを有する構成とされている。車体側システム2としては、受信機21、エンジン制御用の電子制御装置(以下、エンジンECUという)22、ブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECUという)23、車両通信装置24、報知装置25などが備えられている。
【0013】
ハイドロプレーニング判定装置100では、タイヤマウントセンサ1にてタイヤ3に加えられる振動データを取得し、その振動データを受信機21に向けて送信する。そして、受信機21において、受信した振動データやエンジンECU22およびブレーキECU23から取得する各種情報に基づいて路面状態の判定を行ったり、ハイドロプレーニング現象が発生したことの判定となるハイドロプレーニング判定を行っている。
【0014】
また、本実施形態の場合、ハイドロプレーニング判定装置100では、受信機21でハイドロプレーニング現象が発生したと判定されると、報知装置25に対してその旨を伝え、ハイドロプレーニング現象が発生したことを報知させる。また、ハイドロプレーニング判定装置100は、ハイドロプレーニング現象が発生したときに、受信機21よりエンジンECU22やブレーキECU23に対して車両制御を行うための制御信号を出力することで、車両の安定性を向上させるための制御を行う。
【0015】
さらに、受信機21では、路面状態の判定結果を示す路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことを示すデータを車両通信装置24に伝え、車両通信装置24を通じて通信センター200に送っている。逆に、ハイドロプレーニング判定装置100は、車両通信装置24を通じて、通信センター200から路面データやハイドロプレーニング現象が発生した場所であることの情報を取得している。
【0016】
具体的には、タイヤマウントセンサ1および受信機21は、以下のように構成されている。
【0017】
タイヤマウントセンサ1は、
図3に示すように、加速度センサ11、温度センサ12、制御部13、RF回路14および電源15を備えた構成とされ、
図4に示されるように、タイヤ3のトレッド31の裏面側に設けられる。
【0018】
加速度センサ11は、タイヤに加わる振動を検出するための振動検出部を構成するものである。例えば、加速度センサ11は、タイヤ3が回転する際にタイヤマウントセンサ1が描く円軌道に対して接する方向、つまり
図4中の矢印Xで示すタイヤ接線方向の振動に応じた検出信号として、加速度の検出信号を出力する。
【0019】
温度センサ12は、温度に応じた検出信号を出力するもので、タイヤ3のうちのタイヤマウントセンサ1の取り付け位置の温度を検出することで、走行路面の温度を測定している。
【0020】
制御部13は、信号処理部に相当する部分であり、加速度センサ11の検出信号をタイヤ接線方向の振動を表す検出信号として用いて、この検出信号そのもの若しくは検出信号から必要部分を抽出したものを振動データとして、それをRF回路14に伝える。なお、以下の説明において、タイヤ3のトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が路面接地したときを接地開始時、路面から離れるときを接地終了時という。また、接地開始から接地終了までの間、すなわちタイヤ3のトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が路面接地している区間を接地区間という。本実施形態の場合、加速度センサ11の配置箇所がタイヤマウントセンサ1の配置箇所とされている。このため、接地開始時、接地終了時および接地区間は、それぞれ、タイヤ3のトレッド31のうちタイヤマウントセンサ1の配置箇所と対応する部分の接地開始時、接地終了時および接地区間と同意である。
【0021】
加速度センサ11の検出信号、具体的には加速度センサ11の出力電圧の変化や検出信号に含まれる高周波成分は、路面状態を表している。また、加速度センサ11の検出信号は、ハイドロプレーニング現象の発生の有無によっても変化する。このため、制御部13は、加速度センサ11の検出信号を路面状態やハイドロプレーニング現象の発生の有無を示す振動データとしてRF回路14に伝えている。または、制御部13は、後述するように、検出信号の変化のピークを抽出したり、検出信号から高周波成分を抽出し、この抽出結果を振動データとして用いることもでき、このように必要部分を抽出したデータを振動データとすることでデータ小型化を図ることもできる。
【0022】
また、本実施形態の場合は、温度センサ12によって走行路面の温度(以下、路面温度という)を測定していることから、制御部13は、路面温度に関するデータも振動データに含めてRF回路14に伝えている。
【0023】
このようにして、制御部13は、加速度センサ11の検出信号に基づいて振動データを生成し、それをRF回路14に伝える処理を行う。これにより、RF回路14を通じて受信機21に振動データが伝えられるようになっている。
【0024】
具体的には、制御部13は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って上記した処理を行っている。そして、制御部13は、それらの処理を行う機能部としてデータ生成部13aを備えている。
【0025】
例えば、タイヤ回転時における加速度センサ11の出力電圧波形は例えば
図5に示す波形となる。この図に示されるように、タイヤ3の回転に伴ってトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が接地し始めた接地開始時に、加速度センサ11の出力電圧が極大値をとる。この加速度センサ11の出力電圧が極大値をとる接地開始時における出力電圧を第1ピーク値という。さらに、
図5に示されるように、タイヤ3の回転に伴ってトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が接地していた状態から接地しなくなる接地終了時に、加速度センサ11の出力電圧が極小値をとる。この加速度センサ11の出力電圧が極小値をとる接地終了時における出力電圧を第2ピーク値という。第1ピーク値と第2ピーク値は、ピーク時以外における加速度センサ11の出力電圧の平均値に対して逆方向のピークとして表れるが、ピーク高さの絶対値はほぼ同様となる。
【0026】
加速度センサ11の出力電圧が上記のようなタイミングでピーク値をとるのは、以下の理由による。すなわち、タイヤ3の回転に伴ってトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が接地する際、加速度センサ11の近傍においてタイヤ3のうちそれまで略円筒面であった部分が押圧されて平面状に変形する。このときの衝撃を受けることで、加速度センサ11の出力電圧が第1ピーク値をとる。また、タイヤ3の回転に伴ってトレッド31のうち加速度センサ11の配置箇所と対応する部分が接地面から離れる際には、加速度センサ11の近傍においてタイヤ3は押圧が解放されて平面状から略円筒状に戻る。このタイヤ3の形状が元に戻るときの衝撃を受けることで、加速度センサ11の出力電圧が第2ピーク値をとる。このようにして、加速度センサ11の出力電圧が接地開始時と接地終了時でそれぞれ第1、第2ピーク値をとるのである。また、タイヤ3が押圧される際の衝撃の方向と、押圧から開放される際の衝撃の方向は逆方向であるため、出力電圧の符号も逆方向となる。
【0027】
データ生成部13aは、上記した加速度センサ11の出力電圧をそのまま若しくは必要部分を抽出して振動データを作成している。加速度センサ11の出力電圧から必要部分を抽出する場合には、例えば第1ピーク値および第2ピーク値や接地区間中における高周波レベル、さらに第1ピーク値の前の所定領域における高周波レベルなどを振動データとして作成している。
【0028】
また、上記したように、本実施形態の場合は、温度センサ12によって走行路面の温度を測定している。これに基づき、データ生成部13aは、温度センサ12の検出信号を入力することで路面温度を取得し、路面温度に関するデータも振動データに含めてRF回路14に伝えている。
【0029】
また、加速度センサ11の出力電圧が第2ピーク値をとるタイミングが加速度センサ11の接地終了時となるため、データ生成部13aは、このタイミングでRF回路14に送信トリガを送っている。これにより、RF回路14より、データ生成部13aで作成される振動データを受信機21に向けて送信させている。このように、RF回路14によるデータ送信を常に行うのではなく、加速度センサ11の接地終了時に限定して行うようにしているため、消費電力を低減することが可能となる。
【0030】
RF回路14は、データ生成部13aから伝えられた振動データを受信機21に対して送信する送信部を構成するものである。RF回路14と受信機21との間の通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの公知の近距離無線通信技術によって実施可能である。振動データを送信するタイミングについては任意であるが、上記したように、本実施形態では、加速度センサ11の接地終了時にデータ生成部13aから送信トリガが送られることでRF回路14から振動データが送られるようになっている。このように、RF回路14によるデータ送信を常に行うのではなく、加速度センサ11の接地終了時に限定して行うようにしているため、消費電力を低減することが可能となる。
【0031】
また、振動データについては、車両に備えられたタイヤ3毎に予め備えられている車輪の固有識別情報(以下、ID情報という)と共に送られる。各車輪の位置については、車輪が車両のどの位置に取り付けられているかを検出する周知の車輪位置検出装置によって特定できることから、受信機21にID情報と共に振動データを伝えることで、どの車輪のデータであるかが判別可能になる。
【0032】
一方、受信機21は、タイヤマウントセンサ1より送信された振動データを受信し、振動データに基づいて、路面状態がタイヤ3と路面との間に水膜が存在するウェット状態であることの判定やハイドロプレーニング現象の発生の有無の判定を行っている。そして、受信機21は、ハイドロプレーニング現象が発生したことを判定すると、報知装置25に対してその旨の信号を伝え、報知装置25による報知によってドライバに対してハイドロプレーニング現象の発生を伝える。また、受信機21は、ハイドロプレーニング現象が発生したことを判定すると、必要に応じてエンジンECU22やブレーキECU23に対して制御信号を伝える。これにより、エンジンECU22がエンジン出力を低下させたり、ブレーキECU23が制動力を低下させるなど、車両運動制御が実行させることで安定性を向上させられる。さらに、受信機21は、路面状態を示す路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことについて、車両通信装置24を通じて通信センター200に送っている。この受信機21で実行される処理の詳細については後述する。
【0033】
エンジンECU22は、エンジン回転数や燃料噴射量の調整などによってエンジン出力の制御を行う駆動力制御装置を構成するものである。エンジンECU22では、エンジン回転数に関する情報を取り扱っている。このエンジンECU22から受信機21にエンジン回転数の情報が伝えられるようになっている。また、受信機21においてハイドロプレーニング現象が発生したことが判定されると、エンジンECU22に対して制御信号が送られ、エンジン回転数の制御などによってエンジン出力を低下させる制御が行われる。
【0034】
ブレーキECU23は、様々なブレーキ制御を行う制動制御装置を構成するものである。ブレーキECU23は、ブレーキ液圧制御用のアクチュエータを制御することで、自動的にホイールシリンダ圧を発生させて制動力を発生させたり、ホイールシリンダ圧を低下させて制動力を低下させることができる。また、ブレーキECU23は、各車輪の制動力を独立して制御することもできる。したがって、受信機21より、ハイドロプレーニング現象が発生したと判定されたときに制御信号が出されると、それに応じて、ハイドロプレーニング現象が発生した車輪の制動力を低下させることが可能となっている。また、ブレーキECU23は、図示しない車輪速度センサの検出信号などに基づいて車輪速度演算や車速演算などを行っており、その演算結果を車輪速度情報や車速情報として受信機21に伝えている。
【0035】
車両通信装置24は、路車間通信を行うことができるものであり、例えば道路などに設置されている図示しない通信システムを介して、通信センター200との情報交換を行う。本実施形態の場合、車両通信装置24は、受信機21が取得した路面状態を示す路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことについて、自車両の現在位置情報と共に通信センター200に送信している。また、車両通信装置24は、通信センター200から車両の走行予定の道路に関して、路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことについてのデータを受信する。後述するように、通信センター200は、ハイドロプレーニング判定装置100を備えた多数の車両から路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことに関するデータを取得し、そのデータのマッピング、つまり地図データ中の各道路と対応付けした管理を行っている。このため、ハイドロプレーニング判定装置100は、路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことを示すデータを通信センター200に提供したり、逆に、走行予定の道路について、通信センター200が管理しているデータを取得したりする。これにより、通信センター200を通じて、多数の車両間において、路面状態やハイドロプレーニング現象が発生したことに関する情報の共有が行えるようになっている。
【0036】
報知装置25は、例えばメータ表示器などで構成され、ドライバに対して車両にハイドロプレーニング現象が発生したことを報知する。報知装置25をメータ表示器で構成する場合、報知装置25は、ドライバが車両の運転中に視認可能な場所、例えば車両1におけるインストルメントパネル内に設置される。そして、報知装置25は、受信機21からハイドロプレーニング現象が発生したことを示す制御信号が伝えられると、その内容が把握できる態様で表示を行うことで、視覚的にドライバに対して危険性を報知する。
【0037】
報知装置25をブザーや音声案内装置などで構成することもできる。その場合、報知装置25は、ブザー音や音声案内によって、聴覚的にドライバに対してハイドロプレーニング現象が発生したことを報知することができる。また、視覚的な報知を行う報知装置25としてメータ表示器を例に挙げたが、ヘッドアップディスプレイなどの情報表示を行う表示器によって報知装置25を構成しても良い。
【0038】
以上のようにして、本実施形態にかかるハイドロプレーニング判定装置100が構成されている。なお、車体側システム2を構成する各部が例えばCAN(Controller Area Networkの略)通信などによる車内LAN(Local Area Networkの略)を通じて接続されている。このため、車内LANを通じて各部が互いに情報伝達できるようになっている。
【0039】
一方、通信センター200は、多数の車両に備えられたハイドロプレーニング判定装置100との通信を行うことで路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことに関するデータ収集などを行うと共に収集したデータを車両に提供する事業を行っている。通信センター200と車両通信装置24とが直接通信を行える形態とされていても良いが、通信センター200は道路などの各所に設置された通信システムを通じて車両通信装置24との通信が可能となっている。
【0040】
本実施形態の場合、通信センター200は、地図データ中の各道路の場所ごとに、路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことを示すデータを収集し、データベースとして管理している。路面状態は時々刻々と変化するため、通信センター200は、随時、多数の車両のハイドロプレーニング判定装置100と通信を行い、路面データやハイドロプレーニング現象が発生したことを示すデータの更新を行っている。
【0041】
また、通信センター200では、ハイドロプレーニング判定装置100以外からも情報を得ており、その情報を利用して、必要に応じて路面データなどを補正している。例えば、通信センター200は、天気情報等も収集しており、天気情報等に基づいて路面データなどを補正し、より確かな路面データなどに更新している。具体的には、通信センター200は、天気情報として降水量や積雪量、凍結路面に関する情報を取得しており、ウェット路面や積雪路面および凍結路面については、それに対応する路面データなどに更新することでより正確な路面データが逐次記憶されるようにしている。
【0042】
そして、通信センター200は、そのデータベースに管理されているデータをハイドロプレーニング判定装置100を備えた車両に対して提供している。このとき、通信センター200では、多数の車両から路面データなどを収集してデータベースを作成していることから、各車両は、自車両の現在位置の路面データなどだけでなく、走行予定の道路の路面データについても取得できる。
【0043】
続いて、本実施形態にかかるハイドロプレーニング判定装置100の作動について、
図6および
図7を参照して説明する。なお、
図6および
図7は、受信機21が実行するウェット判定処理およびハイドロプレーニング判定処理の詳細を示したフローチャートである。
図6に示すウェット判定処理については、例えば図示しないイグニッションスイッチがオンされているときに所定の制御周期毎に実行される。また、
図7に示すハイドロプレーニング判定処理については、ウェット判定処理においてウェット路面であると判定されたときに実行される。
【0044】
車両が走行すると、各車輪に備えられたタイヤマウントセンサ1から車両の走行に応じた振動データが送信される。すなわち、各車輪のタイヤマウントセンサ1では、制御部13にて、加速度センサ11の検出信号がそのまま用いられるか、若しくは必要部分が抽出されることで振動データが作成され、その振動データが格納されたフレームがRF回路14を通じて受信機21に向けて送信される。
【0045】
これに基づいて、車体側に備えられた受信機21では、
図6に示す振動データの授受処理を行う。具体的には、ステップS100においてフレーム受信を行うことで、タイヤマウントセンサ1から振動データを受け取り、ステップS110において受け取った振動データから路面状態がウェット状態であるか否かを判定を行う。
【0046】
具体的には、受信機21は、路面状態に応じて振動データが変動することから、振動データから路面状態がウェット状態であることの判定を行う。例えば、特許文献1に開示されているように、振動データに含まれる第1ピーク値の前の所定領域における高周波レベルの大きさから路面状態を検出することができる。すなわち、第1ピーク値の前の所定領域における高周波レベルの大きさをバンドパスフィルタによって抽出した帯域値や温度センサ12で検出される路面温度等に基づいて、路面状態がウェット状態であることを判定している。この方法については特許文献1において開示されている公知な方法であるため、説明については省略する。
【0047】
なお、路面状態がウェット状態であることの判定については、様々な方法を適用することができ、どのような方法を用いてウェット状態であることの判定を行っても良い。例えば、特開2015−174638号公報に示されるように、接地区間中における加速度センサ11の検出信号の高周波レベルに基づいて路面状態を判定することもできる。
【0048】
また、受信機21は、路面状態がウェット状態であると判定したときには、ステップS120に進んで、さらにハイドロプレーニング現象の発生の有無についてを判定するハイドロプレーニング判定処理を実行する。
図7は、このハイドロプレーニング判定処理の詳細を示している。
【0049】
ハイドロプレーニング現象は、路面状態がウェット状態の際に、タイヤが水に浮いてしまうことで車両が安定性を損なう状態になる現象のことである。ハイドロプレーニング現象が発生すると、タイヤ3に路面から加えられる振動が低下し、加速度センサ11の検出信号における第1ピーク値や第2ピーク値の絶対値がハイドロプレーニング現象が発生していないときと比較して低下する。これに基づき、タイヤマウントセンサ1から送られてきた振動データに含まれる第1ピーク値や第2ピーク値の少なくとも一方を判定閾値Thと大小比較することで、ハイドロプレーニング現象の発生の有無を判定している。ただし、第1ピーク値や第2ピーク値の絶対値は、車速に応じて変動し、車速が高いほど大きくなる。このため、車速に対応して判定閾値Thを設定している。
【0050】
例えば、受信機21には、車速と判定閾値Thとの関係を示した
図8に示すようなマップもしくはその関係式が記憶されている。この関係については、デフォルト値として予め実験などに基づいて求めておいても良いし、走行中に逐次車速との第1ピーク値および第2ピーク値との関係を蓄積していくことで学習するようにしても良い。そして、受信機21は、ステップS200において、ブレーキECU23から伝えられる車速情報が示す車速に基づいて、その車速に対応する判定閾値Thを設定する。そして、ステップS210において、振動データに含まれる第1ピーク値の絶対値が判定閾値Thより小さいか否かを判定したり、ステップS220において、振動データに含まれる第2ピーク値の絶対値が判定閾値Thより小さいか否かを判定する。
【0051】
これにより、ステップS210、S220のいずれか一方でも肯定判定された場合には、ステップS230に進んでハイドロプレーニング現象が発生していると判定する。そして、ハイドロプレーニング現象が発生した際の処理として、報知装置25に対してその旨を伝えると共に、必要に応じてエンジンECU22やブレーキECU23に制御信号を出力する。このようにして、ハイドロプレーニング現象が発生した場合には、報知装置25を介してユーザにそのことが報知される。したがって、ドライバは報知装置25による報知に基づいて、車両を減速するなどの適切な対応をとることが可能になる。また、必要に応じて、エンジン出力を低下させたり、制動力を低下させることで、ドライバがハイドロプレーニング現象に対して瞬時に対応できなかったとしても、車両の安定性を向上させることが可能となる。
【0052】
なお、ここでは第1ピーク値と第2ピーク値の絶対値がほぼ等しくなることを想定して、ステップS210、S220で用いられる判定閾値Thを同じ値としているが、異なる値であっても良い。その場合、車速と第1ピーク値に対応する判定閾値との関係および車速と第2ピーク値に対応する判定閾値との関係をそれぞれ受信機21に記憶しておき、車速情報が示す車速に基づいて各判定閾値を設定すれば良い。また、ここではステップS210、S220のいずれか一方でも肯定判定されるとハイドロプレーニング現象が発生したと判定するようにしているが、両方とも肯定判定された場合にのみハイドロプレーニング現象が発生したと判定しても良い。勿論、ステップS210、S220の両方の処理を実行する必要はなく、いずれか一方の処理のみを実行してハイドロプレーニング現象の発生の有無について判定しても良い。
【0053】
その後、ステップS240に進み、車両通信装置24に対して路面状態がウェット状態であることを示すデータの送信指示を行う。このとき、ステップS230でハイドロプレーニング現象が発生したと判定されていたのであれば、同時に、ハイドロプレーニング現象が発生したことについても、車両通信装置24からの送信データに含ませるようにしている。このようにして通信センター200は、車両から送信された路面状態やハイドロプレーニング現象が発生したことの情報を収集し、地図データの各道路に関して、路面状態やハイドロプレーニング現象が発生したことをデータ化して管理する。そして、通信センター200からは、管理しているデータが車両に送られることで、車両側は、走行予定の道路に関して、路面状態やハイドロプレーニング現象が発生したという情報を共有することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のハイドロプレーニング判定装置100では、タイヤマウントセンサ1の振動データに基づいて路面状態がウェット状態であることを判定すると、ハイドロプレーニング現象が発生したことの判定を行うようにしている。具体的には、タイヤマウントセンサ1の接地開始時と接地終了時における加速度センサ11の波形がハイドロプレーニング現象の発生の有無に応じて変化することから、それに基づいてハイドロプレーニング現象が発生したことの判定を行っている。これにより、車両におけるハイドロプレーニング現象の発生を判定することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してハイドロプレーニング現象の発生の判定方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態では、第1実施形態と同様の構成とされたハイドロプレーニング判定装置100において、車速や車輪速度およびエンジン回転数に基づいてハイドロプレーニング現象が発生したことを判定する。
【0057】
具体的には、
図6のステップS120で示したハイドロプレーニング判定処理として、
図7に示す処理に代えて
図9に示す処理を実行する。
【0058】
ハイドロプレーニング現象が発生すると、車輪がスリップした状態になるため、車輪速度の変化量が通常のグリップ状態のときよりも大きくなる。同様に、車輪が空回りする状態になるためエンジン回転数もグリップ状態のときよりも高くなる。このため、ステップS300では、車輪速度の変化量が所定の閾値Thaを超えているか否かを判定し、ステップS310では、エンジン回転数の変化量が所定の閾値Thbを超えているかを判定する。車輪速度についてはブレーキECU23からの車輪速度情報から得ることができ、エンジン回転数についてはエンジンECU22からのエンジン回転数に関する情報から得ることができる。
【0059】
これにより、ステップS300、S310のいずれか一方でも肯定判定された場合には、ステップS320に進んでハイドロプレーニング現象が発生していると判定する。そして、
図7のステップ230と同様に、ハイドロプレーニング現象が発生した際の処理として、報知装置25に対してその旨を伝えると共に、必要に応じてエンジンECU22やブレーキECU23に制御信号を出力する。このようにして、ハイドロプレーニング現象が発生した場合には、報知装置25を介してユーザにそのことが報知される。したがって、ドライバは報知装置25による報知に基づいて、車両を減速するなどの適切な対応をとることが可能になる。また、必要に応じて、エンジン出力を低下させたり、制動力を低下させることで、ドライバがハイドロプレーニング現象に対して瞬時に対応できなかったとしても、車両の安定性を向上させることが可能となる。さらに、ステップS330に進み、
図7のステップ240と同様の処理、例えば車両通信装置24に対して路面状態がウェット状態であることを示すデータの送信指示などを行う。
【0060】
このように、路面状態がウェット状態であると判定された場合に、その後の車輪速度やエンジン回転数の変化量に基づいて、ハイドロプレーニング現象が発生したことを判定することもできる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、ここでは、車輪速度の変化量を用いているが、車輪のスリップを確認すれば良いため、車速と車輪速度の偏差で表されるスリップ率の変化などによってハイドロプレーニング現象が発生したことを判定するようにしても良い。また、ここではステップS300、S310のいずれか一方でも肯定判定されるとハイドロプレーニング現象が発生したと判定するようにしているが、両方とも肯定判定された場合にのみハイドロプレーニング現象が発生したと判定しても良い。勿論、ステップS300、S310の両方の処理を実行する必要はなく、いずれか一方の処理のみを実行してハイドロプレーニング現象の発生の有無について判定しても良い。
【0062】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0063】
例えば、上記した第1実施形態と第2実施形態は互いに無関係なものではなく、組み合わせることも可能である。例えば、ハイドロプレーニング現象が発生したことの判定として、第1実施形態および第2実施形態で説明した方法を組み合わせることができる。例えば、ステップS200、S210、S300、S310の処理がすべて行われるようにし、いずれか1つもしくは複数のステップで肯定判定された場合に、ハイドロプレーニング現象が発生したと判定するようにすることができる。
【0064】
また、上記実施形態の場合、受信機21にて、ハイドロプレーニング現象が発生したことの判定を行うようにしたり、報知装置25への報知の指示などを行う制御部としての役割を果たしている。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、受信機21とは別に制御部を備えても良いし、エンジンECU22やブレーキECU23などの他のECUを制御部として機能させるようにしても良い。
【0065】
また、上記実施形態においては、振動検出部として加速度センサ11を例に挙げ、加速度センサ11の検出信号をハイドロプレーニング現象の発生を判定するために用いている。しかしながら、これも振動検出部の一例を示したにすぎず、加速度センサ11以外の振動検出を行う装置によって振動検出部を構成することもできる。例えば、印加される振動に応じた出力電圧を検出信号として発生させる圧電素子などによって振動検出部を構成しても良い。
【0066】
さらに、上記実施形態では、ハイドロプレーニング現象が発生したときの車両運動制御の一例としてエンジン出力を低下させたり、制動力を低下させる制御を実行したが、その他の車両運動制御を行うこともできる。例えば、ドライバによるステアリング操作に対して、舵角の変化量を制限するステアリング制御を実行することで、車両がスピンすることを回避するなどの車両運動制御を行うことができる。