特許第6551276号(P6551276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000002
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000003
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000004
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000005
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000006
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000007
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000008
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000009
  • 特許6551276-エンジンユニット 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551276
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】エンジンユニット
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/00 20060101AFI20190722BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20190722BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20190722BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20190722BHJP
【FI】
   F02B77/00 E
   B60K6/485
   B60K6/405
   B60K6/22
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-60275(P2016-60275)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172486(P2017-172486A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修一
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−073490(JP,A)
【文献】 特開2011−105065(JP,A)
【文献】 特開平04−060120(JP,A)
【文献】 特開2012−251564(JP,A)
【文献】 特開2012−072722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/22
B60K 6/405
B60K 6/485
F02B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの一端側に取付けられているとともに、前記エンジンの出力軸に連結されて前記エンジンの動力のアシストを行うことが可能な電動モータと、
前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、を有するエンジンユニットであって、
前記エンジンユニットは、当該エンジンユニットを吊り上げるための、少なくとも一つのエンジン側ハンガーと、複数のモータ側ハンガーとを、有し、
前記排気浄化装置は、前記エンジンユニットの吊り上げ方向となる前記電動モータの上方に取付けられた支持部材にて支持されており、
前記エンジン側ハンガーは、前記エンジンにおける前記電動モータが配置された側とは反対側に設けられており、
前記複数のモータ側ハンガーは、前記エンジンと前記排気浄化装置との間において前記支持部材に一体に設けられており、
前記エンジン側ハンガーと前記複数のモータ側ハンガーとは、前記エンジンユニットの重心を通りかつ前記エンジンユニットの吊り上げ方向に沿う重心位置直線が、当該エンジン側ハンガーと当該複数のモータ側ハンガーとで囲まれる仮想領域内に位置するように配置されている、
エンジンユニット。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンの一端側に取付けられているとともに、前記エンジンの出力軸に連結されて前記エンジンの動力のアシストを行うことが可能な電動モータと、
前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、を有するエンジンユニットであって、
前記エンジンユニットは、当該エンジンユニットを吊り上げるための、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを、有し、
前記排気浄化装置は、前記エンジンユニットの吊り上げ方向となる前記電動モータの上方に取付けられた支持部材にて支持されており、
前記エンジン側ハンガーは、前記エンジンにおける前記電動モータが配置された側とは反対側に設けられており、
前記モータ側ハンガーは、前記エンジンと前記排気浄化装置との間において前記支持部材に一体に設けられており、
前記エンジン側ハンガーと前記モータ側ハンガーとは、前記エンジンユニットの重心を通りかつ前記エンジンユニットの吊り上げ方向に沿う重心位置直線が、当該エンジン側ハンガーと当該モータ側ハンガーとを結んだハンガー間直線領域上に位置するように配置されている、
エンジンユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたエンジンユニットであって、
前記モータ側ハンガーは、前記エンジンユニットの吊り上げ方向に沿って延在する直線状部分を備えており、
前記直線状部分の一方の端部には吊具が係止される係止部を有するとともに他方の端部には前記電動モータに取付けられるモータ取付部を有する、
エンジンユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載されたエンジンユニットであって、
前記支持部材は、ボルト締結により一体化される複数のブラケットパーツにて構成されており、
それぞれの前記ブラケットパーツは、ボルト締結のボルトが挿通される長孔部を有する、
エンジンユニット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに電動モータが取付けられているとともに排気浄化装置を有するエンジンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、車両の組立等に際して当該エンジンをクレーンなどで吊り上げるためのエンジン吊り上げ用ハンガーが設けられている。特許文献1に開示されたエンジン装置では、クランクシャフトの両端側に対応させてエンジンの上部に2つのエンジン吊り上げ用ハンガーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−251564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、例えば建設機械用のエンジンユニットとして、エンジンのクランクシャフトの一方側において、エンジンに電動モータが取付けられたハイブリッド型のエンジンユニットが知られている。この種のエンジンユニットにおいては、電動モータの重量が非常に大きいため、平面視における当該エンジンユニットの重心の位置が、エンジンのみの場合の重心の位置に対して、電動モータの側に偏っている。このため、エンジンのみの重心位置を考慮してエンジンに配設されたエンジン吊り上げ用ハンガーを用いてエンジンユニットを吊り上げた場合、当該エンジンユニットは重心位置が電動モータの側に偏っているためバランスよく吊り上げられない可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、エンジンに電動モータが取付けられているとともに排気浄化装置を有するエンジンユニットをバランスよく吊り上げ可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明はつぎの手段をとる。
【0007】
本発明の第1発明は、エンジンと、エンジンの一端側に取付けられているとともに、エンジンの出力軸に連結されてエンジンの動力のアシストを行うことが可能な電動モータと、エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、を有するエンジンユニットである。このエンジンユニットは、当該エンジンユニットを吊り上げるための、少なくとも一つのエンジン側ハンガーと、複数のモータ側ハンガーとを、有する。排気浄化装置は、エンジンユニットの吊り上げ方向となる電動モータの上方に取付けられた支持部材にて支持されている。エンジン側ハンガーは、エンジンにおける電動モータが配置された側とは反対側に設けられている。複数のモータ側ハンガーは、エンジンと排気浄化装置との間において支持部材に一体に設けられている。エンジン側ハンガーと複数のモータ側ハンガーとは、エンジンユニットの重心を通りかつエンジンユニットの吊り上げ方向に沿う重心位置直線が、当該エンジン側ハンガーと当該複数のモータ側ハンガーとで囲まれる仮想領域内に位置するように配置されている。
【0008】
本発明の第2発明は、エンジンと、エンジンの一端側に取付けられているとともに、エンジンの出力軸に連結されてエンジンの動力のアシストを行うことが可能な電動モータと、エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、を有するエンジンユニットである。このエンジンユニットは、当該エンジンユニットを吊り上げるための、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを、有する。排気浄化装置は、エンジンユニットの吊り上げ方向となる電動モータの上方に取付けられた支持部材にて支持されている。エンジン側ハンガーは、エンジンにおける電動モータが配置された側とは反対側に設けられている。モータ側ハンガーは、エンジンと排気浄化装置との間において支持部材に一体に設けられている。エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとは、エンジンユニットの重心を通りかつエンジンユニットの吊り上げ方向に沿う重心位置直線が、当該エンジン側ハンガーと当該モータ側ハンガーとを結んだハンガー間直線領域上に位置するように配置されている。
【0009】
本発明の第3発明は、第1発明または第2発明に記載されたエンジンユニットであって、モータ側ハンガーは、エンジンユニットの吊り上げ方向に沿って延在する直線状部分を備えており、この直線状部分の一方の端部には吊具が係止される係止部を有するとともに他方の端部には電動モータに取付けられるモータ取付部を有する。
【0010】
本発明の第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれか一つに記載されたエンジンユニットであって、支持部材は、ボルト締結により一体化される複数のブラケットパーツにて構成されており、それぞれのブラケットパーツは、ボルト締結のボルトが挿通される長孔部を有する。
【発明の効果】
【0011】
第1発明においては、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとで囲まれる仮想領域内にエンジンユニットの重心位置直線が位置している。したがって、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを用いることで、重心の位置が電動モータの側に偏ったエンジンユニットをバランスよく吊り上げることができる。
【0012】
第2発明においては、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを結んだハンガー間直線領域上にエンジンユニットの重心位置直線が位置している。したがって、エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを用いることで、重心の位置が電動モータの側に偏ったエンジンユニットをバランスよく吊り上げることができる。
【0013】
第3発明においては、モータ側ハンガーにおけるモータ取付部と係止部との間が、エンジンユニットの吊り上げ方向に延在する直線状とされている。したがって、モータ側ハンガーは、モータ取付部と係止部との間が例えばクランク状に折り曲がって形成されている場合に比べて、エンジンユニットを吊り上げる際に働く荷重に対する強度が高い。
【0014】
第4発明においては、複数のブラケットパーツがそれぞれの長孔部に対するボルトの挿通によって互いに組付けられている。したがって、複数のブラケットが例えば溶接によって互いに接合されている場合に比べて、各ブラケットの互いの組付け位置の調整代が長孔部によって確保され、各ブラケットの組付け位置が最適となるように調整できる。したがって、各ブラケットの組付け性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るエンジンユニットの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るエンジンユニットを図1の矢印II方向から視た概略正面図である。
図3】第1実施形態に係る支持部材及び電動モータの斜視図である。
図4】第1実施形態に係る支持部材を構成している第1ハンガーブラケットパーツの正面図である。
図5】第1実施形態に係る支持部材を構成している第2ハンガーブラケットパーツの正面図である。
図6】第1実施形態に係る支持部材を構成している第2取付用ブラケットパーツの斜視図である。
図7】第1実施形態に係るエンジンユニットの概略上面図であり、各ハンガーの位置とエンジンユニットの重心の位置とを説明する図である。
図8図7に対応する概略上面図であり、従来の各ハンガーの位置とエンジンユニットの重心の位置とを説明する図である。
図9】第2実施形態に係るエンジンユニットの概略上面図であり、各ハンガーの位置とエンジンユニットの重心の位置とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず、図1〜8を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。図1に示すエンジンユニット1は、例えば建設機械であるパワーショベルの駆動源として設けられている。エンジンユニット1は、エンジン10と、電動モータ20と、排気浄化装置30と、を有する。各図面おいて、X軸とY軸とZ軸とは互いに直交しており、Z軸が指す方向は、上方に対応している。また、Z軸が指す方向は、エンジンユニット1の吊り上げ方向(エンジンユニット1をクレーンなどの吊具で吊り上げる方向)に対応している。Y軸方向は、後述のクランクシャフト11の回転軸線に沿う方向である。
【0017】
エンジン10は、図2に示すように、クランクシャフト11(出力軸)を有する。また、エンジン10には、図1,2に示すように、エンジンユニット1を吊り上げるためのハンガーであるエンジン側ハンガー18が設けられている。エンジン側ハンガー18は、エンジン10において電動モータ20とは反対側に設けられている。エンジン側ハンガー18は、金属製であるとともに例えば平板状に構成されており、当該エンジン側ハンガー18を厚み方向に貫通した貫通孔である係止部18aを有する。エンジンユニット1を吊り上げる際には、この係止部18aに、吊具が係止される。吊具は、ケーブルやチェーン等を備える。なお、上述のエンジン側ハンガー18は、エンジンブロック14に固定されている。エンジンブロック14は、Z軸に沿った上下方向に関して、下部のオイルパン12と上部のシリンダヘッドカバー16との間に位置している。
【0018】
電動モータ20は、図2に示すように、クランクシャフト11の一方側において、エンジン10に取付け固定されている。電動モータ20のロータ22は、クランクシャフト11と接続されている。電動モータ20は、エンジン10の動力のアシストを行うことが可能である。エンジン10が駆動されると、あるいは、電動モータ20に電力が供給されると、ロータ22とクランクシャフト11とは一体となって回転して、電動モータ20におけるエンジン10固定側と反対側に接続された図示しないオイルポンプを回転駆動する。電動モータ20の回転軸線であるモータ軸線Jはクランクシャフト11と同軸で配置されている。
【0019】
排気浄化装置30は、図1,2に示すように、例えば、エンジン10の排気管に接続された円筒状の筐体の内部にDPFや酸化触媒などの排気後処理装置を含んで構成されており、エンジン10からの排気を浄化する。排気浄化装置30は、電動モータ20の上方に配置されており、電動モータ20に取付けられた支持部材50によって下方から支持されている。排気浄化装置30は、浄化装置取付ブラケット42,43によって支持部材50に取付けられている。
【0020】
支持部材50は、図3に示すように、電動モータ20の上部に設けられている。支持部材50は、複数(本実施形態では7個)のブラケットパーツLにて構成されている。ブラケットパーツLには、第1支持ブラケットパーツ61、第2支持ブラケットパーツ62、第1ハンガーブラケットパーツ63(第1モータ側ハンガー)、第2ハンガーブラケットパーツ64(第2モータ側ハンガー)、第1取付ブラケットパーツ65、補強ブラケットパーツ66、及び第2取付ブラケットパーツ67、がある。両ハンガーブラケットパーツ63,64はモータ側ハンガーを構成する。各ブラケットパーツLは、金属製(例えば、SS400やSUS304など)であり、排気浄化装置30を支持可能な強度を有する。各ブラケットパーツLは、ボルト締結によって一体化されている。
【0021】
第1支持ブラケットパーツ61と第2支持ブラケットパーツ62とは(図3参照)、上面視において、モータ軸線Jを挟んで一対で配置されている。第1支持ブラケットパーツ61は、第1ハンガーブラケットパーツ63を挟んで第1取付ブラケットパーツ65と接続される接続部61aと、第2取付ブラケットパーツ67と接続される接続部61bと、電動モータ20と接続される接続部61cと、を有する。接続部61cは、ボルト締結によって電動モータ20のハウジングに固定されている。なお上述の上面視とは、エンジンユニット1の吊り上げ方向である上方から、エンジンユニット1を2次元の平面状に視た状態のことである。
【0022】
第2支持ブラケットパーツ62(図3参照)は、第2ハンガーブラケットパーツ64を挟んで第1取付ブラケットパーツ65と接続される接続部62aと、第2取付ブラケットパーツ67と接続される接続部62bと、電動モータ20と接続される接続部62cと、を有する。接続部62cは、ボルト締結によって電動モータ20のハウジングに固定されている。
【0023】
第1ハンガーブラケットパーツ63(図3参照)は、第1支持ブラケットパーツ61に対してエンジン10の側に配置されている。第1ハンガーブラケットパーツ63は、エンジンユニット1を吊り上げるためのハンガーを構成する。第1ハンガーブラケットパーツ63は、図4に示すように、直線状部分A1と、直線状部分A1の一方側の端部に設けられた係止部63aと、直線状部分A1の他方側の端部に設けられたモータ取付部63bと、張出部63cと、を有する。
【0024】
係止部63aは、第1ハンガーブラケットパーツ63が厚み方向に貫通された貫通孔である。係止部63aは、第1支持ブラケットパーツ61及び第1取付ブラケットパーツ65よりも上方に突出した位置に配置されている(図3参照)。係止部63aには、エンジンユニット1を吊り上げる際に吊具が係止される。モータ取付部63bは、ボルト締結によって電動モータ20のハウジングに固定されている。
【0025】
図4に示すように、係止部63aとモータ取付部63bとの間は、エンジンユニット1の吊り上げ方向であるZ軸方向に折れ曲がることなく当該エンジンユニット1の吊り上げ方向に沿って延在する(エンジンユニット1の吊り上げ方向に沿って延びた)直線状部分A1となっている。したがって、第1ハンガーブラケットパーツ63は、係止部63aとモータ取付部63bとの間が例えばクランク状に折り曲がって形成されている場合に比べて、エンジンユニット1を吊り上げる際に働く荷重に対する強度が高い。
【0026】
第2ハンガーブラケットパーツ64(図3参照)は、第2支持ブラケット62に対してエンジン10の側に配置されている。
【0027】
第2ハンガーブラケットパーツ64は、エンジンユニット1を吊り上げるためのハンガーを構成しており、第1ハンガーブラケット63と同様に機能する。
【0028】
第2ハンガーブラケットパーツ64は、図5に示すように、直線状部分A2と、係止部64aと、モータ取付部64bと、2つの張出部64c,64dと、を有する。直線状部分A2と、係止部64aと、モータ取付部64bとは、それぞれ、図4に示す直線状部分A1、係止部63a、モータ取付部63bに対応している。
【0029】
第1取付ブラケットパーツ65(図3参照)は、第1ハンガーブラケットパーツ63及び第2ハンガーブラケットパーツ64に対してエンジン10の側に配置されている。第1取付ブラケットパーツ65は、3つの接続部65a,65b,65cと、2つの取付部65d,65eと、を有する。
【0030】
接続部65aは、図3に示すように、第1ハンガーブラケットパーツ63の張出部63c及び第1支持ブラケットパーツ61の接続部61a及び補強ブラケットパーツ66の接続部66a(後述参照)とともにボルトBで貫通され且つナットNで締結されている。接続部65bは、第2ハンガーブラケットパーツ64の張出部64c及び第2支持ブラケットパーツ62の接続部62a及び補強ブラケットパーツ66の接続部66b(後述参照)とともにボルトBで貫通され且つナットNで締結されている。接続部65cは、第2ハンガーブラケットパーツ64の張出部64dとボルトBで貫通され且つナットNで締結されている。取付部65dには、浄化装置取付ブラケット42(図1参照)が取付けられている。取付部65eには、浄化装置取付ブラケット43が取付けられている。
【0031】
補強ブラケットパーツ66(図3参照)は、2つの接続部66a,66bを有する。接続部66aは、第1支持ブラケットパーツ61の接続部61aに対してエンジン10とは反対側に配置されている。接続部66bは、第2支持ブラケットパーツ62の接続部62aに対してエンジン10とは反対側に配置されている。
【0032】
第2取付ブラケットパーツ67(図3参照)は、3つの取付部67a,67b,67cを有する。取付部67a,67bには、排気浄化装置30(図1参照)においてエンジン10とは反対側に設けられた浄化装置取付ブラケット(図1では図示省略)が取付けられている。取付部67cには、補助ブラケットパーツ67z(図6参照)が溶接にて取付けられている。
【0033】
補助ブラケットパーツ67zは、図6に示すように、2つの接続部67z1,67z2を有する。接続部67z1は、第1支持ブラケットパーツ61の接続部61b(図3参照)にボルト締結されている。接続部67z2は、第2支持ブラケットパーツ62の接続部62b(図3参照)にボルト締結されている。
【0034】
各ブラケットパーツLは、互いが組みつけられるに個所に、ボルトBが挿通される長孔部Cを有する。図4,5では、第1ハンガーブラケットパーツ63と第2ハンガーブラケットパーツ64を例として、長孔部Cを示している。各ブラケットパーツLにおいて、長孔部Cの開口まわりは、ボルトBがナットNにて締結されるボルト締結部Wとなっている。図3では、一部のボルト締結部Wが示されている。各ブラケットパーツLは、それぞれの長孔部Cに対するボルトBの挿通によって互いに組付けられている。したがって、各ブラケットパーツLは、例えば溶接によって互いに接合されている場合に比べて、各ブラケットパーツLの互いの組付け位置の調整代が長孔部Cによって確保される。したがって、各ブラケットパーツは、それぞれの組付け位置が最適となるように調整され、互いの組付け性が向上する。
【0035】
図7に示すように、エンジンユニット1においては、電動モータ20の重量が大きいため、上面視における重心Gの位置が、エンジン10のみの場合の重心GEの位置に比べて、電動モータ20及び排気浄化装置30の側にずれている。上述した第1ハンガーブラケットパーツ63と第2ハンガーブラケットパーツ64とエンジン側ハンガー18とは、これらの3つエンジンユニット吊り上げ用ハンガーの各係止部63a,64a,18aによって囲まれる三角形の仮想領域P1内に、重心位置直線Gaが位置するように配置されている(図1,7参照)。重心位置直線Gaは、エンジンユニット1の重心Gを通りかつエンジンユニット1の吊り上げ方向(Z軸が指す方向)に沿う仮想直線である。
【0036】
図8は、エンジン10のみの重心Gの位置を考慮してエンジン10に配置されたエンジン吊り上げ用ハンガーとしてのハンガー118,119の位置を上面視で示している。ハンガー118の位置は、エンジン側ハンガー18(図1参照)と一致している。両ハンガー118,119は、エンジン10に設けられている。両ハンガー118,119は、これらの両ハンガー118,119を結んだ仮想直線L上に重心Gが位置するように配置されている。エンジンユニット1の重心Gは、仮想直線L上から外れた位置にある。したがって、両ハンガー118,119によってエンジンユニット1を吊り上げた場合、エンジンユニット1をバランスよく吊り上げられない可能性がある。これに対して、上述の実施形態にて示した第1ハンガーブラケットパーツ63と第2ハンガーブラケットパーツ64とエンジン側ハンガー18とは、上面視においてこれらの3つのエンジンユニット吊り上げ用ハンガーが囲む仮想領域P1内にエンジンユニット1の重心Gが位置するように配置されている。したがって、これらの第1ハンガーブラケットパーツ63と第2ハンガーブラケットパーツ64とエンジン側ハンガー18とを利用してエンジンユニット1を吊り上げることで、当該エンジンユニット1をバランスよく吊り上げることができる。なお、エンジンユニット1が吊り上げられる際、第1ハンガーブラケットパーツ63と第2ハンガーブラケットパーツ64とエンジン側ハンガー18とのそれぞれの係止部63a,64a,18aには吊具が係止さる。また、エンジンユニット1が吊り上げられる際、当該エンジンユニット1は、例えばクランクシャフト11が略水平に配置されているとともに、排気浄化装置30はエンジンユニット1の吊り上げ方向となる電動モータ20の上方に配置された状態(図1に示す状態)にある。
【0037】
上述の構成においては、排気浄化装置30を支持する支持部材50の一部をエンジンユニット吊り上げ用ハンガーとすることで、電動モータ20の上方において排気浄化装置30まわりの既存のスペースにエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを設けることができる。電動モータ20の上方にエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを設けることで、重心Gの位置が電動モータ20の側に偏ったエンジンユニット1をバランスよく吊り上げることができる。
【0038】
上述の構成においては、第1ハンガーブラケットパーツ63(第1モータ側ハンガー)と第2ハンガーブラケットパーツ64(第2モータ側ハンガー)とエンジン側ハンガー18との3つのエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを設けていることから、例えばエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを2つ設けた場合に比べて、エンジンユニット1を吊り上げる際の荷重が分散されて、各エンジンユニット吊り上げ用ハンガーにかかる負荷を低減できる。
【0039】
上述の構成においては、支持部材50を構成するブラケットパーツLの一部をエンジンユニット吊り上げ用ハンガーとするため、エンジンユニット吊り上げ用ハンガーとして新たに部材を設ける場合とは異なり、エンジンユニット吊り上げ用ハンガーを安価に製作できる。また、上述の構成においては、排気浄化装置30まわりの既存のスペースを利用してエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを設けることで、エンジンユニット吊り上げ用ハンガーのための新たなスペースを確保することが不要であり、スペースを節約できる。なお、各ブラケットパーツLは、排気浄化装置30を支持することができるように、予め十分な強度が確保されている。強度の高いブラケットパーツLをエンジンユニット吊り上げ用ハンガーとすることで、強度の高いエンジンユニット吊り上げ用ハンガーを容易に設けることができる。
【0040】
<第2実施形態>
つづいて、図9を用いて本発明の第2実施形態を説明する。以下では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。第2実施形態では、モータ側ハンガーが第1ハンガーブラケットパーツ63のみで構成され、第2ハンガーブラケットパーツ64はエンジンユニット1の吊り上げには使用されない。第1ハンガーブラケットパーツ63は、当該第1ハンガーブラケットパーツ63の係止部63aとエンジン側ハンガー18の係止部18aとを結んだ仮想直線領域であるハンガー間直線領域P2上に重心位置直線Gaが位置するように配置されている。ハンガー間直線領域P2は、両ハンガーの係止部18a,63aの中心同士を結んだ仮想直線P2aを中心として第1ハンガーブラケットパーツ63及びモータ側ハンガー18の幅方向(X軸方向)に傾き許容幅HHを有する領域(図9のハッチングの領域)である。なお、傾き許容幅HHは、第1ハンガーブラケットパーツ63及びモータ側ハンガー18を用いてエンジユニット1を吊り上げた場合に、エンジンユニット1の傾き角度を許容角度(例えば10度)以内に収めることができる幅として設定されている。
【0041】
以上は、本発明を実施するための形態を図面に関連して説明したが、本発明は上述の2つの実施形態にて説明した構造、構成、外観、形状等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。第1実施形態において、モータ側ハンガーを3つ以上設けてもよい。この場合、3つ以上のモータ側ハンガーとエンジン側ハンガー18とは、それらのモータ側ハンガーとエンジン側ハンガー18とで囲まれる仮想領域内に重心位置直線Gaが位置するように配置される。エンジン側ハンガーとモータ側ハンガーとを共に複数個(2つ以上)設けてもよい。この場合、複数のエンジン側ハンガーと複数のモータ側ハンガーとは、これらの複数のエンジン側ハンガーと複数のモータ側ハンガーとで囲まれる仮想領域内に重心位置直線Gaが位置するように配置される。エンジン側ハンガーを複数個(2つ以上)、モータ側ハンガーを一つとしてもよい。この場合、複数のエンジン側ハンガーと一つのモータ側ハンガーとは、これらの複数のエンジン側ハンガーと一つのモータ側ハンガーとで囲まれる仮想領域内に重心位置直線Gaが位置するように配置される。両ハンガーブラケットパーツ63,64及びエンジン側ハンガー18のそれぞれにおいて、吊具を係止するための係止部を、フック状の取付部に変更してもよい。各ブラケットパーツLは、これらの全てを溶接にて互いに接合させてもよいし、一部のブラケットパーツLのみをボルトで固定して他のブラケットパーツLを溶接にて接合させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジンユニット
10 エンジン
11 クランクシャフト(出力軸)
18 エンジン側ハンガー
20 電動モータ
22 ロータ
30 排気浄化装置
50 支持部材
63 第1ハンガーブラケットパーツ(第1モータ側ハンガー)
64 第2ハンガーブラケットパーツ(第2モータ側ハンガー)
63a,64a 係止部
63b,64b モータ取付部
A1,A2 直線状部分
B ボルト
C 長孔部
G 重心
Ga 重心位置直線
P1 仮想領域
P2 ハンガー間直線領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9