特許第6551284号(P6551284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551284
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】フォークリフトの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   B66F9/24 C
   B66F9/24 E
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-75210(P2016-75210)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-186112(P2017-186112A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】井上 等
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−280146(JP,A)
【文献】 特開2008−195519(JP,A)
【文献】 特開2013−071839(JP,A)
【文献】 特開2013−183569(JP,A)
【文献】 特開2003−212494(JP,A)
【文献】 特開2015−174705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けたマストと、
前後に傾動可能であって、前記マストに対して昇降するフォークと、
前記フォークの揚高を検出する揚高検出器と、前記フォークのティルト角を検出するティルト角検出器と、
前記揚高検出器および前記ティルト角検出器と電気的に接続されるとともに前記フォークの昇降および前後傾動を制御する制御装置と、を備えたフォークリフトの制御方法において、
運転停止後に、前記フォークを予め設定した設定揚高まで下降させ、
前記設定揚高に達した前記フォークを前傾させ、
前記ティルト角検出器が前記フォークの前傾の停止を示す第1前傾ティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、
前記フォークの先端部と路面とが接地したまま前記フォークを下降させ、
前記ティルト角検出器が前記第1前傾ティルト角より小さい第2前傾ティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止することを特徴とするフォークリフトの制御方法。
【請求項2】
前記第1前傾ティルト角と前記第2前傾ティルト角とのティルト角度差が、予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止することを特徴とする請求項1記載のフォークリフトの制御方法。
【請求項3】
車体に設けたマストと、
前後に傾動可能であって、前記マストに対して昇降するフォークと、
前記フォークの揚高を検出する揚高検出器と、前記フォークのティルト角を検出するティルト角検出器と、
前記揚高検出器および前記ティルト角検出器と電気的に接続されるとともに前記フォークの昇降と、前後傾動を制御する制御装置と、を備えたフォークリフトの制御方法において、
運転停止後に、前記フォークを予め設定した設定揚高まで下降させ、
前記設定揚高に達した前記フォークを予め設定した設定前傾ティルト角まで前傾させ、
前記揚高検出器により検出する揚高が変化なく継続されるとき、又は、前記ティルト角検出器が前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、前記フォークの下降を停止することを特徴とするフォークリフトの制御方法。
【請求項4】
前記揚高検出器により検出する揚高が、予め設定された設定検出時間を超えて変化なく継続して検出されるとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、前記フォークの下降を停止することを特徴とする請求項3記載のフォークリフトの制御方法。
【請求項5】
前記ティルト角検出器が、前記設定前傾ティルト角と、前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出し、
前記設定前傾ティルト角と前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角とのティルト角度差が、予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止することを特徴とする請求項3記載のフォークリフトの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトの制御方法に関し、特に、昇降するフォークの揚高を検出する揚高検出器と、フォークのティルト角を検出するティルト角検出器を備えたフォークリフトの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトの制御方法の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されたフォークリフトを挙げることができる。特許文献1に開示されたフォークリフトでは、強制下降条件が成立すると、制御手段により油圧駆動手段のリフトシリンダを動作させてフォークを床面に着地するまで強制下降させる。具体的には、フォークリフトの作業が終わり、キースイッチがオフされ、または、オートパワーオフ機能が動作するときに、解除スイッチがオンであって、リーチイン検出手段のリーチインスイッチがオフである場合である。特許文献1に開示されたフォークリフトによれば、作業が終了し、オペレータがフォークを床面に着地させるのを忘れてキースイッチをオフし、そのまま車体から離れても、制御手段により油圧駆動手段が制御されてフォークが床面まで自動的に下降される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−75280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたフォークリフトでは、揚高検出センサが記憶している路面高さを利用して下降させたフォークと路面を当接させている。このため、路面に傾斜が存在する場合やタイヤが摩耗している場合、あるいは揚高検出センサに誤差が生じている場合では、確実にフォークの先端部と路面とを当接させることができないおそれがある。つまり、特許文献1に開示されたフォークリフトでは、作業終了時にフォークを路面まで自動的に下降させようとするものの、フォークの先端部を床面に確実に当接させることができないという問題がある。因みに、作業終了時においては下降させたフォークの先端部を路面に当接させることが望ましい。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、運転終了時にフォークを路面まで自動的に下降させ、フォークの先端部と路面を確実に接地させることが可能なフォークリフトの制御方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体に設けたマストと、前後に傾動可能であって、前記マストに対して昇降するフォークと、前記フォークの揚高を検出する揚高検出器と、前記フォークのティルト角を検出するティルト角検出器と、前記揚高検出器および前記ティルト角検出器と電気的に接続されるとともに前記フォークの昇降および前後傾動を制御する制御装置と、を備えたフォークリフトの制御方法において、運転停止後に、前記フォークを予め設定した設定揚高まで下降させ、前記設定揚高に達した前記フォークを前傾させ、前記ティルト角検出器が前記フォークの前傾の停止を示す第1前傾ティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、前記フォークの先端部と路面とが接地したまま前記フォークを下降させ、前記ティルト角検出器が前記第1前傾ティルト角より小さい第2前傾ティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止することを特徴とする。
【0007】
本発明では、フォークを設定揚高まで下降させたのち、フォークを前傾させることにより、ティルト角検出器により検出されるティルト角に基づいてフォークの先端部と路面との当接が検知される。従って、フォークリフトの作業終了時にフォークを路面まで自動的に下降させ、フォークの先端部と路面を確実に接地させることが可能である。
【0008】
また、上記のフォークリフトの制御方法において、前記第1前傾ティルト角と前記第2前傾ティルト角とのティルト角度差が、予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止させてもよい。
この場合、第1前傾ティルト角と前記第2前傾とのティルト角度差が予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、路面と接地されたフォーク18は下降に伴って前傾を解消する方向に傾動されている。つまり、フォークの先端部と路面は確実に接地していることになる。
【0009】
また、本発明では、車体に設けたマストと、前後に傾動可能であって、前記マストに対して昇降するフォークと、前記フォークの揚高を検出する揚高検出器と、前記フォークのティルト角を検出するティルト角検出器と、前記揚高検出器および前記ティルト角検出器と電気的に接続されるとともに前記フォークの昇降と、前後傾動を制御する制御装置と、を備えたフォークリフトの制御方法において、運転停止後に、前記フォークを予め設定した設定揚高まで下降させ、前記設定揚高に達した前記フォークを予め設定した設定前傾ティルト角まで前傾させ、前記揚高検出器により検出する揚高が変化なく継続されるとき、又は、前記ティルト角検出器が前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出するとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、前記フォークの下降を停止することを特徴とする。
【0010】
本発明では、フォークを設定揚高まで下降させたのち、設定揚高に達したフォークを予め設定した前傾ティルト角まで前傾させる。揚高検出器により検出されるフォークの揚高が変化しないこと、若しくは、ティルト角検出器により検出されるティルト角に基づいてフォークと路面との接地が検知される。従って、フォークリフトの作業終了時にフォークを路面まで自動的に下降させ、フォークの先端部と路面を確実に接地させることが可能である。
【0011】
また、上記のフォークリフトの制御方法において、前記揚高検出器により検出する揚高が、予め設定された設定検出時間を超えて変化なく継続して検出されるとき、前記制御装置は前記フォークの先端部と路面との接地を検知し、前記フォークの下降を停止させてもよい。
この場合、揚高検出器により検出する揚高が、予め設定された設定検出時間を超えて変化なく継続して検出されるとき、フォークの先端部と路面とは確実に接地している。
【0012】
また、上記のフォークリフトの制御方法において、前記ティルト角検出器が、前記設定前傾ティルト角と、前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出し、前記設定前傾ティルト角と前記設定前傾ティルト角より小さいティルト角とのティルト角度差が、予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、前記制御装置は前記フォークの下降を停止してもよい。
この場合、設定前傾ティルト角と減少時ティルト角とのティルト角度差が予め設定された設定ティルト角度差を上回るとき、設定前傾ティルト角の減少を確実に示すことになり、フォークの先端部と路面とは確実に接地している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転終了時にフォークを路面まで自動的に下降させ、フォークの先端部と路面を確実に接地させることが可能なフォークリフトの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るフォークリフトを示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係るフォークリフトを示す平面図である。
図3】第1の実施形態に係るフォークリフトの制御方法を説明するフロー図である。
図4】(a)〜(c)は第1の実施形態に係るフォークリフトの制御方法を説明する説明図である。
図5】第2の実施形態に係るフォークリフトの制御方法を説明するフロー図である。
図6】(a)〜(d)は第1の実施形態に係るフォークリフトの制御方法を説明する説明図である。
図7】第2の実施形態の変形に係るフォークリフトの制御方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るフォークリフトおよびフォークリフトの制御方法について図面を参照して説明する。本実施形態のフォークリフトは、リーチ式フォークリフトであり、遠隔操縦される無人フォークリフトである。
【0016】
図1図2に示すように、フォークリフト10の車体11の前部には、左右一対のリーチレグ12が設けられている。各リーチレグ12の先端部には、前輪13L、13Rがそれぞれ支持されている。図1では左のリーチレグ12と左の前輪13Lのみが示される。
両リーチレグ12の間には、荷役装置14が備えられており、荷役装置14は前後方向へのリーチ動作を行えるように支持されている。荷役装置14のリーチ動作は、車体11の後部に設けられたリーチシリンダ(図示せず)の作動により行われる。
【0017】
荷役装置14は、左右のリーチレグ12に支持されたアウタマスト15と、アウタマスト15に昇降可能に支持されたインナマスト16とを備えている。インナマスト16には、リフトサポート17が昇降可能に支持されている。リフトサポート17の前面には、左右一対のフォーク18が支持されている。フォーク18の上端は、フォーク18のティルト動作を可能とするようにリフトサポート17に軸支されている。従って、フォーク18は前後に傾動可能である。フォーク18の上方には、リフトブラケット19が備えられている。アウタマスト15の後方にはインナマスト16を昇降させるリフトシリンダ20が固定されている。なお、リフトシリンダ20は、フォーク18を通常速度によって昇降させる機能のほか、通常速度の1/10程度の低い速度(微速)によってフォーク18を下降させる機能を備える。
【0018】
リフトサポート17には、ティルトシリンダ21の基端部が軸支されている。ティルトシリンダ21のロッドは、フォーク18に軸着されている。ティルトシリンダ21はロッドの進退によりフォーク18をティルト動作させる。フォーク18は、ティルト動作によってフォーク18の先端部が下方へ向いた前傾の状態やフォーク18の先端部が上方へ向いた後傾の状態となる。フォーク18の前傾時および後傾時の最大ティルト角は予め設定されている。
【0019】
車体11後部の左側には、ドライブユニット22が設けられている。ドライブユニット22は走行用モータ23と、走行用モータ23の下部に支持された駆動輪24を備えている。走行用モータ23は駆動輪24を駆動し、フォークリフト10は駆動輪24の駆動により路面Fを走行する。車体11の後部右側には運転席25が設けられている。車体11における運転席25の下方には、キャスタ輪26が支持されている。
【0020】
本実施形態のフォークリフト10は、フォーク18の揚高を検出する揚高検出器27を備えている。揚高検出器27は、インナマスト16に設けたエンコーダであり、一端がリフトブラケット19に接続されたワイヤ28が巻き掛けられるリール29に接続されている。揚高検出器27は、フォーク18の揚高を連続的に検出する検出信号を出力する。
【0021】
本実施形態のフォークリフト10は、フォーク18のティルト角を検出するティルト角検出器30を備えている。ティルト角検出器30は、ティルトシリンダ21のリフトサポート側となる基端部に設けられたポテンショメータである。ティルトシリンダ21のロッドの進退に伴い、フォーク18のティルト動作が行われ、フォーク18は前後に傾動される。フォーク18のティルト動作に対応してティルトシリンダ21の基端部が回動し、ティルト角検出器30は基端部の回動量に対応するフォーク18のティルト角を連続的に検出する検出信号を出力する。
【0022】
本実施形態のフォークリフト10は、フォークリフト10の各部を制御する制御装置31を備えている。制御装置31は、図示されないが、演算処理を行う演算処理部と、プログラムや各種データを記憶するメモリ部と、遠隔操縦の指令を受けるための通信部とを有する。制御装置31は、ドライブユニット22および油圧機器(図示せず)と電気的に接続され、ドライブユニット22および油圧機器を制御する。制御装置31は揚高検出器およびティルト角検出器と電気的に接続されており、フォーク18の揚高を連続的に検出する検出信号およびフォーク18のティルト角を連続的に検出する検出信号の伝達を受ける。制御装置31は、油圧回路におけるリフトシリンダ20およびティルトシリンダ21を作動させるコントロールバルブ(図示せず)を制御する。従って、制御装置31はフォーク18の昇降および前後傾動を制御する。
【0023】
本実施形態のフォークリフト10では、運転終了後にフォーク18の先端部を路面Fに当接させてフォーク18を接地させる制御を行うためのプログラムが制御装置31に記憶されている。運転終了後にフォーク18の先端部を路面Fに当接させてフォーク18を接地させる具体的な手順は、図3のフロー図に示す。
【0024】
図3に示すように、遠隔操作の制御開始指令によりフォークリフト10の運転停止後に制御が開始される(ステップS1)。フォークリフト10が運転停止されると、フォーク18を通常の速度で下降させる(ステップS2)。次に、制御装置31は、フォーク18の揚高が設定揚高Hか否かを判断する(ステップS3)。設定揚高Hは、予め設定された揚高であって制御装置31に記憶されており、例えば、床面から50mmの高さが設定揚高Hとして記憶されている。揚高検出器27により検出されたフォーク18の揚高が設定揚高Hである場合は、制御装置31はフォーク18を微速により下降させる(ステップS4)。フォーク18の揚高が設定揚高Hではない場合は、フォーク18の通常速度による下降を継続する。フォーク18の微速による下降とともにフォーク18を前傾させる(ステップS5)。
【0025】
次に、制御装置31は、フォーク18を前傾させているときに、ティルト角がフォーク18の前傾の停止を示す第1前傾ティルト角か否かを判断する(ステップS6)。なお、第1前傾ティルト角は、フォーク18の先端部と路面Fとの接地によりフォーク18の前傾が停止した時のティルト角を指す。ティルト角検出器30により検出されるティルト角がフォーク18の前傾の停止を示す第1前傾ティルト角の場合、制御装置31はフォーク18の前傾を停止させる(ステップS7)。ティルト角がフォーク18の前傾の停止を示す第1前傾ティルト角でない場合、フォーク18の前傾を継続する。フォーク18の前傾停止後には、微速によるフォーク18の下降は継続される。次に、フォーク18を微速にて下降させているときに、ティルト角が第1前傾ティルト角より小さい第2前傾ティルト角であるか否かを判断する(ステップS8)。ティルト角検出器30により検出されるティルト角が第1前傾ティルト角より小さい第2前傾ティルト角の場合、フォーク18の下降を停止して終了する(S9)。ティルト角が第2前傾ティルト角でない場合、フォーク18の下降を継続する。
【0026】
前傾の停止を示す第1前傾ティルト角の検出後もフォーク18の下降が継続されるので、路面Fと設置するフォーク18は下降に伴い、ティルト角検出器30により検出されるティルト角は第1前傾ティルト角より小さくなる。第1前傾ティルト角よりも小さい予め設定された第2前傾ティルト角に達したときフォーク18の下降が停止される。このため、第1前傾ティルト角と第2前傾ティルト角との間には角度差が存在する。本実施形態では、第1前傾ティルト角と第2前傾ティルト角との間の角度差について予め設定ティルト角度差△θを設定している。制御装置31には、予め設定された設定ティルト角度差△θが記憶されている。第1前傾ティルト角と第2前傾ティルト角との差はティルト角度差とすると、設定ティルト角度差△θは制御装置31がフォーク18の先端部と路面Fが確実に接地されていることを認識するための閾値である。ティルト角度差が設定ティルト角度差△θを上回ったとき、フォーク18の先端部と路面Fが確実に接地されていると判断できる。一連のステップS1〜S9は、制御装置31に記憶されたプログラムの実行によって行われる。
【0027】
次に、フォークリフト10の制御方法について説明する。フォークリフト10は、遠隔操作により運転停止する状態では、指定の位置で停車されており、図4(a)に示すように、フォーク18の揚高は設定揚高Hよりも高い。フォーク18間の間隙が大きく、フォーク18を下降させるとリーチレグ12に干渉する場合には、予めフォーク18をリーチレグに対して前進させて、リーチレグ12とフォーク18との干渉を回避できる状態にする。運転停止する状態とは、例えば、自動的に主電源を解除する機能が作動する状態を指す。
【0028】
本実施形態では、遠隔操作の制御開始指令により運転停止後にフォーク18が下降される。フォーク18はリフトシリンダ20の作動により通常速度により下降される。フォーク18の下降時には、揚高検出器27がフォーク18の揚高を検出する検出信号を制御装置31へ出力する。揚高検出器27により検出されるフォーク18の揚高が設定揚高Hで下降されると、制御装置31はフォーク18を微速による下降とする制御を行う(ステップS4)。図4(a)において二点鎖線により示すフォーク18は通常速度により下降する前の状態を示し、実線により示すフォーク18は微速により下降する前の状態を示す。
【0029】
フォーク18の微速による下降時には、図4(b)に示すように、フォーク18がティルトシリンダ21の作動により前傾される(ステップS5)。フォーク18の前傾時にはティルト角検出器30がフォーク18のティルト角を検出する検出信号を制御装置31へ出力する。ティルト角検出器30により検出されるフォーク18のティルト角が変化せず、フォーク18の前傾の停止を示す第1前傾ティルト角を検出すると、制御装置31はフォーク18の前傾を停止する(ステップS7)。フォーク18の前傾の停止としては、フォーク18が前傾の最大ティルト角に達したときと、フォーク18が前傾の最大ティルト角に達する前に路面Fに接地する場合がある。図4(b)において二点鎖線により示すフォーク18は前傾前の状態を示し、実線により示すフォーク18は路面Fと接地した前傾停止後の状態を示す。
【0030】
フォーク18の前傾停止後には、図4(c)に示すように、フォーク18は微速による下降が継続される。のフォーク18の下降時には、揚高検出器27がフォーク18の揚高を検出する検出信号を制御装置31へ出力する。フォーク18の先端部が路面Fと接地したままフォーク18が下降すると、フォーク18は下降に伴って前傾を解消する方向に傾動される。フォーク18の前傾を解消する方向への傾動は、ティルト角が第1前傾ティルト角より小さくなる。ティルト角検出器30により検出されるフォーク18のティルト角が、第1前傾ティルト角より小さい第2前傾ティルト角になると、制御装置31はフォーク18の下降を停止する制御を行う(ステップS9)。このとき、ティルト角度差は、予め設定された設定ティルト角度差△θを上回っており、フォーク18の下降停止により、フォーク18の先端部が路面Fを確実に接地された状態である。図4(c)において二点鎖線により示すフォーク18は微速による下降前の状態を示し、実線により示すフォーク18は微速による下降停止後の状態を示す。
【0031】
ティルト角度差が設定ティルト角度差△θを上回る場合は、フォーク18の下降に伴い、路面Fに接地されたフォーク18の先端部を支点として、フォーク18のティルト角を小さくする方向(前傾を解消する方向)にフォーク18が傾動されることを意味する。従って、ティルト角度差が設定ティルト角度差△θを上回ることにより、フォーク18の先端部が路面Fと接地していることを確実に判断することができる。因みに、第1前傾ティルト角の検出によりフォーク18の先端部が路面Fに接地されていると判断できるが、ティルト角度差が設定ティルト角度差△θに基づいて判断する方が、第1前傾ティルト角の検出のみの判断と比較してより確実である。
【0032】
本実施形態に係るフォークリフト10の制御方法によれば以下の作用効果を奏する。
(1)フォーク18を設定揚高Hまで下降させたのち、フォーク18を前傾させることにより、ティルト角検出器30により検出されるティルト角に基づいてフォーク18の先端部と路面Fとの当接が検知される。従って、フォークリフト10の作業終了時にフォーク18を路面Fまで自動的に下降させ、フォーク18の先端部と路面Fを確実に接地させることが可能である。路面Fに傾斜や凹凸が存在する場合や車輪(前輪13R、13L、駆動輪24)が摩耗している場合、あるいは揚高検出器27に誤差が生じている場合であっても、確実にフォーク18の先端部と路面Fとを接地させることができる。
【0033】
(2)ティルト角度差が予め設定された設定ティルト角度差△θを上回るとき、路面と接地されたフォーク18は下降に伴って前傾を解消する方向に傾動されており、フォーク18の先端部と路面Fとは確実に接地している。つまり、フォーク18の先端部と路面Fが確実に接地していることになる。
【0034】
(3)フォーク18の揚高が設定揚高Hまでは、通常の速度でフォーク18が下降され、フォーク18が設定揚高Hに達した後は前傾される。従って、フォーク18の路面Fまでの接地は短時間となる。また、揚高検出器27に誤差が生じていても、フォーク18の前傾による路面Fへの接地を図ることから、揚高検出器27の誤差が影響を与えることはない。
【0035】
(4)フォークリフト10に機器を追加することなく、フォークリフト10の作業終了時にフォーク18を路面Fまで自動的に下降させ、フォーク18の先端部と路面Fを確実に接地させることが可能である。従って、揚高検出器27、ティルト角検出器30および制御装置31を備えた既存のフォークリフトに適用することが可能である。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフォークリフトの制御方法について説明する。本実施形態は、フォークの先端部と路面との接地を揚高に基づいて判断する点が第1の実施形態と異なるが、フォークリフトの構成については第1の実施形態と同一である。従って、本実施形態では、共通する構成については、第1の実施形態の説明を援用し、同じ符号を使用する。
【0037】
本実施形態のフォークリフト10では、運転終了後にフォーク18の先端部を路面Fに当接させてフォーク18を接地させるための制御を行うようにプログラムが制御装置31に記憶されている。運転終了後にフォーク18の先端部を路面Fに当接させてフォーク18を接地させる具体的な手順は、図5のフロー図に示す。
【0038】
図5に示すように、遠隔操作の制御開始指令によりフォークリフト10の運転停止後に制御が開始される(ステップS11)。フォークリフト10が運転停止されると、フォーク18を通常の速度で下降させる(ステップS12)。次に、制御装置31は、フォーク18の揚高が設定揚高Hか否かを判断する(ステップS13)。設定揚高Hは、予め設定された揚高であって制御装置31に記憶されており、例えば、床面から50mmの高さが設定揚高Hとして記憶されている。揚高検出器27により検出されたフォーク18の揚高が設定揚高Hである場合は、フォーク18を微速により下降させる(ステップS14)。フォーク18の微速による下降とともにフォーク18を前傾させる(ステップS15)
【0039】
次に、制御装置31は、フォーク18を前傾させつつ微速にて下降させているときに、ティルト角検出器30より検出されるティルト角が設定前傾ティルト角か否かを判断する(ステップS16)。ティルト角検出器30により検出されるティルト角が設定前傾ティルト角の場合、フォーク18の前傾を停止する(ステップS17)。ティルト角が設定前傾ティルト角でない場合、フォーク18の前傾を継続する。制御装置31には、予め設定された設定前傾ティルト角が記憶されている。設定前傾ティルト角として、例えば、フォーク18の前傾において最大の前傾ティルト角に設定しておく。
【0040】
フォーク18の前傾の停止後、制御装置31は、揚高検出器27により検出される揚高に変化がなく設定検出時間を経過したか否かを判断する(ステップS18)。
揚高検出器27により検出される揚高に変化がなく設定検出時間を経過した場合、フォーク18の下降を停止する(ステップS19)。揚高検出器27により検出される揚高が変化を継続する場合は、揚高検出器27により検出される揚高に変化がなく設定検出時間を経過したか否かの判断を繰り返す(ステップS18)。
【0041】
制御装置31には、フォーク18の下降停止を示すために、予め設定された設定検出時間が記憶されている。設定検出時間としては、例えば、数秒程度の設定検出時間が設定されてもよい。揚高検出器27により検出された揚高が変化なく設定検出時間を超えて継続する場合には、制御装置31は、フォーク18の下降停止を示す揚高と判断し、フォーク18の下降と前傾を停止する。つまり、設定検出時間は制御装置31がフォーク18の下降停止を認識するための閾値である。一連のステップS11〜S19は、制御装置31に記憶されたプログラムの実行によって行われる。
【0042】
次に、本実施形態のフォークリフト10の制御方法について説明する。フォークリフト10は、遠隔操作により運転停止する状態では、指定の位置で停車されており、図6(a)に示すように、路面Fは水平であり、フォーク18の揚高は設定揚高よりも高い。フォーク18間の間隙が大きく、フォーク18を下降させるとリーチレグ12に干渉する場合には、予めフォーク18をリーチレグに対して前進させて、リーチレグ12とフォーク18との干渉を回避できる状態にする。
【0043】
遠隔操作の制御開始指令により運転停止後にフォーク18が下降される。フォーク18はリフトシリンダ20の作動により通常速度により下降される。フォーク18の下降時には、揚高検出器27がフォーク18の揚高を検出する検出信号を制御装置31へ出力する。揚高検出器27により検出されるフォーク18の揚高が設定揚高Hまで下降されると、制御装置31はフォーク18の下降を通常の速度から微速に切り替えるとともに、フォーク18の前傾を開始する制御を行う(ステップS14、S15)。図6(a)において二点鎖線により示すフォーク18は下降前の状態を示し、実線により示すフォーク18は設定揚高Hにある状態を示す。
【0044】
フォーク18の微速による下降および前傾が開始されると、図6(b)に示すように、フォーク18が下降するとともに、ティルトシリンダ21の作動によりフォーク18は前傾する。このとき、ティルト角検出器30がフォーク18のティルト角を検出する検出信号を制御装置31へ出力するとともに、揚高検出器27がフォーク18の揚高を検出する検出信号を制御装置31へ出力する。ティルト角検出器30により検出されるフォーク18のティルト角が設定前傾ティルト角であるとき、フォーク18の前傾は停止される(ステップS17)。
【0045】
フォーク18の前傾が停止された後、フォーク18の微速による下降は継続される。図6(c)に示すように、フォーク18が路面Fに接地すると、次に、揚高検出器27により検出される揚高が変化なく設定検出時間を超えたか否かを判断する(ステップS18)。揚高検出器27により検出されるフォーク18の揚高が変化なく設定検出時間を経過したとき、フォーク18の下降を停止し、フォーク18と路面Fとの接地が完了する。なお、設定検出時間の経過中は、フォーク18は下降に伴って傾動されるため、図6(d)に示すように、フォーク18の底面が路面Fに接地される状態へ向かう。
【0046】
図6(c)において二点鎖線により示すフォーク18は設定揚高Hから微速により下降しつつ設定前傾ティルト角まで前傾した状態を示し、実線により示すフォーク18は設定前傾ティルト角にて路面Fに当接した状態を示す。図6(d)において二点鎖線により示すフォーク18は設定前傾ティルト角にて路面Fに当接した状態を示し、実線により示すフォーク18は路面Fとの当接後に設定検出時間を経過した状態を示す。
【0047】
本実施形態のフォークリフトの制御方法によれば、フォークリフト10の作業終了時にフォーク18を路面Fまで自動的に下降させ、フォーク18の先端部と路面Fを確実に接地させることが可能である。また、第1の実施形態の作用効果(3)、(4)と同等の作用効果を奏する。また、本実施形態によれば、フォーク18を設定揚高Hまで下降させたのち、フォーク18を微速にて下降させるとともに前傾させる。このため、揚高検出器27により検出されるフォーク18の揚高が変化しないことによりフォーク18と路面Fとの接地が検知される。従って、フォークリフト10の作業終了時にフォーク18を路面Fまで自動的に下降させ、フォーク18と路面Fとを確実に接地させることが可能である。
【0048】
また、本実施形態によれば、フォーク18の下降停止を示すために、予め設定された設定検出時間が制御装置31に記憶されている。このため、揚高検出器27により検出された揚高に変化がなく設定検出時間を超えて継続する場合には、制御装置31は、フォーク18の下降停止を示す揚高と判断することができる。従って、フォーク18の先端部と路面Fを確実に当接させた状態にてフォーク18と路面Fとを接地させることが可能である。
【0049】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態では、揚高検出器27により検出されるフォーク18の揚高が変化しないことによりフォーク18と路面Fとの接地を検知するとしたが、設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出することによりフォーク18と路面Fとの接地を検知してもよい。
【0050】
図7に示すように、本変形例のステップS11〜S17までは、第2の実施形態と同じフローである。ステップS18では、ティルト角が設定前傾ティルト角より小さいティルト角か否かを判断する。ティルト角検出器30が設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出すると、制御装置31はフォーク18の下降を停止する制御を行う(ステップS19)。フォーク18の下降を停止することにより、フォーク18と路面Fとの接地が完了する。ティルト角検出器30が設定前傾ティルト角より小さいティルト角を検出しないとき、減少時ティルト角か否かの判断が繰り返される。設定前傾ティルト角は第1の実施形態の第1前傾ティルト角に相当し、設定前傾ティルト角より小さいティルト角は、第2前傾ティルト角に相当する。設定前傾ティルト角と設定前傾ティルト角より小さいティルト角との差は、ティルト角度差である。
【0051】
ティルト角度差が、予め設定された設定ティルト角度差△θを上回るとき、路面Fと接地されたフォーク18は下降に伴って前傾を解消する方向に傾動されており、フォーク18の先端部と路面Fとは確実に接地している。つまり、フォーク18の先端部と路面Fが確実に接地していることになる。本変形例では、フォーク18の前傾停止と下降停止により、フォーク18の先端部は路面Fに確実に接地される。図6(d)において二点鎖線により示すフォーク18は路面Fとの接地前の状態であり、実線により示すフォーク18は路面Fとの接地後の状態である。
【0052】
本変形例では、設定前傾ティルト角の減少を示すティルト角のために、予め設定された設定ティルト角度差△θが記憶されている。設定ティルト角度差△θは、第1の実施形態と同じであり、制御装置31がフォーク18の先端部と路面Fとの確実な接地を認識するための閾値である。ティルト角度差が設定ティルト角度差△θを上回ったとき、フォーク18の先端部と路面Fが確実に接地されていると判断できる。一連のステップS11〜S19は、制御装置31に記憶されたプログラムの実行によって行われる。
【0053】
本変形例によれば、フォーク18を設定揚高Hまで下降させたのち、フォーク18を微速にて下降させるとともに前傾させる。このため、ティルト角検出器30により検出されるティルト角に基づいてフォーク18と路面Fとの接地が検知される。従って、フォークリフト10の作業終了時にフォーク18を路面Fまで自動的に下降させ、フォーク18と路面Fと、を確実に接地させることが可能である。また、ティルト角度差が予め設定された設定ティルト角度差△θを上回るとき、フォーク18の先端部と路面Fとは確実に接地していることになる。
【0054】
本発明は、変形例を含む上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0055】
○ 上記の実施形態では、リーチ式フォークリフトを例示したが、リーチ式フォークリフトに限定されない。フォークリフトは、少なくとも、ティルト動作の際にフォークのみが前後に傾動し、マストが傾動されないフォークリフトであればよい。
○ 上記の実施形態では、遠隔操縦される無人フォークリフトの例を説明したが、運転者が運転する有人フォークリフトに本発明を適用できることは言うまでもない。有人フォークリフトの場合では、運転可能状態であるキーオン状態において予め設定した時間を超えて運転されない場合や、キーオン状態からキーを抜いた運転停止状態であるキーオフ状態に切り替わった時点にて、本発明の制御方法を適用すればよい。この場合、運転者のフォークの下げ忘れやフォークが路面に接地されていないにも関わらず接地されているといった運転者の思い込みによる離席があっても、フォークと路面との接地を確実に図ることができる。無人フォークリフト、有人フォークリフトに関わらず、予め設定した時間を超えてヨークリフトが作動されない場合も、運転停止状態として本発明を適用してもよい。
○ 上記の実施形態では、揚高検出器としてリールに設けたエンコーダとしたが、揚高検出器は、リールに設けたエンコーダに限らない。例えば、ポテンショメータを利用した揚高検出器であってもよく、揚高検出器はフォークの揚高を検出することが可能であれば特に形式や構成は限定されない。
○ 上記の実施形態では、ティルト角検出器としてポテンショメータを用いたがティルト角検出器はポテンショメータ以外の計測センサを用いてもよい。
○ 上記の実施形態では、特に言及しなかったが、本発明の制御方法を適用する前に、フォークにおける荷の有無を在荷センサの検出に基づき判断させ、フォークに荷が無い状態にてフォークと路面との接地を図るようにすることが好ましい。在荷センサをフォークに設け、荷が存在する場合には、フォークと路面との接地を行なえないようにすればよい。
【符号の説明】
【0056】
10 フォークリフト
11 車体
12 リーチレグ
14 荷役装置
18 フォーク
20 リフトシリンダ
21 ティルトシリンダ
25 運転席
27 揚高検出器
28 ワイヤ
29 リール
30 ティルト角検出器
31 制御装置
S1〜S18 ステップ
H 設定揚高
△θ 設定ティルト角度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7