(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
枠戻し装置は、先頭の型枠だけでなく、後に続くプッシャ側の搬送型枠群を押し戻す推力を有するシリンダを備えることを特徴とする請求項1に記載の型枠群の搬送装置。
クッションシリンダの効き時のシリンダヘッドの位置により、熱膨張した型枠高温時の枠戻しを行わない枠送り工程と、型枠が冷えている状態での枠戻しを行う枠送り工程の切り換えを行うことを特徴とする請求項3に記載の型枠群の搬送方法
クッションシリンダのロッド縮み端を設備起動の際の原位置として、起動最初の工程、及び、一定時間経過後の再起動時のクッションシリンダのロッド伸長時のシリンダヘッド位置を、あらかじめ設定しておいた、最も熱膨張した場合の型枠位置とし、次の工程から、クッションシリンダの伸長端位置を、その前工程で送られた型枠の送り端であるクッションシリンダの効き端の位置から算出した位置とすることを特徴とする請求項3に記載の型枠群の搬送方法。
【背景技術】
【0002】
型枠を用いた鋳造設備などにおいては、特許文献1、特許文献2に示されるように、直列状に配列された型枠群をプッシャーシリンダとクッションシリンダとにより挟み込み、1型枠又は複数型枠分のピッチづつ間歇搬送することが行われている。
【0003】
特許文献1には、直列状に配列された型枠群を油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み1型枠分のピッチづつ間歇搬送する型枠群の油圧シリンダによる搬送方法が記載されている。この搬送方法は、油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間に隙間がある状態で搬送を行う際に、隙間を有しているクッションシリンダが動かない間は油圧プッシャーシリンダを低速作動させ、隙間が無くなりクッションシリンダが型枠に押されて後退しはじめてから、油圧プッシャーシリンダを高速作動させ、高速搬送途中に減速させる位置を検出するスイッチをプッシャ側に取り付ける事を特徴としている。
【0004】
特許文献2にも、直列状に配列された型枠群を油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み1型枠分のピッチづつ間歇搬送する型枠群の油圧シリンダによる搬送方法が記載されている。この搬送方法は、油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間に隙間がある状態で搬送を行う際に、隙間を有しているクッションシリンダが動かない間は油圧プッシャーシリンダを低速作動させ、隙間が無くなりクッションシリンダが型枠に押されて後退しはじめてから、油圧プッシャーシリンダを高速作動させる点は、特許文献1と同じであるが、高速搬送途中に減速させる位置を検出するスイッチをクッション側に取り付ける事により、型枠の熱膨張の影響を受けずに減速距離を一定に保つ事を特徴としている。
【0005】
しかし特許文献1、2共に、油圧プッシャーシリンダ及び油圧クッションシリンダとして、固定ストロークのシリンダを用いているため、型枠の熱膨張による型枠間の隙間の変動の影響を受ける問題があった。すなわち、設備の操業中は、型枠が高温になり熱膨張するため、型枠間の隙間が最少となり、隙間寄せの低速時間も最小とする事ができるが、設備の操業開始直後は、型枠が低温のため、型枠間の隙間が最大となり、隙間寄せの低速時間も最大となり、場合によっては、所定の工程時間で設備を稼働させることが困難となる問題があった。設備の能力に余裕がある場合は、型枠間の隙間が最大となる型枠が低温の設備の操業開始直後に、所定の工程時間で運転できるように調整するが、本来の運転状態である隙間が最小となる型枠が高温になった時の工程時間が、所定の工程時間より速くなってしまうため、高速運転による設備の損耗が早くなる問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、隙間が最大となる型枠が低温の設備の操業開始直後の隙間寄せ時間を確保するために、必要以上に、各アクチェータ(シリンダ)の作動時間を短縮する事なく、本来の運転状態である隙間が最小となる型枠が高温になった時の隙間に合わせて各アクチェータの作動時間を無理なく調整できる様に、型枠の熱膨張の影響を受けずに、型枠間の隙間を一定に保つ事ができる型枠群の搬送装置及び搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の型枠群の搬送装置は、直列状に配列された型枠群をプッシャーシリンダとクッションシリンダとにより挟み込み、1型枠又は複数型枠分のピッチづつ間歇搬送する型枠群の搬送装置において、前記クッションシリンダとして伸び端側の停止位置を任意に変更することができる伸縮位置認識機能及び途中停止機能付きの電動シリンダ、又は油圧シリンダを使用するとともに、前記クッションシリンダの上流側に、送り足らずの型枠を所定の位置に送り込むことにより、型枠搬出装置上の送り足らずの型枠も、型枠搬出装置上の所定の位置に送り込む機能を有する枠送り用の位置決め装置と、この枠送り用の位置決め装置にて所定の位置に送り込まれた
1型枠を、プッシャーシリンダにて搬送された送り足らずの位置まで戻す機能を有する枠戻し装置とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
この枠戻し装置は、先頭の型枠だけでなく、後に続くプッシャ側の搬送型枠群を押し戻す推力を有するシリンダを備えることが好ましい。
【0010】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の型枠群の搬送方法は、直列状に配列された型枠群をプッシャーシリンダとクッションシリンダとにより挟み込み、1型枠又は複数型枠分のピッチづつ間歇搬送する型枠群の搬送方法において、前記クッションシリンダとして伸縮位置認識機能及び途中停止機能付きの電動シリンダ、又は油圧シリンダを使用し、クッションシリンダの伸び端側の停止位置を型枠の温度に応じて変更し、型枠が冷えている状態では、前記クッションシリンダの上流側に設けた枠送り用の位置決め装置により、該位置決め装置上及び型枠搬出装置上の送り足らずの型枠を所定の位置に送り込み、その後に、前記クッションシリンダの上流側に設けた枠戻し装置により、所定の位置に送り込まれた前記位置決め装置上の型枠を、プッシャーシリンダにて搬送された送り足らずの位置まで戻すことを特徴とするものである。
【0011】
なお、クッションシリンダの効き時のシリンダヘッドの位置により、熱膨張した型枠高温時の枠戻しを行わない枠送り工程と、型枠が冷えている状態での枠戻しを行う枠送り工程の切り換えを行うことが好ましい。
【0012】
また、クッションシリンダのロッド縮み端を設備起動の際の原位置として、起動最初の工程、及び、一定時間経過後の再起動時のクッションシリンダのロッド伸長時のシリンダヘッド位置を、あらかじめ設定しておいた、最も熱膨張した場合の型枠位置とし、次の工程から、クッションシリンダの伸長端位置を、その前工程で送られた型枠の送り端であるクッションシリンダの効き端の位置から算出した位置とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
従来の型枠群の搬送装置では、プッシャーシリンダとクッションシリンダ間の距離が長く、直列状に配列された搬送型枠群の数が多い場合、熱膨張による型枠間の隙間の変動量が非常に大きくなり、型枠間の隙間が最大となる型枠が低温の設備の操業開始直後では、低温での隙間寄せ時間も非常に大きくなるため、大型高速ラインでは、所定の工程時間内に、作動を完了する事が困難であるが、本発明の型枠群の搬送装置及び搬送方法によれば、型枠間の隙間を一定にする制御を用いた事により、各アクチェータの作動時間をいたずらに速くする事なく、安定した作動時間を確保する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の構造における正面図であって、型枠高温時と低温時の隙間関係図である。
【
図2】本発明の構造を示す平面図(A−A矢視)である。
【
図3】本発明の構造を示す平面図(B−B矢視)である。
【
図4】本発明のプッシャ側の装置構造を示す正面図である。
【
図5】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠高温時の枠送り状態
図1)である。
【
図6】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠高温時の枠送り状態
図2)である。
【
図7】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠高温時の枠送り状態
図3)である。
【
図8】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠高温時の枠送り状態
図4)である。
【
図9】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠高温時の枠送り状態
図5)である。
【
図10】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図1)である。
【
図11】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図2)である。
【
図12】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図3)である。
【
図13】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図4)である。
【
図14】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図5)である。
【
図15】本発明のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠低温時の枠送り状態
図6)である。
【
図16】従来の構造における正面図であって、型枠高温時と低温時の隙間関係図である。
【
図17】従来のプッシャ側の装置構造を示す正面図である。
【
図18】従来のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠送り状態
図1)である。
【
図19】従来のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠送り状態
図2)である。
【
図20】従来のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠送り状態
図3)である。
【
図21】従来のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠送り状態
図4)である。
【
図22】従来のクッション側の装置構造を示す正面図(型枠送り状態
図5)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明するが、まず、
図16〜
図22を参照しつつ、従来の型枠送りの説明を行う。
図16に示されるように、型枠101は、型枠101より長い寸法の型枠台車102に載せられて搬送される。直列状に配列された搬送型枠群103は、型枠台車102同士が接した状態で搬送される。直列状に配列された搬送型枠群103の搬入側104と搬出側105に、型枠101を1枠ずつ直角方向に搬入出するトラバーサ106、107をそれぞれ配置する。
【0016】
搬入側トラバーサ106上の型枠101を1枠分下流側に押し出し、固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の先頭の型枠109を搬出側トラバーサ107上に載せるために、プッシャーシリンダであるプッシャ装置110と、クッションシリンダであるクッション装置111とを、搬送型枠群103の外側に対向して配置する。
【0017】
搬入出するトラバーサ106、107にはそれぞれ、積載する型枠101の位置決めを行うメカロック112を有し、搬入側トラバーサ106の下流側には、型枠101の逆走による脱線を防止するためのダルマストッパ113を設ける(
図16参照)。ダルマストッパ113は、プッシャ装置110で型枠101を1枠送りする際に下がり、プッシャ装置110の1枠送り完了信号で上がり、型枠101の逆走による脱線を防止する(
図17参照)。
【0018】
プッシャ装置110による型枠101の送り基準を、たとえば、搬入側トラバーサ106から搬出した型枠114とする(
図17参照)。固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の中間部に、所定の停止位置に精度よく停止させたい型枠101がある場合は、その型枠101を送り基準としてもよい。
【0019】
搬入側トラバーサ106に積載した型枠101をプッシャ装置110と直列状に配列された搬送型枠群103の間に搬入するため、プッシャ装置110のシリンダヘッド115の帰り端と搬入側トラバーサ106上の型枠101間に隙間aを設け、搬入側トラバーサ106上の型枠101と、搬入側トラバーサ106から搬出した送り基準とした型枠114間に隙間bを設ける(
図17参照)。
【0020】
クッション装置111側は、搬出側トラバーサ107上に搬入された型枠101を直列状に配列された搬送型枠群103とクッション装置111との間から搬出するため、固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の先頭の型枠109と搬出側トラバーサ107上の型枠101間に隙間dを設け、搬出側トラバーサ107上の型枠101と、クッション装置111のシリンダヘッド116の効き端間に隙間eを設ける(
図21参照)。
【0021】
稼働中の型枠台車102は加熱により熱膨張するため、搬入側トラバーサ106と搬出側トラバーサ107の据付ピッチは、熱膨張した時の型枠台車102寸法で決定する必要があるが、プッシャ装置110による型枠101の送り基準を搬入側トラバーサ106から搬出した型枠114としているため、設備始動時の型枠101が冷えている状態では、固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の先頭の型枠109が送り足らずとなる。型枠台車102の熱膨張による長さの変化量L=1枠の変化量l(エル)×固定レール108上搭載枠数となる(
図16、18、19参照)。
【0022】
送り足らずとなった固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の先頭の型枠109、及び、搬出側トラバーサ107上に搬入された型枠101を、挟み込み方式のクランプ装置117にて、型枠台車102の下部に設けてある凸部118を挟み込み、所定の位置に押し出すと共に、搬出側トラバーサ107の台車が図示しない行き端側にある場合の型枠109の先走りによる脱線を防止する。型枠台車102下部に凸部118を設けない場合は、挟み込み方式のクランプ装置117にて挟み込む部位を、型枠台車車軸120とする。この工程により、固定レール108上の滞留している搬送型枠群103の先頭の型枠109と、プッシャ側型枠121間に、隙間cが生じる。この隙間cは、型枠熱膨張時に最小となる寸法に調整する。設備始動時の型枠101が冷えている状態では、この隙間がc+Lとなる(
図20参照)。
【0023】
さらに、搬送型枠群103の先頭の型枠109と、搬出側トラバーサ107上に搬入された型枠101の間に、隙間dを設けるため、搬出側トラバーサ107上の型枠101を搬出側トラバーサ107に搭載したメカロック112にて、搬出側トラバーサ107の所定位置まで送り込み、搬出側トラバーサ107下流の図示しないプッシャ装置で搬出されるまで、その位置に型枠101を保持する(
図21参照)。
【0024】
メカロック112は、ローラ112aを、下からケース112b内に納められている図示されないスプリングで上向きに押し上げる力を有しており、挟み込み方式のクランプ装置117で送られた搬出側トラバーサ107上の型枠101の型枠台車102の凸部118の角を押し上げる事により、搬出側トラバーサ107上の型枠101を所定の位置まで送り込む事が出来る。
【0025】
同様に、搬入側トラバーサ106に搭載したメカロック112は、図示しない搬入側トラバーサ106の帰り端にて、上流の図示しないプッシャ装置から搬入された型枠101を、搬入側トラバーサ106の所定位置まで送り込み、プッシャ装置110で搬出されるまで、その位置に型枠101を保持する(
図17参照)。
【0026】
上記で説明した隙間を確保するため、プッシャ装置110送り完了後、挟み込み方式のクランプ装置117で、送り足らずの2個の型枠122を押し出す工程の前に、隙間c(c+L)、d、eの距離分、クッション装置111のシリンダヘッド116をロッドが縮む側に移動させておく。この工程をクッション装置111の再効き工程と称する(
図19、20、21参照)。上記隙間eは、メカロック112にて所定の位置に送り込まれた、搬出側トラバーサ107上の型枠101と、再効き後のクッション装置111のシリンダヘッド116との隙間である(
図21参照)。
【0027】
このように、搬送型枠群103の先頭の型枠109と、クッション装置111のシリンダヘッド116との間に隙間を有した状態を確保した後、搬出側トラバーサ107上の型枠101は、搬出側トラバーサ107にて、プッシャ装置110と、クッション装置111による挟み込み送り方向と直角方向に搬出される。
【0028】
プッシャ装置110と、クッション装置111による挟み込み送りの場合、従来の型枠送り装置においては、プッシャ装置110のシリンダヘッド115とクッション装置111のシリンダヘッド116間の隙間a+b+型枠高温時c、又は型枠低温時(c+L)+dを低速で枠寄せして、隙間が無くなりクッション装置111のシリンダヘッド116が後退した事(具体的にはクッションヘッド戻り端検出スイッチのOFF信号)を検出した後、高速で搬送する制御としているため、搬送型枠群103の型枠数が大きい場合、型枠101が冷えている時の枠間隙間Lが非常に大きくなり、低速時間が長くなると、所定の工程時間内に型枠送りを完了できない問題が生じる。型枠台車102の衝突による衝撃を避けるため、低速速度の速度アップができない為、所定の工程時間内に型枠送りを完了させるためには、加減速度、高速速度を大きくする必要があり、そのためには、プッシャ装置110、クッション装置111の能力を向上させる必要も生じる。
【0029】
今までは設備始動時の型枠101が冷えている状態のみのためのプッシャ装置110、クッション装置111の能力アップを設備の余裕ととらえていたが、省エネルギーが叫ばれる昨今、上記余裕を無駄と捉える意識改革が必要となってきた。
【0030】
また、従来は大きな推力を有するアクチェータとして、プッシャ装置110、クッション装置111に油圧シリンダ123を採用してきたため、シリンダストロークが固定であり、かつ、油圧シリンダ123の推力が非常に大きいため、クッション装置111の油圧シリンダ123のストロークを型枠101が冷えている時に合わせて選定し、型枠台車102の熱膨張に合わせ、油圧シリンダ123のストローク途中の任意の位置に途中停止させる制御は難しく、制御不能の状態となり途中停止位置で停止しない場合、熱膨張した型枠台車102を押し戻し、ダルマストッパ113等、設備を破損する懸念があるため、採用できなかったが、最近は大きな推力を有する電動シリンダ23の品揃えが豊富になり、電動シリンダ23は、エンコーダ等を使用し、シリンダヘッド16の位置検出が可能であるため、クッション装置11の電動シリンダ23のストロークを型枠1が冷えた時に合わせて選定し、型枠台車2の熱膨張に合わせ、電動シリンダ23のストローク途中の任意の位置に途中停止させる制御が容易になってきた。
【0031】
以下に本発明の構造と作用について、
図1〜15を用いて説明する。
従来構造とは異なり、本発明の型枠群の搬送装置では、クッション装置(クッションシリンダ)11に、エンコーダ等にてシリンダヘッド16の位置検出が可能かつ、シリンダヘッド16の途中停止が可能な電動シリンダ23を使用する。また、搬出側トラバーサ(型枠搬送装置)7手前の固定レール8上に滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9の下部に、従来構造で取り付けてある挟み込み方式のクランプ装置17と併せ、搬送型枠群3の先頭の型枠9をプッシャ装置(プッシャーシリンダ)10側に戻す枠戻し装置24を設ける。この挟み込み方式のクランプ装置(枠送り用の位置決め装置)17は、送り足らずの型枠を所定の位置に送り込むことにより、型枠搬出装置上の送り足らずの型枠も、型枠搬出装置上の所定の位置に送り込む機能を有する枠送り用の位置決め装置である。また、枠戻し装置24は枠送り用の位置決め装置にて所定の位置に送り込まれた型枠1枠を、プッシャーシリンダにて搬送された送り足らずの位置まで戻す機能を有する枠戻し装置である。
【0032】
クッション装置11に電動シリンダ23を使用する場合、プッシャ装置10も同じサイズの電動シリンダ23を用いる場合が一般的であるが、従来構造の油圧シリンダ123を使用したプッシャ装置110を用いる事も可能である。また、クッション装置11に電動シリンダ23の代わりに、伸縮位置認識機能及び途中停止機能付きの油圧シリンダを使用しても良い。
【0033】
加熱され、熱膨張した型枠1が高温時の枠送り工程と、設備始動時の型枠1が冷えている状態での枠送り工程の切り換えは、プッシャ装置10行き端でのクッション装置11効き端のクッション装置11のシリンダヘッド16の位置(
図6及び11参照)を記憶しておき、次工程の枠送り時、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が事前に設定しておいた閾値以上、プッシャ装置10側に出ていた場合に型枠1が冷えている状態での枠送り工程として、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が閾値未満の場合に、型枠1高温時の枠送り工程とする。
【0034】
加熱後の型枠1は、設備停止期間の経過により冷えていくが、設備起動直後の冷えた型枠1については、注湯等の熱量により加熱され、設備停止期間の経過により熱膨張する場合があるため、設備起動時及び設備が一時停止して所定時間経過後に再起動する場合の型枠1の冷却程度の確認及び予測ができない。このため、クッション装置11のロッド縮み端を設備起動の際の原位置として、起動最初の工程及び一定時間経過後の再起動時のクッション装置11のロッド伸長時のシリンダヘッド16位置をあらかじめ設定しておいた、最も熱膨張した場合の先頭型枠9位置として、熱膨張した型枠をクッション装置11のシリンダヘッド16で固定レール8上の滞留している搬送型枠群3を、プッシャ装置10側に押し戻す事を防止し、次の工程から、クッション装置11のロッド伸長端のシリンダヘッド16位置を、その前工程で送られた型枠9の送り端(クッション装置11の効き端)位置から算出した位置とする。
【0035】
クッション装置11のシリンダヘッド16の効き端位置の記憶による戻り端位置は、記憶しておいた前サイクルの効き端位置+型枠長さ−隙間dとする。加熱され、熱膨張した型枠1高温時の枠送り工程は、従来構造の枠送りと同じであり、枠戻し装置24は開いた状態で待機し、作動しない。すなわち、
図5〜9に図示してある様に、型枠1は、型枠1より長い寸法の型枠台車2に載せられて搬送される。直列状に配列された搬送型枠群3は、型枠台車2同士が接した状態で搬送される。
【0036】
直列状に配列された搬送型枠群3の搬入側4と搬出側5に、型枠1を1枠ずつ直角方向に搬入出するトラバーサ6、7をそれぞれ配置する。搬入側トラバーサ(型枠搬送装置)6上の型枠1を1枠分下流側に押し出し、固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9を搬出側トラバーサ7上に載せるために、プッシャ装置10とクッション装置11を搬送型枠群3の外側に対向して配置する。搬入出するトラバーサ6、7にはそれぞれ、積載する型枠1の位置決めを行うメカロック(型枠台車保持手段)12を有し、搬入側トラバーサ6の下流側には、型枠1の逆走による脱線を防止するためのダルマストッパ(脱線防止ストッパ)13を設ける(
図1参照)。ダルマストッパ13は、プッシャ装置10で型枠1を1枠送りする際に下がり、プッシャ装置10の1枠送り完了信号で上がり、型枠1の逆走による脱線を防止する(
図4参照)。
【0037】
プッシャ装置10による型枠1の送り基準を、たとえば、搬入側トラバーサ6から搬出した型枠14とする(
図4参照)。固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の中間部に、所定の停止位置に精度よく停止させたい型枠1がある場合は、その型枠1を送り基準としても良い。
【0038】
搬入側トラバーサ6に積載した型枠1をプッシャ装置10と直列状に配列された搬送型枠群3の間に搬入するため、プッシャ装置10のシリンダヘッド15の帰り端と搬入側トラバーサ6上の型枠1間に隙間aを設け、搬入側トラバーサ6上の型枠1と、搬入側トラバーサ6から搬出した送り基準とした型枠14間に隙間bを設ける(
図4参照)。
【0039】
クッション装置11側は、搬出側トラバーサ7上に搬入された型枠1を直列状に配列された搬送型枠群3とクッション装置11との間から搬出するため、固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9と搬出側トラバーサ7上の型枠1間に隙間dを設け、搬出側トラバーサ7上の型枠1と、クッション装置11のシリンダヘッド16の効き端間に隙間eを設ける。(
図8参照)
【0040】
稼働中の型枠台車2は加熱により、熱膨張するため、搬入側トラバーサ6と搬出側トラバーサ7の据付ピッチは、熱膨張した時の型枠台車2寸法で決定する必要があるが、プッシャ装置10による型枠1の送り基準を搬入側トラバーサ6から搬出した型枠14としているため、型枠熱膨張時の隙間c分、固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9が送り足らずとなる(
図1、5、6参照)。この時のクッション装置11のシリンダヘッド16の位置(
図6参照)を記憶しておき、次工程の枠送り時、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が事前に設定しておいた閾値以上、プッシャ装置10側に出ていた場合に型枠1が冷えている状態での枠送り工程として、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が閾値未満の場合に、型枠1高温時の枠送り工程とする。
【0041】
送り足らずとなった固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9及び搬出側トラバーサ7上に搬入された型枠1を、挟み込み方式のクランプ装置17にて、型枠台車2の下部に設けてある凸部18を挟み込み、所定の位置に押し出すと共に、搬出側トラバーサ7の台車が行き端側19にある場合の型枠9の先走りによる脱線を防止する。型枠台車2下部に凸部18を設けない場合は、挟み込み方式のクランプ装置17にて挟み込む部位を、型枠台車車軸20とする。この工程により、固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9と、プッシャ側型枠21間に、隙間cが生じる。この隙間cは、型枠熱膨張時に最小となる寸法に調節する(
図7参照)。
【0042】
さらに、搬送型枠群3の先頭の型枠9と、搬出側トラバーサ7上に搬入された型枠1の間に、隙間dを設けるため、搬出側トラバーサ7上の型枠1を搬出側トラバーサ7に搭載したメカロック12にて、搬出側トラバーサ7の所定位置まで送り込み、搬出側トラバーサ7下流の図示しないプッシャ装置で搬出されるまで、その位置に型枠1を保持する(
図8参照)。
【0043】
メカロック12はローラ12aを、下からケース12b内に納められている図示されないスプリングで上向きに押し上げる力を有しており、挟み込み方式のクランプ装置17で送られた搬出側トラバーサ7上の型枠1の型枠台車2の凸部18の角を押し上げる事により、搬出側トラバーサ7上の型枠1を所定の位置まで送り込む事が出来る。
【0044】
同様に、搬入側トラバーサ6に搭載したメカロック12は、搬入側トラバーサ6の帰り端26にて、上流の図示しないプッシャ装置から搬入された型枠1を、搬入側トラバーサ6の所定位置まで送り込み、プッシャ装置10で搬出されるまで、その位置に型枠1を保持する(
図4参照)。
【0045】
上記で説明した隙間を確保するため、プッシャ装置10送り完了後、挟み込み方式のクランプ装置17で、送り足らずの型枠22を押し出す工程の前に、隙間c、d、eの距離分、クッション装置11のシリンダヘッド16をロッドが縮む側に移動させておく。この工程をクッション装置11の再効き工程と称する(
図6、7、8参照)。上記隙間eは、メカロック12にて所定の位置に送り込まれた搬出側トラバーサ7上の型枠1と、再効き後のクッション装置11のシリンダヘッド16との隙間である(
図8参照)。
【0046】
このように、搬送型枠群3の先頭の型枠9と、クッション装置11のシリンダヘッド16との間に隙間を有した状態を確保した後、搬出側トラバーサ7上の型枠1は、搬出側トラバーサ7にて、プッシャ装置10と、クッション装置11による挟み込み送り方向と直角方向に搬出される。
【0047】
次に設備始動時の型枠1が冷えている状態での枠送り工程について、
図10〜15を用いて説明する。プッシャ装置10にて型枠1を送り基準まで送る工程は、加熱され、熱膨張した型枠1高温時の枠送り工程と同じとする。型枠台車2の熱膨張による長さの変化量L=1枠の変化量l(エル)×固定レール8上搭載枠数となるため、型枠1が冷えている状態では、固定レール8上の滞留している搬送型枠群3の先頭の型枠9が型枠低温時の最大隙間c+L分、送り足らずとなる(
図11、12参照)。
【0048】
この時のクッション装置11のシリンダヘッド16の位置(
図11参照)を記憶しておき、次工程の枠送り時、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が事前に設定しておいた閾値以上、プッシャ装置10側に出ていた場合に型枠1が冷えている状態での枠送り工程として、クッション装置11のシリンダヘッド16の位置が閾値未満の場合に、型枠1高温時の枠送り工程とする。
【0049】
挟み込み方式のクランプ装置17と、搬出側トラバーサ7に搭載したメカロック12にて、型枠1を搬出側トラバーサ7の所定位置まで送り込む工程も、加熱され、熱膨張した型枠1高温時の枠送り工程と同じとする。挟み込み方式のクランプ装置17で、型枠低温時の最大隙間c+L隙間分送られた、搬送型枠群3の先頭の型枠9(
図13参照)は、隙間L分、枠戻し装置24にて、プッシャ装置10側に戻される(
図14参照)。搬出側トラバーサ7にて積載した型枠1を行き端側19に搬出した後、クッション装置11のシリンダヘッド16は、前サイクルの効き端位置の記憶から算出した位置、(クッション戻りストロークLmax=型枠高温時のクッション戻りストロークLmin+型枠台車2の熱膨張による長さの変化量L)まで戻る。
【0050】
基本的に、枠戻し装置24で戻すのは、搬送型枠群3の先頭の型枠9、1枠のみであるが、プッシャ装置10側の搬送型枠群3も、挟み込み方式のクランプ装置17で押し込まれた先頭の型枠9と同様に、下流側に移動してくる場合があるため、枠戻し装置24は、先頭の型枠9だけでなく搬送型枠群3を押し戻す推力を有するシリンダ25を使用する。
【0051】
さらに、枠戻し装置24による枠戻し位置は、型枠1が常温まで冷えた状態の型枠台車2長さで停止する位置としているため、中途半端に熱膨張している型枠台車2を戻す場合、シリンダ25のストロークエンドで想定している型枠低温時の隙間cをゼロにしても、シリンダ25のストロークエンドに達しない場合が生じる。この場合、枠戻しにより、シリンダ25の推力がダルマストッパ13に加わる事になるため、ダルマストッパ13は、枠戻し装置24の推力に耐える構造とする必要がある。
【0052】
中途半端に熱膨張している型枠台車2にて、枠戻しにより、シリンダ25の推力がプッシャ装置10側のダルマストッパ13に加わる事なき様、エンコーダ等で検出するクッション装置11効き時のシリンダヘッド16の位置により、加熱され、熱膨張した型枠1高温時の枠送り工程と、設備始動時の型枠1が冷えている状態での枠送り工程の切り換えを行う制御とする。クッション装置11のシリンダヘッド16の効き端位置の記憶による戻り端位置は、記憶しておいた前サイクルの効き端位置+型枠長さ−隙間eとする。
【0053】
このように、クッション装置11のシリンダヘッド16戻り端位置を制御する事により、型枠1が冷えている場合に生じる型枠台車2の熱膨張による長さの変化量L=1枠の変化量l×固定レール8上搭載枠数の影響を受ける事を無くすことができる。