特許第6551313号(P6551313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551313
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】潤滑オイルの気泡分離装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/00 20060101AFI20190722BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F01M11/00 U
   F01M1/06 Q
   F01M1/06 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-111596(P2016-111596)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-218900(P2017-218900A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 崇
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−108812(JP,U)
【文献】 実開昭58−154807(JP,U)
【文献】 特開2008−106794(JP,A)
【文献】 実開平05−073217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00
F01M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン等の機械の各部に供給された潤滑オイルがオイル溜まりに戻される経路中のオイル戻し通路にオイルセパレータを設け、
該オイルセパレータは、オイルの流れに交差して配置されてオイルの流れを妨げる壁体を備え、
該壁体は、その周りの温度に応じてオイルの流れに対する壁面角度を変化させ、前記温度の低温域では高温域に比べて前記壁面角度が小さくされる潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記オイル戻し通路は、エンジンのシリンダブロックに形成されたオイル戻し通路である潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記壁体は、バイメタルにより構成されている潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記オイルセパレータは、一枚の金属板により構成されており、
該金属板は、その中央部が部分的に切り離されてオイルの流れに交差するように立ち上がり可能に形成された舌片と、端部を屈曲状態に形成されたフランジ部とを備え、
前記舌片は、前記オイルセパレータの壁体を構成し、
前記フランジ部は、前記機械に前記オイルセパレータを固定するための固定部を構成する潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記オイルセパレータは、前記オイル戻し通路に挿入されており、前記フランジ部がオイル戻し通路の端部で当該機械に固定される部品に挟持されて固定される潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記壁体は、オイルの流れに沿って複数枚設けられている潤滑オイルの気泡分離装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記オイルセパレータは、筒形状に形成されており、
該筒形状の内面側の対向面にそれぞれ前記壁体が設けられている潤滑オイルの気泡分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の機械に用いられる潤滑オイルの気泡分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおいて、エンジンオイルは、エンジン各部の潤滑と冷却を行うために供給されている。エンジン各部に供給されたオイルがオイルパン内に戻るまでの過程では、オイル内に気泡が混入することがある。例えば、シリンダヘッド内のオイル溜まりのオイルにカムシャフトが触れると、回転するカムシャフトによりオイルが攪拌されてオイル内に気泡が混入する。また、シリンダブロックのオイル戻し通路からオイルパンにオイルが落下する際に、オイルパン内の空気を巻き込んでオイル内に気泡が混入する。オイル内に気泡が混入し、その混入率が高まると、潤滑と冷却のために供給されるオイルの量が気泡分だけ不足するため潤滑及び冷却性能が低下する。
【0003】
そこで、特許文献1〜5に示されるように、従来より各種対策案が提案されている。例えば、オイル内に気泡が混入するのを抑制する対策が提案されている。また、オイル内に混入した気泡を分離する対策が提案されている。
【0004】
各種対策案の中で、エンジンの基本構造を変更しないで対策できる点で、オイル内に混入した気泡を分離する対策が好ましい。その具体案として、オイルパンに還流されるオイルの流速を遅くして、オイルがオイルパンに到達するまでの間にオイル内の気泡を分離する対策が考えられている(未公知)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−49414号公報
【特許文献2】特開2008−25368号公報
【特許文献3】特開2008−25369号公報
【特許文献4】特開2008−240575号公報
【特許文献5】実開昭58−132113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記対策の場合、オイルがオイルパンに還流されるまでに時間を要するため、エンジン回転数が急激に高められた際に、オイルパン内のオイルが不足する可能性がある。特に、エンジンの温度が低い状態では、オイルの粘度が高く、オイルパンへのオイルの還流にも時間がかかるため、オイルが不足する可能性が高まる。
【0007】
このような問題に鑑み本発明の課題は、エンジン等の機械における潤滑オイルの流速を遅くしてオイル内の気泡を分離する装置において、オイルの温度が高い状態でのみオイルの流速を遅くすることにある。それにより、オイル温度が低い状態で、オイル溜まりのオイルが不足しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の潤滑オイルの気泡分離装置は、エンジン等の機械の各部に供給された潤滑オイルがオイル溜まりに戻される経路中のオイル戻し通路にオイルセパレータを設け、該オイルセパレータは、オイルの流れに交差して配置されてオイルの流れを妨げる壁体を備える。該壁体は、その周りの温度に応じてオイルの流れに対する壁面角度を変化させ、前記温度の低温域では高温域に比べて前記壁面角度が小さくされる。
【0009】
第1発明によれば、機械の潤滑オイルがオイル溜まりに戻されるオイル戻し通路にオイルセパレータが設けられ、そのオイルセパレータの壁体によりオイル戻し通路中のオイルの流速が遅くされる。そのため、オイルがオイル溜まりに戻されるまでにオイル内に混入した気泡が分離される。また、オイル戻し通路中のオイルの流速が遅くされるため、オイルがオイル溜まりに戻される際に空気を巻き込んでオイル内に気泡が混入する可能性を抑制することができる。
【0010】
オイルセパレータの壁体は、低温域では、高温域に比べてオイルの流れに対する壁面角度が小さくされる。そのため、低温域においてオイルの粘度が高くなるのに合わせて、壁体によりオイルの流れが妨げられるのを抑制する。従って、低温時にオイル溜まりに還流されるオイル量が減って、オイル溜まりのオイル量が少なくなり過ぎるのを防止することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記オイル戻し通路は、エンジンのシリンダブロックに形成されたオイル戻し通路である。
【0012】
第2発明によれば、オイル戻し通路がエンジンのシリンダヘッドのオイル溜まりからオイルパンにオイルを還流するオイル戻し通路とされている。そのため、エンジンの潤滑オイルの気泡分離をエンジンの構造変更なしに実現することができる。
【0013】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記壁体は、バイメタルにより構成されている。
【0014】
第3発明によれば、壁体がバイメタルにより構成されているため、温度による壁面角度の変化を簡単な構成で実現することができる。
【0015】
第4発明は、上記第1ないし第3発明のいずれかにおいて、前記オイルセパレータは、一枚の金属板により構成されている。該金属板は、その中央部が部分的に切り離されてオイルの流れに交差するように立ち上がり可能に形成された舌片と、端部を屈曲状態に形成されたフランジ部とを備える。前記舌片は、前記オイルセパレータの壁体を構成し、前記フランジ部は、前記機械に前記オイルセパレータを固定するための固定部を構成する。
【0016】
第4発明によれば、一枚の金属板をプレス加工して、舌片とフランジ部とを形成してオイルセパレータを構成することができる。従って、オイルセパレータを簡単な構成で安価に製作することができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記オイルセパレータは、前記オイル戻し通路に挿入されており、前記フランジ部がオイル戻し通路の端部で当該機械に固定される部品に挟持されて固定される。
【0018】
第5発明によれば、オイルセパレータのフランジ部を部品により挟持することでオイルセパレータを固定することができる。そのため、オイルセパレータを固定するための構成を簡素化することができる。
【0019】
第6発明は、上記第1ないし第5発明のいずれかにおいて、前記壁体は、オイルの流れに沿って複数枚設けられている。
【0020】
第6発明において、壁体は、一つのオイルセパレータの壁体が複数枚とされてもよいし、複数のオイルセパレータの壁体により構成されてもよい。
【0021】
第6発明によれば、壁体がオイルの流れに沿って複数枚設けられているため、一つのセパレータによるオイルの気泡の分離性能を高めることができる。
【0022】
第7発明は、上記第1ないし第6発明のいずれかにおいて、前記オイルセパレータは、筒形状に形成されており、該筒形状の内面側の対向面にそれぞれ前記壁体が設けられている。
【0023】
第7発明によれば、オイルセパレータが筒形状に形成されているため、オイルセパレータの強度を高めることができる。しかも、筒形状の内部に対向してそれぞれ壁体が設けられているため、各壁体の相互作用によりオイルの流れを妨げる機能が高められ、セパレータによるオイルの気泡の分離性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態であるエンジンのシリンダブロックの平面図である。
図2図1のII−II線断面矢視図である。
図3】第1実施形態における上方のオイルセパレータの斜視図である。
図4】第1実施形態における下方のオイルセパレータの斜視図である。
図5図3のオイルセパレータの動作説明図である。
図6図4のオイルセパレータの動作説明図である。
図7図3のVII−VII線断面矢視拡大図である。
図8図5のVIII−VIII線断面矢視拡大図である。
図9】第1実施形態におけるオイルセパレータの第1変形例を示す図7、8に対応する断面図である。
図10】第1実施形態の動作説明図である。
図11】第1実施形態の第2変形例の動作説明図である。
図12】エンジン回転数に対するエンジンオイルの気泡率の変化を示すグラフである。
図13】オイル温度に対するエンジンオイルの気泡率の変化を示すグラフである。
図14】本発明の第2実施形態の斜視図である。
図15】第2実施形態の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1、2は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、ディーゼルエンジンの潤滑オイルの気泡分離装置に本発明を適用している。各図中、矢印によりディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)における各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0026】
図1、2は、シリンダブロックの一部を成すシリンダブロックアッパ12を示す。シリンダブロックアッパ12は、その下にシリンダブロックロア13が組み合わされてシリンダブロックが構成される。シリンダブロックアッパ12の上には、シリンダヘッド11が組み合わされる。図示を省略したが、シリンダブロックロア13の下方にはオイルパン(本発明におけるオイル溜まりに相当)が設けられている。
【0027】
シリンダブロックアッパ12には、シリンダを構成するシリンダボア12bが形成されている。この実施形態におけるエンジンは4気筒であり、シリンダボア12bがシリンダブロックアッパ12の前後方向に直列に4つ並べて形成されている。シリンダボア12bの左右両側に位置するシリンダブロックアッパ12には複数個のオイル戻し通路12aが形成されている。各オイル戻し通路12aは、シリンダブロックアッパ12内を上下方向に貫通して設けられている。各オイル戻し通路12aの上端は、シリンダヘッド11のオイル溜まりに連通し、各オイル戻し通路12aの下端は、シリンダブロックロア13の通路(図示略)を介して図示しないオイルパンに連通している。従って、シリンダヘッド11のオイル溜まりに集められたオイルは、各オイル戻し通路12aを通ってオイルパンに還流される。
【0028】
図2のように、オイル戻し通路12aの上端部及び下端部には、オイルセパレータ20及び30が挿入されている。後述するように、オイルセパレータ20、30の各端部には、フランジ部23、33が屈曲形成されており、これらのフランジ部23、33を固定部としてオイルセパレータ20、30が固定されている。具体的には、オイルセパレータ20の上端部のフランジ部23は、シリンダブロックアッパ12の上端面とシリンダヘッド11の下端面との間に挟持されている。また、オイルセパレータ30の下端部のフランジ部33は、シリンダブロックアッパ12の下端面とシリンダブロックロア13の上端面との間に挟持されている。
【0029】
シリンダブロックアッパ12の上端面とシリンダヘッド11の下端面との間、及びシリンダブロックアッパ12の下端面とシリンダブロックロア13の上端面との間には、それぞれガスケット(図示略)が挟持されている。そのため、各間にオイルセパレータ20、30のフランジ部23、33が挿入されることによる各隙間のバラツキは、ガスケットの弾性変形により吸収することができる。なお、オイルセパレータ20、30は、各オイル戻し通路12aの全てに挿入されることが望ましいが、オイルの気泡率等の状況に応じて各オイル戻し通路12aの一部にのみ挿入してもよい。また、各オイル戻し通路12aにオイルセパレータ20、30の両方を挿入することが望ましいが、オイルの気泡率等の状況に応じていずれか一方のみを挿入してもよい。
【0030】
図3は、オイルセパレータ20を拡大して示す。オイルセパレータ20は、上下方向に長いステンレス製の薄板21をプレス成形して形成されている。そのステンレス板21には、上下方向に3つの舌片22が形成されている。各舌片22は、前後方向に長い長方形とされ、その上辺を除く3辺がステンレス板21から切り離されることにより形成されている。ステンレス板21の上端部は左側に直角に屈曲されて上述のフランジ部23が形成されている。舌片22は3つに限定されるものではなく、適宜の数とすることができる。また、舌片22の形状についても長方形に限定されるものではなく、適宜の形状とすることができる。更に、薄板21の材料についてもステンレスに限定されるものではなく、適宜の材料とすることができる。
【0031】
図7に示すように、各舌片22は、2種類の金属が重ね合わされて形成されている。右側面はステンレス板21と一体のステンレス22aであり、左側面はステンレス22a上に溶射された真鍮22bである。真鍮22bはステンレス22aに比べて熱膨張係数が高いため、各舌片22はバイメタルを構成している。図5、8は、各舌片22が高温に曝されたとき、バイメタルの機能により各舌片22が変形した状態を示す。このとき、各舌片22は、真鍮22bの方がステンレス22aより熱膨張係数が高いため、真鍮22bが外側、ステンレス22aが内側となる円弧状に湾曲される。なお、各舌片22がバイメタルを構成するための金属材料は、ニッケル、クロムなど他金属の組み合わせを採用することができる。また、各金属材料を重ね合わせるための工法も接合など他の工法を採用することができる。
【0032】
図4、6は、オイルセパレータ30を拡大して示す。オイルセパレータ30は、オイルセパレータ20と基本的には同じ構造を備える。オイルセパレータ30がオイルセパレータ20に対して相違する点は、オイルセパレータ20のフランジ部23がステンレス板21の上端部に形成されているのに対し、オイルセパレータ30のフランジ部33は、ステンレス板31の下端部に形成されている点のみである。
【0033】
図2のように、オイルセパレータ20、30がオイル戻し通路12aに挿入され、固定されていると、オイルセパレータ20、30は、オイル戻し通路12aを流れるオイルの流速に影響を与える。
【0034】
エンジンの始動直後でエンジンの温度が低い状態(大気温程度)にあると、オイルセパレータ20、30の舌片22、32は、図3、4に示すように、湾曲せず真直ぐな状態にある。この状態では、オイルの流れに殆ど抵抗を与えない。そのため、オイルは、オイルセパレータ20、30がない場合と同様にオイル戻し通路12aを流れる。即ち、オイルセパレータ20、30は、その機能を発揮しない。
【0035】
このような低温状態では、オイルの粘度が高いため、オイルセパレータ20、30は、オイルの流れに抵抗を与えないようにして、オイルをオイルパンに向けてスムーズに流している。そのため、オイル戻し通路12aにオイルセパレータ20、30が設けられていても、オイルパンのオイルが不足することがないようにしている。
【0036】
図13は、オイル温度に対するオイルの気泡率を示す。図13のように、オイル温度が低い領域では気泡率は低い。そのため、このときオイルセパレータ20、30が機能していなくても、オイルパン内のオイルの気泡率が高くなることはない。
【0037】
エンジンが暖機されると、オイルセパレータ20、30の舌片22、32は、図5、6に示すように、湾曲した状態になる。この状態では、舌片22、32は、オイルの流れに交差して、オイルの流れを妨げるように働く。図10は、オイルOが舌片22の上を流れる様子を示す。このようにオイル戻し通路12aを流れるオイルOは、流れが妨げられて流速が抑制され、オイルO内に含まれる気泡が分離され易くなる。
【0038】
図13のように、オイル温度が高くなるに従って、気泡率は高くなる。しかし、このときオイルセパレータ20、30は、上述のように機能するため、シリンダヘッド11でオイル内に気泡が混入されても、そのオイルがオイル戻し通路12aを流れる間に気泡が分離されて、オイルパンには気泡率の低下したオイルが還流される。
【0039】
図12は、エンジン回転数に対するオイルの気泡率を示す。図12のように、エンジン回転数が高くなるとオイルの気泡率は高くなる。しかし、エンジン回転数が高くなると、それに伴いオイル温度も高くなるため、オイルセパレータ20、30の舌片22、32の湾曲度合は大きくなる。そのため、オイルセパレータ20、30による気泡を分離する機構は、より高められる。
【0040】
図9は、オイルセパレータ20、30の第1変形例を示す。この第1変形例は、サーモワックス25を使用して舌片22(32)の角度変更を行う点を特徴としている。従って、この場合の舌片22(32)は、第1実施形態の場合のようなバイメタルではなく、一枚のステンレス板により構成されている。
【0041】
舌片22(32)は、オイルセパレータ20、30の外形を構成する枠体24に囲まれる位置で、枠体24にヒンジピン27により回動自在に固定されている。ヒンジピン27は、舌片22(32)の上端部に位置し、ヒンジピン27の下方で舌片22(32)には、サーモワックス25の連結ロッド26が結合されている。サーモワックス25は、周りの温度の変化を受けて膨張、収縮する。
【0042】
オイル温度が高くなるのに応じてサーモワックス25が膨張すると、連結ロッド26は、舌片22(32)を押して、仮想線で示すように、舌片22(32)をオイルの流れに交差する位置に移動する。オイル温度が大気温程度まで低くなってサーモワックス25が収縮すると、連結ロッド26は、実線で示すように、舌片22(32)を引き戻して、舌片22(32)をオイルの流れに沿った位置に移動する。
【0043】
係る第1変形例のオイルセパレータ20、30によっても、第1実施形態のオイルセパレータ20、30と同様に機能することができる。
【0044】
図11は、オイルセパレータ20、30の第2変形例を示す。この第2変形例は、舌片22、32のステンレス板21、31における切り離し方を変更した点を特徴とする。第1実施形態の場合、舌片22、32は、その上辺を除く3辺がステンレス板21から切り離されることにより形成された。それに対し、第2変形例では、図11のように、各舌片42は、その下辺を除く3辺がステンレス板41から切り離されることにより形成されている。各舌片42は、その右側面はステンレス板41と一体のステンレス42aであり、左側面はステンレス42a上に溶射された真鍮42bである。即ち、各舌片42はバイメタルとされている。
【0045】
図11は、オイル温度が高くなった状態を示す。このとき、各舌片42は、真鍮42bが外側、ステンレス42aが内側となる円弧状に湾曲される。このように各舌片42がオイルOの流れに交差する位置になると、第1実施形態の場合と同様、オイルOの流速を抑制して、オイルOに混入している気泡を分離することができる。
【0046】
第1実施形態によれば、シリンダヘッド11でオイル内に混入した気泡は、シリンダブロックのオイル戻し通路12a内に設置されたオイルセパレータ20、30により分離される。そのため、シリンダヘッド11においてオイル内に気泡が混入しないように、シリンダヘッド11の構造を変更することなく、オイルパンに還流されるオイルの気泡率を抑制することができる。また、オイル温度が高くなると、オイルの粘度が低くなって、オイルの気泡率が高くなるが、オイルセパレータ20、30はオイル温度が高くなる程、オイルの流速を抑制して気泡の分離を促進する。しかも、オイルの流速が抑制されるため、オイルがオイルパン内に還流される際にオイル内に空気を巻き込んでオイル内に気泡が混入する可能性を抑制することができる。
【0047】
図14、15は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、オイルセパレータの構造である。その他の点は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分の再度の説明は省略する。
【0048】
第2実施形態のオイルセパレータ50は、2枚のステンレス板51、55を左右方向に並べて設け、各ステンレス板51、55に上下方向に3つずつの舌片52、56を形成している。各舌片52、56は、その上辺を除く3辺がステンレス板51、55から切り離されることにより形成されている。
【0049】
各ステンレス板51、55の上下端部には、それぞれフランジ部53、57が屈曲して形成されている。また、各ステンレス板51、55の上下において、フランジ部53、57間は、連結枠58によりそれぞれ連結されて、オイルセパレータ50は、概ね四角筒形状を成すように形成されている。この場合の四角筒形状では、左右方向に沿う壁面を備えないが、この壁面を備えるようにしてもよい。このようにオイルセパレータ50を四角筒形状とすることによりオイルセパレータ50の強度が高められている。
【0050】
図15のように、各舌片52は、その右側面はステンレス板51と一体のステンレス52aであり、左側面はステンレス52a上に溶射された真鍮52bである。また、各舌片56は、その左側面はステンレス板55と一体のステンレス56aであり、右側面はステンレス56a上に溶射された真鍮56bである。従って、各舌片52、56は、バイメタルを構成している。
【0051】
図14、15は、オイル温度が高くなった状態を示す。このとき、各舌片52、56は、真鍮52b、52bが外側、ステンレス52a、56aが内側となる円弧状に湾曲される。このように各舌片52、56がオイルOの流れに交差する位置になると、第1実施形態の場合と同様、オイルOの流速を抑制して、オイルOに混入している気泡を分離することができる。第2実施形態の場合、各舌片52、56が湾曲した状態では、各舌片52、56が互い違いに噛み合うように位置するため、オイルOの流速を更に抑制して、オイルOに混入している気泡を分離する効果を高めることができる。
【0052】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をディーゼルエンジンに適用した例を示したが、本発明はガソリンエンジンに適用することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 ディーゼルエンジン(エンジン、機械)
11 シリンダヘッド
12 シリンダブロックアッパ
12a オイル戻し通路
12b シリンダボア
13 シリンダブロックロア
20、30、40、50 オイルセパレータ
21、31、41、51、55 ステンレス板
22、32、42、52、56 舌片(壁体、バイメタル)
23、33、53、57 フランジ部
24 枠体
25 サーモワックス
26 連結ロッド
27 ヒンジピン
58 連結枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15