特許第6551339号(P6551339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551339
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20190722BHJP
   H01H 1/54 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01H50/54 B
   H01H50/54 D
   H01H1/54
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-162134(P2016-162134)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2017-98221(P2017-98221A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225049(P2015-225049)
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】アンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 誠
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−182943(JP,A)
【文献】 特開2012−104356(JP,A)
【文献】 特開2015−18655(JP,A)
【文献】 特開2007−287526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
H01H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に磁界を形成する励磁コイル(18)と、
前記励磁コイルの電磁力により駆動される可動コア(28)と、
前記可動コアに追従作動する可動接触子(20、25)と、
前記励磁コイルへの通電時に前記可動接触子と当接する固定接触子(14、15)と、
前記固定接触子を支持するベース(12)と、
磁性体よりなり、前記ベースに固定された固定ヨーク(17)と、
磁性体よりなり、前記可動接触子の反固定接触子側の面に当接するとともに、前記可動接触子を介して前記固定ヨークと対向して配置された移動ヨーク(21)と、
前記移動ヨークを前記可動接触子側に付勢する第1接圧ばね(22)と、
前記可動接触子と前記固定接触子とが当接する向きに前記可動接触子を付勢する第2接圧ばね(23)と、を備え、
前記移動ヨークは、前記可動接触子と接離可能に設けられていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記第1接圧ばねはコイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記移動ヨークは、反可動接触子側の面に、前記第1接圧ばねの径方向への移動を拘束する凸部(211)または凹部(212)の少なくとも一方を有していることを特徴とする請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第2接圧ばねはコイルばねであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記可動接触子は、前記移動ヨーク側の面に、前記移動ヨークにおける前記第2接圧ばねの径方向の移動を拘束する凸部(201)または凹部の少なくとも一方を有していることを特徴とする請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記可動接触子は、反固定接触子側の面に、前記第2接圧ばねの径方向への移動を拘束する凸部(202)または凹部(203)の少なくとも一方を有していることを特徴とする請求項4または5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記第1接圧ばねの一端および前記第2接圧ばねの一端の少なくとも一方を保持する凹部(361、362)または凸部(363、364)を有するカバー(36)を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記第1接圧ばねは、前記移動ヨークに固着されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項9】
前記第2接圧ばねは、前記可動接触子に固着されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項10】
前記第1接圧ばねは、前記カバーに固着されていることを特徴とする請求項7に記載の電磁継電器。
【請求項11】
前記第2接圧ばねは、前記カバーに固着されていることを特徴とする請求項7に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点と固定接点とを接離させて電気回路を開閉する電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の継電器は、固定接点を有する固定子を位置決め固定し、可動接点が装着された1つの可動子を移動させて可動接点と固定接点とを接離させることにより、電気回路を開閉するようになっている。より詳細には、コイルの電磁力により吸引される可動部材、固定接点と可動接点とが当接する向きに可動子を付勢する接圧ばね、固定接点と可動接点とが離れる向きに可動部材を介して可動子を付勢する復帰ばね等を備えている。
【0003】
そして、コイルに通電されると、電磁力により可動部材は可動子から遠ざかる向きに駆動され、可動子が接圧ばねに付勢されて移動して固定接点と可動接点とが当接するとともに、可動部材と可動子とが離れるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−182943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載されたような電磁継電器においては、耐衝撃性能と耐短絡性能の両方が求められる。耐衝撃性能は、固定接点と可動接点が接触した状態で電磁継電器が振動や衝突等による衝撃を受けたときに、固定接点と可動接点が非接触とならないよう耐え得る性能である。
【0006】
図9は、上記特許文献1に記載された電磁継電器において、固定接点と可動接点が接触した状態を表している。この図において、可動子20、移動ヨーク30および可動接点25は、一体で移動することが可能となっている。
【0007】
可動部材には、接圧ばね24により可動接点25を固定接点27に当接させる方向(−Z方向)に接点圧Pが印加されている。そして、可動子20、移動ヨーク30および可動接点25を一体化した可動部材に、可動接点25が固定接点27から離れる方向(Z方向)への衝撃が印加された場合、可動部材には可動部材の質量m×加速度Gの衝撃力Fが印加される。
【0008】
耐衝撃性能を確保するためには、接点圧Pを衝撃力Fよりも大きくする必要がある。つまり、可動部材が受ける衝撃力Fは可動部材の質量mに比例するため、可動部材の重量mを小さくすることで耐衝撃性能を有利にすることができる。
【0009】
一方、このような電磁継電器においては、可動接点と固定接点の間に短絡電流が流れると、可動接点と固定接点の接触部において、可動接点と固定接点とが対向する部位で電流が逆向きに流れることにより電磁反発力が発生する(以下、この電磁反発力を接点部電磁反発力という)。
【0010】
その接点部電磁反発力は、可動接点と固定接点間を開離させるように作用する。そこで、接点部電磁反発力により可動接点と固定接点間が開離しないように、接圧ばねのばね力とヨーク間吸引力を設定している。
【0011】
しかしながら、可動接点と固定接点の接触部において、流れる電流が多くなるほど接点部電磁反発力も大きくなるため、電流値が増加すればそれに応じて接圧ばねのばね力若しくはヨーク間吸引力を大きくする必要が生じる。
【0012】
つまり、接圧ばねのばね力を大きくしたり、移動ヨークを大きくして移動ヨークと固定ヨーク間の吸引力を大きくすることで耐短絡性能を有利にすることができる。
【0013】
しかし、接圧ばねのばね力を大きくすると、それに合わせて復帰ばねのばね力を大きくする必要が生じ、それに伴いコイル体格が大きくなり、結果的に製品体格が大きくなるという背反が生じる。
【0014】
また、別の背反として、移動ヨークを大きくすると、可動部材の重量が大きくなってしまうため耐衝撃性能が低下してしまうといった問題がある。このように、耐衝撃性能と耐短絡性能はトレードオフの関係にある。
【0015】
本発明は上記問題に鑑みたもので、製品体格を大型化せずに、耐衝撃性能を低下させることなく耐短絡性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、通電時に磁界を形成する励磁コイル(18)と、励磁コイルの電磁力により駆動される可動コア(28)と、可動コアに追従作動する可動接触子(20、25)と、励磁コイルへの通電時に可動接触子と当接する固定接触子(14、15)と、固定接触子を支持するベース(12)と、磁性体よりなり、ベースに固定された固定ヨーク(17)と、磁性体よりなり、可動接触子の反固定接触子側の面に当接するとともに、可動接触子を介して固定ヨークと対向して配置された移動ヨーク(21)と、移動ヨークを可動接触子側に付勢する第1接圧ばね(22)と、可動接触子と固定接触子とが当接する向きに可動接触子を付勢する第2接圧ばね(23)と、を備え、移動ヨークは、可動接触子と接離可能に設けられていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、励磁コイルへの通電時に可動接触子が固定接触子に当接した状態で、可動接触子と固定接触子とが離れる向きの衝撃を受け、移動ヨークが第1接圧ばねに抗して可動接触子から離れたとしても、可動接触子は第2接圧ばねにより可動接触子と固定接触子とが当接する向きに付勢され、可動接触子と固定接触子は当接した状態が維持される。したがって、例えば、耐短絡性能を有利にするために体格が大きく質量の大きな移動ヨークを用いた場合に、可動接触子と固定接触子とが離れる向きの衝撃を受け、移動ヨークが第1接圧ばねに抗して可動接触子から離れたとしても、可動接触子は第2接圧ばねにより可動接触子と固定接触子とが当接する向きに付勢され、可動接触子と固定接触子は当接した状態が維持される。すなわち、製品体格を大型化せずに、耐衝撃性能を低下させることなく耐短絡性能を向上させることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明のように、第1接圧ばねをコイルばねとすることにより、移動ヨークを可動接触子側に全体的に均一に付勢することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、移動ヨークは、反可動接触子側の面に、第1接圧ばねの径方向への移動を拘束する凸部(211)または凹部(212)の少なくとも一方を有している。
【0020】
このような構成によれば、第1接圧ばねの位置決めを容易に行うことができるとともに、第1接圧ばねが第1接圧ばねの径方向に移動しないようにすることができる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明のように、第2接圧ばねをコイルばねとすることにより、可動接触子を全体的に均一に付勢することができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、可動接触子は、移動ヨーク側の面に、移動ヨークにおける第2接圧ばねの径方向の移動を拘束する凸部(201)または凹部の少なくとも一方を有している。
【0023】
このような構成によれば、例えば、衝撃により移動ヨークが可動接触子から離れた後、移動ヨークが可動接触子に当接する際に、移動ヨークを元の位置に戻すことができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明では、可動接触子は、反固定接触子側の面に、第2接圧ばねの径方向への移動を拘束する凸部(202)または凹部(203)の少なくとも一方を有している。
【0025】
このような構成によれば、第2接圧ばねの位置決めを容易に行うことができるとともに、第2接圧ばねが第2接圧ばねの径方向に移動しないようにすることができる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明では、第1接圧ばねの一端および第2接圧ばねの一端の少なくとも一方を保持する凹部(361、362)または凸部(363、364)を有するカバー(36)を備えたので、第1接圧ばねの一端および第2接圧ばねの一端の少なくとも一方を容易に組み付けることができる。
【0027】
また、請求項8に記載の発明のように、第1接圧ばねは、移動ヨークに固着されているので、移動ヨークへの第1接圧ばねの位置決めが不要であり、組み付け性を向上することができる。
【0028】
また、請求項9に記載の発明のように、第2接圧ばねは、可動接触子に固着されているので、可動接触子への第2接圧ばねの位置決めが不要であり、可動接触子の組み付け性を向上することができる。
【0029】
また、請求項10に記載の発明のように、第1接圧ばねは、カバーに固着されているので、カバーへの第1接圧ばねの位置決めが不要であり、組み付け性を向上することができる。
【0030】
また、請求項11に記載の発明のように、第2接圧ばねは、カバーに固着されているので、カバーへの第2接圧ばねの位置決めが不要であり、組み付け性を向上することができる。
【0031】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁継電器を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電磁継電器の分解斜視図である。
図3】可動コアが復帰ばねに抗して固定コア側に吸引された状態の電磁継電器を示す断面図である。
図4】可動接点が固定接点に当接しているときの接点圧Pについて説明するための図である。
図5】可動接点が固定接点から接離する方向(Z方向)に衝撃力が印加されたときの様子を表した図である。
図6】変形例について示した図である。
図7】変形例について示した図である。
図8】変形例について示した図である。
図9】課題について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施形態に係る電磁継電器について説明する。本実施形態に係る電磁継電器は、例えば、ハイブリッド車両、電気自動車等に用いることができる。図1は、本実施形態に係る電磁継電器を示す断面図である。また、図2は、電磁継電器の分解斜視図である。なお、図2は、ケース10を省略してある。
【0034】
図1図2に示すように、本実施形態に係る電磁継電器は、樹脂製のケース10を備えている。ケース10は、4個のケース側壁部101と1個のケース底部(図1の紙面奥側)の面とを有し、ケース底部に対向する一面(図1の紙面手前側の面)にケース開口部が設けられた、有底4角筒形状になっている。ケース10の内部には、収容空間104が形成され、この収容空間104はケース開口部を介して外部に解放されている。
【0035】
樹脂製のベース12は、ケース10に嵌合されてケース開口部を塞ぐベース底部121と、ベース底部121からケース底部側に向かって突出するベース本体部122と、後述する接圧ばね22、23を保持するカバー36とを有している。そして、ケース10とベース底部121とによって、収容空間104が区画形成されている。ベース12は、一対の固定子14をインサート物として、インサート成形される。また、ベース底部121には、後述する一対のコイル端子16が挿入される端子挿入孔(図示せず)が2つ形成されており、各端子挿入孔にコイル端子16が挿入されている。
【0036】
ベース12には、導電金属製の板材よりなる一対の固定子14が固定されている。固定子14は、一端側がベース本体部122に固定されて収容空間104内に位置し、他端側が外部に突出している。固定子14における収容空間104側の端部には、導電金属製の固定接点15がかしめ固定されている。固定子14における外部空間側の端部は、外部電気回路(図示せず)に接続される。なお、固定子14および固定接点15は、本発明の固定接触子を構成している。
【0037】
収容空間104には、通電時に電磁力を発生する円筒状のコイル18が配置されており、このコイル18には導電金属製の一対のコイル端子16が接続されている。このコイル18は、励磁コイルである。
【0038】
コイル端子16は、外部ハーネスを介してECU(図示せず)に接続されており、その外部ハーネスおよびコイル端子16を介してコイル18に通電されるようになっている。
【0039】
コイル18のベース本体部122側には、強磁性体金属材料よりなる板状のプレート19が配置されている。コイル18の反ベース本体部側および外周側には、強磁性体金属材料よりなるヨーク24が配置されている。
【0040】
コイル18の内周側空間には、強磁性体金属材料よりなる円筒状の固定コア26が配置されている。
【0041】
ベース本体部122とプレート19との間には、強磁性体金属材料よりなる円板状の可動コア28が配置されている。また、コイル18と可動コア28との間には、可動コア28を反固定コア側に付勢する復帰ばね30が配置されている。
【0042】
そして、コイル18に通電したときには、コイル18が発生する電磁力により、可動コア28は復帰ばね30に抗して固定コア26側に吸引される。なお、プレート19、ヨーク24、固定コア26、および可動コア28は、コイル18により誘起された磁束の磁路を構成する。
【0043】
可動コア28には、金属製のシャフト32が貫通して固定されている。シャフト32の一端は反固定コア側に向かって延びており、このシャフト32の一端側の端部には、電気絶縁性に富む樹脂よりなる絶縁碍子34が嵌合して固定されている。シャフト32の他端側は、固定コア26に摺動自在に挿入されている。
【0044】
収容空間104には、導電金属(例えば、銅)製の板材よりなる可動子20が配置されている。この可動子20は、導電金属製の2つの可動接点25を有している。具体的には、可動子20には、2つの固定接点15に対向する位置に、導電金属製の2つの可動接点25がかしめ固定されている。可動子20および可動接点25は、本発明の可動接触子を構成している。なお、可動子20および可動接点25は、可動接点25と固定接点15とが離れた状態から可動接点25と固定接点15とが当接するまで可動コア28に追従作動する。
【0045】
可動子20の反固定接触子側の面、すなわち、カバー36側の面には、強磁性体金属材料(例えば、鉄)よりなる移動ヨーク21が配置されている。移動ヨーク21は、可動子20の反固定接触子側の面に当接するとともに、可動接触子20、25を介して固定ヨーク17と対向して配置されている。移動ヨーク21と可動子20は、別体で接離可能に設けられている。
【0046】
可動子20とカバー36との間には、可動子20を固定接触子14、15側に付勢する接圧ばね23が配置されている。この接圧ばね23は、可動子20を固定接触子14、15側に付勢する第2接圧ばねである。なお、接圧ばね23はコイルばねとなっている。
【0047】
可動子20のカバー36側の面には、カバー36側に突出する少なくとも1つの凸部202が形成されている。凸部202は、移動ヨーク21における接圧ばね23の径方向の移動を拘束する。
【0048】
移動ヨーク21とカバー36との間には、移動ヨーク21を可動子20側に付勢する接圧ばね22が配置されている。接圧ばね22は、移動ヨーク21を可動子20側に付勢する第1接圧ばねである。なお、接圧ばね22はコイルばねとなっている。
【0049】
移動ヨーク21の反可動接触子側の面、すなわち、カバー36側の面には、少なくとも1つの凸部211が形成されている。凸部211は、接圧ばね22の径方向への移動を拘束する。
【0050】
カバー36の可動子20側の面には、2つの円形の凹部361、362が形成されている。凹部361は、コイル状の接圧ばね23の一端を保持固定し、凹部362は、コイル状の接圧ばね22の一端を保持固定する。
【0051】
カバー36の凹部363には、固定接点15と可動接点25とが接離する接離部に磁界を形成して、固定接点15と可動接点25との間で発生したアークを引き延ばす一対の永久磁石42が配置されている。これらの永久磁石42は、一対の接離部の並び方向(図3の紙面左右方向)に沿って対向配置されている。
【0052】
次に、本実施形態に係る電磁継電器の作動を説明する。まず、コイル18に通電すると、その電磁力により復帰ばね30に抗して可動コア28が固定コア26側に吸引され、図3に示すように、可動子20および移動ヨーク21は接圧ばね22、23に付勢されて可動コア28に追従して移動する。これにより、可動接点25が固定接点15に当接し、一対の固定子14間が導通する。
【0053】
そして、一対の固定接点15の間が導通して可動子20に電流が流れることにより、可動子20の軸周りに磁束が発生し、この磁束により移動ヨーク21と固定ヨーク17との間にヨーク吸引力が発生し、このヨーク吸引力により、移動ヨーク21が可動子20を固定接点15側へ付勢する。したがって、ヨーク吸引力により、接点部電磁反発力による接点間開離が防止される。
【0054】
一方、コイル18への通電が遮断されると、復帰ばね30により接圧ばね22、23に抗して可動コア28や可動子20が反固定コア側に付勢される。これにより、図1に示したように、可動接点25が固定接点15から離され、一対の固定子14間の導通が遮断される。
【0055】
ここで、図4を参照して、可動子20が接圧ばね23に付勢されるとともに移動ヨーク21が接圧ばね22に付勢されて、可動接点25が固定接点15に当接したときの接点圧Pについて説明する。図4において、矢印Z方向は、可動接点25が固定接点15から接離する方向を表している。
【0056】
可動子20は、接圧ばね23により−Z方向に付勢されている。また、移動ヨーク21は、接圧ばね22により−Z方向に付勢されている。すなわち、移動ヨーク21は、接圧ばね22により可動子20側に押し付けられている。
【0057】
接圧ばね23が可動子20を−Z方向に付勢する力をP1、接圧ばね22が移動ヨーク21を−Z方向に付勢する力をP2とすると、可動接点25と固定接点15との間にかかる接点圧Pは、P=P1+P2として表すことができる。なお、接圧ばね22が移動ヨーク21を−Z方向に付勢する力P2は、移動ヨーク21が可動子20から離れないように押さえ付けるだけの力があればよい。
【0058】
図5は、可動接点25が固定接点15から接離する方向(Z方向)に加速度Gの衝撃力Fが印加されたときの様子を表した図である。図に示すように、可動子20に印加されるZ方向の衝撃力をF1、移動ヨーク21に印加されるZ方向の衝撃力をF2とする。また、接圧ばね23が可動子20を−Z方向に付勢する力をP1、接圧ばね22が移動ヨーク21を−Z方向に付勢する力をP2とする。
【0059】
ここで、F2>P2の関係が成立すると、移動ヨーク21と可動子20は接離可能に構成されているので、移動ヨーク21が可動子20から離れてZ方向に移動する。また、F1<P1の関係が成立すれば、可動接点25と固定接点15は開離しない。
【0060】
すなわち、本実施形態の電磁継電器の構成では、耐衝撃性能は、移動ヨーク21に印加されるZ方向の衝撃力F2と、接圧ばね22が移動ヨーク21を−Z方向に付勢する力P2の大小と関係なく、可動子20に印加されるZ方向の衝撃力F1と、接圧ばね23が可動子20を−Z方向に付勢する力P1の大きさによって決まる。したがって、体格が大きく質量の大きな移動ヨークを用いても耐衝撃性能に影響しない。
【0061】
したがって、例えば、耐短絡性能を有利にするために体格が大きく質量の大きな移動ヨークを用いたとしても、可動接点と固定接点とが離れる向きの衝撃を受けたときに、移動ヨークは第1接圧ばねに抗して可動接触子から離れ、かつ、可動接触子は第2接圧ばねにより可動接点と固定接点とが当接する向きに付勢され、可動接点と固定接点は当接した状態が維持される。また、移動ヨークを大きくして移動ヨークと固定ヨーク間の吸引力を大きくすることができるので、耐短絡性能を有利にすることもできる。
【0062】
上記した構成によれば、本電磁継電器は、通電時に磁界を形成する励磁コイル18と、励磁コイル18の電磁力により駆動される可動コア28と、可動コアに追従作動する可動接触子20、25と、励磁コイル18への通電時に可動接触子20、25と当接する固定接触子14、15と、固定接触子14、15を支持するベース12と、を備える。また、磁性体よりなり、ベース12に固定された固定ヨーク17と、磁性体よりなり、可動接触子20、25の反固定接触子側の面に当接するとともに、可動接触子20、25を介して固定ヨーク17と対向して配置された移動ヨーク21と、を備える。さらに、移動ヨーク21を可動接触子20、25側に付勢する第1接圧ばね22と、可動接触子20、25と固定接触子14、15とが当接する向きに可動接触子20、25を付勢する第2接圧ばね23と、を備え、移動ヨーク21は、可動接触子20、25と接離可能に設けられている。
【0063】
このような構成によれば、コイル18への通電時に可動接触子20、25が固定接触子14、15に当接した状態で、可動接点と固定接点とが離れる向きの衝撃を受け、移動ヨーク21は第1接圧ばね22に抗して可動接触子20、25から離れたとしても、可動接触子20、25は第2接圧ばね23により可動接点と固定接点とが当接する向きに付勢され、可動接点と固定接点は当接した状態が維持される。
【0064】
したがって、例えば、耐短絡性能を有利にするために体格が大きく質量の大きな移動ヨークを用いた場合に、可動接点と固定接点とが離れる向きの衝撃を受け、移動ヨーク21は第1接圧ばね22に抗して可動接触子20、25から離れたとしても、可動接触子20、25と固定接触子14、15は当接した状態が維持される。すなわち、製品体格を大型化せずに、耐衝撃性能を低下させることなく耐短絡性能を向上させることができる。
【0065】
また、接圧ばね22はコイルばねである。したがって、接圧ばね22は移動ヨーク21を可動接触子側に全体的に均一に付勢することができる。
【0066】
また、移動ヨーク21は、反可動接触子側の面に、接圧ばね22の径方向への移動を拘束する凸部211を有しているので、接圧ばね22の位置決めを容易に行うことができ。さらに、接圧ばね22が接圧ばね22の径方向に移動しないようにすることができる。
【0067】
また、接圧ばね23はコイルばねである。したがって、接圧ばね23は可動接触子を全体的に均一に付勢することができる。
【0068】
また、可動接触子20、25は、移動ヨーク21側の面に、移動ヨーク21における接圧ばね23の径方向の移動を拘束する凸部201を有しているので、例えば、移動ヨーク21が可動接触子から離れた後、移動ヨーク21が可動接触子に当接する際に、移動ヨーク21を元の位置に戻すことができる。
【0069】
また、本電磁継電器は、接圧ばね22の一端および接圧ばね23の一端を保持する凹部361、362を有するカバー36を備えているので、接圧ばね22の一端および接圧ばね23の一端の少なくとも一方を容易に組み付けることができる。
【0070】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、固定子14に、別部材の固定接点15をかしめ固定したが、固定子14に、可動子20側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を固定接点としてもよい。
【0071】
同様に、上記各実施形態では、可動子20に、別部材の可動接点25をかしめ固定したが、可動子20に、固定子14側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を可動接点としてもよい。
【0072】
(2)上記実施形態では、固定子14に、可動子20側に向かって突出する突起部として固定接点15をかしめ固定したが、必ずしも可動子20側に向かって突出する突起部を設ける必要はない。
【0073】
同様に、上記実施形態では、可動子20に、固定子14側に向かって突出する突起部として可動接点25をかしめ固定したが、必ずしも固定子14側に向かって突出する突起部を設ける必要はない。
【0074】
(3)上記実施形態では、可動子20のカバー36側の面に、接圧ばね23の径方向の移動を拘束する凸部202を形成したが、さらに、図6に示すように、可動子20のカバー36側の面に、移動ヨーク21における接圧ばね23の径方向の移動を拘束する凸部201を形成してもよい。これにより、移動ヨーク21の位置決めを容易に行うことができ、さらに、移動ヨーク21が接圧ばね22の径方向に移動しないようにすることができる。また、可動子20のカバー36側の面に、接圧ばね23の径方向への移動を拘束する凹部203を備えるようにしてもよい。また、図示してないが、可動子20のカバー36側の面に、移動ヨークにおける接圧ばね23の径方向の移動を拘束する凹部を形成してもよい。
【0075】
(4)上記実施形態では、移動ヨーク21のカバー36側の面に、接圧ばね22の径方向への移動を拘束する凸部211を形成したが、図7に示すように、さらに、移動ヨーク21のカバー36側の面に、接圧ばね22の径方向への移動を拘束する凹部212を形成し、この凹部212により接圧ばね22の径方向への移動を拘束するようにしてもよい。また、凸部211を省略して、凹部212を形成してもよい。
【0076】
(5)上記実施形態では、カバー36の可動子20側の面に接圧ばね23の一端を保持する凹部361と接圧ばね22の一端を保持する凹部362を形成したが、図8に示すように、カバー36の可動子20側の面に、可動子20側に突出する凸部365と凸部364を形成してもよい。そして、凸部365により接圧ばね23の一端を位置決めし、凸部364により接圧ばね22の一端を位置決めするようにしてもよい。
【0077】
(6)上記実施形態では、接圧ばね22と接圧ばね23をコイルばねとして構成したが、接圧ばね22と接圧ばね23の少なくとも一方をコイルばね以外のばね部材により構成することもできる。
【0078】
(7)上記実施形態において、予め接圧ばね22を移動ヨーク21に固着してもよい。これにより、移動ヨーク21への接圧ばね23の位置決めが不要となるため、組み付け性を向上することができる。
【0079】
(8)上記実施形態において、予め接圧ばね23を可動接触子20、25に固着してもよい。これにより、可動接触子20、25への第2接圧ばねの位置決めが不要となるため、可動接触子の組み付け性を向上することができる。
【0080】
(9)上記実施形態において、予め接圧ばね22をカバー36に固着してもよい。これにより、カバー36への接圧ばね22の位置決めが不要となるため、組み付け性を向上することができる。
【0081】
(10)上記実施形態において、予め接圧ばね23をカバー36に固着してもよい。これにより、カバー36への接圧ばね23の位置決めが不要となるため、組み付け性を向上することができる。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
10 ケース
12 ベース
14 固定子
15 固定接点
18 コイル
20 可動子
25 可動接点
26 固定コア
17 固定ヨーク
28 可動コア
34 絶縁碍子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9