特許第6551405号(P6551405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551405微細ビアホール形成のためのプリント配線板用樹脂積層体、並びに、樹脂絶縁層に微細ビアホールを有する多層プリント配線板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551405
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】微細ビアホール形成のためのプリント配線板用樹脂積層体、並びに、樹脂絶縁層に微細ビアホールを有する多層プリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20190722BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20190722BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H05K3/00 N
   H05K1/03 610L
   H05K3/40 E
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-525191(P2016-525191)
(86)(22)【出願日】2015年6月2日
(86)【国際出願番号】JP2015065934
(87)【国際公開番号】WO2015186712
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-115093(P2014-115093)
(32)【優先日】2014年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓也
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−329971(JP,A)
【文献】 特開2003−101235(JP,A)
【文献】 特開2000−22297(JP,A)
【文献】 特開2002−313914(JP,A)
【文献】 特開2003−231762(JP,A)
【文献】 特開平11−140275(JP,A)
【文献】 特開平11−186719(JP,A)
【文献】 特開2007−16105(JP,A)
【文献】 特開平11−330667(JP,A)
【文献】 特開平11−342492(JP,A)
【文献】 特開2001−7535(JP,A)
【文献】 特開2005−5283(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/135955(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0147623(US,A1)
【文献】 米国特許第5584956(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1289354(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/18
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細ビアホール形成用の樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層に積層されたレーザー減衰用の離型フィルムとを含むプリント配線板用樹脂積層体であって、離型フィルムの厚さが50μm超、180μm以下であり、前記樹脂絶縁層の厚さが3〜30μmである、樹脂積層体。
【請求項2】
前記レーザー減衰用の離型フィルムが、ポリエステルから形成される、請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
前記樹脂絶縁層に形成されるビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
前記樹脂絶縁層が、熱硬化性樹脂組成物から形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、及び無機充填材を含む、請求項5に記載の樹脂積層体。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化されてなる、請求項5又は6に記載の樹脂積層体。
【請求項8】
前記樹脂絶縁層のめっきピール強度が、0.4kN/m以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項9】
多層プリント配線板を製造する方法であって、
基材と基材上に形成された導電回路とを有する回路基板に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体を、前記回路基板の前記導電回路と前記樹脂積層体の前記樹脂絶縁層とが対向するように積層し、
レーザーにより前記樹脂積層体の前記レーザー減衰用の離型フィルム側から前記樹脂絶縁層まで貫通するビアホールを形成し、
前記離型フィルムを前記樹脂絶縁層から剥離する
ことを含む方法。
【請求項10】
前記樹脂積層体が請求項7に記載の樹脂積層体であると共に、
前記回路基板と前記樹脂積層体との積層後、ビアホールの形成前に、半硬化状態の前記樹脂絶縁層を全硬化させることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
レーザーが炭酸ガスレーザーである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
レーザーのエネルギーが、0.3mJ〜5mJである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
樹脂絶縁層に形成されるビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記離型フィルムの剥離後、前記樹脂絶縁層の表面を粗化し、粗化表面にめっきにより導体層を形成し、導体層をパターニングして回路を形成することを更に含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
基材と前記基材上に形成された導電回路とを有する回路基板、及び、当該回路基板に積層された請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体の樹脂絶縁層を含む多層プリント配線板であって、前記樹脂絶縁層がレーザーにより形成されたビアホールを有するとともに、当該ビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細ビアホール形成のためのプリント配線板用樹脂積層体、並びに、樹脂絶縁層に微細ビアホールを有する多層プリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板は、電子部品の実装密度を向上させるため、導体配線の微細化が進んでおり、その配線形成技術が望まれている。絶縁層上に高密度の微細配線を形成する方法としては、無電解めっきのみで導体層を形成するアディティブ法や、無電解めっきで全面に薄い銅層を形成した後に電解めっきで導体層を形成し、そのあとに薄い銅層をフラッシュエッチングするセミアディティブ法等が知られている。
【0003】
プリント配線板の層間接続で必要となるスルーホールやブラインドビアは、レーザー加工やドリル加工により形成されている。レーザー加工によるブラインドビアの形成方法として、UV−YAGレーザーを使用する方法と、炭酸ガスレーザーを使用する方法が知られている。UV−YAGレーザーは小径穴の加工性が良好であるものの、コストや加工速度の観点から、必ずしも満足のいくものではない。一方で、炭酸ガスレーザーは、コストや加工速度の点では優れるものの、波長が長くスポット径が大きいため、小径穴の加工性は短波長でスポット径の小さいUV−YAGレーザーよりも劣っている。炭酸ガスレーザーで小径のブラインドビアを形成するには、低い加工エネルギーで加工する必要があるため、ボトム径がトップ径に比べて小さく、テーパーの強い形状となり、ブラインドビアの導通信頼性を低下させる要因となる。
【0004】
特許文献1〜3は、接着フィルムを使用した多層プリント配線板の製造方法が記載され、特許文献1には、離型層を有する支持ベースフィルムと熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムを使用して、コア基板に該接着フィルムを積層し、支持ベースフィルムの付いた状態で熱硬化後、支持ベースフィルムの付いたままで、或いは、剥離後にレーザー又はドリルにより穴開けする工法が開示されている。また、特許文献2には、金属箔の片面に絶縁層、さらにその絶縁層表面に引き剥がし可能な有機フィルムを積層し、有機フィルム面側からレーザー加工する工法が開示されている。また、特許文献3には、無機充填材を多く含有する絶縁層に、炭酸ガスレーザーを用いてブラインドビアを形成する際に、ビア周辺の絶縁層表面に大きな凹凸を生じさせず、トップ径とビアボトム径との差が小さい良好な穴形成のブラインドビアを形成するために、プラスチックフィルムが積層された絶縁層に対して炭酸レーザーを用いることを開示している。特許文献1及び2は、トップ径として100μm以上のビアホールの形成に関しており、特許文献3は、トップ径として100μm以下、好ましくは90μm以下とし、より好ましくは80μm以下と記載している。したがって、これらの文献には、30μm以下のトップ径を有する微細なビアホールの形成については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−196743号公報
【特許文献2】特許第3899544号公報
【特許文献3】国際公開第2009/066759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント配線板に用いられる樹脂絶縁層にビアホールを形成するにあたり、ビアホールの小径化を達成するために、炭酸ガスレーザーの出力エネルギーを低下させると、トップ径からボトム径にかけてテーパーの強い形状となり、トップ径とボトム径との差が大きくなるという問題がある。したがって、トップ径を小径化しつつ、トップ径とボトム径との差が小さいビアホールを形成可能なプリント配線板の加工又は製造方法、並びにかかる方法に用いる樹脂積層体が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、トップ径が小さく、かつトップ径とボトム径との差が小さいビアホールをレーザー(好ましくは炭酸ガスレーザー)で形成する方法について鋭意研究を行ったところ、樹脂絶縁層に積層されたレーザー減衰用の離型フィルムの厚さを50μm超から180μm以下とした場合に、トップ径が30μm以下であり、かつトップ径とボトム径との差が10μm以下の微細ビアホールを形成できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
したがって、本発明は以下に関する:
[1] 微細ビアホール形成用の樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層に積層されたレーザー減衰用の離型フィルムとを含むプリント配線板用樹脂積層体であって、離型フィルムの厚さが50μm超、180μm以下である、樹脂積層体。
[2] 前記レーザー減衰用の離型フィルムが、ポリエステルから形成される、項目1に記載の樹脂積層体。
[3] 前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、項目2に記載の樹脂積層体。
[4] 前記樹脂絶縁層に形成されるビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記樹脂絶縁層の厚さが3〜50μmである、項目1〜4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
[6] 前記樹脂絶縁層が、熱硬化性樹脂組成物から形成される、項目1〜5のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
[7] 前記熱硬化性樹脂組成物が、
エポキシ樹脂;
シアン酸エステル化合物;及び
無機充填材
を含む、項目6に記載の樹脂積層体。
[8] 前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化されてなる、項目6又は7に記載の樹脂積層体。
[9] 前記樹脂絶縁層のめっきピール強度が、0.4kN/m以上である、項目1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
[10] 多層プリント配線板を製造する方法であって、
基材と基材上に形成された導電回路とを有する回路基板に、項目1〜9のいずれか一項に記載の樹脂積層体を、前記回路基板の前記導電回路と前記樹脂積層体の前記樹脂絶縁層とが対向するように積層し、
レーザーにより前記樹脂積層体の前記レーザー減衰用の離型フィルム側から前記樹脂絶縁層まで貫通するビアホールを形成し、
前記離型フィルムを前記樹脂絶縁層から剥離する
ことを含む方法。
[11] 前記樹脂積層体が項目8に記載の樹脂積層体であると共に、
前記回路基板と前記樹脂積層体との積層後、ビアホールの形成前に、半硬化状態の前記樹脂絶縁層を全硬化させることを更に含む、項目10に記載の方法。
[12]レーザーが炭酸ガスレーザーである、項目10又は11に記載の方法。
[13] レーザーのエネルギーが、0.3mJ〜5mJである、項目12に記載の方法。
[14] 樹脂絶縁層に形成されるビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、項目10〜13のいずれか一項に記載の方法。
[15] 前記離型フィルムの剥離後、前記樹脂絶縁層の表面を粗化し、粗化表面にめっきにより導体層を形成し、導体層をパターニングして回路を形成することを更に含む、項目10〜14の何れか一項に記載の方法。
[16] 項目10〜15のいずれか一項に記載の方法により得られる多層プリント配線板。
[17] 基材と前記基材上に形成された導電回路とを有する回路基板、及び、当該回路基板に積層された項目1〜9のいずれか一項に記載の樹脂積層体の樹脂絶縁層を含む多層プリント配線板であって、前記樹脂絶縁層がレーザーにより形成されたビアホールを有するとともに、当該ビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂積層体に対し、適切な出力エネルギーを選択して、レーザー減衰用の離型フィルムを付けた状態で、当該離型フィルムの側から、レーザーにてビアホールを形成すると、レーザー減衰用の離型フィルムにより、低エネルギー強度のレーザーを減衰又はカットオフすることができる。それにより、樹脂絶縁層にはトップ径が小さく、かつトップ径とボトム径との差が小さいビアホールを形成することが可能になる。したがって、本発明の樹脂積層体を回路基板に積層し、ビアホールを形成することにより、小径かつ導電信頼性の高いビアホールを含む多層プリント配線板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、炭酸ガスレーザーのレーザー強度分布を示す模式図である。
図2図2Aは、厚さ20μmの樹脂絶縁層からなる樹脂板に対し、レーザー加工した後の樹脂板の断面図を示す。図2Bは、厚さ20μmの樹脂絶縁層と厚さ100μmの離型フィルムとを含む樹脂積層体に対し、離型フィルム側からレーザー加工した後の樹脂積層体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1の態様は、微細ビアホール形成用の樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層に積層されたレーザー減衰用の離型フィルムとを含むプリント配線板用樹脂積層体に関しており、ここで、離型フィルムの厚さが50μm超、180μm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の樹脂積層体中の樹脂絶縁層を構成する樹脂の種類としては、プリント配線板の製造に用いられる樹脂であって、レーザー(好ましくは炭酸ガスレーザー)を用いることにより、微細なビアホールを形成可能である絶縁性の樹脂であれば任意の樹脂であってよい。レーザーを用いた際に形成される穴の大きさは、樹脂の組成には通常大きく影響されることはない。
【0013】
本発明では、樹脂絶縁層に形成される微細ビアホールとは、ビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下であるビアホールをいう。導電信頼性を高める観点から、トップ径とボトム径との差が小さいほど好ましく、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。導体配線の微細化の観点から、トップ径は、小さいほど好ましく、例えば30μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。一方で、導電信頼性を高める観点から、トップ径は通常、15μm以上が好ましい。
【0014】
樹脂絶縁層の厚さは、上で規定されたビアホールのトップ径、並びにビアホールのトップ径とボトム径の差を達成できる限りにおいて任意の厚さを選択することができる。樹脂絶縁層の厚さの上限は、トップ径とボトム径との差が10μm以下であるビアホールを形成する観点から、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。一方で、絶縁層の厚さの下限は、絶縁層の絶縁信頼性の観点から、3μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。
【0015】
プリント配線板の層間接続で必要となるビアホールの大きさは、配線の微細化と高密度化のため、より微細であることが望ましい。微細ビアホールを用いたプリント配線板では、配線板上に形成される配線自体も微細化することが求められる。高密度な微細配線を形成する方法としてアディティブ法やセミアディティブ法が良く知られており、これらの方法では微細配線を無電解めっきや電解めっきで形成している。しかしながら、配線を微細化した場合、絶縁層と配線の密着面積が小さくなるため、配線が剥がれやすくなるという問題が生じうる。したがって、配線の微細化と高密度化の観点から、より微細なビアホールを形成する場合には、樹脂絶縁層がより高いめっきピール強度を有する事が望ましい。
【0016】
プリント配線板の製造に当たり、樹脂絶縁層に形成されためっきの剥離を防止する観点から、樹脂絶縁層のめっきピール強度が0.4kN/m以上であることが好ましく、より好ましくは0.5kN/m以上である。めっきピール強度は、樹脂絶縁層の表面粗さに応じて変化する。上で記載しためっきピールの範囲は、粗化処理前又は粗化処理後のいずれのめっきピール強度の範囲であってもよいが、好ましくは粗化処理後のめっきピール強度の範囲を意味する。
【0017】
[離型フィルム]
従来、離型フィルムは、樹脂絶縁層を、導電回路を有する回路基板に積層し、加熱加圧する際において、加圧手段に対する接着を防止するために通常使用されてきた。この場合、樹脂積層体が回路基板に接着した後に、離型フィルムは剥離され、樹脂絶縁層に対してさらに、表面の粗化処理が行われて、粗化表面にめっきにより導体層を形成し、導体層をパターニングして回路が形成される。一方、本発明の態様では、離型フィルムは、加圧手段に対する接着の防止の用途の他に、さらにレーザー減衰用途を有する。
【0018】
本発明において、レーザー減衰とは、レーザーにおけるレーザー強度の分布において、樹脂絶縁層の孔断面のテーパーの原因となると考えられる低強度のレーザーを遮断又は減衰することをいう。レーザーの強度分布は、通常、ガウシアン分布を取っている(図1)が、ビーム径を細くするマスク(小さい穴)を経由する際、光が干渉し、干渉縞が生じる。このような干渉縞の部分を含む低強度の分布に相当するレーザーであっても、樹脂絶縁層が一部削れてしまい、テーパーを形成する原因となりうる(図2A)。したがって、本発明のレーザー減衰用の離型フィルムは、理論に限定されることを意図するものではないが、例えばレーザー強度の分布において、干渉縞の部分を含む低強度の分布のレーザーを減衰又は遮断することにより、樹脂絶縁層に形成される孔のテーパーを最小限にすることができる。遮断又は減衰されるレーザー強度は、レーザー減衰用の離型フィルムの厚さに応じて変化し、当業者であれば、微細なビアホール形成に適したレーザー減衰用離型フィルムの厚さを適宜選択することができる。
【0019】
本発明のレーザー減衰用の離型フィルムは、理論に限定されることを意図するわけではないが、レーザー強度分布のうち、低強度側に広がって分布するレーザーによる樹脂絶縁層の掘削を防止することにより、樹脂絶縁層に形成された孔のテーパーを少なくすることができる。したがって、本発明のレーザー減衰用の離型フィルムは、レーザー強度分布における低強度のレーザーによる樹脂絶縁層の掘削を防止するのに十分な厚さであることが必要とされ、その厚さは、所望のレーザー遮断又は減衰を達成する観点から、50μm超が好ましい。より好ましくは60μm超、さらに好ましくは70μm超である。一方で厚さが厚くなると、貫通孔の形成のためレーザーの出力を高めることが必要となり、その場合、孔のトップ径が大きくなってしまうことから好ましくなく、この点から、離型フィルムの厚さの上限としては、180μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0020】
レーザー減衰用の離型フィルムは、レーザーの減衰と、樹脂絶縁層の熱硬化後の剥離が可能であれば、任意のフィルムであってよく、例えばポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)が好ましい。また、レーザー減衰用の離型フィルムは、ブラックカーボン等のレーザー吸収性成分を含むものを使用してもよい。なお、離型フィルムには、熱硬化性樹脂組成物層の加熱硬化後に離型フィルムを剥離可能とするために、その熱硬化性樹脂組成物層の被形成面に離型層を設けてもよい。離型層に使用する離型剤としては、熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化した後に離型フィルムが剥離可能であれば特に限定されず、例えば、シリコーン系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂積層体は、当業者に公知の方法で製造することができ、例えば有機溶剤に熱硬化性樹脂組成物を溶解させた樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて、支持フィルム上に塗布し、加熱あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。樹脂積層体は、回路基板に積層させて硬化させることから、半硬化状態であることが好ましい。
【0022】
[樹脂絶縁層]
本発明の樹脂絶縁層に用いられる樹脂としては、プリント配線板の絶縁層に用いられる樹脂であれば特に限定されないが、耐熱性、絶縁性、めっき密着性の観点から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、二重結合付加ポリフェニレンエーテル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
中でも、優れたピール強度を有する樹脂絶縁層を提供する観点から、エポキシ樹脂とシアン酸エステル樹脂の混合物が好ましく、さらにビスマレイミド樹脂も添加されていることが好ましい。
本発明の樹脂絶縁層に用いられる樹脂組成物には、例えばエポキシ樹脂の硬化を行うため、硬化剤を用いることが好ましい。
また、硬化剤を使用する際には必要に応じ硬化速度を適宜調整するために硬化促進剤を併用することも可能である。
さらに、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、低熱膨張の観点から無機充填材を含むことが好ましい。
【0023】
[エポキシ樹脂]
前記樹脂絶縁層の熱硬化性樹脂として用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中に2以上のエポキシ基を有するものであればその種類は限定されず、従来公知の任意のエポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂の例としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン4官能型エポキシ樹脂、キシレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。これらの中でも特にめっき銅付着性と難燃性の観点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン4官能型エポキシ樹脂、キシレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂であることが特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0024】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば式(1)で表される構造を有するものがあり、ナフタレン4官能型エポキシ樹脂としては、例えば式(2)で表される構造を有するものがあり、キシレン型エポキシ樹脂としては、例えば式(3)で表される構造を有するものがあり、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば式(4)で表される構造を有するものがある。
【0025】
【化1】
(式中、n1は1以上の整数を示す。)
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
(式中、n2は1以上の整数を示す。)
【0028】
【化4】
(n3は平均値として1〜6の数を示し、Xはグリシジル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基/グリシジル基の比率は0.05〜2.0である。)
【0029】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、制限されるものではないが、硬化樹脂の靱性発現の観点から、通常250以上、中でも300以上であることが好ましく、また、未硬化樹脂の塗布性及び硬化樹脂の耐熱性を向上させる観点から、通常5000以下、中でも3000以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂絶縁層に用いられる樹脂組成物におけるエポキシ化合物の含有量は特に限定されないが、耐熱性及び硬化性の観点から樹脂組成物中の樹脂固形分のうち、20〜80質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲が特に好適である。
【0031】
[マレイミド化合物]
その他の成分として、マレイミド基を有するマレイミド化合物、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミドが樹脂絶縁層を構成する樹脂組成物に用いられてもよく、これらのマレイミド化合物は、絶縁層の吸湿耐熱性を向上させる。なお、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどの形で配合する事もでき、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0032】
[硬化剤]
硬化剤としては、上述の熱硬化性樹脂の硬化剤として通常使用されているものであれば、特に限定されない。例としては、フェノール化合物、ポリフェノール化合物、シアン酸エステル化合物、活性エステル化合物、ジシアンジアミド、カルボン酸アミド、アミン化合物、各種酸無水物、ルイス酸錯体等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。硬化剤を使用する場合、その使用比率は限定されるものではないが、例えば熱硬化性樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、通常1質量部以上、中でも5質量部以上、また、通常100質量部以下、中でも70質量部以下とすることが好ましい。また、熱硬化性樹脂と硬化剤との使用比率は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の種類によって異なるが、例えば、熱硬化性樹脂の反応性基(これをRF1と表す。)と、これと反応する硬化剤の反応性基数(これをRF2と表す。)との比(RF2/RF1)が、通常0.3以上、中でも0.7以上、また、通常3以下、好ましくは2.5以下となるような比率で用いることが好ましい。
【0033】
硬化剤として使用されるシアン酸エステル化合物は、耐薬品性、接着性などに優れた特性を有し、その優れた耐薬品性により、均一な粗化面を形成することが可能であるため、本発明における樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。シアン酸エステル化合物としては、一般に公知のものを使用でき、例えば式(5)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、式(6)で表されるノボラック型シアン酸エステル、式(7)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、ビス(3,5−ジメチル4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2、7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4、4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2、2’−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(3、5−ジメチル、4−シアナトフェニル)メタン等が挙げられる。
【0034】
この中でも式(5)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、式(6)で表されるノボラック型シアン酸エステル、式(7)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステルが難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物の熱膨張係数が低いことから特に好ましい。
【化5】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、n4は1以上の整数を示す。)
【0035】
【化6】
(式中、R2は水素原子又はメチル基を示し、n5は1以上の整数を示す。)
【0036】
【化7】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、n6は1以上の整数を示す。)
【0037】
硬化剤として使用される活性エステル化合物は、低誘電率、低誘電正接、低吸水率、低熱膨張率、高ガラス転移温度などに優れた特性を有し、電気特性及び高ガラス転移温度が優れることから本発明の樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。一般に公知のものを使用できるが、好適にはエピクロンHPC−8000(DIC株式会社)、エピクロンHPC−8000−65T(DIC株式会社)等が挙げられる。
【0038】
[無機充填材]
無機充填材は、当業界において通常使用されているものであれば特に限定されない。さらに、1種類、又は複数の種類の無機充填材が使用されてもよい。無機充填材としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、ベーマイト、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、アルミナ、タルク、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維、球状ガラス(EガラスやTガラス、Dガラスなどのガラス微粉末類)、などが挙げられる。
特に、好ましいめっきピールを有する樹脂絶縁層の樹脂構造体を提供する観点から、酸に可溶な無機充填材が好ましい。酸に可溶な無機充填材を含むことにより、絶縁層表面に低粗度な粗化面を形成でき、該粗化面に金属めっきを形成した際のめっき密着性に優れた樹脂絶縁層を得ることができる。これは、理論に限定されることを意図するものではないが、酸に可溶な無機充填材が、デスミア処理工程におけるアルカリ性の酸化剤による粗化工程では溶解せず、酸性の還元剤による中和工程で溶解することに加え、シアン酸エステル化合物を用いた場合に、高い耐薬品性を有する樹脂構造体を提供でき、それによって、アルカリ性の酸化剤による粗化工程においても酸に可溶な無機充填材が脱落しない効果によるものである。
【0039】
本発明に使用される酸に可溶な無機充填材としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが挙げられる。これらは絶縁層表面のデスミア処理において中和液に溶出し、均一な粗化面を形成してめっきピール強度を向上させる効果がある。具体的には、水酸化マグネシウムとしてタテホ化学工業(株)製のエコーマグZ−10、エコーマグPZ−1、神島化学工業(株)製のマグシーズN、マグシーズS、マグシーズEP、マグシーズEP2−A、堺化学工業(株)製のMGZ−1、MGZ−3、MGZ−6R、協和化学工業(株)製のキスマ5、キスマ5A、キスマ5P等が挙げられる。酸化マグネシウムとしてタテホ化学工業(株)製のFNM−G、堺化学工業(株)製のSMO、SMO−0.1、SMO−S−0.5等が挙げられる。
【0040】
前記酸に可溶な無機充填材の平均粒子径としては、デスミア処理後に均一な表面粗度を得る観点から0.1〜2.0μmであることが好ましい。ここで平均粒子径とは、メジアン径(メディアン径)であり、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側の個数又は質量と小さい側の質量が全粉体のそれの50%をしめるときの粒子径で、一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0041】
本発明の樹脂絶縁層に用いられる樹脂組成物中における前記酸に可溶な無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、5〜150質量部であることが絶縁層表面の粗度の観点から好ましい。
【0042】
また、前記酸に可溶な無機充填材は、表面処理されたものであることが、吸湿耐熱性、耐薬品性の観点から好ましい。具体的には、シランカップリング剤によるシランカップリング処理、KBM−403処理、KBM−3063処理を行うことが好ましい。
【0043】
前記シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。また湿潤分散剤とは、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。例えばビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、180、161、BYK−W996、W9010、W903等の湿潤分散剤が挙げられる。
【0044】
[硬化促進剤]
硬化促進剤は任意成分であり、必要に応じ硬化速度を適宜調整するために樹脂組成物に添加される。これらはシアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂の硬化促進剤として公知であり一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これらの具体例として、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、ジメチルアミノピリジン、第3級アミン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0045】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
その他の成分として、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。さらに、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等のチョップドストランドもしくはミルドファイバー、消泡剤、レオロジー調整剤、難燃剤、充填材、重合防止剤、顔料、染料、カップリング剤、イオン補足剤、離型剤等が挙げられる。これらその他の成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0047】
[各成分の使用比率]
本発明の樹脂積層体の製造時における各成分の使用比率は、限定されるものではないが、例えば以下のとおりである。
【0048】
硬化剤としてシアン酸エステル化合物を用いる場合、シアン酸エステル化合物とエポキシ樹脂は、樹脂組成物中のシアン酸エステル化合物のシアネート基数とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比(CN/Ep)が0.7〜2.5で配合することが好ましい。CN/Epが0.7〜2.5の範囲であれば良好な難燃性と硬化性を得ることができる。
【0049】
[樹脂構造体の製法]
本発明の樹脂構造体は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、任意により無機充填材と、任意により硬化促進剤と、任意によりその他の成分とを含む硬化性樹脂組成物を調製し、斯かる硬化性樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化物を形成した後、得られた樹脂硬化物の少なくとも一の表面に表面粗化処理を施すことを含む製法により製造される。
【0050】
硬化性樹脂組成物を調製する手法は制限されず、エポキシ樹脂と、硬化剤と、任意により無機充填材と、任意により硬化促進剤と、任意によりその他の成分とを均一に混合することが可能な手法であれば、任意の手法を利用可能である。例としては以下が挙げられる。
【0051】
(i)エポキシ樹脂を反応器に導入し、エポキシ樹脂が固体の場合は適当な温度で加熱して液体にし、そこに任意により無機充填材を加えて完全に溶解させ、そこに硬化剤及び必要に応じて硬化促進剤を加えて液体状で均一に混合し、更に必要に応じて脱泡処理して硬化性樹脂組成物を調製する方法。
(ii)ミキサー等を用いて、エポキシ樹脂、硬化剤、必要に応じて無機充填材、及び必要に応じて添加される硬化促進剤やその他の成分を均一に混合した後、熱ロール、二軸押出機、ニーダー等を使用して溶融混練して硬化性樹脂組成物を調製する方法。
【0052】
(iii)エポキシ樹脂、硬化剤、必要に応じて無機充填材及び必要に応じて添加される硬化促進剤やその他の成分を、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン等の溶剤に溶解してワニス状の硬化性樹脂組成物を調製する方法。
【0053】
なお、エポキシ樹脂と必要に応じて無機充填材の混合物に、硬化剤を加えると硬化反応が開始するので、硬化剤の添加した後の工程はできるだけ短時間で迅速に行なうことが好ましい。
【0054】
硬化性樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化物を形成する手法も制限されず、従来から採用されているエポキシ樹脂組成物の硬化方法を任意に選択して用いることが可能である。斯かる硬化方法の例としては、熱硬化法、エネルギー線硬化法(電子線硬化法、紫外線硬化法等)、湿気硬化法等が挙げられるが、熱硬化法が好ましい。
【0055】
具体的に、硬化性樹脂組成物が常温で固体状である場合は、例えば粉砕、打錠後に、トランスファー成形、コンプレッション成形、インジェクション成形等の従来公知の成形方法で硬化成形することにより、樹脂硬化物(硬化した成形品)を製造することができる。
【0056】
一方、硬化性樹脂組成物が常温で液状やワニス状を呈する場合は、例えば硬化性樹脂組成物を型に注いだり(成形)、容器に注いだり(ポッティング等)、基材上に塗布したり(積層)、繊維(フィラメント)等に含浸させたり(フィラメントワイディング等)する等の適当な方法で施した後、加熱硬化させる等の手法により、樹脂硬化物を得ることができる。また、常温で液状やワニス状の硬化性樹脂組成物は、必要であれば、注型、ポッティング、含、塗工、繊維への含浸等を行った後、加熱や乾燥を行って半硬化状態(Bステージ)にすると、タック性が低減して作業性を向上させることができる。また、ワニス状を呈する本発明の硬化性樹脂組成物は、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の塗工装置を使用してキャリアフィルムに塗工し、乾燥し、硬化させたフィルム状に成形することもできるし、真空脱泡して使用することもできる。
【0057】
硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化温度および硬化時間は、エポキシ樹脂や硬化剤の種類等に応じて異なり得るが、例えば、硬化温度20〜250℃、硬化時間1〜24時間の条件等が採用される。
【0058】
[保護フィルム]
本発明の樹脂積層体は、樹脂絶縁層上のレーザー減衰用フィルムの反対側に積層された保護フィルムを含んでもよい。保護フィルムは、回路基板への積層を行うまでの間、樹脂積層体の流通過程において、ほこりやゴミの付着を防止すると共に、樹脂絶縁層の表面を物理的ダメージから守り、樹脂絶縁層を保護することができる。このような保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、PET、PEN等のポリエステル、PC、ポリイミド等のフィルムを挙げることができる。なお、保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理の他、離型処理が施してあってもよい。保護フィルムの厚みは、任意であってよいが、例えば5〜30μmの範囲である。レーザー減衰用の離型フィルムとの区別を付けるため、保護フィルムには、着色がされていてもよいし、保護フィルムである旨の記載があってもよい。
【0059】
[プリント配線板の製造方法]
本発明の別の態様では、本発明の樹脂積層体を用いた多層プリント配線板を製造する方法に関する。この方法は、基材と基材上に形成された導電回路とを有する回路基板に、本発明の樹脂積層体を、前記回路基板の前記導電回路と前記樹脂積層体の樹脂絶縁層とが対向するように積層する工程を含む。半硬化状態の樹脂積層体を用いた場合には、積層後に全硬化工程を含んでもよい。熱硬化性樹脂からなる樹脂絶縁層を熱硬化する作業は従来の方法に準じて行うことができる。例えば、回路基板の片面または両面に樹脂積層体を、樹脂絶縁層と回路基板とが対向するように重ね、SUS鏡板等の金属板を用いて、加熱および加圧し、積層プレスを行うことにより、全硬化されてもよい。この際の条件は、本技術分野で一般に使用されており、熱硬化性樹脂を硬化できる条件であればよく、例えば5〜40kgf/cm2の圧力、120〜180℃の温度、20〜100分のプレス時間で行うことができる。加熱および加圧は、加熱されたSUS鏡板等の金属板をプラスチックフィルム側からプレスすることにより行うことができるが、金属板を直接プレスするのではなく、回路基板の回路凹凸に接着シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスを行うのが好ましい。積層工程は、真空ラミネーターを使用して行うこともできる。この場合、樹脂積層体を、減圧下で、加熱および加圧し、回路基板に樹脂積層体をラミネートする。ラミネートの条件は、分野で一般に使用されている条件であればよく、例えば70〜140℃の温度、1〜11kgf/cm2の範囲の圧力、並びに20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、ラミネートされた接着フィルムの平滑化を行ってもよい。上記ラミネート工程および平滑化工程は、市販されている真空ラミネーターによって連続的に行うことができる。ラミネート工程の後、または平滑化工程の後、熱硬化工程を行うことができる。熱硬化工程は、樹脂組成物を熱硬化し、絶縁層を形成する。熱硬化条件は熱硬化性樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が170〜190℃、硬化時間が15〜60分である。
【0060】
さらに本発明の多層プリント配線板の製造方法では、積層された回路基板と樹脂積層体に対し、樹脂積層体のレーザー減衰用の離型フィルム側からレーザーを照射する工程を含む。レーザーの照射により、樹脂絶縁層を貫通する微細なビアホールを形成することができる。この微細なビアホールの大きさは、好ましくはビアホールのトップ径が30μm以下であり、トップ径とボトム径との差が10μm以下である。
【0061】
照射するレーザーの種類は制限されない。例としては炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。中でも炭酸ガスレーザーが好ましい。
照射する炭酸ガスレーザーには、一般に9.2〜10.8μmの波長のレーザーが使用される。また、ショット数は、1回又は複数回行われてもよいが、レーザー減衰用の離型フィルムのレーザー減衰効果を発揮するため、好ましくは1回であり、複数回行われる場合であっても、2回目以降は、出力を減じたクリーニングショットであることが好ましい。炭酸ガスレーザーの出力エネルギーは、当業者であれば、樹脂絶縁層の厚さ、レーザー減衰用の離型フィルムの厚さ、及び所望の孔径に応じて適宜設定することができる。通常、樹脂絶縁層の厚さ及びレーザー減衰用の離型フィルムの厚さが厚くなるほど、必要とされる炭酸ガスレーザーの出力エネルギーは高くなる。一方で、炭酸ガスレーザーのエネルギーが低すぎると、加工性の低下により、ボトム径がトップ径に比べて小さい、テーパーの強い形状となる。したがって、厚さ50μm超のレーザー減衰用離型フィルムを用いる観点及び/又はトップ径とボトム径との差を10μm以下にする観点から、出力エネルギーは、例えば0.3mJ以上、中でも0.6mJ超、好ましくは0.8mJ以上である。一方で、トップ径を30μm以下に抑える観点から、出力エネルギーは、5mJ以下、より好ましくは3mJ以下である。炭酸ガスレーザーのパルス幅は特に限定されず、0.5μs〜100μs程度のパルスまで広い範囲で選択可能であるが、トップ径を30μm以下に抑える観点から、上限は30μs以下が好ましく、より好ましくは15μs以下である。
【0062】
本発明の多層プリント配線板を製造する方法は、レーザー照射によるビアホールの形成後、離型フィルムを樹脂層から剥離する工程をさらに含んでもよい。離型フィルムの剥離後、樹脂絶縁層の表面に対し、粗化を行う粗化処理工程が行われてもよい。表面粗化処理の手法も制限されず、エポキシ樹脂と、必要に応じて無機充填材の種類に応じて適宜選択すればよいが、紫外線照射処理、プラズマ処理、溶媒処理等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で施してもよく、二種以上を任意の組み合わせで施してもよい。
【0063】
紫外線照射処理は、樹脂硬化物の表面に対して、紫外線を照射して行う。紫外線の波長は限定されないが、通常は20nm以上、中でも50nm以上、更には100nm以上、また、通常は400nm以下、中でも350nm以下、更には300nm以下の範囲が好ましい。紫外線の照射時間も限定されないが、通常2分以上、中でも5分以上とすることが好ましく、また、通常240分以下、中でも120分以下とすることが好ましい。
【0064】
プラズマ処理は、樹脂硬化物の表面に対して、プラズマを照射して行う。プラズマの種類は任意である。例としては酸素(酸素プラズマ)、アルゴン(アルゴンプラズマ)、空気(エアプラズマ)、窒素(窒素プラズマ)等のプラズマが挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。プラズマの照射時間も限定されないが、通常2分以上、中でも5分以上とすることが好ましく、また、通常240分以下、中でも120分以下とすることが好ましい。
【0065】
溶媒処理としては、限定されるものではないが、例えば酸性溶媒による酸化処理、アルカリ性溶媒による還元処理等が挙げられる。中でも、溶媒処理としては、膨潤工程、表面粗化及びスミア溶解工程、及び中和工程からなる溶媒処理を実施することが好ましい。
【0066】
膨潤工程は、膨潤剤を用いて表面絶縁層を膨潤させることにより行う。膨潤剤としては、表面絶縁層の濡れ性が向上し、次の表面粗化及びスミア溶解工程において酸化分解が促進される程度にまで表面絶縁層を膨潤させることができるものであれば、制限されない。例としては、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられる。
【0067】
表面粗化及びスミア溶解工程は、酸化剤を用いて行う。酸化剤としては、例えば過マンガン酸塩溶液等が挙げられ、好適な具体例としては、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。斯かる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、当該ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理やUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、サンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0068】
中和工程は、前工程で使用した酸化剤を還元剤で中和するものである。還元剤としては、アミン系還元剤が挙げられ、好適な具体例としては、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、ニトリロ三酢酸水溶液等の酸性還元剤が挙げられる。
【0069】
本発明の多層プリント配線板を製造する方法は、粗化処理後又は粗化処理を行わずに、樹脂絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成するめっき工程、及び形成された導体層に回路を形成する回路形成(パターニング)工程をさらに含んでもよい。これらの工程は、多層プリント配線板の製造に用いられている従来公知の各種方法に従って行うことができる。
【0070】
めっき工程は、例えば、粗化処理により凸凹が形成された絶縁層表面に無電解めっきと電解めっきを組み合わせた方法で導体層を形成するか、無電解めっきのみで導体層を形成することにより行われる。導体層としては、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金等の金属又はこれら金属の合金等で形成できるが、特に銅が好ましい。銅めっき層は、無電解銅めっきと電解銅めっきを組み合わせた方法か、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解銅めっきのみで導体層を形成することができる。
【0071】
回路形成工程は、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等が挙げられる。中でも、微細配線パターンを形成する観点からは、セミアディティブ法が好ましい。
【0072】
セミアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面に無電解めっき等により薄い導体層を形成した後、めっきレジストを用いて選択的に電解めっきを施し(パターンめっき)、その後めっきレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターン形成する手法が挙げられる。
【0073】
フルアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にめっきレジストを用いて予めパターン形成を行い、選択的に無電解めっき等を付着させることにより配線パターンを形成する手法が挙げられる。
【0074】
サブトラクティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にめっきにより導体層を形成した後、エッチングレジストを用いて選択的に導体層を除去することにより、配線パターンを形成する手法が挙げられる。
【0075】
めっきにより配線パターンを形成する際に、絶縁層と導体層との密着強度を向上させる観点から、めっきの後に乾燥工程を行うことが好ましい。セミアディティブ法によるパターン形成では、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて行うが、その際、無電解めっきの後と、電解めっきの後に、それぞれ乾燥を行うことが好ましい。無電解後の乾燥は、例えば80〜180℃で10〜120分に亘って行うことが好ましく、電解めっき後の乾燥は、例えば130〜220℃で10〜120分に亘って行うことが好ましい。
【0076】
本発明の多層プリント配線板の製造に用いる回路基板とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および/または導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう回路基板に含まれる。なお、導体層(回路)表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【実施例】
【0077】
[シアン酸エステル化合物の製造]
・合成例1 α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(式(8)の化合物)の合成:
【化8】
(式中、nの平均値は3〜4である。)
【0078】
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予め食塩水により0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76ml、及び塩化メチレン44mlを仕込んだ。
【0079】
この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、下記式(8’)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mlに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
【化9】
(式中、nの平均値は3〜4である。)
【0080】
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mlで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、上記式(8)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂のシアン酸エステル化合物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物)23.5gを得た。
【0081】
[樹脂組成物の作成]
エポキシ樹脂として、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−H、日本化薬(株)製)47.5質量部、更に第2のエポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂(HP4710、DIC(株)製)12.7質量部、シアン酸エステル化合物として、合成例1により得られた式(8)で表されるα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート当量:261g/eq.)のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略す場合がある。)溶液(不揮発分50質量%)51.4質量部(不揮発分換算で25.7質量部)、マレイミド化合物として、式(9)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300、大和化成(株)製)11.1質量部、硬化促進剤として2,4,5−トリフェニルイミダゾール(和光純薬製)のPMA溶液(不揮発分1質量%)300質量部(不揮発分換算で3.0質量部)及びオクチル酸亜鉛のMEK溶液(不揮発分1質量%)7質量部(不揮発分換算で0.07質量部)をMEKに溶解又は分散させた。さらに、無機充填材として、酸化マグネシウム(SMO−0.4、堺化学工業(株)製、平均粒子径0.4μm)125質量部を添加して、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して、ワニス(エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド化合物、無機充填材を含む樹脂組成物の溶液)を得た。
【化10】
(式中、R1〜4は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは平均値として1〜10の範囲である。)
【0082】
[樹脂積層体の作成]
得られたワニスを、離型層付きPETフィルムの離型面に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが8μm又は20μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、150〜180℃で3分間乾燥した。次いで、樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0083】
[樹脂絶縁層へのビアホールの形成]
接着フィルムを回路形成(回路導体厚18μm)された、510×340mmサイズ、厚さ0.2mmの銅張積層板の両面へ仮付けし、ニチゴーモートン(株)製真空ラミネーターにより、温度130℃、圧力10kgf/cm2、気圧5mmHg以下の条件で両面にラミネートし、さらに連続的に温度180℃、圧力10kgf/cm2の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いで、離型層付きPETフィルムが付いた状態で180℃、30分の条件で熱硬化させ、回路基板両面に絶縁層を形成した。室温まで冷却後、離型層付きPETフィルムを剥離せず、その上から三菱電機(株)製炭酸ガスレーザー装置(ML605GTWIII−H−5200U)により孔あけを行い、ブラインドビア(トップ径20〜30μmを想定)を形成した。なお、想定トップ径20〜30μmとするため、本例の離型層付きPETフィルムが接着した状態での孔あけにおけるマスク径は0.6mmを使用した。
【0084】
実施例1:総厚み75μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚み75μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例1の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0085】
実施例2:総厚み100μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが100μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例2の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0086】
実施例3:総厚みが125μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが125μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例3の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0087】
実施例4:総厚みが100μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが100μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが8μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例4の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0088】
実施例5:総厚みが100μmの離型層付きPENフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが100μmの離型層付きPENフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例5の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0089】
実施例6:無機充填材として酸化マグネシウムとシリカの併用
無機充填材として、酸化マグネシウム75質量部(SMO−0.4、堺化学工業(株)製、平均粒子径0.4μm)、シリカ(SFP−130MC)50質量部をワニスに配合した以外は、前記樹脂組成物と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を得た。
得られたワニスを使用し、レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが100μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の実施例6の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0090】
比較例1:総厚みが38μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが38μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の比較例1の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。(マスク径0.4mm)。
【0091】
比較例2:総厚みが50μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが50μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の比較例2の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。(マスク径0.4mm)。
【0092】
比較例3:総厚みが188μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが188μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の比較例3の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0093】
比較例4:総厚みが38μmの離型層付きPETフィルムの使用
レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚みが38μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが8μmとなるように均一に塗布し、表1の比較例4の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った(マスク径0.4mm)。
【0094】
比較例5:樹脂組成物としてめっきピール強度の低い樹脂組成物の使用
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−H、日本化薬(株)製)、及びナフタレン型エポキシ樹脂(HP4710、DIC(株)製)の代わりにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、三菱化学(株)製)60.2質量部、無機充填材を配合しない以外は、前記樹脂組成物と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を得た。
得られたワニスを使用し、レーザー減衰用の離型フィルムとして、総厚み75μmの離型層付きPETフィルムを使用し、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、表1の比較例5の欄に記載の加工エネルギーにて、孔あけを行った。
【0095】
湿式粗化処理と導体層めっき
実施例1〜6及び比較例1〜5でレーザー孔あけ後に離型層付きPETフィルムを剥離し、デスミア処理を兼ねた絶縁層の表面処理を実施した。表面処理は上村工業製のデスミア処理プロセス(膨潤:アップデスMDS−37、粗化:アップデスMDE−40およびアップデスELC−SH、中和:アップデスMDN−62)にて、膨潤60℃×5分、粗化70℃×20分、中和35℃×5分の工程を通すことで行った。上村工業製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2)にて、約0.5μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。比較例5は乾燥後、無電解銅めっき層に膨れが発生したため、その後の評価が実施できなかった。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。
【0096】
測定方法
1)ビアのトップ径、ボトム径測定
デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VHX−2000)にてブラインドビアの観察を行い、ビアのトップ径およびボトム径を3点近似円の直径で10箇所測定し、平均値を求めた。結果を表1に示した。
2)めっき銅接着力
めっき銅を施した積層板を準備し、めっき銅の接着力をJIS C6481に準じて3回測定して平均値を求めた。電解銅めっき後の乾燥で膨れたサンプルに関しては、膨れていない部分を用いて評価を行った。結果を表1に示した。
【表1】
【0097】
実施例2と比較例1について、ビアホールの形成後、樹脂積層体を切断し、ビアホールの切断断面を撮影した。結果を図2A(比較例1)及びB(実施例2)に示す。
【符号の説明】
【0098】
1 樹脂絶縁層
2 レーザー減衰用の離型フィルム
3 ビアホール
4 トップ径
5 ボトム径
6 テーパー
図1
図2