【課題を解決するための手段】
【0008】
問題になっている人工装置は、上述の種類の人工装置であり、メッシュ構造の拡張型管状フレーム及びこのフレームにマウントされた人工弁を含み、前記フレームは心房部、心室部、及びこれらの心房部と心室部の間に位置する弁輪部を含む。
【0009】
本発明によれば、
−前記心室部は、片側に大きなへこみを有し、前記弁輪部の反対側の該心室部の端から弁輪部に近接する該心室部のパーツまで縦方向に広がり、このへこみは約90〜140°の人工装置の周辺のセクターに広がっている;
−前記心房部は、人工装置の外側に向かって、前記弁輪部から該弁輪部の反対側の心房部の端に向かって大きく開き、前記弁輪部の側面に(少なくとも周辺のパーツに)外面から突き出すアンカー止めを含む;及び
−前記心室部は、実質的に球形または卵形であり、前記弁輪部の側面に(少なくとも周辺のパーツに)外面から突き出すアンカー止めを含む。
【0010】
したがって、前記へこみは、フレームのメッシュ構造を遮り、人工装置の心室部に非対称形を持たせる;このへこみは大動脈弁の近くに位置する心室の壁に向かって曲がるように意図されており、このゾーンは「僧帽弁−大動脈弁間の連続性」または「三尖弁−大動脈弁間の連続性」と呼ばれる。心室の壁の真向かいにメッシュ構造がなくなるため、大動脈弁手術を妨げ得る大動脈弁の右側の心室の壁に対する過剰な軸受のリスクが人工装置からなくなる。
【0011】
しかし、本発明者は、前記へこみに起因する心室の壁に対する人工装置の軸受表面の減少が、人工装置の移動のリスクを著しく増加させたため、心室の放出経路が妨害されると予測する;そこで、発明者は、関連するそれらのへこみを採用することで植え込み部分に人工装置の完全なアンカーが確保されると考え、その目的を達成するために、前記弁輪部に近接する前記心房部及び前記心室部にアンカー止めを配置して、治療される弁の弁輪の深さに挿入できるようにする必要があると考えた。
【0012】
心尖部アプローチを用いて人工装置を取り付ける場合、人工装置の心房部が最初に展開され、弁輪の心房パーツに逆らって運ばれる;この心房部のフレア形は、弁輪の心房パーツに対する幅広の軸受によく適している;ひとたび前記心房部が展開されると、この心房部からなる様々なアンカー止めを、カテーテル抜去時に弁輪の前記心房パーツに差し込んで、フレームの他の部分を遊離できる。結果として、植え込み部分に対する人工装置の優れた事前位置が確保される。カテーテルの連続抜去は、心室部の段階的な展開につながる;心室部の球形または卵形を考慮すると、前記展開によって前記心室部の壁の放射的な広がりが生じ、展開の初期から、前記心室部からなる様々なアンカー止めが弁輪の心室部に差し込まれるため、自然弁輪に対する人工装置の完全なロッキングが生じる。このロッキングは、心室部の球形または卵形が弁輪の前記心室部に対するフレームの閉鎖利用を許容する場合に一層効果的である。
【0013】
この同じ球形または卵形は、弁輪近くの心室の形状によく適したフレームの軸受、及び基本的な解剖学的構造に相反しないフレームの軸受を許容する。
【0014】
したがって、構築された人工装置は、適所に取り付けると、移動のリスクが非常に低く、取り付けが比較的簡単で、植え込み部分の形状によく適した形状を有している上に、大動脈弁の手術を妨げない人工装置を得るという上述の目的を完全に達成できる。
【0015】
本発明に記載の人工装置は経中隔(僧帽弁)アプローチまたは頸静脈もしくは大腿動脈(三尖弁)アプローチを用いてインプラントされ、この場合には、心室部のアンカー止めの挿入によって心室部が最初に展開され、その後に心房部のアンカー止めの挿入によって心房部が2番目に展開され、弁輪では上記の挙動が同時に起こることに注意する。
好ましくは、前記へこみは、約120°の人工装置の周辺のセクターに広がる。
【0016】
好ましくは、前記アンカー止めは、基部から先端の自由端に向かって人工装置の外側方向に伸びる曲線状の鍵爪の形である。
【0017】
したがって、構築されたアンカー止めから、効果的なアンカーが得られる。
【0018】
アンカー止めは、好ましくは、人工装置の全周辺に存在する;アンカー止めは、好ましくは、人工装置の全周辺に一定間隔で分布する。
【0019】
最初の可能性によると、前記心房部からなるアンカー止めは人工装置の真向かい(すなわち反対側)に位置し、前記心室部からなるアンカー止めは人工装置の縦方向に位置する。
【0020】
したがって、アンカー止めの様々な対によるクランプ効果によってアンカー化され、非常に効果的なアンカーとなる。これらの止め具の特殊性は、先端が互いに対して対称的に配置され「カニのはさみ」のような形を成していることから、弁輪組織をかみ、弁のフレームを安定化することである。心尖部アプローチの使用に伴う人工装置の展開中に、心房用のアンカー止めが最初に展開され弁輪組織を捉えることができ、その後に展開の流れの中で心室用のアンカー止めが次に展開され、弁輪内位置にアンカー止めを維持することで人工装置のアンカーが完全となる。
【0021】
したがって、提案される構造は、弁輪部周囲の組織に最初にかかる植え込み(アンカー止め)を許容し、次に弁輪に対する付加的な軸受が生じる。実際、鍵爪による捕捉システムは、使用するアプローチが要求する僧帽弁及び三尖弁の位置で、弁組織の捕捉を可能にし、金属構造の弁輪内軸受によって完成される。
【0022】
人工装置は、6対の心房用のアンカー止め及び心室用のアンカー止めを特に含む。
【0023】
2番目の可能性によると、人工装置の展開状態において:
−それぞれのアンカー止めは、実質的に直線の基部を有し、人工装置の縦軸に対して35〜55°の角度を形成する方向にある人工装置の部分から突き出し、前記基部に対して湾曲し、人工装置の実質的に円周方向に沿って配置された自由端部分を有する;
−心房用のアンカー止めの自由端部分は、隣接する心室用のアンカー止めの自由端部分に向かって、円周方向を囲むように配置されるが、この心房用のアンカー止めに対して角度が相殺されている;相対的に、心室用のアンカー止めの自由端部分は、隣接する心房用のアンカー止めの自由端部分に向かって、円周方向を囲むように配置されるが、この心室用のアンカー止めに対して角度が相殺されている。
【0024】
このアンカー止めの形が、治療される弁の弁輪に対する人工装置の効果的なアンカーにつながる。
【0025】
「心房用のアンカー止め」という表現は前記心房部に存在するアンカー止めを意味し、「心室用のアンカー止め」という表現は前記心室部に存在するアンカー止めを意味すると理解される。
【0026】
好ましくは、それぞれの基部が、人工装置の縦軸に対して約45°の角度を形成する方向に沿って突き出す。
【0027】
好ましくは、それぞれの止め具において、基部の長さが自由端部分の長さの約2〜3倍である。
【0028】
好ましくは、僧帽弁を治療する人工装置の場合、アンカー止めが人工装置のフレームの周辺で以下のように分散される:1つの止め具が植え込み後に前三角で見いだされる前記フレームのゾーンに位置し、1つの止め具が植え込み後に後三角で見いだされるフレームのゾーンに位置し、1つの止め具が植え込み後に僧帽弁の前交連で見いだされるフレームのゾーンに位置し、1つの止め具が植え込み後に僧帽弁の後交連で見いだされるフレームのゾーンに位置し、1つの止め具が植え込み後に僧帽弁の後弁輪の中央で見いだされるフレームのゾーンに位置し、1つの止め具が植え込み後に僧帽弁の前弁輪の中央で見いだされるフレームのゾーンに位置する。
【0029】
好ましくは、フレームのメッシュ構造は、前記アンカー止めが含まれる前記の心房部及び弁輪部、ならびに心室部に、メッシュ構造の角で互いが結合されるダイアモンド形のメッシュを含む。アンカー止めが上述の最初の可能性に基づく場合、アンカー止めの基部は人工装置の心房-心室方向におけるこれらのメッシュの反対側の角で形成されるメッシュ部分に結合され、これらのアンカー止めはメッシュのこれらの部分から突き出す。
【0030】
このメッシュ構造によって、フレームが弁輪の対応するパーツに対して効果的にかかり、前記弁輪内への前記アンカー止めの適切な挿入が確保される。
【0031】
好ましくは、フレームのメッシュ構造は、心室部のパーツにアンカー止めがなく、互いに対して頭−尾で配置される2つの隣接するメッシュを有する涙型のメッシュフレームを含む。
【0032】
このメッシュ構造は、フレームの前記心室部パーツに大きな順応性を持たせ、心臓の心室の壁に対する軸受に適合する。
【0033】
好ましくは、人工装置が僧帽弁の治療を目的とする場合、人工装置の心房部及び弁輪部は「角及び縁が丸いD」の形状の非円形断面を有する。
【0034】
「断面」という表現は、人工装置の縦軸と直角を成す人工装置のセクションを意味すると理解される。
【0035】
したがって、これらの心房部及び弁輪部は、僧帽弁の弁輪近くの心房及び該弁輪の形状によく適した形状を有している。
【0036】
好ましくは、人工装置の心房部は、人工装置のメッシュを覆う堅い壁を含む。この堅い壁は、特にポリエチレンテレフタラートで作られている場合、この部分と心臓壁の接触面が増加する膜またはスリーブを形成し、弁傍の漏出すなわち人工装置と心臓壁の間の漏出が減少する。
【0037】
限定されない例として、問題になっている人工装置の2つの可能性がある実施を示す添付の概略図を参考にして、本発明は十分に理解され、本発明の他の特徴及び利点が現れる。