特許第6551460号(P6551460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551460
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20190722BHJP
   E04F 19/08 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   E04H1/02
   E04F19/08 102J
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-103079(P2017-103079)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197473(P2018-197473A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 敦
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−074949(JP,A)
【文献】 特開2009−046925(JP,A)
【文献】 特開2016−079725(JP,A)
【文献】 特開2002−317564(JP,A)
【文献】 特開2016−003467(JP,A)
【文献】 SUVACO W-house,URL,<https://web.archive.org/web/20140625203751/https://suvaco.jp/project/Whouse> <https://suvaco.jp/project/Whouse>
【文献】 CASA ENTRE JARDINES,2018年 5月16日,URL,https://plantabajaestudio.com/portfolio-item/casa-entre-jardines/
【文献】 LDKをスキップフロアにするなら!2つの間取り計画と注意したいポイント,2016年12月28日,URL,https://reformoyakudatitai.com/archives/1402
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02,1/04
E04F 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の天井、壁及び床に囲まれた1つの空間と、前記天井、壁及び床と、から構成される屋内空間を備える住宅であって、
前記屋内空間は、
少なくともキッチンを有する第一領域と、
床面が前記第一領域よりも低い第二領域と、
床面が前記第二領域よりも低い第三領域と、を同一階に備え
前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域は、各々の床面から各々の天井面までの間に形成される前記空間の一部と、前記空間の一部に面する前記天井、壁及び床の一部と、によってそれぞれ構成され、各々他の2つの領域と隣接して繋がって形成されるとともに互いの領域間を行き来可能な回遊動線を形成されており、
前記第二領域及び前記第三領域は、リビングを有し、
平面視において一直線状の第一境界線を挟んで前記第一領域にそれぞれ隣接するとともに、前記第二領域と前記第三領域との境界に形成される第二境界線が前記第一境界線と略直交することで、前記第二領域及び前記第三領域が前記第一領域から一望して視認可能に形成され、
前記第二境界線には、
前記第二領域と前記第三領域とを行き来する前記回遊動線が形成されるとともに、
前記回遊動線を除いた前記第二境界線における1/2以上の領域に、前記第二領域の天井及び前記第三領域の天井に達しない高さを有する壁体が前記第二境界線に沿わせて配置され、
前記第三領域には、前記壁体と平行し、前記第三領域の天井まで達する他の壁体が形成されることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記第一領域は、ダイニングをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記第一領域は、前記第二領域及び前記第三領域よりも高い天井を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の住宅。
【請求項4】
前記第一領域の天井は、吹抜を有することを特徴とする請求項3に記載の住宅。
【請求項5】
前記第二領域は、前記第三領域の天井と同一の高さの天井を有し、
前記第二領域の天井面及び前記第三領域の天井面から下方に突出する梁が、それぞれの天井面を横断することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の住宅。
【請求項6】
前記壁体は、物品を収納可能な家具であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の住宅。
【請求項7】
前記第一領域の床面は、前記第二領域の床面よりも450mm〜600mm高く、
前記第二領域の床面は、前記第三領域の床面よりも300mm〜400mm高く形成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の住宅。
【請求項8】
屋外に設けられるテラスをさらに備え、
前記第二領域及び前記第三領域は、前記テラスに隣接し、
前記テラスの床面は、前記第三領域の床面よりも高く、且つ、前記第二領域の床面と同一の高さで形成され、
前記テラスは、掃出し窓によって前記第二領域及び前記第三領域と隔てられていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の住宅。
【請求項9】
前記テラスは、前記第二領域及び前記第三領域を挟んで前記第一領域と対向して配置され、
前記掃出し窓は、透明な窓面を有することを特徴とする請求項に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の床よりも高い床を有するキッチンを備えた屋内空間に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より知られている住宅では、居住者や来客者の集うリビングを中心とした配置計画を行っていることが多く、他の領域はリビングの付随的な位置づけとなることが多かった。特に炊事を行うキッチンは、リビングと隔離されたり、住宅内の目立たない位置に配置されることが多く、日常的に使用する居室であるにも関わらず閉鎖的な空間となることが多かった。また、このような画一的な構成の住宅では、多様化するライフスタイルに適合した居心地のよい居住環境を形成することが難しく、これらの問題を解決するためにキッチン・ダイニング・リビングをひとつのコミュニティスペースとして捉える提案がされている。
【0003】
特許文献1に記載の住宅は、ダイニングキッチンゾーンとリビングゾーンとを間仕切らずにひとつに繋げて二世帯住宅の居住者が集う共用部を構成している。この発明では、リビングゾーンに設けられる第一集合スペースの床面を他の領域の床面よりも低い位置に設けて段差を形成しており、この段差によって第一集合スペースと他の領域とを区別しながらも共用部全体の一体感を生み出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−74949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、ダイニングキッチンゾーンとリビングゾーンとの一体感は向上するものの、第一集合スペースの床高さのみを他の領域の床高さと異ならせているため、意識が自然と第一集合スペースに向かう構成となっており、ダイニングキッチンゾーン自体はリビングスペースに付随する変化に乏しい空間となってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、キッチン、ダイニング、及びリビングの一体感を向上させつつ、明るく開放的なキッチン空間を備える変化に富んだ屋内空間を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の住宅は、室内の天井、壁及び床に囲まれた1つの空間と、前記天井、壁及び床と、から構成される屋内空間を備える住宅であって、前記屋内空間は、少なくともキッチンを有する第一領域と、床面が前記第一領域よりも低い第二領域と、床面が前記第二領域よりも低い第三領域と、を同一階に備え、前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域は、各々の床面から各々の天井面までの間に形成される前記空間の一部と、前記空間の一部に面する前記天井、壁及び床の一部と、によってそれぞれ構成され、各々他の2つの領域と隣接して繋がって形成されるとともに互いの領域間を行き来可能な回遊動線を形成されており、前記第二領域及び前記第三領域は、リビングを有し、平面視において一直線状の第一境界線を挟んで前記第一領域にそれぞれ隣接するとともに、前記第二領域と前記第三領域との境界に形成される第二境界線が前記第一境界線と略直交することで、前記第二領域及び前記第三領域が前記第一領域から一望して視認可能に形成され、前記第二境界線には、前記第二領域と前記第三領域とを行き来する前記回遊動線が形成されるとともに、
前記回遊動線を除いた前記第二境界線における1/2以上の領域に、前記第二領域の天井及び前記第三領域の天井に達しない高さを有する壁体が前記第二境界線に沿わせて配置され、前記第三領域には、前記壁体と平行し、前記第三領域の天井まで達する他の壁体が形成されることを特徴としている。
【0008】
本発明の住宅は、前記第一領域が、ダイニングをさらに有することを特徴としている。
【0009】
本発明の住宅は、前記第一領域は、前記第二領域及び前記第三領域よりも高い天井を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の住宅は、前記第一領域の天井、吹抜を有することを特徴としている。
【0011】
本発明の住宅は、前記第二領域、第三領域の天井と同一の高さの天井を有し、前記第二領域の天井面及び前記第三領域の天井面から下方に突出する梁が、それぞれの天井面を横断することを特徴としている。
【0013】
本発明の住宅は、前記壁体、物品を収納可能な家具であることを特徴としている。
【0014】
本発明の住宅は、前記第一領域の床面、前記第二領域の床面よりも450mm〜600mm高く、前記第二領域の床面は、前記第三領域の床面よりも300mm〜400mm高く形成されることを特徴としている。
【0015】
本発明の住宅は、屋外に設けられるテラスをさらに備え、前記第二領域及び前記第三領域は、前記テラスに隣接し、前記テラスの床面は、前記第三領域の床面よりも高く、且つ、前記第二領域の床面と同一の高さで形成され、前記テラスは、掃出し窓によって前記第二領域及び前記第三領域と隔てられていることを特徴としている。
【0016】
本発明の住宅は、前記テラス、前記第二領域及び前記第三領域を挟んで前記第一領域と対向して配置され、前記掃出し窓は、透明な窓面を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の住宅によると、キッチンを有する第一領域と、床面が第一領域よりも低い第二領域と、床面が第二領域よりも低い第三領域と、を有し、第一領域、第二領域、及び第三領域は、それぞれ繋がって形成されるとともに互いの領域間を行き来可能に配置される屋内空間なので、各領域同士の一体感を保持させつつも意識を自然とキッチンを有する第一領域に向かわせることができ、また、変化に富んだ面白みのある空間を構築することができる。さらに、第一領域から第二領域及び第三領域を視認することができるので、キッチンで炊事を行う際に、第二領域及び第三領域を眺めながら家事を行うことができ、開放的なキッチン空間を形成することができる。
【0018】
本発明の住宅によると、第一領域はダイニングを有し、第二領域及び第三領域はリビングであるので、従来リビングを中心としがちな居住者間或いは居住者と来客者間のためのコミュニティスペースを、キッチン及びダイニングを備える第一領域を中心としたコミュニティスペースとすることができ、面白みのある居住空間とすることができる。また、第二領域のリビングと第三領域のリビングは、それぞれ床の高さを異ならせているので、一方のリビングを来客時の応接を行う空間とし、他方のリビングを子供達の遊ぶ空間にするなど、状況に応じて2つのリビングを使い分けることができる。さらに、キッチンで家事を行いながら、リビングで遊ぶ子供や寛ぐ家族の様子を見守ることができ、視認性のよい開放的なキッチン空間を構築することができる。
【0019】
本発明の住宅によると、第一領域は、第二領域及び第三領域よりも高い天井を有しているので、第二領域及び第三領域から第一領域を見た場合に、自然と第一領域を見上げることになり、第一領域の開放感を強調することができる。
【0020】
本発明の住宅によると、第一領域の天井は吹抜を有しているので、キッチンを有する第一領域を明るく開放的な空間とすることができる。
【0021】
本発明の住宅によると、第二領域は、第三領域の天井と同一の高さの天井を有し、第二領域の天井面及び第三領域の天井面から下方に突出する梁が、それぞれの天井面を横断するので、第二領域及び第三領域を迫力のある変化に富んだ空間とすることができる。
【0022】
本発明の住宅によると、平面視において、第二領域及び第三領域は、第一領域と他の領域の境界に形成される複数の境界線のうちの一つである第一境界線に隣接して配置され、第二領域と第三領域との境界に形成される第二境界線は、第一境界線と直交し、第二領域の天井及び第三領域の天井に達しない高さを有する壁体は、該壁体の面内方向を第二境界線に沿わせて配置されるので、壁体に視界を遮られることなく、第一領域から第二領域及び第三領域を見渡すことができる。また、壁体によって、第二領域と第三領域の一体感を保持しつつ各領域を緩やかに仕切ることができる。
【0023】
本発明の住宅によると、壁体は物品を収納可能な家具であるので、家具としての機能を有しながら第二領域と第三領域とを緩やかに仕切ることができる。
【0024】
本発明の住宅によると、第一領域の床面は、第二領域の床面よりも450mm〜600mm高く、第二領域の床面は、第三領域の床面よりも300mm〜400mm高く形成されるので、最も高い位置に配置される第一領域は、開放的な空間とすることができ、最も低い位置に配置される第三領域は、他の領域に囲まれるような篭った雰囲気の空間とすることができる。したがって、各領域同士の一体感を保持しつつもそれぞれの領域が異なる雰囲気を持った面白みのある屋内空間を構築することができる。
【0025】
本発明の住宅によると、第二領域及び第三領域は、屋外に設けられるテラスに隣接し、テラスの床面は、第三領域の床面よりも高く、且つ、第二領域の床面と同一の高さで形成され、テラスは、掃出し窓によって第二領域及び第三領域と隔てられている。したがって、掃出し窓を通じて第二領域とテラスとを自由に行き来できるとともに、テラスと第三領域の境界に形成される段差に、テラスから第三領域の方向を向いて座ることができる。このような構成とすることによって、第二領域及び第三領域を通じてテラスと屋内空間との一体的な利用を図ることができ、屋内空間を開放的な広がりのある空間とすることができる。
【0026】
本発明の住宅によると、テラスは、第二領域及び第三領域を挟んで第一領域と対向して配置され、掃出し窓は、透明な窓面を有するので、第一領域から第二領域及び第三領域を眺めた時に、屋外に位置するテラスまでを見渡すことができ、屋内空間を開放的な居心地のよい空間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】住宅の配置図兼1階平面図。
図2図1のA−A断面図。
図3図1のB−B断面図。
図4図1のC−C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、屋内空間1の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。なお、屋内空間1は、建築物内に設けられる室内空間である。屋内空間1が設けられる建築物は特に限定されないが、住宅内に設けられるのが好適である。ここでは、住宅内に設けられる場合について説明を行う。
【0029】
なお、本発明において「右」とは図1における右方向を指し、「左」とは図1における左方向を指し、「上」とは図1における上方向を指し、「下」とは図1における下方向を指すものとする。また、本願において「繋がって形成される」とは、各領域が床面から天井面までを閉塞する間仕切壁によって分断されていないことを意味する。
【0030】
まず、住宅2の配置構成及び1階平面構成から説明する。図1は、本発明の屋内空間1を備えた住宅2の一例を示すもので、配置図及び1階平面図を示している。住宅2は、平面視略矩形の敷地の中央よりもやや上側に配置される。敷地の下側に位置する道路境界線Laには、道路が接しており、道路から住宅2の下側に位置する玄関口2aまでの間には、アプローチが設けられている。住宅2内部の1階平面構成は、1階の略右半分を占める屋内空間1と、住宅2内部の左下角部に配置される玄関21と、玄関21の右側に配置される広縁22aを備えた和室部22と、住宅2内部の左上角部に配置される家事・書斎スペース23と、屋内空間1、玄関21、及び家事・書斎スペース23をそれぞれ接続する廊下24と、家事・書斎スペース23の右側に隣接して配置されるトイレ25と、屋内空間1の下側に隣接し、屋外に配置されるテラス26を備えている。
【0031】
続いて、屋内空間1の構成について具体的に説明を行う。屋内空間1は、図1から図3に示すように、少なくともキッチン3aを有する第一領域3と、床面41が第一領域3よりも低い第二領域4と、床面51が第二領域4よりも低い第三領域5と、を有している。また、第一領域3、第二領域4、及び第三領域5は、それぞれ繋がって形成されるとともに互いの領域間を行き来可能に配置される空間であって、第一領域3から第二領域4及び第三領域5を視認可能に形成されている。
【0032】
第一領域3は、図1及び図3に示すように、屋内空間1内の上側に配置される平面視略矩形の領域で、第一領域3内の上側に配置されるキッチン3aと、キッチン3aの下側に隣接して配置されるダイニング3bと、第一領域3の左端に配置されるパントリー3cと、を有している。キッチン3aは、調理可能な設備を備えて炊事を行う空間であり、シンク3dが壁面に当接せずに設置される所謂アイランドキッチンを形成している。また、ダイニング3bは、居住者や来客者が食事を行う空間で、キッチン3aとダイニング3bは、繋がって形成されている。また、第一領域3は、第二領域4及び第三領域5よりも高い天井を有しており、その天井形状は特に限定されないが、例えば、図3に示すように、天井の一部を吹抜31としたり、天井全体を第二領域4の天井及び第三領域5の天井よりも高くすることができる。
【0033】
第二領域4及び第三領域5は、図1及び図2に示されるように、第一領域3の下側に隣接して配置される居住者や来客者の集うリビングである。第二領域4と第三領域5は、互いに隣接して配置され、両領域の境界に形成される第一段差H1には、第一段差H1を解消する階段が設置されて両領域を行き来することができる。また、図4に示す第二領域4と第一領域3との境界に形成される第二段差H2と、図3に示す第三領域5と第一領域3との境界に形成される第三段差H3には、第一領域3から第二領域4及び第三領域5へ行き来可能とする階段がそれぞれ設置されている。なお、第二領域4の床高さは、1階の床高さと同一に形成される。そして、図1に示すように、第一段差H1を解消する階段はテラス26寄りに形成され、第三段差H3を解消する階段は住宅2を構成する右側の壁面沿いに形成されている。
【0034】
第一段差H1、第二段差H2、及び第三段差H3の高さ寸法は特に限定されないが、第一段差H1は300mm〜400mm程度で形成され、第二段差H2は450mm〜600mm程度で形成され、第三段差H3は750mm〜1000mm程度で形成される。このような高低差であれば、各領域を無理なく見渡すことができるとともに変化に富んだ面白みのある空間とすることができる。
【0035】
図1に示すように、第一領域3と第二領域4及び第三領域5との境界に形成される第一境界線32は、第二領域4と第三領域5との境界に形成される第二境界線42と直交しており、図1及び図2に示されるように、第二領域4の床面41には、第二領域4の天井及び第三領域5の天井に達しない高さを有する壁体4aが、壁体4aの面内方向を第二境界線42に沿わせて配置されている。
【0036】
この壁体4aは、第二領域4側から使用できる物品を収納可能な家具とすることができる。その構成は特に限定されることはなく、図2に示すように、所定高さの棚板にTVを載置するTVボードや、複数の引出しや棚板を設置して物品を収納するリビングボードとすることができる。壁体4aの大きさについても特に限定されないが、第二領域4の床面41から壁体4aの上端までの高さH4は1500mm程度であることが好ましい。このような寸法であれば、第二領域4と第三領域5の一体感を保持しつつ各領域を緩やかに仕切ることができる。
【0037】
また、第二領域4は、第三領域5の天井と同一の高さの天井を有しており、図2及び図3に示すように、第二領域4の天井面43及び第三領域5の天井面52から下方に突出する梁6が、それぞれの天井面を横断している。なお、本願において「横断する」とは、部材が、異なる2つの領域の天井面に跨って設置されることを指す。梁6は、第二領域4及び第三領域5の一体感を増して迫力のある空間とすることができるとともに、梁6を各領域を横断する長スパンの梁とすることによって、各領域内の独立柱7の本数を削減して見渡しのよい開放的な空間を構築することができる。また梁6の設置する方向は、天井面43及び天井面52を横断していれば特に限定されることはなく、梁6の長手方向を第一境界線32と平行となるように設置したり、梁6が天井面43及び天井面52を斜めに横断するものであってもよい。なお、独立柱7は、図1に示すように、第二境界線42に近接する位置にのみ配置される。
【0038】
以上のように構成される屋内空間1は、図1に示すように、屋内空間1の下側に配置されるテラス26と隣接している。具体的には、テラス26は、第二領域4及び第三領域5とそれぞれ隣接するとともに、第二領域4及び第三領域5を挟んで第一領域3と対向して配置される。テラス26は、掃出し窓8によって第二領域4及び第三領域5と隔てられており、図3に示すように、テラス26の床面27は、第三領域5の床面51よりも高い位置に配置され、且つ、第二領域4の床面41と同一の高さに位置している。また、掃出し窓8の窓面は、透明なガラスや、例えば摺りガラスのように光透過性を有して視界を遮る材料とすることができる。なお、テラス26と第三領域5との境界に形成される第四段差H5は、第一段差H1と同じ高さ寸法となる。
【0039】
このように高低差のある3つの領域を有する屋内空間1は、各領域の一体感を保持させつつも、居住者や来客者の意識が、最も高い位置に配置される第一領域3に自然と向かう構成となっている。したがって、例えば、客人を招いてホームパーティを行う場合に、第一領域3をパフォーマンスキッチンとして使用することができ、居住者と来客者同士が調理や食事を通じてコミュニケーションを行うことができる。
【0040】
また、壁体4aは第二境界線42に沿って設置され、独立柱7は第二境界線42に近接する位置にのみ配置されるので、第一領域3から第二領域4及び第三領域5を見下ろす際に、視界を遮られることなく各領域を眺めることができ、居心地のよいキッチン空間とすることができる。そして、第一領域3は、第二領域4及び第三領域5よりも高い天井を有しているので、第二領域4及び第三領域5から第一領域3を見た時に、自然と第一領域3を見上げることとなり、閉鎖的になりがちなキッチン空間を明るく開放的な空間と印象づけることができる。さらに、第一領域3で炊事を行う居住者は、家事を行いながら第二領域4及び第三領域5で遊ぶ子供や寛ぐ家族達の様子を見守ることができ、他の居住者達から孤立する状況を防止することができる。
【0041】
また、領域を2つに分けているリビングは、それぞれの領域に別の用途を持たせて使用方法を分けることができる。例えば、1階の床高さで構成される第二領域4は、玄関口2aから玄関21及び廊下24を通って屋内空間1に入ってきた客人をもてなしやすく、来客の応接をする共用スペースとして利用することができる。また、第二領域4よりも低い床を有する第三領域5は、必然的に屋内空間1の中で最も低い位置に配置され、また壁体4aによって第二領域4と緩やかに仕切られているので、他の領域と比較して篭った雰囲気の空間となる。したがって、子供が遊んだり居住者がよりゆったりと寛ぐプライベートな空間として使用してもよい。
【0042】
そして、第一領域3、第二領域4、及び第三領域5は、図1に示すように、それぞれ繋がって形成されるとともに互いの領域間を階段を通じて行き来可能に配置されるので、各領域を回遊する回遊動線9を形成することができ、屋内空間1全体の一体感を保持して居住者間のコミュニケーションを円滑に行うことができる。さらに、図1に示すように、第一段差H1を解消する階段はテラス26寄りの掃き出し窓8沿いに形成され、第三段差H3を解消する階段は住宅2の右側の壁面沿いに形成されているので、通路動線によって各領域が分断され一体感を損なうという心配がない。
【0043】
また、第二領域4の床面41は、テラス26の床面27と同一の高さの床に位置しているので、掃出し窓8を通じて第二領域4とテラス26とを自由に行き来することができ、また、第三領域5の床面51は、テラス26の床面27よりも低い位置に形成しているので、テラス26に出た居住者が第三領域5側を向いて第四段差H5に座ることができる。したがって、第二領域4、第三領域5、及びテラス26を一体的に利用することができるとともに、テラス26にいる居住者の意識が、第三領域5を通じて屋内空間1側に向くので、屋内空間1とテラス26との一体感を向上させることができる。
【0044】
そして、テラス26は、第二領域4及び第三領域5を挟んで第一領域3と対向して配置されているので、掃出し窓8を透明な窓面とした場合には、第一領域3から第二領域4及び第三領域5を眺めたときに、屋外に位置するテラス26までを視認することができ、屋内空間1をより奥行きのある空間とすることができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る屋内空間は、たとえば、一戸建て住宅や集合住宅に好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0047】
1 屋内空間
26 テラス
27 床面
3 第一領域
3a キッチン
3b ダイニング
31 吹抜
32 第一境界線
4 第二領域
4a 壁体
41 床面
42 第二境界線
43 天井面
5 第三領域
51 床面
52 天井面
6 梁
8 掃出し窓
図1
図2
図3
図4