(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結構の先端の断面形状は、前記撤去対象の既設桁の後端の断面形状に対応した断面形状であり、前記連結構の後端の断面形状は、前記新設の更新桁の先端の断面形状に対応した断面形状であることを特徴とする請求項2、4、5のいずれかに記載の橋梁の架け替え工法。
前記撤去対象の既設桁はI形断面の鋼製桁であり、かつ、前記連結構はI形断面の鋼製部材であり、前記連結構を前記撤去対象の既設桁に連結する際には、前記撤去対象の既設桁のウェブに、T形断面の鋼材のフランジを、前記T形断面の鋼材のウェブが前記連結構の上部または下部のフランジと同一の高さ位置となるように取り付け、前記同一の高さ位置にある前記連結構の上部または下部のフランジと、前記T形断面の鋼材のウェブとを、それらの間を架け渡すように配置した添接板を介して連結することを特徴とする請求項2、4、5、6のいずれかに記載の橋梁の架け替え工法。
前記新設の更新桁の後端に、後端延長桁を一列状になるように連結する後端延長桁連結工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の橋梁の架け替え工法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法について詳細に説明する。なお、本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法で用いる新設の更新桁70は、現場搬入時には更新桁構成部材70A、70B、70Cに分割されており、更新桁構成部材70A、70B、70Cを連結することで新設の更新桁70が得られるものとする。また、本願の図面において、符号P1、P2、P3、P4は橋脚を示している。また、以下の説明の中には、撤去対象の既設上部工100に含まれる既設桁102が鋼製であることを念頭に置いた説明もあるが、本発明に係る橋梁の架け替え工法は、撤去対象の既設桁の構造や材質に関わりなく適用可能であり、撤去対象の既設桁が鋼桁の場合だけでなく、コンクリート桁の場合であっても適用可能である。
【0028】
(1)本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の手順
図1〜
図9は本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の特徴的な各段階を模式的に示す図であり、撤去対象の既設上部工100ならびに既設上部工100と隣接する径間の隣接橋梁200、202を側方(橋軸直角方向)から見た側面図である。
【0029】
本実施形態に係る橋梁の架け替え工法では、撤去対象である既設上部工100に含まれる既設桁102および新設する更新桁70(更新桁構成部材70A、70B、70C)を、
図1〜
図9において左から右に向かう方向(以下、送り出し方向と記すことがある)に送り出して施工を進める。
【0030】
図1は、本実施形態に係る橋梁の架け替え工法で用いる各設備を配置した状態を模式的に示す図である。
図1に示すように、撤去対象である既設上部工100が位置する径間P2−P3と隣接する、送り出し方向手前側の径間P1−P2に位置する隣接橋梁200の道路面に、送り出し設備20および軌条設備30を配置し、さらに軌条設備30に2つの台車設備40を橋軸方向に移動可能なように配置するとともに、撤去対象である既設上部工100が位置する径間P2−P3と隣接する、送り出し方向前方側の径間P3−P4に位置する隣接橋梁202の道路面に、送り出し設備22および軌条設備32を配置し、さらに軌条設備32に台車設備42を橋軸方向に移動可能なように配置する。また、撤去対象である既設上部工100の下方には、既設上部工100の位置する径間P2−P3の橋軸方向の両端部にベント10を設置する。さらに、ベント10の上端面と撤去対象の既設桁102の下面との間にジャッキ12を配置する。
【0031】
図2は、撤去対象である既設上部工100をジャッキアップして持ち上げた状態を模式的に示す図である。
図2に示すように、ベント10の上端面と撤去対象の既設桁102の下面との間に配置したジャッキ12を上下方向に伸長させて、撤去対象である既設上部工100を所定の高さまで上方に持ち上げる。ジャッキ12は、上端に、伸縮自在の上端突出部12Aを備えている。なお、既設上部工100をジャッキ12で上方に持ち上げる前に、隣接する径間の隣接橋梁200、202の上部工と既設上部工100との連結は切断しておく。
【0032】
図3は、ジャッキアップして持ち上げた既設上部工100の先端に先端延長桁50を取り付け、既設上部工100の後端に連結構60を取り付けた段階を模式的に示す図である。
図3に示すように、先端延長桁50および連結構60は、一列状になるように既設上部工100の先端および後端にそれぞれ取り付け、それぞれ送り出し設備20、22の上方に位置するようにし、送り出し設備20、22に備え付けられているジャッキ(
図24参照)で下方から支持する。
【0033】
先端延長桁50は、送り出し工程の初期段階において、送り出し設備22から、送り出し方向への駆動力および下方からの支持力を受け、受けたそれらの力を撤去対象である既設上部工100(撤去対象の既設桁102)へ伝達するための部材である。
【0034】
連結構60は、撤去対象である既設上部工100に含まれる既設桁102の後端に更新桁70(更新桁構成部材70A)(
図6参照)を連結するための鋼製部材であり、既設桁102の後端の断面形状と更新桁70(更新桁構成部材70A)の先端の断面形状が相違する場合でも、既設桁102の後端に更新桁70(更新桁構成部材70A)の先端を連結できるようにするための部材である。連結構60の先端の断面形状は撤去対象の既設桁102の後端の断面形状に対応したI形の断面形状であり、連結構60の後端の断面形状は新設の更新桁70(更新桁構成部材70A)の先端の断面形状に対応したI形の断面形状になっている。なお、連結構60を用いずに、既設桁102の後端に更新桁70(更新桁構成部材70A)の先端を直接連結した場合でも安全な連結が確保できるのであれば、連結構60を用いることは不要である。
【0035】
図4は、既設上部工100の後端に取り付けた連結構60の後端に更新桁構成部材70Aを取り付け、取り付けた更新桁構成部材70Aの後端に更新桁構成部材70Bをさらに取り付けた状態を示す図である。更新桁構成部材70A、70Bは、新設の更新桁70を構成する3つの部材(更新桁構成部材70A、70B、70C)のうちの2つである。
図4に示すように、更新桁構成部材70A、70Bを連結構60の後端に一列状になるように取り付け、取り付けた更新桁構成部材70A、70Bのそれぞれが2つの台車設備40のそれぞれの上方に位置するように2つの台車設備40を配置し、取り付けた更新桁構成部材70A、70Bを2つの台車設備40でそれぞれ下方から支持する。取り付けた更新桁構成部材70A、70Bを2つの台車設備40でそれぞれ下方から支持した後は、ジャッキ12の上端突出部12Aは下降させて、支点を2つの台車設備40に盛り替えて、次の送り出し工程に備える。
【0036】
図5は、
図4に示すように連結した撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)、先端延長桁50、連結構60、および更新桁構成部材70A、70Bを橋軸方向(
図5において左側から右側に向かう方向)に送り出して、P3−P4径間の隣接橋梁202の道路面上に送り出している状況を示す図である。
【0037】
送り出し対象物(連結した撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)、先端延長桁50、連結構60、および更新桁構成部材70A、70B)を橋軸方向に送り出す駆動力は送り出し設備20、22が供給する(詳細は後述する)。また、前記送り出し対象物を橋軸方向に送り出す際には、ジャッキ12の上端突出部12Aは下降させて、前記送り出しの対象物とジャッキ12とが接触しないようにすることに留意する。
【0038】
撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)をP3−P4径間の隣接橋梁202の道路面上に送り出す時期は、新設の更新桁70を構成する全部の構成部材(更新桁構成部材70A、70B、70C)の連結が終了した後でも、あるいは新設の更新桁70を構成する構成部材のうちの一部の構成部材の連結が終了した段階(例えば
図5に示すように、新設の更新桁70を構成する構成部材のうちの一部の構成部材である更新桁構成部材70A、70Bのみの連結が終了した段階)でもよい。新設の更新桁70を構成する構成部材のうちの一部の構成部材の連結が終了した段階で送り出しを行った場合には、新設の更新桁70を構成する構成部材のうちの残りの構成部材のうちの一部の構成部材の連結が終了した段階で送り出しを再度行い、最終的に全部の構成部材の連結および送り出しを行うまで、構成部材の連結および送り出しを繰り返し行う。
【0039】
図6は、送り出し対象物(連結した撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)、先端延長桁50、連結構60、および更新桁構成部材70A、70B)を
図5に示すように橋軸方向に送り出した後、更新桁構成部材70Bの後端に更新桁構成部材70Cを一列状に連結し、更新桁構成部材70Cの後端にさらに後端延長桁80を一列状に連結した状態を示す図である。また、P3−P4径間の隣接橋梁202の道路面上に送り出された先端延長桁50および既設上部工100の部位(既設桁102の部位)はこの段階で解体撤去をしてもよく、
図6では、この段階で解体撤去をする先端延長桁50および既設上部工100の部位(既設桁102の部位)を2点鎖線で表示している。この段階で解体撤去をする既設上部工100の部位(既設桁102の部位)の部位には、符号100X、102Xを付している。符号100Xは既設上部工100の初回解体撤去部を示し、符号102Xは既設桁102の初回解体撤去部を示している。
【0040】
既設上部工100(既設桁102)の送り出しを複数回に分けて行う場合、既設上部工100の部位(既設桁102の部位)の解体撤去は、既設上部工100(既設桁102)の送り出しを行った都度行ってもよいが、既設上部工100(既設桁102)の全長の送り出しが終了してから、いちどきに既設上部工100(既設桁102)の全長についての解体撤去を行ってもよい。
【0041】
後端延長桁80は、送り出し工程の最終段階において、送り出された更新桁70と送り出し設備20との接触が断たれた後、送り出し設備20から、送り出し方向への駆動力および下方からの支持力を受け、受けたそれらの力を新設の更新桁70へ伝達するための部材である。
【0042】
図7は、送り出し対象物(連結した撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)、先端延長桁50、連結構60、および新設の更新桁70(更新桁構成部材70A、70B、70C)、後端延長桁80)の送り出しが完了し、新設の更新桁70が、撤去対象の既設桁102が配置されていた径間P2−P3に到達した状態を示す図である。なお、
図7の状態においては、撤去対象の既設上部工100(撤去対象の既設桁102)の全長についての解体撤去および先端延長桁50の解体撤去は完了している。
【0043】
新設の更新桁70が撤去対象の既設桁102が配置されていた径間P2−P3に到達した後、ジャッキ12の上端突出部12Aを再び上方に突出させて、径間P2−P3に到達した新設の更新桁70をジャッキ12で下方から支持する。そして、その後、連結構60および後端延長桁80の解体撤去を行う。また、この段階で台車設備40、42の撤去を行ってもよい。
【0044】
連結構60および後端延長桁80の解体撤去を行った後、ジャッキ12を下降(ジャッキダウン)させて、新設の更新桁70を橋脚P2、P3上の支承に支持させて、
図8に示すように、新設の更新桁70を径間P2−P3に架設する。
【0045】
新設の更新桁70を径間P2−P3に架設した後、送り出し設備20、22、および軌条設備30、32の撤去を行う(
図7に示す段階で台車設備40、42の撤去を行っていない場合は、台車設備40、42の撤去も同時に行う。)。
【0046】
その後、径間P2−P3の橋軸方向の両端部に設けていたベント10を解体撤去する。
図9は、ベント10の解体撤去も終えて、径間P2−P3への新設の更新桁70の架設が完了した状態を示す図である。
【0047】
なお、軌条設備30、32および台車設備40、42の撤去は、新設の更新桁70が、撤去対象の既設桁102が配置されていた径間P2−P3に到達した状態(
図7に示す状態)になれば行うことが可能である。また、送り出し設備20、22の撤去は、連結構60および後端延長桁80の解体撤去を行った後であれば行うことが可能である。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法は、既設上部工100の撤去と新設の更新桁70の架設を同時進行で行うので、従来よりも効率的な橋梁の架け替えを実現することができる。
【0049】
(2)既設桁102と連結構60との接合構造例
前記した「(1)本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の手順」においては、本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の手順の全体の流れを説明したが、ここでは、撤去対象の既設桁102と連結構60との接合構造例についての詳細な説明をする。なお、ここで説明する既設桁102と連結構60との接合構造例は、既設桁102と先端延長桁50との接合構造としても適用可能であり、また、新設の更新桁70と後端延長桁80との接合構造としても適用可能である。
【0050】
図10は、撤去対象の既設桁102と連結構60との接合構造例である接合構造90を側方から(橋軸直角方向から)見た側面図であり、
図11は
図10のXI−XI線断面図であり、
図12は
図11の分解図であり、
図13は
図10のXIII−XIII線断面図である。なお、
図10において、符号102C1、102C2、102C3は、補剛のための補剛鋼板である。また、
図10および
図12においては、ボルト67A、68A、68Cおよびナット67B、68B、68Dの記載は省略している。また、
図13の断面図においては、連結構60の先端部60Aの断面および連結構60の先端部60Aに直接連結された部材のみを記載している。
【0051】
接合構造90は、既設桁102の後端に連結構60の先端部60Aを連結する接合構造であり、T形鋼材62、フランジ添接板64、およびウェブ添接板66を用いて、既設桁102の後端に連結構60の先端部60Aを連結する接合構造である。
【0052】
接合構造90においては、
図10〜
図12に示すように、既設桁102のウェブ102Cの上部および下部の両面に、T形断面の鋼材であるT形鋼材62のフランジ62Aが、T形鋼材62のウェブ62Bが連結構60の先端部60Aの上フランジ60A1および下フランジ60A2と同一の高さ位置となるように、ボルト67Aおよびナット67Bで取り付けられている(既設桁102のウェブ102Cをその厚さ方向に挟み込むように配置された2つのT形鋼材62のフランジ62Aは、ウェブ102Cおよび2つのT形鋼材62のフランジ62Aを貫通するボルト67Aおよびナット67Bによって締結されている。)。このようにして、T形鋼材62は、既設桁102のウェブ102Cに合計で4つ取り付けられている。そして、
図10に示すように、連結構60の上フランジ60A1とT形鋼材62のウェブ62Bとの間を架け渡すように、上フランジ60A1およびウェブ62Bの上下両面にフランジ添接板64を配置するとともに、連結構60の下フランジ60A2とT形鋼材62のウェブ62Bとの間を架け渡すように、下フランジ60A2およびウェブ62Bの上下両面にフランジ添接板64を配置する。
【0053】
連結構60の先端部60Aの上フランジ60A1を上下に挟み込むように配置されたフランジ添接板64(フランジ添接板64の部位のうち、連結構60の先端部60Aの上フランジ60A1をその厚さ方向に挟み込む部位)は、上フランジ60A1および2枚のフランジ添接板64を貫通するボルト68Aおよびナット68Bによって締結されており、連結構60の先端部60Aの下フランジ60A2を上下に挟み込むように配置されたフランジ添接板64(フランジ添接板64の部位のうち、連結構60の先端部60Aの下フランジ60A2をその厚さ方向に挟み込む部位)は、下フランジ60A2および2枚のフランジ添接板64を貫通するボルト68Aおよびナット68Bによって締結されている。
【0054】
また、既設桁102のウェブ102Cに取り付けられたT形鋼材62のウェブ62Bを上下に挟み込むように配置されたフランジ添接板64(フランジ添接板64の部位のうち、T形鋼材62のウェブ62Bをその厚さ方向に挟み込む部位)は、ウェブ62Bおよび2枚のフランジ添接板64を貫通するボルト68Aおよびナット68Bによって締結されている。
【0055】
したがって、連結構60の上フランジ60A1および下フランジ60A2は、フランジ添接板64を介して、既設桁102のウェブ102Cに取り付けられたT形鋼材62のウェブ62Bと連結されている。即ち、連結構60の上フランジ60A1および下フランジ60A2は、T形鋼材62およびフランジ添接板64を介して、既設桁102のウェブ102Cと連結されている。
【0056】
また、既設桁102のウェブ102Cと、連結構60の先端部60Aのウェブ60A3との間を架け渡すように、両面に、ウェブ添接板66が配置されている。連結構60の先端部60Aのウェブ60A3をその厚さ方向に挟み込むように配置されたウェブ添接板66(ウェブ添接板66の部位のうち、連結構60の先端部60Aのウェブ60A3をその厚さ方向に挟み込む部位)は、ウェブ60A3および2枚のウェブ添接板66を貫通するボルト68Cおよびナット68Dによって締結されており、既設桁102のウェブ102Cをその厚さ方向に挟み込むように配置されたウェブ添接板66(ウェブ添接板66の部位のうち、既設桁102のウェブ102Cをその厚さ方向に挟み込む部位)は、ウェブ102Cおよび2枚のウェブ添接板66を貫通するボルト68Cおよびナット68Dによって締結されている。
【0057】
以上のようにして、連結構60の先端部60Aと既設桁102の後端は、T形鋼材62、フランジ添接板64、およびウェブ添接板66を介して接合されている。
【0058】
なお、既設桁102と連結構60との接合構造は、以上説明した接合構造90に限定されるわけではなく、例えば、既設桁102と連結構60とを溶接で接合して接合構造を構成してもよい。
【0059】
(3)連結構60の形状についての補足説明
ここで、
図10に関連して、連結構60の形状について補足説明を行っておく。
【0060】
既設桁102の上フランジ102Aの上面には既設床版104が配置されているため、既設桁102の上フランジ102Aを連結のために用いることは困難であり、また、既設桁102の下フランジ102Bの下面には支承取り付け部(図示せず)が設けられているため、既設桁102の下フランジ102Bを連結のために用いることは困難である。このため、前述したように、既設桁102のウェブ102Cに4つのT形鋼材62を取り付けて、連結のために用いている。
【0061】
したがって、
図10に示すように、連結構60の先端部60Aの高さは、既設桁102の高さよりも小さくすることが、通常の場合必要となる。
【0062】
一方、新設の更新桁70においては、その上方および下方に、まだ床版や支承は配置されていないため、新設の更新桁70の上フランジおよび下フランジを連結のために用いることができる。
【0063】
したがって、連結構60の後端部を含む本体部60Bの高さは、通常の場合、連結構60の先端部60Aの高さよりも高くなる。このため、連結構60には、高さの異なる先端部60Aと本体部60Bとを連結する部位であるテーパ部60Cを、先端部60Aと本体部60Bとの間に設けている。また、先端部60Aとテーパ部60Cとの連結部である屈曲点には補剛のために補剛鋼板60C1を設けており、本体部60Bとテーパ部60Cとの連結部である屈曲点には補剛のために補剛鋼板60C2を設けている。
【0064】
なお、新設の更新桁70の高さが既設桁102の高さよりも低い場合には、連結構60を用いなくても、既設桁102の後端に新設の更新桁70の先端を安全に連結できる場合がある。このような場合には、連結構60を用いなくてもよい。
【0065】
(4)既設上部工100を持ち上げる方法のバリエーション
前記した「(1)本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の手順」においては、既設上部工100を持ち上げる方法として、
図2に示すように、ベント10の上端面と撤去対象の既設桁102の下面との間に配置したジャッキ12を上下方向に伸長させて、撤去対象である既設上部工100を所定の高さまで上方に持ち上げる方法を取り上げて説明した。
【0066】
既設上部工100を持ち上げる方法には、前述した方法以外にもいくつかの方法が考えられるため、ここで説明しておく。
【0067】
(4−1)仮設支持桁を用いる持ち上げ方法
図14に示すように撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間の既設上部工)の両端部の上面に仮設支持桁300を取り付け、既設上部工100の両端部の上面に取り付けた仮設支持桁300を持ち上げて、既設上部工100を持ち上げる方法である。以下、
図14〜
図18を参照しつつ説明する。
【0068】
図14に示すように、撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間の既設上部工)の両端部に、接合部302(仮設支持桁300を既設上部工100に取り付けるための接合部)を設ける。接合部302は、仮設支持桁300からの力を既設上部工100に十分に伝達できる接合態様であればよく、具体的な接合態様は特には限定されない。
【0069】
接合部302の具体的な接合態様の一例としては、既設上部工100(既設床版104)に鉛直貫通孔を橋軸直角方向に複数設け、設けた複数の鉛直貫通孔にそれぞれ鋼材を挿入し、挿入した鋼材の上部は仮設支持桁300の下面に連結するとともに、挿入した鋼材の下部を連結する橋軸直角方向鋼材を既設上部工100の下方に設ける接合態様が考えられる。
【0070】
また、仮設支持桁300は、撤去対象の既設上部工100の後端側においては、撤去対象の既設上部工100と隣接橋梁200との間を架け渡すように配置し、撤去対象の既設上部工100の先端側においては、撤去対象の既設上部工100と隣接橋梁202との間を架け渡すように配置する。
【0071】
また、
図14に示すように、仮設支持桁300の下面と隣接橋梁200の道路面との間にはジャッキアップ設備304を配置し、仮設支持桁300の下面と隣接橋梁202の道路面との間にもジャッキアップ設備304を配置する。
【0072】
次に、
図15に示すように、隣接橋梁200、202の道路面上の両方のジャッキアップ設備304を伸長させて、既設上部工100の両端部に取り付けた仮設支持桁300を介して、撤去対象の既設上部工100を持ち上げる。
【0073】
次に、
図16に示すように、橋脚P2、P3の上端面に架台306を配置する。橋脚P2、P3の上端面に配置した架台306が既設上部工100を下方から支持することで、持ち上げた撤去対象の既設上部工100に対する仮設支持桁300による支持を解放させることができるようになる。
【0074】
そして、
図17に示すように、既設上部工100を支持する支点を、ジャッキ設備304から、橋脚P2、P3の上端面に配置した架台306に盛り替えて、持ち上げた撤去対象の既設上部工100に対する仮設支持桁300およびジャッキ設備304による支持を解放する。
【0075】
そして、
図18に示すように、仮設支持桁300およびジャッキ設備304を撤去する。
【0076】
以上説明した仮設支持桁300を用いる持ち上げ方法は、撤去対象の既設上部工100の下方にベントを設置できない場合や、橋脚P2、P3(撤去対象の既設上部工100を支持する橋脚)の上端面にジャッキアップ設備を設置できない場合でも、実施可能である。
【0077】
(4−2)吊り上げ設備を用いる持ち上げ方法
撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間の既設上部工)の両端部に吊り上げ設備320(
図20、21参照)を配置し、既設上部工100の両端部に配置した吊り上げ設備320で既設上部工100を吊り上げて、既設上部工100を持ち上げる方法である。以下、
図19〜
図21を参照しつつ説明する。
【0078】
図19は、撤去対象の既設上部工100を含む橋梁に吊り上げ設備320を配置する前の状態を示す図であり、
図19(A)は側方から(橋軸直角方向から)見た側面図であり、
図19(B)は正面から(橋軸方向から)見た正面図である。
【0079】
図20は、撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間)の両端部に吊り上げ設備320を配置した状態を示す図であり、
図20(A)は側方から(橋軸直角方向から)見た側面図であり、
図20(B)は正面から(橋軸方向から)見た正面図である。
【0080】
図20(A)に示すように、吊り上げ設備320を撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間)の両端部に配置する。
図20(B)に示すように、吊り上げ設備320は門型であり、また、門型の吊り上げ設備320の内側の空間の大きさは、撤去対象の既設上部工100よりも大きくなっている。
【0081】
吊り上げ設備320の大きさは大きいため、撤去対象の既設上部工100(P2−P3径間)の両端部に吊り上げ設備320を設置できる環境であることが、「吊り上げ設備を用いる方法」を実施する前提となる。
【0082】
図21は、撤去対象の既設上部工100を吊り上げ設備320で吊り上げている状態を示す図であり、
図21(A)は側方から(橋軸直角方向から)見た側面図であり、
図21(B)は正面から(橋軸方向から)見た正面図である。
【0083】
(4−3)橋脚上に設置したジャッキアップ設備を用いる持ち上げ方法
図22、23に示すように、撤去対象の既設上部工100を支持する橋脚P2、P3の上端面と撤去対象の既設上部工100の下面との間にジャッキアップ設備340を設置し、橋脚P2、P3の上端面に設置したジャッキアップ設備340で既設上部工100を持ち上げて、既設上部工100を持ち上げる方法である。以下、
図22〜
図23を参照しつつ説明する。
【0084】
図22に示すように、撤去対象の既設上部工100を支持する橋脚P2、P3の上端面と撤去対象の既設上部工100の下面との間にジャッキアップ設備340を設置する。したがって、撤去対象の既設上部工100を支持する橋脚P2、P3の上端面と撤去対象の既設上部工100の下面との間にジャッキアップ設備340を設置できることが、「橋脚上に設置したジャッキアップ設備を用いる方法」を実施する前提となる。
【0085】
撤去対象の既設上部工100を支持する橋脚P2、P3の上端面と撤去対象の既設上部工100の下面との間にジャッキアップ設備340を設置した後、設置したジャッキアップ設備340を伸長させて、
図23に示すように、撤去対象の既設上部工100を持ち上げる。
【0086】
(5)送り出し方法のバリエーション
前記した「(1)本発明の実施形態に係る橋梁の架け替え工法の手順」においては、既設上部工100を橋軸方向に送り出す方法として、
図4〜6に示すように、撤去対象の既設上部工100を含む送り出し対象物を、橋軸方向に、送り出し設備20、22を用いて送り出す方法(ストロークジャッキを用いる送り出し方法)を取り上げて説明した。
【0087】
撤去対象の既設上部工100を含む送り出し対象物を橋軸方向に送り出す方法には、前述した方法以外にもいくつかの方法が考えられるため、ここで説明しておく。また、送り出し設備20、22を用いて送り出す方法(ストロークジャッキを用いる送り出し方法)についても、ここでさらに詳細に説明する。
【0088】
(5−1)ストロークジャッキを用いる送り出し方法
図24(A)〜(D)は、ストロークジャッキを用いる送り出し方法の手順を模式的に示す図である。
【0089】
ストロークジャッキを用いる送り出し方法では、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置された送り出し設備20、および送り出し方向前方側の隣接橋梁202の道路面上に設置された送り出し設備22の両方を用いて送り出しを行うが、送り出し設備20と送り出し設備22の構成は同様であり、送り出し時に行う手順も同様であるので、ここでは、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置された送り出し設備20を取り上げて、その構成と送り出し時に行う手順について説明する。
【0090】
送り出し設備20は、先端側架台20Aと、後端側架台20Bと、レール20Cと、第1ジャッキ24と、第2ジャッキ26と、ストロークジャッキ28とを有して構成されている。
【0091】
第1ジャッキ24は、先端側架台20Aの上面に取り付けられており、鉛直方向に伸縮できるようになっている。また、第1ジャッキ24は先端側架台20Aの上面に固定的に取り付けられており、第1ジャッキ24自体は移動できないようになっている。
【0092】
第2ジャッキ26は、後端側の後端側架台20Bの上面に取り付けられたレール20Cに、レール20Cの長手方向に移動可能なように取り付けられている。また、第2ジャッキ26は、鉛直方向に伸縮できるようになっている。
【0093】
ストロークジャッキ28は、レール20Cの後端部に取り付けられており、また、ストロークジャッキ28の伸縮アーム28Aの先端が第2ジャッキ26に取り付けられている。このため、ストロークジャッキ28の伸縮アーム28Aが伸縮することにより、第2ジャッキ26をレール20Cの長手方向に移動させることができるようになっている。
【0094】
図24(A)は、更新桁70が送り出し設備20および台車設備40の上に配置された状態を示す図であり、送り出し前の状態を示す図である。この送り出し前の状態においては、送り出し設備20は第1ジャッキ24が更新桁70を下方から支持している。台車設備40は、橋軸方向と平行に配置された軌条設備30上に配置されており、橋軸方向に移動できるようになっている。
【0095】
次に、
図24(B)に示すように、第2ジャッキ26を伸長させて第2ジャッキ26で更新桁70を支持させるとともに、第1ジャッキ24を収縮させて、支点を第1ジャッキ24から第2ジャッキ26に盛り替える。
【0096】
次に、
図24(C)に示すように、ストロークジャッキ28の伸縮アーム28Aを伸長させて第2ジャッキ26を橋軸方向に送り出し、更新桁70を橋軸方向に送り出す。
【0097】
次に、
図24(D)に示すように、第1ジャッキ24を伸長させて第1ジャッキ24で更新桁70を支持させるとともに、第2ジャッキ26を収縮させて、支点を第2ジャッキ26から第1ジャッキ24に盛り替える。
【0098】
次に、ストロークジャッキ28の伸縮アーム28Aを収縮させて第2ジャッキ26をレール20Cの後端側に引き戻し、送り出し設備20の状態を
図24(A)の状態に戻す。その後は、以上説明した手順を繰り返し、1サイクルごとに、ストロークジャッキ28の伸縮アーム28Aの伸長長さ分だけ、更新桁70を橋軸方向に送り出していく。
【0099】
(5−2)台車推進による送り出し方法
図25(A)〜(C)は、台車を推進させて行う送り出し方法の手順を模式的に示す図である。
【0100】
台車推進による送り出し方法では、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置された軌条設備30、台車設備500、および滑り装置520だけでなく、送り出し方向前方側の隣接橋梁202の道路面上にも同様の設備を設置して、送り出しを行うが、ここでは、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置された軌条設備30、台車設備500、および滑り装置520を取り上げて、その構成と送り出し時に行う手順について説明する。
【0101】
この送り出し方法では、前述したように、軌条設備30、台車設備500、および滑り装置520を用いる。
【0102】
台車設備500は、台車502と、ストロークジャッキ504と、クランプ装置506と、惜しみ用クランプ装置508と、を有して構成されている。
【0103】
台車502は、橋軸方向と平行に配置された軌条設備30上に配置されており、橋軸方向に移動できるようになっている。
【0104】
台車502の先端側にはストロークジャッキ504が取り付けられており、ストロークジャッキ504の伸縮アーム504Aの先端部にはクランプ装置506が取り付けられている。クランプ装置506は軌条設備30に対する固定とその解除を行うことができるようになっている。
【0105】
台車502の後端側には、逸脱防止用の惜しみ用クランプ装置508が取り付けられている。惜しみ用クランプ装置508は、台車502が軌条設備30から逸脱することを防止するための装置であり、軌条設備30に対する固定とその解除を行うことができるようになっている。
【0106】
滑り装置520は、更新桁70を下方から支持するとともに、更新桁70を橋軸方向に滑らかに送り出す役割を有する。滑り装置520は、橋軸方向に並んだ複数のローラにベルトが架け渡されたエンドレスローラ構造を備えている。
【0107】
図25(A)は、更新桁70が台車設備500および滑り装置520の上に配置された状態を示す図であり、送り出し前の状態を示す図である。この送り出し前の状態においては、クランプ装置506は軌条設備30に固定されており、惜しみ用クランプ装置508も軌条設備30に固定されている。また、ストロークジャッキ504の伸縮アーム504Aは伸長した状態である。
【0108】
図25(B)は更新桁70の送り出しを行っている状態を示す図である。送り出しを行う際には、クランプ装置506の軌条設備30への固定は解除せず、惜しみ用クランプ装置508の軌条設備30への固定のみ解除する。そして、ストロークジャッキ504の伸縮アーム504Aを収縮させて、台車502を橋軸方向に推進させて、更新桁70を橋軸方向に送り出す。
【0109】
次に、惜しみ用クランプ装置508を軌条設備30に固定し、その後に、クランプ装置506の軌条設備30への固定を解除して、ストロークジャッキ504の伸縮アーム504Aを伸長させた状態にして、クランプ装置506を軌条設備30へ再度固定し、ストロークジャッキ504、クランプ装置506、および惜しみ用クランプ装置508の状態を
図25(A)の状態に戻す。その後は、以上説明した手順を繰り返し、1サイクルごとに、ストロークジャッキ504の伸縮アーム504Aの収縮長さ分だけ、更新桁70を橋軸方向に送り出していく。
【0110】
(5−3)ワイヤ引き込みによる送り出し方法
図26(A)、(B)は、ワイヤ引き込みによる送り出し方法の手順を模式的に示す図である。
【0111】
ワイヤ引き込みによる送り出し方法では、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置した軌条設備30、台車600、ダブルツインジャッキ602、移動用ワイヤ604、移動用ワイヤ固定装置606、608、逸走防止用ワイヤ610、逸走防止用固定装置612、および滑り装置620だけでなく、送り出し方向前方側の隣接橋梁202の道路面上に設置した同様の設備も用いて、送り出しを行うが、ここでは、送り出し方向手前側の隣接橋梁200の道路面上に設置した軌条設備30、台車600、ダブルツインジャッキ602、移動用ワイヤ604、移動用ワイヤ固定装置606、608、逸走防止用ワイヤ610、逸走防止用固定装置612、および滑り装置620を取り上げて、その構成と送り出し時に行う手順について説明する。
【0112】
この送り出し方法では、前述したように、軌条設備30、台車600、ダブルツインジャッキ602、移動用ワイヤ604、移動用ワイヤ固定装置606、608、逸走防止用ワイヤ610、逸走防止用固定装置612、および滑り装置620を用いる。
【0113】
台車600は、橋軸方向と平行に配置された軌条設備30上に配置されており、橋軸方向に移動できるようになっている。
【0114】
台車600の後端側にはダブルツインジャッキ602が取り付けられている。ダブルツインジャッキ602は、移動用ワイヤ604を把持する把持部と橋軸方向に伸縮する伸縮アーム602Aを備えており、把持部は伸縮アーム602Aの先端に取り付けられている。
【0115】
移動用ワイヤ604は、両端部が移動用ワイヤ固定装置606、608にそれぞれ固定されており、橋軸方向に一直線状に張られた状態になっている。移動用ワイヤ固定装置606、608は、隣接橋梁200の道路面上に固定されている。
【0116】
逸走防止用ワイヤ610は、先端が更新桁70の後端に連結され、後端が逸走防止用固定装置612に連結されており、更新桁70の逸走を防止する。逸走防止用固定装置612は、隣接橋梁200の道路面上に固定されている。
【0117】
送り出しを行う際には、まず、
図26(A)に示すように、伸縮アーム602Aを収縮させた状態でダブルツインジャッキ602の把持部に移動用ワイヤ604を把持させる。そして、ダブルツインジャッキ602の把持部に移動用ワイヤ604を把持させた状態で、
図26(B)に示すように、ダブルツインジャッキ602の伸縮アーム602Aを伸長させ、台車600を橋軸方向に推進させ、更新桁70を橋軸方向に送り出す。
【0118】
次に、ダブルツインジャッキ602の把持部による把持を解除して、ダブルツインジャッキ602の伸縮アーム602Aを収縮させた状態にした後、ダブルツインジャッキ602の把持部に移動用ワイヤ604を再度把持させて、ダブルツインジャッキ602の状態を
図26(A)の状態に戻す。その後は、以上説明した手順を繰り返し、1サイクルごとにダブルツインジャッキ602の伸縮アーム602Aの伸長長さ分だけ、更新桁70を橋軸方向に送り出していく。