(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱体の熱は、前記支持体の前記第1面側を介して前記熱拡散体に伝達され、前記熱拡散体によって前記第1面の面方向に拡散され、複数の前記柱状体を介して前記第2面側の前記放熱体へ伝達される、
請求項1に記載の電子部品の放熱構造。
前記支持体の前記第2面と前記放熱体との間に配置され、前記柱状体から伝達された熱を前記放熱体へ伝達するとともに、前記支持体と前記放熱体との間を電気的に絶縁する絶縁層を、さらに備えている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品の放熱構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のプリント配線板の放熱構造では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたプリント配線板の放熱構造では、発熱体の熱が、ビア(Via)を介して基板の内部に設けられた厚銅箔層に伝達され、厚銅箔層を介して面方向に伝達される構成となっている。このため、ビアの部分で熱抵抗が大きくなって、効率よく放熱体へ熱を伝達することが難しいという課題がある。
【0006】
本発明の課題は、発熱体の熱を効率よく放熱体へ伝達して放熱効果を向上させることが可能な電子部品の放熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る電子部品の放熱構造は、発熱体と、支持体と、熱拡散体と、柱状体と、放熱体と、を備えている。支持体は、第1面と第1面とは反対側の第2面とを有し、発熱体が第1面に配置され、発熱体の熱が伝達される。熱拡散体は、第1面における発熱体と近接する位置に配置され、発熱体から支持体に伝達された熱を第1面に平行な方向へ拡散する。柱状体は、支持体の内部において第1面に交差する方向に沿って設けられており、支持体に伝達された熱を第1面側から第2面側へ伝達するとともに、第1面側において発熱体と熱拡散体とにまたがるように配置された第1柱状体と、熱拡散体から熱が伝達される位置に配置された第2柱状体とを有する。放熱体は、支持体の第2面に配置され、第1面側から柱状体を介して伝達される熱を大気に放出する。
【0008】
ここでは、半導体デバイス等の発熱体において生じた熱を放熱体から放出する放熱構造において、支持体の第1面に、発熱体と熱拡散体とを配置している。そして、支持体の第2面側に、発熱体において生じた熱を大気へ放出する放熱体を配置している。さらに、支持体の内部には、第1面に交差する方向に沿って、高い熱伝導率を有する複数の柱状体が設けられている。そして、複数の柱状体は、第1面側において、発熱体と熱拡散体とにまたがるように配置された第1柱状体と、熱拡散体に対向する位置に配置された第2柱状体とを有している。
【0009】
ここで、本電子部品の放熱構造は、例えば、回路基板、電力変換装置等に適用される放熱構造である。
発熱体には、例えば、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップ等の電子部品が含まれる。
支持体には、例えば、樹脂製やセラミック製の基板等が含まれる。
【0010】
熱拡散体は、例えば、銅、アルミニウム、鉄、セラミック等、熱伝導率の高い金属等によって形成されたヒートスプレッダであって、発熱体において生じた熱を第1面の面方向に拡散するために、第1面に設けられている。
柱状体は、例えば、銅等の熱伝導率の高い金属によって形成されており、第1面から第2面にかけて熱を伝達するために、支持体の内部に複数設けられている。また、柱状体は、第1面に隣接して配置された発熱体と熱拡散体とにまたがるように、支持体の内部に設けられており、第1面に平行な断面が所定の面積以上になっている。
【0011】
放熱体は、例えば、銅、アルミニウム、鉄等の熱伝導率の高い金属等によって形成されたヒートシンクであって、発熱体において生じた熱を所定の方向へ放出するために、支持体の第2面側に設けられている。
これにより、発熱体において生じた熱は、接触している第1面に伝達された後、第1面および柱状体(第1柱状体)の第1面側の部分を介して、第1面において発熱体に隣接配置された熱拡散体へと伝達される。そして、熱拡散体は、伝達された熱を、第1面の面方向に拡散して、発熱体から離れた位置にある柱状体(第2柱状体)に対して熱を伝達することができる。
【0012】
よって、熱拡散体において第1面の面方向に拡散された熱は、熱拡散体に接触する第1面の部分および柱状体(第1柱状体および第2柱状体)を介して、第2面側へ伝達され、第2面に接触している放熱体から大気へと放出される。
この結果、発熱体におい生じた熱を効率よく放熱体へ伝達して、従来よりも放熱効果を向上させることができる。
【0013】
第2の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1の発明に係る電子部品の放熱構造であって、発熱体の熱は、支持体の第1面側を介して熱拡散体に伝達され、複数の熱拡散体によって第1面の面方向に拡散され、柱状体を介して第2面側の放熱体へ伝達される。
ここでは、発熱体において生じた熱の伝達経路を特定する。
すなわち、発熱体において生じた熱は、支持体の第1面を介して、第1面における発熱体に隣接する位置に設けられた熱拡散体へと伝達される。そして、熱拡散体は、第1面から伝達された熱を、第1面の面方向に沿って拡散する。さらに、熱拡散体によって第1面方向に拡散された熱は、柱状体を介して第2面側へ伝達され、第2面に配置された放熱体から大気へ放出される。
【0014】
これにより、第1面においては、発熱体と接触する部分だけでなく、熱拡散体が設けられた効果によって第1面において発熱体から離れた位置まで熱が伝達される。
この結果、従来よりも、発熱体において生じた熱を他の部材へ伝達しやすくなるとともに、放熱体への熱伝達率を上げて、放熱効果を向上させることができる。
【0015】
第3の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1または第2の発明に係る電子部品の放熱構造であって、熱拡散体は、第1面において、発熱体を挟み込むように複数配置されている。
ここでは、発熱体を挟み込むように、複数の熱拡散体を第1面に配置している。
これにより、発熱体において生じた熱は、第1面を介して複数の熱拡散体へ伝達され、熱拡散体によって第1面の面方向に拡散される。
この結果、従来よりも、発熱体において生じた熱を他の部材へ伝達しやすくなるとともに、放熱体への熱伝達率を上げて、放熱効果を向上させることができる。
【0016】
第4の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、支持体は、第1面および第2面にそれぞれ配置され、伝熱性を有する伝熱層を、さらに有している。
ここでは、支持体の第1面および第2面を覆うように、伝熱層が配置されている。
ここで、伝熱層には、例えば、電子部品の基板の表面を覆う銅箔等の薄い伝熱性を有する層が含まれる。
これにより、発熱体において生じた熱を、支持体の第1面および第2面を覆うように配置された伝熱層を介して、面方向へ効率よく伝達することができる。
【0017】
第5の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、支持体の第2面と放熱体との間に配置され、柱状体から伝達された熱を放熱体へ伝達するとともに、支持体と放熱体との間を電気的に絶縁する絶縁層を、さらに備えている。
【0018】
ここでは、支持体の第2面と放熱体との間に、絶縁層が設けられている。
これにより、支持体(柱状体を含む)の第1面側から第2面側へと伝達されてきた熱を伝達する一方で、支持体の第2面と放熱体との間における電気的絶縁状態を担保することができる。
この結果、例えば、支持体として電気回路基板を用いた場合でも、熱の伝達経路が電気回路へ悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0019】
第6の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、発熱体および熱拡散体と第1面との間に配置されたはんだ層を、さらに備えている。
ここでは、例えば、支持体として電気回路基板を用いた場合において、発熱体および熱拡散体をはんだ層を介して支持体に固定している。
これにより、安価な方法によって確実に発熱体および熱拡散体を支持体の第1面に固定するとともに、熱の伝達を促すことができる。
【0020】
第7の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、熱拡散体は、第1面に向かって突出し、支持体に挿入される突起部と有している。
ここでは、熱拡散体における第1面と対向する部分に、第1面に向かって突出する突起部が設けられている。
これにより、突起部が第1面に刺さるように配置されることで、熱拡散体が第1面において位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0021】
第8の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、第1面において発熱体および熱拡散体の周囲を覆うように配置されたレジスト層を、さらに備えている。
【0022】
ここでは、第1面において、発熱体と発熱体に隣接して配置された熱拡散体の周囲を覆うようにレジスト層が設けられている。
これにより、製造過程において形成されるレジスト層を、熱拡散体の周囲に残すことで、熱拡散体が第1面において位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0023】
第9の発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、柱状体は、銅インレイを含む。
ここでは、支持体の第1面から第2面へと熱を伝達する柱状体として、銅インレイを用いる。
これにより、安価かつ伝熱性の高い銅を用いた柱状体を用いて、効率よく、第1面側から第2面側へと熱を伝達することができる。
【0024】
第10発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、支持体は、伝熱性を有する樹脂製の基板、またはセラミック基板を含む。
ここでは、支持体として、伝熱性を有する樹脂製の基板やセラミック基板を用いる。
これにより、発熱体において生じた熱を、支持体を介して、所定の方向へ伝達することができる。
【0025】
第11発明に係る電子部品の放熱構造は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る電子部品の放熱構造であって、発熱体は、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップを含む。
ここでは、発熱体として、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップを挙げている。
これにより、半導体デバイス、コンデンサ、および抵抗チップ等の発熱体を含む電子部品において、効率よく放熱体へ熱を伝達して放熱することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電子部品の放熱構造によれば、発熱体の熱を効率よく放熱体へ伝達して放熱効果を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係る電子部品の放熱構造(以下、放熱構造20と示す。)について、
図1〜
図5を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態に係る放熱構造20は、半導体デバイス10等の発熱体を含む電力変換装置等における放熱効果を高めるために構成されている。そして、放熱構造20は、
図1および
図2に示すように、半導体デバイス(発熱体)10と、基板(支持体)11と、はんだ層12aと、ヒートスプレッダ13と、銅インレイ(柱状体)14と、絶縁層15と、ヒートシンク16と、を備えている。
【0029】
半導体デバイス(発熱体)10は、
図1および
図2に示すように、基板11のほぼ中央に配置されている。そして、半導体デバイス10は、電力変換装置等の各種装置に搭載されており、電力供給によって発熱する。
このため、本実施形態の放熱構造20では、半導体デバイス10において生じた熱を、効率よく大気へ放出する構造を採用している。
【0030】
基板(支持体)11は、ガラスエポキシ等の樹脂によって形成された板状の部材であって、半導体デバイス10およびヒートスプレッダ13を支持する。そして、基板11は、
図1および
図2に示すように、第1面11a、第2面11b、本体部11c、および銅箔(伝熱層)11d,11eを有している。
第1面11aは、
図2における基板11の上面を構成しており、半導体デバイス10およびヒートスプレッダ13が接触した状態で配置されている。そして、第1面11aは、基板11に含まれる銅箔11dによって形成されている。
【0031】
第2面11bは、
図2における基板11の下面を構成しており、ヒートシンク16と接触した状態で配置されている。そして、第2面11bは、基板11に含まれる銅箔11eによって形成されている。
本体部11cは、ガラスエポキシ等の樹脂によって成形されており、基板11の中央部分の層を構成する。そして、本体部11cは、円柱状の複数の銅インレイ14が第1面11aから第2面11bにかけて埋め込まれるように配置されている。
【0032】
銅箔11d,11eは、基板11の表面および裏面側にそれぞれ配置された銅製の薄膜であって、導電性および伝熱性を有している。これにより、第1面11a側に配置された銅箔11dは、基板11の第1面11aに配置された電気回路を電気的に接続する。
はんだ層12aは、
図1および
図2に示すように、基板11の第1面11aに対して、半導体デバイス10等を電気的に接続しつつ固定するために、製造過程における半田付け工程において形成される。そして、はんだ層12aは、銅箔11d,11eと同様に、導電性および伝熱性を有している。
【0033】
ヒートスプレッダ13は、銅製のブロック体であって、発熱体(半導体デバイス10)と放熱体(ヒートシンク16)との間における緩衝体として、放熱性を向上させるために設けられている。そして、ヒートスプレッダ13は、
図1および
図2に示すように、基板11の第1面11aにおける半導体デバイス10の近傍に隣接して配置されている。
より詳細には、2つのヒートスプレッダ13が、
図1および
図2に示すように、図中における左右から半導体デバイス10を挟み込むように配置されている。そして、ヒートスプレッダ13は、半導体デバイス10において生じた熱を、第1面11aに沿って面方向に拡散する。
【0034】
これにより、半導体デバイス10において生じた熱を、半導体デバイス10が配置された第1面11aに沿って面方向に拡散することができる。よって、半導体デバイス10から離れた位置にある銅インレイ14(銅インレイ14b)に対しても十分に熱を伝達することができる。
ここで、本実施形態の放熱構造20では、
図2等に示すように、放熱性を向上させるために、ヒートスプレッダ13が第1面11aに配置されている。
【0035】
このため、第1面11a側の空間に余裕がある場合には、ヒートスプレッダ13の厚みを増大させることで、ヒートスプレッダ13における伝熱性をさらに向上させることができる。さらに、第1面11aにヒートスプレッダ13を追加するだけの簡易な構成により、放熱構造20の放熱性を容易に向上させることができる。
さらに、基板11の第1面11aにヒートスプレッダ13が追加されたことで、熱伝導率の高いヒートスプレッダ13の表面からも熱を放出することができるため、放熱性をさらに向上させることができる。
【0036】
銅インレイ(柱状体)14は、
図1および
図2に示すように、銅によって形成された円柱状の部分であって、導電性および伝熱性を有している。そして、銅インレイ14は、基板11の第1面11a側と第2面11b側とにそれぞれ配置された銅箔11d,11eと上下の端部が接続されるように配置されている。
これにより、基板11の第1面11a側と第2面11b側との間において、4つの銅インレイ14を介して電気的に接続されるとともに、銅インレイ14が熱伝達の経路となることで、半導体デバイス10において生じた熱を効率よく第1面11a側から第2面11b側へ伝達することができる。
【0037】
また、銅インレイ14は、
図2に示すように、半導体デバイス10の直下に配置された銅インレイ(第1柱状体)14aと、半導体デバイス10から離れた位置に配置された銅インレイ(第2柱状体)14bと、を有している。
銅インレイ(第1柱状体)14aは、
図3(a)および
図3(b)に示すように、半導体デバイス10の直下の位置、すなわち、平面視において半導体デバイス10の一部が重なる位置に配置されている(
図1参照)。
【0038】
これにより、半導体デバイス10において生じた熱を、銅箔11dを介して銅インレイ14aに対しても効率よく伝達することができる。
さらに、銅インレイ14aは、
図3(a)および
図3(b)に示すように、半導体デバイス10とヒートスプレッダ13とにまたがる位置、すなわち、平面視において半導体デバイス10とヒートスプレッダ13とに一部が重なる位置に配置されている(
図1参照)。
【0039】
これにより、半導体デバイス10から銅箔11dを介して銅インレイ14aに伝達された熱を、銅インレイ14aの第1面11a側の端部において、半導体デバイス10に隣接配置されたヒートスプレッダ13に対しても伝達することができる。
銅インレイ(第2柱状体)14bは、半導体デバイス10から離れた位置、かつヒートスプレッダ13の直下であって、銅インレイ14aの外側に隣接して配置されている。そして、銅インレイ14bは、半導体デバイス10から銅箔11dおよび銅インレイ14aの一部を介してヒートスプレッダ13に伝達された熱を、第1面11a側から第2面11b側へと伝達する。
【0040】
これにより、ヒートスプレッダ13によって第1面11aの面方向に拡散された熱を、銅インレイ14bを介して、第1面11a側から第2面11b側へと伝達することができる。
絶縁層15は、基板11とヒートシンク16との間における電気的な絶縁を確保するために、
図1および
図2に示すように、基板11の第2面11bとヒートシンク16との間に設けられている。そして、絶縁層15は、導電性を有さず、伝熱性を有している。
【0041】
これにより、複数の銅インレイ14を介して、第1面11a側から第2面11b側へと伝達された熱を、ヒートシンク16へ伝達することができる。
ヒートシンク16は、高い熱伝導率を有するアルミニウム製の金属ブロック体であって、
図1および
図2に示すように、絶縁層15を介して、基板11の第2面11b側に接触するように設けられている。また、ヒートシンク16は、第2面11bと同等か、あるいは第2面11bよりも面積が大きい。
【0042】
これにより、ヒートシンク16は、基板11および複数の銅インレイ14等を介して第1面11a側から第2面11b側へと伝達されてきた熱を、効率よく、大気へと放出することができる。
【0043】
<半導体デバイス10からの熱の伝達経路>
本実施形態の放熱構造20では、以上のような構成を備え、半導体デバイス10において生じた熱を、効率よくヒートシンク16へ伝達することで、放熱性を向上させる。
具体的には、放熱構造20は、
図4に示す経路に沿って、半導体デバイス10において生じた熱を、第1面11a側から第2面11b側へと伝達し、ヒートシンク16から放出する。
すなわち、半導体デバイス10において生じた熱は、
図4に示すように、まず、半導体デバイス10からはんだ層12aを介して基板11の第1面11aへ伝達される。
【0044】
次に、第1面11aに伝達された熱は、
図4に示すように、銅箔11dおよび銅インレイ14aの端部を介して、
図4における左右方向(第1面11aの面方向)へと伝達される。
次に、第1面11aを介してヒートスプレッダ13に伝達された熱は、
図4に示すように、銅箔11dよりも厚みが大きいヒートスプレッダ13において、効率よく第1面11aの面方向に沿って拡散される。
【0045】
ここで、
図5に示すヒートスプレッダ13における熱抵抗は、ヒートスプレッダ13の厚みを大きくすることによって、小さくすることができる。すなわち、ヒートスプレッダ13は、基板11の第1面11aに半導体デバイス10に隣接して配置されているため、第1面11a側の空間次第で、必要な熱抵抗になるように厚みをコントロールすることができる。
【0046】
次に、ヒートスプレッダ13において面方向に拡散された熱は、
図4に示すように、ヒートスプレッダ13の直下に配置された複数の銅インレイ14を介して、第1面11a側から第2面11b側へと伝達される。
ここで、ヒートスプレッダ13の直下には、
図4に示すように、第1面11a側における銅インレイ14aの端面の全体と、銅インレイ14bの端面の一部とが配置されている。
【0047】
次に、基板11の第2面11b側へ伝達された熱は、
図4に示すように、絶縁層15を介してヒートシンク16へと伝達される。
このとき、ヒートシンク16に対して伝達される熱は、半導体デバイス10を中心とする円の中心が最も熱量が大きく、径方向外側になるほど熱量が小さくなりやすい。
しかし、本実施形態の放熱構造20では、上述したように、基板11の第1面11aにおける半導体デバイス10に隣接する位置にヒートスプレッダ13が設けられている。
【0048】
これにより、ヒートスプレッダ13が設けられていない従来の構成と比較して、第1面11aの面方向における熱の伝達効率を向上させることで、半導体デバイス10を中心とする円の中心と外側とにおける熱量の差を縮小することができる。
よって、半導体デバイス10において生じた熱を、銅箔11d等を介して伝達されたヒートスプレッダ13において第1面11aの面方向に沿って効率よく拡散し、銅インレイ14等を介してヒートシンク16へと伝達することで、効率よく大気へ放出することができる。
【0049】
<主な特徴>
本実施形態の放熱構造20は、
図2等に示すように、半導体デバイス10、基板11、ヒートスプレッダ13、銅インレイ14、絶縁層15、ヒートシンク16を備える。基板11は、半導体デバイス10が第1面11aに配置され、半導体デバイス10の熱が伝達される。ヒートスプレッダ13は、第1面11aにおける半導体デバイス10と近接する位置に配置され、半導体デバイス10から基板11に伝達された熱を第1面11aの面方向に沿って拡散する。銅インレイ14は、基板11の内部に設けられている。そして、銅インレイ14は、第1面11a側において半導体デバイス10とヒートスプレッダ13とにまたがるように配置された銅インレイ14aと、ヒートスプレッダ13から熱が伝達される位置に配置された銅インレイ14bとを有する。ヒートシンク16は、基板11の第2面11bに配置され、銅インレイ14を介して伝達される熱を大気に放出する。
【0050】
これにより、半導体デバイス10において生じた熱は、基板11の第1面11a側を介してヒートスプレッダ13に伝達され、ヒートスプレッダ13によって第1面11aの面方向に拡散され、銅インレイ14を介して第2面11b側に配置されたヒートシンク16へ伝達される。
このとき、第1面11aにおいて、ヒートスプレッダ13が半導体デバイス10に隣接する位置に配置されたことにより、半導体デバイス10において生じた熱は、ヒートスプレッダ13によって第1面11aの面方向に沿って拡散される。
【0051】
よって、半導体デバイス10の直下に配置された銅インレイ14aからだけでなく、半導体デバイス10から離れた位置に配置された銅インレイ14bからも半導体デバイス10において生じた熱が効率よく伝達され、基板11の第2面11b側に設けられたヒートシンク16の全体から効率よく熱を放出することができる。
この結果、半導体デバイス10において生じた熱を、従来よりも効率よくヒートシンク16へ伝達して放熱効果を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の放熱構造20では、基板11からみて、発熱体としての半導体デバイス10が配置された第1面11aとは反対側の第2面11bに配置されたヒートシンク16から効率よく熱を放出する構成において、基板11の第1面11aにおける半導体デバイス10に隣接する位置に、ヒートスプレッダ13を追加しただけの簡素な構成により、放熱効果を向上させることができる。
【0053】
特に、第1面11a側の空間に余裕がある場合には、第1面11aに設けられるヒートスプレッダ13の厚みを大きくすることで、ヒートスプレッダ13の熱抵抗をさらに低下させて熱伝達効率の高い構造とすることができる。
【実施例】
【0054】
本発明の一実施例に係る放熱構造20において、放熱効果を検証する実験を実施した。
なお、本実施例の放熱構造20の構成は、
図2に示す放熱構造20と同様であるため、同じ機能を持つ構成には同じ符号を付し、ここでは、その詳細な説明は省略する。
具体的には、本実施例では、放熱構造20における放熱効果を検証するために、
図6に示すように、半導体デバイス10の表面温度t1と、半導体デバイス10の直下に配置された銅インレイ14aではなく半導体デバイス10から離れた位置に配置された端側の銅インレイ14bの表面温度t2を測定した。
【0055】
実験条件としては、半導体デバイスの発熱量30W、ヒートシンクの温度50℃(固定)、銅箔11d,11eおよびヒートスプレッダ13および銅インレイ14の熱伝導率4.02×10
2(W/m/deg)、はんだ層12aの熱伝導率6.4×10
1(W/m/deg)、絶縁層15の熱伝導率2W/m/deg、基板11の本体部11c(ガラスエポキシ)の熱伝導率2.93×10
−1(W/m/deg)、ヒートシンク16の熱伝導率2.37×10
2(W/m/deg)とした。
【0056】
本実施例の構成によれば、上記実施形態において説明した通り、半導体デバイス10において生じた熱は、基板11の第1面11a側(銅箔11dおよび銅インレイ14aの表面を含む)を介してヒートスプレッダ13へ伝達される。そして、ヒートスプレッダ13は、伝達された熱を、第1面11aに沿って面方向へ拡散した後、銅箔11dおよび銅インレイ14a,14bを介して第2面11b側へ伝達する。さらに、第2面11b側へ伝達された熱は、絶縁層15を介してヒートシンク16へ伝達され、ヒートシンク16から大気へと放出される。
【0057】
本実施例の比較例に係る放熱構造320の構成を
図7に示す。
図7に示す比較例の放熱構造320では、
図6の本実施例の放熱構造20と比較して、基板11の第1面11a上に、ヒートスプレッダが設けられていない点で異なっている。
すなわち、比較例の放熱構造320では、
図7に示すように、基板11の第1面11a上には、発熱体としての半導体デバイス10のみが配置されている。
【0058】
よって、放熱構造320の構成では、半導体デバイス10において生じた熱は、主に、基板11の第1面11a側に配置された銅箔11dを介して、第1面11aの面方向に伝達される。
しかし、比較例の放熱構造320では、
図6の本実施例と比較すると、第1面11aにヒートスプレッダ13が配置されていないため、第1面11aの面方向における熱の伝達が十分でないおそれがある。
【0059】
本比較例では、上述した本実施例と同様に、放熱構造320における放熱効果を検証するために、
図7に示すように、半導体デバイス10の表面温度t1と、半導体デバイス10の直下に配置された銅インレイ14aではなく半導体デバイス10から離れた位置に配置された端側の銅インレイ14bの表面温度t2を測定した。
以下、本実施例と比較例とを比較した結果について示す。
【0060】
<本実施例と比較例との比較結果>
本実施例の放熱構造20と比較例の放熱構造320とにおいて、半導体デバイス10の表面温度t1と、半導体デバイス10から離れた位置に配置された端側の銅インレイ14bの表面温度t2の測定結果を比較した結果を、
図8(a)および
図8(b)に示す。
その結果、半導体デバイス10の表面温度t1は、
図8(a)に示すように、本実施例の放熱構造20では、90.3℃であったのに対して、比較例の放熱構造320では、97.2℃であった。
【0061】
このため、本実施例では、ヒートスプレッダ13が半導体デバイス10に近接配置されていることで、半導体デバイス10において生じた熱が、比較例の放熱構造320よりも他の部品へ伝達されやすいため、半導体デバイス10の表面温度t1が比較例よりも6.9℃も低かったものと推測される。
一方、半導体デバイス10から離れた位置に配置された端側の銅インレイ14bの表面温度t2は、
図8(b)に示すように、本実施例の放熱構造20では、68.4℃であったのに対して、比較例の放熱構造320では、60.6℃であった。
【0062】
このため、本実施例では、ヒートスプレッダ13が半導体デバイス10に近接配置されていることで、第1面11aの面方向におけるヒートスプレッダ13の熱拡散効果が得られる。よって、半導体デバイス10において生じた熱が、比較例の放熱構造320よりも第1面11aの面方向へ拡散され、半導体デバイス10から離れた位置にある端側の銅インレイ14bに対しても十分な熱が伝達された結果、その表面温度t2が比較例よりも7.8℃も高かったものと推測される。
【0063】
以上の結果から、本実施例に係る放熱構造20によれば、半導体デバイス10において生じた熱を、基板11の第1面11aにおいて半導体デバイス10に隣接する位置に配置されたヒートスプレッダ13を用いて面方向へ拡散することで、比較例よりも高い放熱効果を得ることができることが分かった。
よって、半導体デバイス10の直下に配置された銅インレイ14aからだけでなく、半導体デバイス10から離れた位置に配置された銅インレイ14bからも半導体デバイス10において生じた熱が効率よく伝達された結果、基板11の第2面11b側に設けられたヒートシンク16の全体から効率よく熱を放出することができることが分かった。
【0064】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、半導体デバイス10およびヒートスプレッダ13を、はんだ層12aによって固定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
例えば、
図9に示すように、ヒートスプレッダ13の基板11の第1面11aに対向する面に、複数の突起部13aが設けられており、突起部13aが第1面11aに埋め込まれた放熱構造120であってもよい。
この場合には、ヒートスプレッダ13が基板11に対して面方向において固定されるため、実装時等におけるヒートスプレッダ13の位置ずれ、傾き等の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
(B)
上記実施形態では、半導体デバイス10およびヒートスプレッダ13を、はんだ層12aによって固定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図10に示すように、半導体デバイス(発熱体)10およびヒートスプレッダ13の周囲を取り囲むようにレジスト層12bを残した放熱構造220であってもよい。
この場合には、ヒートスプレッダ13が基板11に対して面方向における移動を、製造過程において形成されるレジスト層12bによって規制することができるため、実装時等におけるヒートスプレッダ13の位置ずれ、傾き等の発生を効果的に防止することができる。
【0067】
(C)
上記実施形態では、第1面11aにおいて半導体デバイス10とヒートスプレッダ13とにまたがるように配置された銅インレイ14aが2つ設けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、半導体デバイスの両側にそれぞれ配置されたヒートスプレッダにまたがるように配置された単一の銅インレイを用いた構成であってもよい。
【0068】
(D)
上記実施形態では、基板11の第1面11a上に、2つのヒートスプレッダ13が半導体デバイス10を挟み込むように2つ配置された構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第1面において半導体デバイス等の発熱体に隣接配置されるヒートスプレッダは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0069】
(E)
上記実施形態では、基板11の第1面11a側から第2面11b側へと熱を伝達する銅インレイ14が基板11内に4つ設けられた構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、支持体に設けられる銅インレイ等の柱状体の数は4つに限らず、ヒートスプレッダ(熱拡散体)が設けられている第1面の領域に合わせて適切な数の柱状体が設けられていればよい。
【0070】
(F)
上記実施形態では、発熱体として、半導体デバイス10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、発熱体は、コンデンサ、抵抗チップ等の電子部品であってもよい。
【0071】
(G)
上記実施形態では、ガラスエポキシを材料とする樹脂製の基板11を支持体として用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、支持体は、ガラスエポキシ以外の伝熱性のある樹脂を用いて形成されたものであってもよいし、樹脂以外のセラミック基板等を用いてもよい。
【0072】
(H)
上記実施形態では、基板11の第1面11aに対して、発熱体(半導体デバイス10)と熱拡散体(ヒートスプレッダ13)とがはんだ層12aを介して半田付けされた構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、発熱体および熱拡散体は、半田付けに限らず、他の方法を用いて第1面に固定されていてもよい。
【0073】
(I)
上記実施形態では、伝熱性を有する柱状体として、銅インレイ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、柱状体として、伝熱性を有する銅以外の金属(例えば、アルミニウム、鉄等)、セラミック等によって成形された部材を用いてもよい。
【0074】
(J)
上記実施形態では、基板11の第2面11bとヒートシンク16との間に絶縁層15が設けられた放熱構造20を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、基板11上に電気回路等が設けられていない構成である場合には、基板11とヒートシンク16とを電気的に絶縁する必要がないため、絶縁層を含まない構成であってもよい。
【0075】
(K)
上記実施形態では、ヒートスプレッダ13が、銅によって成形されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ヒートスプレッダ(熱拡散体)としては、熱伝導率が高い素材であれば、銅以外の金属(例えば、アルミニウム、鉄等)、セラミック等の他の材料で成形されていてもよい。
【0076】
(L)
上記実施形態では、ヒートシンク16が、アルミニウムによって成形されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ヒートシンク(放熱体)としては、熱伝導率が高い素材であれば、アルミニウム以外の金属、材料等で成形されていてもよい。
【解決手段】放熱構造20は、半導体デバイス10、基板11、ヒートスプレッダ13、銅インレイ14、絶縁層15、ヒートシンク16を備える。基板11は、半導体デバイス10が第1面11aに配置され、半導体デバイス10の熱が伝達される。ヒートスプレッダ13は、第1面11aにおいて半導体デバイス10に近接配置され、基板11に伝達された熱を拡散する。銅インレイ14は、基板11内に設けられ、第1面11a側において半導体デバイス10とヒートスプレッダ13とにまたがるように配置された銅インレイ14aと、ヒートスプレッダ13から熱が伝達される位置に配置された銅インレイ14bとを有する。ヒートシンク16は、基板11の第2面11bに配置され、銅インレイ14を介して伝達される熱を大気に放出する。