特許第6551580号(P6551580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551580タイヤ内面への帯状部材の貼付け装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6551580
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】タイヤ内面への帯状部材の貼付け装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20190722BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B29D30/06
   B60C5/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-119898(P2018-119898)
(22)【出願日】2018年6月25日
【審査請求日】2019年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸久
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/079247(WO,A1)
【文献】 特開2009−248450(JP,A)
【文献】 特表2017−537010(JP,A)
【文献】 特表2017−520461(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0043653(KR,A)
【文献】 国際公開第2016/067192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内面に帯状部材を貼付けるタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置であって、
前記帯状部材を巻回された状態で保持する保持体と、この保持体を前記タイヤ内部に配置する支持アームと、前記タイヤの内部に配置されて前記内面に対して近接および離反するパドルと、前記保持体に保持されている帯状部材を前記内面に向かって繰り出す導出駆動部と、前記タイヤの内部に配置されている前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させる回転駆動部とを備えて、巻回された状態の前記帯状部材から前記導出駆動部により前記内面に向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分を、前記保持体に対する前記タイヤの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で前記パドルを前記内面に近接移動させることにより押圧して前記内面に圧着接合する接合動作と、この接合動作の後に、前記パドルを前記内面から離反移動させて、前記回転駆動部により前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の前記帯状部材から前記導出駆動部により前記内面に向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分を形成する繰り出し動作とが繰り返し行われて、順次繰り出された所定長さの前記繰り出し部分が前記内面に圧着接合される構成にしたことを特徴とするタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置。
【請求項2】
前記パドルが前記保持体に接続されていて、前記保持体と前記パドルとが一体的に前記内面に対して近接および離反移動する構成にした請求項1に記載のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置。
【請求項3】
前記パドルが前記保持体とは独立して前記内面に対して近接および離反移動する構成にした請求項1に記載のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置。
【請求項4】
導出駆動部が前記保持体に保持されている前記帯状部材の外周面を転動する回転体である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置。
【請求項5】
前記内面を10℃以上40℃以下に調節する温調機構を有する請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置。
【請求項6】
タイヤの内面に帯状部材を貼付けるタイヤ内面への帯状部材の貼付け方法であって、
前記帯状部材を巻回された状態で保持する保持体と、前記内面に対して近接および離反するパドルとを前記タイヤ内部に配置して、巻回された状態の前記帯状部材から前記内面に向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分を、前記タイヤの内部に配置した前記保持体に対する前記タイヤの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で前記パドルを前記内面に近接移動させることにより押圧して前記内面に圧着接合する接合動作と、この接合動作の後に、前記パドルを前記内面から離反移動させて、前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の前記帯状部材から前記内面に向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分を形成する繰り出し動作とを繰り返し行って、順次繰り出された所定長さの前記繰り出し部分を前記内面に圧着接合することを特徴とするタイヤ内面への帯状部材の貼付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内面への帯状部材の貼付け装置および方法に関し、さらに詳しくは、タイヤ内面に吸音材などの帯状部材を確実に強固に貼付けることができる貼付け装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、騒音を発生させる原因の一つにタイヤ内部に充填された空気の振動による空洞共鳴音がある。この空洞共鳴音は、タイヤを転動させたときにトレッド部が路面の凹凸によって振動し、トレッド部の振動がタイヤ内部の空気を振動させることによって生じる。このような騒音を低減する対策として、タイヤ内面のタイヤ周方向に多孔質材料からなる帯状の吸音材を貼付けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の帯状スポンジ材(吸音材)の貼付け方法および装置では、貼付け長さで予め切断した帯状スポンジ材を渦巻状に巻回して形成した巻回体をスポンジ保持枠に取付ける。そして、帯状スポンジ材の一端をトレッド内面に付着させた状態でタイヤを回転させてスポンジ保持枠から帯状スポンジ材を順次取り出しながら貼付けローラによってトレッド内面に接着させる。貼付けローラを帯状スポンジ材に対して転動させながら押圧するため、押圧力を大きくすると帯状スポンジ材には余計な引張力が付与されて破断し易くなる。それ故、貼付けローラによって帯状スポンジ材を強く押圧するには不利な方法であり、帯状スポンジ材をトレッド内面に対して強固に貼り付けるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、タイヤ内面に吸音材などの帯状部材を確実に強固に貼付けることができる帯状部材の貼付け装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置は、タイヤの内面に帯状部材を貼付けるタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置であって、前記帯状部材を巻回された状態で保持する保持体と、この保持体を前記タイヤ内部に配置する支持アームと、前記タイヤの内部に配置されて前記内面に対して近接および離反するパドルと、前記保持体に保持されている帯状部材を前記内面に向かって繰り出す導出駆動部と、前記タイヤの内部に配置されている前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させる回転駆動部とを備えて、巻回された状態の前記帯状部材から前記導出駆動部により前記内面に向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分を、前記保持体に対する前記タイヤの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で前記パドルを前記内面に近接移動させることにより押圧して前記内面に圧着接合する接合動作と、この接合動作の後に、前記パドルを前記内面から離反移動させて、前記回転駆動部により前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の前記帯状部材から前記導出駆動部により前記内面に向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分を形成する繰り出し動作とが繰り返し行われて、順次繰り出された所定長さの前記繰り出し部分が前記内面に圧着接合される構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ内面への帯状部材の貼付け方法は、タイヤの内面に帯状部材を貼付けるタイヤ内面への帯状部材の貼付け方法であって、前記帯状部材を巻回された状態で保持する保持体と、前記内面に対して近接および離反するパドルとを前記タイヤ内部に配置して、巻回された状態の前記帯状部材から前記内面に向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分を、前記タイヤの内部に配置した前記保持体に対する前記タイヤの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で前記パドルを前記内面に近接移動させることにより押圧して前記内面に圧着接合する接合動作と、この接合動作の後に、前記パドルを前記内面から離反移動させて、前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の前記帯状部材から前記内面に向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分を形成する繰り出し動作とを繰り返し行って、順次繰り出された所定長さの前記繰り出し部分を前記内面に圧着接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記接合動作と前記繰り出し動作を交互に繰り返し行い、前記接合動作では、タイヤの内面に向かって繰り出された帯状部材の所定長さの繰り出し部分を、前記タイヤの内部に配置されている前記保持体に対する前記タイヤの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で前記パドルにより押圧して前記内面に圧着接合するので、この繰り出し部分には余計な引張力を付与することなく十分に押圧できる。前記繰り出し動作では、前記パドルを前記内面から離反移動させて、前記保持体に対して前記タイヤを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の前記帯状部材から前記内面に向かって繰り出すことで新たな所定長さの繰り出し部分を形成するので、この動作の際は新たな繰り出し部分に余計な引張力が付与されることを回避できる。そのため、帯状部材の損傷を回避しつつ前記内面に強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の貼付け装置が配置されたタイヤの内部をタイヤ正面視で例示する説明図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図1のタイヤの内部をタイヤ側面視で例示する説明図である。
図4図3の帯状部材の繰り出し部分をタイヤの内面にセットした状態を例示する説明図である。
図5図4の繰り出し部分に対する接合動作を例示する説明図である。
図6図5の接合動作の次に行う繰り出し動作を例示する説明図である。
図7図6の繰り出し動作の次に行う接合動作を例示する説明図である。
図8】貼付け装置の別の実施形態が配置されたタイヤの内部を拡大してタイヤ正面視で例示する説明図である。
図9図8の実施形態による接合動作をタイヤ内部を側面視にして例示する説明図である。
図10図9の接合動作の次に行う繰り出し動作を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置および方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図3に例示する本発明のタイヤ内面への帯状部材の貼付け装置1の実施形態は、タイヤTの内面Ta(以下、タイヤ内面Taという)に吸音材などの帯状部材Bを貼付ける際に使用する。この内面Taとは、タイヤTのトレッド面の内周側に相当する面である。この実施形態では、帯状部材Bの一方面に配置されている接着面が離型紙Pにより覆われている。図中の一点鎖線CLは、タイヤTのタイヤ軸を示している。図3では帯状部材Bを二点鎖線で示している。
【0012】
貼付け装置1は、帯状部材を渦巻き状に巻回された状態で保持する保持体2と、この保持体2をタイヤ内部に配置する支持アーム11と、タイヤTの内部に配置されるパドル3と、保持体2を繰り出す導出駆動部5と、タイヤ軸CLを中心にしてタイヤTを回転させる回転駆動部6と、貼付け装置1を構成する様々な部品(機構)の動作を制御する制御部10とを備えている。この貼付け装置1はさらに内面Taを所定温度範囲に調節する温調機構9を有している。
【0013】
保持体2は、円盤状の保持プレート2aを有していて、この保持プレート2aの一方面には保持シャフト2bおよびパドルシャフト3aが突設されている。離型紙Pを外周側にして渦巻き状に巻回された帯状部材Bの中央部に保持シャフト2bが挿通することで、巻回された状態の帯状部材Bは保持体2に回転可能に保持される。保持プレート2aにはさらに、帯状部材Bから剥がされた離型紙Pを巻き取る巻取り部7が設けられている。
【0014】
支持アーム11は、タイヤTの外部に配置されるベース12に立設されたポスト12aに接続されている。ポスト12aはベース12に対して横方向(タイヤ幅方向)スライド可能になっていて所望の位置で固定される。支持アーム11はポスト12aに対して上下方向にスライド可能になっている。この実施形態では、タイヤ軸CL方向に延在する支持アーム11は移動機構8によってポスト12aに沿って上下に移動する。支持アーム11が上下移動することで、タイヤTの内側に配置された保持体2は内面Taに対して近接および離反移動することになる。移動機構8の動作は制御部10により制御される。
【0015】
パドル3は、例えば帯状部材Bの幅と同等またはそれ以上の幅寸法を有する板状体である。内面Taに対向するパドル3の面は、内面Taに沿うような曲面であるとよい。
パドル3に形成された穴にパドルシャフト3aが挿通して、パドル3はパドルシャフト3aを中心にして回動可能になっている。パドル3は、保持プレート2に取付けられたバネなどの付勢部材4、或いは、ストッパによって回動が規制される。
【0016】
導出駆動部5は、巻回された状態で保持体2に保持されている帯状部材Bを内面Taに向かって繰り出す。この実施形態では導出駆動部5は、保持プレート2aに回転可能に設置された円柱状の回転体5aと、回転体5aを回転させる駆動モータ5bと、回転体5aと周面どうしを対向して保持プレート2aに設置された回転ローラ5cとを有している。巻回された状態の帯状部材Bから繰り出された繰り出し部分Baは、回転体5aと回転ローラ5cとの間に挿入される。そして、回転体5aの外周面が繰り出し部Baの外周面(離型紙P)に接触して回転することで、両者の間の摩擦によって帯状部材Bがさらに繰り出される。導出駆動部5の動作は制御部10により制御される。
【0017】
回転駆動部6はこの実施形態では、タイヤTのトレッド面に当接して回転する複数の保持ローラ6が採用されている。それぞれの保持ローラ6はすべてが回転駆動する仕様でも、1つの保持ローラ6だけが回転駆動する仕様でもよく、少なくとも1つの保持ローラ6が回転駆動する仕様であればよい。それぞれの保持ローラ6を同じ一方向に回転させることでタイヤ軸CLを中心にしてタイヤTが他方向に回転する。それぞれの保持ローラ6を同じ他方向に回転させることでタイヤ軸CLを中心にしてタイヤTが一方向に回転する。回転駆動部6の動作は制御部10により制御される。
【0018】
この実施形態では、起立状態のタイヤTの下端部にタイヤ周方向に間隔をあけて2か所、タイヤTの上端部にタイヤ周方向に間隔をあけて2か所の合計4か所に保持ローラ6が配置されている。例えば、起立状態のタイヤTの下端部にタイヤ周方向に間隔をあけて2か所だけに保持ローラ6を配置してもよく、この2か所に加えて、タイヤTの上端部に1つの保持ローラ6を配置してもよい。
【0019】
タイヤTを貼付け装置1にセットする際には、例えばタイヤTの上端部の2か所の保持ローラ6は退避位置に後退させておく。そして、タイヤTを下端部の2か所の保持ローラ6に載せて起立状態にした後で、上端部の2か所の保持ローラ6を使用位置に移動させて、図3に例示するようにタイヤTをセットする。
【0020】
回転駆動部6は、タイヤTの内部に配置されている保持体2に対してタイヤTを相対的にタイヤ周方向に回転させることができればよい。したがって、固定されたタイヤTに対して保持体2をタイヤ周方向に回転移動させる機構を回転駆動部6として採用することもできる。
【0021】
温調機構9は、内面Taを例えば10℃以上40以下に調節する。温調機構9としては、ヒータ、温風や冷風を発生させる送風機などを採用することができる。温調機構9は制御部10により制御される。
【0022】
次に、本発明のタイヤ内面への帯状部材の貼付け方法の手順を説明する。
【0023】
この実施形態では、図3に例示するタイヤTの下端部に配置された2つの保持ローラ6のタイヤ周方向の間の位置で、帯状部材B(繰り出し部分Ba)が内面Taに圧着接合される。帯状部材Bを内面Taに圧着接合する位置は、この位置に限定されないが、起立状態のタイヤTの下端部にすると、帯状部材Bを内面Taにより安定して圧着接合し易くなる。
【0024】
まず、図1に例示するように保持ローラ6によってタイヤTを起立状態で保持した状態にした後で、保持体2をタイヤTの内部に配置する。保持体2には帯状部材Bを巻回された状態で予め保持しておく。保持シャフト2b、パドルシャフト3a等がタイヤ軸CL方向に延在するように保持体2をセットする。
【0025】
図3に例示するように、巻回された状態の帯状部材Bから繰り出し部分Baを繰り出して回転体5aと回転ローラ5cとの間を通過させる。次いで、図4に例示するように、さらに帯状部材Bを繰り出し、剥がした離型紙Pの先端部を巻取り部7に巻き付ける。繰り出し部分Baの先端部は内面Taに仮接合させる。これで繰り出し部分Baのセットが完了する。この時、繰り出し部分Baを接合させる内面Taに対して保持体2は、ある程度上方に間隔をあけた位置(繰り出し位置)に位置決めされている。
【0026】
次いで、図5に例示する接合動作を行う。接合動作は、タイヤTの内部に配置した保持体2に対するタイヤTの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で行う。即ち、保持ローラ6の回転を停止させた状態で接合動作を行う。接合動作では、パドル3を所定の接合位置まで下方移動させて内面Taに近接移動させる。これにより、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを、パドル3により押圧して内面Taに圧着接合する。この所定の接合位置(パドル3が下方移動した際の上下位置)は帯状部材Bの厚さ等によって予め設定されている。
【0027】
この実施形態では、移動機構8によって支持アーム11を下方移動させることで、保持体2とパドル3とを一体的に内面Taに対して近接移動させる。これにより、繰り出し部分Baはパドル3によって内面Taに向かって強く押圧される。
【0028】
次いで、図6に例示する繰り出し動作を行う。繰り出し動作では、パドル3を内面Taから離反移動させる。この実施形態では、移動機構8によって支持アーム11を上方移動させることで、保持体2とパドル3とを一体的に内面Taに対して離反移動させる。これにより、保持体2は図3の繰り出し位置に戻る。
【0029】
さらに繰り出し動作では、保持体2に対してタイヤTを相対的にタイヤ周方向(一方方向)に回転させるとともに、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分Baを形成する。即ち、保持ローラ6を回転させるとともに、回転体5aを回転させて、新たな所定長さの繰り出し部分Baを繰り出す。繰り出し部分Baの所定長さは予め設定されていて、保持ローラ6と回転体5aの動作によって調整できる。尚、この所定長さは、パドル3の押圧面のタイヤ周方向長さと同等あるはそれ以下にするとよい。
【0030】
次いで、図7に例示するように再度、接合動作を行う。このように接合動作と繰り出し動作とを繰り返し行って、順次繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを内面Taに圧着接合する。これにより、内面Taの必要なタイヤ周方向の範囲に帯状部材Bを圧着接合する。タイヤTを1周回転させると、タイヤ内面Taの全周に帯状部材Bが貼付けることができる。
【0031】
その後、帯状部材Bをその接合始点となる端面と重なる位置で切断し、保持体2に保持されている帯状部材Bと内面Taに貼付けられた帯状部材Bとを分離する。帯状部材Bの切断作業は、例えば、作業員がカッター等を用いて行う。帯状部材Bを切断する切断具を貼付け装置1に設けることもできる。
【0032】
このように接合動作を、保持体2に対するタイヤTの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で行い、所定長さの繰り出し部分Baをパドル3により押圧して内面Taに圧着接合するので、この繰り出し部分Baに対して余計な引張力を付与することなく十分に押圧できる。また、繰り出し動作では、パドル3を内面Taから離反移動させて、保持体2に対してタイヤTを相対的にタイヤ周方向に回転させるとともに、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出すことで新たな所定長さの繰り出し部分Baを形成するので、新たな繰り出し部分Baに対して余計な引張力が付与されることを回避できる。そのため、この接合動作と繰り出し動作を交互に繰り返し行うことで、帯状部材Bの損傷を回避しつつ内面Taに強固に接合することが可能になる。
【0033】
温調機構9は任意で設けることができるが、温調機構9を用いて帯状部材Bを圧着接合する際の内面Taの温度を10℃以上40℃以下(より好ましくは25℃以上40℃以下)に調整しておくと、帯状部材Bを内面Taに対してより強固に接合し易くなる。
【0034】
図8に例示する実施形態は、パドル3を内面Taに対して近接および離反移動させる構造が先の実施形態と異なっている。この実施形態では、保持プレート2aに流体シリンダ等の移動機構3bが設けられている。この移動機構3bによってパドル3が内面Taに対して近接および離反移動する。図8では帯状部材Bを二点鎖線で示している。
【0035】
詳述すると、パドルシャフト3aの一端部が移動機構3bのロッドに接続されていて、ロッドの進退移動によってパドルシャフト3aとともにパドル3が上下移動する。パドル3が下方移動すると内面Taに対して近接し、上方移動すると内面Taに対して離反する。即ち、パドル3が保持体3とは独立して内面Taに対して近接および離反移動する。
【0036】
図9に例示するように、この実施形態での接合動作は先の実施形態と同様、タイヤTの内部に配置した保持体2に対するタイヤTの相対的なタイヤ周方向の回転を停止させた状態で行う。ただし、保持体2をタイヤTの内部で所定の上下位置に固定した状態で、パドル3を保持体2とは独立して内面Taに近接させる。その他は先の実施形態と実質的に同じである。このようにして、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを、パドル3により押圧して内面Taに圧着接合する。
【0037】
次いで、図10に例示する繰り出し動作を行う。この実施形態では、保持体2をタイヤTの内部で所定の上下位置に固定した状態で、パドル3を保持体2とは独立して内面Taに対して離反させる。このパドル3の移動だけが先の実施形態と異なる。保持体2に対してタイヤTを相対的にタイヤ周方向(一方方向)に回転させるとともに、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分Baを形成する方法は先の実施形態と実質的に同じである。
【0038】
このように接合動作と繰り出し動作とを繰り返し行って、順次繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを内面Taに圧着接合する。この実施形態では、接合動作および繰り出し動作において、保持体2の上下位置を同じ一定位置にできるので、帯状部材Bを内面Taに対してより安定して貼付け易くなる。
【0039】
上記したいずれの実施形態においても、巻回された状態の複数の帯状部材Bを保持シャフト2bにスペーサを介在させてタイヤ軸CL方向に間隔をあけて並列して配置させることもできる。これにより、内面Taの所望のタイヤ幅方向位置に所望の幅の帯状部材Bを貼り付ける(圧着接合する)ことができる。
【0040】
本発明は、吸音材に限らず、その他の帯状部材Bを貼付ける際に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 貼付け装置
2 保持体
2a 保持プレート
2b 保持シャフト
3 パドル
3a パドルシャフト
3b 移動機構
4 付勢部材
5 導出駆動部
5a 回転体
5b 駆動モータ
5c 回転ローラ
6 回転駆動部(保持ローラ)
7 巻取り部
8 移動機構
9 温調機構
10 制御部
11 支持アーム
12 ベース
12a ポスト
T タイヤ
Ta タイヤの内面
CL タイヤ軸
B 帯状部材
Ba 繰り出し部分
P 離型紙
【要約】
【課題】タイヤ内面に吸音材などの帯状部材を確実に強固に貼付けることができる帯状部材の貼付け装置および方法を提供する。
【解決手段】帯状部材Bを巻回された状態で保持する保持体2と、パドル3とをタイヤTの内部に配置し、巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを、タイヤTのタイヤ周方向の回転を停止させた状態でパドル3を内面Taに近接移動させて押圧して内面Taに圧着接合する接合動作と、接合動作の後に、パドル3を内面Taから離反移動させて、タイヤTをタイヤ周方向に回転させるとともに巻回された状態の帯状部材Bから内面Taに向かって繰り出された新たな所定長さの繰り出し部分Baを形成する繰り出し動作とを繰り返し行うことで、順次繰り出された所定長さの繰り出し部分Baを内面Taに圧着接合する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10