(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機(21)、室外熱交換器(23)、膨張機構(41,51,38)、少なくとも1以上の室内熱交換器(42,52)を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路(10)と、前記各構成機器を制御する制御部とを有する空気調和装置(1)であって、
前記空気調和装置は、空気調和を行う空気調和運転と、冷媒量を推定する冷媒量推定運転を実施し、
前記制御部は、前記冷媒量推定運転において、前記室内熱交換器を蒸発器として機能させ、室内負荷とは無関係に、前記圧縮機を定格回転数で運転した場合における冷媒循環量の40%以下の冷媒循環量になるように前記圧縮機の回転数を低速にし、前記圧縮機における吸い込み蒸気の過熱度が前記空気調和運転のときよりも高い状態で所定時間安定するように前記各構成機器を制御する、
空気調和装置。
前記室外熱交換器を有する室外ユニットと、前記室内熱交換器を有する室内ユニットとを有しており、1台の前記室外ユニットには1台の前記室内ユニットが対応しており、
前記制御部が、過熱度が8度以上になるように前記各構成機器を制御する、
請求項1に記載の空気調和装置。
圧縮機(21)、室外熱交換器(23)、膨張機構(41,51,38)、少なくとも1以上の室内熱交換器(42,52)を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路(10)を有する空気調和装置(1)における冷媒量を算出するための制御方法であって、
前記空気調和装置は、空気調和を行う空気調和運転と、冷媒量を推定する冷媒量推定運転を実施し、
前記冷媒量推定運転において、前記室内熱交換器を蒸発器として機能させ、室内負荷とは無関係に、前記圧縮機を定格回転数で運転した場合における冷媒循環量の40%以下の冷媒循環量になるように前記圧縮機の回転数を低速にし、前記圧縮機における吸い込み蒸気の過熱度が前記空気調和運転のときよりも高い状態で所定時間安定するように前記各構成機器を制御する、制御方法。
前記空気調和装置が、前記室外熱交換器を有する室外ユニットと、前記室内熱交換器を有する室内ユニットとを有しており、1台の前記室外ユニットには1台の前記室内ユニットが対応しており、
過熱度が8度以上になるように前記各構成機器を制御する、
請求項8に記載の制御方法。
請求項8から12のいずれか1項に記載の制御を実行してから、前記冷媒回路を流れる冷媒の状態量又は前記各構成機器の運転状態量を用いて、前記冷媒回路内の冷媒量を算出する、
冷媒量推定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術では、試験又はシミュレーションの結果を回帰分析することで求めたパラメータに基づいて、蒸発器として機能する室内熱交換器の冷媒量を求めている。
【0004】
しかしながら、室内熱交換器は多くのバリエーションが存在することから、バリエーション毎に室内熱交換器における冷媒量を実測するのは膨大な時間及び労力を要することになる。一方、室内熱交換器における冷媒量を計算式で算出しようとしても、室内熱交換器内の冷媒は気液二相状態であるため、適切な実験パラメータを設定することが困難である。結果として、室内熱交換器の冷媒量を高精度に算出できず、冷媒回路全体の冷媒量の算出結果に誤差が含まれることがある。
【0005】
本発明の課題は、空気調和装置における冷媒量を高精度に推定し得る冷媒量推定方法及びその方法が適用可能な空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張機構、室内熱交換器を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路を有するものである。この空気調和装置は、各構成機器を制御して、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度となる冷媒量推定運転を実行する。
【0007】
第1観点に係る空気調和装置は、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度になるようにして冷媒量推定運転を実行するので、室内熱交換器内で液相の冷媒量を減らすことができる。ここで、室内熱交換器に存在する冷媒よりも室外熱交換器等に存在する冷媒の方が実験回帰式を用いて高精度に冷媒量を推定できる。したがって、室内熱交換器以外の構成機器に冷媒を分布させることで、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0008】
本発明の第2観点に係る冷媒量推定方法は、圧縮機、室外熱交換器、膨張機構、室内熱交換器を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路を有する空気調和装置における冷媒量を推定するものである。この冷媒量推定方法では、制御ステップと推定ステップとを備える。制御ステップでは、各構成機器を制御して、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度となる冷媒量推定運転を実行する。推定ステップでは、冷媒量推定運転における冷媒回路を流れる冷媒の状態量又は各構成機器の運転状態量を用いて、冷媒回路内の冷媒量を推定する。
【0009】
第2観点に係る冷媒量推定方法では、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度となる冷媒量推定運転を実行するので、室内熱交換器内で液相の冷媒量を減らすことができる。また、室内熱交換器に存在する冷媒よりも室外熱交換器等に存在する冷媒の方が実験回帰式を用いて高精度に冷媒量を推定できる。したがって、第1観点に係る冷媒量推定方法により、室内熱交換器以外の構成機器に冷媒を分布させることで、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0010】
なお、ここでいう「通常運転」は、例えば過熱度が3〜5度程度であり、室内温度が20度以上のときに蒸発温度が10度以上で実行される運転をいう。
【0011】
本発明の第3観点に係る冷媒量推定方法は、第2観点に係る冷媒量推定運転において、制御ステップで、冷媒量推定運転のときに、過熱度を10度以上、20度以下の範囲内にする。
【0012】
第
3観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒量推定運転のときに、過熱度を10度以上、20度以下の範囲内にしている。これにより、信頼性を維持した上で、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することができる。補足すると、過熱度を10度以上とすることで、蒸発器として機能する室内熱交換器内の乾き領域が増大し、冷媒量を減少させることができる。結果として、冷媒回路全体の冷媒量を算出する際の計算誤差を低減できる。一方、過熱度は20度を超えると圧縮機吐出温度が信頼性温度上限を超えることがある。したがって、過熱度を20度以下とすることで信頼性を維持することができる。
【0013】
本発明の第4観点に係る冷媒量推定方法は、第2観点または第3観点に係る冷媒量推定方法において、制御ステップで、冷媒量推定運転のときに、空気調和装置を通常運転よりも低い蒸発温度で運転する。
【0014】
第4観点に係る冷媒量推定方法では、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも低い蒸発温度になるようにして冷媒量推定運転を実行するので、室内熱交換器内で液相の冷媒量を減らすことができる。したがって、冷媒回路全体の冷媒量を算出する際の計算誤差を低減できる。
【0015】
本発明の第5観点に係る冷媒量推定方法は、第4観点に係る冷媒量推定方法において、制御ステップで、冷媒量推定運転のときに、蒸発温度を摂氏0度以上、摂氏10度以下の範囲内にする。
【0016】
第5観点に係る冷媒量推定方法では、蒸発温度を摂氏0度以上とすることで、蒸発器として機能する室内熱交換器内にフロストを生じさせないようにすることができる。また、蒸発温度を摂氏10度以下とすることで、実質的に任意の室内温度条件で冷媒量推定運転を実行することができる。
【0017】
本発明の第6観点に係る冷媒量推定方法は、第2観点から第5観点に係る冷媒量推定方法において、回転数を変化させることによって運転容量を可変できる圧縮機を有する空気調和装置における冷媒量を推定するものである。そして、制御ステップで、冷媒量推定運転において、冷媒の循環量が一定となるように圧縮機の回転数を変化させる。
【0018】
第6観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒量推定運転において、冷媒の循環量が一定となるように圧縮機の回転数を変化させているので、各熱交換器内の流れをどのような条件においても同じようになるので、再現性及び繰り返し性を高くすることができる。すなわち、高精度の実験回帰式を用いて室外熱交換器の冷媒量を算出することができる。結果として、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0019】
本発明の第7観点に係る冷媒量推定方法は、第6観点に係る冷媒量推定方法において、制御ステップで、各構成機器を制御して、冷媒回路内の冷媒の循環量を定格運転のときよりも低くなるようにして冷媒量推定運転を実行する。
【0020】
第7観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒回路内の冷媒の循環量を定格運転のときよりも低くなるようにして冷媒量推定運転を実行するので、各熱交換器内の冷媒流れを安定化することができる。これにより、再現性及び繰り返し性を高くすることができ、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0021】
なお、冷媒の循環量が低すぎる場合には、高圧冷媒が不十分となり、冷暖房能力が十分に発揮されない事態を生じることがある。そこで、冷媒量推定運転をする際には、冷暖房能力が十分に発揮される状態となる程度に循環量の最低値を設定する。
【0022】
本発明の第8観点に係る冷媒量推定方法は、第7観点に係る冷媒量推定方法において、制御ステップで、各構成機器を制御して、冷媒回路内の冷媒の循環量を定格運転のときよりも40%以下になるようにして冷媒量推定運転を実行する。
【0023】
第8観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒回路内の冷媒の循環量を通常運転のときよりも40%以下になるようにして冷媒量推定運転を実行する。これにより、冷暖房能力が十分に発揮される状態を維持した上で、冷媒の循環量を通常運転のときよりも低くすることができる。結果として、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0024】
本発明の第9観点に係る冷媒量推定方法は、第2観点から第8観点に係る冷媒量推定方法において、冷媒量推定運転の際に室外熱交換器から室内熱交換器に向けて液冷媒が流れる連絡配管と、連絡配管の温度を制御する温度制御装置と、室外熱交換器の温度を変化させる室外ファンと、室内熱交換器の温度を変化させる室内ファンと、をさらに有する空気調和装置における冷媒量を推定するものである。ここでは、冷媒量推定運転において、冷媒回路における蒸発温度、凝縮温度、連絡配管内の液冷媒の温度と凝縮温度の差にあたる過冷却度、過熱度、及び冷媒の循環量は、室内温度及び室外温度に応じた目標値が設定されている。そして、制御ステップで、蒸発温度、凝縮温度、過冷却度、過熱度、及び冷媒の循環量のすべてが、目標値から所定の近傍の範囲内に達したときに、圧縮機の回転数、温度制御装置の制御出力、膨張機構の開度、室外ファンの回転数、及び室内ファンの回転数の値を固定する。
【0025】
第9観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒量推定運転のときに、冷媒流れを安定化することができる。結果として、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0026】
本発明の第10観点に係る冷媒量推定方法は、第2観点から第9観点に係る冷媒量推定方法において、冷媒量推定運転の際に室外熱交換器から室内熱交換器に向けて液冷媒が流れる第1連絡配管と、冷媒量推定運転の際に室内熱交換器から室外熱交換器に向けてガス冷媒が流れる第2連絡配管と、室外熱交換器の下流部で第1連絡配管から分岐し、第2連絡配管に接続する分岐配管と、をさらに有する空気調和装置における冷媒量を推定するものである。そして、制御ステップで、分岐配管内の冷媒を流量弁により流量調整するとともに減圧し、第1連絡配管から分岐配管に流入していない冷媒と、分岐配管に流入した冷媒とを熱交換器を介して熱交換させ、分岐配管に流入した冷媒を第2連絡配管内の冷媒に合流させる。
【0027】
第10観点に係る冷媒量推定方法では、室外熱交換器と室内熱交換器とを接続する第1連絡配管及び第2連絡配管の間に分岐配管を設け、第1連絡配管内の液冷媒と分岐配管内のガス冷媒を熱交換することで、第1連絡配管内の液冷媒の液温制御を実現している。これにより、第1連絡配管内の液冷媒を同じ温度状態の過冷却状態にすることにより、液管内の冷媒重量をどのような運転状態でも同じ状態にすることができ、それにより室外ユニットと室内ユニットの冷媒量の合計も同じく保つことができるので、どのような運転状態においても、再現性及び繰り返し性を高くすることができる。結果として、冷媒量を高精度に検知することができる。
【0028】
第11観点に係る空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張機構、少なくとも1以上の室内熱交換器を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路を有するものである。この空気調和装置は、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、室内負荷とは無関係に圧縮機の回転数を低速にし、圧縮機における吸い込み蒸気の過熱度が通常運転のときよりも高い状態で所定時間安定するように各構成機器を制御する制御部を備える。このような構成により、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0029】
なお、ここでいう「膨張機構」とは、冷媒を減圧できるものをいい、例えば膨張弁がこれに該当する。
【0030】
第12観点に係る空気調和装置は、第11観点に係る空気調和装置であって、室内熱交換器を個別に有する複数の室内ユニットを有するものである。そして、制御部が、運転中の全ての室内ユニットの過熱度が通常運転よりも高い状態で安定するように各構成機器を制御する。このような構成により、複数の室内ユニットを有する空気調和装置において、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0031】
第13観点に係る空気調和装置は、第11観点又は第12観点に係る空気調和装置であって、制御部は、過熱度が5度以上になるように各構成機器を制御する。
【0032】
第14観点に係る空気調和装置は、第11観点に係る空気調和装置であって、室外熱交換器を有する室外ユニットと、室内熱交換器を有する室内ユニットとを有しており、1台の室外ユニットに1台の室内ユニットが対応しているものである。また、制御部は、過熱度が8度以上になるように各構成機器を制御する。このような構成により、1台の室外ユニットに1台の室内ユニットが対応する空気調和装置において、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0033】
第15観点に係る空気調和装置は、第11観点から第14観点のいずかの空気調和装置であって、制御部が、通常運転のときよりも過熱度が高い状態が5分以上続くように各構成機器を制御する。これにより、冷媒量の推定精度を高めることができる。
【0034】
第16観点に係る空気調和装置は、第11観点から第15観点のいずれかの空気調和装置であって、制御部が、冷媒回路を流れる冷媒の状態量又は各構成機器の運転状態量を用いて、冷媒回路内の冷媒量を算出する。
【0035】
第17観点に係る空気調和装置は、第16観点に係る空気調和装置であって、制御部が、冷媒回路内の冷媒量を算出するときに、過熱度を10度以上、20度以下の範囲内にする。
【0036】
第18観点に係る制御方法は、圧縮機、室外熱交換器、膨張機構、少なくとも1以上の室内熱交換器を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路を有する空気調和装置における冷媒量を算出するための制御方法である。この制御方法では、室内熱交換器を蒸発器として機能させ、室内負荷とは無関係に圧縮機の回転数を低速にし、圧縮機における吸い込み蒸気の加熱度が通常運転のときよりも高い状態で所定時間安定するように各構成機器を制御する。これにより、室内熱交換器以外の構成機器に冷媒を分布させることができる。
【0037】
第19観点に係る制御方法は、第18観点に係る制御方法であって、室内熱交換器を個別に有する複数の室内ユニットを有する空気調和装置に用いられる。この制御方法では、運転中の全ての室内ユニットの過熱度が通常運転よりも高い状態で安定するように各構成機器を制御する。
【0038】
第20観点に係る制御方法は、第18観点又は第19観点に係る制御方法であって、過熱度が5度以上になるように各構成機器を制御する。
【0039】
第21観点に係る制御方法は、第18観点に係る制御方法であって、室外熱交換器を有する室外ユニットと、室内熱交換器を有する室内ユニットとを有しており、1台の室外ユニットに1台の室内ユニットが対応する空気調和装置に用いられる。この制御方法では、過熱度が8度以上になるように各構成機器を制御する。
【0040】
第22観点に係る制御方法は、第18観点から第21観点のいずれかの制御方法であって、通常運転のときよりも過熱度が高い状態が5分以上続くように各構成機器を制御する。
【0041】
第23観点に係る冷媒量推定方法は、第18観点から第22観点のいずれかの制御方法を実行してから、冷媒回路を流れる冷媒の状態量又は各構成機器の運転状態量を用いて、冷媒回路内の冷媒量を算出する。これにより、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0042】
第24観点に係る冷媒量推定方法は、第23観点に係る冷媒量推定方法であって、冷媒回路内の冷媒量を算出するときに、過熱度を10度以上、20度以下の範囲内にする。
【発明の効果】
【0043】
第1観点に係る空気調和装置では、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0044】
第2観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0045】
第3観点に係る冷媒量推定方法では、信頼性を維持した上で、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することができる。
【0046】
第4観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒回路全体の冷媒量を算出する際の計算誤差を低減できる。
【0047】
第5観点に係る冷媒量推定方法では、蒸発器として機能する室内熱交換器内にフロストを生じさせないようにすることができる。
【0048】
第6観点に係る冷媒量推定方法では、高精度の実験回帰式を用いて室外熱交換器の冷媒量を算出することができる。
【0049】
第7観点に係る冷媒量推定方法では、再現性及び繰り返し性を高くすることができる。
【0050】
第8観点に係る冷媒量推定方法では、冷暖房能力が十分に発揮される状態を維持した上で、冷媒の循環量を通常運転のときよりも低くすることができる。
【0051】
第9観点に係る冷媒量推定方法では、冷媒量推定運転のときに、冷媒流れを安定化することができる。
【0052】
第10観点に係る冷媒量推定方法では、通常運転のときよりも低い蒸発温度を実現し易い状態にすることができる。
【0053】
第11〜17観点に係る空気調和装置は、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0054】
第18〜22観点に係る制御方法は、室内熱交換器以外の構成機器に冷媒を分布させることができる。
【0055】
第23、24観点に係る冷媒量推定方法は、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面に基づいて、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について説明する。
【0058】
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の室内の冷暖房に使用される装置である。空気調和装置1は、主として、1台の熱源ユニットとしての室外ユニット2と、それに並列に接続された複数台(本実施形態では、2台)の利用ユニットとしての室内ユニット4、5と、室外ユニット2と室内ユニット4、5とを接続する冷媒連絡配管としての液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7とを備えている。すなわち、本実施形態の空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット4、5と、液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7とが接続されることによって構成されている。
【0059】
(1−1)室内ユニット
室内ユニット4、5は、ビル等の室内の天井に埋め込みや吊り下げ等により、又は、室内の壁面に壁掛け等により設置されている。室内ユニット4、5は、液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0060】
次に、室内ユニット4、5の構成について説明する。尚、室内ユニット4と室内ユニット5とは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット4の構成のみ説明し、室内ユニット5の構成については、それぞれ、室内ユニット4の各部を示す40番台の符号の代わりに50番台の符号を付して、各部の説明を省略する。
【0061】
室内ユニット4は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10a(室内ユニット5では、室内側冷媒回路10b)を有している。この室内側冷媒回路10aは、主として、膨張機構としての室内膨張弁41と、利用側熱交換器としての室内熱交換器42とを有している。
【0062】
本実施形態において、室内膨張弁41は、室内側冷媒回路10a内を流れる冷媒の流量の調節等を行うために、室内熱交換器42の液側に接続された電動膨張弁である。
【0063】
本実施形態において、室内熱交換器42は、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であり、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の凝縮器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。
【0064】
本実施形態において、室内ユニット4は、ユニット内に室内空気を吸入して、室内熱交換器42において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための送風ファンとしての室内ファン43を有している。室内ファン43は、室内熱交換器42に供給する空気の風量Wrを可変することが可能なファンであり、本実施形態において、DCファンモータからなるモータ43aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等である。
【0065】
また、室内ユニット4には、各種のセンサが設けられている。室内熱交換器42の液側には、冷媒の温度(すなわち、暖房運転時における凝縮温度Tc又は冷房運転時における蒸発温度Teに対応する冷媒温度)を検出する液側温度センサ44が設けられている。室内熱交換器42のガス側には、冷媒の温度Teoを検出するガス側温度センサ45が設けられている。室内ユニット4の室内空気の吸入口側には、ユニット内に流入する室内空気の温度(すなわち、室内温度Tr)を検出する室内温度センサ46が設けられている。本実施形態において、液側温度センサ44、ガス側温度センサ45及び室内温度センサ46は、サーミスタからなる。また、室内ユニット4は、室内ユニット4を構成する各部の動作を制御する室内側制御部47を有している。そして、室内側制御部47は、室内ユニット4の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4を個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行なったり、室外ユニット2との間で伝送線8aを介して制御信号等のやりとりを行なったりすることができるようになっている。
【0066】
(1−2)室外ユニット
室外ユニット2は、ビル等の室外に設置されており、液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7を介して室内ユニット4、5に接続されており、室内ユニット4、5の間で冷媒回路10を構成している。
【0067】
次に、室外ユニット2の構成について説明する。室外ユニット2は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10cを有している。この室外側冷媒回路10cは、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23と、膨張機構としての室外膨張弁38と、アキュムレータ24と、温度調節機構としての過冷却器25と、液側閉鎖弁26と、ガス側閉鎖弁27とを有している。
【0068】
圧縮機21は、運転容量を可変することが可能な圧縮機であり、本実施形態において、インバータにより回転数Rmが制御されるモータ21aによって駆動される容積式圧縮機である。本実施形態において、圧縮機21は、1台のみであるが、これに限定されず、室内ユニットの接続台数等に応じて、2台以上の圧縮機が並列に接続されていてもよい。
【0069】
四路切換弁22は、冷媒の流れの方向を切り換えるための弁であり、冷房運転時には、室外熱交換器23を圧縮機21によって圧縮される冷媒の凝縮器として、かつ、室内熱交換器42、52を室外熱交換器23において凝縮される冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ24)とガス冷媒連絡配管7側とを接続し(
図1の四路切換弁22の実線を参照)、暖房運転時には、室内熱交換器42、52を圧縮機21によって圧縮される冷媒の凝縮器として、かつ、室外熱交換器23を室内熱交換器42、52において凝縮される冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機21の吐出側とガス冷媒連絡配管7側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続することが可能である(
図1の四路切換弁22の破線を参照)。
【0070】
本実施形態において、室外熱交換器23は、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であり、冷房運転時には冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、そのガス側が四路切換弁22に接続され、その液側が液冷媒連絡配管6に接続されている。
【0071】
本実施形態において、室外膨張弁38は、室外側冷媒回路10c内を流れる冷媒の圧力や流量等の調節を行うために、室外熱交換器23の液側に接続された電動膨張弁である。
【0072】
本実施形態において、室外ユニット2は、ユニット内に室外空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、室外に排出するための送風ファンとしての室外ファン28を有している。この室外ファン28は、室外熱交換器23に供給する空気の風量Woを可変することが可能なファンであり、本実施形態において、DCファンモータからなるモータ28aによって駆動されるプロペラファン等である。
【0073】
アキュムレータ24は、四路切換弁22と圧縮機21との間に接続されており、室内ユニット4、5の運転負荷の変動等に応じて冷媒回路10内に発生する余剰冷媒を溜めることが可能な容器である。
【0074】
過冷却器25は、本実施形態において、2重管式の熱交換器であり、室外熱交換器23において凝縮された後に、室内膨張弁41、51に送られる冷媒を冷却するために設けられている。過冷却器25は、本実施形態において、室外膨張弁38と液側閉鎖弁26との間に接続されている。
【0075】
本実施形態において、過冷却器25の冷却源としてのバイパス冷媒回路61が設けられている。尚、以下の説明では、冷媒回路10からバイパス冷媒回路61を除いた部分を、便宜上、主冷媒回路と呼ぶことにする。
【0076】
バイパス冷媒回路61は、室外熱交換器23から室内膨張弁41、51へ送られる冷媒の一部を主冷媒回路から分岐させて圧縮機21の吸入側に戻すように主冷媒回路に接続されている。具体的には、バイパス冷媒回路61は、室外膨張弁38から室内膨張弁41、51に送られる冷媒の一部を室外熱交換器23と過冷却器25との間の位置から分岐させるように接続された分岐回路61aと、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の出口から圧縮機21の吸入側に戻すように圧縮機21の吸入側に接続された合流回路61bとを有している。そして、分岐回路61aには、バイパス冷媒回路61を流れる冷媒の流量を調節するためのバイパス膨張弁62が設けられている。ここで、バイパス膨張弁62は、電動膨張弁からなる。これにより、室外熱交換器23から室内膨張弁41、51に送られる冷媒は、過冷却器25において、バイパス膨張弁62によって減圧された後のバイパス冷媒回路61を流れる冷媒によって冷却される。すなわち、過冷却器25は、バイパス膨張弁62の開度調節によって能力制御が行われることになる。
【0077】
液側閉鎖弁26及びガス側閉鎖弁27は、外部の機器・配管(具体的には、液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7)との接続口に設けられた弁である。液側閉鎖弁26は、室外熱交換器23に接続されている。ガス側閉鎖弁27は、四路切換弁22に接続されている。
【0078】
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21の吸入圧力Psを検出する吸入圧力センサ29と、圧縮機21の吐出圧力Pdを検出する吐出圧力センサ30と、圧縮機21の吸入温度Tsを検出する吸入温度センサ31と、圧縮機21の吐出温度Tdを検出する吐出温度センサ32とが設けられている。吸入温度センサ31は、アキュムレータ24と圧縮機21との間の位置に設けられている。室外熱交換器23には、室外熱交換器23内を流れる冷媒の温度(すなわち、冷房運転時における凝縮温度Tc又は暖房運転時における蒸発温度Teに対応する冷媒温度)を検出する熱交温度センサ33が設けられている。室外熱交換器23の液側には、冷媒の温度Tcoを検出する液側温度センサ34が設けられている。過冷却器25の主冷媒回路側の出口には、冷媒の温度(すなわち、液管温度Tlp)を検出する液管温度センサ35が設けられている。バイパス冷媒回路61の合流回路61bには、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の出口を流れる冷媒の温度を検出するためのバイパス温度センサ63が設けられている。室外ユニット2の室外空気の吸入口側には、ユニット内に流入する室外空気の温度(すなわち、室外温度Ta)を検出する室外温度センサ36が設けられている。本実施形態において、吸入温度センサ31、吐出温度センサ32、熱交温度センサ33、液側温度センサ34、液管温度センサ35、室外温度センサ36及びバイパス温度センサ63は、サーミスタからなる。また、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部37を有している。そして、室外側制御部37は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータ、メモリやモータ21aを制御するインバータ回路等を有しており、室内ユニット4、5の室内側制御部47、57との間で伝送線8aを介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部47、57と室外側制御部37と制御部37、47、57間を接続する伝送線8aとによって、空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部8が構成されている。
【0079】
制御部8は、
図2に示されるように、各種センサ29〜36、44〜46、54〜56、63の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器21、24、28a、43a及び弁22、38、41、51、53a、62を制御することができるように接続されている。また、制御部8には、後述の冷媒漏洩検知運転において、冷媒漏洩を検知したことを知らせるためのLED等からなる警告表示部9が接続されている。ここで、
図2は、空気調和装置1の制御ブロック図である。
【0080】
(1−3)冷媒連絡配管
液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7は、空気調和装置1をビル等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒配管であり、設置場所や室外ユニットと室内ユニットとの組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0081】
以上のように、室内側冷媒回路10a、10bと、室外側冷媒回路10cと、液冷媒連絡配管6と、ガス冷媒連絡配管7とが接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。また、この冷媒回路10は、バイパス冷媒回路61と、バイパス冷媒回路61を除く主冷媒回路とから構成されていると言い換えることもできる。
【0082】
(1−4)制御部
本実施形態の空気調和装置1は、室内側制御部47、57と室外側制御部37とから構成される制御部8によって、四路切換弁22により冷房運転及び暖房運転を切り換えて運転を行うとともに、各室内ユニット4、5の運転負荷に応じて、室外ユニット2及び室内ユニット4、5の各機器の制御を行うようになっている。換言すると、空気調和装置1の運転制御は、制御部8(より具体的には、室内側制御部47、57と室外側制御部37と制御部37、47、57間を接続する伝送線8a)によって行われる。
【0083】
また、制御部8は演算機能を有しており、後述する冷媒量の推定するための演算処理を実行する。
【0084】
(2)空気調和装置の動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の動作について説明する。
【0085】
本実施形態の空気調和装置1の運転モードとしては、主として、通常運転モードと、試運転モードと、冷媒漏洩検知運転モードとがある。
【0086】
「通常運転モード」では、各室内ユニット4、5の運転負荷に応じて室外ユニット2及び室内ユニット4、5の構成機器の制御が実行される。通常運転には、室内の冷房を行う冷房運転と、室内の暖房を行う暖房運転とが含まれる。
【0087】
「試運転モード」では、空気調和装置1の構成機器の設置後に行われる試運転を行うための制御が実行される。試運転は、最初の機器設置後に限られず、例えば、室内ユニット等の構成機器を追加や撤去する等の改造後や機器の故障を修理した後等にも実行される。また、試運転の際には、冷媒回路10内に冷媒を充填するための「冷媒自動充填運転」が実行される。
【0088】
「冷媒漏洩検知運転モード」では、試運転を終了して通常運転を開始した後において、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定するための制御が実行される。
【0089】
以下、空気調和装置1の各運転モードにおける動作について詳しく説明する。
【0090】
(2−1)通常運転モード
(2−1−1)冷房運転
まず、通常運転モードにおける冷房運転について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0091】
冷房運転では、各室内熱交換器42,52が蒸発器として機能することで、室内の空気の温度を低下させる。
【0092】
詳しくは、冷房運転時は、四路切換弁22が
図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機21の吐出側が室外熱交換器23のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側がガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡配管7を介して室内熱交換器42、52のガス側に接続される。室外膨張弁38は、全開状態にされる。また、液側閉鎖弁26及びガス側閉鎖弁27が、開状態にされる。各室内膨張弁41、51が、室内熱交換器42、52の出口(すなわち、室内熱交換器42、52のガス側)における冷媒の過熱度SHrが過熱度目標値SHrsで一定になるように開度調節されている。また、バイパス膨張弁62が、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の出口における冷媒の過熱度SHbが過熱度目標値SHbsになるように開度調節されている。
【0093】
そして、このような冷媒回路10の状態で、圧縮機21、室外ファン28及び室内ファン43、53を起動すると、低圧のガス冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して室外熱交換器23に送られて、室外ファン28によって供給される室外空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は、室外膨張弁38を通過して過冷却器25に流入する。この際、室外膨張弁38を通過した冷媒の一部はバイパス冷媒回路61に分岐される。そして、過冷却器25に流入した冷媒と、バイパス冷媒回路61に分岐した冷媒とが熱交換を行なう。これにより、過冷却器25に流入した冷媒が過冷却状態になる。過冷却状態になった高圧の液冷媒は、液側閉鎖弁26及び液冷媒連絡配管6を経由して、室内ユニット4、5に送られる。この室内ユニット4、5に送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁41、51によって圧縮機21の吸入圧力Ps近くまで減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器42、52に送られる。気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器42、52において室内空気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となる。この際、室内の空気の温度が低下する。そして、低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管7を経由して室外ユニット2に送られ、ガス側閉鎖弁27及び四路切換弁22を経由して、アキュムレータ24に流入する。アキュムレータ24に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。
【0094】
なお、バイパス冷媒回路61に分岐した冷媒は、バイパス膨張弁62によって減圧された後に、圧縮機21の吸入側に戻される。ここで、バイパス膨張弁62を通過する冷媒は、圧縮機21の吸入圧力Ps近くまで減圧されることで、その一部が蒸発する。そして、バイパス冷媒回路61のバイパス膨張弁62の出口から圧縮機21の吸入側に向かって流れる冷媒が、過冷却器25を通過して、主冷媒回路側の室外熱交換器23から室内ユニット4、5へ送られる高圧の液冷媒と熱交換を行なっている。
【0095】
なお、上述した、各室内熱交換器42、52の出口における冷媒の過熱度SHrは、ガス側温度センサ45、55により検出される冷媒温度値から液側温度センサ44、54により検出される冷媒温度値(蒸発温度Teに対応)を差し引くことによって検出されるか、又は、吸入圧力センサ29により検出される圧縮機21の吸入圧力Psを蒸発温度Teに対応する飽和温度値に換算し、ガス側温度センサ45、55により検出される冷媒温度値からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって検出される。また、本実施形態では採用していないが、各室内熱交換器42、52内を流れる冷媒の温度を検出する温度センサを設けて、この温度センサにより検出される蒸発温度Teに対応する冷媒温度値を、ガス側温度センサ45、55により検出される冷媒温度値から差し引くことによって、各室内熱交換器42、52の出口における冷媒の過熱度SHrを検出するようにしてもよい。
【0096】
また、上述した、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の出口における冷媒の過熱度SHbは、吸入圧力センサ29により検出される圧縮機21の吸入圧力Psを蒸発温度Teに対応する飽和温度値に換算し、バイパス温度センサ63により検出される冷媒温度値からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって検出される。また、本実施形態では採用していないが、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度値をバイパス温度センサ63により検出される冷媒温度値から差し引くことによって、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の出口における冷媒の過熱度SHbを検出するようにしてもよい。
【0097】
(2−1−2)暖房運転
次に、通常運転モードにおける暖房運転について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0098】
暖房運転では、各室内熱交換器42,52が凝縮器として機能することで、室内の空気の温度を上昇させる。
【0099】
詳しくは、暖房運転時は、四路切換弁22が
図1の破線で示される状態、すなわち、圧縮機21の吐出側がガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡配管7を介して室内熱交換器42、52のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側が室外熱交換器23のガス側に接続される。室外膨張弁38は、室外熱交換器23に流入する冷媒を室外熱交換器23において蒸発させることが可能な圧力(すなわち、蒸発圧力Pe)まで減圧するために開度調節される。また、液側閉鎖弁26及びガス側閉鎖弁27は、開状態にされている。室内膨張弁41、51は、室内熱交換器42、52の出口における冷媒の過冷却度SCrが過冷却度目標値SCrsで一定になるように開度調節される。
【0100】
そして、このような冷媒回路10の状態で、圧縮機21、室外ファン28及び室内ファン43、53を起動すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡配管7を経由して、室内ユニット4、5に送られる。室内ユニット4、5に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器42、52において、室内空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となる。この際、室内の空気の温度が上昇する。そして、高圧の液冷媒は、室内膨張弁41、51を通過する際に、室内膨張弁41、51の弁開度に応じて減圧される。室内膨張弁41、51を通過した冷媒は、液冷媒連絡配管6を経由して室外ユニット2に送られ、液側閉鎖弁26、過冷却器25及び室外膨張弁38を経由してさらに減圧された後に、低圧の気液二相状態の冷媒となって室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン28によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となり、四路切換弁22を経由してアキュムレータ24に流入する。アキュムレータ24に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。
【0101】
なお、上述した、室内熱交換器42、52の出口における冷媒の過冷却度SCrは、吐出圧力センサ30により検出される圧縮機21の吐出圧力Pdを凝縮温度Tcに対応する飽和温度値に換算し、この冷媒の飽和温度値から液側温度センサ44、54により検出される冷媒温度値を差し引くことによって検出される。また、本実施形態では採用していないが、各室内熱交換器42、52内を流れる冷媒の温度を検出する温度センサを設けて、この温度センサにより検出される凝縮温度Tcに対応する冷媒温度値を、液側温度センサ44、54により検出される冷媒温度値から差し引くことによって室内熱交換器42、52の出口における冷媒の過冷却度SCrを検出するようにしてもよい。また、バイパス膨張弁62は、閉止されている。
【0102】
(2−2)試運転モード
図3は試運転モードを説明するためのフローチャートである。
【0103】
試運転は、例えば、冷媒が予め充填された室外ユニット2と、室内ユニット4、5とをビル等の設置場所に設置し、液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7を介して接続して冷媒回路10を構成した後に行なわれる。試運転では、まず、室外ユニット2の液側閉鎖弁26及びガス側閉鎖弁27を開けて、室外ユニット2に予め充填されている冷媒を冷媒回路10内に充満させる。次に、作業者が、制御部8に対して直接に又はリモコン(図示せず)等を通じて遠隔から試運転を開始する指令を出す。これに応じて、制御部8が、
図3に示されるステップS11〜ステップS13の処理を実行する。以下、各ステップの処理について詳述する。
【0104】
(2−2−1)ステップS11:冷媒量推定運転
(2−2−1−1)室内ユニット全数運転
試運転では、冷媒量が不足しているか否かが判定され、不足している場合には冷媒量自動充填運転が実行される。そこで、まず、冷媒が不足しているか否かを判定するために「冷媒量推定運転」が実行される。
図4は冷媒量推定運転を説明するためのフローチャートである。
【0105】
冷媒量推定運転の開始指令がなされると(S111)、圧縮機21、室外ファン28及び室内ファン43、53が起動されて、室内ユニット4、5の全てについて強制的に冷房運転(以下、「室内ユニット全数運転」とする)が行われる(S112)。具体的には、冷媒回路10が、室外ユニット2の四路切換弁22が
図1の実線で示される状態で、かつ、室内ユニット4、5の室内膨張弁41、51及び室外膨張弁38が開状態となるように、各構成機器が制御される。
【0106】
これにより、冷媒回路10内の冷媒が
図5に示されるような状態となる(四路切換弁22等の図示は省略)。すなわち、冷媒回路10において、圧縮機21から凝縮器として機能する室外熱交換器23までの流路には、圧縮機21において圧縮されて吐出された高圧のガス冷媒が流れる(
図5の斜線のハッチング部分のうち圧縮機21から室外熱交換器23までの部分)。また、凝縮器として機能する室外熱交換器23には、室外空気との熱交換によってガス状態から液状態に相変化する高圧の冷媒が流れる(
図5の斜線のハッチング及び黒塗りのハッチングの部分のうち室外熱交換器23に対応する部分を参照)。また、室外熱交換器23から室内膨張弁41、51までの流路と、室外熱交換器23からバイパス膨張弁62までの流路とには、高圧の液冷媒が流れる(
図5の黒塗りのハッチング部分を参照)。また、蒸発器として機能する室内熱交換器42、52の部分と、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の部分とには、室内空気との熱交換によって気液二相状態からガス状態に相変化する低圧の冷媒が流れる(
図5の格子状のハッチング及び斜線のハッチングの部分のうち室内熱交換器42、52の部分と過冷却器25の部分)。また、室内熱交換器42、52から圧縮機21までの流路(ガス冷媒連絡配管7及びアキュムレータ24を含む流路)と、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の部分から圧縮機21までの流路とには、低圧のガス冷媒が流れる(
図5の斜線のハッチングの部分のうち室内熱交換器42、52から圧縮機21までの部分と、過冷却器25のバイパス冷媒回路側の部分から圧縮機21までの部分)。
【0107】
続いて、制御部8が、以下のステップS113〜S116の制御を行ない、冷媒回路10内を循環する冷媒の状態を安定させる。なお、以下のステップS113〜S116は順不同に行われてよいものである。
【0108】
(2−2−1−2)ステップS113:冷媒循環量制御
制御部8は、冷媒回路10内を流れる冷媒循環量Wcが一定になるように圧縮機21の運転容量を制御(以下、「冷媒循環量制御」とする)する(S113)。冷媒循環量制御は、室外熱交換器23にて、冷媒循環量Wcの変化により、冷媒量や過冷却度が非線形に変動することを防止するために行われる。補足すると、高圧の冷媒が室外空気との熱交換量に応じてガス状態から液状態に相変化(
図5の斜線のハッチング及び黒塗りのハッチング部分のうち室外熱交換器23に対応する部分を参照、以下、凝縮器部Aとする)して凝縮器内部の冷媒量が変動する過程において、冷媒循環量Wcの変化により、冷媒量や過冷却度が非線形に変動することがある。これを防止するために、冷媒回路10内を流れる冷媒循環量Wcを一定にする。
【0109】
冷媒循環量制御では、インバータにより回転数Rmが制御されるモータ21aによって、圧縮機21の運転容量が制御される。そして、冷媒循環量Wcを一定にすることで、凝縮器部A内部のガス冷媒と液冷媒の分布状態を安定させる。これにより、凝縮器部A内における冷媒量の変化により、凝縮器部A出口の過冷却度の変化が生じる状態にすることができる。
【0110】
冷媒循環量Wcは、冷媒回路10に流れる冷媒の状態量又は構成機器の運転状態量に基づいて演算される。演算された冷媒循環量Wcが、循環量目標値Wcsになるように、圧縮機21のモータ21aの回転数が制御される。ここで、循環量目標値Wcsを大きく設定すると、運転可能な外気条件や室温条件が狭い範囲に限定されてしまう可能性がある。そのため、循環量目標値Wcsは、できるだけ低流量になるように設定することが望ましい。本実施形態では、循環量目標値Wcsを、圧縮機21を定格回転数で運転した場合における冷媒循環量の40%以下の値に設定している。また、冷媒循環量Wcは、蒸発温度Teと凝縮温度Tcとの関数(すなわち、Wc=f(Te、Tc))として表される。
【0111】
なお、冷媒循環量Wcの演算に使用される運転状態量は、これに限定されず、蒸発温度Te、凝縮温度Tc、圧縮機21の吸入側における冷媒温度である吸入温度Ts、圧縮機21の吸入側における冷媒圧力である吸入圧力Ps、圧縮機21の吐出側における冷媒温度である吐出温度Td、圧縮機21の吐出側における冷媒圧力である吐出圧力Pd、凝縮器としての室外熱交換器23の入口側における冷媒の過熱度である圧縮機吐出過熱度SHm、及び凝縮器としての室外熱交換器23の出口側における冷媒の過冷却度SCoのうち、少なくとも1つを用いて演算することが可能である。
【0112】
このような冷媒循環量制御を行うことによって、室外熱交換器23における熱交換性能が安定し、凝縮器部A内における冷媒の状態が安定した状態となる。
【0113】
(2−2−1−3)ステップS114:凝縮圧力制御
また、制御部8は、凝縮器として機能する室外熱交換器23における冷媒の凝縮圧力Pcが一定になるように、室外ファン28によって室外熱交換器23に供給される室外空気の風量Woを制御(以下、「凝縮圧力制御」とする)する(S114)。凝縮圧力制御は、凝縮器部A内を流れる冷媒の状態を安定させるために行なわれる。補足すると、上述の凝縮器部Aにおける冷媒量は、冷媒の凝縮圧力Pcに大きく影響を受けるので、冷媒量の推定に際して凝縮圧力制御が行なわれる。
【0114】
具体的に、上述した凝縮器部Aにおける冷媒の凝縮圧力Pcは、室外温度Taの影響より大きく変化する。そこで、モータ28aにより室外ファン28から室外熱交換器23に供給する室外空気の風量Woを制御することで、室外温度Taの影響を除外する。これにより、凝縮器部A内を流れる冷媒の状態を安定させることができる。
【0115】
なお、本実施形態の室外ファン28による凝縮圧力Pcの制御は、吐出圧力センサ30によって検出される圧縮機21の吐出圧力Pd、又は、熱交温度センサ33によって検出される室外熱交換器23内を流れる冷媒の温度(すなわち、凝縮温度Tc)を用いて行われる。吐出圧力Pd、又は、凝縮温度Tcは、室外熱交換器23における冷媒の凝縮圧力Pcに等価な運転状態量である。
【0116】
このような凝縮圧力制御を行うことによって、室外熱交換器23から室内膨張弁41、51までの流路(室外膨張弁38、過冷却器25の主冷媒回路側の部分及び液冷媒連絡配管6を含む流路)と、室外熱交換器23からバイパス冷媒回路61のバイパス膨張弁62までの流路との両方の流路(
図5の黒塗りのハッチング部分を参照、以下、液冷媒流通部Bとする)には高圧の液冷媒が流れる。そして、この液冷媒流通部Bが液冷媒でシールされて安定した状態となる。
【0117】
(2−2−1−4)ステップS115:液管温度制御
また、制御部8は、過冷却器25から室内膨張弁41、51に送られる冷媒の温度が一定になるように過冷却器25の能力を制御(以下、「液管温度制御」とする)する(S115)。液管温度制御は、過冷却器25から室内膨張弁41、51に至る液冷媒連絡配管6を含む冷媒配管内(
図5に示される液冷媒流通部Bのうち過冷却器25から室内膨張弁41、51までの部分)の冷媒の密度を変化させないために行われる。過冷却器25の能力制御は、過冷却器25の主冷媒回路側を流れる冷媒とバイパス冷媒回路側を流れる冷媒との間の交換熱量を調節することによって実現される。具体的には、バイパス冷媒回路61を流れる冷媒の流量を増減して、過冷却器25の主冷媒回路側の出口に設けられた液管温度センサ35によって検出される冷媒の温度Tlpが液管温度目標値Tlpsで一定になるようにする。なお、このバイパス冷媒回路61を流れる冷媒の流量の増減は、バイパス膨張弁62の開度調節によって行われる。
【0118】
このような液管温度制御を行うことによって、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoの変化の影響を、室外熱交換器23の出口から過冷却器25に至る冷媒配管のみに収めることができる。例えば、冷媒回路10に冷媒を充填することによって冷媒回路10内の冷媒量が徐々に増加するのに伴って、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tco(すなわち、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCo)が変化する場合がある。このような場合であっても、液管温度制御を行なうことにより、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoの変化の影響を、過冷却器25から室内膨張弁41、51までの冷媒配管(液冷媒連絡配管6等)に影響させないようにすることができる。
【0119】
(2−2−1−5)ステップS116:過熱度制御
また、制御部8は、蒸発器として機能する室内熱交換器42、52の過熱度SHrが一定になるように室内膨張弁41、51を制御(以下、「過熱度制御」とする)する(S116)。過熱度制御は、蒸発器部C内を流れる冷媒の状態を安定させるために行われる。補足すると、蒸発器部Cにおける冷媒量は、室内熱交換器42、52の出口における冷媒の乾き度に大きく影響を受けるので、冷媒量の推定に際して過熱度制御が行なわれる。
【0120】
具体的には、室内膨張弁41、51の開度を制御することによって、室内熱交換器42、52のガス側(以下、冷媒量推定運転に関する説明では、室内熱交換器42、52の出口とする)における冷媒の過熱度SHrが過熱度目標値SHrsで一定になるようにして(すなわち、室内熱交換器42、52の出口のガス冷媒を過熱状態にして)、蒸発器部C内を流れる冷媒の状態を安定させる。これにより、ガス冷媒流通部Dにガス冷媒が確実に流れる状態を作り出している。
【0121】
また、制御部8は、過熱度制御の際に、過熱度SHrを通常運転のときよりも高くなるようにする。具体的には、過熱度SHrを10度以上、20度以下の範囲にする。なお、通常運転での過熱度は3度〜5度程度である。過熱度SHrを高くするために、制御部8は蒸発温度Teを通常温度よりも低くなるように制御する。例えば、制御部8は、室内温度が20℃以上、30℃以下の範囲で、蒸発温度Teが0℃以上、10℃以下の範囲内になるようにして、蒸発温度Teを通常運転よりも低くなるように制御する。また、制御部8は、冷媒の蒸発圧力Peを安定させるために、室内ファン43、53によって室内熱交換器42、52に供給される室内空気の風量Wrを一定にする。
【0122】
(2−2−1−6)
以上のような各制御によって、冷媒回路10内を循環する冷媒の状態が安定し、冷媒回路10内における冷媒量の分布が一定となる。そのため、冷媒回路10内に冷媒が追加充填された場合、冷媒回路10内の冷媒量の変化が、主として、室外熱交換器23内の冷媒量の変化となって現れる状態を作り出すことができる。
【0123】
なお、本実施形態と異なり、室外ユニット2に予め冷媒が充填されていない場合には、このステップS11の処理に先だって、構成機器が異常停止してしまうことがない程度の冷媒量になるまで冷媒充填を行う。
【0124】
(2−2−2)ステップS12:冷媒量の演算
試運転では、上記の冷媒量推定運転を行いつつ、冷媒回路10内に冷媒の追加充填を実施する。この際、制御部8が、冷媒量を推定する冷媒量推定部として機能する。制御部8は、冷媒の追加充填時における冷媒回路10を流れる冷媒の状態量又は構成機器の運転状態量から冷媒回路10内の冷媒量を演算して推定する。後述するにように、冷媒回路10は複数の部分に分割されており、制御部8は分割された部分ごとに冷媒量を演算する。
【0125】
このステップS12では、冷媒回路10は、四路切換弁22を
図1の実線で示される状態となっている。すなわち、圧縮機21の吐出側が、室外熱交換器23のガス側に接続している。また、圧縮機21の吸入側が、ガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡配管7を介して室内熱交換器42、52の出口に接続している。
【0126】
この状態において、冷媒回路10は、高圧ガス管部Eと、凝縮器部Aと、高温側液管部B1と、低温側液管部B2と、液冷媒連絡配管部B3と、室内ユニット部Fと、ガス冷媒連絡配管部Gと、低圧ガス管部Hと、バイパス回路部Iとに分割される。
【0127】
「高圧ガス管部E」は、圧縮機21の部分及び圧縮機21から四路切換弁22(
図5では図示せず)を含む室外熱交換器23までの部分である。
【0128】
「凝縮器部A」は、室外熱交換器23の部分である。
【0129】
「高温側液管部B1」は、液冷媒流通部Bのうち室外熱交換器23から過冷却器25までの部分及び過冷却器25の主冷媒回路側の部分の入口側半分である。
【0130】
「低温側液管部B2」は、液冷媒流通部Bのうち過冷却器25の主冷媒回路側の部分の出口側半分及び過冷却器25から液側閉鎖弁26(
図5では図示せず)までの部分である。
【0131】
「液冷媒連絡配管部B3」は、液冷媒流通部Bのうち液冷媒連絡配管6の部分である。
【0132】
「室内ユニット部F」は、液冷媒流通部Bのうち液冷媒連絡配管6から室内膨張弁41、51及び室内熱交換器42、52の部分(すなわち、蒸発器部C)を含むガス冷媒流通部Dのうちガス冷媒連絡配管7までの部分である。
【0133】
「ガス冷媒連絡配管部G」は、ガス冷媒流通部Dのうちガス冷媒連絡配管7の部分である。
【0134】
「低圧ガス管部H」は、ガス冷媒流通部Dのうちガス側閉鎖弁27(
図5では図示せず)から四路切換弁22及びアキュムレータ24を含む圧縮機21までの部分である。
【0135】
「バイパス回路部I」は、液冷媒流通部Bのうち高温側液管部B1からバイパス膨張弁62及び過冷却器25のバイパス冷媒回路側の部分を含む低圧ガス管部Hまでの部分である。
【0136】
そして、冷媒量推定部として機能する制御部8は、
図6のフローチャートに示すように、分割された部分ごとに冷媒量を演算する。なお、以下のステップS121〜S129は順不同に行われてよいものである。
【0137】
(2−2−2−1)ステップS121:高圧ガス管部E
制御部8は、高圧ガス管部Eにおける冷媒量Mog1を下式1に基づいて算出する(S121)。
[数1]
Mog1=Vog1×ρd
【0138】
すなわち、冷媒量Mog1は、室外ユニット2の高圧ガス管部Eの容積Vog1に高圧ガス管部Eにおける冷媒の密度ρdを乗じた関数式として表される。なお、高圧ガス管部Eの容積Vog1は、室外ユニット2が設置場所に設置される前から既知の値であり、予め制御部8のメモリに記憶されている。また、高圧ガス管部Eにおける冷媒の密度ρdは、吐出温度Td及び吐出圧力Pdを換算することによって得られる。
【0139】
(2−2−2−2)ステップS122:凝縮器部A
また、制御部8は、凝縮器部Aにおける冷媒量Mcを下式2に基づいて算出する(S122)。
[数2]
Mc=kc1×Ta+kc2×Tc+kc3×SHm
+kc5×ρc+kc6×ρco+kc7
【0140】
すなわち、冷媒量Mcは、室外温度Ta、凝縮温度Tc、圧縮機吐出過熱度SHm、室外熱交換器23における冷媒の飽和液密度ρc及び室外熱交換器23の出口における冷媒の密度ρcoの関数式として表される。なお、パラメータkc1〜kc7は、試験や詳細なシミュレーションの結果を回帰分析することによって求められ、予め制御部8のメモリに記憶されている。また、圧縮機吐出過熱度SHmは、圧縮機21の吐出側における冷媒の過熱度である。圧縮機吐出過熱度SHmは、吐出圧力Pdを冷媒の飽和温度値に換算し、吐出温度Tdからこの冷媒の飽和温度値を差し引くことにより得られる。冷媒の飽和液密度ρcは、凝縮温度Tcを換算することによって得られる。室外熱交換器23の出口における冷媒の密度ρcoは、凝縮温度Tcを換算することによって得られる凝縮圧力Pc及び冷媒の温度Tcoを換算することによって得られる。
【0141】
(2−2−2−3)ステップS123:高温側液管部B1
また、制御部8は、高温側液管部B1における冷媒量Mol1を下式3に基づいて算出する(S123)。
[数3]
Mol1=Vol1×ρco
【0142】
すなわち、冷媒量Mol1は、室外ユニット2Sの高温側液管部B1の容積Vol1に高温側液管部B1における冷媒の密度ρco(すなわち、上述の室外熱交換器23の出口における冷媒の密度)を乗じた関数式として表される。なお、高温側液管部B1の容積Vol1は、室外ユニット2が設置場所に設置される前から既知の値であり、予め制御部8のメモリに記憶されている。
【0143】
(2−2−2−4)ステップS124:低温側液管部B2
また、制御部8は、低温側液管部B2における冷媒量Mol2を下式4に基づいて算出する(S124)。
[数4]
Mol2=Vol2×ρlp
【0144】
すなわち、冷媒量Mol2は、室外ユニット2の低温側液管部B2の容積Vol2に低温側液管部B2における冷媒の密度ρlpを乗じた関数式として表される。なお、低温側液管部B2の容積Vol2は、室外ユニット2が設置場所に設置される前から既知の値であり、予め制御部8のメモリに記憶されている。また、低温側液管部B2における冷媒の密度ρlpは、過冷却器25の出口における冷媒の密度であり、凝縮圧力Pc及び過冷却器25の出口における冷媒の温度Tlpを換算することによって得られる。
【0145】
(2−2−2−5)ステップS125:液冷媒連絡配管部B3
また、制御部8は、液冷媒連絡配管部B3における冷媒量Mlpを下式5に基づいて算出する(S125)。
[数5]
Mlp=Vlp×ρlp
【0146】
すなわち、冷媒量Mlpは、液冷媒連絡配管6の容積Vlpに液冷媒連絡配管部B3における冷媒の密度ρlp(すなわち、過冷却器25の出口における冷媒の密度)を乗じた関数式として表される。なお、液冷媒連絡配管6は、空気調和装置1をビル等の設置場所に設置する際に現地にて施工される。そのため、液冷媒連絡配管6の容積Vlpは、現地において得られた長さや管径等の情報に基づいて制御部8により演算される。
【0147】
(2−2−2−6)ステップS126:室内ユニット部F
また、制御部8は、室内ユニット部Fにおける冷媒量Mrを算出する(S126)。室内ユニット部Fでは冷媒が気液二相流の状態になっている。そこで、制御部8は、室内ユニット部Fの構造に応じて、冷凍サイクル特性のシミュレーション計算を実行する。具体的には、制御部8は、連続の式(下式6)、運動方程式(下式7)、及び、エネルギー方程式(下式8)の連立方程式を解くことで冷媒量Mrを算出する。また、計算を実行する際には、ボイド率α(下式9)及びスミス(Smith)の式(下式10)が用いられる。スミスの式において、eは仮想平均液比率で、Cは気液速度比の補正項であり、これらは実験パラメータである。また、xはクォリティ、ρLは液密度、ρGはガス密度を意味している。なお、仮想平均液比率は0.4が推奨値である。なお、ここでは、室内ユニット4、5は2台存在するが、それぞれの冷媒量を加算することにより、室内ユニット部Fの全冷媒量が演算される。
[数6]
[数7]
[数8]
[数9]
[数10]
【0148】
(2−2−2−7)ステップS127:ガス冷媒連絡配管部G
また、制御部8は、ガス冷媒連絡配管部Gにおける冷媒量Mgpを下式11に基づいて算出する(S127)。
[数11]
Mgp=Vgp×ρgp
【0149】
すなわち、冷媒量Mgpは、ガス冷媒連絡配管7の容積Vgpにガス冷媒連絡配管部Gにおける冷媒の密度ρgpを乗じた関数式として表される。なお、ガス冷媒連絡配管7は、液冷媒連絡配管6と同様に、ガス冷媒連絡配管7が空気調和装置1をビル等の設置場所に設置する際に現地にて施工される。そのため、ガス冷媒連絡配管7の容積Vgpは、現地において得られた長さや管径等の情報に基づいて制御部8により演算される。また、ガス冷媒連絡配管部Gにおける冷媒の密度ρgpは、圧縮機21の吸入側における冷媒の密度ρsと、室内熱交換器42、52の出口(すなわち、ガス冷媒連絡配管7の入口)における冷媒の密度ρeoとの平均値である。圧縮機21の吸入側における冷媒の密度ρsは、吸入圧力Ps及び吸入温度Tsを換算することによって得られる。また、室内熱交換器42、52の出口における冷媒の密度ρeoは、蒸発温度Teの換算値である蒸発圧力Pe及び室内熱交換器42、52の出口温度Teoを換算することによって得られる。
【0150】
(2−2−2−8)ステップS128:低圧ガス管部H
また、制御部8は、低圧ガス管部Hに冷媒量Mog2を下式12に基づいて算出する(S128)。
[数12]
Mog2=Vog2×ρs
【0151】
すなわち、冷媒量Mog2は、室外ユニット2内の低圧ガス管部Hの容積Vog2に、低圧ガス管部Hにおける冷媒の密度ρsを乗じた関数式として表される。なお、低圧ガス管部Hの容積Vog2は、設置場所に出荷される前から既知の値であり、予め制御部8のメモリに記憶されている。
【0152】
(2−2−2−9)ステップS129:バイパス回路部I
また、制御部8は、バイパス回路部Iにおける冷媒量Mobを下式13に基づいて算出する(S129)。
[数13]
Mob=kob1×ρco+kob2×ρs+kob3×Pe+kob4
【0153】
すなわち、冷媒量Mobは、室外熱交換器23の出口における冷媒の密度ρco、過冷却器25のバイパス回路側の出口における冷媒の密度ρs、及び蒸発圧力Peの関数式として表される。なお、パラメータkob1〜kob3は、試験や詳細なシミュレーションの結果を回帰分析することによって求められたものであり、予め制御部8のメモリに記憶されている。
【0154】
なお、バイパス回路部Iの容積Mobは、他の部分に比べて冷媒量が少ないこともあり、さらに簡易的な関係式によって演算されてもよい。例えば、バイパス回路部Iの容積Mobは、下式14により演算されてもよい。この場合、冷媒量Mobは、バイパス回路部Iの容積Vobに過冷却器25のバイパス回路側の部分における飽和液密度ρe及び補正係数kobを乗じた関数式として表される。なお、バイパス回路部Iの容積Vobは、室外ユニット2が設置場所に設置される前から既知の値であり、予め制御部8のメモリに記憶されている。また、過冷却器25のバイパス回路側の部分における飽和液密度ρeは、吸入圧力Ps又は蒸発温度Teを換算することによって得られる。
[数14]
Mob=Vob×ρe×kob5
【0155】
(2−2−2−10)ステップS12A
そして、制御部8は、上述した各ステップS121〜S129で算出した各部分の冷媒量から、冷媒回路10全体に充填されている冷媒量を演算する(S12A)。
【0156】
なお、本実施形態において、室外ユニット2は1台であるが、室外ユニットが複数台接続される場合には、室外ユニットに関する冷媒量Mog1、Mc、Mol1、Mol2、Mog2及びMobは、複数の室外ユニットのそれぞれに対応して各部分の冷媒量の関係式が設定され、複数の室外ユニットの各部分の冷媒量を加算することにより、室外ユニットの全冷媒量が演算される。
【0157】
以上説明したステップS12による冷媒量の推定は、次のステップS13の処理が終了するまで繰り返される。
【0158】
(2−2−3)ステップS13:冷媒量の適否の判定
上述したように、冷媒回路10内に冷媒の追加充填を開始すると、冷媒回路10内の冷媒量が徐々に増加する。この際、冷媒回路10内を流れる冷媒の状態量又は構成機器の運転状態量から、冷媒回路10全体の冷媒量Mが演算される。そして、演算された冷媒量Mが充填目標値Msに到達するまで冷媒の追加充填が行なわれる。
【0159】
換言すると、冷媒自動充填運転では、冷媒回路10全体の冷媒量Mの値が充填目標値Msに到達したかどうかを判定することで、冷媒回路10内に追加充填された冷媒量の適否を判定する。
【0160】
なお、上述の冷媒量判定運転においては、冷媒回路10内への冷媒の追加充填が進むにつれて、室外熱交換器23における冷媒量Mcが増加し、他の部分における冷媒量がほぼ一定となる。そのため、充填目標値Msを、室外ユニット2及び室内ユニット4、5ではなく、室外ユニット2の冷媒量Moのみに対応する値として設定したり、又は、室外熱交換器23の冷媒量Mcに対応する値として設定したりして、充填目標値Msに到達するまで冷媒の追加充填を行うようにしてもよい。
【0161】
また、充填目標値Msに到達して冷媒の追加充填が完了した状態における冷媒回路10全体の冷媒量Mは、後述の「冷媒漏洩検知運転」において、冷媒回路10からの漏洩の有無を判定する基準となる冷媒回路10全体の基準冷媒量Miとして使用される。基準冷媒量Miは、運転状態量の1つとして制御部8のメモリに記憶される。
【0162】
(2−3)冷媒漏洩検知運転モード
図7は、冷媒漏洩検知運転モードを説明するためのフローチャートである。
【0163】
冷媒漏洩検知運転は、不測の原因により冷媒回路10から冷媒が外部に漏洩していないかどうかを検査する際に行なわれる。
【0164】
具体的には、冷房運転や暖房運転のような通常運転が一定時間(例えば、半年〜1年ごと等)経過した場合、自動又は手動で通常運転モードから冷媒漏洩検知運転モードに切り換えられる。これに応じて、制御部8が、
図7に示されるステップS21〜ステップS24の処理を実行する。以下、各ステップの処理について詳述する。なお、冷媒漏洩検知運転は、休日や深夜等で空調を行う必要がない時間帯等に定期的に実行される。
【0165】
(2−3−1)ステップS21:冷媒量推定運転
冷媒漏洩検知運転の開始指令がなされると、制御部8により、上述した冷媒量推定運転が実行される。すなわち、制御部8により、室内ユニット全数運転、冷媒循環量制御、凝縮圧力制御、液管温度制御、及び過熱度制御が実行される。ここで、冷媒循環量制御における循環量目標値Wcs、液管温度制御における液管温度目標値Tlps、及び過熱度制御における過熱度目標値SHrsは、原則として、冷媒量推定運転のステップS11における目標値と同じ値が使用される。
【0166】
なお、冷媒量推定運転は、冷媒漏洩検知運転が実行される毎に行われるが、冷媒漏洩が生じている場合等においても、冷媒循環量制御が行われるので、冷媒循環量Wcは同じ循環量目標値Wcsで一定に保たれる。また、室外熱交換器23出口における冷媒の温度Tcoが変動する場合等においても、液管温度制御が行われるので、液冷媒連絡配管6内の冷媒の温度Tlpは同じ液管温度目標値Tlpsで一定に保たれる。
【0167】
(2−3−2)ステップS22:冷媒量の演算
次に、上述の冷媒量推定運転を行いつつ、冷媒量を推定する冷媒量推定部として機能する制御部8によって、冷媒漏洩検知運転における冷媒回路10を流れる冷媒の状態量又は構成機器の運転状態量から冷媒回路10全体の冷媒量Mが演算される。ここでは、上述したステップS12、S13と同様にして、冷媒回路10全体の冷媒量Mが演算される。
【0168】
なお、液管温度制御によって液冷媒連絡配管6内の冷媒の温度Tlpが液管温度目標値Tlpsで一定に保たれている。そのため、室外熱交換器23出口における冷媒の温度Tcoが変動する場合においても、冷媒漏洩検知運転の運転条件の違いによらず、液冷媒連絡配管部B3における冷媒量Mlpは一定に保たれる。
【0169】
(2−3−3)ステップS23、S24:冷媒量の適否の判定、警告表示
冷媒回路10から冷媒が外部に漏洩すると、冷媒回路10内の冷媒量が減少する。冷媒回路10内の冷媒量が減少すると、室外熱交換器23の出口における過冷却度SCoが小さくなる。また、室外熱交換器23における冷媒量Mcが減少し、他の部分における冷媒量がほぼ一定に保たれる。そのため、上述のステップS22において演算された冷媒回路10全体の冷媒量Mは、冷媒回路10から冷媒漏洩が生じている場合には、試運転モードの冷媒自動充填運転において検知された基準冷媒量Miよりも小さくなる。一方、冷媒回路10から冷媒漏洩が生じていない場合には、基準冷媒量Miとほぼ同じ値になる。
【0170】
したがって、演算により推定した冷媒量Mと基準冷媒量Miとの比較により、冷媒の漏洩の有無が判定される。冷媒回路10からの冷媒の漏洩が生じていないと判定される場合には、制御部8は冷媒漏洩検知運転を終了する(ステップS23−Yes)。
【0171】
一方、ステップS23において、冷媒回路10からの冷媒の漏洩が生じていると判定される場合には、冷媒漏洩を検知したことを知らせる警告を警告表示部9に表示してから、冷媒漏洩検知運転を終了する(ステップS23−No,S24)。
【0172】
このようにして、本実施形態に係る空気調和装置1では、制御部8が、冷媒回路10内に充填された冷媒量の適否を判定する。
【0173】
(3)特徴
(3−1)
以上説明したように、本実施形態に係る空気調和装置1は、圧縮機21と、室外熱交換器23と、室内膨張弁41・室内膨張弁51・室外膨張弁38(膨張機構)と、室内熱交換器42,52と、を含む各構成機器が接続されることによって構成される冷媒回路10を有するものである。ここで、圧縮機21は、回転数を変化させることによって運転容量を変えることができるものである。
【0174】
また、本実施形態に係る空気調和装置1は、冷媒量推定運転の際に室外熱交換器23から室内熱交換器42,52に向けて液冷媒が流れる高温側液管部B1(第1連絡配管)と、冷媒量推定運転の際に室内熱交換器42,52から室外熱交換器23に向けてガス冷媒が流れる低圧ガス管部H(第2連絡配管)と、室外熱交換器23の下流部で高温側液管部B1から分岐し、低圧ガス管部Hに接続するバイパス冷媒回路61(分岐配管)とを有する。
【0175】
また、本実施形態に係る空気調和装置1は制御部8を備える。制御部8は、各構成機器を制御して、室内熱交換器42,52を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度SHrとなる冷媒量推定運転を実行する。より詳しくは、冷媒量推定運転の際には、制御部8は、室内熱交換器42,52を蒸発器として機能させ、室内負荷とは無関係に圧縮機21の回転数を低速にし、圧縮機21における吸い込み蒸気の過熱度が通常運転のときよりも高い状態で所定時間安定するように各構成機器を制御する。ここでは、制御部8は、冷媒量の推定精度を高めるために、通常運転のときよりも過熱度が高い状態が5分以上続くように各構成機器を制御する。
【0176】
また、制御部8は、冷媒量を推定する冷媒量推定部としても機能し、冷媒量推定運転における冷媒回路10を流れる冷媒の状態量又は各構成機器の運転状態量を用いて、冷媒回路10内の冷媒量Mを推定する。
【0177】
このような空気調和装置1では、冷媒回路10内の冷媒量Mを高精度に推定し得る冷媒量推定方法を実現できる。以下、本実施形態に係る冷媒量推定方法の特徴について詳述する。
【0178】
(3−2)
上述したように、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、制御ステップ(ステップS11参照)と推定ステップ(ステップS12参照)とが実行される。制御ステップでは、各構成機器を制御して、室内熱交換器42,52を蒸発器として機能させ、通常運転のときよりも高い過熱度SHrとなる冷媒量推定運転を実行する(ステップS116参照)。推定ステップでは、冷媒量推定運転における冷媒回路10を流れる冷媒の状態量又は各構成機器の運転状態量を用いて、冷媒回路10内の冷媒量Mを推定する。
【0179】
したがって、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、通常運転のときよりも高い過熱度SHrにすることで、蒸発器である室内熱交換器42,52内で液相の冷媒量を減らすことができる。そのため、本実施形態に係る冷媒量推定方法を実行することで、室内熱交換器42,52以外の構成機器に冷媒を分布させることができる。また、室内熱交換器42,52に存在する冷媒よりも室外熱交換器23等に存在する冷媒の方が実験回帰式を用いて高精度に冷媒量を推定できる。結果として、冷媒回路10全体の冷媒量Mを高精度に推定することが可能となる。
【0180】
補足すると、室内ユニット4,5は、バリエーションが多く、実験回帰式を用いて冷媒量を推定することが困難な場合がある。その場合、室内ユニット部Fの冷媒量Mrは、冷凍サイクル特性のシミュレーション(式6〜8の連立方程式の計算を実行する)を行なって算出する(ステップS126参照)。しかしながら、冷凍サイクル特性のシミュレーションを行なう場合、上述したボイド率(式9)及びスミスの式(式10)における補正項Cと仮想平均液比率eが実験パラメータであるため、完全に誤差をなくすことが困難である。本実施形態に係る冷媒量推定方法であれば、通常運転のときよりも高い過熱度SHrとなる冷媒量推定運転を実行するので、室内熱交換器42,52(蒸発器)内で液相の冷媒量を減らすことができる。これにより、室内熱交換器42,52以外の構成機器に冷媒を分布させることで、冷媒回路10全体の冷媒量Mに対する室内熱交換器42,52(蒸発器)内の冷媒量Mrを相対的に減らすことができ、冷媒回路10全体の冷媒量Mの誤差を小さくすることができる。結果として、冷媒回路10内の冷媒量Mを高精度に推定することが可能となる。
【0181】
なお、ここでいう「通常運転」は、過熱度が3〜5度で、室内熱負荷に応じて、インバータ回転数を変動して負荷に応じた冷房能力を出す運転状態のことをいう。例えば、通常運転は、過熱度が3〜5度程度であり、室内温度が20度以上のときに蒸発温度が10度以上の条件で実行される運転をいう。
【0182】
(3−3)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法は、冷媒量推定運転のときの制御ステップで、過熱度SHrを10度以上、20度以下の範囲内にする。また、過熱度SHrが10度以上、20度以下の範囲内の値で安定した状態になったタイミングで冷媒量の演算を実施する。これにより、信頼性を維持した上で、冷媒回路10内の冷媒量Mを高精度に推定することができる。補足すると、過熱度SHrを10度以上とすることで、蒸発器として機能する室内熱交換器42,52内の乾き領域が増大し、室内ユニット部Fの冷媒量Mrを減少させることができる。結果として、冷媒回路10全体の冷媒量Mを算出する際の計算誤差を低減できる。一方、過熱度SHrは20度を超えると圧縮機吐出温度が信頼性温度上限を超えることがある。したがって、過熱度SHrを20度以下とすることで信頼性を維持することができる。
【0183】
なお、ここでは、冷媒量Mを算出する際に、過熱度SHrを10度以上、20度以下の範囲内にしているが、必ずしもこれに限る必要はなく、過熱度SHrが5度以上であればよい。過熱度が5度以上あれば、通常運転に比して室内熱交換器の乾き領域を増大させることができ、冷媒量Mを高精度に算出することが可能となる。
【0184】
(3−4)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法は、冷媒量推定運転のときに、空気調和装置1を通常運転よりも低い蒸発温度Teで運転する。具体的には、蒸発温度Teを摂氏0度以上、摂氏10度以下の範囲内にする。また、蒸発温度Teが摂氏0度以上、摂氏10度以下の範囲内で安定した状態になったタイミングで冷媒量の演算を実施する。これにより、室内熱交換器42,52内で液相の冷媒量を減らすことができる。結果として、冷媒回路10全体の冷媒量を算出する際の計算誤差を低減できる。なお、蒸発温度Teを摂氏0度以上とすることで、蒸発器として機能する室内熱交換器42,52内にフロストを生じさせないようにすることができる。また、蒸発温度Teを摂氏10度以下とすることで、実質的に任意の室内温度条件で冷媒量推定運転を実行することができる。
【0185】
なお、本発明者らの検討によれば、
図8に示すように、蒸発温度Teを低下させることで、蒸発器部C内の冷媒量を減らすことができることが明らかになっている。ここで、
図8において、線L1は蒸発温度が摂氏10度のときの室内熱交換器内の冷媒量を示しており、線L2は蒸発温度が摂氏5度のときの室内熱交換器内の冷媒量を示しており、線L3は蒸発温度が摂氏10度のときの室内交換器内の液相の冷媒量を示しており、線L4は蒸発温度が摂氏5度のときの室内交換器内の液相の冷媒量を示している。
【0186】
(3−5)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法は、冷媒量推定運転に、冷媒循環量Wcが一定となるように圧縮機21の回転数を変化させる(ステップS113参照)。
【0187】
このように、冷媒量推定運転において、冷媒循環量Wcが一定となるように圧縮機21の回転数を変化させているので、凝縮器として機能する室外熱交換器23の出口の過冷却度SCoと、室外熱交換器23内部に溜る液冷媒量との相関の線形性が良好になる。また、冷媒回路10内の冷媒の循環量が定格運転のときよりも40%以下の値で安定した状態になったタイミングで冷媒量の演算を実施する。これにより、高精度の実験回帰式を用いて室外熱交換器23の冷媒量を算出することができる。結果として、冷媒回路10内の冷媒量Mをさらに高精度に推定することが可能となる。
【0188】
補足すると、冷媒回路10内を循環する冷媒の冷媒循環量Wcが一定になるように(より具体的には、循環量目標値Wcsになるように)構成機器の制御することで、凝縮器として機能する室外熱交換器23内部のガス冷媒と液冷媒の分布状態を安定させることができる。そのため、室外熱交換器23出口における過冷却度SCoの変動から、冷媒循環量Wcの変化により発生する非線形な成分を除外できる。これにより、室外熱交換器23出口の過冷却度SCoの変動が、主として室外熱交換器23内部における冷媒量の変化により生じることとなる。そのため、空気調和装置1では、冷凍サイクル特性のシミュレーションのような演算負荷の大きい手法を使用することなく(ここでは、凝縮器部Aの冷媒量Mcを演算するための関係式に代表されるような冷媒回路10の各部の冷媒量を演算するための一次項からなる関係式を用いて)、冷媒回路10内の冷媒量(ここでは、冷媒回路10全体の冷媒量M)の適否を高精度に判定することができる。
【0189】
(3−6)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、冷媒循環量Wcを、冷媒回路10を流れる冷媒の状態量又は構成機器の運転状態量から演算するようにしている。具体的には、蒸発温度Te、凝縮温度Tc、圧縮機21の吸入側における冷媒温度である吸入温度Ts、圧縮機21の吸入側における冷媒圧力である吸入圧力Ps、圧縮機21の吐出側における冷媒温度である吐出温度Td、圧縮機21の吐出側における冷媒圧力である吐出圧力Pd、凝縮器としての室外熱交換器23の入口側における冷媒の過熱度である圧縮機吐出過熱度SHm、及び凝縮器としての室外熱交換器23の出口側における冷媒の過冷却度である過冷却度SCoのうち、少なくとも1つを用いて、冷媒循環量Wcの演算をするようにしている。これにより、この空気調和装置1では、冷媒循環量Wcを検出するための流量計が不要となる。
【0190】
(3−7)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法は、制御ステップで、各構成機器を制御して、冷媒回路10内の冷媒の冷媒循環量Wcを定格運転のときよりも低くなるようにして冷媒量推定運転を実行する。具体的には、制御部8が、冷媒循環量Wcを定格運転のときよりも40%以下になるようにして冷媒量推定運転を実行する(ステップS113参照)。
【0191】
このように、冷媒回路10内の冷媒の冷媒循環量Wcを定格運転のときよりも低くなるようにして冷媒量推定運転を実行することで、各熱交換器内の冷媒流れを安定化することができる。これにより、再現性及び繰り返し性を高くすることができ、冷媒回路10内の冷媒量Mを高精度に推定することが可能となる。
【0192】
なお、冷媒循環量Wcが低すぎる場合には、高圧冷媒が不十分となり、冷暖房能力が十分に発揮されない事態を生じることがある。そこで、冷媒量推定運転をする際には、冷暖房能力が十分に発揮される状態となる程度に冷媒循環量Wcの最低値を設定する。
【0193】
(3−8)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、制御ステップで、バイパス冷媒回路61内の冷媒をバイパス膨張弁62(流量弁)により流量調整するとともに減圧し、高温側液管部B1(第1連絡配管)からバイパス冷媒回路61(分岐配管)に流入していない主冷媒回路の冷媒と、バイパス冷媒回路61に流入した冷媒とを過冷却器25(熱交換器)を介して熱交換させ、バイパス冷媒回路61に流入した冷媒を低圧ガス管部H(第2連絡配管)内の冷媒に合流させる(ステップS115参照)。この際、過冷却器25での交換熱量を調整により、液管温度制御を実現している。これにより、液冷媒連絡配管6内の液冷媒を過冷却状態にすることができ、通常運転のときよりも低い蒸発温度Teを実現し易い状態にすることができる。結果として、冷媒量Mを高精度に検知することができる。
【0194】
補足すると、過冷却器25が温度調節機構として機能するので、凝縮器としての室外熱交換器23から膨張機構としての室内膨張弁41、51に送られる冷媒の温度を調節することが可能となる。これにより、冷媒量推定運転の際に、過冷却器25から、膨張機構としての室内膨張弁41、51に送られる冷媒の温度Tlpを一定にすることができる。それゆえ、過冷却器25から室内膨張弁41、51に至る冷媒配管内の冷媒の密度ρlpが変化しないようにすることができる。また、冷媒量推定運転を行う毎に、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoが異なる場合であっても、このような冷媒の温度の相違の影響を、室外熱交換器23の出口から過冷却器25に至る冷媒配管のみに収めることができる。結果として、冷媒量を推定する際に、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoの相違(すなわち、冷媒の密度の相違)による誤差を小さくすることができる。
【0195】
特に、本実施形態のように、熱源ユニットとしての室外ユニット2と利用ユニットとしての室内ユニット4、5とが液冷媒連絡配管6及びガス冷媒連絡配管7を介して接続されている場合には、室外ユニット2と室内ユニット4、5との間を接続する冷媒連絡配管6、7の長さや管径等が設置場所等の条件により異なる。そのため、冷媒連絡配管6、7の容積が大きくなる場合には、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoの相違が、室外熱交換器23の出口から室内膨張弁41、51に至る冷媒配管の大部分を構成する液冷媒連絡配管6内の冷媒の温度の相違となるため、冷媒量の推定誤差が大きくなる。
【0196】
これに対し、上述のように、過冷却器25を設けるとともに、冷媒量判定運転の際に液冷媒連絡配管6内の冷媒の温度Tlpが一定になるように過冷却器25の能力制御を行なうことで、過冷却器25から室内膨張弁41、51に至る冷媒配管内の冷媒の密度ρlpが変化しないようにすることができる。そのため、冷媒量の推定の際に、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度Tcoの相違(すなわち、冷媒の密度の相違)による誤差を小さくすることができる。
【0197】
結果として、例えば、冷媒回路10内に冷媒を充填する冷媒自動充填運転の際には、冷媒回路10全体の冷媒量Mが基準冷媒量Miに到達したかどうかを高精度に判定することができる。また、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する冷媒漏洩検知運転の際には、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を高精度に判定することができる。
【0198】
(3−9)
また、本実施形態の冷媒量推定方法では、冷媒回路10を複数の部分に分割して、各部分の冷媒量と運転状態量との関係式を設定している。そのため、冷凍サイクル特性のシミュレーション(式6〜8の連立方程式)を行う部分を最小限にして、演算負荷を抑えることができる。また、各部分の冷媒量を演算する上で重要な運転状態量を関係式の変数として選択的に取り込むことができる。結果として、各部分の冷媒量の演算精度が向上し、冷媒回路10内の冷媒量Mの適否を高精度に判定することができる。
【0199】
(3−10)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、上記各制御により、任意の外気温、室温の条件に対して、蒸発器である室内熱交換器42,52の状態を同じように再現できるので、異なる外気温・室温で試験運転した際にも誤差が生じにくいという効果を有している。
【0200】
(3−11)
また、本実施形態に係る冷媒量推定方法では、アキュムレータ24等に液面センサを取り付けるようなことをせずに冷媒量を推定できる。結果として、コストアップを生じさせずに高精度な冷媒量の推定を可能にする。
【0201】
(3−12)
なお、上述した空気調和装置1は、室内熱交換器42,52を個別に有する複数の室内ユニット4,5を有するものである。そして、制御部8が、運転中の全ての室内ユニット4,5の過熱度が通常運転よりも高い状態で安定するように各構成機器を制御する。このような構成により、複数の室内ユニット4,5を有する空気調和装置1において、冷媒回路内の冷媒量を高精度に推定することが可能となる。
【0202】
補足すると、上述した空気調和装置1では、異なる空間(例えば部屋)の空気調和を各室内ユニット4,5により行なう。ここで、各空間での温度は異なるので、通常運転においても、ある室内ユニットを用いたときに過熱度が大きくなる運転となる可能性はある。しかし、全ての室内ユニットを用いたときに過熱度が大きくなる運転となることは一般的には生じない。このような前提のもと、本実施形態に係る空気調和装置1では、制御部8が、通常運転とは異なり、運転中の全ての室内ユニットの過熱度が通常運転よりも高い状態で安定するように各構成機器を制御するものである。
【0203】
(4)変形例
(4−1)変形例A
本実施形態に係る空気調和装置1は、冷媒量推定運転の際に室外熱交換器23から室内熱交換器42,52に向けて液冷媒が流れる流路B1,B2,B3(連絡配管)と、その流路の温度を制御する制御部8(温度制御装置)と、室外熱交換器23の温度を変化させる室外ファン28と、室内熱交換器42,52の温度を変化させる室内ファン43,53と、をさらに有する。そして、この空気調和装置1では、冷媒量推定運転において、冷媒回路10における蒸発温度Te、凝縮温度Tc、連絡配管内の液冷媒の温度と凝縮温度の差にあたる過冷却度SCo、過熱度SHr、及び冷媒循環量Wcは、室内温度Tr及び室外温度Taに応じた目標値が設定されている。
【0204】
変形例Aでは、上記制御ステップで、蒸発温度Te、凝縮温度Tc、過冷却度SCo、過熱度SHr、及び冷媒循環量Wcのすべてが、目標値から所定の近傍の範囲内に達したときに、圧縮機21の回転数、温度制御装置の制御出力、膨張機構の開度、室外ファン28の回転数、及び室内ファン43,53の回転数の値を固定するように制御する。
【0205】
このような制御により、PID制御よりも、冷媒流れを安定化できる場合がある。結果として、冷媒回路10内の冷媒量Mを高精度に推定することが可能となる。
【0206】
(4−2)変形例B
上記説明では、空気調和装置1がバイパス回路部Iを有するものであったが、本実施形態に係る空気調和装置1はこのような構成に限られるものではない。具体的には、本実施形態に係る空気調和装置1は、
図9に示すように、バイパス回路部Iを有さないものでもよい。このような構成により、コストを抑えた空気調和装置1を実現することができる。
【0207】
なお、バイパス回路部Iを有さない構成の場合、過冷却は成り行きで制御する。
【0208】
(4−3)変形例C
上記説明では、冷暖切り換え可能な空気調和装置1を用いて説明したが、本実施形態に係る空気調和装置1はこのような構成に限定されるものではない。例えば、冷房専用の空気調和装置等であってもよい。また、上記説明では、1台の室外ユニットを備えた空気調和装置1を用いて説明したが、本実施形態に係る空気調和装置1はこのような構成に限定されるものではない。例えば、複数台の室外ユニットを備えた空気調和装置であってもよい。
【0209】
(4−4)変形例D
上記説明では、空気調和装置1が、室内熱交換器42,52を個別に有する複数の室内ユニット4,5を有するものとしたが、本実施形態に係る冷媒量推定方法はこれ以外の空気調和装置1に対しても用いることができる。
【0210】
例えば、
図10に示すように、1台の室外ユニット2に1台の室内ユニット4が対応している空気調和装置1Dに対しても同様の冷媒量推定方法を適用することができる。なお、
図10に示す構成では、室外ユニット2が室外熱交換器23を有し、室内ユニット4が室内熱交換器42を有している。その他の構成は
図9に示したものと同じであるが、各機器の具体的構成は使用形態に応じて最適なものが採用される。
【0211】
なお、この空気調和装置1Dでは、制御部8は、過熱度が8度以上になるように各構成機器を制御することが好ましい。
【0212】
(4−5)変形例E
上記説明では、空気調和装置1の制御部8が冷媒量Mの演算を実行したが、本実施形態に係る空気調和装置1はこのような構成に限られるものではない。例えば、空気調和装置1がネットワーク上の管理装置と通信する機能を有している場合には、空気調和装置1の制御部8が冷媒量Mの演算を実行せずに、管理装置が冷媒量Mの演算を実行する形態であってあってもよい。なお、このような形態の場合、演算に必要な情報は空気調和装置1から管理装置に随時送信される。
【0213】
<付記>
なお、本発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではない。本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本発明は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できるものである。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよいものである。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよいものである。