(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[インサート成形用フィルム]
本発明のインサート成型用フィルムは、熱可塑性透明基材フィルムの一方面に、直接、または、少なくとも1層を介して、耐薬品性向上層を備えており、該耐薬品性向上層は、下記成分(A)〜(C)を含有する耐薬品性向上層形成用組成物の硬化物であることを特徴とする。
(A)多官能チオール
(B)イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート
(C)光重合開始剤
【0012】
<熱可塑性透明基材フィルム>
本発明に用いる熱可塑性透明基材フィルムは、透明な熱可塑性樹脂からなり、例えばポリカーボネート樹脂、またはポリメチルメタクリレート樹脂の一方または双方からなるフィルムを使用でき、特に、ポリカーボネート層およびポリメチルメタクリレート層との2層構造からなるフィルムが好ましい。これらの材質であれば、PETなどのポリエステル樹脂と比べて、成形時の基材フィルムの延伸に伴うクラックに起因する白化等の発生が無いので、好適に用いることができる。
本発明に用いる熱可塑性透明基材フィルムの膜厚は、通常30〜500μm、好ましくは125〜300μmである。また、熱可塑性透明基材フィルムの屈折率は、1.49〜1.59であることが好ましい。
【0013】
<耐薬品性向上層形成用組成物>
(多官能チオール(A))
本発明に用いる多官能チオール(A)は、下記の式(1)で表される構造を有する。
【化10】
(式中のmとkの合計はR
1の価数を表し2〜4、6の整数であり、kは0〜2の整数であり、mは1〜6の整数であり、aは0〜1の整数であり、bは0〜1の整数あり、R
1は下記式(2)〜式(5)のいずれかで表される基であり、R
2はそれぞれメチル基またはエチル基であり、R
3はそれぞれメチレン基、エチレン基またはイソプロピレン基である。)
【化11】
(式中のnは0〜6の整数である。)
【化12】
【化13】
【化14】
【0014】
本発明に用いる多官能チオール(A)の骨格R
1の価数(m+k)が2の場合は、好ましくはkは0であり、aは1であり、bは0または1であり、R
1は前記の式(2)で表される2官能骨格であり、繰り返し数n(nは0〜6の整数であり、好ましくは、nは3〜5の整数である。)のポリ(エチレングリコール)鎖である。具体的には、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)(EGMP−4)が好ましく挙げられる。
【0015】
本発明に用いる多官能チオール(A)の骨格R
1の価数(m+k)が3の場合は、好ましくはkは0または1であり、aは0または1であり、bは0または1であり、R
1は前記の式(3)で表される3官能骨格であり、イソシアヌル環である。さらにkが1の場合には置換基R
2はメチル基またはエチル基である。具体的には、1−メチル−3,5−ビス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1−エチル−3,5−ビス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−メチル]−イソシアヌレート、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−イソプロピル]−イソシアヌレート等が好ましく挙げられる。
【0016】
本発明に用いる多官能チオール(A)の骨格R
1の価数(m+k)が4の場合は、好ましくはkは0または1であり、aは0または1であり、bは0または1であり、R
1は前記の式(4)で表される4官能骨格である。さらにkが1の場合には置換基R
2はメチル基またはエチル基である。具体的には、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)およびペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)が好ましく挙げられる。
【0017】
本発明に用いる多官能チオール(A)の骨格R
1の価数(m+k)が6の場合は、好ましくはkは0または2であり、aは0または1であり、bは0または1であり、R
1は前記の式(5)で表される6官能骨格である。さらにkは1の場合には置換基R
2はメチル基またはエチル基である。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)が好ましく挙げられる。
【0018】
本発明に用いる耐薬品性向上層形成用組成物中の多官能チオール(A)の含有量は4〜52質量%である。下限値として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。上限値として、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。多官能チオール(A)の含有量を上記範囲とすることで、耐薬品性、成形性の低下を抑え、伸び性を向上させることができる。
【0019】
(多官能アクリレート(B))
本発明に用いる多官能アクリレート(B)は、イソシアヌレート骨格を有し、下記の式(6)で表される。
【化15】
(式中のR
4は、R
5と同一または、−CH
3もしくは−CH
2CH
2OCOOHであり、
R
5は、それぞれ下記の式(7)、式(8)または式(9)で表される基である。)
【化16】
【化17】
(式中のpは0〜1の整数である。)
【化18】
(式中のqは0〜1の整数である。)
【0020】
本発明に用いる多官能アクリレート(B)が1−プロペニル基を有するイソシアヌレート類である場合、R
5は前記の式(7)で表される基であり、好ましくはR
4は、R
5と同一または、−CH
3もしくは−CH
2CH
2OCOOHである。具体的な市販品としては、例えば、四国化成(株)製、「MeDAIC」等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる多官能アクリレート(B)がエチレンオキシド変性アクリレート類である場合、R
5は前記の式(8)で表される基であり、好ましくはイソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート(R
4は−CH
3または−CH
2CH
2OCOOH)、およびイソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(R
4はR
5と同一)である。具体的な市販品としては、例えば、東亞合成(株)製「アロニックスM−313」および「アロニックスM−315」、日立化成(株)製「ファンクリルFA−731A」、新中村化学工業(株)製「NKエステルA−9300」等が挙げられる。
これらの中では、ジ−体とトリ−体の混合物である東亞合成(株)製「アロニックスM−315」が好ましく挙げられる。
【0022】
本発明に用いる多官能アクリレート(B)がε−カプロラクトン変性トリス[2−(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートである場合、R
5は前記の式(7)で表される基であり、好ましくはR
4は、R
5と同一または、−CH
3もしくは−CH
2CH
2OCOOHである。具体的な市販品としては、例えば、東亞合成(株)製「アロニックスM−327」、新中村化学工業(株)製「NKエステルA−9300−1CL」等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる耐薬品性向上層形成用組成物中の多官能アクリレート(B)の含有量は47〜95質量%である。下限値として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。上限値として、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。多官能アクリレート(B)の含有量を上記範囲とすることで、耐薬品性、成形性の低下を抑え、伸び性を向上させることができる。
【0024】
本発明において、多官能チオール(A)と多官能アクリレート(B)の組み合わせとしては、例えば、イソシアヌル環を有する多官能チオール(A)を用いることが好ましい。
より好ましい組み合わせとしては、多官能チオール(A)はトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)であり、多官能アクリレート(B)としては、1−プロペニル基を有するイソシアヌレート類、エチレンオキシド変性アクリレート類、ε−カプロラクトン変性トリス[2−(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートである。
特に好ましい組み合わせとしては、多官能チオール(A)はトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)であり、多官能アクリレート(B)としては、エチレンオキシド変性アクリレート類、具体的には「アロニックスM−315」の組み合わせである。
耐薬品性効果を発揮するためには、架橋密度を高くする必要があるが、架橋密度を高くすると伸び性が低下し、成形性の低下を引き起こすという課題が生じる。しかしながら、多官能チオール(A)と多官能アクリレート(B)がともにイソシアヌレート骨格を有することで、硬化物中に存在するウレタン結合の割合を高くすることができるため、高い伸び率を維持できる。また、多官能チオール(A)、多官能アクリレート(B)は、それぞれ多官能であることから、架橋密度の高い硬化物を形成できる。よって、多官能チオール(A)、多官能アクリレート(B)を適用することで、耐薬品性効果を発揮する高い架橋密度と、高い伸び率を両立できる。
【0025】
(光重合開始剤(C))
本発明に用いる光重合開始剤(C)は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いる耐薬品性向上層形成用組成物中の光重合開始剤(C)の含有量は1〜9質量%である。下限値として、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。上限値として、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。光重合開始剤(C)の含有量を上記範囲とすることで、硬化を進めることができ、十分な硬度を確保しつつ密着性の低下を防ぐことができる。
【0027】
(透光性微粒子(D))
耐薬品性向上層には、透光性有機微粒子等の微粒子を含有させることで、表面に凹凸等を形成させて防眩性を付与することができる。防眩性を有する表面の凹凸形状のRa(算術平均粗さ)は、0.04〜0.40μmである。Raを上記範囲とすることで、金型離れ性が向上し、インサート成型後のヘイズ悪化を防ぐことができる。
【0028】
透光性有機微粒子は、耐薬品性向上層における光拡散機能、表面凹凸形成による防眩機能等を発現するためのものである。透光性樹脂微粒子は、スチレン−アクリル単量体共重合樹脂(スチレン−アクリル共重合樹脂)、(メタ)アクリル樹脂(屈折率1.49)、塩化ビニル樹脂(屈折率1.54)、ポリスチレン樹脂(屈折率1.59)、ポリエチレン樹脂(屈折率1.53)、メラミン樹脂(屈折率1.57〜1.60)、ポリカーボネート樹脂(屈折率1.59)等を含む樹脂により形成することができる。中でも、屈折率の調整が容易な点から、スチレン−アクリル共重合樹脂、またはそれらの架橋物により形成されることが好ましい。スチレン−アクリル共重合樹脂の場合には、両単量体の共重合組成を変化させることにより、屈折率を任意に調整することができる。なお、上記屈折率は光の波長589nmにおける屈折率である。
【0029】
透光性有機微粒子は、耐薬品性向上層中及びその表面における光の拡散または散乱を均一に行うために、粒子径の揃った単分散なものであることが好ましい。具体的には、透光性有機微粒子の平均粒子径の下限値として、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは0.8μm以上である。上限値として、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。透光性有機微粒子の平均粒子径が、上記範囲であることで、過度な粒子の凝集を抑制し、形成される凹凸形状が大きくなることを防ぐことができるため、耐薬品性向上層の透明性や防眩性を損なうことなく、粒子を含有させることができる。
【0030】
本明細書における平均粒子径は、コールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算し、得られた粒子数分布から算出される値である。コールターカウンター法は、電気抵抗を利用した粒子径測定法であり、粒子が細孔を通過する際に生じる2電極間の電気抵抗の変化を測定して平均粒子径を測定する方法である。
【0031】
透光性有機微粒子の平均粒子径(X)と耐薬品性向上層の膜厚(Y)の比X/Yは、下限値として、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上である。上限値として、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下である。この比X/Yを上記範囲とすることで、耐薬品性向上層中への透光性有機微粒子の固着力低下を防ぎ、インサート成形用フィルムの強度低下を防ぐことができる。さらに、上記範囲とすることで、耐薬品性向上層の表面に所望の凹凸を形成するために、透光性有機微粒子の添加量を過度に増量する必要がなく、インサート成形用フィルムのヘイズ値の上昇を抑制し画像鮮明度の低下を防ぐことができる。
【0032】
耐薬品性向上層のバインダーとなる成分(A)・(B)の硬化物の屈折率(nAB)と、透光性有機微粒子(D)の屈折率(nD)との屈折率差(ΔnAB−nD)は、できるだけ小さいことが好ましい。具体的には、ΔnAB−nD≦0.05であることが好ましい。この屈折率差ΔnAB−nDを0.05以下とすることで、インサート成形用フィルムのヘイズが高くなることを防ぎ、画像視認性の悪化を抑制させることができる。なお、透光性有機粒子(D)の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中、透光性有機粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定する他、カーギル試薬を用いるなどの方法により測定される。
【0033】
耐薬品性向上層形成用組成物中における透光性有機微粒子の含有量は、下限値として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。上限値として、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。透光性有機微粒子の含有量を上記範囲とすることで、十分な防眩性を付与できるとともに、耐薬品性向上層のヘイズ値上昇による白化等を抑制し、画像認識性が低下することを防ぐことができる。
【0034】
透光性有機微粒子は、1種のみならず複数種併用することもできる。この場合、比重差が0.1以上の2種以上の透光性有機粒子を併用したり、平均粒子径差が0.5μm以上の異なる粒径を有する2種以上の透光性有機粒子を併用したり、屈折率差が0.01以上の2種以上の透光性有機粒子を併用したり、球状の透光性有機粒子と不定形の透光性有機粒子を併用することによっても、拡散反射強度の調整を行うことが可能である。
【0035】
比重は液相置換法、気相置換法(ピクノメーター法)等で、粒子径はコールターカウンター法や光回折散乱法等で測定できる。または光学積層体の断面をSEMやTEM等顕微鏡で観察することで測定できる。屈折率は、アッベ屈折計で直接測定することができる。あるいはカーギル試薬を用いる方法、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量的に屈折率を評価できる。
【0036】
(その他の添加物)
耐薬品性向上層形成用組成物には、必要に応じて、無機微粒子、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、防汚剤等の従来公知の添加物を添加して使用してもよい。
【0037】
無機微粒子としては、ケイ素酸化物粒子(例えばシリカ粒子)を使用できる。ケイ素酸化物粒子としては、コロイダルシリカ、または粉体シリカが挙げられる。コロイダルシリカとしては、市販品として、日産化学工業(株)製商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等が挙げられる。また、粉体シリカとしては、市販品として、日本アエロジル(株)製商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカエ業(株)製商品名:E220A、E220、富土シリシア(株)製商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製商品名:SGフレーク等が挙げられる。
【0038】
無機微粒子としては、シリカ粒子の他、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛(AZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化錫(PTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)等からなる微粒子も適用することができる。
【0039】
無機微粒子は、シランカップリング剤で表面を修飾したものを使用することが好ましい。無機微粒子の表面を修飾することで、水分を吸着した無機微粒子が透光性有機微粒子と凝集物を形成することを防ぎ、欠陥を抑制することができる
【0040】
無機微粒子を配合する効果としては、室温〜85℃程度の温度領域で高い硬度を付与できる一方で、プレフォームや射出成形時に加わる130℃以上の温度領域において、耐薬品性向上層の柔軟性(130℃以上での伸び率)を高めることができる。
【0041】
無機微粒子の平均粒子径は、上限値として、100nm以下が好ましい。無機微粒子の平均粒子径を100nm以下とすることで、散乱強度の上昇を防ぎヘイズの上昇を抑制できるため、画像が白茶けるなどの視認性悪化を防止することができる。下限値としては特に限定されないが、5nm以上である。また、耐薬品性向上層形成用組成物に無機微粒子を添加する場合、その含有量は、下限値として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。上限値として、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。
【0042】
(耐薬品性向上層)
本発明に記載の耐薬品性向上層は、インサート成型用フィルムにおいて、最外層または中間層として備えるものである。
最外層として備える場合は、前記の耐薬品
性向上層はハードコート層、防眩の機能が発現する層(以下、防眩層とする。)等として活用でき、中間層として備える場合は、プライマー層等として活用することができる。
なお、本発明における最外層とは、ハードコート層、防眩層等を示すものであって、ハードコート層又は防眩層の外層に反射防止膜や
耐擦傷膜、防汚膜等を備えることを妨げるものでない。
【0043】
本発明に耐薬品
性向上層をプライマー層として使用する場合は、防眩層と熱可塑性透明基材フィルムとの間の層として使用することが好ましい。
耐薬品性向上層をプライマー層として用いることにより、防眩層と熱可塑性透明基材フィルムとの密着性が向上し、かつインサート成形用フィルムの耐薬品性を向上させることができる。
【0044】
(耐薬品性向上層の形成方法)
本発明のインサート成型用フィルムにおいて、耐薬品性向上層を形成するには、まず、耐薬品性向上層形成用組成物を熱可塑性透明基材フィルムの一方面上に(直接、又は、凹凸を有する層を介して)塗布した後、乾燥して、或いは紫外線を照射して、硬化させることにより、熱可塑性透明基材フィルム上に耐薬品性向上層が形成される。それにより、本発明のインサート成形用フィルムが得られる。
【0045】
また、塗工性の観点から、耐薬品性向上層形成用組成物は溶媒に希釈し塗工することが好ましい。溶媒としては、各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
希釈溶剤として具体的には、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール等が挙げられる。なお、これらの溶剤は、単一でも、混合しても適用することができる。乾燥後の塗膜表面を良好なものとするために、蒸気圧の異なる種類の溶媒を用いることが好ましい。
【0046】
本発明において、耐薬品性向上層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め熱可塑性透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0047】
塗膜に紫外線を照射する場合、紫外線源としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の線源等が使用される。この場合、紫外線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cm
2であることが好ましい。照射量がこの範囲であれば、塗膜の硬化が不十分となったり、硬化物が着色したりすることがなく、好適に塗膜の硬化を行うことができる。
【0048】
(耐薬品性向上層の膜厚)
本発明のインサート成型用フィルムにおける耐薬品性向上層の膜厚は、0.02〜4.4μmである。下限値として、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。上限値として、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。耐薬品性向上層の膜厚を上記範囲とすることで、応力が加わるインサート成形加工の際に延伸性が低下せず、耐薬品性向上層の亀裂(クラック)発生を防ぐことができる。
【0049】
(反射防止層)
本発明のインサート成型用フィルムは、前記の耐薬品性向上層上に、反射防止層を備えていてもよい。反射防止層の形成により、外光の反射を防止でき視認性がさらに向上する。
【0050】
反射防止層は、屈折率を調整することでインサート成形用フィルムにおいて反射防止効果を発現させる層である。ここでの反射防止層としては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置の表面に貼着される公知の反射防止フィルムの構成を適用することができ、1層また複数層で形成することができる。最も簡便な反射防止層の構成は1層で形成されたものであり、反射防止層を1層で形成した場合は、そのフィルムを構成する素材の中で、その層(低屈折率層)の屈折率が最も低く設定される。その屈折率は、1.30〜1.45とすることが好ましい。この屈折率が1.30未満の場合には十分に硬い層を形成することが困難であり、屈折率が1.45を超えると、反射防止性が十分に発揮されない場合がある。
反射防止層を作成する方法としては、コーター等を用いて湿式法でコーティングする方法が挙げられる。
【0051】
反射防止層の膜厚は、70〜140nmとすることが好ましい。膜厚前記の範囲とすることで、他層との光の干渉バランスを保ち十分な反射防止性を得ることができる。
【0052】
反射防止層は、反射防止層形成用組成物からなる塗布液を塗布した後、紫外線照射により硬化することで形成される。その塗布方法や硬化条件、及び粘度調整用の希釈溶媒は、耐薬品性向上層と同様であればよい。
【0053】
反射防止層形成用組成物は、この種のフィルムにおいて従来から公知の一般的な低屈折率層形成用組成物を使用することもできるが、(ア)フッ素含有紫外線硬化型樹脂、(イ)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、(ウ)(ア)及び(イ)と共重合可能なバインダー、(エ)透光性有機微粒子、および(オ)光重合開始剤を含有するものを使用することが好ましい。(エ)透光性有機微粒子および(オ)光重合開始剤としては、上記耐薬品性向上層形成用組成物において使用したものと同様のものを使用できる。
【0054】
(ア)フッ素含有紫外線硬化型樹脂
フッ素含有紫外線硬化型樹脂は、防汚機能を発現するためのものであり、フィルム表面を触った際に付着する指紋の付着性を弱めることができる。フッ素含有紫外線硬化型樹脂としては、C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートが挙げられる。市販品としては、ダイキン工業(株)製「オプツールDAC−HP」や、DIC(株)製「メガファックRS−75」を使用できる。フッ素含有紫外線硬化型樹脂は、反射防止層形成用組成物中に0.2〜15質量%含まれることが好ましい。
【0055】
(イ)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン
アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、フィルム表面に付着した指紋の拭取り性を向上する。市販品としては、ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3500」、「BYK−UV 3530」(アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)や、ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3570」(アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン)を使用できる。この成分(イ)は、反射防止層形成用組成物中に、0.1〜8質量%含まれることが好ましい。
【0056】
(ウ)(ア)及び(イ)と共重合可能なバインダー
ここでのバインダーは、インサート成形用フィルムへ硬度とインサート成形における金型への追随性を付与する事が出来る。このバインダーは、反射防止層形成用組成物中に40〜85質量%含まれることが好ましい。このようなバインダーとしては、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(α)または、紫外線硬化型樹脂(β)のうち、少なくとも1つを含有してなるものであり、紫外線硬化型樹脂(β)のとしては、「OD2H2A」(1,10−ジアクリロイルオキシ−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン)、市販品としては、日本化薬(株)製「KAYARAD DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、日本合成化学(株)製「紫光UV7600B」、共栄社化学(株)製「16−FDA」(1,10−ビス(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,−ヘキサデカフルオロデカン)等を使用できる。
【0057】
また、重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーを使用することもできる。重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、溶媒可溶性で、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで硬化層を得ることができるため、高い強度や耐薬液性を付与することができる。さらに、ほどよくポリマー構造であるため伸張性(追随性)も高く維持できる利点がある。
【0058】
重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率は、下限値として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。上限値として、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。また、質量(重量)平均分子量は、下限値として、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは3,000以上である。上限値として、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは200,000以下である。具体的な含フッ素反応性ポリマーとしては、下記一般式(10)で示されるパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を、下記一般式(11)で示される過酸化物で重合させて得られるホモポリマーに、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH
2=CFCOFを反応させて水酸基をフルオロアクリレートに置換した生成物が挙げられる。
【0060】
インサート成形用フィルムには、必要に応じて耐薬品性向上層と反射防止層との間にプライマー層を設けることもできる。プライマー層を介在させておけば、耐薬品性向上層と反射防止層との密着性が向上し、インサート成形用フィルムの耐擦傷性もより向上する。
プライマー層には、透光性有機微粒子や無機微粒子等の微粒子を含有させることで、防眩性を付与することができる。透光性有機微粒子や無機微粒子等の微粒子は耐薬品性向上層形成用組成物と同様のものを使用することができる。
【0061】
プライマー層形成用組成物は、好ましくは、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンと、紫外線硬化型樹脂と、前記光重合開始剤(C)とを、それぞれ少なくとも一種以上含有してなるものである。光重合開始剤(C)とともにアクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを含有することにより、アクリル系樹脂を含有した材料に対して優れた密着性を発揮することができる。また、紫外線硬化型樹脂を少なくとも1種含有することにより、適度な流動性を付与することができる。
【0062】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンは、ポリオレフィン成分と不飽和ジカルボン酸(無水物)成分とアクリル成分とから得ることができ、ポリオレフィン由来の構造単位と、不飽和ジカルボン酸(無水物)由来の構造単位と、アクリル由来の構造単位とからなる。なお、以下に説明するこれら各成分(ポリオレフィン成分、不飽和ジカルボン酸(無水物)成分、アクリル成分)は、それぞれ1種のみであってもよいし2種以上であってよい。
【0063】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを構成するポリオレフィン成分としては、例えば、炭素数4〜12のα−オレフィンの1種以上とプロピレンとを必須構成単位とする共重合体が好ましく挙げられる。ここで、炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく、1−ブテンが最も好ましい。これら炭素数4〜12のα−オレフィンがポリオレフィン成分中に占める割合は、15〜70モル%であることが好ましい。ただし、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびプロピレン以外のオレフィンをも構成単位とする共重合体においては、例えばエチレンをも構成単位とする場合(例えば、プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のような場合)には、ポリオレフィン成分中に占めるエチレンの割合は1モル%以下であるのが好ましく、0.5モル%以下であるのがより好ましく、0.1モル%以下であるのがさらに好ましい。
【0064】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを構成するポリオレフィン成分は、高分子ポリオレフィンからの熱減成ポリオレフィン、すなわち高分子ポリオレフィンを高温で熱分解して得られる低分子ポリオレフィンであることが好ましい。高分子ポリオレフィンからの熱減成ポリオレフィンは、末端や分子内に比較的多くの二重結合が均一に存在する。したがって、不飽和ジカルボン酸(無水物)のグラフト化が容易となる。これにより、一般には上げることが難しいと考えられている不飽和ジカルボン酸(無水物)付加率を、後述する比較的高い範囲にまで向上させることができる。熱減成ポリオレフィンを得る方法としては、例えば、数平均分子量15,000〜150,000の高分子ポリオレフィンを、有機過酸化物の存在下では180〜300℃、有機過酸化物の非存在下では300〜450℃で、0.5〜1時間加熱するようにすればよい。好ましくは有機過酸化物の非存在下で加熱する方法が好ましい。
【0065】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを構成するポリオレフィン成分の数平均分子量は、下限値として、好ましくは500以上であり、より好ましくは1500以上である。上限値として、好ましくは40,000以下であり、より好ましくは30,000以下である。
【0066】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを構成する不飽和ジカルボン酸(無水物)成分としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、アコニット酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物や、不飽和ジカルボン酸無水物と炭素数1〜5のアルキルアルコールとのエステル化物等が挙げられる。特に、熱可塑性樹脂との接着性が高い点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0067】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを構成するアクリル成分としては、例えば4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート等のような活性水素を有するアクリル成分や、例えば2−アクリロイルエチルイソシアネート等のようなイソシアナート基を含有するアクリル成分が挙げられ、さらには、メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル等もアクリル成分として用いることができる。
【0068】
ポリオレフィン成分と不飽和ジカルボン酸(無水物)成分とアクリル成分とから、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンを得る方法は特に制限されず、従来から公知の方法によって得られる。例えば、ポリオレフィン成分に不飽和ジカルボン酸(無水物)成分をグラフト付加したのち、アクリル成分を反応させる方法等により得ることができる。なお、具体的な反応条件等については、通常の有機合成の手法に従い、適宜設定すればよい。例えば、アクリル成分を反応させる際に、(メタ)アクリル酸エステルをアクリル成分とする場合には、例えばジクミルパーオキサイド等の水素引き抜き能を有する有機過酸化物を用いればよい。
【0069】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンは、融点が92〜112℃であることが好ましく、より好ましくは95〜110℃である。これにより、高温において優れた伸びを発現し、かつ、耐薬品性の良好な低屈折率層を形成することができる。アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンの融点が92℃未満であると、耐薬品性が悪化する傾向があり、一方、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンの融点が112℃を超えると、得られる塗膜(低屈折率層)に濁りが生じやすくなる。なお、融点は、示差走査熱分析(DSC)により測定される。
【0070】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンは、その構造中に占める不飽和ジカルボン酸(無水物)由来の構造単位の割合(すなわち、不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率)が、下限値として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上である。上限値として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。これにより、一般に極性が高い紫外線硬化型樹脂(B)との相溶性が向上する。その結果、濁りのない塗膜を得ることができる。逆に、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンにおける不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率が5質量%未満であると、得られる塗膜に濁りが生じるとともに、耐水性も低下することとなる。一方、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンにおける不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率が15質量%を超えても、得られる塗膜の耐水性が低下することになる。なお、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンにおける不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率は、例えば、赤外線分析(IR)におけるカルボニル基のピーク比から算出すればよい。
【0071】
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンの数平均分子量は特に制限されないが、下限値として、好ましくは600以上であり、より好ましくは1,600以上である。上限値として、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは30,000以下である。数平均分子量を上記範囲とすることで、塗膜物性の低下を防ぎ、塗膜の濁りと流動性の低下を抑制し、コーティング時の作業性を向上させることができる。
【0072】
本発明の耐薬品性向上層を中間層(プライマー層)として使用する場合、熱可塑性透明基材フィルムと中間層(プライマー層)との間に、凹凸を有する層を設けることができる。凹凸を有する層の耐薬品性が低くとも、耐薬品性向上層をその凹凸を有する層の上にオーバーコートすることで、凹凸を有する層を保護し、耐薬品性を付与することができる。
凹凸を有する層形成用組成物は、(a)アクリル系樹脂と、(b)1分子中に(メタ)アクリル基を3つ以上有するアクリル化合物または1分子中に(メタ)アクリル基を3つ以上有するウレタンアクリレートと、前記透光性有機微粒子(D)と、前記重合開始剤(C)光とを必須成分として含有し、さらに任意成分として無機微粒子を含有させることもできる。
【0073】
なお、(メタ)アクリル基とは、アクリル基またはメタクリル基を意味する。後述の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートも、それぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基、アクリル酸またはメタクリル酸、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0074】
(a)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する重合体やスチレン・(メタ)アクリル系樹脂等の中から1種または2種以上を選択して用いることができる。例えば、アクリル系単量体を必須の単量体成分として構成されたアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0075】
アクリル系樹脂(アクリル系ポリマー)を構成する単量体成分としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどを挙げることができる。この中でも、重合体の透明性が高いことから、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。カルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物としては、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などが挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0076】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、少なくとも84℃以上、好ましくは100℃以上とする。Tgが84℃未満では、高温高湿環境(例えば85℃、85%)下におけるインサート成形用防眩性フィルムの耐久性が悪化する場合がある。一方、Tgの上限は制限されないが、成形性の観点から160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0077】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは15,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。上限値として、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは200,000以下である。アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記範囲とすることで、乾燥塗膜のタック発生を抑制し、溶解性の悪化を防ぐことができる。
【0078】
アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、SIGMA−ALDRICH(株)製「Poly(Methyl methacrylate)」(Tg=105℃)や、東亞合成(株)製「ARUFONUH−UC−3920」(Tg:102℃)などが挙げられる。また、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール」シリーズも挙げられる。具体的には、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナールBR−50(Tg:100℃)、BR−52(Tg:105℃)、BR−73(Tg:100℃)、BR−80(Tg:105℃)、BR−83(Tg:105℃)、BR−88(Tg:105℃)、MB−2389(Tg:90℃)、MB−7033(Tg84℃)、BR−2952(Tg:84℃)」などが挙げられる。
【0079】
アクリル系樹脂の中でも、ガラス転移温度および透明性が高い点において、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Tg:105℃))が好適である。市販品としては、SIGMA−ALDRICH(株)製「Poly(Methyl methacrylate)」や、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール」シリーズの「BR−80」、「BR−83」、及び「BR−88」が該当する。
【0080】
アクリル化合物としては、1分子中に(メタ)アクリル基を3つ以上有し、紫外線等の活性エネルギー線で硬化するアクリルエステル類を使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、およびこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。中でも、より多官能であるジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴウレタン(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0081】
ウレタンアクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリル基を3つ以上有するものを使用することができる。1分子中に(メタ)アクリル基を3つ以上有するウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる化合物を用いることができる。
【0082】
成分(b)の市販品としては、日本化薬(株)製のKAYARAD TMPTA、KAYARAD T−1420(T)、KAYARAD DPHA、KAYARAD DPCA−60、日本合成化学(株)製の紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、紫光UV−7600B、紫光UV−7605B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−7640B、根上工業(株)製の
アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、新中村化学工業(株)製のNKエステルA−9300、NKオリゴU−15HA、NKオリゴUA−33Hなどが挙げられる。
【0083】
(b)アクリル化合物またはウレタンアクリレートの重量平均分子量は、15,000以下とすることが好ましく、100〜10,000とすることがより好ましい。重量平均分子量を15,000以下とすることで架橋密度の低下を防ぎ、耐擦傷性の低下を抑制できる。
【0084】
光重合開始剤や透光性有機微粒子等は、上記耐薬品性向上層形成用組成物で用いたものと同様のものを使用することができる。
【0085】
(樹脂成型品および画像表示装置)
本発明の樹脂成型品は、上記した本発明のインサート成型用フィルムを基材の表面に備え、さらに、本発明の画像表示装置は該樹脂成型品を備える。これらは、製造時の成型性に優れるとともに、防眩性および耐薬品性に優れるので、カーナビをはじめとする自動車のインフォメーションパネルなどのタッチパネルディスプレイに好適に使用される。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[耐薬品性向上層形成用組成物の調製1]
(製造例1−1)
多官能チオール(A)として、TEMPIC(トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート)を5質量部、イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)としてM−315:東亞合成(株)製「アロニックスM−315」、イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(ジ体8質量%とトリ体92質量%の混合物)を95質量部、光重合開始剤(C)として「I−184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア−184」
)を5質量部、重合禁止剤としてNPHA(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)を0.05質量部混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を混合して、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a−1)を得た。
【0087】
(製造例1−2〜製造例1−14、比較製造例1−1〜1−6)
製造例1−1と同様にして、表1に示す材料を表1に示す割合にて混合し、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a1−2〜a1−14,b1−1〜b1〜6)を調整した。なお、表1に示す各材料は、次のとおりである。
【0088】
(多官能チオール(A))
TEMPIC: トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート
DPMP: ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)
TMMP: トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)
PEMP: ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
EGMP−4: テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)
(単官能チオール)
EHMP: 2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート
【0089】
(イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B))
M−315: 東亞合成(株)製「アロニックスM−315」、イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(ジ体8質量%とトリ体92質量%の混合物)
(多官能アクリレート)
A−DPH: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製)
A−TMP: トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製)
【0090】
(光重合開始剤(C))
I−184: 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア−184」)
(重合禁止剤)
NPHA: N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
A−DPH: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製)
A−TMP: トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製)
【0091】
(熱可塑性透明
基材フィルム)
ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなるフィルム(PC/PMMA):住友化学(株)製「C001」200μm
【0092】
(反射防止層形成用組成物:L−1の調製)
・アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(α1)の合成
高分子ポリオレフィン(プロピレンと1−ブテンとの共重合体:三井化学(株)製「タフマーXR110T」)を攪拌機および温度計を備えた反応容器に入れ、360℃まで昇温して溶融させた。続いて窒素気流下で80分間加熱することにより、熱減成による低分子ポリオレフィン(1)を得た。
【0093】
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、低分子ポリオレフィン(1)160部を入れ、窒素気流下で180℃まで昇温して溶融させた。その後、無水マレイン酸25部と1−ドデセン20部を加え、均一に混合した。次いで、あらかじめ調製したキシレン20部にジクミルパーオキサイド1部を溶解させた溶液を180℃に維持しながら2時間かけて滴下した。滴下後さらに180℃で2時間攪拌し、無水マレイン酸のグラフト化反応を行なった。その後、減圧下でキシレンおよび1−ドデセンを留去して、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(2)を得た。
【0094】
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(2)450部を入れた。続いて窒素気流下で105℃まで昇温し、該温度を維持するようにしながらトルエン300部を攪拌下で徐々に滴下した。次いで、下記一般式(12)で表される水酸基含有メタクリレート(ダイセル化学工業社製「プラクセルFM4」)135部を添加した。攪拌しながら同温度で3時間反応させたのち、冷却し、水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(α1)の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は66.1%であった。
【化21】
【0095】
・含フッ素化合物(δ1)の製造
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104質量部と、ビス(2,2,3,3,4,4
,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液11質量部を入れた。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させてヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテル重合体である無色透明なポリマーを得た。
【0096】
このポリマーを
19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、
1H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、ヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテル重合体である無色透明なポリマーの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、重量平均分子量は118,000あった。
【0097】
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5質量部と、メチルエチルケトン(MEK)43質量部、ピリジン1質量部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。そして、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1質量部を、MEK9質量部に溶解したものを10分間かけて滴下した。これにより、(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物(δ1)の溶液を得た。
【0098】
・L−1の調製
イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として、固形分濃度が5質量%となるように、(i)粒子径が60nmの中空シリカ微粒子〔日輝触媒化成工業(株)製「スルーリア4320」〕37質量%と、(ii)上記で合成された含フッ素化合物(δ1)を固形分換算で37質量%と、(iii)上記で合成された水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(α1)の溶液を固形分換算で8質量部、(iv)アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン〔ビックケミー・ジャパン(株)製「BYKUV−3500」〕6質量%と、(v)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレート〔信越化学工業(株)製「RS−75」〕8質量%と、(vi)光重合開始剤〔BASFジャパン(株)製「イルガキュア907(I−907)」〕4質量%とを混合して、反射防止層形成用組成物L−1を調製した。
【0099】
(インサート成型用フィルムの作製1)
(実施例1−1〜1−14、比較例1−1〜1−6)
耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a1−1〜a1−14,b1−1〜b1−6)を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.8μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、耐薬品性向上層とした。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成した。
得られた各フィルムの結果を表1〜3に示す。
また、得られた各実施例・比較例の防眩性フィルムについて、次のようにして伸び率、ヘイズ、成型性、耐薬品性をそれぞれ測定評価した。その結果も表1〜3に示す。
【0100】
(膜厚)
1)基材に直接設けられる耐薬品性向上層、または凹凸を有する層(防眩層)の膜厚
分光膜厚計(FE3000,大塚電子製)によって粒子よる突出(凸)のない部分の反射スペクトルを測定し、得られた反射スペクトルからピークバレイ法にて膜厚を算出する。
この方法で膜厚を測定できない場合、断面SEMによる画像をもとに計測する。特に、凹凸を有する層の層厚みに関しては、粒子とその周囲の境界が不明瞭で、かつ、熱可塑性透明基材フィルムと防眩層の境界が不明瞭な場合がある。この場合は、
図1を参照するように表面Fの形状の内、隆起した部分の曲線から透光性有機微粒子の曲率直径d1(
図1参照)を求める。表面の頂点Sと曲率直径d1から底点aの位置を算出する。複数個所にて底点aを求め、複数の底点aを繋いだ線Bを熱可塑性透明基材フィルムと防眩層の境界とする。表面Fの内、窪んだ部分の底部と線Bの距離に相当する膜厚d2を膜厚Yとして決定する
2)プライマー層の膜厚
プライマー層の膜厚(I)(I:透光性有機微粒子の存在しない個所で最も薄膜となる防眩層とプライマー層の総膜厚(I+Y)を測定し、防眩層の膜厚(Y)を引いた値。透光性有機微粒子の存在しない個所の層厚みを断面SEM画像より計測する。
粒子とその周囲の境界が不明瞭で、かつ、熱可塑性透明基材フィルムとプライマー層の境界が不明瞭な場合は、
図1を参照するように防眩性層とプライマー層の境界Fの形状の内、隆起した部分の曲線から透光性有機微粒子の曲率直径d1(
図1参照)を求める。の頂点Sと曲率直径d1から底点aの位置を算出する。複数個所にて底点aを求め、複数の底点aを繋いだ線Bを熱可塑性透明基材フィルムとプライマー層の境界とする。防眩性層とプライマー層の境界Fの内、窪んだ部分の底部と線Bの距離に相当する膜厚d2を膜厚Iとして決定する。
3)反射防止層の膜厚
膜厚の測定は、光学積層体の断面をTEM写真で観察することにより行った。ランダムに10箇所測定し、平均値を算出した。
【0101】
(伸び率)
フィルムサンプルをダンベル状3号形の寸法にて打ち抜き、恒温槽内引張試験装置型式TCR2L(島津製作所(株)製)にて150℃の雰囲気下にて50mm/分のスピードにて引張り、コーティング層が白化した(クラックが発生した)長さ(L1)、フィルムが切断された長さ(L2)を測定した。得られたL1及びL2から下記の式より、コーティング層白化までの伸び率及びフィルム切断時の伸び率を算出した。
コーティング層白化までの伸び率=((L1−初期長さ20mm)/初期長さ20mm)×100%
【0102】
(防眩性)
JIS K 7105−1981に基づく像鮮明度測定装置〔スガ試験機(株)製の写像性測定器、ICM−1T〕を用いて1mmの幅を有する光学くしを通して45°反射で測定される像鮮明度の値(反射像鮮明度)(%)を測定した。測定結果の判断基準は、次のとおりである。
反射像鮮明度100%〜80%:防眩性なし
反射像鮮明度80%未満15%以上:防眩効果が良好
反射像鮮明度15%未満0%以上:防眩効果が強すぎる
【0103】
(ヘイズ)
ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製、NDH2000〕を使用し、光学特性としてのヘイズ値(%)を測定した。
【0104】
(視感反射率)
測定面の裏面反射を除くため、フィルムの裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰した形態にて調整した。調整したフィルムの測定面を日本電色(株)製「SD6000」により測定し、JIS Z 8701で規定されているXYZ表色系(CIE標準イルミナントD65)における、反射による物体色の三刺激値Yを算出した。
【0105】
(成型性)
インサート成型用フィルムの成型品への融着:得られたインサート成型用フィルムを熱可塑性透明基材フィルム(非コート面側)が溶融したポリカーボネート樹脂に接するように、射出成型金型内のキャビティに保持し、360℃程度の温度で溶融させたポリカーボネート樹脂を、29400kPaの圧力にて金型内に注入し、放冷して、平板部分と、その両端に半径R=0.5mmとなる曲面形状部分とを有する樹脂成型品を得た。すなわち、成型と同時に融着するインサート成型融着法にてインサート成型用フィルムの融着を行うことで、インサート成型用フィルムを備える樹脂成型品を得た。この樹脂成型品の曲率半径R=0.5mmとなる曲面形状におけるクラックの有無を、成型物の曲面部分を目視及び1400倍の顕微鏡にて確認し、クラック等の亀裂の有無を確認した。その際の評価基準は、次の通りである。
◎:1400倍の顕微鏡で観察してもクラック等の亀裂なし
○:目視にてクラック等の亀裂なし
×:目視にてクラック等の亀裂あり
【0106】
(耐薬品性)
室温(約25℃)の環境下で試験片のコート面側に50mm×50mmの白綿布(カナキン3号)を置き、白綿布(カナキン3号)の上から0.05gの薬液を滴下する。その後、薬液の蒸発を防ぐために、白綿布(カナキン3号)の上からアルミホイルで覆った上で、74℃の雰囲気下で1時間保管する。保管後、中性洗剤と水を使って薬液を除去し、乾燥後、試験前後の外観を評価した。
各変化率は、変化率=(試験前後変化量)/(初期特性)×100(%)
で表され、評価基準は、
◎:外観変化(ふくれ、浮き、脆化が生じる変化)が無く、ヘイズの変化が見られない(ヘイズ変化率<10%)
○:ヘイズの変化がほとんど見られない(20%≦ヘイズ変化率<30%)
×:防眩性〈透過像鮮明度、反射像鮮明度〉の変化が見られた(防眩性変化率≧30%)
として評価し、○以上を合格と判定した。
用いた薬液の詳細は次の通りである。
薬液:
1)虫除け剤「OFF! DEEP WOODS」(製品名、SC Johnson&Son, Inc.社製、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)23.8%を含有するエタノール/水分散物)
2)日焼け止めクリーム「Neutrogena Ultra Sheer Dry−Touch Sunblock Spf 45」(製品名、SC Johnson&Son,Inc.社製、内容成分:Avobenzen:3%、Homosalate:10%、Octisalate:5%、Octylen:2.8%、Oxybenzen:6%、UV−cut成分他残部)
【0107】
(耐擦傷性)
フィルム表面を♯0000のスチールウールに100gfの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
○:傷が0〜10本 △:傷が11〜20本 ×:傷が21本以上
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果より、実施例1−1〜1−5と比較例1−1〜1−2を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるとともに、伸びや成形性にも優れたインサート成形用フィルムが得られることがわかった。さらに、実施例1−1と比較例1−3〜1−4を比較すると、式(6)で示されるイソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)を含有することにより、伸び率が優れたインサート成形用フィルムが得られることが理解できる。
【0110】
【表2】
表2の実施例と比較例1−5を比較すると、単官能チオールである2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネートを用いた比較例1−5は、耐薬品性に劣ることがわかった。
【0111】
【表3】
【0112】
表3をみると、実施例1−13〜1−14と比較例1−6を比較すると、式(1)で示される多官能チオール(A)の含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるインサート成形用フィルムが得られることがわかった。
【0113】
(インサート成型用フィルムの作製2)
(実施例2−1〜2−14、比較例2−1〜2−6:耐薬品性向上層の外層に反射防止層を備えるフィルム)
耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a1−1〜a1−14,b1−1〜b1−6)を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.8μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、耐薬品性向上層とした。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成した。
さらに、反射防止層形成用組成物(L−1)を含有する塗液
を、耐薬品性向上層上にロールコーターにて乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、反射防止層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。各フィルムの結果を表4〜6に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
表4の結果より、実施例2−1〜2−5と比較例2−1〜2−2を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、反射防止層が形成されたインサート成形用フィルムにおいても、耐薬品性に優れるとともに、伸びや成形性にも優れるフィルムが得られることがわかった。さらに、実施例2−1と比較例2−3〜2−4を比較すると、式(6)で示されるイソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)を含有することにより、伸び率が優れたインサート成形用フィルムが得られることが理解できる。
【0116】
【表5】
【0117】
表5の実施例と比較例2−5を比較すると、単官能チオールである2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネートを用いた比較例2−5は、耐薬品性に劣ることがわかった。
【0118】
【表6】
【0119】
表6をみると、実施例2−13〜2−14と比較例2−6を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるインサート成形用フィルムが得られることがわかった。
【0120】
[耐薬品性向上層形成用組成物の調製2]
(製造例2−1)
多官能チオール(A)として、TEMPIC(トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート)を5質量部、イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)としてM−315:東亞合成(株)製「アロニックスM−315」、イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(ジ体8質量%とトリ体92質量%の混合物)を95質量部、光重合開始剤(C)として「I−184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア−184」
)を5質量部、透光性有機微粒子(D)として「MX−150」(綜研化学(株)製架橋アクリル単分散粒子、平均粒径1.5μm)を10質量部、重合禁止剤としてNPHA(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)を0.05質量部混合し、固形分濃度が15質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を混合して、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(組成物a2−1)を得た。なお、透光性有機微粒子「MX−150」(綜研化学(株)製架橋アクリル単分散粒子、平均粒径1.5μm)以外の成分は塗液中に完全に溶解し、透光性有機微粒子「MX−150」(綜研化学(株)製架橋アクリル単分散粒子、平均粒径1.5μm)は、塗料中に均一に分散していることを確認した。
【0121】
(製造例2−2〜製造例2−14、比較製造例2−1〜2−6)
製造例2−1と同様にして、各種材料を表7〜9に示す割合にて混合し、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(組成物a2−2〜a2−14,b2−1〜b2〜6)を調整した。なお、表7〜9に新たに示す各材料は、次のとおりである。
【0122】
MX−150: 綜研化学(株)製架橋アクリル単分散粒子、平均粒径1.5μm
【0123】
(インサート成型用フィルムの作製3)
(実施例3−1〜3−14、比較例3−1〜3−5:耐薬品性向上層が透光性有機微粒子を含有するフィルム)
耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a2−1〜a2−14,b2−1〜b2〜6)を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.8μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、耐薬品性向上層とした。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。各フィルムの結果を表7〜9に示す。
【0124】
【表7】
【0125】
表7の結果より、実施例3−1〜3−5と比較例3−1〜3−2を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、透光性有機微粒子を含有するインサート成形用フィルムにおいても、耐薬品性に優れるとともに、伸びや成形性にも優れたフィルムが得られることがわかった。さらに、実施例3−1と比較例3−3〜3−4を比較すると、式(6)で示されるイソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)を含有することにより、伸び率が優れたインサート成形用フィルムが得られることが理解できる。
【0126】
【表8】
【0127】
表8の実施例と比較例3−5を比較すると、単官能チオールである2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネートを用いた比較例2−5は、耐薬品性に劣ることがわかった。
【0128】
【表9】
【0129】
表9の結果から、実施例3−13〜3−14と比較例3−6を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるインサート成形用フィルムが得られることがわかった。
【0130】
(インサート成型用フィルムの作製4)
(実施例4−1〜4−12、比較例4−1〜4−6:耐薬品性向上層が透光性有機微粒子を含有し、前記耐薬品性向上層の外層に反射防止層を備えるフィルム)
耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a2−1〜a2〜14、b2−1〜b2−6)を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.8μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、耐薬品性向上層とした。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成し
た。
さらに、反射防止層形成用組成物(L−1)を含有する塗液を
、耐薬品性向上層上にロールコーターにて乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、反射防止層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。各フィルムの結果を表10〜12に示す。
【0131】
【表10】
【0132】
表10の結果より、実施例4−1〜4−5と比較例4−1〜4−2を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるとともに、伸びや成形性にも優れたインサート成形用フィルムが得られることがわかった。さらに、実施例4−1と比較例4−3〜4−4を比較すると、式(6)で示されるイソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)を含有することにより、伸び率が優れたインサート成形用フィルムが得られることが理解できる。
【0133】
【表11】
【0134】
表11の実施例と比較例4−5を比較すると、単官能チオールである2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネートを用いた比較例4−5は、耐薬品性に劣ることがわかった。
【0135】
【表12】
【0136】
表12の結果から、実施例4−11〜4−12と比較例4−6を比較すると、式(1)で示される多官能チオールの含有量を4〜52質量%とすることで、耐薬品性に優れるインサート成形用フィルムが得られることがわかった。
【0137】
(インサート成型用フィルムの作製5)
(実施例5−1〜5−4、比較例5−1:耐薬品性向上層をプライマー層として使用したフィルム)
表13に示す組成の凹凸を有する層を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、凹凸を有する層を形成した。
その後、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(a2−3)を、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.4μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により窒素雰囲気下で紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。さらに、反射防止層形成用組成物(L−1)を含有する塗液を
、耐薬品性向上層上にロールコーターにて乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、反射防止層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。各フィルムの結果を表13に示す。
【0138】
PMMA: 「Poly(Methyl methacrylate)」(SIGMA−ALDRICH製、重量平均分子量97,000、Tg=105℃)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
7600B: 日本合成化学(株)製「紫光UV-7600B」、6官能ウレタンアク
リレート
MX−300:綜研化学(株)製架橋アクリル単分散粒子、平均粒径3.0μm
【0139】
【表13】
【0140】
表13の結果より、耐薬品性向上層をプライマー層として用いたインサート成型用フィルムにおいても、優れた耐薬品性を有することがわかった。更に、本発明の耐薬品性向上層を用いることで、耐擦傷性に優れたフィルムが得られることがわかった。
【0141】
[耐薬品性向上層形成用組成物の調製3]
(製造例3−1)
多官能チオール(A)として、TEMPIC(トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート)、イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)としてA−9300、または、A−9300−1CL、光重合開始剤(C)として「I−184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア−184」
)を5質量部、重合禁止剤としてNPHA(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)を0.05質量部混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を混合して、耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(c−1〜c−4)を得た。なお、表14に新たに示す各材料は、次のとおりである。
【0142】
A−9300:新中村化学工業(株)製「NKエステルA−9300」
A−9300−1CL:新中村化学工業(株)製「NKエステルA−9300−1CL」
【0143】
(インサート成型用フィルムの作製6)
(実施例6−1〜6−4:異なる種類のイソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)を用いたフィルム)
耐薬品性向上層形成用組成物を含有する塗液(c1−1〜c1−4)を、上記熱可塑性透明
基材フィルムのポリメチルメタクリレート層上に、ロールコーターにて乾燥膜厚が0.8μmとなるように、塗布し、80℃で2分間乾燥させ、耐薬品性向上層とした。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm
2)、耐薬品性向上層形成用組成物を硬化させて耐薬品性向上層を形成した。さらに、反射防止層形成用組成物(L−1)を含有する塗液を
、耐薬品性向上層上にロールコーターにて乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、反射防止層を形成し、インサート成形用フィルムを得た。各フィルムの結果を表14に示す。
【0144】
【表14】
【0145】
表14をみると、(B)成分として、イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート化合物を用いることで、耐薬品性に優れるとともに、伸びや成形性にも優れたインサート成形用フィルムが得られることがわかった。
上記課題を解決するために、熱可塑性透明基材フィルムの一方面に、直接、または、少なくとも1層を介して、耐薬品性向上層を備えるインサート成型用フィルムであって、前記の耐薬品性向上層が、多官能チオール(A)と、イソシアヌレート骨格を有する多官能アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、多官能チオール(A)の含有量が4〜52質量%、多官能アクリレート(B)の含有量が47〜95質量%、光重合開始剤(C)の含有量が1〜9質量%である耐薬品性向上層形成用組成物の硬化物であることを特徴とするインサート成型用フィルムを提供する。