特許第6551646号(P6551646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551646フィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551646
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】フィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20190722BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20190722BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190722BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20190722BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01M8/1004
   H01M8/10 101
   B32B27/00 M
   H01M8/0273
   H01M4/88 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-248779(P2014-248779)
(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-110896(P2016-110896A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 和磨
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206805(JP,A)
【文献】 特開2007−035612(JP,A)
【文献】 特開2006−120433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の一方の面にアノード電極触媒、他方の面にカソード電極触媒が形成された燃料電池部材を製造するためのフィルム積層体であって、
前記電解質膜の一方の面には粘着層、マスキングフィルムが順次積層された第一のフィルム積層体を有し
前記電解質膜の他方の面には粘着層、マスキングフィルムが順次積層された第二のフィルム積層体を有し、
前記第一のフィルム積層体および前記第二のフィルム積層体における前記アノード電極触媒またはカソード電極触媒が形成される領域である打抜き部の外周は、前記電解質膜の界面まで深さ方向に打抜かれており、
前記第一のフィルム積層体の前記打抜き部のみが取り除かれ、前記打抜き部が取り除かれた領域に、前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒が形成されていることを特徴とするフィルム積層体。
【請求項2】
前記第一のフィルム積層体はさらに粘着層および第2のマスキングフィルムが順次積層されており、
前記第二のフィルム積層体はさらに粘着層および第2のマスキングフィルムが順次積層されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム積層体。
【請求項3】
電解質膜の一方の面にアノード電極触媒、他方の面にカソード電極触媒を備える燃料電池部材の製造方法であって、
前記電解質膜の両面に、順次積層された粘着層、マスキングフィルムをそれぞれ配置する工程を有し、
前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムにおける前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒が形成される領域である打抜き部の外周は、前記電解質膜の界面まで深さ方向に打抜かれており、
さらに、
一方の前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムの前記打抜き部を取り除く工程と、
前記打抜き部が取り除かれた領域に前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒の一方の電極触媒を形成する工程と、
他方の前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムの前記打抜き部を取り除く工程と、
前記打抜き部が取り除かれた領域に前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒の他方の電極触媒を形成する工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池部材製造用のフィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題の有効な解決策として、燃料電池が注目を浴びている。燃料電池とは、水素などの燃料を酸素などの酸化剤を用いて酸化し、これに伴う化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0003】
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
【0004】
高分子形燃料電池(PEFC)は、電解質膜である高分子電解質膜を燃料極(アノード)と空気極(カソード)で挟んだ構造となっており、燃料極側に水素を含む燃料ガス、空気極側に酸素を含む酸化剤ガスを供給することで、下記(1)(2)の電気化学反応により発電する。
【0005】
アノード:H→2H+2e (1)
カソード:1/2O+2H+2e→HO (2)
【0006】
アノードおよびカソードは、それぞれ触媒層とガス拡散層の積層構造からなる。アノード側触媒層に供給された燃料ガスは、電極触媒によりプロトンと電子となる(反応1)。プロトンは、アノード側触媒層内の高分子電解質、高分子電解質膜を通り、カソードに移動する。電子は、外部回路を通り、カソードに移動する。カソード側触媒層では、プロトンと電子と外部から供給された酸化剤ガスが反応して水を生成する(反応2)。このように、電子が外部回路を通ることにより発電する。
【0007】
従来、膜電極接合体の製造方法としては、触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質及び溶媒からなる触媒層用インクを作製して、触媒層用インクを高分子電解質膜に直接塗工して作製する方法や、電極転写基材またはガス拡散層に塗工した後、高分子電解質膜に熱圧着して作製する方法(特許文献1)が知られている。
【0008】
電解質膜への電極触媒形成は、主に電解質膜に直接塗工形成する場合と、一度転写基材に塗工した後に電解質膜に転写する場合の2種類に分けられる。電解質膜に直接塗工する場合、塗工方法にはダイ塗工を用いる場合が多く、アノード電極、カソード電極のそれぞれを形成する。塗工後は減圧乾燥や焼成によって触媒層中の溶剤を十分に除去する。
【0009】
転写基材に塗工した後に電解質膜に転写する場合も、転写基材への塗工はダイ塗工を用いる場合が多い。また転写工程には、ロール基材の場合はロール式熱ラミネート方式を使い、シート基材の場合は熱プレス方式を採用するのが一般的である。
【0010】
また、電極触媒をある特定の形状に形成する場合、マスク材を使用する方法が一般的である。つまり、電解質膜の両面にマスク材を貼合し、触媒を塗工、または転写した後にマスク材を剥がすことによって、電極触媒を形成することができる。
【0011】
しかし、両面にマスク材を添付することによって、両面に凹凸が生じるため、ステージに安定して設置することができない。マスキングされていない部分、つまり電解質膜が露呈している部分がステージよりも浮いた状態となってしまう。
【0012】
ステージより浮いた状態で塗工ステージに吸着固定した場合、吸着力により電解質膜が引っ張られ、電解質膜の伸長や、シワ発生の要因となる。なお、この状態で触媒インクを塗工した場合は、溶剤に起因した電解質膜の膨潤が発生し、これも膜変形の大きな要因となる。
【0013】
転写法を採用する場合も、塗工と同様に電解質膜の浮きが発生するため、加圧しても圧力が十分伝わらないという問題がある。特にマスク材近傍、つまり電解質膜の外周部分に圧力が伝わりにくく、転写不良発生の要因となる。
【0014】
上記の課題を回避するために、電解質膜の片面のみにマスク材を貼合し、片側の電極形成が終わってから、残りの電極を形成する方法が取られる場合もあるが、裏面を支持するためのフィルムが必要となったり、そのフィルムを剥がすための工程が増えたりするため、生産の観点からは好ましい方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2013−201140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は電解質膜の両面の所定の位置に高精度、高品質な電極触媒を形成することができる燃料電池部材製造用のフィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一態様は、電解質膜の一方の面にアノード電極触媒、他方の面にカソード電極触媒が形成された燃料電池部材を製造するためのフィルム積層体であって、前記電解質膜の一方の面には粘着層、マスキングフィルムが順次積層された第一のフィルム積層体を有し、前記電解質膜の他方の面には粘着層、マスキングフィルムが順次積層された第二のフィルム積層体を有し、前記第一のフィルム積層体および前記第二のフィルム積層体における前記アノード電極触媒またはカソード電極触媒が形成される領域である打抜き部の外周は、前記電解質膜の界面まで深さ方向に打抜かれており、前記第一のフィルム積層体の前記打抜き部のみが取り除かれ、前記打抜き部が取り除かれた領域に、前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒が形成されていることを特徴とするフィルム積層体である。
【0018】
また、前記第一のフィルム積層体はさらに粘着層および第2のマスキングフィルムが順次積層されており、前記第二のフィルム積層体はさらに粘着層および第2のマスキングフィルムが順次積層されていることを特徴とする
【0019】
また、電解質膜の一方の面にアノード電極触媒、他方の面にカソード電極触媒を備える燃料電池部材の製造方法であって、前記電解質膜の両面に、順次積層された粘着層、マスキングフィルムをそれぞれ配置する工程を有し、前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムにおける前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒が形成される領域である打抜き部の外周は、前記電解質膜の界面まで深さ方向に打抜かれており、さらに、一方の前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムの前記打抜き部を取り除く工程と、前記打抜き部が取り除かれた領域に前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒の一方の電極触媒を形成する工程と、他方の前記順次積層された粘着層、マスキングフィルムの前記打抜き部を取り除く工程と、前記打抜き部が取り除かれた領域に前記アノード電極触媒または前記カソード電極触媒の他方の電極触媒を形成する工程と、を含むことを特徴とする燃料電池部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る発明によれば、前記アノード電極触媒またはカソード電極触媒
が形成される領域の外周部(窓枠部)に相当する順次積層された前記粘着層、マスキングフィルムに対して、電解質膜の界面まで深さ方向に打抜き部を形成することで、窓枠部の内部領域を電解質膜の界面から容易に剥離することができる。その結果、前記窓枠部の内部領域に、従来法に比べて容易に、かつ高精度にアノード電極触媒またはカソード電極触媒を形成することができる。
【0021】
また、請求項2に係わる発明によれば、電解質膜の両面にそれぞれ粘着層、マスキングフィルム、粘着層、第2のマスキングフィルムを順次積層することで電解質膜の両面が平坦になる。これにより後工程となるアノード電極触媒またはカソード電極触媒を形成する際に、常盤上に安定して設置することができ、高精度の加工を施すことができる。
【0022】
また、前記アノード電極触媒またはカソード電極触媒が形成される領域の外周部(窓枠部)に相当する順次積層された前記粘着層、マスキングフィルム、粘着層、第2のマスキングフィルムに対して、電解質膜の界面まで深さ方向に打抜き部を形成することで、窓枠部の内部領域を電解質膜の界面から容易に剥離することができる。その結果、前記窓枠部の内部領域に、従来法に比べて容易に、かつ高精度にアノード電極触媒またはカソード電極触媒を形成することができる。
【0023】
またさらに、マスキングフィルムを2枚用いるとで、前記アノード電極触媒またはカソード電極触媒を形成する際に、不要の電極触媒が塗布された第2のマスキングフィルムを剥離することで、その下に積層されたもう一方のマスキングフィルムが形成された前記アノード電極触媒及びカソード電極触媒を保護するガスケットとして作用する効果がある。
【0024】
また、請求項3に係わる発明によれば、請求項1または2に記載のフィルム積層体を用いることで、電解質膜の両面の所定の位置に高精度、高品質な電極触媒を形成することができる。
【0025】
上記で説明したように、本発明によれば電解質膜の両面の所定の位置に高精度、高品質な電極触媒を形成することができる燃料電池部材製造用のフィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)本発明に係るフィルム積層体の一実施形態を示す平面概略図である。 (b)(a)に記載のAA´位置での断面概略図である。
図2図1に示すフィルム積層体の製造プロセスの断面概略図である。
図3図1に示すフィルム積層体を用いた燃料電池用電極触媒の製造プロセスの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る燃料電池部材製造用のフィルム積層体及びそれを用いた燃料電池部材について、図に基づき以下に説明する。なお、本発明に係るフィルム積層体は、マスキングフィルムを1枚又は2枚用いる構成が可能であるが、マスキングフィルムがガスケットとして作用する2枚用いた図1に示す構成で説明する。
【0028】
本発明のフィルム積層体は、電解質膜4の両面にそれぞれ粘着層3、マスキングフィルム1、粘着層3、第2のマスキングフィルム7を順次積層し、アノード電極触媒9またはカソード電極触媒10が形成される領域の外周部は、順次積層された前記粘着3層、マスキングフィルム1、粘着層3、第2のマスキングフィルム7が電解質膜4の界面まで深さ方向に打抜き部(窓枠部)2が形成されていることを特徴とする。
【0029】
以下、図2に基づいて本発明のフィルム積層体の製造方法について説明する。
【0030】
図2(a)に示すように、粘着層3を有する打抜き断裁用支持体6の粘着層3の上に、第2のマスキングフィルム7、粘着層3、マスキングフィルム1、粘着層3及びセパレータ5を順次積層する。積層する方法としては公知の方法が利用でき特に限定するものではない。例えば汎用のラミネーターを用いて圧力下で積層することができる。また、各粘着層3は予め粘着層3が形成された打抜き断裁用支持体6、第2のマスキングフィルム7、マスキングフィルム1を用いてもよい。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、図3(g)のアノード電極触媒9またはカソード電極触媒10が形成される領域の外周部の位置に、前記セパレータ5側から第2のマスキングフィルム7の底端部まで打抜く。この打抜く方法としては作業効率に優れたトムソン刃やピナクル刃による打抜き方式を用いることが好ましい。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、セパレータ5を剥離して電解質膜(高分子フィルム)4の一方の面と積層する。
【0033】
次に、図2(d)に示すように、粘着層3を有する打抜き断裁用支持体6を該粘着層3ごと剥離して第2のマスキングフィルム7を露出する。
【0034】
次に、図2(e)に示すように、前記電解質膜の他方の面に、同様にして図2(b)で得た積層体を貼り合せて本発明のフィルム積層体を作製する。
【0035】
本発明に係る電解質膜としてはプロトン伝導性を有する高分子電解質膜が好ましく、例えば、フッ素系高分子電解質膜や炭化水素系高分子電解質膜を用いることができるが、電池の出力電圧を高める上ではフッ素系高分子電解質膜がより好ましい。
【0036】
また、マスキングフィルム1及び第2のマスキングフィルム7としては、機械的強度や熱に対する寸法安定性等に優れた物理特性や、耐溶剤性に優れた化学的特性を兼ね備えていれば特に限定するものではないが、膜厚や幅等の選定範囲が広いことやハンドリング、コスト面でポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが好ましい。
【0037】
また、粘着層3としては、粘着強度の選定範囲が広く入手し易いアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0038】
また、断裁用支持体6としては、機械的強度や熱に対する寸法安定性等に優れたものであれば特に限定するものではなく、例えばPETフィルム等が好ましい。
【0039】
次に、上記で作製した本発明のフィルム積層体を用いた、燃料電池部材の一つである電極触媒の製造プロセスの一実施形態を図3に基づいて説明する。
【0040】
図には示してないが上記で作製したフィルム積層体を塗工ステージ8に固定する。固定方法としては特に限定するものではないが、ハンドリングや安定性に優れた吸引方式が好ましい。
【0041】
図3(a)に示すように、塗工ステージ8にフィルム積層体を固定し、打抜き部(窓枠部)2を電解質膜4から剥離する。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、アノード電極触媒9を形成するための電極触媒形成用
組成物を、前記フィルム積層体の全面に塗布して乾燥させ、その後、図3(c)に示すように、不要部9aを第2のマスキングフィルム7の下層の粘着層3から剥離して目的とするアノード電極触媒9を形成する。この時、マスキングフィルム1はアノード電極触媒9の外周を取り囲むため、ガスケットとしての作用効果を発揮することができる。これがマスキングフィルムを2枚用いたフィルム積層体のメリットである。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、図3(c)のフィルム積層体を表裏反転させてアノード電極触媒9側を塗工ステージ8に固定し、図3(a)と同様にして打抜き部(窓枠部)2を電解質膜4から剥離する。
【0044】
その後、図3(b)と同様にして、カソード電極触媒10を形成するための電極触媒形成用組成物を、前記フィルム積層体の全面に塗布して乾燥させた後、図3(c)に示すように、不要部10aを第2のマスキングフィルム7の下層の粘着層3から剥離して目的とするカソード電極触媒10を形成する。そして最後に塗工ステージ8から剥離することで電極触媒を作製できる。なお、図3ではアノード電極触媒9を先に形成する工程を示したが、カソード電極触媒10を先に形成してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明のフィルム積層体について実施例により具体的に説明する。
【0046】
打抜き断裁用支持体として微粘着剤付きの厚さ100μmのPET基材の上に、マスキングフィルムとして厚さ50μmのPENフィルム、厚さ15μmの粘着層、厚さ50μmのPETフィルム(セパレータ)をラミネータにて順次積層した。なお、本作業は全てロール基材を使用し、Roll to Roll方式にて作製した。
【0047】
次に、上記で作製した積層基材に、トムソン彫刻刃を使って100mm□の打抜き部(窓枠部)を形成した。打抜きはセパレータ側から行い、打抜き断裁用支持材が貫通しない程度まで断裁し、ハーフカット積層体を形成した。
【0048】
打ち抜き断裁が完了した後はロールフィルムからシートへ断裁して積層体を得た。その後、上記積層体からセパレータを剥離し、高分子電解質膜の一方の面に手動にて貼合した。
【0049】
同様にして前記高分子電解質膜の他方の面にも上記積層体を貼合してフィルム積層体を作製した。
【0050】
上記フィルム積層体の一方の面を塗工ステージにセット(固定)し、打抜き部(窓枠部)の内側を剥離した後、カソードインク(電極触媒形成用組成物)を塗布した。なお、この時の打抜き部(窓枠部)を剥離した後の深さは50μmであり、乾燥後の膜厚が30μmと成るようにカソードインクを塗布した。また、塗布エリアは打抜き部(窓枠部)を中心にして、150mm×150mmとした。
【0051】
塗工ステージには加温可能なセラミック製のステージを使用した。塗工時は常時100℃にて加温し、塗工後は約5minステージ上に放置することで塗工面を乾燥させた。
【0052】
次に、乾燥後のフィルム積層体の他方の面を塗工ステージに固定して、乾燥後の膜厚が10μmと成るようにアノードインク(電極触媒形成用組成物)を塗布した。なお、乾燥は、カソードと同様、100℃の塗工ステージ上に5min放置することによって実施した。
【0053】
その後、塗工ステージからフィルム積層体を取り出し、両面のマスキングフィルムであるPENフィルムを剥離して、高分子電解質膜の一方の面にカソード電極触媒、他方の面にアノード電極触媒が形成させたCCM(Catlyst Coated Menbrane 触媒被覆膜)を作製した。
【0054】
実施例で作製したCCMは、シワや撓みの発生がなく、電極の寸法変動も極めて小さかった。また、発電性能を測定した結果、従来の方法で作製したCCMとほぼ同等の性能を示しており、製造方法に起因する不具合が無いことを確認した。
【0055】
以上に述べた通り、本発明のフィルム積層体を用いて燃料電池部材CCM、もしくはMEAを作製することによって、シワや撓みの発生が少なく、電極触媒の寸法変動も極めて小さくすることが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフィルム積層体を用いることによって、シワや撓みの発生が少なく、電極触媒の寸法変動も極めて小さいCCM、もしくはMEAの作製が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・ マスクキングフィルム
2・・・ 打抜き部(窓枠部)
3・・・ 粘着層
4・・・ 電解質膜
5・・・ セパレータ
6・・・ 打抜き断裁用支持体
7・・・ 第2のマスキングフィルム
8・・・ 塗工ステージ
9・・・ アノード電極触媒
9a・・ 不要部
10・・ カソード電極触媒
10a・ 不要部
図1
図2
図3