(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記交点の近辺領域が、2本の交差する前記第1のスクライブラインと前記第2のスクライブラインから0.2mm〜1.0mm離れた平行線により定義される菱形領域である、請求項1に記載の脆性材料基板のスクライブ方法。
M1の範囲が0.05MPa〜0.07MPaの間にあり、M2の範囲が0.05MPa〜0.09MPaの間にある、請求項1に記載の脆性材料基板のスクライブ方法。
【背景技術】
【0002】
FPD関連製品は、液晶表示パネル、液晶プロジェクタ基板、有機EL素子等においてさまざまな用途があり、映像及び文字などの表示手段として使用されている。この種のFPDにおいて、例えば、一対のガラス基板を張り合わせてなる液晶表示パネルは、製造過程において、それぞれサイズの大きい一対のマザーガラスを張り合わせた後、所定の大きさに分断される。
【0003】
このマザーガラス基板の分断作業は、スクライブ装置を使用して、まず、マザーガラス基板の表面上方に移動したスクライブユニットのカッターホイールに対し荷重をかけるとともに、カッターホイールを一方向に沿って回転させながら移動させる。このような作業を進行開始位置から順次移動させて所定の回数を繰り返すことにより、第1の方向に互いに平行する第1のスクライブラインを形成する。
【0004】
その後、カッターホイールの進行方向を第1の方向と交差する(非平行の)方向に変更し、第1の方向の第1のスクライブラインと交差する第2の方向における第2のスクライブラインを形成する。
【0005】
そして、交差するスクライブラインを有するガラス基板をブレイク機構に送り、ブレイク機構においてスクライブラインを中心軸にして基板に対し所定の曲げ応力を与えることにより、基板をスクライブラインに沿って分断する。これにより、所望のサイズの液晶表示パネルが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スクライブ装置に使用されるカッターホイール、又はその他のスクライブカッターの刃先稜線が予め加工されず、
図2Aのような凹凸状の切口が形成されていない場合、脆性材料基板上をスクライブする際、いわゆる「交点飛び」という現象が起こる。これは、カッターホイールが先に形成されたスクライブラインの近辺を通過する時に、所定分断線に沿って形成すべきスクライブラインを形成できない現象のことをいう。これは、先に形成されたスクライブラインの両側に応力が残存しており、後にカッターホイールが先に形成されたスクライブラインを横切る時に、脆性材料基板に対するカッターホイールの脆性材料基板に下方に向くクラックを生じさせる力が弱まってしまうため、所望のスクライブラインを順調に形成することができないからである。
【0008】
そのため、過去の本出願人の発明(特許第4203015号を参照)においては、第1の方向のスクライブラインと交差する第2の方向のスクライブラインとが全く交点を生じないようにされるスクライブ方法により、交点飛びに起因する切り欠き、基板同士の押し合いによるクラック及び削れ等の欠陥を防止している。しかしながら、上記のように全く交点を生じさせないスクライブ方法の場合は、スクライブ過程において大幅なカッターホイールの昇降を繰り返さなければならないため、加工速度が落ちてしまう。
【0009】
前記従来技術の欠点に鑑み、本発明は、スクライブラインを形成する時に、カッターホイールの荷重を調整することにより、加工時間を有効に減少し、かつ、一部の脆性基板材料をスクライブする際、カッターホイールの形状、特殊加工への依存を抑え、しかも、いわゆるカケ、コジリ、ソゲ等の基板製品の欠陥が生じにくい、スクライブ方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の脆性材料基板のスクライブ方法は、第1の表面及び前記第1の表面に対する第2の表面を含む脆性材料基板をスクライブする方法であって、前記スクライブ方法は、(A)少なくとも第1の方向及び前記第1の方向と平行でない第2の方向のそれぞれに沿って延伸する複数の分断予定線を、前記脆性材料基板の前記第1の表面に設定する工程と、(B)スクライブユニットにより、設定された複数の分断予定線に沿ってスクライブラインを形成し、前記スクライブユニットに可変荷重を掛かることにより、前記第1の方向において少なくとも1本の第1のスクライブラインを形成し、及び前記第1のスクライブラインと交差する第2の方向において少なくとも一本の第2のスクライブラインを形成する工程と、を含み、前記少なくとも一本の第1のスクライブラインと前記少なくとも一本の第2のスクライブラインは交差して少なくとも1つの交点を形成し、(C)前記少なくとも一本の第1のスクライブラインをスクライブする際に前記スクライブユニットに掛かる荷重は、前記スクライブユニットが前記少なくとも1つの交点の近辺領域にない時の荷重がP1で、前記スクライブユニットが前記少なくとも1つの交点の近辺領域にある時の荷重がM1であり、(D)前記少なくとも一本の第2のスクライブラインをスクライブする際に前記スクライブユニットに掛かる荷重は、前記スクライブユニットが前記少なくとも1つの交点の近辺領域にない時の荷重がP2で、前記スクライブユニットが前記少なくとも1つの交点の近辺領域にある時の荷重がM2であり、かつ、(E)M1、M2は共に、少なくともP1とP2よりも小さく、かつ、0ではない。これによれば、交点飛びに起因するいわゆるカケ、コジリ、ソゲ等の不具合の状況を減少させる。
【0011】
より好ましくは、前記交点の近辺領域が、2本の交差する前記第1のスクライブラインと前記第2のスクライブラインから0.2mm〜1.0mm離れた平行線により定義される菱形領域である。また、より好ましくは、前記交点の近辺領域が、2本の交差する前記第1のスクライブラインと前記第2のスクライブラインからそれぞれ0.5mm〜0.7mm離れた平行線により定義される菱形領域である。一般的に、前記脆性材料基板の厚さは0.025〜40mmである。
【0012】
スクライブする脆性材料基板が液晶基板である場合、基板の厚さが0.3〜0.7mmであり、より好ましいP1とP2の範囲が0.05MPa〜0.11MPaの間にあり、中間値の0.08MPaとすることができ、より好ましいM1が0.05MPaである。他の実施態様では、P1とP2が0.11MPaであり、M1の範囲が0.05MPa〜0.07MPaの間にあり、M2の範囲が0.05MPa〜0.09MPaの間にある。
【0013】
また、本発明は、脆性材料基板を分断する脆性材料基板のスクライブ装置であって、前記方法により、脆性材料基板をスクライブすることを特徴とする。前記スクライブユニットがカッターホイールを有するものとし、基板の種類に応じて刃部が凹凸の歯状を有しないものが選択され、又は刃部が凹凸の歯状を有するカッターホイールが選択されることができる。前記スクライブユニットは進行制御手段により制御され、前記進行制御手段は、前記スクライブユニットのスクライブ速度が10〜1000mm/secとなるように制御される。本発明の装置によれば、交点飛びの現象及びこれに起因する製品の欠陥を有効に減らすことができる。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば交点飛びに起因するいわゆるカケ、コジリ、ソゲ等の不具合の状況を減少させることができる。また、本発明の装置によれば、交点飛びの現象及びこれに起因する製品の欠陥を有効に減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施例をもって本発明の特徴及びそれによる効果を説明する。但し、これらの実施例により本発明の求める保護範囲が制限されるものではない。
【0017】
図1は本発明の脆性材料基板のスクライブ装置100の概略的な正面図である。スクライブ装置100は、図示を省略する真空吸引手段又は静電気による吸引手段、粘着手段等が設けられ、一般的に0.025〜40mmの間の厚さを有する分断すべき脆性材料基板Gを吸引して固定する、水平に回転可能な作業台1を有する。作業台1は平行する一対のガイドレール2、2によって支持され、ボールねじ3によりガイドレール2、2に沿ってY軸方向(紙面と直交する方向)に移動することができる。
【0018】
作業台1の上方にはY軸方向と直交するX軸方向(前記図面の左右方向)に沿ってガイド棒4が架設される。ガイド棒4にはガイド棒4に沿ってX軸方向に摺動可能なスクライブユニット5と、前記スクライブユニット5を駆動して摺動させるモータ6が設けられている。
【0019】
スクライブユニット5の下部には、昇降可能かつ揺動自在であるカッター支持部7と、前記カッター支持部7の下端に回転可能に取り付けられるカッターホイール8とが設けられている。また脆性材料基板の分断装置がマークに基づいて作業台1の位置を調整して分断される基板を正確なスクライブと分断位置に移動できるように、ガイド棒4の上方に作業台1上の脆性材料基板Gのアライメントマークを識別する一対のCCDカメラ9が設けられている。
【0020】
また、スクライブ装置100はオペレーションソフトウェアと装置インターフェースとからなる荷重制御手段と進行制御手段と、を含む。荷重制御手段と進行制御手段は、スクライブユニット5が脆性材料基板の表面上において第1の方向に沿う第1のスクライブラインと第2の方向に沿う第2のスクライブラインをスクライブして形成する際、前記スクライブユニット5の摺動動作を制御するとともに、カッター支持部7を介してカッターホイール8に与える荷重を制御する。これにより、カッターホイール8が少なくとも、交差する2本の第1のスクライブライン及び第2のスクライブラインを形成する時に、カッターホイールから脆性材料基板G上にかかるスクライブ荷重を調整可能とする。
【0021】
なお、変形例として、スクライブユニット5をガイド棒4に固定し(ゆえに、モータ6を必要としない)、作業台1をX軸及びY軸方向に沿って移動可能なX−Y テーブルタイプとしてもよい。又は作業台1を固定し、スクライブユニット5をX軸及びY軸方向に沿って移動可能なタイプとすることもできる。
【0022】
図2は本発明に使用されるカッターホイールの一つの例である。カッターホイール8は外周に稜線と傾斜面からなる刃部を有し、刃部には歯状の凹凸を有するもので、回転してスクライブするときに脆性材料基板Gの表面に対して短周期的な打点衝撃を与えることができる。従来、刃先稜線に所定の間隔をもって微細な溝を設ける、即ち連続的な突起を形成することによりカッターホイールの刃部を構成すれば、2つの方向に沿って交差したスクライブラインを形成する時に、カッターホイールの稜線部に形成された突起により、脆性材料基板に与える集中的な衝撃力を生じさせることができることが知られている。カッターホイールが先のスクライブライン近辺の応力残存箇所を通過するときに、脆性材料基板に対するカッターホイールの圧迫圧力を維持することができる。特に一部の脆性基板材料にとっては、実際の作業において所定のスクライブ位置に所望の十分な深さの垂直クラックを得ることができるので、スクライブ後にブレイク機構等により分断作業を行い、理想的な欠陥のない製品に分断することができる。
【0023】
図2Aは回転軸方向から見たカッターホイール8の外見の側面図であり、
図2Bは回転軸と垂直の方向から見たカッターホイール8の外見の正面図であり、
図2Cは
図2Aに示す刃先稜線の拡大図である。
図2Cに示すとおり、カッターホイール8の刃先稜線10にはU字形の溝11が形成され、かつ、ピッチPごとに高さhの突起12が存在する。一例として、カッターホイール8は外径が2.5mm、厚さが0.65mm、刃先角度2θが125°、突起数が125個、突起高さhが5μm、ピッチPが63μmであるものが用いられる。他の例として、外径が2.0mm、厚さが0.65mm、刃先角度2θが105°、突起数が360個、突起高さhが3μm、ピッチPが63μmであるものが用いられてもよい。
【0024】
図3A、
図3Bは、本発明に使用されるカッターホイールの他の例である。
図3A、
図3Bに示されるカッターホイール8の刃部は歯状の凹凸を有しない。
【0025】
このスクライブ装置100により、下記のように、第1のスクライブラインと第2のスクライブラインとの交点の近辺領域Kにおいてスクライブユニットのカッターホイールにかける荷重を変更する方法によれば、本発明の交点飛び現象を減少するという目的を実現できる。
【0026】
図4は、カッターホイール8により、刃先荷重が0.08MPa、スクライブ速度が300mm/secで、厚さが1.1mmの脆性材料基板1をスクライブした後のスクライブラインが残っている基板の断面を示す。脆性材料基板1は、第1の表面Fと第1の表面に対する第2の表面Sを有する。脆性材料基板1の前記第1の表面上には、複数の分断予定線が予め設定されている。分断予定線は少なくとも第1の方向及び一第2の方向のそれぞれに沿って延伸し、かつ、第1の方向と第2の方向は平行ではなく、分断予定線に沿ってスクライブ後に互いに交差するスクライブラインが形成される。
【0027】
スクライブユニット5のカッターホイール8は、設定された複数の分断予定線に沿って転動してスクライブラインを形成(スクライブ)し、第1の方向に少なくとも一本の第1のスクライブラインL(又は
図5に示す第1のスクライブラインL1、L2、L3)を形成し、及び第1のスクライブラインと交差する第2の方向の少なくとも一本の第2のスクライブラインR(又は
図5に示す第2のスクライブラインR1、R2、R3)を形成し、少なくとも一本の第1のスクライブラインLと前記少なくとも一本の第2のスクライブラインRは交差して少なくとも1つの交点Aを形成する。第1,第2のスクライブラインLとRは、カッターホイール8により形成された溝形状を有し、さらにカッターホイール8の切り込み圧力により更に下方へ延伸した垂直クラックを含むのが好ましい。より好ましくは垂直クラック(実測値が962μm)がほぼ板厚を貫通するようにスクライブラインが形成される。このようにすれば、次の工程の分断作業中にスクライブラインに沿って適切に分断することができるので、良品率を向上させることが可能となる。
【0028】
続いて、荷重制御手段と進行制御手段によりスクライブユニット5の摺動動作及びカッターホイール8にかかる荷重を制御することについて説明する。進行制御手段により制御される前記スクライブユニット5のスクライブ速度は、10〜1000mm/secとされることが好ましい。
【0029】
スクライブ動作の前に、第1のスクライブラインL1〜L3の形成位置と互いの間隔、第2のスクライブラインR1〜R3の形成位置と互いの間隔、スクライブライン開始位置、スクライブライン停止位置、荷重変換開始位置、及び荷重変換停止位置などのデータを変数とし、荷重制御手段と進行制御手段を構成するソフトウェアがインストールされているコンピューターに入力される。
【0030】
図5に示すとおり、脆性材料基板Gの左上コーナーを基準点Oとし、第1のスクライブラインL1〜L3のそれぞれの所定形成位置と互いの間隔距離についても前記コンピューターに入力される。ここでは説明上の便宜のため、単純な入力数値を例とし、スクライブラインL1が基準点OからX軸(右側)方向へ10mmに、スクライブラインL2が基準点OからX軸(右側)方向へ100mmに、スクライブラインL3が200mmに位置するように設定する。
【0031】
本実施例においては、ソフトウェアとインターフェース装置とからなる荷重制御手段によりカッターホイール8にかける荷重を制御する。そのうち、カッターホイール8が、第1のスクライブラインLの、第1のスクライブラインと第2のスクライブラインとの交点の近辺領域K以外の部分をスクライブする場合のカッターホイール8の刃先荷重がP1(例えば、0.08MPa)に設定される。同様に、カッターホイール8が、第2のスクライブラインRの、第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域K以外の部分をスクライブする場合のカッターホイール8の刃先荷重がP2(例えば、0.08MPa)に設定される。
【0032】
カッターホイール8は設定されたP1とP2の荷重を用いて第1のスクライブラインLと第2のスクライブラインRをそれぞれスクライブする。
図5に示すように、第1のスクライブラインL1を図に示す基板の最も上方の縁から下方へスクライブするものとし、第2のスクライブラインR1を図に示す基板の左側寄りの位置から右方へスクライブするものとすることができる。
【0033】
以下において、スクライブ動作をより詳しく説明する。進行中のカッターホイール荷重は、カッターホイール8が所定の第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域K(交点自体を含む。
図6Aの拡大図に示すとおりである。)に位置する場合を除き、基本的には変わらない。カッターホイール8が第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kに進行した場合、第1のスクライブラインLをスクライブするカッターホイール8の荷重はM1に変更され、第2のスクライブラインRをスクライブするカッターホイール8の荷重はM2に変更される。なお、M1、M2は共にP1とP2よりも小さくされる。また、P1をP2より大きいものとすることもでき、P1をP2より小さいものとすることもできる。
【0034】
このスクライブラインの交点の近辺領域Kにおける荷重の変更を設定するため、まず第1のスクライブラインL1〜L3の、基準点OからのX軸方向(
図5と
図6Aにおいては右方向)の所定位置がそれぞれ前記コンピューターに入力される。
【0035】
続いて、所定の第1のスクライブラインL1のスクライブライン開始位置の数値が入力される。本実施例においては、基板の最上縁、又は基板の最上縁から少々離れた位置である。
【0036】
更に、スクライブ進行中の所定の第1のスクライブラインL1の1つ目の荷重変換開始位置B1が入力される。荷重変換開始位置B1は、第2のスクライブラインR1の所定の形成位置からY軸方向に沿って上方へ所定の距離、本実施形態では例えば0.5mm離れたところに設定されている。
【0037】
続いて、所定の第1のスクライブラインL1の1つ目の荷重変換停止位置B2の数値が入力される。荷重変換停止位置B2は、第2のスクライブラインR1の所定の形成位置からY軸方向に沿って下方へ所定の距離、本実施形態では0.5mm離れたところに設定されている。
【0038】
このように、
図6A、
図6B、
図6Cに示すとおり、所定の大きさの脆性基板上に、第1のスクライブラインL1の2つ目の荷重変換開始位置B3、2つ目の荷重変換停止位置B4、3つ目の荷重変換開始位置B5、3つ目の荷重変換停止位置B6、4つ目の荷重変換開始位置B7、及び4つ目の荷重変換停止位置B8の数値が順次設定される。所定の第1のスクライブラインL2及びL3の位置の数値の設定と入力も、前記方法と同様に行われる。
【0039】
次に、第2のスクライブラインR1〜R3の、基準点OからのY軸方向(
図5と
図6Aにおいては下方向)の所定位置がそれぞれ前記コンピューターに入力される。
【0040】
続いて、所定の第2のスクライブラインR1のスクライブライン開始位置A1の数値を入力する。第2のスクライブラインR1のスクライブライン開始位置A1は第1のスクライブラインL1の所定の形成位置からX軸方向に沿って右方へ所定の距離、本例では0.5mm離れたところ、
図5に示す例ではX軸上の10.5mmの位置である。
【0041】
更に、所定の第2のスクライブラインR1の1つ目の荷重変換開始位置A2を入力する。荷重変換開始位置A2は、第1のスクライブラインL2の所定の形成位置からX軸方向に沿って左方へ所定の距離、本例では0.5mm離れたところ、即ち、
図6Aに示す例のX軸上の99.5mmの位置である。
【0042】
続いて、所定の第2のスクライブラインR1の1つ目の荷重変換停止位置A3の数値を入力する。荷重変換停止位置A3は、第1のスクライブラインL2の所定の形成位置からX軸方向に沿って右方へ所定の距離、本例では0.5mm離れたところ、即ち、
図6Aに示す例のX軸上の100.5mmの位置である。
【0043】
最後に、所定の第2のスクライブラインR1のスクライブライン停止位置A4を入力する。スクライブライン停止位置A4は、第1のスクライブラインL3の所定の形成位置からX軸方向に沿って左方へ所定の距離、本例では0.5mm離れたところ、即ち、
図6Aに示す例のX軸上の199.5mmの位置である。
【0044】
前記荷重変換開始位置B1、B3、A2等、及び荷重変換停止位置B2、B4、A3等は、前記コンピューターが第1と第2のスクライブラインL1〜L3とR1〜R3を形成する過程において、各位置のそれぞれにおいてカッターホイール8の刃先にかかる荷重をM1及びM2に変更するためのものである。より好ましくは、M1はP1よりも小さく、かつ、P2よりも小さくする。例えば、P1とP2が0.08MPaである場合、M1を0.05MPaとする。
【0045】
上記各数値の入力の順番は任意に変動可能であり、上記の例に限らない。また、基準点Oの位置も、必ずしも脆性材料基板Gの左上コーナーに位置しなくてもよく、基板表面のその他の任意の位置若しくはコーナー以外の位置、又はいずれの辺の中央などの所定位置に位置してもよい。
【0046】
他の実施例においては、前記脆性基板Gが液晶基板であり、厚さが0.3〜0.7mmで、より好ましくは0.4mmである。カッターホイール荷重P1とP2の範囲は、より好ましくは0.05MPa〜0.11MPaの間にあり、一般的に中間に近い数値0.08MPaを用いることができる。スクライブユニットが第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kにある時に、カッターホイール8の荷重M1が0.05MPaに、M2がP1とP2よりも小さい値に設定されるのがより好ましい。
【0047】
もう1つの具体的な実施例において、前記脆性基板Gが液晶基板であり、厚さが0.3〜0.7mmで、より好ましくは0.4mmである。カッターホイール荷重P1とP2が0.11MPaで、スクライブユニットが第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kにある時に、カッターホイール8の荷重M1の範囲が0.05MPa〜0.07MPaの間にあり、M2の範囲が0.05MPa〜0.09MPaの間にある。
【0048】
1つのスクライブ工程の例を以下に説明する。スクライブユニットが前記ガイド棒4に沿って第1のスクライブラインL1のスクライブ開始位置の上方まで摺動される。第1のスクライブラインL1〜L3は基板1の縁からスクライブを開始するので、第1のスクライブラインL1に沿って基板外方の仮想の延長線に沿って少しの距離を移動した箇所をスクライブ開始位置とすることができる。
【0049】
スクライブ開始位置に到達後はスクライブユニットの摺動を一時停止し、カッター支持部7を下降させ、カッター支持部7に設けられているカッターホイール8をスクライブライン開始位置まで下降させる。そして、カッターホイール8に刃先荷重P1をかけ、スクライブを開始する。カッターホイール8が所定の第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kに進入する時に、荷重はM1に調整される。このようにして、第1のスクライブラインL1〜L3を順次形成する。
【0050】
その後、作業台1が90°回転し、第2のスクライブラインR1〜R3をスクライブする。この時、スクライブユニット5は進行制御手段により制御され、前記ガイド棒4に沿って第2のスクライブラインR1のスクライブ開始位置の上方まで摺動する。
【0051】
スクライブ開始位置に到達後は一時停止し、前記カッター支持部7を下降させ、カッター支持部7に設けられているカッターホイール8をスクライブライン開始位置A1まで下降させ、カッターホイール8に刃先荷重P2をかけてスクライブする。カッターホイール8が右方へ移動し荷重変換開始位置A2に進行した時、荷重をM2に下げ、第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kを経過した後、即ち荷重変換停止位置A3において、荷重をP2に戻し、引き続きスクライブライン停止位置A4までスクライブする。このように、徐々に第2のスクライブラインR1〜R3をスクライブする。
【0052】
なお、先に第1のスクライブラインL1をスクライブしてから、第2のスクライブラインR1をスクライブし、更に第1のスクライブラインL1をスクライブすることも可能である。スクライブの順番はこれに限られるものではなく、実際の状況に応じてスクライブの順番を変更することができる。
【0053】
前記の低い荷重M1、M2によりスクライブが行われる前記交点の近辺領域Kは、より好ましくは、2本の交差する第1のスクライブラインと第2のスクライブラインから0.2mm〜1.0mm離れた平行線により定義される菱形領域内である。更に限定して、2本の交差する第1のスクライブラインと第2のスクライブラインからそれぞれ0.5mm〜0.7mm離れた平行線により定義される菱形領域とすることもできる。実際に、互いに垂直に交差する2本のスクライブラインを形成する際、より低い荷重M1とM2が用いられる位置は
図6Bと
図6Cに示されるKの位置である。
【0054】
実際のテスト結果においては、固定荷重にて2本の交差する第1のスクライブラインと第2のスクライブラインをスクライブした場合、前後のスクライブ荷重のいずれがより小さいかに関わらず、2つの方法により作られた製品の不良状況と割合は大体同じであった。しかし、本発明の方法により第1のスクライブラインと第2のスクライブラインの交点の近辺領域Kにおいて荷重を下げた場合、製品不良の状況と割合は明らかに改善された。
【0055】
本発明により分断される脆性材料基板1の材料の例として、ガラス、液晶パネル、ウェハ、セラミックス等の基板、又はプラズマ表示パネル(PDF)、有機EL表示装置等の脆性材料基板が貼り合わせられたフラットパネルディスプレイ(FPD)、又は透過型プロジェクタ基板、反射型プロジェクタ基板等のマザー貼り合わせ基板が挙げられる。
【0056】
スクライブ完成後の基板に対しては、更に分断が行われる。例えば、せん断、パンチング、切断、振動、折り曲げ分断などの機械的な分断方法により、前記脆性材料基板を前記スクライブラインに沿って分断させ、複数の製品を形成することができる。
【0057】
上記の説明では、主に脆性材料基板の一種であるガラス基板に対してスクライブラインを形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、液晶表示パネルにも本発明のスクライブ装置及びスクライブ方法を有効に適用し、本発明の目的を実現することができる。